ロシア連邦捜査委員会は容疑者を拘束2024年12月18日 17:18

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【概要】
  
 2024年12月17日早朝、ロシアの化学防護部隊司令官であるイゴール・キリロフ大将(54歳)とその補佐官イリヤ・ポリカルポフがモスクワの自宅近くで発生した爆発により死亡した。この事件に関連して、ロシア連邦捜査委員会は容疑者を拘束したことを2024年12月18日に発表した。

 事件の概要

 捜査当局によると、拘束された容疑者は1995年生まれのウズベキスタン国籍の人物であり、ウクライナ情報機関によって勧誘されたとされている。この容疑者は、自作の爆発装置を受け取り、キリロフの自宅付近に駐車してあった電動スクーターにそれを設置したと主張されている。また、容疑者は監視カメラを搭載した車両をレンタルし、現場のライブ映像をウクライナのドニプロ(旧称:ドニプロペトロウシク)にいる実行指揮者たちに送信していた。

 爆発装置は、キリロフ大将とポリカルポフ補佐官が建物を出る映像が送信されてから遠隔操作で起爆された。この襲撃の成功報酬として、容疑者には10万ドルの報酬とヨーロッパの国への移住が約束されていたとされる。

 キリロフ大将の役職と活動

 キリロフ大将は、化学兵器、生物兵器、核攻撃、または「汚い爆弾」による放射線被害からロシア軍および民間人を防護する責任を持つロシア軍の専門部隊を指揮していた。2017年にその職に就任して以降、40回以上のブリーフィングを行い、部隊の専門家による調査結果を報告していた。

 2022年にウクライナ紛争が激化して以降、彼の報告の多くはこの紛争に関連した内容であった。具体的には、ウクライナ軍が化学剤を使用した可能性や、ウクライナによる挑発行為の計画に関する警告を含んでいた。また、アメリカが支援する微生物学研究所の活動に対する懸念も表明しており、この問題はロシアや他国でも注目を集めていた。

 国際的な反応と制裁

 2024年10月、キリロフ大将はウクライナがロシアを非難し、化学兵器禁止機関(OPCW)でのロシアの立場を損なうために化学兵器による偽旗作戦を計画していると非難した。この発言を受け、イギリス政府は彼に対して制裁を課していた。また、NATOがウクライナに過剰な量の化学防護装備を供給していることは、差し迫った脅威を示唆していると主張していた。

 この事件は、ロシア・ウクライナ間の緊張が続く中で発生しており、両国間の対立の新たな局面として注目されている。

【詳細】
 
 事件の詳細

 爆発の発生

 事件は2024年12月17日午前6時頃に発生した。イゴール・キリロフ大将とその補佐官イリヤ・ポリカルポフが、モスクワ市内の集合住宅から外に出た際、駐車中の電動スクーターに仕掛けられていた爆発装置が起爆された。この爆発により、2人は即死したと見られている。

 容疑者の背景

 ロシア連邦保安庁(FSB)の発表によると、拘束された容疑者は1995年生まれのウズベキスタン国籍者であり、ウクライナの情報機関によって勧誘され、暗殺計画に加担したとされている。容疑者はモスクワに移動後、自作の爆発装置を受け取り、それを電動スクーターに設置。さらに、監視カメラを搭載した車両を借り、現場周辺を監視しながら、指示をウクライナ・ドニプロの指揮者に映像で伝えていた。

 捜査によれば、ウクライナ側からは10万ドルの報酬と、任務達成後にヨーロッパの安全な国への移住が約束されていたとされる。この映像を通じて、キリロフとポリカルポフが建物から出てきた瞬間を確認後、遠隔操作で爆弾を起動した。

 イゴール・キリロフ大将の役割と業績

 職務内容

 キリロフ大将はロシア軍の化学・生物・放射線防護部隊(CBRN部隊)を指揮していた。この部隊は、軍および市民を以下のような脅威から保護するための専門技術を提供する。

 ・化学兵器や生物兵器の使用
 ・核兵器による放射線被害
 ・「汚い爆弾」(放射性物質を使用した即席爆弾)

 彼は2017年に司令官に就任し、以後40回以上のブリーフィングを実施し、自身の指揮する部隊の調査結果を公表してきた。

 ウクライナ紛争との関連

 2022年以降のウクライナ紛争の激化に伴い、キリロフ大将は化学兵器使用に関する報告や警告を強調するようになった。彼の報告内容は次のようなものが含まれる:

 ・化学剤の使用疑惑:ウクライナ軍が戦場で化学剤を使用した可能性があると指摘。
 ・挑発行為の計画:ウクライナが化学兵器を用いた挑発行為を計画していると主張。
 ・アメリカ支援の研究所に関する懸念:ウクライナ国内の微生物学研究所に対する疑念を表明。これらの研究所はアメリカ国防総省の支援を受けており、ロシア政府はその活動が「自然発生的な脅威の調査」という名目を超えた不審な目的を持つ可能性があると主張していた。

 国際的な反響

 イギリスの制裁

 2024年10月、イギリスはキリロフ大将に対して制裁を課した。この背景には、キリロフがウクライナ政府とNATOを名指しで非難し、化学兵器の偽旗作戦が計画されていると指摘したことがある。彼は特に、NATOがウクライナ軍に過剰な化学防護装備を供給していることを「差し迫った化学的脅威の兆候」として強調していた。

 キリロフの主張とその影響

 彼の報告はロシア国内外で注目を集めており、特に化学兵器禁止機関(OPCW)でのロシアの立場を守るための重要な役割を果たしていた。キリロフの死亡により、ロシア政府の化学・生物兵器に関する政策の情報発信力が低下する可能性がある。

 捜査の現状と影響

 ロシア政府は今回の事件を「ウクライナ政府による国際テロ」として非難しており、さらにウクライナとの緊張が高まる要因となっている。FSBおよび捜査委員会は、背後に存在するウクライナ情報機関の関与について更なる証拠を集めていると報じられている。今回の事件は、ロシアとウクライナ間の対立の一端を象徴するものであり、双方の対立が新たな局面を迎えている可能性がある。
  
【要点】 
 
 事件の概要

 ・発生日時:2024年12月17日午前6時頃
 ・発生場所:モスクワ市内の集合住宅付近
 ・被害者:ロシア化学防護部隊司令官イゴール・キリロフ大将(54歳)と補佐官イリヤ・ポリカルポフ
 ・手口:駐車中の電動スクーターに設置された爆弾が、遠隔操作で起爆された

 容疑者の詳細

 ・国籍:ウズベキスタン
 ・生年:1995年
 ・行動:ウクライナ情報機関に勧誘され、暗殺計画を実行

  ⇨ 自作爆弾を受け取り設置
  ⇨ 監視カメラ付きの車両を借り、現場の映像をウクライナの指揮者(ドニプロ市)に送信
  ⇨ 映像を確認後、遠隔で爆弾を起動

 動機と報酬

 ・動機:ウクライナ政府の指示に基づく暗殺
 ・報酬:成功報酬として10万ドルとヨーロッパへの移住を約束されていた

 被害者の背景と役割

 ・キリロフの役割:ロシア軍の化学・生物・放射線防護部隊(CBRN部隊)を指揮

  ⇨ 化学兵器・生物兵器・放射性物質からの防護を担当
  ⇨ 2017年就任以来40回以上のブリーフィングを実施

 ・主張

  ⇨ ウクライナ軍の化学兵器使用疑惑
  ⇨ ウクライナによる偽旗作戦の計画を警告
  ⇨ アメリカ支援の微生物学研究所に対する疑念を提起

 国際的な反響

 ・イギリスの制裁:2024年10月、キリロフに対して制裁を課す

  ⇨ ウクライナとNATOを非難したことが背景
  ⇨ 化学兵器禁止機関(OPCW)でのロシアの立場を擁護する活動が注目されていた

 捜査と影響

 ・捜査状況

  ⇨ ロシア政府はウクライナ情報機関の関与を強調
  ⇨ 事件を「国際テロ」と位置づけ、さらなる証拠収集を継続

 ・政治的影響:

  ⇨ ロシアとウクライナ間の対立が一層激化
  ⇨ ロシア国内での反ウクライナ感情がさらに高まる可能性

【引用・参照・底本】

Suspect in Russian chemical defense chief murder recruited by Kiev – officials RT 2024.12.18
https://www.rt.com/russia/609516-suspect-detained-russian-chemical-defense-murder/

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