聲 明 ― 2022年06月18日 08:50

『第一回會員總會記事(昭和十一年十二月二十一日 於 東京麹町寶亭本店)』
時局協議會
第四節 總會概況
(五)議 事
(19-22頁)
(2) 聲明朗讀
司會者(入江種矩氏) 聲明書に關する伴を、橋本欣五郎氏にお願ひ致します。
楠本五郎氏(聲明書 朗讀)
聲 明 2022.06.18
皇國内外の情勢は洵に容易ならざるものがある。特に皇國を中心とする急迫せる國際情勢に対し、一朝其擧措を誤らんか、國運の前途は、實に測り知るべからざるものがある。之が打開を目指して深く其禍因に遡り、非常の決意を以て抜本塞源の處を講ぜねばならぬ時機に際会した。實は其時機すらも既に遅きの憾があるのである。
抑々内に充實強化の實なくして、如何にして堅實なる外交はあり得ようぞ。實は今日の如き一般情勢馴致の眞因も憂ふべき國内事情に根ざすものが頗る多いのである。則ち抜本塞源的處置も、國体の本義を明徴にし、國家活動の基本たる國内政治の是正を以て第一着手とすべきは論を俟たない。換言すれば日本主義を透徹せしめ、皇道政治を確立することが總ての先決問題である。是れなくして対外問題の光輝ある解決は到底庶幾することが、出來ぬ。然らば日本主義とは何ぞや。
苟くも帝國臣民として、一切を捧げて皇運扶翼に終始するは日本主義である。富貴榮達、放肆享樂其事自身わ以て行動究極の日的とするものは功利主義である。
皇國全體一家族國家たるの事實を明確に體識し、道義と相愛とを以て智能、材幹の推進力となし、總ての物質問題をして之に隨從せしめんとするは日本主義である。之に反し、物質的利害打算をして精神問題を支配せしめんとするは功利主義である。分裂、抗爭、道義頽廃、國家的衰運の淵源は功利主義であり、協同、和偕、明朗邁進、國家的飛躍の原動力は一に日本主義に胚胎する。故に日本主義と功利主義との間には妥協はない。抑々政策には互譲妥協を許すも、正邪順逆には妥協の片影すら容るゝべきものでない。天皇の臣民は、全部が日本主義者でなければならぬことは必然の道理である。
憲法發布せられてより既に五十年に垂んとして居る憲法は 天皇統治の大道であり同時に皇運扶翼に參ずる臣道の軌範であり、肇國本然の日本主義を顯揚せるものなるに拘らず、之に顯すべき政治運用機關の現狀は何事ぞ。
帝國議會は立法豫算等を通じて宏謨を翼賛すべき機關として、臣道躬行の神聖なる殿堂である。即ち階級利害の代表機關でもなく、政權爭奪の壇場でもなく、功利主義に立脚したる歐米諸國の議會とは其發生原理に於て苟も相容れざるものがある。然るに現在我國の繭會を觀るに、其職務運用の母胎をなせる既成諸政黨勿論無産黨を含めたる此等の諸黨は悉く民主民權の主張に其發生の機緣を有し、立黨の指導精神は功利主義の外に一歩も出づることが出來ない。是等政黨が過去の日本に殃したる事實を見來れば、歴々として其然る所以を指摘することが出來る。
功利主義によりて結威したる政黨は、單に議會占領に甘んぜず、更に進んで行政、司法等の諸機關にも侵入して惡政の淵源となる。教學は忠幸の純眞を失ひ、經濟は互助の美風を損じ、産業は相剋の苛辣に走り、道義立國の日本精神の消磨は、指導力と安定力の分裂抗爭となり、之を地方に及ぼしては打算、情實を以て織り成せる地盤を醸成し一大家族國家たるべき、皇國を權勢強奪の闘場たるに至らしめた。
諸弊の總ては是れ政洽が功利主義に立脚したるが爲である。彼等が政黨政治と誇稱する内容は同胞相剋であり、憲政常道と大呼する實質は、政權爭奪の妥協條件を内規せんとする詐謀に外ならぬ。其精神は正に違憲であり、日本主義の蹂躙である。勿論黨人中にも善良なる者尠からず、如何せん既成政黨の指導精神下にありては、點滴の清泉を以て大江の濁流に注ぐの憾なきを得ない。
日本主義こそは、斯くて憲政確立の運動であらねばならぬ。斯くて一切政治の淨化と向上の發酵素でなければならぬ。全的不安一掃の唯一無二の根源は此運動以外には断じて無い。
過去數年來の政局を回顧して、遺憾此上なきものは義憤遺る瀬なき多くの人々が、秋霜の國法をまで犯して、自ら非合法の死地に赴きたる悲壯の事實である。此事實を何と觀て然るべきであるか。彼等は悉く功利主義的政治の支配に激して法を省みるの遑がなかつたのだ。明かに既成政黨は功利主義的政治の大支柱として、彼等義憤の大因をなしたことは人皆周知するところであらう。然かも若し政界の現狀が今日の儘に續くならば、此深刻苛烈なる睨み合は永久に解消し難いものであることは自明の理ではあるまいか。何が故に解消し得ないか。日本主義は到底功利主義の前に屈服することが出來ないからである。
若槻内閣倒潰し、斎藤内閣成立して以來、今日迄の政局推移の蹤跡を仔細に點檢すれば意識的か、將又無意識的かは別として、尠なくとも日本主義と功利主義とを妥協せしめんとするか、乃至は其間に妥協點を見出さんとする政治であつた。然し其は不可能を可能となさんとし、火と水との妥協を策する徒勞に過ぎなかつた。國體明徴は斯かる老痴なる情實より生まれるものでは斷じてない。日本主義が功利主義を掃蕩することによりて、日本主義に即す獨自の議會檄能の全的發動となり、同じく行政司法の機能と相俟ちて、國體と體合する政治の更生、國策の遂行が生まれ、初めて難局は打開され、國民生活の安定も茲に求むることか出來るのである。
皇國が今や數ヶ國の武力と經濟力との侵攻に對抗し形勢の危急、旦に夕を測り得ざるものがある。此際、擧國一致は何物にも替へ難い生命的條件である。だが形式の擧國一致は益々國民不安の浪濤を高め、國民理想の昂揚を阻み、難關突破の前途に却つて暗雲を投ずるに過ぎぬ。眞實の皐國一致こそは、功利主義團體の一切を清算して、日本主義に基く安定勢力の結成の上に初めて共全貌を現はし得るものであることは明々白々の事理である。
時局協議會は實に此國家鎮護の安定勢力築成の目的の上に立つ。從つて既成政黨の清算を要求するは黨然であるが、齊しく至尊の赤子たる個々の政黨員が、本來の日本主義に覺醒し來たるならば.是れ又温かき手を伸べて歡迎するに決して吝なるものではない。
時局協議會は全會員悉く如上の信念に全國忠良の國民を動員し皇道政治の確立純正護憲運動を目がけて直往し、渾然一如の皇道日本を完成し悠久なる國基を振張し、以て國難打開に向つて邁進せんことを期する。之が爲め第一着手として國内充實強化の至大障碍たる個人、民主.唯物、功利思想の上に立つ既成諸勢力清算の目的を最も速に達威し以て皇道に歸一せしめんとするものである.
昭和十一年十二月二十一日
時局協議會第一回會員總會
副座長(男爵井田磐楠氏) 御諮り申上げます。只今橋本君に依りまして讀まれした聲明案、大體に於て御異議はございませぬか、御賛成を得たいと思ひますが如何でございますか。
〔異議なし」と呼ぶ者あり、(拍手)〕
副座長(男爵井田磐楠氏) 拍手に依りまして御賛成と認め御承認を得たものと認めます。(拍手)
引用・参照・底本
『第一回會員總會記事(昭和十一年十二月二十一日 於 東京麹町寶亭本店)』
時局協議會
「聲 明(案) 時局協議會 第一回會員總會(LIBRARY of CONGRESS httpswww.loc.govにも在り)
(国立国会図書館デジタルコレクション)
時局協議會
第四節 總會概況
(五)議 事
(19-22頁)
(2) 聲明朗讀
司會者(入江種矩氏) 聲明書に關する伴を、橋本欣五郎氏にお願ひ致します。
楠本五郎氏(聲明書 朗讀)
聲 明 2022.06.18
皇國内外の情勢は洵に容易ならざるものがある。特に皇國を中心とする急迫せる國際情勢に対し、一朝其擧措を誤らんか、國運の前途は、實に測り知るべからざるものがある。之が打開を目指して深く其禍因に遡り、非常の決意を以て抜本塞源の處を講ぜねばならぬ時機に際会した。實は其時機すらも既に遅きの憾があるのである。
抑々内に充實強化の實なくして、如何にして堅實なる外交はあり得ようぞ。實は今日の如き一般情勢馴致の眞因も憂ふべき國内事情に根ざすものが頗る多いのである。則ち抜本塞源的處置も、國体の本義を明徴にし、國家活動の基本たる國内政治の是正を以て第一着手とすべきは論を俟たない。換言すれば日本主義を透徹せしめ、皇道政治を確立することが總ての先決問題である。是れなくして対外問題の光輝ある解決は到底庶幾することが、出來ぬ。然らば日本主義とは何ぞや。
苟くも帝國臣民として、一切を捧げて皇運扶翼に終始するは日本主義である。富貴榮達、放肆享樂其事自身わ以て行動究極の日的とするものは功利主義である。
皇國全體一家族國家たるの事實を明確に體識し、道義と相愛とを以て智能、材幹の推進力となし、總ての物質問題をして之に隨從せしめんとするは日本主義である。之に反し、物質的利害打算をして精神問題を支配せしめんとするは功利主義である。分裂、抗爭、道義頽廃、國家的衰運の淵源は功利主義であり、協同、和偕、明朗邁進、國家的飛躍の原動力は一に日本主義に胚胎する。故に日本主義と功利主義との間には妥協はない。抑々政策には互譲妥協を許すも、正邪順逆には妥協の片影すら容るゝべきものでない。天皇の臣民は、全部が日本主義者でなければならぬことは必然の道理である。
憲法發布せられてより既に五十年に垂んとして居る憲法は 天皇統治の大道であり同時に皇運扶翼に參ずる臣道の軌範であり、肇國本然の日本主義を顯揚せるものなるに拘らず、之に顯すべき政治運用機關の現狀は何事ぞ。
帝國議會は立法豫算等を通じて宏謨を翼賛すべき機關として、臣道躬行の神聖なる殿堂である。即ち階級利害の代表機關でもなく、政權爭奪の壇場でもなく、功利主義に立脚したる歐米諸國の議會とは其發生原理に於て苟も相容れざるものがある。然るに現在我國の繭會を觀るに、其職務運用の母胎をなせる既成諸政黨勿論無産黨を含めたる此等の諸黨は悉く民主民權の主張に其發生の機緣を有し、立黨の指導精神は功利主義の外に一歩も出づることが出來ない。是等政黨が過去の日本に殃したる事實を見來れば、歴々として其然る所以を指摘することが出來る。
功利主義によりて結威したる政黨は、單に議會占領に甘んぜず、更に進んで行政、司法等の諸機關にも侵入して惡政の淵源となる。教學は忠幸の純眞を失ひ、經濟は互助の美風を損じ、産業は相剋の苛辣に走り、道義立國の日本精神の消磨は、指導力と安定力の分裂抗爭となり、之を地方に及ぼしては打算、情實を以て織り成せる地盤を醸成し一大家族國家たるべき、皇國を權勢強奪の闘場たるに至らしめた。
諸弊の總ては是れ政洽が功利主義に立脚したるが爲である。彼等が政黨政治と誇稱する内容は同胞相剋であり、憲政常道と大呼する實質は、政權爭奪の妥協條件を内規せんとする詐謀に外ならぬ。其精神は正に違憲であり、日本主義の蹂躙である。勿論黨人中にも善良なる者尠からず、如何せん既成政黨の指導精神下にありては、點滴の清泉を以て大江の濁流に注ぐの憾なきを得ない。
日本主義こそは、斯くて憲政確立の運動であらねばならぬ。斯くて一切政治の淨化と向上の發酵素でなければならぬ。全的不安一掃の唯一無二の根源は此運動以外には断じて無い。
過去數年來の政局を回顧して、遺憾此上なきものは義憤遺る瀬なき多くの人々が、秋霜の國法をまで犯して、自ら非合法の死地に赴きたる悲壯の事實である。此事實を何と觀て然るべきであるか。彼等は悉く功利主義的政治の支配に激して法を省みるの遑がなかつたのだ。明かに既成政黨は功利主義的政治の大支柱として、彼等義憤の大因をなしたことは人皆周知するところであらう。然かも若し政界の現狀が今日の儘に續くならば、此深刻苛烈なる睨み合は永久に解消し難いものであることは自明の理ではあるまいか。何が故に解消し得ないか。日本主義は到底功利主義の前に屈服することが出來ないからである。
若槻内閣倒潰し、斎藤内閣成立して以來、今日迄の政局推移の蹤跡を仔細に點檢すれば意識的か、將又無意識的かは別として、尠なくとも日本主義と功利主義とを妥協せしめんとするか、乃至は其間に妥協點を見出さんとする政治であつた。然し其は不可能を可能となさんとし、火と水との妥協を策する徒勞に過ぎなかつた。國體明徴は斯かる老痴なる情實より生まれるものでは斷じてない。日本主義が功利主義を掃蕩することによりて、日本主義に即す獨自の議會檄能の全的發動となり、同じく行政司法の機能と相俟ちて、國體と體合する政治の更生、國策の遂行が生まれ、初めて難局は打開され、國民生活の安定も茲に求むることか出來るのである。
皇國が今や數ヶ國の武力と經濟力との侵攻に對抗し形勢の危急、旦に夕を測り得ざるものがある。此際、擧國一致は何物にも替へ難い生命的條件である。だが形式の擧國一致は益々國民不安の浪濤を高め、國民理想の昂揚を阻み、難關突破の前途に却つて暗雲を投ずるに過ぎぬ。眞實の皐國一致こそは、功利主義團體の一切を清算して、日本主義に基く安定勢力の結成の上に初めて共全貌を現はし得るものであることは明々白々の事理である。
時局協議會は實に此國家鎮護の安定勢力築成の目的の上に立つ。從つて既成政黨の清算を要求するは黨然であるが、齊しく至尊の赤子たる個々の政黨員が、本來の日本主義に覺醒し來たるならば.是れ又温かき手を伸べて歡迎するに決して吝なるものではない。
時局協議會は全會員悉く如上の信念に全國忠良の國民を動員し皇道政治の確立純正護憲運動を目がけて直往し、渾然一如の皇道日本を完成し悠久なる國基を振張し、以て國難打開に向つて邁進せんことを期する。之が爲め第一着手として國内充實強化の至大障碍たる個人、民主.唯物、功利思想の上に立つ既成諸勢力清算の目的を最も速に達威し以て皇道に歸一せしめんとするものである.
昭和十一年十二月二十一日
時局協議會第一回會員總會
副座長(男爵井田磐楠氏) 御諮り申上げます。只今橋本君に依りまして讀まれした聲明案、大體に於て御異議はございませぬか、御賛成を得たいと思ひますが如何でございますか。
〔異議なし」と呼ぶ者あり、(拍手)〕
副座長(男爵井田磐楠氏) 拍手に依りまして御賛成と認め御承認を得たものと認めます。(拍手)
引用・参照・底本
『第一回會員總會記事(昭和十一年十二月二十一日 於 東京麹町寶亭本店)』
時局協議會
「聲 明(案) 時局協議會 第一回會員總會(LIBRARY of CONGRESS httpswww.loc.govにも在り)
(国立国会図書館デジタルコレクション)