モディ首相:月21日-24日にかけて訪米2024年09月15日 10:11

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【概要】

 インドのモディ首相が9月21日から24日にかけて米国を訪問し、バイデン大統領がデラウェア州の自宅で開催するクアッドサミットに出席する。この訪問は、昨年の暗殺未遂事件や先月のバングラデシュでの政権交代など、米印関係に生じた問題を背景に行われる。これらの出来事は、両国のエリート層と市民社会の間に不信感を生じさせ、バングラデシュの新政権の政策によってはインドの国家安全保障に脅威をもたらす可能性がある。

 クアッドサミットは、モディ首相とバイデン大統領がこれらの問題について話し合うための機会でもある。本来はインドが今年のサミットを主催する予定であったが、米国に変更されまし。この背景には、バイデン大統領が体調的にインドへの渡航が難しいことや、米国政府が昨年インドを暗殺計画に関与したとして非難したため、バイデン大統領がインドを訪問することがスキャンダラスになる可能性があることが考えられる。

 今回の訪問では、米印間の不信感の軽減に加え、ウクライナ紛争についても話し合われる見込みである。モディ首相は、モスクワとキーウを訪問しており、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の双方とこの問題について話し合った数少ない人物の一人である。

 今回の訪問は、クアッドや米印二国間関係だけに焦点が当てられるわけではなく、インドのウクライナ平和プロセスにおける役割にも関わる可能性がある。ただし、具体的な平和提案が存在するかどうかはまだ不明である。

 最後に、ロシアやBRICSもインドが米国からの圧力を軽減することを望んでおり、今回の訪問がその一助となるかもしれないが、大きな期待は控えるべきである。それでも、この訪問は重要な出来事であり、無視することはできない。

【詳細】

 インドのモディ首相が9月21日から24日にかけて米国を訪問し、バイデン大統領がデラウェア州で主催するクアッドサミットに出席することが注目されている。このサミットは、米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国による安全保障協力の枠組みであるクアッド(Quad)の一環として行われる。しかし、今回の訪問には特に米印関係における複雑な背景が存在しており、単なるクアッドの枠を超えた意義を持つと考えられる。

 背景:米印関係の緊張

 米印間の関係は、昨年からいくつかの重大な出来事により緊張してきた。その一つは、インドが昨年、二重国籍の米国市民に対する暗殺計画に関与したとされる疑惑である。この事件は米印両国の間で深い不信感を生じさせ、両国のエリート層や市民社会にもその影響が広がった。また、バングラデシュで先月発生した政権交代に対する米国の役割が、インドの国家安全保障にとって新たな脅威をもたらす可能性があり、米印関係はさらに悪化している。

 クアッドサミットの重要性

 こうした背景の中で開催されるクアッドサミットは、モディ首相とバイデン大統領が直接対話する機会を提供する。本来、今年のクアッドサミットはインドが主催する予定であったが、米国にその役割が変更された。これは、バイデン大統領の健康問題や、米国側が昨年の暗殺疑惑でインドを非難したことによるスキャンダル回避のためと考えられる。バイデン大統領がインドを訪問することで、政治的な影響が避けられないため、米国内でサミットを開催することが選ばれた可能性がある。

 ウクライナ紛争におけるインドの役割

 今回の訪問のもう一つの重要な要素は、ウクライナ紛争に関連する話し合いである。モディ首相はこれまでにロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の双方と直接会談を行っており、ウクライナ問題における非西側の平和プロセスにおいてインドが重要な役割を果たす可能性がある。インドは、米中関係が悪化している中で中国に代わってこの役割を担うことが期待されている。これにより、インドが米国やロシアとの外交的な立場を強化することができ、両国とのバランスを取った外交戦略が展開されると見られている。

 インドの中立的外交とBRICSの立場

 今回のモディ首相の米国訪問は、インドがロシアやBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)との関係を損なうものではない。インドはあくまで自国の利益を追求するために、米国との関係改善を図りながらも、ロシアやBRICSとの経済的・政治的な協力を維持している。特に、インドとロシアの経済関係は拡大しており、逆にロシアと中国の関係には問題が生じ始めているとされている。ロシアはインドが米国と関係を持つことを容認しており、インドが米国との対話を通じて受ける圧力を軽減することは、ロシアやBRICSにとっても利益となるだろう。

 結論:期待を控えながらも注目すべき訪問

 米印関係における緊張は非常に深刻であり、今回の訪問で完全に解決することは期待できないが、少なくとも両国の不信感を軽減し、対話の糸口を見つける機会となるかもしれない。また、インドがウクライナ平和プロセスにおいてどのような役割を果たすかは、今後の国際情勢に大きな影響を与える可能性がある。このため、今回のモディ首相の訪問は、特別なイベントではないものの、見過ごすことのできない重要な出来事であると言える。
 
【要点】

 ・モディ首相の訪米: 9月21日から24日にかけてモディ首相が米国を訪問し、バイデン大統領がデラウェア州で主催するクアッドサミットに出席。

 ・米印関係の背景: 昨年の暗殺未遂疑惑やバングラデシュでの政権交代を巡る米国の関与により、米印間の緊張が高まっている。

 ・クアッドサミットの重要性: サミットは米印両国の対話の場として、両国間の不信感を軽減し、米国側からの圧力を和らげる機会を提供。

 ・開催地変更の理由: インドが今年のサミットを主催する予定だったが、バイデン大統領の健康問題や、暗殺未遂疑惑による政治的リスクを避けるため、米国内での開催に変更された。

 ・ウクライナ紛争におけるインドの役割: モディ首相はロシアとウクライナの双方と直接会談しており、非西側の平和プロセスにおいてインドが重要な役割を果たす可能性がある。

 ・インドの中立的な外交姿勢: インドは米国との関係改善を目指しつつも、ロシアやBRICSとの協力を維持し、両方の関係をバランスよく管理。

 ・ロシアとBRICSの立場: ロシアはインドの米国との対話を支持しており、インドが米国からの圧力を軽減することはロシアやBRICSの利益にもつながる。

 ・期待を抑えた見方: 米印間の不信感は根深いため、完全な解決は期待できないが、対話の促進やウクライナ平和プロセスでのインドの役割が注目される。

【参考】

 ☞ インドが関与したとされる暗殺未遂疑惑は2023年に浮上した。米国政府が、インドが二重国籍を持つ米国市民に対して暗殺計画を企てたと非難したことで、米印関係が急速に悪化した。この疑惑は2023年後半に特に注目を集め、両国間の信頼関係に大きな影響を与えた。

 今回のモディ首相の訪米がこの疑惑を直接解決するためのものかは不明であるが、この問題が両国の間で重要な議題として扱われる可能性がある。また、バイデン大統領がこの問題に対処する際にインドへの強い批判や圧力がかかることが予想され、クアッドサミット後の対話で何らかの進展が見られるかが注目されている。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

The Upcoming Quad Summit Is An Opportunity For India & The US To Patch Up Their Problems Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.14
https://korybko.substack.com/p/the-upcoming-quad-summit-is-an-opportunity?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148878470&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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