ロシアの無人偵察機「ランセット3」に米国の技術2024年05月13日 15:54

国立国会図書館デジタルコレクション「肥後不知火諾右衛門 見立呉服屋尽 ゑちこ (無題)」を加工して作成
 ロシアの無人偵察機「ランセット3」に米国の技術、特にエヌビディアのJetson TX-2 AIモジュールが使用されていることを強調し、軍民両用技術の普及に対する懸念を提起している。Jetson TX-2(註)のような部品が、台湾で製造され、中国で組み立てられている。

 さらに、ドローンのナビゲーション機能の精度と信頼性を高めるU-Blox Lea-m8s-0-10 GPSナビゲーション・システムなどのコンポーネントの重要性についても説明している。

 米国でチップ製造を増やすための努力が行われている一方で、特にDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の取り組みに関して、規制や政治的な障害があることを示唆している。同報告書は、ロシアにはマイクロエレクトロニクス製造インフラが不足していることが課題となっているが、軍事的進歩のために外国の技術を活用することに成功していると指摘している。

 究極的には、ロシアの無人機が西側の軍事装備品に有効であるなどの潜在的な結果を回避するために、特に軍事分野での先端技術の拡散を制御するためのより強力な措置を主張している。

【視点】

ウクライナにおけるロシアの兵器庫の重要な部分であるドローン

「Lancet-3」は、米国の技術であるNvidiaのJetson TX-2 AIモジュールを搭載している。

これは、アメリカの技術が潜在的に敵対的な国々の手に渡ってしまうという、より大きな問題を浮き彫りにしている。

特にこれらの部品を外国メーカーに依存していることを考慮すると、米国はそのような技術の普及を制御するためにもっと努力する必要があると主張している。

著者のStephen Bryenは、米国は次のようにすべきだと提案している。

AIハードウェアの国内生産拡大
特定の国へのそのような技術の流出を防ぐために、より厳しい規制を実施する。

・ランセットドローンの米国技術:ウクライナで効果を発揮しているロシアの無人機「ランセット3」は、組み込みシステム用のAIチップであるエヌビディアのJetson TX-2モジュールを使用しているという。

・NvidiaのJetson TX-2:このモジュールは、効率的な電力使用を備えた強力なAIコンピューターとして説明されている。2028年まで購入可能である。

・拡散に関する懸念:AIチップなどの先端技術がロシアや中国などの国に広がるのを防ぐために、米国が十分な対策を講じていないという懸念を表明している。

・米国の支配権をめぐる課題:その理由としては、オフショア製造と、米国の新しい生産施設が稼働するのに必要な時間が含まれる。

・考えられる解決策:米国のチップ生産の増加を示唆し、その方向への一歩としてチップ法に言及している。米国の規制環境がこれらの資金の使用を遅らせていると批判している。

・ロシアの状況:ロシアが国内でチップを製造していないことは、脆弱性と見なされている。

・米国がAI技術を制御し、兵器への使用に対抗する方法を見つけることが急務であることを強調している。

・ランセットドローンに搭載されたアメリカのAIチップ:ロシアがウクライナで使用しているドローン「Lancet-3」は、米エヌビディアが開発したAIモジュール「Jetson TX-2」を使用していると報じられている。

・Jetson TX-2 の機能:このモジュールは、アプリケーションをエッジに持つ(つまり、デバイス上でローカルに処理される)強力で効率的なAIコンピューティングデバイスとして説明されている。

・拡散に関する懸念:著者は、他国が軍事目的に利用しかねない先端技術の普及を米国が十分に防いでいないことに懸念を表明している。

・制御の課題:複数の国が関与する複雑な製造プロセスのために、このような技術の流れを制御することの課題を強調している。

・考えられる解決策:米国は独自のチップ製造能力の構築に注力し、他国と協力してAI技術の普及を抑制する必要があると提案している。

・著者は次のようにも述べている。

米国の取り組み:チップ法は、米国政府が国内のチップ生産に補助金を出すためのイニシアチブである。

ロシアの不利な点:ロシアには高度なマイクロエレクトロニクス製造インフラがないため、そのような技術を他国に依存している。

【註】
Jetson TX-2は、Nvidiaが開発した組み込みAIコンピューティングデバイスである。エッジで高性能なAIコンピューティングを提供するように設計されているため、クラウドベースの処理に頼るのではなく、複雑なAIアルゴリズムをデバイス上でローカルに処理できる。この機能は、ロボティクス、自律走行車、ドローン、産業用IoT(モノのインターネット)デバイスなど、リアルタイム処理が重要なアプリケーションに特に役立つ。

Jetson TX-2 の主な機能は次のとおり。

NVIDIA Pascal GPU: Pascal アーキテクチャに基づく GPU は、AI 処理タスクに高い計算能力を提供する。

8GBのメモリ:このデバイスには8GBのメモリが搭載されており、大規模なデータセットや複雑なAIモデルを効率的に処理できる。

高いメモリ帯域幅: 59.7GB/秒のメモリ帯域幅を備えた Jetson TX-2 は、データにすばやくアクセスして処理できるため、全体的なパフォーマンスが向上する。

電力効率: Jetson TX-2 は、その高性能にもかかわらず、電力効率が高く、消費電力がわずか 7.5 ワットになるように設計されている。これにより、電力に制約のある環境での展開に適している。

標準ハードウェア・インターフェース:このモジュールは、さまざまな標準ハードウェア・インターフェースを備えているため、幅広い製品やフォーム・ファクタに簡単に統合できる。

Jetson TX-2 は、開発者がリアルタイム処理と低消費電力を必要とする AI 搭載アプリケーションを構築することを可能にし、エッジ コンピューティング 展開に人気のある選択肢となっている。

・エッジコンピューティング(Edge Computing)は、データ処理や解析をクラウドデータセンターから離れた「エッジ」、つまりデータの生成源や使用地点の近くで行うコンピューティングの手法である。このアプローチでは、データを生成するデバイスやセンサーに近い場所でデータ処理を行うことで、リアルタイム性やプライバシー、帯域幅の節約などの利点を享受できる。

エッジコンピューティングの主な特徴や利点は次のとおり。

リアルタイム性: データをエッジで処理することで、遅延を最小限に抑えてリアルタイムでの応答や意思決定を可能にする。特に、自動運転車両、産業ロボット、医療機器などのアプリケーションでは、リアルタイムの処理が重要である。

帯域幅の節約: エッジでデータを処理することで、クラウドへのデータ転送量を減らすことができる。これにより、ネットワークの帯域幅を節約し、データ転送に伴うコストを削減できる。

プライバシーとセキュリティ: エッジでデータを処理することで、個人情報や機密情報などのデータを安全に保護できる。また、データが企業や組織の内部で処理されるため、クラウドへのデータ転送に関するセキュリティリスクを軽減できる。

スケーラビリティ: エッジコンピューティングは、クラウドと組み合わせて使用することで、アプリケーションのスケーラビリティを向上させることができる。エッジで処理されたデータは、必要に応じてクラウドに転送され、追加の処理や分析が行われることがある。

断続的な接続: エッジコンピューティングは、インターネット接続が不安定な環境や、オフラインでのデータ処理が必要な場合に特に有用である。エッジでデータを処理することで、ネットワーク接続が利用できない状況でもアプリケーションを実行できる。

エッジコンピューティングは、IoT(Internet of Things)デバイスやセンサー、スマートフォン、自動車など、さまざまなデバイスやアプリケーションに広く適用されている。

(註はブログ作成者が参考の為に付記した。)

 【桃源寸評】

 攻撃、つまり戦争などを想定するのならば、原子力潜水艦などは如何なものか。
 また、日本の核汚染水の海洋投棄なども話題に挙げるとよい。

引用・参照・底本

Russia’s killer Lancet drone runs on American AI ASIATIMES 2024.05.06

https://asiatimes.com/2024/05/chinas-floating-nuke-plants-up-south-china-sea-ante/?mc_cid=a95de1cb4f&mc_eid=69a7d1ef3c

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