中国の景気刺激策の決定2024年10月15日 15:00

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【概要】

 中国の景気刺激策の決定は、主に中央財経委員会が行っており、この委員会は習近平国家主席が率いている。かつて2008年の4兆元規模の刺激策は当時の温家宝首相が発表したが、現在は経済政策における権限がこの中央財経委員会に集中している。

 2008年の刺激策は、工業の過剰生産能力、地方債務の増大、不動産市場への依存、金融システムのリスク拡大など、様々な問題を引き起こしたと考えられている。そのため、過去10年にわたり、中国の指導部は全面的な刺激策を避け、経済の構造的問題を解決するために、よりターゲットを絞った政策を重視してきた。

 しかし、9月26日に開かれた予想外の経済重視の会議で、習近平率いる政治局は、年間の成長目標「約5%」を達成するために、経済再生を優先するよう全国の官僚に呼びかけた。この会議の後、具体的な刺激策の数字が発表されなかったため、一部の市場関係者は不満を表明した。

 結局、2008年と比べ、現在の中国の指導部は過去の失敗を避けるため、より慎重なアプローチをとっているとされ、明確な刺激額が示されないのは、その背景にあると考えられる。
 
【詳細】

 中国における景気刺激策の決定は、現在の政治体制と経済運営の仕組みを理解する上で、中央財経委員会の役割が重要である。この委員会は、習近平国家主席が直接指揮を執り、主要な経済政策や戦略的決定を行う。かつては温家宝首相のような政府のトップが景気刺激策を発表する役割を果たしていたが、現在では政府よりも中国共産党内の委員会が経済政策を主導している点が、決定プロセスにおける大きな変化である。

 2008年の4兆元刺激策とその問題点
 
 2008年に発表された4兆元規模の景気刺激策は、当時の世界金融危機に対処するための大規模な経済対策だった。この措置は、中国の経済成長を維持するために迅速かつ強力な手段として展開され、多くのインフラ投資や地方政府による借入を伴った。しかし、これにより以下のような深刻な問題が発生したとされる。

 過剰生産能力の拡大:大量の資金が工業分野に流れ込み、多くの産業で過剰生産が進んだ。特に鉄鋼やセメントなどの基幹産業では、生産能力が需要を大幅に上回る状態が続き、供給過剰による価格下落や経済の非効率が問題となった。

 地方債務の増加:地方政府が多額の借入を行い、インフラ開発に投資した結果、地方債務が急増し、財政の不安定化を招いた。これにより、多くの地方政府が高い債務を抱えることになり、その後の経済成長に重荷となった。

 不動産依存の強化:刺激策の一環として不動産市場への依存が増加した。これが一時的な経済成長を支えたが、不動産バブルが形成され、長期的には経済の不安定要因となった。

 金融リスクの拡大:大量の資金供給と借入が銀行システムにリスクをもたらし、金融システムの脆弱性が増した。これにより、特に地方金融機関や影の銀行(シャドーバンキング)の問題が顕在化した。

 現在のアプローチと変化

 過去の教訓を踏まえ、中国の指導部は全面的な大規模刺激策を避ける傾向を強めた。2010年代以降、中央財経委員会を中心とした習近平の指導下では、経済の構造的問題に対処するため、よりターゲットを絞った政策が重視されている。具体的には、次のような方針が取られている:

 過剰投資の抑制:2008年のような大規模なインフラ投資による短期的な成長よりも、持続可能な成長を目指すため、過剰投資や非効率なプロジェクトへの資金投入を抑制している。

 地方債務の管理強化:地方政府の借入を厳しく管理し、債務の増加を防ぐための制度が強化されている。これにより、地方債務の急増を抑える一方、経済の安定性を保つことを重視している。

 不動産市場への過度な依存回避:不動産バブルのリスクを回避するため、住宅市場の調整や、住宅は「住むためのものであり、投機の対象ではない」という方針が強調されている。

 最近の刺激策の動きと具体的な数字の不透明さ

 2023年以降、中国経済は様々な課題に直面しており、成長鈍化や内需の低迷、外部環境の不安定性が指摘されている。このような状況下で、9月26日に開かれた政治局会議では、年間成長目標である「約5%」の達成が最優先課題として掲げられ、経済再生のために官僚が一致団結することが強調された。

 一方で、市場関係者の中には、具体的な刺激策の数字が発表されていないことに不満を抱く声もある。例えば、2008年のように「4兆元」といった明確な額が提示されず、政策の詳細が明らかにされないため、実際の影響や規模を判断しづらい状況が続いている。

 これは、中国の指導部が過去の過ちを繰り返さないために慎重な姿勢を取っているためだと考えられる。大規模な刺激策がもたらす副作用を回避しつつ、より精密かつ持続可能な成長を目指す姿勢が現在の経済政策に反映されているため、具体的な数値があえて提示されていない可能性がある。

 結論

 中国の景気刺激策の決定プロセスは、中央財経委員会と習近平国家主席の指導の下で進められており、2008年の大規模刺激策の教訓を踏まえ、現在ではより慎重かつターゲットを絞った政策が採用されている。具体的な刺激額が明確に示されないのは、過去の失敗を回避し、持続可能な経済成長を目指すための方針であると考えられる。

【要点】

 1.決定機関

 中国の景気刺激策は、中央財経委員会(習近平主席が主導)が主に決定する。以前は政府(温家宝首相)が主導していたが、現在は中国共産党内の委員会が中心。

2.2008年の4兆元刺激策の問題点

 ・工業の過剰生産能力の拡大
 ・地方政府による債務の増大
 ・不動産市場への依存拡大
 ・金融システムのリスク増大

 3.現在の方針

 ・全面的な大規模刺激策を避け、ターゲットを絞った政策を重視。
 ・過剰投資や非効率なプロジェクトを抑制。
 ・地方債務の管理強化。
 ・不動産市場への過度な依存を回避。

 4.具体的な刺激策が不透明な理由:

 ・9月の政治局会議で経済再生の優先順位が強調されたが、具体的な刺激額は提示されなかった。
 ・過去の失敗(2008年の刺激策の副作用)を避けるため、慎重な姿勢を維持している。
 
【引用・参照・底本】

Who makes China’s stimulus decisions, and what’s the procedure? SCMP 2024.10.14
https://www.scmp.com/economy/policy/article/3282326/who-makes-chinas-stimulus-decisions-and-whats-procedure?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-china&utm_content=20241014&tpcc=enlz-china&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&next_article_id=3282304&article_id_list=

第28回フォーラム2000会議:蔡英文前総統の演説2024年10月15日 18:57

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【桃源閑話】

 歯の浮くようなスピーチである。民主主義国家(を標榜する体制)の御多分に洩れず、悪いのは他者であるとし、自省力を欠くのである。

 なぜ民主国家は弱体化、衰弱化しつつあるのかをよくよく検討すべきである。

 判りやすく言えば、言行不一致の度が過ぎているのだ。
 
 民主主義を憂いるのであれば、先ず提案したいことがある、米国を挙って糾弾すべきである。そして民主主義の、人権の、人道等の道を踏み外すことの内容、強く監視することである。

 それが民主主義を建前とする国家の為すべきことである。

 <墓穴を掘る>勿れ。

【閑話 完】

【概要】

 蔡英文前総統は2024年10月14日、チェコの首都プラハで開催された第28回「フォーラム2000会議」にて、「民主主義の決意とレジリエンスを証明する」(Proving Democracy's Resolve and Resilience)というタイトルで英語のスピーチを行った。彼女は、世界が直面する様々な挑戦に触れ、特に権威主義の拡大とそれが民主主義に与える影響について言及した。

 蔡氏は、権威主義国家がグレーゾーンでの行動や軍事的脅威、情報戦を通じて民主制度を揺さぶり、社会を分断させようとしていると警告した。さらに、中国が台湾に対する脅威を増大させていることを強調し、台湾が脅威の最前線に立っていることを指摘した。彼女は、中国が台湾を併合しようと様々な手段を講じてきたが、台湾はその脅威に抵抗してきたと述べた。

 蔡氏はまた、台湾が国際社会における重要な一員となっている理由を強調し、民主国家が台湾を支持し、協力関係を深めていることを紹介した。彼女は、台湾の人々が民主主義を守るために強靭な意志を持ち、選挙を通じて自らの未来を選び取る姿勢を示し続けていると述べた。

 最後に、蔡氏は民主国家に対して、いかなる威嚇や武力行使も深刻な結果をもたらすという明確なシグナルを送る必要があると訴え、団結と協力の重要性を強調した。彼女は、台湾の民主主義が欧州の民主主義と同じく独裁主義に反抗した歴史に基づくものであり、その経験が一致団結の基盤であると結んだ。
 
【詳細】

 蔡英文前総統が2024年10月14日にチェコのプラハで開催された第28回「フォーラム2000会議」で行ったスピーチは、主に民主主義の脅威、台湾の現状、そして世界の民主国家の連携に焦点を当てた内容であった。

 世界が直面する困難と民主主義への脅威

 スピーチ冒頭で蔡氏は、ここ数年にわたり、民主主義国家がかつてない挑戦に直面していることを指摘した。具体的には、新型コロナウイルスのパンデミック、その後の世界経済の停滞、気候変動、核の拡散リスク、戦争などを挙げ、これらが民主主義に対する大きな脅威であると強調した。特に、権威主義的な政権が自信を持ち始め、その統治モデルが民主制度よりも適応しやすいと信じ、世界に広めようとしていることを指摘した。

 蔡氏は、権威主義的な政府が「グレーゾーンでの行動」「軍事的脅威」「侵略」「認知戦」「情報戦」などの手法を駆使して、民主主義国の人々の信頼を揺さぶり、社会を二極化させることを狙っていると述べた。この点について、彼女は台湾がまさにその脅威の最前線に立たされていると強調した。

 中国の台湾への脅威

 蔡氏はスピーチの中で、台湾が中国共産党政権から長年にわたり脅威を受け続けていることを強く訴えた。具体的には、中国が台湾を併呑しようとあらゆる手段を使い、その脅威は年々増加していると述べた。スピーチ当日の朝(10月14日)、中国が台湾周辺で軍事合同演習「聯合利剣-2024B」を発表したことも紹介し、台湾に対する軍事的圧力が続いていることを指摘した。

 彼女は、台湾の立場は常に危険にさらされているが、その中で台湾は国際社会において重要な役割を果たしてきたと述べ、民主主義国家の指導者たちが台湾を支持し、連携を強化していることを強調した。

 台湾のレジリエンスと強靭さ

 蔡氏は、台湾が長年にわたって中国の脅威に直面しながらも、それに適応し、社会と指導者が強靭性を培ってきたと述べた。台湾は、軍事改革や民間防衛、メディア・リテラシー向上など、様々な分野で強固な対策を講じてきた。彼女は、台湾の市民社会が常に自発的に民主主義を守ろうとしてきたことに誇りを持っており、それが台湾の強靭さの源であると強調した。

 特に、2024年の台湾の選挙について言及し、台湾の人々が積極的に投票に参加し、彼らの未来を導くリーダーを自らの手で選び取ることの重要性を強調した。蔡氏は、こうしたプロセスを通じて、台湾が民主主義の価値を体現し続けていると述べた。

 世界の民主国家へのメッセージ

 蔡氏は、台湾だけでなく、世界の民主主義国家が一丸となって対処する必要があると訴えた。彼女は、民主国家が「いかなる民主国家への威嚇や武力行使も深刻な結果を招く」という明確なメッセージを送るべきだと強調した。また、団結が社会的、政治的に重要であるとし、「フォーラム2000会議」から生まれた「民主復興聯盟」を例に、民主主義国家が連携し、新たな議論を構築することの意義を述べた。

 蔡氏は、民主主義の強靭性を高めるためには、独立したメディア、企業、市民社会、女性、若者、宗教団体、地方自治体、一般市民など、様々な利害関係者(ステークホルダー)が参加できる体制が必要であると述べた。民主国家は、自らのアイデンティティと定義に自信を持ち、その自信を基盤に、互いに助け合うことができると彼女は訴えた。

 台湾と欧州の民主主義の共通点

 蔡氏は、台湾の民主主義が欧州の民主主義と似ている点にも触れた。いずれの地域も、独裁主義に対抗した先人たちの犠牲に基づいて民主主義が確立されており、民主主義と自由を追求する過程で多くの困難に直面してきたと述べた。

 彼女は、現在自由を享受できるまでに至る長い道のりを振り返りながら、まだ自由に向かって進んでいる人々もいると指摘した。この共通の経験が、世界の民主主義国家が一致団結する理由であり、民主主義の大切さとその脆弱性を理解する基盤であると彼女は強調した。

 感謝と締めくくり

 蔡氏は、スピーチの最後に「Forum 2000 Foundation」への感謝の意を示し、欧州を訪れ、多くの人々と意見を交換する機会を得たことに喜びを表した。そして、民主主義国家の連帯と協力が今後も強化されるべきであると再度訴え、スピーチを締めくくった。

 蔡英文前総統のこのスピーチは、台湾の民主主義とその脅威に対する強靭性を示すとともに、世界の民主主義国家に対する強い連携の呼びかけを行ったものであった。

【要点】

 1.世界の困難と民主主義への脅威

 ・新型コロナウイルスのパンデミック、世界経済の停滞、気候変動、核の拡散、戦争など、民主主義国家は前例のない挑戦に直面している。
 ・権威主義的な政権が自信を深め、統治モデルを世界に広めようとしている。

 2.権威主義政権の攻撃手法

 ・軍事的脅威、認知戦、情報戦、グレーゾーンでの行動を通して、民主主義国への信頼を崩そうとしている。

 3.台湾への脅威

 ・中国が長年にわたり台湾を脅かし続けており、併合を狙っている。
 ・2024年10月14日、中国は台湾周辺で軍事合同演習「聯合利剣-2024B」を実施すると発表。

 4.台湾のレジリエンス

 ・長年の脅威への対応経験により、台湾は強靭性を培ってきた。
 ・台湾は国防改革、民間防衛、メディア・リテラシー向上などの分野で対策を講じてきた。

 5.台湾の民主主義の誇り

 ・台湾の人々は積極的に選挙に参加し、民主主義が台湾のアイデンティティの一部であると認識している。
 ・民主主義の価値を大切にし、国際的な連携を強化している。

 6.世界の民主国家への呼びかけ

 ・民主国家は威嚇や武力行使に対して明確な対応を示す必要がある。
 ・団結が重要であり、民主国家が協力して民主主義を強化すべきだと強調。

 7.台湾と欧州の民主主義の共通点

 ・台湾と欧州の民主主義は、独裁主義に抗った歴史に基づいている。

 8.感謝

 ・欧州訪問と意見交換の機会を与えた「Forum 2000 Foundation」に感謝を述べた。

【参考】

 ☞ フォーラム2000会議(Forum 2000 Conference)は、1996年にチェコの初代大統領ヴァーツラフ・ハヴェルやノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼルらが共同で設立した国際会議である。この会議は、世界各地の政治指導者、思想家、活動家、学者などが集まり、民主主義、人権、国際関係、宗教対話、環境問題といった重要な課題について議論する場を提供している。

 主な目的は、民主主義と市民社会の強化、国際的な対話を通じて平和と自由を促進することである。毎年、チェコの首都プラハで開催されており、世界的な問題に対する建設的な議論の場として広く認識されている。

 ☞ フォーラム2000会議には、特定の参加国というより、世界中の民主主義国や新興民主主義国から政府関係者、学者、市民社会のリーダー、活動家などが参加する。これは公式な国際会議というより、民主主義や人権に関心のある個人や団体が集まる場であるため、参加者は国単位ではなく、多様なバックグラウンドを持つ人々が選ばれる。

 ただし、これまでにアメリカ合衆国、欧州諸国(チェコ、ポーランド、ドイツ、フランスなど)、アジア(台湾、日本、インドなど)を含む幅広い地域から参加者が出席している。フォーラム2000は、特にチェコや東欧の民主化運動の影響を受けた国々とのつながりが強く、民主主義の発展を共有するための国際的な対話の場となっている。

☞ ォーラム2000会議では、基本的に民主主義、自由、人権を重視する国や個人が招待される傾向がある。しかし、必ずしも「非民主主義国家」が完全に排除されるわけではない。会議の目的が対話と相互理解の促進であるため、場合によっては非民主主義的な体制下での改革派や異議を唱える活動家が招かれることもある。

 一方で、会議の主な焦点は民主主義の強化や権威主義への抵抗にあるため、権威主義的な政府自体が公式に招待されることは少なく、むしろ反権威主義的な声や市民社会の視点が重視される。

 ☞ フォーラム2000会議には、非民主主義的な体制下で活動している改革派や異議を唱える活動家が招かれることがある。具体例として、以下のような人物やグループが挙げられる。

 1.アレクセイ・ナワリヌイ(ロシア)

 ・ロシアの反体制派リーダーであり、プーチン政権に対する強力な批判者。彼はロシアにおける腐敗や権威主義に対する異議を唱えてきた。フォーラム2000はこうした活動家を支持し、彼のような人物を招待している

 2.劉暁波(中国)

 ・ノーベル平和賞受賞者で、中国の人権活動家。中国の一党独裁に対する批判と民主化運動を進め、民主主義と人権を訴えてきた。劉暁波のような中国の民主化運動を進める人物も会議に招かれることがある。

 3.ベラルーシの民主化活動家

 ・例えば、2020年のベラルーシの大統領選挙後に反政府デモが発生した際、スヴェトラーナ・チハノフスカヤをはじめとする民主化運動のリーダーたちが、ルカシェンコ政権に反対し、欧州や国際社会からの支持を得るために活動を行っていた。彼女のような反体制派の活動家もフォーラム2000の招待対象となる。

 4.香港の民主派リーダー

 ・近年、中国の圧力が強まる香港では、民主主義を支持する市民やリーダーたちが権威主義的な体制に異議を唱えている。例えば、ジョシュア・ウォン(黄之鋒)などが香港の民主化運動を牽引しており、フォーラム2000のような会議に招かれることがある。

 5.ウイグル人権活動家

 ・中国の新疆ウイグル自治区における人権侵害に抗議するウイグル人権活動家も、フォーラム2000のような場で発言する機会を与えられることがある。ウイグル人の権利擁護を目的とした活動は、国際的な注目を集めている。

 これらの活動家は、権威主義的な体制の中で民主主義や人権の推進を求めているため、フォーラム2000会議のような国際的な対話の場において、その声を届ける重要な存在として招かれることがある。

 ☞ 列挙した人物の中で、フォーラム2000会議に実際に出席したかどうかについて、以下のようにまとめる。

 1.アレクセイ・ナワリヌイ(ロシア)

 ・ナワリヌイ自身が直接出席した記録はないが、彼を支持する活動家や彼の事例がフォーラム2000で取り上げられることはある。彼がロシア国内で拘束されていることが多いため、出席は難しい状況である。

 2.劉暁波(中国)

 ・劉暁波がフォーラム2000に直接出席した記録はない。ただし、彼の人権活動や中国における民主化運動は、フォーラム2000で何度も取り上げられている。劉暁波のノーベル平和賞受賞後や死去後、彼の功績が会議で話題になったことがある。

 3.スヴェトラーナ・チハノフスカヤ(ベラルーシ)

 ・チハノフスカヤは、2020年以降、ベラルーシの反政府運動の象徴的な人物となり、国際的な舞台で活躍している。彼女は2021年のフォーラム2000会議に実際に出席し、ベラルーシの民主化運動についてスピーチを行った。

 4.ジョシュア・ウォン(香港)

 ・ジョシュア・ウォンは、過去にフォーラム2000のイベントに招かれ、香港の民主化運動に関して発言したことがある。彼は国際社会における香港の状況を訴えるために積極的に参加してきたが、近年は中国当局による取り締まりの影響で出席が困難になっている。

 5.ウイグル人権活動家

 ・ウイグル人権活動家は、フォーラム2000のような国際会議にしばしば出席している。例えば、レビヤ・カーディル(Rebiya Kadeer)などのウイグル活動家が、フォーラム2000会議で発言したことがある。彼らはウイグル人の状況を国際的な場で訴え続けている。

 したがって、すべての列挙した人物が直接参加したわけではないが、彼らの活動や主張はフォーラム2000で取り上げられ、関連する活動家が実際に出席している。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

蔡英文前総統、チェコの首都プラハで開催の「フォーラム2000会議」でスピーチ TAIWAN TODAY 2024.10.15
https://jp.taiwantoday.tw/news.php?post=260180&unit=149&utm_source=Taiwan+Today+JP+9&utm_medium=email&utm_content=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9+textlink

イスラエル外相:国連本部を「地球上から抹消すべき」2024年10月15日 19:41

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【概要】

 イスラエルは国連に対して強い反発を示しており、特に国連機関や平和維持軍に対して敵対的な行動を取っていることが報じられている。

 イスラエルは、2024年10月13日のベンヤミン・ネタニヤフ首相のテレビ演説において、国連平和維持軍(UNIFIL)がレバノン南部のヒズボラの影響下にある地域で「人間の盾」として利用されていると非難し、彼らの撤退を要求している。この主張は、国連平和維持軍がヒズボラの活動に巻き込まれ、両者の間で衝突が発生するリスクがあるとの考えに基づいている。

 さらに、イスラエル軍はレバノンに駐在しているUNIFILの位置を4回攻撃し、2名の平和維持軍兵士が負傷した。これらの攻撃は、国連に対する挑発的な行動として国際的に注目を集めている。

 また、イスラエル政府は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を「テロ組織」と指定し、7月に可決された法案により、UNRWAの活動を国内で禁止し、その職員の外交特権を剥奪した。

 加えて、イスラエル外相のイスラエル・カッツは、国連を「反ユダヤ主義的かつ反イスラエル的なテロ支援組織」と非難し、国連本部を「地球上から抹消すべき」との過激な発言をしている。また、国連事務総長アントニオ・グテーレスをペルソナ・ノン・グラータ(好ましくない人物)と宣言した。

 イスラエルが国連と衝突している背景には、過去の国連決議に従わない歴史があり、229の安全保障理事会および総会決議を履行していないと指摘されている。
 
【詳細】

 イスラエルと国連との間の緊張関係と、イスラエルの国連に対する攻撃的な姿勢について詳細に述べている。

 1. イスラエルの国連に対する態度

 ・イスラエルは、国連総会においてその加盟が条件付きで承認されていると指摘されている。この承認は、イスラエルが国連憲章の義務を無条件に受け入れることを約束するものであった。しかし、イスラエルは229の国連安全保障理事会および総会の決議に従っておらず、これに対する批判が高まっている。
 ・ネタニヤフ首相は、国連平和維持軍(UNIFIL)がヒズボラの影響下にある地域から撤退すべきだと主張し、国連の対応を厳しく非難している。彼は、UNIFILがヒズボラの「人間の盾」となっていると述べ、国連の行動が彼らの兵士やイスラエルの兵士を危険にさらしていると指摘している。

 2. 最近の攻撃

 ・イスラエル軍は、レバノンに駐留する国連平和維持軍の位置を4回攻撃し、2名の国連兵士が負傷したと報じられている。これらの攻撃は、国連の安全性とその活動への大きな脅威を示している。

 3. UNRWAへの攻撃

 ・イスラエルは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を「テロ組織」と見なしており、これは国際社会においても大きな波紋を呼んでいる。特に、7月にはイスラエルの国会(クネセト)で3つの法案が可決され、UNRWAがイスラエル国内での活動を禁止され、職員の外交特権が剥奪された。この動きは、国連のパレスチナ難民への援助活動を抑制する狙いがあると考えられる。

 4. イスラエルの国連に対する発言

 ・イスラエル外相のイスラエル・カッツは、国連が「反ユダヤ主義的かつ反イスラエル的なテロ支援組織」として機能していると発言し、国連本部を「地球上から抹消すべき」と極端な表現をしている。これは、イスラエル政府が国連に対して敵対的な姿勢を強めていることを示している。
 ・さらに、カッツは国連事務総長アントニオ・グテーレスをペルソナ・ノン・グラータとし、これにより国連との関係がさらに悪化する可能性がある。

 5. 歴史的背景

 ・また、イスラエルの国連加盟がどのようにして条件付きで行われたのか、そしてイスラエルがその条件を守っていないことに言及している。特に、1948年のイスラエル独立宣言や、以後の中東戦争において、イスラエルがパレスチナ人を強制的に追放した「ナクバ(大惨事)」の過程が強調されている。この歴史的背景が、現在の国連との対立の根底にあると考えられる。

 このように、イスラエルの国連に対する行動は、国際法や国連の決議に対する無視を含む多くの問題を抱えており、その結果として国際的な非難や緊張が高まっている。国連との関係が今後どうなるかは、国際的な情勢にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

【要点】

 イスラエルと国連との関係

 ・条件付き加盟: イスラエルは国連に条件付きで加盟しており、国連憲章の義務を無条件に受け入れると約束していた。
 ・決議の不履行: イスラエルは229の国連安全保障理事会および総会の決議を遵守していない。

 ネタニヤフ首相の発言

 ・UNIFILへの要求: ネタニヤフ首相は、UNIFILがヒズボラの「人間の盾」となっているとし、撤退を求める。
 ・危険の指摘: UNIFILの存在がイスラエル兵士や国連兵士を危険にさらしていると主張。

 最近の攻撃

 ・UNIFILへの攻撃: イスラエル軍がレバノンのUNIFILの位置を4回攻撃し、2名の国連兵士が負傷。

 UNRWAへの攻撃

 ・「テロ組織」指定: イスラエルはUNRWAを「テロ組織」と見なし、国内での活動を禁止する法案を可決。
 ・外交特権の剥奪: UNRWA職員の外交特権も剥奪された。

 イスラエルの発言

 ・反ユダヤ主義の非難: イスラエル外相のイスラエル・カッツは国連を「反ユダヤ主義的かつ反イスラエル的」と非難。
 ・国連本部の抹消発言: カッツは国連本部を「地球上から抹消すべき」と過激に発言。
 ・事務総長をペルソナ・ノン・グラータに: 国連事務総長アントニオ・グテーレスをペルソナ・ノン・グラータと宣言。

 歴史的背景

 ・独立宣言: イスラエルの独立宣言は1948年に行われ、国連加盟時には条件が付けられた。

 ナクバ(大惨事): イスラエルの成立に伴い、750,000人のパレスチナ人が強制的に追放されるなどの歴史的背景が存在。

【参考】

 ☞ 「229」は、イスラエルが遵守していないとされる国連の決議の数を指している。この決議は、国連安全保障理事会や総会によって採択されたものであり、イスラエルの行動や政策に対する国際的な要求や指針を含んでいる。

 具体的には、これらの決議は以下のような内容を含む場合がある。

 ・占領地の返還: イスラエルが占領している領土の返還に関する決議。
 ・パレスチナ人の権利: パレスチナ人に対する権利や自決権に関する決議。
 ・暴力の抑制: イスラエルとパレスチナの間の暴力を抑制するための措置に関する決議。

 これらの決議を遵守しないことは、イスラエルの国際社会における地位やその行動に対する批判の根拠となっている。記事内では、これらの決議の不履行がイスラエルの国連での立場や信頼性に影響を与える可能性があることが示唆されている。

 ☞ 「ナクバ」(Nakba、アラビア語で「大惨事」という意味)は、1948年のイスラエル建国に伴い、約75万人のパレスチナ人が故郷を追われ、強制的に移住させられた歴史的事件を指す。この出来事は、パレスチナ人にとって非常に重要な歴史的トラウマであり、現在でも多くのパレスチナ人やその支持者によって記憶されている。

 ナクバの背景と経過

 ・1947年の国連分割決議: 国連は、パレスチナをユダヤ人とアラブ人の二つの国家に分割する提案を行ったが、アラブ諸国とパレスチナ人はこれに反対した。
 ・イスラエルの独立宣言: 1948年5月14日、イスラエルが独立を宣言し、周辺のアラブ諸国が軍事介入した。
 ・避難と追放: 戦争が進む中で、多くのパレスチナ人が家を離れざるを得なくなり、暴力や恐怖から逃げる形で避難した。イスラエルの軍事行動によって、村や都市が攻撃され、多くの人々が故郷を失った。

 ナクバの影響

 ・難民問題: ナクバ以降、多くのパレスチナ人が難民となり、ヨルダン、レバノン、シリアなどに避難した。彼らとその子孫は、現在も難民としての地位を持つことが多い。
 ・国際的な認識: パレスチナの人々にとって、ナクバは自決権や民族的アイデンティティの根源であり、国際社会においてもパレスチナ問題の中心的なテーマとなっている。
 ・毎年の記念行事: 5月15日は「ナクバの日」として、多くのパレスチナ人が追放や故郷を失ったことを追悼するために行動を起こす。
 ・ナクバは、パレスチナとイスラエルの間の深い対立とその歴史的背景を理解する上で非常に重要な出来事である。

 ☞ イスラエルが1948年5月14日に独立を宣言し、その後周辺のアラブ諸国が軍事介入した背景には、いくつかの重要な要因がある。

 背景

 1.国連分割決議(1947年)

 ・国連は1947年にパレスチナをユダヤ人とアラブ人の二つの国家に分割する提案(国連決議181)を採択。
 ・この決議に基づき、ユダヤ人は独立国家の樹立を期待したが、アラブ人はこの分割案を受け入れなかった。

 2.パレスチナの歴史的背景

 ・パレスチナ地域は長い間多様な民族と文化が共存してきたが、ユダヤ人の移民が増加するにつれて、アラブ人との対立が深まっていた。
 ・特に、20世紀初頭のシオニズム運動により、ユダヤ人の国家樹立が進められていた。

 3.イスラエルの独立宣言

 ・1948年5月14日、イスラエルは独立を宣言し、エルサレムを首都とする新しい国家の設立を宣言。
 ・この独立宣言は、アラブ側にとっては自民族の土地の喪失と受け取られ、強い反発を招いた。

 周辺アラブ諸国の軍事介入

 1.アラブ連盟の結束

 ・イスラエルの独立宣言に対し、アラブ連盟(エジプト、シリア、トランスヨルダン、イラク、レバノンなど)は共同で軍事介入を決定した。
 ・彼らは、イスラエルの成立を認めず、パレスチナ人の権利を守るために行動する意義を感じていた。

 2.民族主義とパンアラブ主義

 ・この時期、アラブ諸国では民族主義やパンアラブ主義が高まっており、パレスチナ問題はアラブ全体の問題として捉えられていた。
 ・アラブ諸国は、パレスチナ人の苦境を自己のアイデンティティの一部として扱い、行動を起こす動機となった。

 3.軍事的な戦略

 ・アラブ諸国は、イスラエルの設立が地域の安全保障に脅威を与えると考え、軍事介入によってイスラエルの拡大を阻止しようとした。
 ・それぞれの国は、独立を目指すイスラエルに対抗することで、自国の地位や影響力を示そうとしていた。

 結果

 ・アラブ諸国の軍事介入は、第一次中東戦争(1948-1949年)を引き起こし、結果としてイスラエルが領土を拡大し、パレスチナ人の大量移住(ナクバ)が発生した。この戦争は、以降の中東問題の根本的な要因となった。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Israel attacks the United Nations Voltairenet.org 2024.10.15
https://www.voltairenet.org/article221376.html

インドに関し不正確な説明2024年10月15日 21:57

Ainovaで作成
【概要】

 日本のメディア「Nikkei」がインドの地域政策について発表した批判的な報道に対し、その誤解を解消する内容である。著者のアンドリュー・コリブコは、Nikkeiが行った主張に対して、具体的に反論を展開している。

 スリランカに関する誤解: Nikkeiは、スリランカの新しい反体制派リーダーであるアヌラ・クマラ・ディッサナイケのインドに対する影響を懸念しているが、具体的な根拠は示されていない。過去40年間の両国の関係を振り返り、未来が困難であるという印象を与えているが、実際には未来の展望についてはまだ判断がつかない。

 モルディブの新大統領の発言: Nikkeiは、モルディブの新大統領が反インド的な立場を表明していると指摘しているが、その後の訪印により立場が変わっている。大統領のインド訪問では、ホストを称賛し、多くの高官や著名人と会ったことが報じられており、Nikkeiは彼の発言をその後の動きを待たずに利用したとされる。

 ネパールの新首相について: Nikkeiは、ネパールの新たな共産党首相の就任を挙げ、インドとの関係が複雑であることを指摘している。しかし、インドはネパールの最大の貿易相手国であり、ネパールの首相がインドに対して敵対的であった場合でも、その影響は限られていると強調されている。

 バングラデシュにおける失敗: Nikkeiは、バングラデシュの政権交代を引き合いに出し、インドの影響力の低下を指摘しているが、実際にはバングラデシュのハシナ首相が中国との貿易および軍事的な関係を強化していたことが明らかにされている。Nikkeiの主張は、インドの外交の失敗を煽るプロパガンダとされている。

 インドの対中国政策と地域への影響: Nikkeiは、インドが中国に気を取られすぎて地域政策を怠っていると指摘しているが、著者は、実際には各国の内政や政治家の地政学的な動きがインドの影響力の変動に影響を与えていると述べている。インドは地域を無視しているわけではなく、歴史的な背景に基づいた相互成長のための友好関係を築く重要な存在であることが強調されている。

 この記事は、Nikkeiの報道に対して、表面的な情報だけではなく、実際のデータや背景をもとに誤解を解消することを目的としている。
 
【詳細】

 日本のメディア「Nikkei」が発表したインドの地域政策に対する批判的な報道について、著者のアンドリュー・コリブコが詳細に反論している。以下に、各ポイントについてより詳しく説明する。
 
 1. スリランカに関する予測の誤り

 Nikkeiは、スリランカの新しい反体制派リーダーであるアヌラ・クマラ・ディッサナイケがインドにとって悪影響を及ぼす可能性があると予測している。しかし、この予測には具体的な根拠が欠けており、過去40年間のスリランカとの関係を振り返る中で、困難な局面を強調しすぎている。このアプローチが将来の関係を悲観的に捉えさせる意図を持っていると指摘している。

 2. モルディブの新大統領の反インド的姿勢

 Nikkeiは、モルディブの新大統領が反インド的な立場を持っていると報じているが、実際には大統領は最近のインド訪問でその姿勢を変化させている。訪印では、彼はインドのホストを称賛し、インドの高官やBollywoodの著名人と会談した。このような訪問の前に反インド的な姿勢を強調することは、Nikkeiの報道が時系列的に不正確であることを示唆している。

 3. ネパールの政治情勢

 Nikkeiは、ネパールの新たな共産党首相の就任を挙げて、インドとの関係が複雑であることを指摘している。著者は、ネパールの首相が中国に対して政治的な駆け引きを行っているが、インドとの経済的な関係が非常に重要であるため、ネパールの政策が極端に反インド的にはならないことを強調している。具体的には、インドがネパールの最大の貿易相手国であるため、ネパールの政治家は経済的利益を無視できない。

 4. バングラデシュの政権交代とインド

 Nikkeiは、バングラデシュにおける最近の政権交代をインドの失敗と関連付けているが、著者は実際にはハシナ首相が中国との関係を強化していたことを指摘している。特に、バングラデシュの政権がアメリカの支援を受けているという背景を示すことで、インドの外交政策に対する誤解を解消しようとしている。また、ハシナ首相が反インド的に見える行動をとるのは、国内の政治情勢や他国との外交バランスを考慮した結果である。

 5. インドの対中国政策の影響

 Nikkeiは、インドが中国との関係に過度に集中し、地域政策を怠っていると述べているが、著者はこの見方に異議を唱えている。彼は、インドが地域に対して無関心だったわけではなく、むしろ各国の内政や政治家の地政学的な動きが影響を与えていると強調している。インドは地域のリーダーとして、周辺国との友好関係を構築する努力を続けており、歴史的にもその影響力は時間とともに回復していることを示している。

 総評

 この記事は、Nikkeiの報道に対して表面的な情報に基づく誤解を解消することを目的としており、地域政策の複雑性を理解するために必要な情報を提供している。著者は、インドが地域において重要な役割を果たし続けており、その影響力は経済的な関係に基づいており、単なる外交的な失敗に起因するものではないと主張している。このような背景を踏まえれば、Nikkeiの報道はインドに対する誤解を生む可能性があるため、注意が必要である。

【要点】

 記事の要点

 1.Nikkeiの批判:

 ・日本のメディア「Nikkei」がインドの地域政策を批判。
 ・タイトルは「誤った外交政策がインドを南アジアで孤立させた」と述べている。

 2.スリランカに関する誤解

 ・新リーダーのアヌラ・クマラ・ディッサナイケがインドに悪影響を及ぼすとの予測が根拠薄い。
 ・過去の困難な関係に焦点を当て、未来の展望を悲観的に示唆。

 3.モルディブの新大統領

 ・新大統領が反インド的な姿勢を持っていると報じられるが、訪印後の発言は変化している。
 ・訪問前に反インド的立場を強調する報道が不正確である。

 4.ネパールの政治情勢:

 ・新共産党首相の就任を引き合いに出すが、インドとの貿易関係が重要で、極端な反インド政策にはならない。
 ・インドはネパールの最大の貿易相手国であるため、経済的利益が優先される。

 5.バングラデシュの政権交代

 ・Nikkeiは政権交代をインドの失敗と関連付けるが、実際にはハシナ首相が中国との関係を強化。
 ・政治家の行動は国内の政治情勢に依存している。

 6.インドの対中国政策

 ・Nikkeiがインドの対中国政策が地域政策の怠慢を引き起こしていると主張。
 ・インドが地域に対して無関心ではなく、内政や地政学的な動きが影響していると反論。

 7.総評

 ・Nikkeiの報道は誤解を招く可能性があり、インドの地域における重要な役割を再確認する必要がある。
 ・インドの影響力は経済的な関係に基づいており、単なる外交的な失敗によるものではない。

【引用・参照・底本】

Nikkei’s Hit Piece On India’s Regional Policy Relies On A Lot Of Misrepresentations Andrew Korybko's Newsletter 2024.10.15
https://korybko.substack.com/p/nikkeis-hit-piece-on-indias-regional?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=150246409&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

ロシアとインド:北極の重要性2024年10月15日 22:34

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【概要】

 ロシアとインドの戦略的パートナーシップにおける北極の重要性が説明されている。

 1.インドの貿易経路としての北極海航路(NSR)の利用拡大

 現在進行中のイスラエル-抵抗勢力の戦争がインド・中東・ヨーロッパ経済回廊(IMEC)の作業を無期限に中断させ、紅海の封鎖がコストを引き上げている。このため、インドは今後、紅海の再開を待つ間の代替ルートとしてNSRの利用を期待されている。

 2.インド造船所の能力

 ロシアはインドに対し、四隻の非核型砕氷船の建造を依頼したい意向を示している。これは、インドの造船所が他の競合国(中国、韓国、日本)よりも早く能力を持つためであり、欧州の造船所は制裁の影響で契約を受けることができない。インドは今後10年間で1,000隻以上の船を建造する計画を持っており、ロシアがルピーのストックをこの業界に投資することは合理的である。

 3.インドの船員育成

 インドの船員は世界で三番目に多く、NSRの航行訓練において重要な役割を果たすことができる。ロシアの法律により、外国船籍での石油、天然ガス、石炭の輸送は禁止されており、これに従ってロシアで建造された船舶が必要となる。人口が自然に減少しているロシアにとって、インドの熟練船員を契約することは理にかなっている。

 4.ロシアの北極エネルギーへの投資

 インドは条件付きでロシアの北極LNG 2プロジェクトに投資する可能性がある。インドの石油長官は、現時点では制裁のために関与しないと述べているが、ウクライナ紛争の終結に向けた仲介が成功すれば、特例が可能になるかもしれない。ウクライナ側は、中国よりもインドが仲介役を担うことを望んでいるとされている。

 5.インドの役割

 ロシアは中国への過度な依存を防ぐために、インドに依存している。西側はインドに対しロシアとの距離を置くよう圧力をかけているが、インドの役割を理解し始めており、制裁を最大限には適用していない。インドの北極における影響力の増加は、中国への対抗としてロシアと西側双方の利益に合致する。

 総じて、ロシアとインドの北極における協力は非常に有望であるが、インドが北極LNG IIプロジェクトに対する西側の制裁を無視することに消極的である限り、その潜在能力は制限され続ける。インドは国際的な影響力のバランスを維持するために重要な役割を果たしており、西側も特例を通じてインドの競争力を強化するための非公式な協議を行うべきである。
 
【詳細】

 ロシアとインドの戦略的パートナーシップの北極における次元が詳細に論じられており、特にインドの影響力の増大が中国に対抗する手段となり、ロシアおよび西側の利害に適合する様子が描かれている。以下に各ポイントを更に詳しく説明する。

 1. インドの貿易経路としてのNSRの利用拡大

 インドは、インド・中東・ヨーロッパ経済回廊(IMEC)の作業がイスラエルと抵抗勢力の戦争の影響で中断され、紅海の封鎖がインドとヨーロッパ間の貿易におけるリスクを高めていることを受け、北極海航路(NSR)の利用を進める見通しである。この新しいルートは、紅海の経路が再開されるまでの代替手段として機能することが期待されており、インドの貿易の安全性と効率を向上させる役割を果たすと考えられている。

 2. インド造船所の能力

 ロシアは、インドが四隻の非核型砕氷船を建造できる能力を持っていることに注目している。これは、ロシアが欧米やアジアの他の国々に依存せずに、自国のニーズを満たすためにインドに依頼することができるためである。特に、制裁の影響で欧州の造船所がこのような契約を受けられないため、インドの造船業界は新たなビジネスチャンスを手に入れることになる。インドは、10年間で1,000隻以上の船を建造する計画を立てており、このプロジェクトに対するロシアの投資は合理的な選択となる。

 3. インドの船員育成

 インドは、世界で三番目に多い船員を有していることから、NSRでの航行に必要な人材を育成する上で重要な役割を果たす。ロシアは、外国船籍での油田や天然ガス、石炭の輸送を禁止する法律を制定しており、ロシアで建造された船舶が必要とされる。インドの熟練した船員を契約することで、ロシアは自国の船舶の航行を円滑に行えるようになる。このように、インドの船員がロシアの北極での航行に寄与することが期待されている。

 4. ロシアの北極エネルギーへの投資

 ロシアの北極LNG 2プロジェクトに関して、インドは特定の条件下で投資を検討する可能性がある。インドの石油長官は、現在は制裁の影響で関与しない意向を示しているが、ウクライナ紛争の解決に向けた仲介を成功させることで、特例が得られる可能性がある。ウクライナ側は、インドが仲介役を果たすことを望んでおり、これが実現すれば、西側諸国はインドに対して報奨を与えることで、中国の影響力を抑制する動きが期待される。

 5. インドの役割

 ロシアは、中国への過度な依存を避けるためにインドとの関係を強化する必要がある。このため、インドはロシアの戦略的パートナーとして重要な位置を占めている。西側諸国も、インドが持つバランスの役割を理解し始めており、インドに対する制裁を最大限には適用していない。このような背景から、インドの北極における影響力の拡大は、中国への対抗手段としてロシアと西側の両方の利益に適合する。

 結論

 ロシアとインドの北極における協力は、さまざまな要因によって非常に有望である。しかし、インドが北極LNG IIプロジェクトに対する西側の制裁を無視することに消極的である限り、これらの協力関係はその潜在能力を最大限に発揮できない。したがって、インドはその国際的な影響力を活かしつつ、西側と非公式な協議を行い、特例を受けることで中国に対抗できるような状況を作り出す必要がある。

【要点】

 ロシアとインドの北極パートナーシップ

 1.NSRの貿易経路利用

 ・インド・中東・ヨーロッパ経済回廊(IMEC)の進展が中断されているため、NSRが代替ルートとして期待されている。
 ・NSRの利用により、インドとヨーロッパ間の貿易の安全性と効率が向上する。

 2.インドの造船能力

 ・ロシアがインドに四隻の非核型砕氷船の建造を依頼したい意向を示している。
 ・インドの造船所は、他の競合国(中国、韓国、日本)よりも早く能力を持ち、契約を受けることが可能。

 3.船員の育成

 ・インドは世界で三番目に多い船員を有しており、NSR航行の人材育成に寄与する。
 ・ロシアの法律により、外国船籍での輸送が禁止されているため、インドの船員の起用が期待される。

 4.エネルギー投資の可能性

 ・インドはロシアの北極LNG 2プロジェクトに条件付きで投資する可能性がある。
 ・ウクライナ紛争の解決に向けた仲介が成功すれば、特例を得られるかもしれない。

 5.国際的な役割

 ・ロシアは中国への依存を避けるために、インドとの関係を強化する必要がある。
 ・西側もインドのバランスの役割を理解し、制裁を最大限には適用していない。

 結論

 ・ロシアとインドの北極における協力は有望であるが、インドが西側の制裁を無視することに消極的な限り、潜在能力は制限される。
 ・インドは国際的な影響力を活かし、西側と非公式な協議を行う必要がある。

【参考】

 ☞ IMEC(India-Middle East-Europe Economic Corridor)は、インドと中東、さらにはヨーロッパを結ぶ経済回廊の構想であり、以下のような要点が挙げられる。

 IMECの概要

 1.目的

 ・インドと中東諸国、ヨーロッパ間の貿易と経済協力を促進することを目指す。
 ・物流と輸送インフラを強化し、地域間の接続性を向上させる。

 2.背景

 ・地政学的な緊張や供給チェーンの問題を背景に、代替貿易経路の必要性が高まっている。
 ・特に中国の一帯一路構想に対抗する形での経済連携が重要視されている。

 3.主要ルート

 ・インドから中東を経て、ヨーロッパへ至る複数の輸送路が計画されている。
 ・これには鉄道、道路、海運のインフラが含まれる。

 4.利点

 ・貿易コストの削減や輸送時間の短縮が期待されている。
 ・地域の経済成長を促進し、新たな市場を開拓する機会となる。

 5.国際的な影響

 ・IMECは、インドの国際的な影響力を高めるとともに、中東諸国との関係を深化させる。
 ・西側諸国にとっても、経済的な代替ルートを確保する重要なプロジェクトである。

 現状と課題

 1.進捗状況

 ・IMECの具体的な進展には、国際的な政治状況や地域の安定性が影響を及ぼす。
 ・イスラエル-抵抗勢力の戦争やその他の地政学的緊張が進捗を妨げている。

 2.今後の展望

 ・主要国の支持を得ることで、IMECの実現に向けた具体的なステップが進むことが期待されている。
 ・安全保障や経済的安定を確保するための協力体制が鍵となる。

 IMECは、地域経済の強化と国際的な貿易の流れを変える可能性を秘めた重要なプロジェクトである。

 ☞ IMEC(India-Middle East-Europe Economic Corridor)は、主にバイデン政権が提案したものであり、2023年に開催されたG20サミットで初めて広く知られるようになっ
た。以下は、IMECに関連するバイデン政権の背景や意図についての詳細である。

 IMECとバイデン政権の関係

 1.提案の背景

 ・IMECは、インドと中東、ヨーロッパ間の経済的つながりを強化することを目的としている。
 ・中国の一帯一路(Belt and Road Initiative)に対抗する形で、地域の経済的な安定とインフラ整備を進める意図がある。

 2.G20サミットでの発表

 ・2023年のG20サミットで、バイデン大統領がIMECの提案を行い、国際的な支持を呼びかけた。
 ・その際、インド、サウジアラビア、欧州連合(EU)などの国や地域が参加し、IMECの実現に向けた協議が進められた。

 3.地政学的な意図

 ・IMECは、インドの経済的な地位を高めると同時に、アメリカとその同盟国の影響力を強化することを目指している。
 ・地域の安全保障や経済発展を促進するために、西側諸国の共同の取り組みが重要とされている。

 4.多国間の協力

 ・IMECは、インドだけでなく、中東諸国やヨーロッパの国々も巻き込んだ広範な協力体制を築くことを目指している。
 ・各国が参加し、共通の利益を追求することで、地域の安定を図る狙いがある。

 まとめ

 IMECは、バイデン政権が提案した重要なプロジェクトであり、インドと中東、ヨーロッパ間の経済的連携を強化し、中国の影響力に対抗することを目指している。バイデン政権は、この構想を通じて地域の安全保障や経済発展を促進しようとしている。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Here’s What’s Driving The Arctic Dimension Of The Russian-Indian Strategic Partnership Andrew Korybko's Newsletter 2024.10.15
https://korybko.substack.com/p/heres-whats-driving-the-arctic-dimension?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=150249530&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email