【桃源閑話】二階からコメ一粒

　「コメ2週連続値下がり」と、トップページにゴシックでの見出し。

　5キロ当たりの平均価格が4223円で、前週と比較し37円安くなったというのだ。備蓄米市場に拡大、という見出しも踊る。しかし、国民は37円や20円安を求めているのだろうか。

　後述するが、高値に至る趨勢を観る。どうもメディアの報道姿勢は、まさに国民の生活実感から乖離した、ピント外れの報道と言わざるを得ないのではないだろうか。この見出しを掲げたメディアは、以下の点で厳しく批判されるべきであろう。

　・国民の生活感覚との著しい乖離

　25円とか37円安いと報道している。国民は安いのにこしたことはないが、しかし、何かが的を外れていないか。5kgで4223円という価格が2週連続で値下がりしたとしても、その値下がり幅が数十円程度であれば、一般家庭の家計に与える影響は微々たるものであろう。メディアは、あたかも大幅な値下げであるかのように報じることで、国民の金銭感覚を愚弄しているとさえ言えないか。物価高騰が続く中で、国民が本当に求めているのは、今や数千円単位、あるいはそれ以上の実質的な値下げであり、数十円程度の変動を「値下がり」として大きく取り上げる感覚は、完全に麻痺しているとしか思えない。

　・「高値覚え、安値覚えではない」ではないが

　株価変動の「高値覚え、安値覚え」で論じるような訳にはいかない。食料品の価格変動を同列に語ることはできない。食料品は日々の生活に不可欠なものであり、価格の絶対値が生活に直結する。メディアは、現在のコメの価格が、過去の「安値:安定した価格」と比べていかに高水準であるかという歴史的視点を完全に欠落させている。かつて5kgあたり1,924円であったコメが、今や4,223円で「値下がり」と報じられるのは、極めて異常な事態である。この価格水準自体が、国民にとっては「高値」であり、その高値からのわずかな値下がりを強調することに何の意味があるのだろうか。

　・過去の価格との比較の欠如

　小泉進次郎農相に代わってから、線香花火の様なパフォーマンスの価格に国民は長蛇の列であった。斯様な状況を知ってか知らでか、メディアが本来行うべき比較報道を怠っていることを浮き彫りにする。国民が群がったとされる5kgあたり2000の価格と、現在の4,223円という価格を比較することなく、単に「値下がり」という一面だけを強調し、切り取る報道は、情報の偏向と読者の誤導に他ならない。

　メディアは、当時の価格水準と現在の価格水準を明確に示し、いかに現在の価格が高い水準にあるのか、そしてわずかな値下がりがどれほど意味のないものなのかを伝えるべきである。

　・「備蓄米市場に拡大」という本質的な背景への言及不足

　見出しに「備蓄米 市場に拡大」とあるにもかかわらず、その背景や影響について深掘りしている形跡がない。備蓄米の市場放出がなぜ行われているのか(需給調整、価格抑制策・随意契約の問題(この件については愛知県の大村知事が問題提起をしているなど）、それが長期的にコメ価格にどのような影響を与えるのか、そしてそれが如何に国民の食卓にどう反映されてくるのか、といった本質的な情報提供が不足している。単なる価格の騰落だけでなく、その背景にある政策や市場メカニズムに言及することで、読者はより多角的に情報を理解することができるだ。

　・何処に此のメディアの視点はあるのだろうか

　結局のところ、この報道からメディアがどのような視点を持っているのか、全く読み取ることができない。国民の生活の苦しみに寄り添う視点もなければ、食料価格の構造的な問題に切り込む視点もない。ただ単に数字の変動を表面上なぞるだけの、薄っぺらい報道に終始していると言わざるを得ない。

　この「コメ2週連続値下がり」という見出しとその報道は、国民の生活実感と乖離し、過去の経緯や本質的な背景を無視した、極めて不適切かつ無責任なものである。メディアは、表面的な価格変動を報じるだけでなく、国民の生活に根差した視点、歴史的背景、そして政策的な影響まで含めて、多角的かつ深掘りした情報を提供すべきである。そうでなければ、メディアは国民からの信頼を失い、単なる「情報」の羅列に過ぎなくなってしまうか、政府発表の垂れ流しか、ヨイショ記事に陥るだろう。

　米価の推移

　・農林水産省による小売米価調査の結果、2020年から2025年にかけての日本のコメ(5kgあたり)の小売価格は上昇傾向にある。特に2023年後半から2024年にかけては、需給ひっ迫や生産コストの増加を背景に、価格が高騰した。直近の2025年5月時点では、平均価格は4,200円台で推移しており、政府備蓄米の放出などにより一部で安価な米が流通する動きも見られる。

　・日本のコメ5kgあたり小売価格の推移と直近の価格(時系列)

　以下に、日本のコメ5kgあたりの小売価格の過去5年間の推移と直近の価格を時系列でまとめる。

　☞過去5年間の推移(2020年〜2024年)

　2020年頃

　一般的に、コシヒカリなどの主要銘柄で2,300円前後、その他の銘柄で2,000円前後が相場とされていた。

　2021年

　この時期の明確な平均価格データは見当たらないが、後述の2022年の価格と比較すると、比較的安定していたと考えられる。

　2022年

　農林水産省のPOSデータによると、2022年12月の小売価格平均は5kgあたり1,924円であった。

　銘柄によっては、2022年8月にコシヒカリの最安値が2,125円を記録したという情報もある。

　2023年

　2023年9月の平均価格は2,188円であった。

　2023年後半(10月以降)から価格上昇が顕著になり始めた。

　2023年10月: 2,225円(前月比 +38円)

　2023年11月: 2,279円(前月比 +54円)

　2023年12月: 2,311円(前月比 +32円)

　2024年
　
　価格高騰が本格化した。

　2024年1月: 2,283円

　2024年2月: 2,300円

　2024年3月: 2,306円

　2024年4月: 2,347円

　2024年5月: 2,403円

　2024年6月: 2,483円

　2024年7月: 2,602円

　2024年8月: 2,772円

　2024年9月: 平均価格は3,152円に達し、2023年9月と比較して約44%上昇した。

　2024年産新米の店頭価格は、5kgあたり3,500円～4,000円が中心となり、前年同時期から1,000円～1,500円程度上昇した。

　直近の価格(2025年)

　2025年1月下旬: スポット取引価格(60kgあたり)が45,391円を記録するなど、卸売価格も高騰した。

2025年2月下旬: スポット取引価格(60kgあたり)が46,780円を記録した。

2025年4月: 主要銘柄であるコシヒカリの5kgあたりの最高値は4,632円を記録した。

　2025年5月7日発表(4月21日〜27日調査分)

　全国のスーパーで販売されたコメの5kgあたりの平均価格は4,233円であった。これは17週連続で最高値を更新したものである。

　2025年5月20日発表(5月5日からの週調査分)

　5kg精米の平均販売価格は4,268円で、前週より54円高くなった。

　2025年5月下旬〜6月上旬

　政府が備蓄米を市場に放出する方針を決定し、一部の大手スーパー(例: バロー、西友、楽天など)では5kgあたり2,160円(税込)程度の価格で政府備蓄米が販売され始めている。これは通常の小売価格より大幅に安い価格設定である。

　まとめ

　日本のコメの小売価格は、ここ数年で顕著な上昇トレンドにある。特に2023年後半から2024年にかけての価格高騰は、消費者の家計に大きな影響を与えている。直近では5kgあたり4,200円台が平均的な価格となっているが、政府による備蓄米の放出など、価格抑制に向けた動きも出てきている。ただし、これらの措置が市場全体の価格に与える影響は、今後の状況次第で変動する可能性がある。

典拠:農林水産省 (MAFF)POSデータ・総務省 統計局・日本農業新聞 / JA全農

農林水産省における米のPOSデータ活用

　農林水産省は、全国のスーパーマーケットから提供されるPOSデータをもとに、米の小売価格や販売数量の推移を週次で公表している。これは、国民の食生活に直結する米の価格動向を把握し、政策立案や情報提供に役立てるために非常に重要なデータとなっている。特に、消費者が実際にスーパーで購入する際の価格を反映しているため、国民の「生活感覚」に近い情報として注目される。


　孫引きになるが、「国に九年の蓄え無くば不足なりと曰う、六年の蓄え無くば急なりと曰う、三年の蓄え無くば国その国に非ずと曰う」。

　つまり、「三年分の蓄えが無い場合は、飢饉が続けば餓死者がたくさん出て人民が離散してしまい、もはや国家として成り立たないので『国に非ず』というのである」とる(『松平定信』藤田 覚著 1993年7月25日発行 中公新書 51-52頁)

　
　日本の備蓄米の推移とコメの消費量について

　日本の備蓄米の推移

　政府は、食料安全保障の観点から、米の供給が不足する事態に備えて「政府備蓄米」を保有している。適正備蓄水準は100万トン程度とされている。毎年約20万トンを買い入れ、5年ほど保有した後に飼料用などとして売却するローテーションで管理されている。

　近年、特に2023年産米の作柄悪化や、世界的な穀物価格高騰の影響を受け、2024年に入って政府備蓄米の市場への放出が複数回行われている。

　・適正備蓄水準: 100万トン程度(6月末時点)

　これは、10年に1度の不作(作況92)や、通常程度の不作(作況94)が2年連続した場合にも国産米で対応できる水準とされている。

　・運用方法: 毎年20万トン程度を買い入れ、5年程度保有した後に飼料用等として売却。

　・最近の動き

　・2023年産米の供給不足が顕在化し、2024年に入って政府備蓄米の放出が実施された。

　・2024年4月: 最初の放出が発表され、21万トンが市場に放出された。

　・2024年5月: 追加で10万トンの放出が発表され、合計で31万トンが放出されることになった。

　・これにより、政府備蓄米の在庫量は、目標の100万トンから一時的に70万トン程度(最初の21万トン放出後)に減少し、さらに放出された場合は60万トン台にまで減少すると報じられている。

　・これらの放出は、2023年産米の作柄が予想を下回ったことや、民間在庫が減少傾向にあることへの対応である。

出典:

農林水産省「米の備蓄運営について」関連資料(適正備蓄水準や運用方法について)
農林水産省の記者会見概要や報道発表資料(直近の備蓄米放出量や在庫状況について)
　例: 江藤農林水産大臣記者会見概要(2025年4月11日会見など)
　例: 令和6年産米の契約・販売状況、民間在庫の推移及び米穀販売事業者における販売数量・販売価格の動向について(令和7年4月末現在)など

　具体的な過去10年間の毎年の期末在庫量のような詳細な時系列データは、農林水産省の「食料需給表」や関連統計資料に記載されていることがあるが、一般に公開されている資料では「適正備蓄水準」と直近の放出量に関する情報が中心となる。

　日本のコメ消費量の推移(ここ10年ほど)

　日本のコメの消費量は、長期的に減少傾向にある。食生活の洋風化、人口減少、高齢化などが主な要因である。

　(1)一人当たりの年間消費量

　1962年度のピーク時には年間118.3kgであったが、2022年度には年間50.9kgまで減少している。

　過去10年間の具体的なデータは、農林水産省の「食料需給表」で確認できるが、傾向としては継続的な減少が見られる。

　(2)主食用米の総需要量

　・2010年度(平成22/23年)の820万トンから、2020年度(令和2/3年)には704万トンへと、約14%減少している。

　・近年は、一人当たりの消費量の減少度合いは緩やかになっているものの、人口減少の影響が加わることで、年間10万トン程度の需要減が続いているとされている。

　・農林水産省が2025年3月26日に発表した基本指針では、2024/2025年度の食用米の需要量を前年比31万トン減の674万トンと見込んでいる。

出典:

農林水産省「お米の1人当たりの消費量はどのくらいですか。」
農林水産省「米の消費及び生産の近年の動向について」(2024年8月27日資料)
農林水産省「食料需給表」

これらの資料では、年度ごとの主食用米の供給量や消費量の実績、一人当たりの消費量などが詳細に掲載されている。

　ここ10年間の日本のコメ市場は、国民の消費量が減少傾向にある一方で、政府は食料安全保障のために一定量の備蓄米を維持してきた。しかし、2023年産米の作柄悪化を受け、2024年には市場価格の安定化と供給不足への対応として、政府備蓄米が異例の規模で市場に放出される事態となっている。これは、消費量の減少傾向とは異なる、短期的な需給バランスの変動が市場に大きな影響を与えていることを示している。
　
　適正備蓄水準100万トン程度は、年々減少傾向にあるとはいえ、674万トンの消費量なのである。天明の一揆・打ちこわしが生んだ松平定信の「政の本は食にある」、「人食にあらざれば生ぜず、故に農業は政治の本なり」などの心構えからいうと、「三年の蓄え無くば国その国に非ず」の状況なのである。

　安易に輸入米などと口走るが、また「「台湾有事は日本有事。すなわち日米同盟の有事でもある。この認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない」(2021年12月1日に台湾のシンクタンクが主催したオンラインフォーラムでの安倍晋三元首相の発言)などというが、全く錯誤も甚だしい。「備えあれば患えなし」というが、この日本、"有事→パニック→餓死"と繋がるのだ。米国からの輸入米？四方海に囲まれた日本、届くことは無い。高性能ミサイルに狙われるのを承知で日本に運ぶ理由はない。

　誇大妄想の上、有事の備えなど、なにも出来てはいないのだ。東日本震災時の原発事故、国民保護法制が機能すべき状況であったのに、何もせず拱手傍観に等しかったのだ。米国軍艦でさえ安全な四国沖の方に避難してしまった。

　「トモダチ作戦」(Operation Tomodachi)」では、支援を放棄し米海軍艦船が一時的に被災地沖から離れ、四国沖などより南の海域に移動した。また「トモダチ」なのに、トモダチ作戦に参加した一部の米兵は、放射線被曝による健康被害を訴え、東京電力などを相手取った訴訟を起こしている。

　日本は壊れやすいガラスの城に住む。そして、何よりも国民に逃げ場も無いのだ。有事など白昼夢であり、平和でなければ生きられないのだ。

　戯言いう政治家は去れ、である。

　有事を云うなら、After you!

【引用・参照・底本】

　コメ 2週連続値下がり 中日新聞 2025.06.10

【概要】

　中国・米国間の経済貿易協議メカニズムの初回会合開催と貿易状況

　新華社通信の報道によると、中国と米国の経済貿易協議メカニズムの初回会合が月曜日にロンドンで開幕した。中国のHe Lifeng副首相(中国共産党中央政治局委員)が米国代表団と会合に出席した。

　中国外務省の林剣報道官は月曜日、中国副首相のHe Lifengと米国の高官がロンドンで会合することについて、中国側がこの会合の発表を行ったと述べた。「協議の具体的な情報については、引き続きご注目いただきたい」と付け加えた。

　中国外務省報道官は土曜日、英国政府の招きにより、中国共産党中央政治局委員兼国務院副総理のHe Lifengが6月8日から13日まで英国を訪問すると発表した。英国滞在中、彼は米国側と中国・米国経済貿易協議メカニズムの初回会合を開催する予定である。  

　中国の対外貿易の回復力と成長

　中国は月曜日の朝、2025年1月から5月までの貿易データを発表した。公式データによると、中国の財の輸出入総額は人民元建てで17兆9400億元(約2兆5000億ドル)に達し、前年同期比2.5%増加した。  

　中国の専門家は、対外貿易の継続的な成長は、世界第2位の経済大国の回復力を示しており、一方的な行動に代表される世界的な逆風にもかかわらず、サプライチェーンと産業チェーンが世界市場の需要に対応して競争力を維持していると述べた。

　GAC(税関総署)の報道官であるLü Daliangは月曜日、新華社通信の報道に対し、「今年に入ってから、中国経済は回復と改善を続けている。外部からの圧力の下、中国の財貿易は強い回復力を維持している。5月までに、中国の輸出入は成長傾向を維持し、中国と米国の高レベル経済貿易協議の後、成長率が著しく加速した」と述べた。

　GACの報道官によると、5月の輸出入は前年同期比で営業日が2日少なかったにもかかわらず2.7%増加し、輸出単独では6.3%増加した。  

　貿易データの内訳と課題

　新華社通信が月曜日に報じたところによると、中国の対外貿易は全体的にプラス成長を示しているものの、一部の貿易数値には不確実性が残っている。先月、財の輸出は前年同期比6.3%増加したが、輸入は2.1%減少した。  

　税関データによると、中国と米国の貿易は1月から5月までの期間で前年同期比8.1%減の1兆7200億元となった。  

　対外経済貿易大学中国開放経済研究院のLi Changan教授は月曜日、Global Timesに対し、5月のデータは、中国の対外貿易が概ね安定しているものの、貿易摩擦に関連する可能性のある一部の変動があったことを示していると述べた。

　Li教授は、「中国の輸出入の成長は、ジュネーブでの最近の中国と米国の高レベル貿易協議の後、大幅に加速した。これは、共同声明後の対外貿易の回復を示唆しており、貿易紛争の悪影響を部分的に相殺し、全体的な貿易の安定を維持するのに役立っている」と述べたが、企業は世界貿易においてより高い予測可能性を期待しており、課題は依然として残っていると付け加えた。

　北京の世界貿易機関研究中国協会の副会長であるHuo Jianguoは月曜日、Global Timesに対し、中国と米国が5月のジュネーブ協議で相互関税の大幅削減に合意したにもかかわらず、米国による中国製品への関税は依然として高く、中国の対外貿易企業は米国への依存を減らすために代替市場を開拓することで調整を行ったため、中国と米国の貿易データの傾向は「予想通り」であったと述べた。

　「経営の近代化」誌の執行副編集長であるBian Yongzuは、世界貿易における不確実性が残っているにもかかわらず、多くの企業は中国企業の製品が価格と品質の両面で強力な競争力を持っているため、中国のサプライチェーンを迅速に置き換えることができないと述べた。

　Lüも月曜日、最新の貿易データの発表に合わせて、1月から5月までの期間に輸出入活動を行った外資系企業の数が7万3000社を超え、過去5年間で同期最高を記録したと述べたとCCTVが報じた。「月間の輸出入額は4ヶ月連続で増加している。中国は高水準の開放拡大に引き続きコミットしており、外国投資にとって理想的で安全かつ有望な目的地であり続けている」とGAC報道官は述べた。

　回復力のある成長と貿易の多様化

　月曜日に中国税関総署(GAC)が発表したデータによると、1月から5月までの成長率は、1月から4月までの成長率と比較して0.1ポイント増加した。  

　2025年1月から5月までの期間、中国の輸出は前年同期比7.2%増の10兆6700億元に達し、輸入は3.8%減の7兆2700億元となった。  

　最新の対外貿易成長は、中国の主要な貿易相手国だけでなく、新興パートナーとの間でも全体的にプラスの傾向を示しており、中国の貿易ルート多様化への努力を反映している。

　貿易相手国では、ASEANが1月から5月までの期間、中国にとって最大の貿易相手であり続けた。この期間中、中国とASEAN諸国間の貿易総額は3兆200億元となり、前年同期比で9.1%増加した。このうち、ASEAN諸国からの輸入は2.3%増加し、ASEAN地域への輸出は13.5%急増した。  

　同期間中、中国とEU諸国との貿易もプラス成長を示し、貿易額は2兆2970億元となり、前年同期比2.9%増加した。EUへの輸出は7.7%増加し、欧州市場における中国製品の競争力を際立たせた。

　特筆すべきは、中国とアフリカの貿易であり、1月から5月までの期間で9630億元に達し、アフリカが活況な貿易パートナーとして浮上する中で12.4%の増加を記録した。

　中国東部の山東省に本社を置く農業および商業用車両の大手企業であるWuzheng集団は、今年に入ってからアフリカへの輸出が急増していることに気づいた。

　同社の国際協力部門のマネージャーであるLiang Yongは月曜日、Global Timesに対し、「中国の三輪車や農業用車両に対するアフリカ諸国での需要は高い。5月末までに、同社の海外からの受注はすでに昨年の総計を上回った」と述べた。昨年から、同社は多くのアフリカ諸国でアフターサービスをさらに強化し、現地の人々への技能訓練を充実させ、輸出を促進するために近くの港が提供するより効率的な輸送サービスを活用していると梁は付け加えた。

　Bianは月曜日、Global Timesに対し、その背景には中国の多様な対外貿易発展の肯定的成果があると述べた。「中国の対外貿易のパターンは変化している。米国や欧州のような伝統的な市場に加えて、ASEAN、アフリカ、ラテンアメリカなどの新興市場がますます重要になっている。中国が輸出構造を継続的に調整するにつれて、輸出はよりバランスが取れている」とBianは述べた。

　最新の貿易数値におけるもう一つのハイライトは、中国の先進製造製品が貿易成長を牽引する強い勢いである。

　CCTVが月曜日に報じたところによると、1月から5月までの期間に、中国は6兆2200億元相当の設備製造製品を輸出し、9.2%増加し、中国の総輸出の58.3%を占めた。これは対外貿易の安定した成長を強力に支えた。

　近年、中国は着実に開放経済を発展させ、新しい質の生産力を追求しながら開放を加速しており、技術進歩が重要な役割を果たしている。Bianは、この戦略が対外貿易成長の重要な推進力になっていると述べ、同時に中国は常に多国間貿易を支持し、グローバル産業チェーンの安定に貢献し続けていると付け加えた。

【詳細】　

　中国・米国間の経済貿易協議メカニズムの初回会合の詳細

　新華社通信の報道によると、中国と米国の経済貿易協議メカニズムの初回会合が月曜日にロンドンで開幕した。この会合には、中国側からHe Lifeng副首相(中国共産党中央政治局委員)が、米国側からはその代表者たちが出席した。

　中国外務省の林剣報道官は月曜日、この会合について、中国側が正式な発表を行ったと述べた。詳細については「引き続きご注目いただきたい」と、今後の情報公開を示唆した。

こ　の会合に先立ち、中国外務省報道官は土曜日に、英国政府の招待を受けてHe Lifeng副首相が6月8日から13日まで英国を訪問し、その際に米国側とこの初回会合を開催すると発表していた。

　中国の対外貿易状況：堅調な成長と課題

　中国は月曜日の朝に、2025年1月から5月までの貿易データを発表した。公式データによると、この期間の中国の財の輸出入総額は**人民元建てで17兆9400億元(約2兆5000億ドル)**に達し、前年同期比2.5%の増加を記録した。

　中国の専門家は、この対外貿易の継続的な成長が、世界第2位の経済大国である中国の回復力を示していると分析している。これは、一方的な行動といった世界的な逆風にもかかわらず、中国のサプライチェーンと産業チェーンが世界市場の需要に対応できる競争力を維持している証拠であると指摘されている。

　GAC(税関総署)の報道官であるLü Daliangは月曜日、新華社通信の報道に対し、中国経済は今年に入ってから回復と改善を続けており、外部からの圧力にもかかわらず財貿易は強い回復力を維持していると述べた。特に、5月までの輸出入は成長傾向を維持し、中国と米国の高レベル経済貿易協議後に成長率が著しく加速した点を強調した。

　Lü Daliang報道官によると、5月は前年同期比で営業日が2日少なかったにもかかわらず、輸出入は2.7%増加し、輸出単独では6.3%増加した。

　貿易データの内訳と残る不確実性

　新華社通信が月曜日に報じたところによると、中国の対外貿易は全体的にプラス成長を示しているものの、一部の貿易数値には不確実性が残る。具体的には、先月の財の輸出は前年同期比6.3%増加した一方で、輸入は2.1%減少した。

　税関データによると、中国と米国の貿易は1月から5月までの期間で前年同期比8.1%減の1兆7200億元となった。

　対外経済貿易大学中国開放経済研究院のLi Changan教授は月曜日、Global Timesに対し、5月のデータは、中国の対外貿易が概ね安定しているものの、貿易摩擦に関連する可能性のある一部の変動があったことを示していると述べた。

　Li教授は、「中国の輸出入の成長は、ジュネーブでの最近の中国と米国の高レベル貿易協議の後、大幅に加速した」と指摘し、これは共同声明後の対外貿易の回復を示唆していると説明した。さらに、貿易紛争の悪影響を部分的に相殺し、全体的な貿易の安定を維持するのに役立っているとしつつも、企業は世界貿易においてより高い予測可能性を期待しており、課題は依然として残っていると付け加えた。

　北京の世界貿易機関研究中国協会の副会長であるHuo Jianguoは月曜日、Global Timesに対し、中国と米国が5月のジュネーブ協議で相互関税の大幅削減に合意したにもかかわらず、米国による中国製品への関税は依然として高く、中国の対外貿易企業は米国への依存を減らすために代替市場を開拓することで調整を行ったため、中国と米国の貿易データの傾向は「予想通り」であったと述べた。

　「経営の近代化」誌の執行副編集長であるBian Yongzuは、世界貿易における不確実性が残っているにもかかわらず、多くの企業は中国企業の製品が価格と品質の両面で強力な競争力を持っているため、中国のサプライチェーンを迅速に置き換えることができないと述べた。

　Lü Daliang報道官も月曜日、最新の貿易データの発表に合わせて、1月から5月までの期間に輸出入活動を行った外資系企業の数が7万3000社を超え、過去5年間で同期最高を記録したと述べたとCCTVが報じた。「月間の輸出入額は4ヶ月連続で増加している。中国は高水準の開放拡大に引き続きコミットしており、外国投資にとって理想的で安全かつ有望な目的地であり続けている」とGAC報道官は述べた。

　貿易パートナーの多様化と製品の高付加価値化

　月曜日に中国税関総署(GAC)が発表したデータによると、1月から5月までの成長率は、1月から4月までの成長率と比較して0.1ポイント増加した。

　2025年1月から5月までの期間、中国の輸出は前年同期比7.2%増の10兆6700億元に達した一方で、輸入は3.8%減の7兆2700億元となった。

　最新の対外貿易成長は、中国の主要な貿易相手国だけでなく、新興パートナーとの間でも全体的にプラスの傾向を示しており、これは中国の貿易ルート多様化への努力を反映している。

　貿易相手国別では、ASEANが1月から5月までの期間、中国にとって最大の貿易パートナーであり続けた。この期間中、中国とASEAN諸国間の貿易総額は3兆200億元となり、前年同期比で9.1%増加した。このうち、ASEAN諸国からの輸入は2.3%増加し、ASEAN地域への輸出は13.5%急増した。

　同期間中、中国とEU諸国との貿易もプラス成長を示し、貿易額は2兆2970億元となり、2.9%の増加を記録した。EUへの輸出は7.7%増加し、欧州市場における中国製品の競争力を際立たせた。

　特筆すべきは、中国とアフリカの貿易であり、1月から5月までの期間で9630億元に達し、アフリカが活況な貿易パートナーとして浮上する中で12.4%の増加を記録した。

　中国東部の山東省に本社を置く農業および商業用車両の大手企業であるWuzheng集団は、今年に入ってからアフリカへの輸出が急増していることに気づいた。同社の国際協力部門のマネージャーであるLiang Yongは月曜日、Global Timesに対し、「中国の三輪車や農業用車両に対するアフリカ諸国での需要は高い。5月末までに、同社の海外からの受注はすでに昨年の総計を上回った」と述べた。昨年から、同社は多くのアフリカ諸国でアフターサービスをさらに強化し、現地の人々への技能訓練を充実させ、輸出を促進するために近くの港が提供するより効率的な輸送サービスを活用していると梁は付け加えた。

　Bian Yongzuは月曜日、Global Timesに対し、その背景には中国の多様な対外貿易発展の肯定的成果があると述べた。「中国の対外貿易のパターンは変化している。米国や欧州のような伝統的な市場に加えて、ASEAN、アフリカ、ラテンアメリカなどの新興市場がますます重要になっている。中国が輸出構造を継続的に調整するにつれて、輸出はよりバランスが取れている」とBianは述べた。

　最新の貿易数値におけるもう一つのハイライトは、中国の先進製造製品が貿易成長を牽引する強い勢いである。

　CCTVが月曜日に報じたところによると、1月から5月までの期間に、中国は6兆2200億元相当の設備製造製品を輸出し、9.2%増加し、中国の総輸出の**58.3%**を占めた。これは対外貿易の安定した成長を強力に支えた。

　近年、中国は着実に開放経済を発展させ、新しい質の生産力を追求しながら開放を加速しており、技術進歩が重要な役割を果たしている。Bianは、この戦略が対外貿易成長の重要な推進力になっていると述べ、同時に中国は常に多国間貿易を支持し、グローバル産業チェーンの安定に貢献し続けていると付け加えた。

【要点】　

　中国・米国間の経済貿易協議メカニズムの初回会合

　(1)開催場所と日時

　・初回会合は月曜日にロンドンで開幕した。

　(2)主要出席者

　・中国側からはHe Lifeng副首相(中国共産党中央政治局委員)が出席した。

　・米国側からは代表者が出席した。

　(3)中国外務省の見解

　・林剣報道官は月曜日、中国側がこの会合について発表を行ったと述べた。

　・具体的な情報については「引き続きご注目いただきたい」と付言した。

　(4)会合前の発表

　・中国外務省報道官は土曜日、英国政府の招きにより、He Lifeng副首相が6月8日から13日まで英国を訪問し、その際に米国側と初回会合を開催すると発表していた。

　中国の対外貿易状況：堅調な成長と課題

　(1)2025年1月から5月の貿易データ

　・中国は月曜日の朝にこの期間の貿易データを発表した。

　・財の輸出入総額は**人民元建てで17兆9400億元(約2兆5000億ドル)**に達した。

　・これは前年同期比2.5%の増加である。

　(2)対外貿易の回復力

　・中国の専門家は、貿易の継続的な成長が、世界第2位の経済大国の回復力を示していると分析。

　・一方的な行動などの世界的な逆風にもかかわらず、中国のサプライチェーンと産業チェーンが競争力を維持している証拠と見ている。

　(3)5月の貿易動向

　・GAC(税関総署)のLü Daliang報道官は、今年に入ってから中国経済は回復・改善を続けていると述べた。

　・特に、中国と米国の高レベル経済貿易協議後、輸出入の成長率が著しく加速したと指摘。

　・5月は営業日が前年同期比で2日少なかったにもかかわらず、輸出入は2.7%増加し、輸出単独では6.3%増加した。

　(4)貿易データの内訳と不確実性

　・全体的にプラス成長だが、一部の貿易数値には不確実性が残る。

　・5月の財の輸出は前年同期比6.3%増加したが、輸入は2.1%減少した。

　・中国と米国の貿易は1月から5月までの期間で前年同期比8.1%減の1兆7200億元となった。

　(5)貿易摩擦の影響と回復

　・対外経済貿易大学のLi Changan教授は、5月のデータが貿易摩擦に関連する可能性のある変動を示唆していると述べた。

　・ジュネーブでの高レベル貿易協議後、輸出入の成長が大幅に加速し、貿易紛争の悪影響を部分的に相殺し、全体的な貿易の安定に寄与したと分析。

　・ただし、企業は世界貿易におけるより高い予測可能性を期待しており、課題は残ると付け加えた。

　(6)米国の関税と市場 Diversification

　・世界貿易機関研究中国協会のHuo Jianguo副会長は、米国による中国製品への関税が依然として高いため、中国企業が米国への依存を減らすために代替市場を開拓していると説明。

　(7)中国サプライチェーンの競争力

　・「経営の近代化」誌のBian Yongzu編集長は、中国企業の製品が価格と品質の両面で強い競争力を持つため、多くの企業が中国のサプライチェーンを迅速に置き換えることができないと指摘。

　(8)外資系企業の活動

　・1月から5月までの期間に輸出入活動を行った外資系企業は7万3000社を超え、過去5年間で同期最高を記録した。

　・月間の輸出入額は4ヶ月連続で増加している。

　・中国は高水準の開放拡大にコミットしており、外国投資にとって魅力的な目的地であり続けている。

　貿易パートナーの多様化と製品の高付加価値化

　(1)全体的な貿易成長

　・1月から5月までの成長率は、1月から4月までの成長率と比較して0.1ポイント増加した。

　・この期間の中国の輸出は7.2%増の10兆6700億元、輸入は3.8%減の7兆2700億元だった。

　(2)貿易ルートの多様化

　・最新の貿易成長は、主要な貿易相手国だけでなく、新興パートナーとの間でもプラスの傾向を示しており、中国の貿易ルート多様化の努力を反映している。

　(3)主要貿易パートナーとの関係:

　・ASEAN

　1月から5月までの期間、中国にとって最大の貿易パートナーであり続けた。

　貿易総額は3兆200億元で、前年同期比9.1%増加。

　ASEANからの輸入は2.3%増加、ASEANへの輸出は13.5%急増した。

　・EU

　同期間の貿易額は2兆2970億元で、2.9%増加。

　EUへの輸出は7.7%増加し、欧州市場における中国製品の競争力を示した。

　・アフリカ

　1月から5月までの貿易額は9630億元で、12.4%増加。

　アフリカが活況な貿易パートナーとして浮上している。

　Wuzheng集団(農業・商業用車両企業)は、アフリカでの中国製三輪車や農業用車両の需要が高いと報告しており、今年の5月末までに海外受注がすでに昨年総計を上回った。同社はアフターサービスの強化や技能訓練、効率的な輸送サービスを活用して輸出を促進している。

　(4)貿易構造の変化

　・Bian Yongzuは、中国の対外貿易のパターンが変化しており、伝統的な市場(米国、欧州)に加え、ASEAN、アフリカ、ラテンアメリカなどの新興市場が重要性を増していると述べた。

　・中国が輸出構造を継続的に調整するにつれて、輸出はよりバランスが取れている。

　(5)先進製造製品の貢献

　・1月から5月までの期間に、中国は6兆2200億元相当の設備製造製品を輸出し、9.2%増加した。

　・これは中国の総輸出の**58.3%**を占め、対外貿易の安定した成長を強力に支えている。

　・中国は「新しい質の生産力」を追求し、技術進歩を貿易成長の重要な推進力としている。

　・中国は多国間貿易を支持し、グローバル産業チェーンの安定に貢献し続けている。
　
【桃源寸評】🌍

　2025年における中国の貿易構造は、複数の要因によって変化が見られる。主な変化点は以下の通り。

　1. 貿易パートナーの多様化

　・ASEANの重要性増大: 従来の貿易相手国である米国やEUに加え、ASEAN諸国との貿易が拡大している。2025年1月から5月までの期間では、ASEANが中国にとって最大の貿易パートナーであり続け、貿易額は前年同期比で9.1%増加した。

　・アフリカとの貿易拡大: アフリカも中国の活況な貿易パートナーとして浮上しており、同年1月から5月までの貿易額は12.4%増加している。農業・商業用車両など、特定分野での輸出が好調である。

　・米中貿易摩擦の影響: 米国による高関税政策が継続しているため、中国は米国への依存度を減らし、輸出先の多様化を進める戦略をとっている。これにより、米国向けの輸出が減少する一方で、ASEAN、アフリカ、ラテンアメリカなどの新興市場の重要性が高まっている。

　2. 輸出品目の高付加価値化と構造転換

　・設備製造製品の輸出拡大: 中国は「新しい質の生産力」の追求と技術進歩を重視しており、これが貿易成長の重要な推進力となっている。2025年1月から5月までの期間では、設備製造製品の輸出が9.2%増加し、中国の総輸出の58.3%を占めた。これは、単なる労働集約型製品だけでなく、より技術的・付加価値の高い製品へのシフトを示唆している。

　・伝統産業からハイテク産業への転換: かつて自動車生産やアパレル・雑貨・家電輸出に依存していた地域(広東省広州市、福建省など)では、構造転換の圧力が強まっている。ハイテク工業の生産が大幅に増加するなど、産業構造のアップグレードが進んでいる。

　3. 輸入構造の変化

　・国内需要と生産活動の変化: 輸入品目では、半導体製造設備や自動データ処理機、工作機械の輸入が減少しており、中国国内での生産活動の変化や、国内での生産能力向上が伺える。

　・エネルギー関連商品の輸入: 原油、天然ガス、石炭などのエネルギー関連商品は、国際価格の上昇を背景に金額ベースで増加傾向にある。

　・高品質製品への需要: 米の輸入に関して、2025年2月には輸入額が前年同月比で急増し、高品質米に対する関税優遇制度の導入など、中国国内で「量より質」を求める消費者ニーズの転換が顕著である。

　4. 貿易政策と国内経済への影響

　・内需拡大と輸出先の多様化: 米中対立の激化を受けて、中国政府は内需の拡大と輸出先の多様化を進め、国内景気を下支えする方針を打ち出している。

　・貿易の安定化へのコミットメント: 中国は高水準の開放拡大にコミットしており、外国投資にとって魅力的な目的地であり続けるとしている。月間の輸出入額が連続して増加し、輸出入活動を行う外資系企業数も過去5年間で最高を記録している。

【寸評　完】🌺

【引用・参照・底本】

1st meeting of China-US economic, trade consultation mechanism opens; China’s foreign trade shows resilience with 2.5% growth in first 5 months of 2025 GT 2025.06.09

【概要】

　「文明間対話の国際デー」が今日特に必要とされている理由について、『Global Times』紙の2025年6月10日付社説は、以下のように詳しく説明している。

　「文明間対話の国際デー」は、2023年に中国が提案し、第78回国連総会で全会一致により採択された国際的な記念日である。制定以来、国際社会に広く歓迎され、世界各地で関連行事が相次いで開催されている。

　国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、この日の演説において、「対話は平和への道」であり、「文明の多様性を促進することはこれまで以上に緊急である」と述べ、「一つの人類の家族を築くために、互いに耳を傾け、語り合い、つながる」ことの重要性を強調した。

　この国際デーが今日特に必要とされる理由については、国連公式ウェブサイトのニュースページに明確に示されている。同時期に掲載された注目記事として、ガザ地区の一人当たりの食料摂取量が「生存」水準をはるかに下回っていること、世界の海洋生態系の問題、フーシ派武装勢力による国連職員の人質事件などが挙げられている。これらはグテーレス氏の述べた「緊急性」を浮き彫りにし、「文明間対話の国際デー」の時宜性と必要性を改めて証明するものである。

　国連によれば、この国際デーは「文明の多様性の価値に対する認識を高め、対話、相互尊重、グローバルな連帯を促進し、より調和的で相互につながり合った世界を育む」ための機会を提供するものである。

　中国はこの国際デーの設立を通じて、「グローバル文明イニシアティブ」の実践的措置を進めている。これまで中国は、アジア文明対話会議を通じて、アジア文明の多様性保護、文化観光、人的交流について議論し、世界政党ハイレベル対話会議を通じて、ガバナンス経験や文明の包摂性に関する対話を促進してきた。また、中国・中央アジアサミットを通じて、エネルギーや文化分野などにおける多国間の枠組みを構築し、「文明の相互学習」のための「黄金の回廊」を開いた。さらに、中国・ASEAN・GCCサミットでは、地域国家間の協力ビジョンが共有され、「文明統合」の「地域的勢い」が活性化された。

　これらは、多国間主義と国連の中核的地位への確固たる支持を示すものであり、異なる文明の調和的共存の模範を示すものであると同時に、責任ある大国としての中国の時代的責務の体現である。

　「文明間対話の国際デー」の設立に対して、国際社会は一致して支持を示した。国連総会での決議採択後、14か国が中核グループに参加し、83か国が共同提案国として名を連ねたことは、「グローバル文明イニシアティブ」が時代の潮流に合致し、国際社会のニーズに応えるものであることを証明している。

　過去1年間、中国は世界各国と協力し、同決議の精神を実践するための多様な取り組みを行ってきた。上海協力機構やBRICS文明対話、中国・ラテンアメリカ間の文明対話、中華・アフリカ文明対話会議などを通じて、文明間の平等な対話のためのプラットフォームが構築された。このような取り組みにより、「文明間対話の国際デー」は単なる記念日としての意義にとどまらず、体系的かつ継続的な実践として位置付けられている。

　何千年にもわたり、大陸を横断する文明の大動脈は、人類共通の精神的な絆を築いてきた。古代シルクロードから「一帯一路」構想、ラクダのキャラバンから中欧間の貨物列車に至るまで、異なる文明は交流と融合を通じて独自の特色を花開かせてきた。

　しかし今日、通信コストがかつてなく低くなったにもかかわらず、「文明の衝突」や「文明の優越」といった概念が依然として分断と対立を引き起こしている。こうした深刻な国際情勢と地域緊張が続く中で、世界はこれまで以上に協力を必要としている。人類に必要なのは対立ではなく、理解と協力である。

　デジタル時代においては、文明間対話と人的交流が偏見を打破する有力な手段となっている。「チャイナ・トラベル」や「小紅書(RedNote)」における中米ネットユーザーの交流、『Helldivers 2』のようなゲーム内での国境を越えた協力行動などは、インターネット時代における異文化コミュニケーションの広大な可能性を示している。若者たちはSNSやゲームといったコンテンツプラットフォームを通じて、生活を共有し、考えを交換し、協力し合っており、これは文明間対話に新たな活力をもたらし、未来に向けた無限の可能性を示している。

　習近平国家主席は、「人類の異なる文明の交流・融合・相互学習の推進は、より良い世界と各国の国民のより良い生活を実現するために不可欠な道である」と述べている。「文明間対話の国際デー」の設立は、単なる出発点ではなく、各文明が対話に参加するためのリレーであり、全人類が共に歩む新たな章の執筆に招くものである。

　偏見を理解に、対立を協力に置き換え、人類共通の物語に新たな一章を書き加えることが呼びかけられている。

【詳細】　

　1. 文明間対話の国際デーの設立経緯と国際的支持

　「文明間対話の国際デー」は、2023年に中国が提唱し、第78回国連総会において全会一致で採択された国際記念日である。これは国際社会における多様な文明の対話と協力を促進するための具体的かつ制度的な措置であり、設立当初から広く歓迎され、国連加盟国の多くが支持を表明している。国連総会での決議採択後、14か国が中核グループ(コアグループ)に参加し、83か国が共同提案国として加わったことは、国際社会がこの構想に高い共感を示した証左である。

　2. 国連事務総長による「緊急性」の指摘と現実の国際状況

　国連のグテーレス事務総長はこの国際デーの演説において、「対話は平和への道である」と強調するとともに、「文明の多様性を尊重し促進することは、これまでになく緊急の課題である」と述べた。この「緊急性」は、同時に国連の公式ウェブサイトに掲載されていた複数のニュース報道と明確に呼応している。

　例えば、ガザ地区では人々の一日当たりの食料摂取量が「生存水準」を下回っているとの報道、フーシ派武装勢力による国連職員の拘束事件、海洋生態系の深刻な悪化など、世界各地で発生している深刻な人道的・環境的・政治的危機が列挙されている。これらは、文明間の信頼や協力が十分に機能していない現実を如実に物語っており、まさに文明間の相互理解と連帯が求められている時代的背景を象徴するものである。

　3. 中国による文明間対話促進の具体的実践

　中国は「文明間対話の国際デー」の設立を通じて、「グローバル文明イニシアティブ(Global Civilization Initiative)」の実行を加速させている。以下はその代表的な取り組みである：

　・アジア文明対話会議(Conference on Dialogue of Asian Civilizations)
　文明の多様性保護、文化観光振興、人的交流促進などをテーマに、中国および各国の専門家・文化人・政治家らが議論を交わす国際会議。

　・中国共産党と世界政党のハイレベル対話(CPC in Dialogue with World Political Parties)
　
　　各国政党が政治ガバナンスや文明の包摂性に関して意見を交わし、異なる価値観の共存可能性を模索する。

　・中国・中央アジアサミット(China-Central Asia Summit)
　
　　エネルギー、文化、安全保障など多岐にわたる分野での多国間メカニズムを構築し、文明交流の「黄金の回廊」を形成。

　・中国・ASEAN・GCC(湾岸協力会議)サミット
　
　　地域国家間の戦略的協力ビジョンを共有し、文明の融合を地域レベルで推進。

これらの取り組みは、国際的な多国間主義の原則を支持し、国連の中心的役割を強化する実例であり、同時に中国が「責任ある大国」としての役割を果たしている証でもある。

　4. 文明の歴史的接触と現代の分断との対比

　過去数千年にわたり、人類文明はシルクロードのような交易ネットワークを通じて接触と交流を繰り返してきた。キャラバンによる交易、文化の伝播、宗教や思想の相互影響などは、各地の文明を豊かにし、世界の精神的多様性を形成した。現代においては、それが「一帯一路」構想や中欧間の鉄道輸送といった形で新たな文明間交流の形式を担っている。

　しかし、通信技術の発展によって対話のコストが大幅に下がった現代においても、依然として「文明の衝突」や「文明の優越」といった排他的な概念が広がっている。これにより、分断や対立が先鋭化し、多くの紛争や誤解の根源となっている。

　5. デジタル時代における民間レベルの文明交流の新展開

　社説では、現代の若者たちによる自発的な異文化交流の事例にも言及されている：

　・「チャイナ・トラベル」と呼ばれる現象により、外国人が中国文化や生活様式に直接触れる機会が増加。

　・SNS(小紅書〈RedNote〉など)を通じた中米ネットユーザー間の意見交換。

　・『Helldivers 2』のようなオンラインゲームにおいて、国籍を越えて協力し合う行動。

　これらは、民間レベルでの人と人とのつながりが国家間の緊張とは別の文脈で築かれつつあることを示している。インターネットを通じたこのような対話は、固定観念を打破し、文明間の相互理解を促進する新たな原動力となっている。

　6. 国家指導者の理念と今後の展望

　習近平国家主席は、「文明の交流・融合・相互学習は、より良い世界とより良い生活を実現するために不可欠な道である」と述べており、これは国連の理念とも整合する。社説は、「文明間対話の国際デー」が単なる「記念日」ではなく、「各文明が継続的に参加し、協力するためのリレー」であると位置付けている。

　結語

　本国際デーの設立は、現代の混迷した国際状況において、理解と連帯の精神を再確認するための重要な契機である。人類が直面する複雑な課題の多くは、文明間の誤解・対立・偏見によって悪化しており、それを克服するためには、制度化された対話の枠組みが必要不可欠である。

　この国際デーを通じて、「偏見を理解に」「対立を協力に」変えることこそが、人類共通の未来を切り拓く道であると、社説は力強く訴えている。

【要点】　

　文明間対話の国際デーが必要とされる理由(箇条書き)

　・国連総会により全会一致で採択された新たな国際デー

　　2023年、中国の提案により創設され、78回国連総会で正式に採択。国際社会から広く支持され、14か国が中核グループ、83か国が共同提案国として参加。

　・国連事務総長による「対話の緊急性」の強調

　　グテーレス事務総長は、対話は平和への道であり、文明の多様性の促進は「これまでになく緊急」と明言。

　・同時期の深刻な国際問題が緊急性を裏付ける

　　国連公式サイトでは、以下のようなニュースが掲載され、対話の必要性を裏付け。

　　⇨ ガザでの食料摂取量が「生存レベル」以下

　　⇨ フーシ派による国連職員の拘束

　　⇨ 地球規模の海洋生態問題

　・文明の多様性と相互理解の重要性の再認識

　　国連は本国際デーについて「文明の多様性の価値を認識し、対話・相互尊重・連帯を促す機会」と明記。

　・中国の文明対話への多面的な実践

　　中国は「グローバル文明イニシアティブ」に基づき、様々な国際対話プラットフォームを提供。

　　⇨ アジア文明対話会議(文化・観光・人的交流)

　　⇨ 世界政党対話(政治ガバナンス・包摂性)

　　⇨ 中国・中央アジアサミット(エネルギー・文化協力)

　　⇨ 中国・ASEAN・GCCサミット(地域協力と融合)

　・多国間主義と国連中心の国際秩序の支援

　　文明間の協力強化を通じ、国連の中心的役割と多国間主義を支持する姿勢を明確に示す。

　・文明の歴史的交流と現代の対立との対比

　　過去のシルクロードやキャラバンによる文明交流は、今日の「一帯一路」や中欧鉄道と連続性があるが、同時に現代には「文明の衝突」「優越論」が依然存在し、対話が不十分な状態である。

　・デジタル時代の民間レベルでの文明交流の拡大

　　SNSやオンラインゲームを通じた異文化交流が若者の間で進行。

　　⇨ 「チャイナ・トラベル」現象

　　⇨ 小紅書(RedNote)上での中米市民間対話

　　⇨ 『Helldivers 2』における国際協力型ゲームプレイ

　・文明間対話は制度化・定常化すべき取り組み

　　記念日を一過性のイベントで終わらせず、恒常的・構造的な対話の仕組みとして展開していく姿勢。

　・習近平主席の理念に基づく道筋の提示

　　文明間の交流・融合・相互学習は「より良い世界とより良い生活」への不可欠な道であるとの考えに基づく。

　・人類共通の未来のための呼びかけ

　　「偏見を理解に、対立を協力に」変えることが求められており、本国際デーはその出発点であり、文明の連携を促すリレーでもあると位置づけられている。
　
【桃源寸評】🌍

　世界が分断や対立に直面する中で、この国際デーは異なる文明が平和的に共存し、相互に学び合うことの重要性を国際社会に再認識させる役割を担っている。

【寸評　完】🌺

【引用・参照・底本】

Why is the International Day for Dialogue among Civilizations particularly needed today?: Global Times editorial GT 2025.06.10
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1335785.shtml

【概要】

　Wei Dongyiの「2度目の大ヒット」が反映するもの

　北京大学数学科学学院の助教授であるWei Dongyiが、短編動画プラットフォームにアカウントを開設し、4秒間の動画が24時間で100万件以上のコメントを集め、6月9日までにファン数が2300万人を超えた「現象的な」出来事について述べている。これにより、彼が「新たなネット有名人学者」として2度目の大ヒットを記録したことが、知識を尊重し、才能を重視する価値観が今日の中国社会で優先されていることを鮮やかに示しているとしている。

　初めての注目と今回の再注目

　2021年の自己メディアのインタビュー動画では、Weiが蒸しパンとミネラルウォーターのボトルを手にしている姿が初めて世間の目に触れ、彼の質素な生活様式と学問への献身が人々に深い印象を与えた。今回の2度目の大ヒットでは、彼の歯と健康がネットユーザーの大きな関心を集めた。北京大学数学科学学院の関係者は6月9日、Weiへの世間の関心に感謝し、学校が彼の希望と生活習慣を尊重しつつ、仕事、生活、医療などの面で十分な配慮と対応する手配と保証を行っていると述べた。社会全体も彼の生活状況を心配し、彼がより良い生活を送ることを望んでいるという。この「新たなネット有名人学者」がソーシャルメディアプラットフォームで「試験的に活動」していることに対し、社会のあらゆる側面から才能を大切にし、気遣う姿勢が伝えられており、知識を尊重する価値観が中国で絶えず洗練され、向上していることを示している。  

　ネット上の動きと社会の対応

　大規模なインターネットトラフィックは、ポジティブなエネルギーに基づいている必要があると社説は指摘している。ネットユーザーの「スター追っかけ」に対し、メディアやプラットフォームは価値観を調整し、誘導する必要があるとしている。Weiの「2度目の大ヒット」以来、彼の身元を偽ったり、なりすましたりするアカウントが多数存在するが、その多くがネットユーザーによって迅速に報告され、プラットフォームによって制限・禁止されている。学者の私生活に焦点を当てるのではなく、彼らの専門的な貢献により注意を払うこと、学者が研究に集中できる静かな環境を共同で保護すること、そして同時に学者がネットユーザーと良好に交流する権利を尊重すること、これらすべてが中国の世論の主要なトーンになっている。知識を尊重する雰囲気の醸成において、中国のメディアとプラットフォームは成熟と完成の道を歩んでいるとしている。

　社会の主流価値観と若者への影響

　今日の中国では、才能の尊重と知識の尊重が社会の主流価値観であると述べている。Weiの人気は、中国の大学入試(高考)の時期と重なった。Weiのファンの多くは若者、特に学生である。Weiのアカウント下の「大学入試願掛けプール」では、多くの学生が「学術的天才のオーラ」にあやかろうと希望し、一部の人は「Weiの神」がもっと数学的知識を共有してくれることを願うメッセージを残している。これらの誠実なメッセージから、中国社会の知識と純粋さへの尊重、そして知識を渇望し、勤勉で意欲的な中国の若い世代の精神が見て取れるとしている。

　過去の模範的人物との共通点

　中国の発展のどの段階においても、時代を特徴づける優れた知識人が出現し、社会全体は優れた知識人の模範的な力なしには成り立たないと社説は述べている。その例として、その功績が繰り返し文学作品に脚色されたZhang Guimei、中国の「共和勲章」を授与されたTu Youyou、中国の「千里眼」を生み出したレーダー専門家のMao Erke、裸足で布靴を履いて教え、インターネットで人気を博した「布靴の院士」Li Xiaowenを挙げている。これらの人物には、彼らの職業における無私な献身、個人的な生活における質素さと控えめさ、世俗的な名声や富への無関心など、いくつかの似たような性格的魅力が見られるとしている。彼らの純粋さと献身は、知識、理想、価値観に対する中国社会の普遍的な共感を深く呼び起こしているという。  

　Weiの大ヒットが反映する国家戦略

　Weiの「トラフィックコード」は、国の基礎科学の活発な発展に深く根ざしているとしている。彼の2度目の大ヒットは、デジタル時代に目撃された知的な才能へのさらなる賛辞であるだけでなく、科学教育による国家再興戦略が中国に深く根付いていることを反映している。優れた若い才能が中心に立ち、最も追求に値する「スター」になることが、中国社会のコンセンサスと意識的な行動としてますます定着している。中国社会がこれらの「献身的で純粋な」個人に成長のための土壌と広い舞台を提供し続け、大学入試を受けるすべての青少年がロールモデルから力を得て、人生の次の素晴らしい章を迎えられることを願うとしている。

【詳細】　

　北京大学数学科学学院の助教授であるWei Dongyiが、短編動画プラットフォームに開設したアカウントが引き起こした「現象的な」出来事を分析し、それが今日の中国社会における価値観の変化と優先順位を鮮やかに示していると論じています。

　「現象的な」人気とその背景

　社説によると、Wei Dongyiが6月6日に開設した短編動画アカウントに投稿されたわずか4秒の動画は、公開から24時間以内に100万件以上のコメントを獲得し、6月9日までに彼のファン数は2300万人を超えるという驚異的な伸びを見せた。これは彼にとって2度目の大ヒットであり、「新たなネット有名人学者」として、社会全体からの注目を集めることとなった。社説はこの現象を、今日の中国社会が知識の尊重と才能の重視という価値観を優先している証拠だと捉えている。

　初めての注目と今回の「再ヒット」

　Wei Dongyiが初めて公の注目を集めたのは、2021年の自己メディアのインタビュー動画であった。この時、彼は蒸しパンとミネラルウォーターのボトルを手にしている姿で登場し、その質素な生活様式と学問への献身が「清流」のように人々に深い印象を与えた。

　今回の2度目の大ヒットでは、以前とは異なり、彼の歯や健康状態にネットユーザーの大きな関心が集まった。これに対し、北京大学数学科学学院は6月9日、Weiへの世間の関心に感謝し、学校が彼の希望と生活習慣を尊重しながら、仕事、生活、医療などの面で十分な配慮と支援を行っていることを明らかにした。この学校の対応や、社会全体が彼の生活状況を心配し、より良い生活を送ることを願っているという事実は、中国において知識を尊重する価値観が絶えず洗練され、向上していることを示していると社説は分析している。

　ネット空間における「ポジティブなエネルギー」の重要性

　社説は、大規模なインターネットトラフィックが「ポジティブなエネルギー」に基づいていることの重要性を強調している。Wei Dongyiの「2度目の大ヒット」以来、彼の身元を偽ったり、なりすましたりするアカウントが多数出現したが、これらはネットユーザーによって迅速に報告され、プラットフォームによって制限・禁止されている。

　社説は、メディアやプラットフォームが「スター追っかけ」のような現象に直面した際に、価値観を調整し、適切な方向へ誘導する必要性を説いている。具体的には、学者の私生活に過度に注目するのではなく、彼らの専門的な貢献により焦点を当てるべきであるとしている。また、学者が研究に集中できる静かな環境を社会全体で保護すること、そして学者がネットユーザーと良好に交流する権利を尊重すること、これらすべてが中国の世論における主要なトーンになっていると述べている。このことから、知識を尊重する雰囲気の醸成において、中国のメディアとプラットフォームが成熟と完成の道を歩んでいると社説は結論付けている。

　社会の主流価値観と若者への影響

　社説は、今日の中国において「才能の尊重と知識の尊重」が社会の主流価値観であると明確に述べている。Wei Dongyiの人気が、中国の大学入試(高考)の時期と重なったことは特筆すべき点である。彼のファンの多くは若者、特に学生であり、Weiのアカウント下の「大学入試願掛けプール」には、多くの学生が「学術的天才のオーラ」にあやかろうと希望したり、「Weiの神」にもっと数学的知識を共有してほしいと願うメッセージを残している。社説は、これらの誠実なメッセージから、中国社会の知識と純粋さへの尊重だけでなく、知識を渇望し、勤勉で意欲的な中国の若い世代の精神が見て取れると指摘している。

　模範となる知識人像と国家戦略への反映

　中国の発展の各段階において、時代を特徴づける優れた知識人が常に登場し、社会全体が彼らの模範的な力なしには成り立たないと社説は論じている。社説は、以下の人物をその例として挙げている。

　・Zhang Guimei: その功績が繰り返し文学作品に脚色された人物。

　・Tu Youyou: 中国の「共和勲章」を授与された科学者。

　・Mao Erke: 中国の「千里眼」と呼ばれるレーダー技術を生み出した専門家。

　・Li Xiaowen: 裸足で布靴を履いて教え、インターネットで人気を博した「布靴の院士」。

　これらの人物には、「職業における無私な献身」「個人的な生活における質素さと控えめさ」「世俗的な名声や富への無関心」といった、いくつかの共通する性格的魅力があると社説は述べている。彼らの純粋さと献身は、知識、理想、価値観に対する中国社会の普遍的な共感を深く呼び起こしている。

　最後に、社説はWei Dongyiの「トラフィックコード」(人気を獲得する要因)が、中国における基礎科学の活発な発展に深く根ざしていると結論付けている。彼の2度目の大ヒットは、デジタル時代において知的な才能に対する新たな賛辞であるだけでなく、中国の「科学教育による国家再興戦略」が深く根付いていることを反映しているとしている。社説は、優れた若い才能が社会の中心に立ち、最も追求に値する「スター」となることが、中国社会のコンセンサスと意識的な行動としてますます定着していると締めくくっている。そして、中国社会がこれらの「献身的で純粋な」個人に成長のための土壌と広い舞台を提供し続け、大学入試を受けるすべての青少年がロールモデルから力を得て、人生の次の素晴らしい章を迎えられることを願う、という希望で記事を終えている。

【要点】　

　Wei東毅の「2度目の大ヒット」が反映するもの

　1.知識と才能の尊重: Wei東毅の2度目の大ヒットと、その圧倒的なネットでの人気は、今日の中国社会が知識の尊重と才能の重視という価値観を最優先していることを鮮やかに示している。

　2.社会の関心と配慮

　・2021年の最初の注目時は、彼の質素な生活様式と学問への献身が評価された。

　・今回の2度目のヒットでは、彼の健康状態にネットユーザーの関心が集中。

　・北京大学数学科学学院は、彼の希望を尊重しつつ、仕事、生活、医療面での配慮と支援を行っていると表明。これは、知識人の生活に対する社会全体からの細やかな気遣いと尊重の価値観の向上を反映している。

　3.インターネットとポジティブなエネルギー:

　・大規模なネットトラフィックは**「ポジティブなエネルギー」**に基づくべきであると強調されている。

　・Weiへのなりすましアカウントが多数出現したが、これらはネットユーザーの報告とプラットフォームの対応により迅速に制限・禁止された。

　・メディアやプラットフォームは、学者の私生活よりも専門的貢献に焦点を当てること、研究環境の保護、そして健全な交流の尊重を重視しており、これは中国の世論における成熟したメディア環境を示している。

　4.若者への影響と模範

　・Weiの人気は大学入試の時期と重なり、彼のファンの多くは学生である。

　・「大学入試願掛けプール」に見られるように、多くの学生が彼の「学術的天才のオーラ」にあやかろうと願っており、これは中国社会の知識と純粋さへの尊敬、そして若い世代の知識への渇望と向上心を示している。

　5.国家戦略の浸透

　・Weiの人気は、中国が基礎科学の発展に力を入れていることと深く関連している。

　・彼の2度目の大ヒットは、デジタル時代における知識人への賛辞であるだけでなく、中国の「科学教育による国家再興戦略」が社会に深く根付いていることの表れである。

　・優れた若い才能が社会の中心に立ち、尊敬される「スター」となることが、中国社会の普遍的なコンセンサスになりつつある。
　
【桃源寸評】🌍

　Wei Dongyi氏のショート動画が注目を集める理由は、記事から複数の要因が読み取れる。

　要点をまとめると以下の通り。

　1.「現象級の数学の天才」としての知名度と期待

　・彼は北京大学の助教授であり、以前から「期待される数学の才能」として知られていた。

　・2021年の自己メディアのインタビューで、彼の質素な生活と学問への献身が「清流」として話題となり、すでに一度人々の記憶に残っている。

　・数学界での傑出した才能が広く認識されており、彼の動向には元々大きな関心が寄せられていた。

　2.素朴で飾り気のない人柄とギャップ

　・「蒸しパンとミネラルウォーターのボトル」といった極めてシンプルな姿が、一般の人々が抱く「大学教授」や「天才」のイメージとのギャップを生み出し、強い印象を与えた。

　・物質的なものに無関心で、学問にのみ没頭する姿勢が、世俗的な喧騒から離れた「純粋さ」として多くの人々に共感を呼んだ。

　3.教育と学問への社会的な尊重の高まり

　・記事は、今日の中国社会が「知識を尊重し、才能を重視する」という価値観を優先していると明確に述べている。

　・特に大学入試(高考)の時期に彼の動画が注目されたことで、多くの若者(学生)が彼を「学術的天才のオーラ」を持つ模範として捉え、知識への渇望や向上心の象徴と見なしたため、共感や関心が高まった。

　・「神なるWei」と呼び、数学知識の共有を願うメッセージからも、彼が単なる有名人ではなく、知識の象徴として見られていることが分かる。

　4.社会的な関心と共感の広がり

　・今回の「2度目の大ヒット」では、彼の歯や健康状態にまで関心が集まり、社会全体が彼の生活状況を案じる声が上がった。これは、単なる好奇心だけでなく、優れた才能を持つ人物への「ケア」と「大切にしたい」という社会的な意識が働いていることを示唆している。

　5.メディアとプラットフォームの役割

　・一部のなりすましアカウントが迅速に報告・禁止されたことから、メディアやプラットフォームも、単なる視聴数稼ぎではなく、知識人を尊重し、健全な情報発信を促す方向に価値観を調整しようとしていることが読み取れる。これにより、よりポジティブな形で彼が注目されやすくなっている。

　これらの要因が複合的に作用し、Wei Dongyi氏のショート動画が単なる「バズり」に留まらず、社会的な現象として大きな注目を集めることにつながったと考えられる。

【寸評　完】🌺

【引用・参照・底本】

What does Wei Dongyi’s ‘second smash hit’ reflect?: Global Times editorial GT 2025.06.10
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1335783.shtml