ロシアとパキスタン:資源分野での協力を拡大 ― 2024年12月18日 13:51
【概要】
ロシアとパキスタンは、資源分野での協力を包括的に拡大することを合意した。2024年12月17日、アンドリュー・コリブコの報告によると、パキスタンは中国への依存を減らすことを望んでおり、そのためロシアに対して、資源インフラの近代化を中国ではなくロシアに任せることを選んだ。これにより、アメリカの戦略的目標にも合致する形となる。
パキスタンとロシアは、第9回パキスタン・ロシア政府間貿易・経済・科学技術協力委員会の結果として、資源分野における協力を包括的に拡大する協定に署名した。この協力は、エネルギーや鉱物探査、油田サービス、ガスパイプライン、産業通信、共通の基準、設備、LNG(液化天然ガス)、石炭および化学分野の協力、水力発電および水管理を含む。
これまで、両国間の協力における主な障害は、財政的な問題と政治的な要因であった。特に、パキスタンの資金不足とアメリカの影響力が問題となっていたが、これらの問題がどのように克服されたかは明確ではない。ただし、パキスタンが現金の代わりにロシアにプロジェクトの優先権を提供し、アメリカがこの状況を許可した可能性もある。この背景には、アメリカの民間企業が巨額の投資を行うことに対する慎重な姿勢があり、その結果、ロシアの国営企業が代わりにこれらのプロジェクトを受けることになった可能性がある。
アメリカの戦略的な観点から、民間企業が不利な条件に対して投資を避けるのであれば、ロシアの企業がプロジェクトを実施する方が、中国の企業が進出するよりも望ましいとされる。アメリカはパキスタンにおける中国の影響力を削ぐことを優先しており、その結果、ロシアの資源分野での影響力が拡大することで、中国に対するカウンターとなり、アメリカの戦略的立場を強化することにつながる。
また、これはロシアの「南アジアへのシフト」の一環として位置づけられ、ロシアは中国への過度な依存を避けるために、この地域での影響力拡大を目指している。パキスタンも中国への依存を減らすことを望んでおり、そのためロシアに資源インフラの近代化を任せることが、アメリカの戦略にも合致する形となっている。この傾向が続けば、将来的にはロシア・アメリカ・中国の相互作用がパキスタンにおいて重要な要素となるだろう。
【詳細】
2024年12月17日付のアンドリュー・コリブコによる報告によれば、ロシアとパキスタンは資源分野における協力を大幅に拡大することで合意した。具体的には、両国は第9回パキスタン・ロシア政府間貿易・経済・科学技術協力委員会の結果として、エネルギー、鉱物探査、油田サービス、ガスパイプライン、産業通信、共通基準の確立、設備の提供、LNG(液化天然ガス)、石炭、化学分野、そして水力発電および水管理に関する協力を強化する協定に署名した。
背景と経済的な意図
パキスタンは、これまで中国に対して依存しすぎている状況に直面しており、その依存度を減らすためにロシアと協力を強化することを選択した。パキスタン政府は、ロシアが資源インフラの近代化を支援することを希望しており、これは中国の影響を減少させ、またロシアとの経済関係を強化することを目指している。さらに、アメリカの戦略的目標にも合致しており、アメリカはロシアの進出を中国によるものと比較して受け入れやすいと見なしている。
これまでの両国間の協力の障害となっていたのは、主に財政的な問題と政治的な障壁であった。特に、パキスタンは財政的に困難な状況にあり、またアメリカの影響力が強く、これがパキスタンの政策に大きな影響を与えていた。しかし、最近になってこれらの問題がどのように解消されたかは明確にはわかっていない。可能性として、パキスタンが現金を提供する代わりにロシアに優先権を与えるという形で協力が進展した可能性がある。
アメリカの戦略的観点
アメリカにとって、ロシアがパキスタンの資源インフラに投資することは、必ずしも否定的なことではない。むしろ、中国の影響力を削ぐための手段として、ロシアの進出を受け入れる可能性がある。アメリカの民間企業は、パキスタンのインフラ整備に関しては長期間にわたる投資の回収を期待することが難しいため、慎重な姿勢を取っている。しかし、ロシアの国営企業はこうしたリスクを取る余裕があり、長期的に高いリターンを得ることを目指して投資を行うことができる。この点で、アメリカは民間企業が参入しないのであれば、ロシアの企業が参入することを許容する可能性が高い。
アメリカの戦略的目標は、パキスタンにおける中国の影響力を削減することであり、ロシアの進出がその目的を達成する助けになると考えられている。ロシアの影響力が増すことで、中国の影響力が相対的に弱まるため、アメリカにとっては有利に働くと見なされている。また、ロシアがパキスタンに対して行う投資は、アメリカの地政学的利益にかなうものとみなされている。
ロシアのアジア戦略
ロシアは「南アジアへのシフト」を進めており、特に中国への依存を避けるために、パキスタンとの経済的な関係を強化しようとしている。この「南アジアへのシフト」は、ロシアが中国とインド以外のアジア諸国との協力を強化する一環であり、パキスタンはその重要なパートナーと位置づけられている。ロシアがこの地域での影響力を高めることで、中国に対する依存を避けることが狙いである。
パキスタンもまた、中国への依存度を減らすことを望んでおり、これまでの中国との経済関係に対して不安を抱えている。パキスタン政府は、中国の一帯一路(Belt and Road Initiative)における関与が、経済的に不利な面を持っていると認識しているため、ロシアとの協力を選択したと考えられる。ロシアが資源インフラの近代化を支援することにより、パキスタンは中国以外の選択肢を得ることができ、経済的な独立性を強化することができる。
結論
このように、ロシアとパキスタンの協力拡大は、両国の経済的利益だけでなく、地政学的な戦略とも深く結びついている。アメリカは、ロシアの進出を受け入れることで、パキスタンにおける中国の影響を削ぐことができるため、結果として自国の戦略的立場を強化することができる。将来的には、ロシア、アメリカ、中国の三者がパキスタンにおいてどのように相互作用するかが、地政学的な重要なポイントとなるだろう。
【要点】
・ロシアとパキスタンの協力拡大: 両国は第9回パキスタン・ロシア政府間委員会の結果として、資源分野で包括的な協力を拡大する協定に署名した。協力内容には、エネルギー、鉱物探査、油田サービス、ガスパイプライン、産業通信、設備、LNG、石炭、化学、水力発電、水管理が含まれる。
・パキスタンの依存度の低減: パキスタンは中国への過度な依存を減らしたいと考え、ロシアによる資源インフラの近代化を希望している。これにより、中国の影響を減少させ、ロシアとの経済関係を強化することが狙い。
・アメリカの戦略的観点: アメリカは、ロシアがパキスタンにおいて資源インフラを近代化することを許容する可能性が高い。アメリカは中国の影響力を削減するために、ロシアの進出を受け入れることで有利な立場を保つ。
・アメリカの民間企業の慎重さ: アメリカの民間企業は、パキスタンの資源インフラ整備における投資に対して回収まで時間がかかるため、慎重な姿勢を取っている。しかし、ロシアの国営企業は長期的なリターンを見込んで投資することができる。
・ロシアの「南アジアへのシフト」: ロシアは、中国への依存を避けるため、南アジアでの影響力を高めようとしており、パキスタンとの経済協力を強化している。
・パキスタンの経済的独立: パキスタンは、中国の一帯一路に対して不安を抱えており、ロシアとの協力を選択することで、中国への依存を減らし、経済的な独立を強化する狙いがある。
・アメリカの戦略的立場の強化: アメリカはロシアがパキスタンで影響力を拡大することで、中国の影響を弱め、アメリカの戦略的立場を強化できると考えている。
・将来の地政学的影響: ロシア、アメリカ、中国の三者がパキスタンでどのように相互作用するかが、今後の地政学的な重要な要素となる。
【引用・参照・底本】
Russia & Pakistan Will Comprehensively Expand Cooperation In The Resource Sector Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.17
https://korybko.substack.com/p/russia-and-pakistan-will-comprehensively?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153249761&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ロシアとパキスタンは、資源分野での協力を包括的に拡大することを合意した。2024年12月17日、アンドリュー・コリブコの報告によると、パキスタンは中国への依存を減らすことを望んでおり、そのためロシアに対して、資源インフラの近代化を中国ではなくロシアに任せることを選んだ。これにより、アメリカの戦略的目標にも合致する形となる。
パキスタンとロシアは、第9回パキスタン・ロシア政府間貿易・経済・科学技術協力委員会の結果として、資源分野における協力を包括的に拡大する協定に署名した。この協力は、エネルギーや鉱物探査、油田サービス、ガスパイプライン、産業通信、共通の基準、設備、LNG(液化天然ガス)、石炭および化学分野の協力、水力発電および水管理を含む。
これまで、両国間の協力における主な障害は、財政的な問題と政治的な要因であった。特に、パキスタンの資金不足とアメリカの影響力が問題となっていたが、これらの問題がどのように克服されたかは明確ではない。ただし、パキスタンが現金の代わりにロシアにプロジェクトの優先権を提供し、アメリカがこの状況を許可した可能性もある。この背景には、アメリカの民間企業が巨額の投資を行うことに対する慎重な姿勢があり、その結果、ロシアの国営企業が代わりにこれらのプロジェクトを受けることになった可能性がある。
アメリカの戦略的な観点から、民間企業が不利な条件に対して投資を避けるのであれば、ロシアの企業がプロジェクトを実施する方が、中国の企業が進出するよりも望ましいとされる。アメリカはパキスタンにおける中国の影響力を削ぐことを優先しており、その結果、ロシアの資源分野での影響力が拡大することで、中国に対するカウンターとなり、アメリカの戦略的立場を強化することにつながる。
また、これはロシアの「南アジアへのシフト」の一環として位置づけられ、ロシアは中国への過度な依存を避けるために、この地域での影響力拡大を目指している。パキスタンも中国への依存を減らすことを望んでおり、そのためロシアに資源インフラの近代化を任せることが、アメリカの戦略にも合致する形となっている。この傾向が続けば、将来的にはロシア・アメリカ・中国の相互作用がパキスタンにおいて重要な要素となるだろう。
【詳細】
2024年12月17日付のアンドリュー・コリブコによる報告によれば、ロシアとパキスタンは資源分野における協力を大幅に拡大することで合意した。具体的には、両国は第9回パキスタン・ロシア政府間貿易・経済・科学技術協力委員会の結果として、エネルギー、鉱物探査、油田サービス、ガスパイプライン、産業通信、共通基準の確立、設備の提供、LNG(液化天然ガス)、石炭、化学分野、そして水力発電および水管理に関する協力を強化する協定に署名した。
背景と経済的な意図
パキスタンは、これまで中国に対して依存しすぎている状況に直面しており、その依存度を減らすためにロシアと協力を強化することを選択した。パキスタン政府は、ロシアが資源インフラの近代化を支援することを希望しており、これは中国の影響を減少させ、またロシアとの経済関係を強化することを目指している。さらに、アメリカの戦略的目標にも合致しており、アメリカはロシアの進出を中国によるものと比較して受け入れやすいと見なしている。
これまでの両国間の協力の障害となっていたのは、主に財政的な問題と政治的な障壁であった。特に、パキスタンは財政的に困難な状況にあり、またアメリカの影響力が強く、これがパキスタンの政策に大きな影響を与えていた。しかし、最近になってこれらの問題がどのように解消されたかは明確にはわかっていない。可能性として、パキスタンが現金を提供する代わりにロシアに優先権を与えるという形で協力が進展した可能性がある。
アメリカの戦略的観点
アメリカにとって、ロシアがパキスタンの資源インフラに投資することは、必ずしも否定的なことではない。むしろ、中国の影響力を削ぐための手段として、ロシアの進出を受け入れる可能性がある。アメリカの民間企業は、パキスタンのインフラ整備に関しては長期間にわたる投資の回収を期待することが難しいため、慎重な姿勢を取っている。しかし、ロシアの国営企業はこうしたリスクを取る余裕があり、長期的に高いリターンを得ることを目指して投資を行うことができる。この点で、アメリカは民間企業が参入しないのであれば、ロシアの企業が参入することを許容する可能性が高い。
アメリカの戦略的目標は、パキスタンにおける中国の影響力を削減することであり、ロシアの進出がその目的を達成する助けになると考えられている。ロシアの影響力が増すことで、中国の影響力が相対的に弱まるため、アメリカにとっては有利に働くと見なされている。また、ロシアがパキスタンに対して行う投資は、アメリカの地政学的利益にかなうものとみなされている。
ロシアのアジア戦略
ロシアは「南アジアへのシフト」を進めており、特に中国への依存を避けるために、パキスタンとの経済的な関係を強化しようとしている。この「南アジアへのシフト」は、ロシアが中国とインド以外のアジア諸国との協力を強化する一環であり、パキスタンはその重要なパートナーと位置づけられている。ロシアがこの地域での影響力を高めることで、中国に対する依存を避けることが狙いである。
パキスタンもまた、中国への依存度を減らすことを望んでおり、これまでの中国との経済関係に対して不安を抱えている。パキスタン政府は、中国の一帯一路(Belt and Road Initiative)における関与が、経済的に不利な面を持っていると認識しているため、ロシアとの協力を選択したと考えられる。ロシアが資源インフラの近代化を支援することにより、パキスタンは中国以外の選択肢を得ることができ、経済的な独立性を強化することができる。
結論
このように、ロシアとパキスタンの協力拡大は、両国の経済的利益だけでなく、地政学的な戦略とも深く結びついている。アメリカは、ロシアの進出を受け入れることで、パキスタンにおける中国の影響を削ぐことができるため、結果として自国の戦略的立場を強化することができる。将来的には、ロシア、アメリカ、中国の三者がパキスタンにおいてどのように相互作用するかが、地政学的な重要なポイントとなるだろう。
【要点】
・ロシアとパキスタンの協力拡大: 両国は第9回パキスタン・ロシア政府間委員会の結果として、資源分野で包括的な協力を拡大する協定に署名した。協力内容には、エネルギー、鉱物探査、油田サービス、ガスパイプライン、産業通信、設備、LNG、石炭、化学、水力発電、水管理が含まれる。
・パキスタンの依存度の低減: パキスタンは中国への過度な依存を減らしたいと考え、ロシアによる資源インフラの近代化を希望している。これにより、中国の影響を減少させ、ロシアとの経済関係を強化することが狙い。
・アメリカの戦略的観点: アメリカは、ロシアがパキスタンにおいて資源インフラを近代化することを許容する可能性が高い。アメリカは中国の影響力を削減するために、ロシアの進出を受け入れることで有利な立場を保つ。
・アメリカの民間企業の慎重さ: アメリカの民間企業は、パキスタンの資源インフラ整備における投資に対して回収まで時間がかかるため、慎重な姿勢を取っている。しかし、ロシアの国営企業は長期的なリターンを見込んで投資することができる。
・ロシアの「南アジアへのシフト」: ロシアは、中国への依存を避けるため、南アジアでの影響力を高めようとしており、パキスタンとの経済協力を強化している。
・パキスタンの経済的独立: パキスタンは、中国の一帯一路に対して不安を抱えており、ロシアとの協力を選択することで、中国への依存を減らし、経済的な独立を強化する狙いがある。
・アメリカの戦略的立場の強化: アメリカはロシアがパキスタンで影響力を拡大することで、中国の影響を弱め、アメリカの戦略的立場を強化できると考えている。
・将来の地政学的影響: ロシア、アメリカ、中国の三者がパキスタンでどのように相互作用するかが、今後の地政学的な重要な要素となる。
【引用・参照・底本】
Russia & Pakistan Will Comprehensively Expand Cooperation In The Resource Sector Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.17
https://korybko.substack.com/p/russia-and-pakistan-will-comprehensively?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153249761&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email