中国:自国開発によるC919ジェット機、国際線運航2025年01月07日 21:30

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【概要】 
 
 中国の自国開発によるC919ジェット機が2025年1月1日に上海-香港間で初めての国際線として運航を開始した。この便は、Shanghai Hongqiao国際空港を午前8時21分に出発し、157人の乗客を乗せて香港に向かい、C919にとって初の海外便となった。中国では、上海と香港間の路線は「国際線」に分類されている。

 C919の運航開始は、香港がC919の商業運航が行われる9都市目の都市となり、中国本土外で初めての都市として重要な意味を持つ。中国東方航空は、この便を定期運航することにより、香港を重要な交通ハブとして、外国の利用者にもC919の性能を知ってもらう機会を提供するとしている。

 商用機としての展開に関して、国有の中国商用飛機有限公司(Comac)のマーケティングセンター副総経理である楊陽氏は、2025年中にC919の欧州認証を取得する予定であり、2026年には中国と東南アジア間での商業運航を開始することを目指していると述べている。

 C919は、ボーイング737やエアバスA320と競合することを目指しており、航空業界ではその技術や開発経緯が注目されている。開発は2008年に始まり、初のプロトタイプは2015年11月に完成した。2017年には初飛行を行い、2022年9月には中国民用航空局(CAAC)から飛行証明を取得した。

 ただし、C919には課題もある。特にエンジンには西側企業の技術が使用されており、40%の部品が外国から輸入されている。また、LEAP-1CエンジンはアメリカのGE航空とフランスのサフラン社が共同で製造したものである。

 運航開始からの出来事として、2023年2月1日に上海-合肥間のフライトでエンジンのトラブルが発生し、上海を出発したC919は到着前に北京首都国際空港に緊急着陸した。エンジンのスラストリバーサー(推力反転装置)の故障が原因であり、これが航空機の安全性に対する懸念を引き起こしたが、C919はその後、2023年5月に初めて商業運航を果たし、2024年1月からは上海-北京路線が定期運航を開始している。

 C919では、中国製のCJ1000Aエンジンが予定通りに導入されることが挙げられる。このエンジンは、LEAP-1Cよりも高い推力を持ち、C919の将来的な自立性を高めると期待されている。CJ1000Aは2025年に使用開始予定であり、これにより西側技術の依存が解消される見込みだ。

 また、C919は中国国内市場にとどまらず、2023年に終了したロシアとのCR929共同開発プロジェクトに続く、国際市場進出を視野に入れている。C929は、A330やB787と競う長距離型広胴型双発機であり、今後数年内にその開発が本格化する予定である。

【詳細】

 C919は、中国の商用航空機として、ボーイングの737型機やエアバスのA320型機と競争することを目指して開発された自国製のナローボディ機である。この機体は、上海の国有企業である中国商用飛機有限公司(Comac)によって開発され、2008年にプロジェクトが開始された。C919は、民間航空機市場において中国の独立性を高め、既存の航空大手と対抗することを目的としており、その開発には数多くの挑戦と努力が注がれてきた。

 1. 開発経緯と技術的特徴

 C919の開発は、2008年に始まり、最初のプロトタイプが2015年11月に公開された。この機体の初飛行は2017年5月に行われ、その後、2022年9月に中国民用航空局(CAAC)からの飛行証明を取得した。これにより、商業運航に向けた法的な基盤が整った。C919は、座席数168席(最大190席)で、航続距離は4,075〜5,555kmとされており、主に中距離の商業便をターゲットにしている。

 C919の設計は、軽量化と燃費効率の向上を目的としており、機体に使用される素材としては、カーボンファイバーやアルミニウム合金が多く取り入れられている。また、最先端のエンジンと電子機器が搭載されており、効率的な運航を支援する。

 ただし、このジェット機は「自国製」として宣伝されているものの、実際には40%の部品が外国から調達されており、特にエンジン技術が西側の企業に依存している。C919に搭載されているLEAP-1Cエンジンは、アメリカのGE航空とフランスのサフランが共同開発したエンジンであり、これは中国独自の技術ではない。

 2. 商業運航と国際展開

 C919の初商業運航は2023年5月に上海-北京間で行われ、2024年1月には定期運航が開始された。これにより、C919は中国国内での運航を実現し、その商業運航の信頼性を確保しつつある。しかし、国際市場への進出には、さらなる認証や安全性の確認が必要である。

 2025年1月1日には、C919が初めての国際便として上海-香港間での定期運航を開始した。この便(MU721便)は157人の乗客を乗せて出発し、香港がC919の商業運航が行われる9都市目の都市となった。香港は国際的な交通ハブとしての重要性を持ち、C919にとっては初めての「海外」運航となるため、大きな意味を持つ。また、C919は香港を皮切りに、今後東南アジアやヨーロッパ市場に進出する計画がある。

 Comacは2025年中にC919の欧州認証を取得し、2026年には東南アジア市場での運航を開始することを目指している。この段階で、C919の性能が他国の規制や市場ニーズに適応できるかが、今後の成長の鍵となる。

 3. 安全性と課題

 C919は開発段階から、技術的な課題や安全性の問題にも直面してきた。特に、2023年2月1日に発生した上海-合肥間のフライトでのエンジントラブルは、C919に対する信頼性に疑問を投げかけた。エンジンのスラストリバーサー(推力反転装置)が作動しなかったため、フライトは予定を短縮し、北京首都国際空港に緊急着陸する事態となった。しかし、この問題は一度の事故であり、その後の運航では大きなトラブルは報告されていない。

 C919の課題は、エンジンに関する依存度の高さにもある。現在搭載されているLEAP-1Cエンジンは、西側の技術に依存しており、中国独自の技術によるエンジンの搭載が求められている。中国は、CJ1000Aエンジンという自国開発のエンジンを2025年にC919に搭載する予定であり、これにより技術的独立を達成することを目指している。CJ1000Aは、LEAP-1Cよりも高い推力を持ち、中国の航空機市場における競争力を一層強化することが期待されている。

 4. 国際市場の展望

 C919が本格的に国際市場に進出するためには、欧州連合やアメリカを含む他の国々での認証取得が必要であり、これが成功すれば、C919はボーイング737やエアバスA320と競り合うことができると考えられている。また、C919の商業運航における成功は、中国国内での航空機市場の拡大にも寄与し、さらなる生産能力向上や技術革新を促進する可能性がある。

 一方、C919が国際市場において広く受け入れられるかどうかは、信頼性、安全性、運航コストといった要素が大きな鍵となる。中国は、C919の技術的成熟を進めるとともに、より強固なサプライチェーンと顧客基盤を築く必要がある。これにより、C919は世界市場で競争力を持つ航空機として、将来的に重要な役割を果たすことが期待されている。

 5. その他の動向

 C919は、中国国内の航空業界における自立性を高める一方で、国際的な競争に挑む大きな一歩を踏み出した。しかし、さらに遠い未来において、C929という長距離型広胴型双発機が登場し、エアバスA330やボーイング787といった長距離機と競り合うことが計画されている。C929は、C919よりもさらに高い技術的要求がされることから、開発には時間がかかると予想されている。

 また、C919はロシアとのCR929プロジェクトが破談になった後、中国独自のC929開発へとシフトした。C929は、C919よりも長距離の輸送をターゲットにしており、今後数年でその開発が進む予定である。

 C919の成功は、中国の航空機製造業の成長と国際市場での影響力を高めるための重要な基盤となるだろう。

【要点】

 1.C919とは

 ・中国商用飛機有限公司(Comac)によって開発されたナローボディ商用航空機。
 ・ボーイング737やエアバスA320と競争を目指す。
 ・2008年に開発開始、2015年にプロトタイプ公開、2017年に初飛行。

 2.技術的特徴

 ・座席数:168〜190席、航続距離:4,075〜5,555km。
 ・軽量化と燃費効率向上のため、カーボンファイバーやアルミニウム合金を使用。
 ・エンジン:アメリカのGE航空とフランスのサフラン共同開発のLEAP-1Cエンジン。
 ・現在、約40%の部品が外国から調達されており、特にエンジン技術に依存。

 3.商業運航

 ・2023年5月に中国国内で初商業運航開始(上海-北京間)。
 ・2024年1月に定期運航が開始。
 ・2025年1月1日には上海-香港間で初の国際便運航。
 ・今後、東南アジアやヨーロッパ市場への進出計画。

 4.安全性と課題

 ・2023年2月、エンジンのスラストリバーサー問題で緊急着陸。
 ・自国製エンジンの開発(CJ1000A)を進めており、2025年に搭載予定。

 5.国際市場展開

 ・欧州認証取得を目指し、2025年には東南アジア市場に進出予定。
 ・C919の成功が、中国の航空機市場競争力を高めると期待。

 6.C929計画

 ・長距離型広胴型双発機(C929)の開発計画。
 ・エアバスA330やボーイング787と競合予定。
 ・C919よりも高い技術的要求がされる。

 7.ロシアとの提携

 ・CR929プロジェクトが破談となり、C929は中国独自の開発にシフト。
  
【引用・参照・底本】

China’s homemade C919 jet takes to global skies ASIATIMES 2025.01.05
https://asiatimes.com/2025/01/chinas-homemade-c919-jet-takes-to-global-skies/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=f14e7011c8-DAILY_06_01_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-f14e7011c8-16242795&mc_cid=f14e7011c8&mc_eid=69a7d1ef3c

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