ナイル川をめぐる水攻防2024-10-24 17:58

【概要】

 ナイル川をめぐる長年の争いにおいて、重要な進展があったのは2023年の夏のことだった。南スーダンの議会が「ナイル流域協力枠組み協定」(CFA、通称「エンテベ協定」)を批准したことで、この協定が正式に発効し、エジプトとスーダンのナイル川の水に対する歴史的権利に疑問が投げかけられた。

 エンテベ協定は、2010年にエチオピア、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ、ケニア、ブルンジによって初めて署名された。南スーダンは2012年にこの協定に参加している。しかし、協定の重要な規定では、少なくとも6カ国の議会が批准することが必要で、その後、ウガンダに常設される特別委員会を設置することが求められていた。南スーダンが2023年に批准したことにより、必要な批准数が揃った。

 2023年10月13日には、エチオピアが協定の発効を公式に宣言し、エチオピアの首相アビィ・アハメドは、この瞬間を「ナイル流域諸国の真の協力を促進する歴史的な節目」と表現した。

 このエンテベ協定により、エジプトとスーダンに割り当てられていた歴史的な水量配分(エジプトに対しては年間550億立方メートル、スーダンに対しては185億立方メートル)が無効化された。これらの配分は、植民地時代の1929年の協定と1959年の「ナイル水の完全利用に関する協定」に基づいて定められていたものである。

 ナイル川は、全長約5,600kmに及び、アフリカで最長の川として知られている。その流域には12カ国が位置し、これらの国々にはアフリカ全体の40%に相当する人口が住んでいる。ナイル川は、エチオピアから流れる青ナイルと、ヴィクトリア湖から発する白ナイルがスーダンの首都ハルツームで合流し、エジプトを通って地中海に注いでいる。

【詳細】

 ナイル川をめぐる争いの背景には、植民地時代から続く水資源の配分に対する不平等な協定が存在している。ナイル川流域には12カ国が含まれ、これらの国々にはアフリカの総人口の約40%が居住している。この地域における水資源の争いは、特にエジプトとスーダンがナイル川の水に強く依存していることから、長年にわたって続いてきた。以下に、ナイル川流域の国々の関係性や争いの詳細について詳しく説明する。

 1. ナイル川の構造と流域

 ナイル川はアフリカで最も長い川であり、約5,600kmにわたってアフリカ東部から北部まで流れている。ナイル川は白ナイルと青ナイルという2つの主要な支流から成り立っており、白ナイルはウガンダのヴィクトリア湖から発し、青ナイルはエチオピアのタナ湖から流れている。これらの2つの支流は、スーダンの首都ハルツームで合流し、その後エジプトを通って地中海へと流れ込む。このナイル川の水資源は、エジプトやスーダンにとって農業や飲料水供給の生命線であり、国家の安定に直結している。

 2. 植民地時代の協定とその不平等性

 ナイル川の水資源の利用に関して、エジプトとスーダンは植民地時代の協定により非常に有利な立場にあった。1929年に英国が主導して締結された「ナイル川水利用に関する協定」では、エジプトがナイル川の水を最優先で利用する権利を認められていた。さらに、1959年にエジプトとスーダンの間で結ばれた「ナイル水の完全利用に関する協定」によって、エジプトは年間55.5億立方メートル、スーダンは年間18.5億立方メートルの水を利用できると定められた。これにより、エジプトとスーダンはナイル川のほぼすべての水資源を独占する形となり、他の流域国はほとんど恩恵を受けられなかった。

 この歴史的な協定は、エチオピアやケニア、ウガンダ、ルワンダといった他のナイル川流域の国々に対しては不利な条件を強いており、長年にわたって水資源の利用に対する不満が蓄積してきた。

 3. エンテベ協定(ナイル流域協力枠組み協定)とは

 エンテベ協定(正式名称: ナイル流域協力枠組み協定、CFA)は、ナイル川の水資源をより公平に分配し、流域国間の協力を促進するために設けられた協定である。2010年にエチオピア、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ、ケニア、ブルンジが最初に署名し、その後南スーダンが2012年に加わった。この協定は、エジプトとスーダンが依拠してきた植民地時代の協定を無効化し、全流域国が公平にナイル川の水を利用できるようにすることを目的としている。

 協定の主要なポイントは以下の通り。

 ・歴史的な水分配の無効化:植民地時代の協定によるエジプトとスーダンへの水の独占的な配分は無効とされ、流域国全体での新たな分配方法が求められる。
 ・協力の促進:流域国が協力してナイル川の持続可能な利用を推進し、水資源の効率的な管理を行うための枠組みが設定される。
 ・特別委員会の設立:協定が正式に発効するためには、少なくとも6カ国の議会での批准が必要とされていた。2023年に南スーダンが批准したことで、必要な批准数が揃い、ウガンダに本部を置く特別委員会が設立されることとなった。

 4. エチオピアの役割とエンテベ協定の発効

 エチオピアは、ナイル川の上流に位置し、その支流である青ナイルの主要な水源国であるため、ナイル川の水資源に関する議論において重要な役割を果たしている。2023年10月13日、エチオピア政府はエンテベ協定が正式に発効したことを宣言し、エチオピアの首相アビィ・アハメドはこの瞬間を「ナイル流域における真の協力を促進する歴史的な節目」と称した。

 エチオピアはまた、2011年に「グランド・エチオピア・ルネッサンス・ダム」(GERD)の建設を開始しており、これもナイル川の水資源争いにおいて大きな要素となっている。エジプトやスーダンは、このダムがナイル川の下流への水量に影響を及ぼすことを懸念しており、ダムの管理と水資源の利用についても対立が続いている。

 5. 今後の展望と影響

 エンテベ協定の発効は、ナイル川流域諸国の関係に大きな影響を与えると予想される。これにより、エジプトとスーダンは歴史的な優位性を失い、他の流域国との間で新たな交渉が必要となる。特にエチオピアのダム建設や他の流域国の水利用計画が、エジプトやスーダンの農業や飲料水供給にどのように影響を与えるかが今後の重要な焦点となる。

 また、ナイル川流域は人口増加や気候変動の影響も受けており、水資源の確保はますます重要な課題となっている。エンテベ協定が、流域国間の協力を強化し、持続可能な水資源管理を実現するための一歩となるかどうかが、今後のアフリカの平和と安定に大きな影響を与えるだろう。
 
【要点】

 1.ナイル川の重要性

 ・アフリカ最長の川であり、流域に12カ国が含まれ、アフリカ総人口の40%が居住。
 ・ナイル川は白ナイル(ヴィクトリア湖起源)と青ナイル(エチオピア起源)が合流し、エジプトを経て地中海へ流れる。

 2.植民地時代の協定

 ・1929年の「ナイル川水利用に関する協定」と1959年の「ナイル水の完全利用に関する協定」により、エジプトとスーダンに有利な水分配(エジプト: 年間55.5億立方メートル、スーダン: 年間18.5億立方メートル)が設定。
 ・他のナイル流域国は、この不公平な配分に対する不満を抱えていた。

 3.エンテベ協定(ナイル流域協力枠組み協定)の成立

 ・2010年にエチオピア、ケニア、ルワンダ、ウガンダ、タンザニア、ブルンジが署名。
 ・2012年に南スーダンが参加し、2023年に南スーダン議会が批准し、協定が正 式に発効。
 ・エジプトとスーダンの歴史的な水分配権を無効化し、公平な分配を目指す。

 4.エチオピアの影響力とダム建設

 ・エチオピアはナイル川上流の主要な水源国であり、2011年から「グランド・エチオピア・ルネッサンス・ダム」(GERD)の建設を進めている。
 ・エジプトとスーダンは、ダムがナイル川の下流への水量に影響を与えることを懸念し、対立が続いている。

 5.エンテベ協定の発効と影響

 ・協定の発効により、エジプトとスーダンは植民地時代からの水分配の優位性を失い、新たな交渉が必要となる。
 ・ナイル川流域諸国の協力による持続可能な水資源管理が期待されるが、気候変動や人口増加の影響も課題。

 6.今後の展望

 ・新しい水分配の枠組みや協力のあり方が、アフリカ全体の平和と安定に影響を与える可能性がある。

【引用・参照・底本】

The colonial legacy of this vital river threatens peace in Africa and beyond RT 2024.10.18
https://www.rt.com/news/606238-pentagon-north-korean-troops-russia/

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