【概要】

　エルドアンが提案した対イスラエル・イスラム同盟に関するアンドリュー・コリブコの記事は、エルドアンのそのような同盟の呼びかけは、イスラエルに対抗する真の努力というよりは、主に修辞的であり、いくつかの戦略的目的に役立つと主張している。コリブコは、エルドアンの動機には以下が含まれると示唆している。

　1.トルコの歴史的役割の強化:エルドアンは、トルコを、オスマン帝国の過去を彷彿とさせるイスラム教徒のウンマの保護者として描くことを目指している。
　2.トルコを地域的に位置づける:イスラム同盟を呼びかけることで、エルドアンは、地域の軍事階層におけるトルコの地位を高めようとしている。
　3.責任回避:エルドアンは、イスラム諸国、特に湾岸諸国が彼の提案を支持しないと予想しており、パレスチナを支援していない彼らに責任を転嫁するのを許している。
　・国内の圧力をそらす:この提案は、トルコがアゼルバイジャンのイスラエルへの石油輸出に関する批判をかわすのに役立つ可能性がある。
　・心理戦:エルドアンのレトリックは、イスラエル人に恐怖を生じさせ、圧力をかけることを意図しているかもしれないが、彼らの決意を硬化させることで裏目に出る危険性がある。

　コリブコは、エルドアンの強烈な言辞は、真の政治変革を実現するためではなく、大衆の認識を操作するために設計された一種の扇動だと結論付けている。

【詳細】

　Andrew Korybkoの分析によると、エルドアン大統領のイスラエルに対するイスラム同盟提案は、実際には以下の戦略的目的に基づいているとされている。

　1.トルコの歴史的役割の強調

　・エルドアンは、トルコが歴史的にムスリム共同体(ウマ)を保護してきたというイメージを強調しようとしている。オスマン帝国時代の伝統を再現する形で、トルコのリーダーシップを際立たせようとしているのである。

　2.地域的地位の向上

　・この提案により、エルドアンはトルコを地域の軍事的指導者として位置づけようとしている。イスラム同盟の呼びかけを通じて、トルコの影響力を高め、地域における戦略的地位を確立しようとしているのですある。

　3.責任転嫁

　・エルドアンは、ムスリム諸国、とりわけ湾岸諸国がこの提案に賛同しないことを見越している。これにより、彼は「パレスチナを救えなかった」として湾岸諸国に責任を転嫁し、自らの立場を相対的に正当化しようとしている。

　4.国内圧力の回避

　・トルコ国内では、アゼルバイジャンからの石油輸出がイスラエル経済を支えていることに対する批判がある。エルドアンの提案は、こうした批判の矛先を和らげるための戦略とも考えられる。イスラム同盟の提案が注目されることで、アゼルバイジャンの石油輸出に対する圧力を回避しようとしているのである。

　5.心理戦

　・エルドアンの提案は、イスラエルに対して戦略的な脅威を植え付け、イスラエル国内での抗議活動を促進しようとする心理戦の一環である可能性がある。ただし、これは逆効果を生むリスクもあり、イスラエルがより一層対立を強化する可能性もある。

　Korybkoは、エルドアンの強い言葉や提案が、実際には公衆の反応や国内外の戦略的目的を操作するためのものであり、真剣な意図から来るものではないと指摘している。彼の主張は、エルドアンの言動には常に裏に複数の動機が存在するとする見解に基づいている。

【要点】

　Andrew Korybkoの分析に基づくエルドアン大統領のイスラム同盟提案の詳細は以下の通り。

　1.トルコの歴史的役割の強調

　・エルドアンはトルコをオスマン帝国時代のムスリム共同体の保護者として再び位置づけようとしている。

　2.地域的地位の向上

　・イスラム同盟の呼びかけを通じて、トルコの地域における軍事的指導者としての地位を確立しようとしている。

　3.責任転嫁

　・ムスリム諸国、特に湾岸諸国が提案に賛同しないことで、彼らに「パレスチナを救えなかった」という責任を転嫁しようとしている。

　4.国内圧力の回避

　・アゼルバイジャンからの石油輸出がイスラエル経済を支えていることに対する批判を和らげるため、提案を通じて圧力をかわそうとしている。

　5.心理戦

　・イスラエルに対する戦略的な脅威を作り出し、国内での抗議活動を促進させようとするが、逆効果のリスクもある。

【参考】

　☞ アゼルバイジャンからの石油輸出がイスラエル経済を支えているという批判に対する和らげるという点は、以下のように説明できる。

　1.背景

　・アゼルバイジャンは、トルコを通じてイスラエルに石油を輸出している。この石油輸出は、イスラエルの経済に貢献しているとされている。

　2.国内批判

　・トルコ国内では、イスラエルとパレスチナの紛争に関連して、アゼルバイジャンの石油輸出がイスラエルの経済を支えていることに対する批判がある。この批判は、トルコがパレスチナ問題での立場を強調している一方で、実際にはイスラエル経済を間接的に支えていることに対する不満から生じている。

　3.エルドアンの提案の意図

　・エルドアンは、イスラム同盟の提案を通じて、こうした批判から注意を逸らそうとしている。イスラム同盟の呼びかけが注目されることで、アゼルバイジャンからの石油輸出に対する批判の焦点を和らげ、国内での反発を抑えようとしていると考えられる。

　4.戦略的配慮

　・トルコはアゼルバイジャンと良好な関係を維持しており、アゼルバイジャンの石油輸出に対して直接的な圧力をかけることは困難である。したがって、エルドアンの提案が公衆の注目を集めることで、アゼルバイジャンの石油輸出に対する批判を和らげ、自らの立場を保とうとしているのである。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Erdogan’s Proposed Islamic Alliance Against Israel Is Pure Demagoguery Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.12
https://korybko.substack.com/p/erdogans-proposed-islamic-alliance?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148798390&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email