ロシアの「レッドライン」2024年09月21日 22:04

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【概要】

 ラブロフ外相がSky News Arabiaで行ったインタビューでは、ロシアが「レッドライン」について話す目的について説明されている。ラブロフによれば、ロシアの「レッドライン」に関する警告は、単なる脅しではなく、状況を正確に理解して行動する賢明な決定者に対して警告を発しているのだと述べている。彼は、核兵器をすぐに使うという直接的な脅威を示すつもりはないが、ウクライナ政府を支援する西側のリーダーに「深刻な結果」がもたらされることを強調している。

 プーチン大統領は2022年2月24日の演説で、NATOのウクライナへの進出をレッドラインと見なすとし、これがロシアの特別軍事作戦開始の理由だと説明した。プーチンはまた、NATOがロシアを直接攻撃した場合、深刻な結果がもたらされると警告した。しかし、現在までにNATOからの直接攻撃はなく、ロシアは核兵器を使用していない。

 一方で、ウクライナがNATOの支援を受けてロシアに攻撃を行っている事実はあるが、それでも核反応はなかった。これは、NATOが「最終的なレッドライン」(ロシアへの直接攻撃)を越えていないためと考えられる。

 結論として、プーチンの「レッドライン」に関する発言は、NATOの直接的な攻撃を阻止することを主な目的としており、それには成功しているが、NATOの間接的な関与やウクライナのロシア攻撃を阻止することには失敗していると言える。それでも、ロシアはレッドラインを示し続けることで、西側に一定のエスカレーションを避けるよう警告している。このようなレッドラインの話は軽視されるべきではなく、誇張も避けるべきだとラブロフは述べている。

【詳細】

 ラブロフ外相のインタビューは、ロシアが「レッドライン」を議論する背景と、その目的をより深く理解するために非常に重要である。彼の発言から、ロシアが単に威嚇や脅しとして「レッドライン」を設定しているわけではなく、それには戦略的な意図があることが明らかになる。ここでは、プーチン大統領が述べた「レッドライン」やラブロフの説明を、より詳細に解説する。

 1. レッドラインの背景と目的

 ロシアが「レッドライン」を定義する理由は、主にNATOの拡大に対する反発である。プーチン大統領は、ウクライナがNATOの影響下に入ることは、ロシアにとって重大な安全保障上の脅威であり、これを防ぐためにロシアは行動せざるを得なかったと主張している。2022年2月の特別軍事作戦開始時、プーチンは「NATOがウクライナに軍事的な足場を築くことはロシアにとってのレッドラインを越えるものである」と明言した。

 ラブロフのインタビューでの発言は、ロシアが「レッドライン」によって西側諸国に対してどのようなメッセージを送ろうとしているのかを明確にしている。彼は、「レッドライン」を超えた場合、直ちに核兵器を使用するという単純な脅しではなく、賢明な決定者がロシアの警告を真剣に受け取ることを期待していると述べた。ロシアは核戦争を望んでいないが、自国の安全保障が深刻に脅かされる場合には「深刻な結果」が生じる可能性があることを示唆している。

 2. プーチンの警告の文脈

 プーチン大統領の演説では、特に「NATOがロシアに直接攻撃を加えた場合、前例のない結果がもたらされる」という強い表現が使われている。この発言は、ロシアが自国防衛のためには核兵器を含む強硬手段を取る準備があるというメッセージとして受け取られた。しかし、実際には、ロシアはこれまでにNATOの直接攻撃を受けておらず、核兵器も使用していない。

 プーチンのレッドラインは、まずNATOがウクライナに対して直接的な軍事的支援を行い、その結果としてウクライナがロシアを攻撃する状況を避けるために設定されたものであった。しかし、NATOは直接的な軍事介入を避け、間接的な支援を通じてウクライナを支援し続けている。この「代理戦争」の状態により、ロシアが核兵器を使用するレベルの緊急事態には至っていない。

 3. ウクライナによる攻撃とロシアの対応

 一方で、ウクライナはNATOの長距離兵器や情報支援を活用してロシア領内を攻撃している。これに対してロシアが核兵器を使用していないことは、NATOやウクライナがロシアの「最終的なレッドライン」、すなわちロシアへの直接的な大規模攻撃を避けていることが一因である。ラブロフが述べたように、ロシアは「レッドライン」を設定し、それが超えられるたびに即座に核兵器を使用するわけではないと強調している。核兵器の使用は「最終手段」であり、西側諸国がその認識を持って行動することを望んでいるのである。

 4. ラブロフのインタビューの重要性

 ラブロフのインタビューでは、「レッドライン」はあくまで西側に対する警告であり、ロシアはすべてのレッドラインが超えられた場合に核兵器を使うわけではないとしている。しかし、ロシアが「深刻な結果」を警告することで、特定のエスカレーションを防ぐための手段としてレッドラインを引いていることが分かる。この警告は、NATOやウクライナに対して「これ以上エスカレートさせれば、想像を超えた反応が待っている」と伝えるためのものである。

 5. 核兵器使用の可能性と現実

 ラブロフの説明に基づけば、ロシアは核兵器の使用を安易に示唆しているわけではないが、核兵器を使う可能性が全くないわけでもないとしている。これは、アルトメディアが主張する「核反応の脅威」と、主流メディアが報じる「核使用はあり得ない」との中間に位置している。すなわち、核兵器は「究極のレッドライン」が超えられた場合にのみ使用される可能性があり、すべてのレッドラインが即座に核使用に繋がるわけではないということである。

 結論

 ロシアの「レッドライン」に関する議論は、NATOとウクライナの行動を抑制し、戦争のさらなるエスカレーションを防ぐための一環として機能している。ラブロフのインタビューは、ロシアが核兵器を使用する可能性は低いものの、最終的なレッドライン(ロシアへの直接攻撃)が超えられた場合にはその選択肢を残していることを示唆している。このように、ロシアの「レッドライン」の話は軽視されるべきではなく、誇張も避けつつ、その深刻さを理解する必要があるというメッセージが伝えられている。
 
【要点】

 ・レッドラインの目的: ロシアはNATOのウクライナ拡大を阻止するために「レッドライン」を設定し、直接的な攻撃を防ぐ目的で警告を発している。

 ・ラブロフの発言: 核兵器を使用する脅しではなく、賢明な決定者が警告を真剣に受け取ることを期待している。核戦争を望んでいないが、必要であれば深刻な結果をもたらす用意がある。

 ・プーチンの演説: NATOのウクライナ拡大はロシアにとってのレッドラインであり、これを超えたために特別軍事作戦を開始した。NATOがロシアを直接攻撃した場合には「前例のない結果」がもたらされると警告。

 ・核兵器使用の現状: これまでにNATOからの直接攻撃はなく、ロシアは核兵器を使用していない。ウクライナによる攻撃はあるが、NATOの直接介入がないため、核反応には至っていない。

 ・エスカレーションの抑制: ロシアのレッドライン設定は、西側諸国がロシアへの直接攻撃を避けるための抑制効果を持っている。

 ・核兵器使用の可能性: 核兵器は「究極のレッドライン」が超えられた場合にのみ使用される可能性があり、すべてのレッドライン超過が即核反応に繋がるわけではない。

 メディアの誤解: メインストリームメディア(MSM)はレッドラインを軽視し、アルトメディア(AMC)は誇張しているが、いずれも一部正しく、一部誤っている。

【引用・参照・底本】

Lavrov Explained What Russia Hopes To Achieve By Talking About Its Red Lines Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.21
https://korybko.substack.com/p/lavrov-explained-what-russia-hopes?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=149196869&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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