【桃源閑話】 徳川幕府と日本国憲法2024年05月31日 11:13

 【1】徳川の体制(徳川幕府)と戦後憲法(日本国憲法)には、いくつかの類似点がある。

 1. 中央集権化

 徳川の体制

 徳川幕府は、全国を統治するために強力な中央集権体制を確立した。幕府は大名を統制し、彼らが独立して権力を持つことを防ぐために、参勤交代制度を導入した。

 戦後憲法

 日本国憲法も中央集権的な政府を想定している。特に行政権の集中を図るため、内閣を中心とした政府機構が設置された。

 2. 法治主義の強調

 徳川の体制

 徳川幕府は、法令を整備し、それに基づいて統治を行った。幕府は法の下での秩序を重視し、法律や規則に基づいた統治を行った。

 戦後憲法

 日本国憲法も法治主義を基礎としている。憲法そのものが最高法規として位置づけられ、すべての法律や政府の行動は憲法に従う必要がある。

 3. 平和の維持

 徳川の体制

 徳川幕府は、戦国時代の混乱を終わらせ、平和を維持することを重要視した。江戸時代は約250年間にわたり、比較的平和で安定した時代であった。

 戦後憲法

 日本国憲法第9条では、戦争の放棄と戦力の不保持が明記されており、戦後日本は平和主義を掲げている。憲法は平和の維持と国際協調を重視している。

 4. 経済と社会の安定

 徳川の体制

 徳川幕府は、経済や社会の安定を図るためにさまざまな政策を実施した。農業生産の奨励や貨幣制度の整備などがその例である。

 戦後憲法

 日本国憲法も経済と社会の安定を重視している。特に、憲法第25条では「全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」として、社会保障制度の整備を求めている。

 これらの類似点は、徳川幕府と戦後憲法がそれぞれの時代において安定と秩序を重視し、法に基づいた統治を行うことを目指したことを示している。しかし、もちろんその具体的な内容や手段は異なり、歴史的背景や国際環境の違いも考慮する必要がある。
 
【視点】

1. 中央集権化

徳川の体制

徳川幕府は1603年に設立され、約260年間にわたり日本を統治した。幕府は、将軍を頂点とする強力な中央集権体制を構築した。将軍の権威を支えるため、各地の大名に対する統制が厳格に行われました。その具体例として、以下の点が挙げられる。

参勤交代制度: 大名が一定期間江戸に滞在し、その後に領地に戻るという制度。これにより、大名の経済力を削ぎ、反乱のリスクを低減した。

幕藩体制: 全国を幕府直轄地(天領)と藩に分け、藩主(大名)は幕府に忠誠を誓うことを義務付けられました。これにより、地方の独立性を制限した。

戦後憲法

1947年に施行された日本国憲法も、行政権の集中を図り、効率的な中央政府を目指しました。特に、内閣を中心とした行政機構の強化が図られた。具体的には以下の点が挙げられる。

内閣制度: 総理大臣を中心とした内閣が行政権を行使し、内閣総理大臣が国会に対して責任を負う体制。

地方自治の規定: 地方自治体の権限を認めつつも、中央政府の監督下に置くことで、全国的な統一性を維持した。

2. 法治主義の強調

徳川の体制

徳川幕府は、武家諸法度や公事方御定書などの法令を制定し、それに基づいて統治を行った。これにより、法に基づく統治と秩序の維持が図られた。具体例としては以下がある。

武家諸法度: 大名や武士階級に対する規則を定めた法典。これにより、武士階級の行動が統制された。

公事方御定書: 裁判や行政手続きに関する規定をまとめた法典。これにより、法に基づいた公平な裁判が行われるようになった。

戦後憲法

日本国憲法は、法治主義を基本原則とし、憲法自体が最高法規として位置づけられています。以下の点がその特徴である。

憲法の最高法規性: 憲法はすべての法律、命令、その他の行動に対する最高の基準として機能する。これにより、政府の行動は憲法に従う必要がある。

独立した司法: 裁判所が憲法に基づいて法律や政府の行動を審査し、違憲と判断された場合にはそれを無効にする権限を持つことが保障されている。

3. 平和の維持

徳川の体制

徳川幕府は、戦国時代の終焉をもたらし、平和と安定をもたらした。特に以下の点が重要である。

鎖国政策: 外国との接触を制限することで、国内の平和と安定を維持した。これにより、外国からの干渉や内乱の原因を減少させた。

治安の維持: 幕府は、全国の治安維持を図るために、警察機能や情報網を発展させた。

戦後憲法

日本国憲法は第9条において戦争の放棄と戦力の不保持を明記しており、平和主義を国是としている。以下の点がその具体例である。

第9条: 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」これにより、日本は国際社会において平和国家としての地位を確立した。

国際協力: 日本は国際連合などの国際機関を通じて、積極的な平和維持活動や人道支援に参加している。

4. 経済と社会の安定

徳川の体制

徳川幕府は、農業の奨励や貨幣制度の整備などを通じて経済の安定を図った。具体例として以下が挙げられる。

農業奨励: 農地の開発や灌漑施設の整備を進め、農業生産を増加させた。これにより、飢饉や農村の疲弊を防いだ。

貨幣制度の整備: 金銀銭の鋳造や流通の管理を通じて、経済の安定化を図った。

戦後憲法

日本国憲法も社会の安定と経済の繁栄を目指している。特に、以下の点がその具体例である。

第25条: 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」これにより、社会保障制度の整備が進められた。

経済の自由と公正: 憲法は、経済活動の自由を保障しつつも、公正な競争と富の公平な分配を促進するための規定を設けている。

これらの類似点は、徳川幕府と戦後憲法がそれぞれの時代において社会の安定と秩序を維持し、法に基づく統治を行うことを重視していたことを示している。ただし、その具体的な手段や方法は歴史的背景や国際環境の違いにより異なることも重要な点である。

【要点】

中央集権化

・徳川の体制

将軍を頂点とする強力な中央集権体制。
参勤交代制度により大名の経済力と独立性を制限。
幕藩体制で大名を統制。

・戦後憲法

内閣を中心とした行政機構の強化。
地方自治の権限を認めつつも中央政府の監督下に置く。
法治主義の強調

・徳川の体制

武家諸法度や公事方御定書などの法令を制定し、法に基づく統治。
武家諸法度で武士階級を統制。
公事方御定書で公平な裁判を実施。

・戦後憲法

憲法を最高法規とし、政府の行動は憲法に従う必要がある。
裁判所が法律や政府の行動を審査し、違憲判断を行う権限を持つ。
平和の維持

・徳川の体制

鎖国政策により外国との接触を制限し、国内の平和を維持。
幕府の警察機能や情報網で全国の治安を維持。

・戦後憲法

第9条で戦争の放棄と戦力の不保持を明記。
国際連合などを通じた平和維持活動や人道支援への参加。
経済と社会の安定

・徳川の体制

農地の開発や灌漑施設の整備で農業生産を奨励。
金銀銭の鋳造や流通の管理で経済の安定を図る。

・戦後憲法

第25条で健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障。
経済活動の自由を保障し、公正な競争と富の公平な分配を促進。

これらのポイントから、徳川幕府と戦後憲法がいずれも安定と秩序を重視し、法に基づく統治を行っていたことが分かる。ただし、具体的な政策や手段は異なる。

 【2】徳川の天皇制と戦後憲法の天皇制についての類似点

 徳川の体制(江戸時代)と戦後憲法(日本国憲法)における天皇制には、いくつかの類似点がある。以下に箇条書きでその類似点を説明する。

 ・天皇の象徴的存在

 徳川の体制

 天皇は京都に住み、主に儀式や宗教的な役割を担っていた。
 実質的な政治権力は将軍が握っており、天皇は象徴的な存在とされていた。

 戦後憲法

 日本国憲法第1条で天皇は「日本国および日本国民統合の象徴」と定義されている。

 天皇は政治的な権力を持たず、国政に関する権能を有しない。

 ・宗教的・文化的役割の強調

 徳川の体制

 天皇は神道の最高祭司としての役割を果たし、国家の宗教的儀式や伝統行事を執り行った。

 皇室の存在は国家の伝統や文化の象徴として重要視されていた。

 戦後憲法

 天皇は国家および国民の儀式において重要な役割を担う。
 皇室の行事や儀式は、文化的・伝統的な象徴として続けられている。

 ・法的枠組みの中での位置付け

 徳川の体制

 天皇の地位や権限は形式的に定められており、幕府の法的枠組みの中でその役割が規定されていた。

 幕府は天皇の権威を利用して自らの正当性を強化しつつ、実際の政治権力は幕府に集中させた。

 戦後憲法

 天皇の地位や役割は日本国憲法および皇室典範で明確に定められている。

 天皇は象徴天皇制の下、法的枠組みの中で象徴としての役割を果たす。

 ・政治的中立の維持

 徳川の体制

 天皇は政治的な決定や権力闘争から距離を置き、幕府の支配に従属する形で存在していた。

 政治的中立を保つことで、天皇の宗教的・文化的権威が維持された。

 戦後憲法

 天皇は憲法により国政に関する権能を有しないと明記されており、政治的中立を厳格に保つ。

 天皇は公務や儀式を通じて国家と国民の統合の象徴としての役割を果たす。

 これらの点を通じて、徳川幕府の時代と戦後憲法の時代の天皇制には、象徴的な存在としての共通点が見られる。いずれの場合も、天皇は実質的な政治権力を持たず、文化的・宗教的な役割を強調される形で位置付けられている。

【視点】

徳川の天皇制と戦後憲法の天皇制の類似点

徳川の体制(江戸時代)と戦後憲法(日本国憲法)における天皇制には多くの類似点が見られる。以下に、それぞれの時代における天皇制の具体的な特徴を詳細に説明し、その類似点を明確にする。

1. 天皇の象徴的存在

徳川の体制

象徴的存在: 徳川幕府の時代、天皇は主に儀礼的な役割を担っていた。天皇は京都に住み、実際の政治権力は将軍が握っていた。

政治的権威の利用: 幕府は天皇の権威を利用して、自らの統治の正当性を強化した。例えば、将軍の任命や幕府の政策の承認において、形式的に天皇の承認を得ることで、幕府の権威を高めた。

戦後憲法

象徴的存在: 日本国憲法第1条において、天皇は「日本国および日本国民統合の象徴」とされている。天皇は国家や国民の統合の象徴としての役割を果たしている。

政治的権能の否定: 憲法第4条では、天皇は国政に関する権能を有しないと明記されており、天皇は実質的な政治権力を持たない。

2. 宗教的・文化的役割の強調

徳川の体制

神道の最高祭司: 天皇は神道の最高祭司として、国家の重要な宗教的儀式を執り行っていた。これにより、天皇の宗教的権威が強調された。

文化的象徴: 皇室は日本の伝統や文化の象徴とされ、天皇の存在は日本の文化的アイデンティティを維持するために重要視された。

戦後憲法

儀礼的役割: 天皇は新年祝賀の儀、立春の大嘗祭など、国家および国民にとって重要な儀礼を執り行う。これにより、天皇は依然として宗教的・文化的な象徴としての役割を果たしている。

文化的象徴: 皇室行事や伝統的な儀式は続けられ、天皇の存在は依然として日本の文化や伝統の象徴とされている。

3. 法的枠組みの中での位置付け

徳川の体制

法的枠組み: 天皇の地位や権限は幕府の法的枠組みの中で規定されていた。幕府の政策や統治の正当性を支えるために天皇の権威が利用されたが、実際の統治権は幕府に集中していた。

形式的な権威: 天皇の権限は形式的なものであり、実質的な政治決定には関与しなかった。

戦後憲法

憲法と皇室典範: 日本国憲法および皇室典範により、天皇の地位や権限が明確に定められている。これにより、天皇の役割が法的に保障されている。

象徴天皇制: 天皇は象徴天皇制の下で、実質的な政治権力を持たないが、法的枠組みの中で象徴としての役割を果たす。

4. 政治的中立の維持

徳川の体制

政治的中立: 天皇は政治的決定や権力闘争から距離を置き、幕府の支配に従属する形で存在していた。政治的な中立を保つことで、天皇の宗教的・文化的権威が維持された。

幕府の支配: 幕府は天皇を形式的に尊重しつつも、実質的な政治権力を握っていた。

戦後憲法

政治的中立: 日本国憲法第4条により、天皇は国政に関する権能を有しないとされ、政治的中立を厳格に保っている。

象徴としての役割: 天皇は公務や儀式を通じて国家と国民の統合の象徴としての役割を果たすが、政治的な決定には関与しない。

これらの点から、徳川幕府の時代と戦後憲法の時代の天皇制には、天皇が象徴的存在として位置づけられ、政治的権力を持たないという共通点が見られる。両時代において、天皇は主に宗教的・文化的な役割を果たし、その存在が法的枠組みの中で明確に定義されていた。

【要点】

天皇の象徴的存在

徳川の体制

天皇は京都に住み、儀礼的・宗教的な役割を担う。
実質的な政治権力は将軍が握り、天皇は象徴的存在。
幕府は天皇の権威を利用して統治の正当性を強化。

戦後憲法

日本国憲法第1条で天皇は「日本国および日本国民統合の象徴」と定義。
天皇は政治的権能を持たず、象徴的存在。
宗教的・文化的役割の強調

徳川の体制

天皇は神道の最高祭司として国家の宗教的儀式を執り行う。
皇室は国家の伝統や文化の象徴とされる。

戦後憲法

天皇は国家の重要な儀礼や伝統行事を執り行う。
皇室の行事や儀式は文化的・伝統的象徴として続けられる。
法的枠組みの中での位置付け

徳川の体制

天皇の地位や権限は幕府の法的枠組みで規定。
天皇の権限は形式的で、実質的な政治権力は幕府に集中。

戦後憲法

日本国憲法および皇室典範で天皇の地位や権限を明確に規定。
天皇は象徴天皇制の下で法的枠組みに従い象徴的役割を果たす。

政治的中立の維持

徳川の体制

天皇は政治的決定や権力闘争から距離を置く。
政治的中立を保ち、幕府の支配に従属。

戦後憲法

憲法第4条で天皇は国政に関する権能を持たないと明記。
天皇は公務や儀式を通じて政治的中立を保つ。

 【3】天皇を象徴

宮内記者会代表質問
問1 両陛下にお尋ねいたします。ご成婚の日から50年の月日が流れ,高度成長期からバブル崩壊,いくつもの自然災害や景気悪化など,世相,人の価値観も大きく変わる中,両陛下も皇室に新しい風を吹き込まれてきました。皇太子同妃両殿下として,天皇皇后両陛下として夫婦二人三脚で歩んできたこの50年を振り返り,お二人で築きあげてきた時代にふさわしい新たな皇室のありよう,一方で守ってこられた皇室の伝統についてお聞かせいただくとともに,それを次世代にどう引き継いでいかれるのかもお聞かせください。
天皇陛下
私どもの結婚50年を迎える日も近づき,多くの人々からお祝いの気持ちを示されていることを誠にうれしく,深く感謝しています。ただ国民生活に大きく影響を与えている厳しい経済情勢のさなかのことであり,祝っていただくことを心苦しくも感じています。

顧みますと,私どもの結婚したころは,日本が,多大な戦禍を受け,310万人の命が失われた先の戦争から,日本国憲法の下,自由と平和を大切にする国として立ち上がり,国際連合に加盟し,産業を発展させて,国民生活が向上し始めた時期でありました。その後の日本は,更なる産業の発展に伴って豊かになりましたが,一方,公害が深刻化し,人々の健康に重大な影響を与えるようになりました。また都市化や海,川の汚染により,古くから人々に親しまれてきた自然は,人々の生活から離れた存在となりました。結婚後に起こったことで,日本にとって極めて重要な出来事としては,昭和43年の小笠原村の復帰と昭和47年の沖縄県の復帰が挙げられます。両地域とも先の厳しい戦争で日米双方で多数の人々が亡くなり,特に沖縄県では多数の島民が戦争に巻き込まれて亡くなりました。返す返すも残念なことでした。一方,国外では平成になってからですが,ソビエト連邦が崩壊し,より透明な平和な世界ができるとの期待が持たれましたが,その後,紛争が世界の各地に起こり,現在もなお多くの犠牲者が生じています。今日,日本では人々の努力によって,都市などの環境は著しく改善し,また自然環境もコウノトリやトキを放鳥することができるほど改善されてきましたが,各地で高齢化が進み,厳しい状況になっています。ますます人々が協力し合って社会を支えていくことが重要になってきています。私どもはこのように変化してきた日本の姿と共に過ごしてきました。様々なことが起こった50年であったことを改めて感じます。

皇后は結婚以来,常に私の立場と務めを重んじ,また私生活においては,昭和天皇を始め,私の家族を大切にしつつ私に寄り添ってきてくれたことをうれしく思っています。不幸にも若くして未亡人となった私の姉の鷹司神宮祭主のことはいつも心に掛け,那須,軽井沢,浜名湖でよく夏を一緒に過ごしました。姉は自分の気持ちを外に表さない性格でしたが,あるとき,昭和天皇から私どもと大変楽しく過ごしたと聞いたがどのように過ごしたのかというお話があったことがありました。皇后は兄弟の中で姉だけを持たず,私との結婚で姉ができたことがうれしく,誘ってくれていたようなのですが,このときの昭和天皇が大変喜ばれた様子が今でも思い出されます。私ども二人は育った環境も違い,特に私は家庭生活をしてこなかったので,皇后の立場を十分に思いやることができず,加えて大勢の職員と共にする生活には戸惑うことも多かったと思います。しかし,何事も静かに受け入れ,私が皇太子として,また天皇として務めを果たしていく上に,大きな支えとなってくれました。

時代にふさわしい新たな皇室のありようについての質問ですが,私は即位以来,昭和天皇を始め,過去の天皇の歩んできた道に度々に思いを致し,また,日本国憲法にある「天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であるという規定に心を致しつつ,国民の期待にこたえられるよう願ってきました。象徴とはどうあるべきかということはいつも私の念頭を離れず,その望ましい在り方を求めて今日に至っています。なお大日本帝国憲法下の天皇の在り方と日本国憲法下の天皇の在り方を比べれば,日本国憲法下の天皇の在り方の方が天皇の長い歴史で見た場合,伝統的な天皇の在り方に沿うものと思います。

守ってきた皇室の伝統についての質問ですが,私は昭和天皇から伝わってきたものはほとんど受け継ぎ,これを守ってきました。この中には新嘗祭のように古くから伝えられてきた伝統的祭祀もありますが,田植えのように昭和天皇から始められた行事もあります。新嘗祭のように古い伝統のあるものはそのままの形を残していくことが大切と考えますが,田植えのように新しく始められた行事は,形よりはそれを行う意義を重視していくことが望ましいと考えます。したがって現在私は田植え,稲刈りに加え,前年に収穫した種籾を播くことから始めています。学士院賞や芸術院賞受賞者などを招いての茶会なども皇后と共に関係者と話し合い,招かれた全員と話ができるように形式を変えました。短時間ではありますが,受賞者,新会員皆と話をする機会が持て,私どもにとっても楽しいものになりました。

皇室の伝統をどう引き継いでいくかという質問ですが,先ほど天皇の在り方としてその望ましい在り方を常に求めていくという話をしましたが,次世代にとってもその心持ちを持つことが大切であり,個々の行事をどうするかということは次世代の考えに譲りたいと考えます。

皇后陛下
50年前,普通の家庭から皇室という新しい環境に入りましたとき,不安と心細さで心が一杯でございました。今日こうして陛下のおそばで,金婚の日を迎えられることを,本当に夢のように思います。

結婚以来,今日まで,陛下はいつもご自分の立場を深く自覚なさり,東宮でいらしたころには将来の象徴として,後に天皇におなりになってからは,日本国,そして国民統合の象徴として,ご自分のあるべき姿を求めて歩んでこられました。こうしたご努力の中で,陛下は国や人々に寄せる気持ちを時と共に深められ,国の出来事や人々の喜び悲しみにお心を添わせていらしたように思います。

50年の道のりは,長く,時に険しくございましたが,陛下が日々真摯しんしにとるべき道を求め,指し示してくださいましたので,今日までご一緒に歩いてくることができました。陛下のお時代を,共に生きることができたことを,心からうれしく思うとともに,これまで私の成長を助け,見守り,励ましてくださった大勢の方たちに感謝を申し上げます。

質問の中にある「皇室」と「伝統」,そして「次世代への引き継ぎ」ということですが,陛下はご即位に当たり,これまでの皇室の伝統的行事及び祭祀とも,昭和天皇の御代のものをほぼ全部お引き継ぎになりました。また,皇室が過去の伝統と共に,「現代」を生きることの大切さを深く思われ,日本各地に住む人々の生活に心を寄せ,人々と共に「今」という時代に丁寧にかかわりつつ,一つの時代を築いてこられたように思います。

伝統と共に生きるということは,時に大変なことでもありますが,伝統があるために,国や社会や家が,どれだけ力強く,豊かになれているかということに気付かされることがあります。一方で型のみで残った伝統が,社会の進展を阻んだり,伝統という名の下で,古い慣習が人々を苦しめていることもあり,この言葉が安易に使われることは好ましく思いません。

また,伝統には表に現れる型と,内に秘められた心の部分とがあり,その二つが共に継承されていることも,片方だけで伝わってきていることもあると思います。WBCで活躍した日本の選手たちは,鎧よろいも着ず,切腹したり,ゴザルとか言ってはおられなかったけれど,どの選手も,やはりどこか「さむらい」的で,美しい強さをもって戦っておりました。

陛下のおっしゃるように,伝統の問題は引き継ぐとともに,次世代にゆだねていくものでしょう。私どもの時代の次,またその次の人たちが,それぞれの立場から皇室の伝統にとどまらず,伝統と社会との問題に対し,思いを深めていってくれるよう願っています。
 
【視点】

「顧みますと,私どもの結婚したころは,日本が,多大な戦禍を受け,310万人の命が失われた先の戦争から,日本国憲法の下,自由と平和を大切にする国として立ち上がり,国際連合に加盟し,産業を発展させて,国民生活が向上し始めた時期でありました。」

「時代にふさわしい新たな皇室のありようについての質問ですが,私は即位以来,昭和天皇を始め,過去の天皇の歩んできた道に度々に思いを致し,また,日本国憲法にある「天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であるという規定に心を致しつつ,国民の期待にこたえられるよう願ってきました。象徴とはどうあるべきかということはいつも私の念頭を離れず,その望ましい在り方を求めて今日に至っています。なお大日本帝国憲法下の天皇の在り方と日本国憲法下の天皇の在り方を比べれば,日本国憲法下の天皇の在り方の方が天皇の長い歴史で見た場合,伝統的な天皇の在り方に沿うものと思います。」

【要点】

 「明仁上皇は『天皇を主権者』と規定する『大日本帝国憲法』は、日本の長い歴史と伝統のなかで異質なものであり、その異質な体制の下で三一〇万人もの命が失われる戦争の惨禍がもたらされたこと、『天皇を象徴』とする日本国憲法の方が、日本の歴史のなかの天皇制の伝統に合致するものであると認識している。」『江戸の憲法構想 日本近代史の〝イフ〟』関 良基著 2024年3月30日 初版第1刷発行 作品社 48頁

 「徳川の体制は、さまざまな点で、第二次大戦後の日本の体制と類似する点があります。第一に象徴天皇制です。[……]第二に、全般的な非軍事化です。[……]戦後憲法一条と九条の先行形態として見いだすべきものは、明治憲法ではなく、徳川の国制(憲法)です。[……]ある意味で明治以前のものへの回帰なのです。」同上書 47頁

引用・参照・底本

「天皇皇后両陛下御結婚満50年に際して(平成21年)」から抜粋

会見年月日:平成21年4月8日 会見場所:宮殿 石橋の間

https://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/kaiken/kaiken-h21-gokekkon50.html

『江戸の憲法構想 日本近代史の〝イフ〟』関 良基著 2024年3月30日 初版第1刷発行 作品社

米国は中国に何を求めているのか2024年05月31日 15:01

国立国会図書館デジタルコレクション「青楼美人合 第5冊」を加工して作成
 フォーリン・アフェアーズ誌の記事「アメリカは中国に何を求めているのか?」は、マット・ポッティンジャーとマイク・ギャラガーの論文「勝利に代わるものはない」に反応して、米国の対中戦略に関する数人の専門家による議論を取り上げている。主な寄稿者には、ラッシュ・ドシ、ジェシカ・チェン・ワイス、ジェームズ・B・スタインバーグ、ポール・ヒア、そしてポッティンジャーとギャラガー自身が含まれる。

 バイデン政権の戦略:

 ポッティンジャー氏とギャラガー氏による批判:バイデン政権の対中政策は抑制的すぎると批判し、対ソ冷戦戦略に似せて、際限のない競争を受け入れる戦略を主張し、より対決的な姿勢を提案している。彼らは、これが最終的に中国共産党(CCP)の崩壊につながると信じている。

 Doshiの回答:Doshiは、中国はソビエト連邦とは異なり、世界経済に深く統合されており、かなりの産業力と技術力を持っているため、この比較には欠陥があると主張している。彼は、そのような対立的なアプローチは危険なエスカレーションにつながり、米国の同盟国を遠ざける可能性があると警告している。

 コンペティションの管理

 ポッティンジャーとギャラガーの見解:彼らは、米国は競争を管理するのではなく、競争に完全に勝つことに集中すべきだと主張している。これが力を誇示し、中国を抑止すると信じているのだ。

 Doshiの反論:Doshiは、エスカレーションを回避し、同盟を維持するために競争を管理することの重要性を強調している。彼は、明確なコミュニケーションと外交が誤解を防ぎ、紛争のリスクを減らすのに役立つと主張している。バイデン政権の戦略には、米国の強みを活性化し、同盟国と連合を組んで中国と効果的に競争することが含まれているとドシ氏は指摘する。

 超党派の支持と共通基盤

 政策の重複:レトリックの違いはあるものの、ポッティンジャー氏とギャラガー氏が提案した政策と、バイデン政権がすでに実施している政策には大きな重複がある。これらには、米国の防衛産業基盤、技術的リーダーシップ、経済安全保障を強化するための措置が含まれる。

 超党派の取り組み:Doshi氏は、中国の影響力に対抗することを目的とした多くのイニシアチブが超党派的であることを強調し、中国に対する強力で競争力のある姿勢の必要性について幅広いコンセンサスがあることを示唆している。

 バイデン政権が講じた実践的な措置

 国内投資:トランプ政権は、国内の競争基盤を強化するために、米国のインフラ、技術、クリーンエネルギーへの投資に注力してきた。

 同盟とパートナーシップ:同盟を強化するための取り組みには、AUKUS、クアッドなどの協定、オーストラリア、日本、フィリピンなどの国々との軍事協力の強化が含まれる。これらのイニシアチブは、中国の地域的野心を相殺することを目的としている。

 経済・技術対策:政権は重要技術の輸出管理を実施し、中国への対外投資をスクリーニングし、サプライチェーンと重要インフラを確保するための措置を講じた。

 対立の強調の過度な批判

 Doshiの主張:Doshiは、野放図な対立的アプローチは逆効果であり、どちらの側も効果的に管理できないエスカレーションスパイラルにつながる可能性があると警告している。彼は、安定を確保し、不必要な紛争を回避するために、競争的措置と外交的関与を含むバランスの取れた戦略を主張している。

 ・フォーリン・アフェアーズ誌の議論は、米国の対中戦略に関する微妙な議論を反映している。ポッティンジャー氏とギャラガー氏がより攻撃的で対立的なアプローチを提唱する一方で、ドシ氏らは競争と外交を組み合わせたバランスの取れた戦略を主張している。

 ・バイデン政権の現在のアプローチは、米国の強みを再構築し、同盟国と連携し、競争を管理してエスカレーションを回避することを目的としており、中国がもたらす複雑な課題に対する実践的かつ慎重な対応を示している。

 ジェシカ・チェン・ワイスとジェームズ・B・スタインバーグの論文は、ポッティンジャーとギャラガーが提唱した対立的な冷戦アプローチに反対し、米国と中国の疎遠の危険性を強調している。

 複雑な関係

 イデオロギーの違い、経済競争、地政学的な緊張による中国との関係管理の難しさを認識している。

 微妙な理解

 中国の対外政策を理解し、米国の力の源泉を認識することの重要性を強調する。

 ポッティンジャーとギャラガーの批判

 彼らの攻撃的なアプローチは幻想であり、中国の自由の大義にとって有害であると退ける。

 冷戦時代を彷彿とさせる危険な対決の危険を冒すことを警告する。

 圧力の非効率性

 中国に圧力をかけようとする米国の取り組みが裏目に出て、権威主義的支配とナショナリスト感情を強める可能性があると主張している。

 世論

 世論調査では、軍事衝突を避け、中国を敵ではなく競争相手と見なす傾向が示されている。

 外交の必要性

 気候変動や公衆衛生などの相互の懸念に関する外交と協力を通じて緊張を緩和することを提唱している。

 長期的視点

 米国の強みを活用し、関係の安定化に重点を置いた「長期戦」を提案する。

 エンゲージメントの重要性

 政策の不一致にもかかわらず、文化・経済交流などを通じて中国と関わることの価値を強調する。

 ノスタルジアに対する注意

 ・ポッティンジャーとギャラガーの冷戦時代への郷愁を批判し、世界的な緊張と紛争を特徴とする時代をロマンチックに描くことに警告している。

 ・ワイス氏とスタインバーグ氏は、米中関係の複雑さを管理し、疎遠の危険を回避するために、戦略的競争と外交を組み合わせたバランスの取れたアプローチを提唱している。
 
【視点】

フォーリン・アフェアーズ誌の記事「アメリカは中国に何を求めているのか?」について、米国の対中戦略をめぐる議論における各寄稿者の立場と主張を含めて、より詳細に分析する。

概要

この記事は、マット・ポッティンジャー氏とマイク・ギャラガー氏の、より攻撃的な米国の対中戦略の提案に反応する複数の専門家による包括的な議論である。

ラッシュ・ドシ:外交問題評議会の中国戦略イニシアチブのディレクターであり、国家安全保障会議の中国・台湾問題担当の元副上級部長。

ジェシカ・チェン・ワイスとジェームズ・B・スタインバーグ:国際関係の著名な学者。

ポール・ヒア:東アジア研究の専門家。

マット・ポッティンジャーとマイク・ギャラガー:中国に対する強硬なアプローチを提唱する最初の挑発的な記事「勝利に代わるものはない」の著者。

コア意見

ポッティンジャーとギャラガーの提案

対決姿勢

バイデン政権が中国に対して十分に強硬でないと批判している。
彼らはソ連に対する冷戦に似た戦略を主張し、無制限の競争を提唱し、中国共産党の崩壊を待っている。

彼らの信念は、米国は競争を管理するのをやめ、代わりに中国に対する完全な勝利に集中すべきだというものだ。

歴史的なアナロジー

彼らは、米国の対ソ戦略と類似しており、同様のアプローチが中国の共産主義体制の崩壊につながる可能性があることを示唆している。

彼らは、中国の体制は本質的に不安定であり、圧力の下で崩壊する傾向があると考え、米国は決定的な勝利に備えるべきだと提案している。

具体的な政策提言

インド太平洋地域における米軍のプレゼンスと能力を強化するための年間200億ドルの抑止基金。
無人システムと長距離ミサイルへの投資拡大。
輸出管理や投資制限を含む経済的・技術的措置の拡大。

Rush Doshiの回答

対立の批判

ドシは、ポッティンジャーとギャラガーのアプローチは危険であり、明確な利益なしに危険なエスカレーションにつながる可能性があると主張している。

彼は、中国はソビエト連邦とは異なり、世界経済に深く組み込まれており、その崩壊は現実的でも望ましい目標でもない、と強調する。

戦略的経営

バイデン政権の戦略は、不必要な紛争やエスカレーションを避けるために、中国との競争を管理することに重点を置いている。

ドシは、競争と外交的関与を組み合わせたバランスの取れたアプローチを提唱し、緊張が制御不能にならないようにしている。

現実的な仮定

バイデン政権は、中国の政治的変革は米国の目的達成に必要ではなく、その可能性もないという前提で動いている。

この戦略は、インド太平洋地域における中国の覇権を阻止し、米国の経済的・技術的リーダーシップを維持し、地域の民主主義を支援することを目的としている。

実践的な手順

トランプ政権は、インフラ、技術、クリーンエネルギーへの多額の国内投資など、米国の立場を強化するためにいくつかの措置を実施してきた。

AUKUS、クアッド、日本、オーストラリア、フィリピンなどの主要国との二国間協定を通じて、同盟とパートナーシップを強化した。

半導体輸出管理、投資審査、戦略的セクターへの関税などの経済対策。

超党派財団

ドシ氏は、米国の対中戦略を成功させるためには、超党派の支持が重要であると強調している。

同氏は、ポッティンジャー氏とギャラガー氏の政策提言の多くがすでにバイデン政権によって追求されており、強力で競争力のある姿勢の必要性について幅広いコンセンサスがあることを示していると指摘している。

外交とコミュニケーション

ドシは、競争を管理し、紛争のリスクを減らす上での外交の役割を強調している。

彼は、明確なコミュニケーションと対面での会議は、誤解を軽減し、競争的な行動が意図しないエスカレーションにつながらないようにするのに役立つと主張している。

その他の貢献

ジェシカ・チェン・ワイスとジェームズ・B・スタインバーグ:彼らは、疎遠のリスクと、緊張を管理し、紛争を避けるために中国との対話と関与を維持することの重要性について議論している。

ポール・ヒア:彼は、中国が特定の分野で潜在的なパートナーになり得ることを示唆し、相互の利益となる分野を認識する、より微妙なアプローチを提唱している。

・本稿では、米国の対中戦略について詳細な議論を行い、対決的アプローチと、競争と外交を組み合わせたバランスの取れた戦略の違いを浮き彫りにしている。

・ドシ氏や他の寄稿者は、米国の強みを活用し、同盟関係を維持し、不必要な紛争を避けるために競争を管理する実用的なアプローチを主張している。

・ポッティンジャー氏とギャラガー氏のより攻撃的な姿勢の呼びかけは、米中関係の複雑で相互に関連し合っている性質を考えると、潜在的に危険で非現実的であると批判されている。

・ほとんどの貢献者のコンセンサスは、中国がもたらす課題に効果的に対処するためには、微妙で戦略的なアプローチが不可欠であるということである。

ジェシカ・チェン・ワイスとジェームズ・B・スタインバーグの論文は、ポッティンジャーとギャラガーが提唱した中国に対する対決姿勢を詳細に批判している。

課題の理解

ワイス氏とスタインバーグ氏は、経済・軍事大国としての中国の台頭がもたらす重大な課題を認識している。米中間のイデオロギー的立場の違いや、中国の強引な外交政策を浮き彫りにしている。

ニュアンスの必要性

彼らは微妙な理解の重要性を強調し、「私たち対彼ら」という単純なアプローチは逆効果であると主張している。その代わりに、中国の対外的な振る舞いと米国の強みの両方について、明確な目で評価することを求めている。

ポッティンジャーとギャラガーの批判

著者らは、ポッティンジャーとギャラガーのアプローチは過度に攻撃的であり、潜在的に有害であると批判している。彼らは、彼らの「勝利」の呼びかけは、緊張をエスカレートさせ、中国の自由を損なう危険性があると主張している。

圧力の有効性

ワイス氏とスタインバーグ氏は、変化を誘発するために中国に圧力をかけることの有効性に疑問を呈している。彼らは、そのような戦術は、リベラルな価値観を促進するのではなく、中国国内の権威主義的支配と民族主義的感情を強化する可能性があると警告している。

世論と政策選好

彼らは世論調査に言及し、ほとんどのアメリカ人が中国との対決よりも外交的解決を望んでいることを強調している。このことは、中国との関係を管理するためのより慎重なアプローチに対するより広範なコンセンサスを示唆している。

外交的関与

著者らは、気候変動や公衆衛生などの共通の懸念に関する外交と協力を提唱している。彼らは、たとえ意見の相違があっても、中国との関わりは、関係を効果的に管理するために不可欠であると主張している。

長期戦略

ワイス氏とスタインバーグ氏は、中国と対峙するにあたり、長期的な視点を持つことの重要性を強調する。両国は、米国の強みを活用し、時間をかけて関係を安定させることを目的とした戦略を提唱している。

冷戦ノスタルジアに対する注意

・彼らは冷戦時代をロマンチックに描くことに警鐘を鳴らし、冷戦時代を彷彿とさせる対決姿勢に戻ることの危険性を強調している。むしろ、政策立案者に対し、歴史から学び、より現実的なアプローチを追求するよう促している。

・ワイス氏とスタインバーグ氏の論文は、中国に対する攻撃的な姿勢を包括的に批判し、長期的な安定と協力を優先する、より微妙な外交的アプローチを提唱している。

【要点】

マット・ポッティンジャーとマイク・ギャラガーの提案

1.対立の提唱者

・バイデン政権の抑制が行き過ぎていると批判する。
・ソビエト連邦に対する冷戦戦略に似た、無制限で攻撃的な競争を提案する。

2.歴史的なアナロジー

・中国をソ連と比較し、圧力が中国共産党の崩壊につながることを示唆している。

3.政策提言:

・インド太平洋地域における軍事プレゼンスのための年間200億ドルの抑止基金を設立する。
・無人システムや長距離ミサイルに投資する。
・輸出管理や投資制限などの経済的・技術的措置を実施する。

Rush Doshiの回答

1.対立の批判

・攻撃的な姿勢は危険なエスカレーションのリスクがあると主張する。
・中国が世界経済に深く溶け込んでおり、崩壊の可能性が低いことを強調する。

2.戦略的経営

・競争と外交を組み合わせたバランスの取れたアプローチを提唱している。
・競合やエスカレーションを回避するために競争を管理することを目的としている。

3.現実的な仮定

バイデン政権は中国の政治変革を目指していない。
中国の覇権を阻止し、米国のリーダーシップを維持し、地域の民主主義を支援することに焦点を当てています。

4.実践的な手順

・インフラ、技術、クリーンエネルギーへの多額の国内投資。
・AUKUS、クアッド、二国間協定を通じた同盟とパートナーシップの強化。
・半導体の輸出管理や投資審査などの経済対策。

5.超党派財団

米国の戦略に対する超党派の支持の重要性を強調する。
ポッティンジャー氏とギャラガー氏による多くの提言がすでに追求されていることに留意する。

6.外交とコミュニケーション

・競争管理における外交の役割を強調する。
・紛争のリスクを減らすために、明確なコミュニケーションを提唱する。

その他の貢献

・ジェシカ・チェン・ワイスとジェームズ・B・スタインバーグ:

中国との対話を維持することの重要性を強調する。
疎遠になるリスクを警告する。

・ポール・ロード

中国が一部の分野で潜在的なパートナーになり得ることを示唆している。
相互の利益を認識する微妙なアプローチを提唱する。

・この記事は、米国の対中戦略をめぐる議論を紹介しており、ドシ氏らは、競争と外交を組み合わせたバランスの取れた戦略的アプローチを提唱している。

・ポッティンジャー氏とギャラガー氏の攻撃的な姿勢の呼びかけは、危険で非現実的だと批判されている。

・コンセンサスは、米国の強みを活用し、同盟を維持し、不必要な紛争を避けるために競争を管理する実用的なアプローチに傾いている。

課題の理解

中国の台頭は、その経済力と軍事力により、米国にとって大きな挑戦となる。
中国のイデオロギーの違いと強引な外交政策は、米国との関係を複雑にしている。

ニュアンスの必要性

中国の行動と米国の強みの微妙な理解を提唱している。
中国との関係管理における単純な「我々対彼ら」のアプローチを拒否する。

ポッティンジャーとギャラガーの批判

ポッティンジャー氏とギャラガー氏の攻撃的な姿勢は、緊張をエスカレートさせ、中国の自由を損なうリスクをはらんでいる。
彼らの「勝利」の呼びかけは、中国国内の権威主義的支配と民族主義的感情を強めかねない。

圧力の有効性

中国に圧力をかけて変化を誘発することの有効性に疑問を呈し、それが裏目に出ることを恐れている。
中国の権威主義的支配と民族主義的感情を強固にする可能性のある戦術に対して警告する。

世論と政策選好

中国との対決よりも外交的解決を優先する国民の姿勢を浮き彫りにする。
中国との関係を管理するための慎重なアプローチに対するより広範なコンセンサスを示唆している。

外交的関与

気候変動や公衆衛生などの共通の懸念に関する外交と協力を提唱する。
意見の相違はあるものの、中国との関わりは、関係の効果的な管理に不可欠であると主張する。

長期戦略

中国との付き合いにおいて、長期的な視点を持つことの重要性を強調する。
米国の強みを活かして、長期的に関係を安定させる戦略を求めている。

冷戦ノスタルジアに対する注意

・冷戦時代を美化し、対決姿勢に戻ることに対して警告する。
・政策立案者に対し、歴史から学び、中国との関係を管理するための実際的なアプローチを追求するよう促す。

 【桃源寸評】

 さて、「What Does America Want From China?」の回答は得られたのか。

 1.経済的公正と市場アクセス: 米国は中国に対し、市場への公平なアクセスや知的財産権の保護など、経済に関するルールや規制の改善を求めている。これは、中国が不正な貿易慣行を是正し、外国企業に対して公正な競争環境を提供することを含む。

 2.安全保障と地政学的安定: 米国は中国に対し、地域の安全保障や地政学的な安定を維持するための協力を求めている。これには、台湾や南シナ海での緊張の緩和、核拡散の防止、テロリズム対策などが含まれる。

 3.人権と民主主義の尊重: 米国は中国に対し、人権の尊重や民主主義の促進を求めています。これは、中国の人権侵害や民主化の進展に対する懸念を反映している。

 4.環境問題や気候変動への取り組み: 米国は中国に対し、環境問題や気候変動への積極的な取り組みを求めています。両国は世界最大の温室効果ガス排出国であり、共同で取り組まなければならない重要な課題とされている。

 以上のようなことを求めているのならば、米政権の現実政策は真逆であり、非生産的であり、破壊的であり、まさに逆走に近い。

 例えば、「3.人権と民主主義の尊重」で言えば、民主主義・人権問題で米国は指導者面できるほどの実績もない、ということを先ずは理解すべきである。唱えていれば人権・民主主義が実現できる思うのは錯誤である。
 米国の民主主義や人権は単に紛争の政策手段に過ぎず、他国に押し売りできるような代物ではない。

 真に民主主義を具現化しているのであれば、なぜ中国(に限っていないが)の言い分(意見)を受け入れられないのであろうか。多様性を受け入れられない民主主義とは〝まやかし物〟である。

 「4.環境問題や気候変動への取り組み」でも、EVの関税問題などがある。(1)、(2)についても、米国側に大いに問題含みである。

 また、米国は中国に以上のような希望や意図(米国自身に当てはめるべきであるが)を持っているのなら、中国の唱える相互尊重・平等・互恵、協力・ウィンウィンなどの言葉の持つ意味と其の行動をよく理解し、対中国には言行一致、二枚舌を一枚抜いて接することだ。

 米国の考え方は〝幼稚〟である。 

引用・参照・底本

What Does America Want From China? FOREIGN AFFAIRS 2024.05.30

https://www.foreignaffairs.com/responses/what-does-america-want-china?utm_medium=promo_email&utm_source=fa_edit&utm_campaign=pre_release_america_want_from_china_prospects_b&utm_content=20240530&utm_term=promo-email-prospects

日本サービス業:中国市場からのデカップリング2024年05月31日 15:50

国立国会図書館デジタルコレクション「青楼美人合 第5冊」を加工して作成
 日本経済と中国経済のデカップリングは、特に中国市場で根強い存在感を示すサービス業にとって大きな課題に直面している。日本政府は製造業者に中国から生産拠点を移し、自国や他国に移転することを奨励しているが、このアプローチは、中国で繁栄する日本のサービス企業に大きな影響を与えることを見落としている。

 経済的および戦略的動機

 日本のデカップリング推進は、いくつかの要因の影響を受けている。

 経済的・政治的圧力:米中間の緊張が高まる中、日本は潜在的な制裁や貿易障壁を回避するために中国製品への依存度を下げるなど、米国の政策により緊密に連携することを余儀なくされている。

 政府のインセンティブ:2020年に安倍晋三政権が導入した700億円の優遇措置などの補助金や政策変更は、日本の生産拠点の中国から東南アジアへの移転や日本への回帰を支援することを目的としている。

 国家安全保障上の懸念:日本の外国為替及び外国貿易法の改正により、国家安全保障と技術的優位性に対するより広範な懸念を反映して、中国との機微な貿易に対する政府の監視が厳格化された。

 製造業 vs. サービス

 日本の製造業は中国から生産を慎重にシフトしているが、サービス企業はより複雑なシナリオに直面している。

 製造移転:トヨタやパナソニックなどの大手メーカーは、多くの場合、多額の補助金を受けて米国で事業を拡大している。しかし、このシフトは、中国市場へのアクセスを完全に失うことなく生産を移すことができるため、より管理しやすいものである。

 サービス業の課題:ローソンなどのコンビニエンスストアチェーン、ユニクロなどの小売大手、サイゼリヤなどの外食チェーンなど、日本のサービス企業は中国での存在感を大幅に拡大している。これらのビジネスは現地市場に深く根付いており、デカップリングははるかに困難な課題となっている。

 サービス業への依存度

 この数字は、日本のサービス企業が中国に大きく依存していることを浮き彫りにしている。

 ・ローソン:7,344店舗の海外店舗のうち、6,288店舗が中国にあり、海外店舗の86%を占めている。

 ・ユニクロ:ユニクロの海外店舗1,634店舗のうち、中国は925店舗で57%を占めている。

 ・サイゼリヤ:海外支店の81%(478店舗中387店舗)が中国にある。

 ・イオン:国際ショッピングモールの59%が中国にある。

 これらの数字は、他のどの国でも同様の拡大が見られないこれらの企業にとって、中国市場が果たす重要な役割を強調している。日本の人口が急速に減少していることから、これらの企業の海外進出の緊急性はさらに高まっている。

 戦略的インプリケーション

 日本政府の現在の戦略は、主に製造業に焦点を当てているが、サービス部門が直面している課題に対処することが急務となっている。

 ホリスティック・アプローチ:バランスのとれた持続可能なデカップリング・プロセスを確保するために、政府はサービス業に合わせた政策と支援メカニズムを策定すべきである。これには、資金援助、代替地の市場調査、中国での市場アクセスを維持するための交渉などが含まれる。

 移行管理:サービス企業の利益を過度に損なうことなく移行を支援することは非常に重要である。これには、市場の多様化を促進し、現在中国に集中している経済活動の一部を吸収できる可能性のある新しい市場を開拓することが含まれる。

 結論

 日本が中国から脱離する戦略は、製造業とサービス業の両面から多面的に考えなければならない。製造業者はより現実的に移転し、適応することができるが、中国市場と深いつながりを持つサービス企業は、はるかに困難な課題に直面している。デカップリングを成功させ、混乱の少ないものにするために、日本はサービスプロバイダーに支援を拡大し、この複雑な移行を効果的に乗り切ることができるようにする必要がある。
 
【視点】

日本の中国からの経済分離(デカップリング)の取り組みについて、特にサービス業に焦点を当てて詳しく説明する。これは日本の製造業の移転とは異なり、サービス業が抱える独自の課題とその重要性を強調するものである。

背景と動機

日本が中国から経済分離を進める動機は複雑であり、以下の要因が関与している。

経済および政治的圧力: 米中対立が激化する中、日本は米国と歩調を合わせ、中国依存を減らす必要性を感じている。これには、潜在的な制裁や貿易障壁を避けるための対策も含まれる。

政府の奨励策: 2020年に安倍晋三政権が導入した700億円の補助金など、日本政府は製造業の生産拠点を中国から東南アジアや日本に移転させるための支援を行っている。

国家安全保障の懸念: 外為法(外国為替及び外国貿易法)の改正により、中国との敏感な取引について日本政府が厳格に監視できるようになり、これは国家安全保障や技術的優位性に関する広範な懸念を反映している。

製造業とサービス業の違い

製造業は慎重に中国からの生産移転を進めているが、サービス業はさらに複雑な状況に直面している。

製造業の移転: トヨタやパナソニックなどの大手製造業者は、米国での拡大を進めており、多くの場合、莫大な補助金を受けている。しかし、このシフトは生産拠点を移動させても中国市場へのアクセスを完全に失うわけではないため、比較的管理が容易である。

サービス業の課題: 一方で、ローソンやユニクロ、サイゼリヤなどの日本のサービス企業は、中国市場で大きく拡大している。これらのビジネスは現地市場に深く根付いており、デカップリングは非常に困難である。

サービス業の依存度

日本のサービス企業が中国市場にどれほど依存しているかは、以下の数字から明らかである。

ローソン: 7,344店舗の外国店舗のうち、6,288店舗(86%)が中国にある。
ユニクロ: 外国店舗1,634店舗のうち925店舗(57%)が中国にある。
サイゼリヤ: 海外店舗478店舗のうち387店舗(81%)が中国にある。
イオン: 海外のショッピングモール37施設のうち22施設(59%)が中国にある。

これらのデータは、日本のサービス企業にとって中国市場がいかに重要であるかを示しており、他の国で同様の拡大を見せていないことが強調されている。

戦略的影響

現在の日本政府の戦略は主に製造業に焦点を当てているが、サービス業が直面する課題に対応するための方策が必要である。

総合的なアプローチ: バランスの取れた持続可能なデカップリングプロセスを実現するために、政府はサービス業に特化した政策や支援メカニズムを開発する必要がある。これには、財政支援、新たな市場調査、および中国市場へのアクセスを維持するための交渉が含まれる。

移行管理: サービス企業が不均衡に損害を受けないように移行を支援することが重要である。これには、市場の多様化を促進し、現在中国に集中している経済活動を吸収できる新たな市場を開発することが含まれる。

結論

日本の中国からの経済分離戦略は、多面的である必要がある。製造業だけでなく、サービス業にも目を向けることが不可欠である。製造業は比較的移転や適応が容易である一方で、中国市場に深く根付いたサービス企業は、はるかに困難な課題に直面している。成功裏にそして混乱を最小限に抑えたデカップリングを実現するためには、サービスプロバイダーに対する支援を拡大し、この複雑な移行を効果的にナビゲートできるようにすることが必要である。

【要点】

背景と動機

・経済および政治的圧力: 米中対立が激化し、米国の政策に合わせて中国依存を減らす必要。
・政府の奨励策: 2020年に700億円の補助金を提供し、製造業の生産拠点を中国から東南アジアや日本に移転させる。
・国家安全保障の懸念: 外為法の改正で、中国との敏感な取引の監視強化。

製造業とサービス業の違い

・製造業の移転

トヨタやパナソニックなどが米国で拡大。
生産拠点を移転しても中国市場へのアクセスを維持可能。

・サービス業の課題

ローソン、ユニクロ、サイゼリヤなどのサービス企業は中国市場に深く根付いている。
デカップリングが困難。

サービス業の依存度

・ローソン: 7,344店舗のうち6,288店舗(86%)が中国。
・ユニクロ: 1,634店舗のうち925店舗(57%)が中国。
・サイゼリヤ: 478店舗のうち387店舗(81%)が中国。
・イオン: 37施設のうち22施設(59%)が中国。

戦略的影響

・総合的なアプローチ

サービス業に特化した政策や支援メカニズムの開発が必要。
財政支援、新市場調査、交渉を含む。

・移行管理

サービス企業が不均衡に損害を受けないよう支援。
市場の多様化、新たな市場開発。

結論

・多面的なアプローチ

製造業とサービス業の両方に目を向ける必要。
サービスプロバイダーへの支援を拡大し、複雑な移行を効果的に管理。
 
引用・参照・底本

Japan’s service firms to hurt the worst in China split 2024.05.31

https://asiatimes.com/2024/05/japans-service-firms-to-hurt-the-worst-in-china-split/

ファーウェイ、3nmチップ製造を計画2024年05月31日 16:12

国立国会図書館デジタルコレクション「青楼美人合 第5冊」を加工して作成
 ファーウェイは、セミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル・コーポレーション(SMIC)と共同で、深紫外線(DUV)露光装置と特許取得済みのセルフアライメント・クワッド・パターニング(SAQP)リソグラフィー法を使用して3nmチップを製造することを計画している。しかし、これらの3nmチップの量産化のスケジュールは依然として不透明である。一部のテクノロジーコラムニストは、ファーウェイとSMICがこの目標を達成するには数年かかる可能性があると示唆しているが、彼らが成功する頃には、世界市場はすでに1.4nmチップを使用している可能性があることも予想されている。

 現在、最も先進的な中国のプロセッサは、SMIC製の7nmチップです。3nmチップの野心的な計画にもかかわらず、高コストや低歩留まりなどの技術的および経済的課題により、ファーウェイとSMICがこれらの高度なチップを商業用に大量生産できる時期は不透明である。
 
【視点】

Huaweiの計画は、深紫外線(DUV)リソグラフィ装置と特許取得済みの自己整列四重パターニング(SAQP)リソグラフィ手法を使用して、3nmチップの製造を行うことである。これはSemiconductor Manufacturing International Corp(SMIC)との協力によるものである。しかし、これらの3nmチップの量産に関しては、未だ明確なタイムラインがない。いくつかの技術コラムニストは、HuaweiとSMICがこの目標を達成するには数年かかるかもしれないと指摘している。また、彼らが成功する頃には、世界の市場では既に1.4nmのチップが使用されている可能性がある。

現時点では、SMICが製造する7nmチップが中国で最も先進的なプロセッサである。しかし、高いコストや低い収率といった技術的・経済的な課題があり、HuaweiとSMICがこれらの先進的なチップを商業用に量産する時期や可能性については不透明である。

【要点】

・ファーウェイとセミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル・コーポレーション(SMIC)は、深紫外線(DUV)露光装置と特許取得済みの自己整合クワッドパターニング(SAQP)リソグラフィ法を使用して3nmチップを生産することを計画している。

・今回の協業は、この高度なチップ生産の実現を目指していますが、量産化のスケジュールは依然として不透明である。

・高コストや低歩留まりなどの課題は、これらの3nmチップの商業的実現への道のりにおける大きなハードルです。

・現在の予測では、ファーウェイとSMICがこれらの課題を克服し、量産を達成するには数年かかる可能性がある。

・ファーウェイとSMICが成功する頃には、世界市場はすでにさらに小型のチップ、おそらく1.4nmという小さなチップに移行しているかもしれない。

・3nmチップの野心にもかかわらず、現在入手可能な最も先進的な中国のプロセッサは、SMICによって製造された7nmチップである。

・技術的および経済的な課題は、これらの高度なチップを商業用に大量生産する実現可能性とタイムラインに関して不確実性をもたらす。 

引用・参照・底本

Huawei plans to make 3nm chips, but when? 2024.05.30

https://asiatimes.com/2024/05/huawei-plans-to-make-3nm-chips-but-when/

金正恩の最近の発言2024年05月31日 17:16

国立国会図書館デジタルコレクション「青楼美人合 第5冊」を加工して作成
 韓国に関する金正恩の最近の発言は、過去の政策やレトリックからの大幅な逸脱を反映しており、南の隣国に対する北朝鮮のアプローチの根本的な変化を示している。しかし、これらの発言の背後にある一貫性と真意は解釈の余地がある。単なるマインドゲームや愚痴と見る人もいれば、戦略の真の変化を示すものと見る人もいる。

 金総書記が韓国を「片麻痺の奇形」や「植民地従属国家」と表現することは、韓国の政府と社会に対する軽蔑的な態度を示している。韓国との統一という考えを否定し、和解に向けた過去の努力を否定したことは、外交対話に積極的に取り組む姿勢に疑問を投げかけている。

 さらに、金総書記が軍事的準備と核戦争抑止力の脅威を強調していることは、北朝鮮の敵対国に対する対決姿勢の継続を示唆している。しかし、北朝鮮が軍事行動をエスカレートさせる条件は依然として不透明であり、政権の真意については憶測の余地がある。

 総じて、金総書記の最近の韓国に関する発言は、侵略と戦略的駆け引きの両方の要素を含む複雑な構図を示している。北朝鮮の対南意図の本質は、この地域でのさらなる行動と展開を通じてのみ明らかになるかもしれない。
 
【視点】

キム・ジョンウンの最近の発言は、北朝鮮の南側隣国に対するアプローチの根本的な変化を示している。これらの発言は、過去の政策や言辞とは大きく異なり、北朝鮮が南朝鮮に対する姿勢を根本的に変えようとするものとして注目されている。しかし、これらの発言の一貫性や真の意図については解釈の余地がある。一部の人々はそれらを単なる心理戦や脅しと見なし、他の人々は本格的な戦略の変化と見なすかもしれない。

キムが南朝鮮を「半身不随の変形」と「植民地の従属国」と表現することは、南の政府や社会に対する軽蔑的な態度を示している。彼の南朝鮮との統一に対する考えを拒否し、過去の和解への努力を無視することは、外交的な対話に参加する意思を疑問視させる。

さらに、キムが軍事的な準備と核戦争抑止力の脅威に重点を置くことは、北朝鮮が対立国に対する姿勢を継続していることを示唆している。しかし、北朝鮮が軍事行動をエスカレートさせる条件は不明瞭であり、政権の真の意図については推測の余地がある。

キム・ジョンウンの最近の南朝鮮に関する発言は複雑なものであり、攻撃性と戦略的な操縦の要素が含まれている。北朝鮮の南への意図の真の性質は、地域でのさらなる行動や展開を通じてのみ明らかになる可能性がある。

【要点】

・キム・ジョンウンの南朝鮮に対する新たな姿勢は、過去の政策や立場とは大きく異なるものであり、南北朝鮮関係における根本的な変化を表している。

・しかし、この新たな姿勢の一貫性や真の意図は明確ではなく、一部の人々はそれが単なる脅しや戦略的な操縦であると見なしている。

・キムは南朝鮮を「半身不随の変形」と「植民地の従属国」と表現し、南の政府や社会に対する軽蔑的な態度を示している。

・彼は過去の南朝鮮との和解への努力を拒否し、南北朝鮮の統一に対する考え方に疑問を投げかけている。

・同時に、キムは軍事的な準備と核戦争抑止力の脅威に重点を置いており、北朝鮮の対立国に対する姿勢の継続を示唆している。

・しかし、北朝鮮が具体的な軍事行動を取る条件やタイミングは不明瞭であり、政権の真の意図については推測の域を出ない。

・キム・ジョンウンの発言は、南北朝鮮関係における複雑な状況を反映しており、今後の展開がその意図や戦略の真相を明らかにするだろう。 

引用・参照・底本

Kim a mortal menace or playing mind games? 2024.05.31

https://asiatimes.com/2024/05/kim-a-mortal-menace-or-playing-mind-games/