トランプ:2025年からの政権移行チーム2024年12月28日 20:03

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【概要】

 2024年12月26日に発表された「WorldTribune.com」の記事では、ドナルド・トランプ氏の2025年からの政権移行チームについて報じている。この移行チームは、従来の政府移行プロセスとは異なり、私的な資金提供によって運営されており、ロビイストや「AWOL(Absent Without Official Leave:職務放棄した)トランプ派」のような人物が一切含まれていないことが特徴である。

 トランプ氏の息子であるドナルド・トランプ・ジュニア氏は、過去に政権から離れた共和党員に対して強い拒否感を示し、「弱い共和党員は必要ない」と述べた。また、元トランプ政権のデジタル戦略担当官であるダン・スカヴィーノ氏は、「連絡するな」とSNSで明言し、過去にトランプ政権を離れた元同僚に対して協力の意向がないことを強調している。

 移行チームには、元民主党員であるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏やタルシ・ギャバード氏が参加している。ケネディ氏は、トランプ氏が前回の政権でジョン・ボルトン氏やマイク・ポンペオ氏を起用したことについて、「当時のトランプ氏は統治の方法を理解していなかった」と述べた上で、今回はそのような失敗を繰り返さない意向を示していると説明している。

 トランプ氏は、通常11月6日以降に設立される政府提供の移行チームを採用せず、8月時点で独自の移行チームを立ち上げた。このチームには20人のメンバーがおり、ケネディ氏やギャバード氏を含む多様な背景の人々が参加している。ケネディ氏によれば、チームには企業ロビイストが含まれておらず、これまでの移行チームとは大きく異なる点を強調している。

 さらにトランプ・ジュニア氏は、移行チームの目的について、「忠誠心があり、大統領の意思を忠実に実行することが求められる」と述べた。これはワシントンD.C.における既存の勢力からの反発を招く理由の一つであると指摘している。

 この記事は、トランプ氏の政権移行に向けた取り組みがこれまでの政権運営とは異なる方向に進んでいることを示している。
 
【詳細】
 
 2024年大統領選挙で再選が確定したドナルド・トランプ氏が、次期政権発足に向けた準備段階において、従来の慣例を打ち破る独自の手法を採用していることを詳述している。以下にその詳細を説明する。

 1. 私的資金による移行チームの設立

 トランプ氏は、一般的に政府予算で運営される移行チームではなく、私的資金を活用して独自の移行チームを設立した。この動きは、2024年8月という早い段階で行われた。通常、移行チームは大統領選挙後の11月6日以降に政府会計検査院(GAO)の支援を受けて編成されるが、トランプ氏はその枠組みを拒否し、民間からの資金提供を受けた移行チームを立ち上げた。

 この移行チームの目的は、トランプ氏の政権に「沼地の住人(Swamp Rats)」と呼ばれるワシントンD.C.の既存の政治勢力やロビイストの影響を排除し、忠実で能力のある人材のみを選出することである。

 2. 「沼地の住人」排除の徹底

 トランプ・ジュニア氏やダン・スカヴィーノ氏は、以前の政権でトランプ氏を支持せず、政権離脱後に距離を置いた人物たち(AWOL Trumpers)に対して、再び関与することを完全に拒否している。スカヴィーノ氏は「連絡するな」「連絡を返さない」と公然と述べ、以前のトランプ政権の同僚との協力を否定した。

 これらの発言は、トランプ陣営が過去の教訓を活かし、内部の忠誠心を重視し、政権運営を妨害する可能性のある人物を徹底的に排除しようとしていることを反映している。

 3. 主要メンバーの多様性

 移行チームには、元民主党員でありながらトランプ氏を支持するロバート・F・ケネディ・ジュニア氏とタルシ・ギャバード氏が参加している。この両者は、トランプ氏が過去の失敗を認識し、再び同じ誤りを犯さないと信じていると述べている。

 ケネディ氏は、トランプ氏が2016年の政権発足時にジョン・ボルトン氏(国家安全保障問題担当補佐官)やマイク・ポンペオ氏(CIA長官)などを起用したことについて、「当時のトランプ氏は統治の方法を理解していなかった」と語った。しかし今回は、企業ロビイストが一切含まれていない移行チームを編成し、多様なイデオロギーを持つメンバーが参加している点が大きな違いである。

 4. 移行チームの目標と方向性

 トランプ・ジュニア氏は、「移行チームは大統領の意向を忠実に実行することが役割である」と述べている。また、移行チームのメンバーは「選出された大統領に仕えることが使命であり、彼の意思を妨害する権利はない」と明言している。この方針は、ワシントンD.C.の既存の官僚機構や政治勢力にとって脅威となり得るため、反発を招いていると考えられている。

 5. トランプ氏の再選戦略における意義

 この移行チームの設立は、トランプ氏が政権運営における過去の誤りを認識し、改善する意欲を示す重要な一歩である。特に、ロビイストや企業寄りの人物を排除し、忠実かつ有能な人材を選ぶことで、独自の政策を確実に実行することを目指している。

 まとめ

 このように、トランプ氏の移行チームは従来の慣例に囚われず、私的資金を活用し、多様な背景を持つメンバーを選出することで、過去の失敗を繰り返さないという強い意志を反映している。この取り組みは、トランプ氏の再選戦略において重要な要素となっている。
  
【要点】 
 
 ・私的資金による移行チームの設立

 トランプ氏は政府予算を使わず、私的資金で移行チームを設立した。通常の慣例より3か月早い2024年8月に始動。

 ・「沼地の住人」の排除

 過去にトランプ氏を支持せず離反した人物(AWOL Trumpers)やロビイストを徹底的に排除する方針。

 ・主要メンバーの多様性

 元民主党員のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏とタルシ・ギャバード氏が参加。企業ロビイストは一切含まれていない。

 ・過去の失敗からの教訓

 トランプ氏は、前回政権運営で誤った人選をしたと認識しており、今回は忠誠心と能力を重視して人材を選定。
 
 ・移行チームの役割と目標

 移行チームは、大統領の意向を忠実に実行することを使命とし、政権運営を妨害する人物を排除。

 ・トランプ・ジュニア氏の発言

 「大統領に忠実で能力のある人材を揃える」とし、既存のワシントン官僚機構に対抗する姿勢を強調。

 ・早期始動の意義

 従来の政府主導のプロセスを避け、独自の手法で移行チームを早期に整備することで、政策実行の基盤を確立。

 ・ワシントンD.C.への影響
この新たなアプローチは、既存の官僚機構や政治勢力への挑戦とみなされ、反発を招いている。

【引用・参照・底本】

GREATEST HITS, 11 — Trump transition team to ‘swamp rats’ looking to come back: ‘Go pound sand’WorldTribune 2024.12.26
https://www.worldtribune.com/greatest-hits-11-trump-transition-team-to-swamp-rats-looking-to-come-back-go-pound-sand/

フーシ派の攻撃に対するイスラエルの報復2024年12月28日 20:22

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【概要】

 2024年12月26日、イスラエルはイエメンの空港とインフラに対する攻撃を強化した。これは、フーシ派が過去14ヶ月間にわたりイスラエルの資産を標的にし続けたことに対する報復である。

 フーシ派は、イランの支援を受けるテロ組織であり、イスラエルに対してミサイル攻撃を行った。特に、過去1週間にわたってフーシ派は、テルアビブ地域に対して4回にわたって弾道ミサイルを発射し、住民を防空壕に避難させた。ほとんどのミサイルはイスラエルの防空システムにより迎撃されたが、一部は回避された。12月19日には、フーシ派のミサイルがイスラエル中央部の学校に着弾し、建物が崩壊したが、死傷者はなかった。その後、イスラエルはフーシ派の支配地域にある港やエネルギーインフラを攻撃した。

 12月21日には、フーシ派のミサイルがテルアビブ南部のジャッファにある公園に着弾し、16人が負傷した。これらの攻撃を受けて、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフはフーシ派の攻撃を止める決意を表明し、「イランの悪しき軸のテロリスト組織を断絶する」と語った。

 12月26日のイスラエルによる攻撃では、イエメンのサナア空港、ヘザヤズおよびラス・カティブの2つの発電所、アル・フダイダ、サリフ、ラス・カティブ港にある軍事インフラが標的となった。イスラエル軍は、フーシ派がこれらの施設を軍事活動に使用していると主張している。また、イスラエル軍の攻撃は、過去においても1,000マイル以上離れたイエメンのターゲットを攻撃する形で繰り返されており、特にエネルギーインフラが狙われている。

 フーシ派の指導者アブドゥル・マリク・アル・ホーシーは、イスラエルに対する攻撃を継続する意向を示し、「我々のイスラエルに対する作戦は続いており、効果的であり、イスラエルの侵略が止まるまで止まらない」と語った。
 
【詳細】
 
 イスラエルの攻撃は、フーシ派による連続的なミサイル攻撃に対する報復として行われた。フーシ派はイランの支援を受ける武装組織であり、イエメンの北西部を中心に広範な地域を支配している。イスラエルに対しては、特に最近の14ヶ月間、フーシ派が攻撃を繰り返してきた。これらの攻撃は、イスラエル国内の軍事施設や民間のインフラに対して行われ、しばしば深刻な被害を引き起こしている。

 フーシ派のミサイル攻撃

 フーシ派は、2024年12月19日から12月26日の間に、イスラエルのテルアビブ地域をターゲットにした弾道ミサイルを4回発射した。これらのミサイルは、イスラエルの防空システムによって大部分が迎撃されたが、一部は回避され、イスラエル国内に影響を与えた。特に、12月19日にはフーシ派のミサイルがイスラエルの中央部にある学校に着弾し、建物が崩壊したが、幸いにも死傷者はなかった。また、12月21日にはジャッファ(テルアビブ南部)にある公園にミサイルが落下し、16人が負傷した。これらの攻撃は、フーシ派がエネルギー資源や民間のインフラをターゲットにするだけでなく、テルアビブのような人口密集地を攻撃し、恐怖と不安を広げる目的があることを示している。

 イスラエルの報復攻撃

 フーシ派の攻撃に対するイスラエルの報復は、2024年12月26日に本格化した。この日、イスラエルはイエメンのサナア空港に対し、精密爆撃を行い、制御塔や到着ホールを破壊した。フーシ派は、この攻撃により3人が死亡し、国際連合の航空機の副機長が負傷したと主張している。この攻撃は、フーシ派によるミサイル攻撃が続く中で行われ、イスラエルはフーシ派の軍事インフラをターゲットにした。さらに、イスラエル軍はイエメン西部のヘザヤズとラス・カティブの発電所を攻撃し、軍事目的で使用されているとされるエネルギーインフラを破壊した。

 攻撃の背景とフーシ派の立場

 フーシ派はイランからの支援を受けており、イエメン内戦において政府軍と激しい戦闘を繰り広げている。フーシ派はまた、紅海を通る国際貿易の重要な航路を狙って商船を攻撃し、国際的な経済にも影響を及ぼしている。フーシ派の戦略は、単に地域的な戦争の一環としての目的だけでなく、パレスチナのガザ地区における戦闘を支援するために、イスラエルへの攻撃を行うことにもある。フーシ派は、自らの行動を「イスラエルに対する戦いの一環」と位置付けており、パレスチナのために戦っているという立場を取っている。

 フーシ派の指導者アブドゥル・マリク・アル・ホーシーは、イスラエルに対する攻撃の継続を強調し、「我々の作戦は効果的であり、止まることはない」と述べている。フーシ派の攻撃は、イスラエルの防衛力を試すとともに、パレスチナ問題に対するフーシ派の支持を示すために行われている。

 イスラエルの対応と意図

 イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフは、フーシ派の攻撃に対する強硬な対応を表明し、「イランの悪しき軸のテロリスト組織を断絶する」と宣言した。イスラエルは、フーシ派がイランの代理戦争の一環として活動していると見なしており、その活動を止めるために軍事力を行使している。イスラエル軍は、フーシ派のインフラ、特にエネルギー施設や軍事拠点をターゲットにした攻撃を続けており、これらの施設がフーシ派の軍事活動に使用されていると主張している。

 国際的な影響

 フーシ派とイスラエルの対立は、イエメン内戦や中東の広範な紛争と関連しており、国際的な影響を及ぼす可能性がある。フーシ派の活動は、紅海を通る国際貿易における安全保障問題を引き起こし、イスラエルとイランを巡る対立の一環として位置づけられている。また、フーシ派がパレスチナ問題を支持する立場を取ることで、イスラエルとその周辺国との関係がさらに複雑化している。

 このように、イスラエルのフーシ派に対する攻撃は、単なる報復にとどまらず、イランの影響を排除し、フーシ派を含む地域的な脅威に対する抑止力を強化する意図があると考えられる。
  
【要点】 
 
 1.背景: イスラエルはフーシ派による攻撃に対し報復を開始した。フーシ派はイランの支援を受けており、イスラエルに対するミサイル攻撃を14ヶ月間続けている。

 2.フーシ派のミサイル攻撃

 ・2024年12月19日から26日の間、フーシ派はテルアビブ地域をターゲットに弾道ミサイルを4回発射。
 ・ミサイルはイスラエルの防空システムによって大部分が迎撃されたが、一部は回避された。
 ・12月19日には学校にミサイルが着弾し、建物が崩壊したが死傷者はなし。
 ・12月21日、ジャッファの公園にミサイルが落ち、16人が負傷。

 3.イスラエルの報復攻撃

 ・12月26日、サナア空港の制御塔と到着ホールを攻撃。
 ・フーシ派は3人が死亡し、国連の副機長が負傷したと主張。
 ・ヘザヤズとラス・カティブの発電所、アル・フダイダ、サリフ、ラス・カティブ港の軍事インフラも攻撃。

 4.フーシ派の立場

 ・フーシ派はイラン支援を受け、パレスチナを支援する目的でイスラエルに攻撃を行っている。
 ・指導者アブドゥル・マリク・アル・ホーシーは攻撃の継続を表明し、「イスラエルの侵略が止まるまで続ける」と語る。

 5.イスラエルの意図

 ・ネタニヤフ首相は、フーシ派の活動を「イランの悪しき軸のテロリスト組織を断絶する」として強化する方針。
 ・イスラエル軍はフーシ派のインフラをターゲットにした攻撃を続け、特にエネルギー施設を狙っている。

 6.国際的な影響

 ・フーシ派の活動は、紅海の貿易路に影響を与え、国際的な安全保障問題を引き起こす。
 ・フーシ派がパレスチナを支持する立場を取ることで、イスラエルとその周辺国との関係が複雑化している。

【引用・参照・底本】

After 14 months, Israel punishes Houthis with strikes on airport, infrastructure in Yemen WorldTribune 2024.12.26
https://www.worldtribune.com/after-14-months-israel-punishes-houthis-with-strikes-on-airport-infrastructure-in-yemen/

米軍の兵力数に関する長年の隠蔽が明らかに2024年12月28日 22:37

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【概要】

 アメリカ合衆国国防総省は、イラクとシリアに展開しているアメリカ軍の人数について、これまでの発表と異なる実際の数を認めた。これまで国防総省はシリアに900人、イラクに2,500人の兵士がいると説明していたが、2024年12月に発表された内容では、シリアには2,000人以上、イラクには2,500人を超える兵士が駐留していることが明らかになった。

 国防総省の報道官であるパット・ライダー准将は、シリアに関しては、900人の基本駐留部隊に加えて、1,100人ほどのアメリカ軍関係者が短期間の任務で駐留していることを明らかにした。これらの部隊は、部隊の防護、輸送、メンテナンス、その他の運用上の必要に応じて展開しているが、その数は任務の必要に応じて増減してきたという。シリアの兵力の実態については、少なくとも2020年から公表されていた人数よりも多かったことが確認された。

 また、イラクにおける兵力についても、国防総省は2,500人以上の駐留を認めたが、具体的な人数については「運用上の安全や外交的な配慮のため、さらに詳細な情報は提供できない」としている。シリアの兵力についての虚偽報告は、トランプ政権時代の2019年にも問題となっており、当時のシリア担当特使ジェームズ・ジェフリーは、兵力数を隠すために様々な手段を取っていたことを認めている。

 シリアにおける兵力増加については、近隣諸国、特にイラクとの関係に配慮した結果、正確な情報公開が避けられてきたと伝えられている。イラクでは、アメリカ軍の駐留に反対する政治勢力が強く、アメリカ軍の実際の駐留数が公表されれば、イラク政府内で更なる反発を招く恐れがある。イラクのスダニ首相は、アメリカ軍の撤退を求める圧力を受けており、今年初めにはアメリカの空爆に対して軍の撤退を要求していた。両国は9月に合意に達したが、アメリカ軍は引き続き「二国間安全保障パートナーシップ」としてイラクに駐留することとなった。
 
【詳細】
 
 アメリカ合衆国国防総省は、シリアとイラクに駐留しているアメリカ軍の人数に関して、これまでの公表と実際の数に乖離があったことを認めた。この事実が公表されたのは2024年12月であり、これにより、シリアおよびイラクにおけるアメリカ軍の兵力数に関する長年の虚偽の報告が明るみに出た。

 シリアにおけるアメリカ軍の人数

 これまで、アメリカ合衆国はシリアに駐留している兵力数を約900人と公表していたが、国防総省はこの数が虚偽であり、実際には2,000人以上の兵士がシリアに展開していると認めた。さらに、シリアには900人の「基本駐留部隊」に加えて、1,100人ほどの「一時的な支援部隊」が展開していることが発表された。この支援部隊は、部隊の防護、輸送、メンテナンス、またはその他の急速に発生した作戦要求に対応するためにシリアに派遣されており、任務の必要に応じて短期間で派遣されることが多い。

 これらの一時的な支援部隊の数は、シリアでの状況が変化するにつれて増加してきた。特に、シリア国内での治安状況が悪化し、アメリカ軍の駐留部隊への脅威が高まったため、支援部隊の規模は拡大している。この実態は、少なくとも2020年以降の公表されていた数値よりも大幅に多かった。

 イラクにおけるアメリカ軍の人数

 イラクについても、アメリカ合衆国は長年にわたり、2,500人の兵士が駐留していると公表していたが、国防総省はこの数が誤りであり、実際には2,500人以上の兵士が駐留していることを認めた。ただし、イラクに駐留している正確な人数については、「運用上の安全」や「外交的配慮」を理由に、さらに詳細な情報は公開されていない。国防総省は、「追加の一時的支援部隊」がイラクにも展開していることを認めており、これらの部隊はシリアと同様に、部隊の防護や輸送などの任務に従事している。

 シリアとイラクにおける虚偽報告の背景

 シリアにおける兵力数に関する虚偽の報告は、少なくともトランプ政権時代から続いていた。2019年、トランプ大統領がシリアから全軍撤退を命じた際、最終的に200人規模の兵力のみをシリアに残す決定がなされたが、その後シリアに派遣された兵力はその数を大きく超えていた。シリアの当時のアメリカ合衆国シリア担当特使ジェームズ・ジェフリーは、シリアにおけるアメリカ軍の兵力数について、政府高官に対して「常に誤魔化しを使って、兵力数を明確にしないようにしてきた」と告白しており、その隠蔽の背景には、シリアやイラクの政治状況、特に隣国イラクとの関係が影響していた。

 イラクでは、アメリカ軍の駐留に強い反発があり、国内の政治勢力や民間人の中で、アメリカ軍の撤退を求める声が高まっている。特に、アメリカ軍の空爆や軍事介入が引き起こした死傷者の問題や、イラクの主権を侵害しているとする批判が強くなっている。このため、アメリカはイラク政府や政治家が国内での反発を恐れていることを理由に、シリアでの兵力数の虚偽報告を行っていた可能性が高い。

 イラクのモハメド・シア・アル・スダニ首相は、アメリカ軍の駐留に反対する政治的圧力を受けており、今年初めにはアメリカによる空爆に抗議し、アメリカ軍の撤退を要求していた。これに対し、イラク政府はアメリカとの交渉を行い、最終的に両国は「二国間安全保障パートナーシップ」に基づき、アメリカ軍がイラクに駐留し続けることを合意した。この合意では、アメリカ軍の駐留を「反ISIS連合」の任務終了後も維持することが明記されており、イラク国内での反アメリカ感情がさらに高まる可能性がある。

 結論

 国防総省の今回の発表は、シリアおよびイラクにおけるアメリカ軍の兵力数に関する長年の隠蔽が明らかになったことを示しており、今後、アメリカ合衆国の中東政策、特にイラクとの関係に大きな影響を及ぼす可能性がある。イラク政府は、アメリカ軍の駐留について国内での反発を抑えるため、さらに慎重な対応を迫られることになるだろう。
  
【要点】 
 
 1.シリアにおけるアメリカ軍の人数

 ・アメリカはこれまでシリアに900人の兵士が駐留していると公表していたが、実際には2,000人以上が駐留していた。
 ・900人の「基本駐留部隊」に加え、1,100人ほどの「一時的支援部隊」も展開している。
 ・支援部隊は部隊の防護、輸送、メンテナンス、その他の急速に発生した作戦要求に対応するために短期間で派遣される。
 ・支援部隊の数は、シリアでの治安状況の悪化に伴い増加してきた。

 2.イラクにおけるアメリカ軍の人数

 ・アメリカはイラクに2,500人の兵士が駐留していると公表していたが、実際には2,500人以上が駐留している。
 ・イラクにも「一時的支援部隊」が展開しており、シリアと同様に部隊の防護や輸送などを行っている。

 3.虚偽報告の背景

 ・シリアにおける兵力数の虚偽報告は、トランプ政権時代(2019年頃)から続いていた。
 ・シリアの兵力数について、アメリカ政府高官はその数を隠すために「誤魔化し」を使っていた。
 ・イラク政府や政治勢力の反発を避けるため、実際の駐留人数を公表しなかった。

 4.イラクでの反発と外交的配慮

 ・イラクではアメリカ軍の駐留に強い反発があり、特にアメリカの空爆や軍事介入に対する批判が高い。
 ・今年初め、イラクのスダニ首相はアメリカ軍の撤退を求め、交渉が行われた。
 ・結果、アメリカ軍は「二国間安全保障パートナーシップ」の下で駐留を継続することが決定された。

 5.影響

 ・アメリカ合衆国の中東政策、特にイラクとの関係に大きな影響を及ぼす可能性がある。
 ・イラク政府は国内での反アメリカ感情を抑えるため、慎重な対応が求められる。

【引用・参照・底本】

Pentagon Admits It’s Been Lying About the Number of Troops in Both Iraq and Syria ANTIWAR.com 2024.12.23
https://news.antiwar.com/2024/12/23/pentagon-admits-its-been-lying-about-the-number-of-troops-in-both-iraq-and-syria/

「パキスタン・ストリーム・ガスパイプライン(PSGP)」プロジェクト2024年12月28日 23:30

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【概要】

 パキスタンのエネルギー大臣アワイス・レガリがロシアが資金提供し建設を希望する「パキスタン・ストリーム・ガスパイプライン(PSGP)」プロジェクトに関する南アジア諸国の参加可能性について述べたことに対する批判的な視点を提供している。レガリは、交渉がまだ完了していない理由の一つとして、他の南アジア諸国がプロジェクトに参加する可能性を挙げている。しかし、この記事では、この考えが地理的理由から実現が難しいと指摘されている。

 インドはすでにLNGターミナルや精製所、既存のパイプラインインフラを持っており、パキスタンとのエネルギー協力には政治的な障害がある。また、パキスタンはアフガニスタンとしか国境を接しておらず、アフガニスタンとの関係は緊張している。さらに、ロシアはアフガニスタンを経由してパキスタンやインド向けの石油・ガス輸出のためのパイプライン計画を持っており、これがPSGPとは異なるルートとして機能する可能性がある。

 ネパール、バングラデシュ、ブータンにPSGPを拡張することは、インドを通過する必要があるため、政治的・経済的に非現実的であり、モルディブやスリランカは島嶼国家であるため、他の南アジア諸国が参加する可能性は低い。したがって、レガリの発言は事実とは異なり、パキスタンとロシアの間に存在する可能性のある深刻な違いを隠すための言い訳であるとする見解が示されている。

 PSGPが他国に拡大することは現実的ではなく、パキスタンとロシアの間で価格やアメリカの圧力といった政治的障害が存在する可能性を指摘している。最終的には、アメリカの影響力がパキスタンの軍事・政治エリートに対して強いため、PSGPの実現が難しいと結論づけている。
 
【詳細】
 
 パキスタンのエネルギー大臣アワイス・レガリの発言に対して批判的な視点が示されている。レガリは、ロシアが支援し建設を希望する「パキスタン・ストリーム・ガスパイプライン(PSGP)」プロジェクトについて、南アジア諸国が参加する可能性を示唆した。しかし、その可能性が地理的・政治的な理由から非常に低いと指摘されている。

 1. インドの現状と政治的障害

 インドはすでに、液化天然ガス(LNG)のターミナルや精製所、パイプラインインフラを整備しており、エネルギーの供給網が既に確立されている。これにより、インドは自国内でのエネルギー供給を確保しているため、PSGPのような新たなガスパイプラインに対する需要は低いと考えられる。さらに、インドとパキスタンは長年にわたる政治的な対立を抱えており、エネルギー協力を進めるための政治的意志が存在しない。したがって、インドがPSGPに参加する可能性は極めて低い。

 2. アフガニスタンとパキスタンの関係

 パキスタンはアフガニスタンと国境を接しており、アフガニスタンを経由してロシアからのエネルギー輸送が行われる可能性がある。このため、アフガニスタンはPSGPのルートとして重要な位置を占めるが、両国の関係は政治的に緊張している。アフガニスタンとの安定した協力が前提となるため、ここでも大きな障害が存在する。

 3. 他の南アジア諸国の参加は非現実的

 ネパール、バングラデシュ、ブータンといった南アジア諸国にPSGPを拡大することは、インドを通過しなければならないため、政治的・経済的に非現実的である。これらの国々はインフラが整備されておらず、インドを通過することに関して多くの障害がある。また、モルディブやスリランカは島嶼国家であるため、PSGPのような大規模な陸上パイプラインを利用することは不可能である。

 4. ロシアのアフガニスタン経由計画

 ロシアはすでにアフガニスタンを経由してパキスタン向けの石油・ガス輸出パイプラインを計画しているとされており、これによりロシアからパキスタンへのエネルギー供給が実現する可能性がある。この計画が実行されると、PSGPとは別のルートでエネルギーが供給されることになる。

 5. アメリカの影響と制裁

 アメリカがパキスタンに対して持つ影響力にも触れている。アメリカは、パキスタンがロシアとのエネルギー協力を進めることを阻止するために制裁を加える可能性があり、これがPSGPの進展に大きな影響を与えると考えられる。特に、パキスタンが自国の高価なLNGを輸出することを優先する場合、ロシアからの安価なガスを受け入れることに対して抵抗がある可能性がある。このような状況では、PSGPの実現は困難になる。

 6. 政治的障害と価格問題

 パキスタンとロシアの間での価格交渉や、アメリカからの政治的圧力が、PSGPの進展を遅らせている可能性がある。特に、価格問題やアメリカの制裁が、両国間での合意形成を妨げていると考えられている。パキスタンは安価で信頼性の高いエネルギー供給を必要としているが、アメリカの影響力がそれを実現することを難しくしている。

 結論

 パキスタンとロシアの間にある政治的・地理的な障害が、PSGPプロジェクトの実現を妨げる大きな要因であると指摘されている。特に、インドとの関係やアメリカの影響力が、他の南アジア諸国の参加を実現不可能にしていると述べられている。また、価格交渉や制裁問題が進展を遅らせていることも強調されており、PSGPが将来的に実現するかどうかは依然として不確実であると結論付けられている。
  
【要点】 
 
 ・インドのエネルギーインフラ: インドはすでにLNGターミナルやパイプラインが整備されており、PSGPに参加する必要がない。また、インドとパキスタンの間には政治的な対立があり、エネルギー協力は難しい。

 ・アフガニスタンとの関係: パキスタンとアフガニスタンは国境を接しており、アフガニスタン経由でロシアのエネルギーを輸送する可能性があるが、両国の関係は緊張している。

 ・他の南アジア諸国の参加は非現実的: ネパール、バングラデシュ、ブータンはインフラが整備されていないため、インドを通過する必要があり、参加は現実的でない。また、モルディブやスリランカは島嶼国家であり、パイプラインの利用が不可能。

 ・ロシアの別ルート計画: ロシアはアフガニスタン経由でパキスタン向けの石油・ガスパイプラインを計画しており、PSGPとは別のルートでエネルギー供給が可能。

 ・アメリカの影響と制裁: アメリカはパキスタンに対して制裁を加える可能性があり、これがPSGPの進展を妨げる要因となる。また、パキスタンは自国の高価なLNGを輸出したいため、ロシアからの安価なガス受け入れに抵抗がある。

 ・価格交渉と政治的障害: パキスタンとロシア間で価格や制裁に関する交渉が障害となっており、PSGPの進展に影響を与えている。

 ・結論: 地理的・政治的障害やアメリカの影響により、PSGPが他の南アジア諸国に拡大する可能性は低く、プロジェクトの実現は依然として不確実である。

【引用・参照・底本】

Fact Check: Other South Asian States Are Unlikely To Join The Pakistan Stream Gas Pipeline Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.28
https://korybko.substack.com/p/fact-check-other-south-asian-states?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153707156&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email