エジプト、エリトリア、ソマリアの3カ国の首脳会議2024年10月14日 17:07

Microsoft Designerで作成
【概要】

 エリトリアの首都アスマラで開催されたエジプト、エリトリア、ソマリアの3カ国の首脳会議に関する記事では、エチオピアに対抗する同盟の形成が暗に示されているが、実際には具体的な行動や実質的な内容には乏しいとされている。以下の5つのポイントを強調している。

 1.多くの視覚効果だが、実質は少ない 各国はこの新しい同盟によって、エジプトは東アフリカでの影響力を拡大する大国としての姿を示し、エリトリアは西側から孤立していないことをアピールし、ソマリアはソマリランド問題に対して支持者がいることを強調したいと考えている。しかし、これらの動きは見せかけであり、軍事協力についての話もあるが、その範囲は不明であり、具体的な内容が乏しい。

 2.エジプトには資金力がない エジプトの債務は2011年のアラブの春以降、340億ドルから昨年の1650億ドルに増加しており、多くの資金はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)から提供されている。2022年には220億ドル、EUとIMFからはそれぞれ80億ドルの支援を受けており、エジプトは資産を売却して資金を確保している。このため、エジプトが東アフリカでの大規模な軍事行動を支援することは期待できない。

 3.UAEの影響力がカイロを制約する可能性 エジプトに資金を提供しているUAEは、エチオピアと緊密な関係にあり、ソマリランドのベリベラ港の建設も行っている。このため、UAEがエジプトの行動を制限する可能性があり、エジプトがエチオピアやソマリランドを不安定化させることがあれば、資金提供を停止する可能性がある。このようなシナリオは、エジプトが行動を慎重にする要因になるかもしれない。

 4.エチオピアは地域の強大な国であり続ける もしエジプトがエチオピアやソマリランドを destabilize しようとしても、それは困難な課題である。エリトリアが数十年にわたって非正規戦を展開してきたとしても、一国ではエチオピアに打撃を与えることは難しく、このために3カ国が協力する必要があったのである。しかし、エチオピアを決定的に打ち負かすことは難しいと予想される。

 5.二次的な影響への責任 これらの国々が引き起こす可能性のある問題、例えば地域紛争の激化やそれに伴う大規模な難民危機、さらにはアルシャバブのようなテロリストの台頭など、二次的な影響に対する責任は彼らに帰することになる。彼らはこの同盟によって名声を高めたいと考えているが、実際には逆に悪化する可能性もある。

 総じて、エジプト、エリトリア、ソマリアの協力関係は予測されていたものの、エジプトの財政状況やUAEの影響力から、現時点で深刻な脅威になる可能性は低いとされている。しかし、将来的には何らかの問題を引き起こす可能性があるとも指摘されている。
 
【詳細】

 エジプト、エリトリア、ソマリアの首脳がアスマラで行った会談について、記事ではこの3カ国がエチオピアに対抗する同盟を形成したとされているが、実際には実質的な行動に乏しく、多くの限界が存在することを強調している。以下は、その5つの要点について、さらに詳しく解説する。

 1. 視覚効果は強いが、実質的な成果は乏しい

 この同盟の主な目的は、それぞれの国にとって「見せる」効果を狙ったものであり、実際に大規模な行動を伴うものではないという点である。

 ・エジプトは、エチオピアとの関係で存在感を高めるとともに、自国を東アフリカで影響力を持つ大国としてアピールしたいとしている。これは特にナイル川の水利権問題やグランド・エチオピア・ルネッサンス・ダム(GERD)をめぐるエチオピアとの対立に関連している。
 ・エリトリアは、西側諸国から長年にわたって孤立している状況にあったが、この同盟によって地域内で一定の支持を持つことを示そうとしている。特にエチオピアとの対立関係は歴史的に根深いもので、今回の同盟でその対立構造を再び強調する狙いがある。
 ・ソマリアにとっては、ソマリランドの分離独立問題が焦点であり、この同盟を通じてエチオピアが支援するソマリランドに対抗する姿勢を強調している。しかし、これらの視覚的な効果にもかかわらず、実質的な軍事や経済面での協力はあまり具体性がなく、曖昧なままであると記事では指摘されている。

 2. エジプトには大規模な軍事行動を支援する財政的余裕がない

 エジプトは深刻な財政危機に直面しており、過去10年以上にわたって債務が急増している。

 ・2011年のアラブの春の時点では、エジプトの債務は340億ドルであつたが、2023年には1650億ドルにまで増加した。この急激な債務増加は、国内の経済危機や外部からの財政支援がなければ国を維持できない状況を反映している。
 ・特に注目すべきは、湾岸諸国(主にサウジアラビアとUAE)からの支援で、2022年には220億ドルの支援が提供され、エジプトは土地やインフラを売却するなどして財政を維持しようとしている。また、EUや国際通貨基金(IMF)からの80億ドルの支援も受けており、外部資金への依存度が高まっている。このため、エジプトが東アフリカで大規模な軍事行動を支援するための資金を提供することは現実的に困難である。

 3. UAEの影響力がエジプトの行動を制約する可能性

 エジプトにとって非常に重要な資金提供者である**アラブ首長国連邦(UAE)**が、エジプトの行動を間接的に制約する可能性があると指摘されています。

 ・UAEはエチオピアと非常に緊密な関係を持っており、特にエチオピアの発展に重要な役割を果たしているベリベラ港の建設にも関与している。この港はエチオピアの貿易にとって戦略的に重要な拠点であり、UAEの支援によって整備されている。このため、エジプトがエチオピアやそのパートナーであるソマリランドを不安定化させる行動を取れば、UAEが資金提供を停止する可能性があるという見方がある。
 ・ただし、UAEが直接エジプトの行動を制約する責任を持っているわけではないが、エジプトが地域の「赤線」を越えないようにするための利害関係が存在する。特にUAEにとっては、エチオピアやソマリランドとの関係を維持することが重要であり、この点でエジプトの行動を抑制する役割を果たす可能性があるのである。

 4. エチオピアは依然として地域の強大な国

 この新たな同盟においても、エチオピアは依然として地域の強国であり、軍事的・経済的に圧倒的な存在である。

 ・エリトリアやソマリアは歴史的にエチオピアと対立してきたが、単独ではエチオピアに対抗することができないため、今回のように複数国が協力してエチオピアに対抗しようとしている。しかし、エチオピアは広範な軍事力を持ち、長期にわたる内戦や紛争に耐えてきた経験を持つ国であるため、3カ国が協力しても決定的な打撃を与えることは困難とされている。
 ・特に、エリトリアは過去数十年にわたって非正規戦を展開してきた経験があるが、それでもエチオピアに勝つためには協力が不可欠である。エジプトやソマリアと協力しても、エチオピアに対して大きな勝利を得ることは難しいと予想されている。

 5. 二次的な影響への責任

 仮にこの同盟がエチオピアに対して何らかの攻撃を行った場合、その行動が引き起こす二次的な影響にも責任を負うことになる。

 ・例えば、地域紛争が激化すれば、難民が増加し、その多くがEUに流入する可能性がある。また、ソマリアを拠点とするテロ組織であるアルシャバブが台頭するリスクも高まるだろう。これらの事態は、地域全体の不安定化を招く可能性があり、エジプト、エリトリア、ソマリアの3カ国はその結果に対する責任を負わなければならない。
 ・皮肉なことに、これらの国々は今回の同盟によって自国の評価を高めたいと考えているものの、実際には逆効果となり、自国の評判をさらに悪化させる可能性がある。特に、これらの国々が予期しない形で地域の安定を脅かす行動を取れば、その影響は世界的にも広がるかもしれない。

 結論

 このエジプト、エリトリア、ソマリアの3カ国による同盟は、表面的にはエチオピアに対する強いメッセージを発しているが、実際のところ大きな行動を取る可能性は低い。。エジプトの財政危機やUAEの影響力、エチオピアの強大さを考えると、現在のところは深刻な脅威にはならないと考えられる。しかし、将来的には何らかの問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。
 
【要点】

 1.視覚効果は強いが実質的な成果は乏しい

 ・各国が自国の立場を強調するために同盟を利用しているが、実際の軍事や経済的協力は不明瞭で具体性に欠けている。

 2.エジプトは大規模な軍事行動を支援する財政的余裕がない

 ・エジプトの債務は急増しており、湾岸諸国や国際機関からの支援に依存しているため、東アフリカで大規模な軍事行動を支援する余裕がない。

 3.UAEがエジプトの行動を制約する可能性

 ・UAEはエチオピアと緊密な関係を持ち、エジプトがエチオピアやソマリランドを不安定化させると、UAEがエジプトへの支援を停止する可能性がある。

 4.エチオピアは依然として地域の強大な国

 ・3カ国が協力しても、エチオピアに対する決定的な打撃を与えるのは難しく、エチオピアは依然として軍事的に優位な立場にある。

 5.二次的な影響への責任

 ・紛争が激化すれば、難民危機やテロリストの台頭などの二次的な影響が生じ、これらの国々はその結果に対する責任を負うことになる。
 
【引用・参照・底本】

Five Takeaways From The Asmara Summit Andrew Korybko's Newsletter 2024.10.13
https://korybko.substack.com/p/five-takeaways-from-the-asmara-summit?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=150167784&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

コメント

トラックバック