プーチン:シリア、イスラエル、トルコに関する発言 ― 2024年12月22日 22:45
【概要】
プーチン大統領は2024年12月20日の年次記者会見で、シリア、イスラエル、トルコに関する発言を行った。彼の発言はロシアの国益を守るための現実的かつ柔軟なアプローチを反映しており、地域の新たな現実においてロシアの利益を前進させる可能性もある。
プーチンは、シリアでの政権交代について言及し、ロシアの軍事介入がアフガンのようなテロリストの飛び地を作らないことを目的として成功したと述べた。シリアで権力を掌握したグループ、特にテロリストとされるグループが時間とともに態度を変えてきたため、西側がこれらのグループとの関係を構築したいと考えていると述べた。このため、政権交代がロシアの敗北とは見なせないとした。
また、プーチンはロシア軍のシリアでの行動を擁護し、現在、ロシアはシリアに地上部隊を持っていないと強調した。アレッポを守っていた約3万人のシリアおよび「親イラン勢力」が、350人の武装集団に都市を明け渡し、その後、ほとんどの地域を武力で失ったと述べた。さらに、ロシアは4,000人のイランの戦闘員をテヘランに避難させ、他の同盟軍はレバノンやイラクに逃亡したと説明した。
シリアにおけるロシアの影響力の将来について、プーチンは「現在の状況をコントロールしているグループの大多数が、我々の軍事基地が残ることに関心がある」と語った。これにより、人道支援の提供が可能になると提案した。彼は、今回の事態の最大の利益を得ているのはイスラエルであり、シリアを事実上非武装化し、占領区域を拡大していると指摘し、この動きに対して批判した。
プーチンはまた、パレスチナにおけるイスラエルの違法な入植地や、ガザでの軍事作戦を非難したが、トルコについては特に批判しなかった。代わりに、プーチンは「トルコはシリアの状況の進展に伴い、南部国境の安全を確保するためにすべてを行っている」と説明した。彼は、トルコがシリアのクルド勢力を抑え、難民の帰還を推進していると述べ、その意図を理解しているとした。
さらに、プーチンは「クルド問題を解決する必要がある」と述べ、シリアのアサド政権下で解決されるべきだった問題が、現在ではシリア領土を支配している当局とともに解決されるべきだと強調した。このように、トルコのシリアでの行動に対するロシアの立場は、事実上トルコに対する「お目こぼし」となっている。
プーチンがトルコとイスラエルに対して異なる対応を取る理由は、ロシアとトルコの関係が多面的であることに起因している。両国は、原子力エネルギー協力、空対空ミサイルシステム(S-400)、天然ガス、貿易などで密接に結びついており、トルコはモスクワとキエフの間での仲介役も果たしている。一方、イスラエルとは貿易が少なく、軍事技術協力もない。
また、シリアでのイスラエルとトルコの軍事的関与に対するロシアの反応には、地域の政治的な視点も影響している。シリアでは、トルコに対する支持が一定の範囲で存在しており、イスラエルはシリアを占領していることに対して普遍的に反感を抱かれている。
ロシアは、シリアでの現状に関して責任を取らず、イスラエルの占領については非難し、トルコの行動に対しては沈黙を守るという現実的かつ冷徹なアプローチを取った。これは、ロシアの国益を最大化するための戦略であり、国内外での政治的な圧力を避けるためのものでもある。
プーチンの発言は、彼がトルコとの協力を重視していることを示しており、トルコがNATOの一員でありながら、ロシアと協力関係を築いている現実を反映している。また、プーチンがトルコのエルドアン大統領を信頼していることも明らかになっている。
【詳細】
プーチン大統領が2024年12月20日の年次記者会見で行った発言は、シリア、イスラエル、トルコに関するロシアの外交戦略をより深く理解する手がかりとなる。彼の発言には、ロシアの国益を守るための柔軟で現実的なアプローチが反映されており、地域情勢の変化に応じた戦略的な判断が示されている。以下、これらの発言についてさらに詳しく説明する。
1. シリアにおけるロシアの介入とその結果
プーチンは、ロシアのシリアにおける軍事介入が成功を収めたと強調した。ロシアは、シリアの政権が崩壊し、アフガニスタンのようなテロリストの飛び地が形成されるのを防ぐために介入した。この目的は達成されたとされ、シリアで権力を掌握した新たなグループが、かつてはテロリストとして認定されていたものの、時間が経過するうちにその見解が変わったことを指摘している。西側がこれらのグループとの関係を築こうとするのは、この変化が背景にあるからだとプーチンは述べた。この発言は、シリアの政権交代がロシアにとって必ずしも敗北ではないことを強調しており、ロシアの介入が一定の成果を上げたことを示唆している。
2. シリアでのロシア軍の撤退とその後の情勢
プーチンは、ロシア軍が現在シリアに地上部隊を持っていないことを述べ、シリアでの地上戦の結果として、親イラン勢力を含む約30,000人のシリア軍および関連部隊がアレッポを守りきれず、数百人の武装勢力に都市を明け渡したことを説明した。この過程で、ロシアは4,000人のイランの戦闘員をテヘランに避難させ、他の同盟勢力はレバノンやイラクに逃亡した。この言及は、シリアでの戦闘が非常に混乱しており、ロシアの支援が十分に機能しなかったことを暗に示唆している。また、シリア国内での戦闘の現実を直視し、ロシアは戦争に介入しきれなかったという事実を認めている。
3. イスラエルへの批判とシリアの占領
プーチンは、シリアの現在の状況を利用して、イスラエルの行動を厳しく批判した。彼は、イスラエルがシリアの一部を占領し、その占領区域を拡大していることを非難し、これを「シリアの非武装化」と呼んだ。この発言は、イスラエルの占領政策に対するロシアの立場を明確に示している。特に、ガザでの軍事作戦やパレスチナにおける違法な入植地に対する非難は、ロシアが一貫して持っている外交的立場であり、国際法に基づくイスラエルの行動を批判している。
4. トルコに対する寛容な立場
一方で、トルコに対しては予想に反して批判を控え、むしろ支持的な立場を取った。プーチンは、トルコがシリアにおける自国の安全保障を確保しようとする行動を理解していると語った。特に、トルコが南部国境の安全を守るためにシリアのクルド勢力を押し戻し、難民の帰還を促進しようとしている点を評価した。プーチンは「我々はこれを理解している」と述べ、トルコの行動がシリアの現地当局と協力して解決すべきクルド問題に関連していると説明した。
トルコの行動に対するロシアの寛容な姿勢は、トルコとの緊密な関係を反映している。ロシアとトルコは、エネルギー協力、空対空ミサイルシステム(S-400)などを通じて、経済的および戦略的な相互依存関係を築いており、プーチンはエルドアン大統領との強固なパートナーシップを重視している。これにより、トルコのシリア政策に対して批判を避け、協力関係を維持しようとする姿勢が見られる。
5. ロシアの外交戦略とその現実主義
プーチンの発言は、ロシアの外交戦略の現実主義を反映しており、理想主義的な立場よりも国益を最優先する姿勢を強調している。ロシアはシリアの政権交代を阻止し、イスラエルの行動に対しては国際法を支持する立場を取る一方、トルコとの関係を維持することで、地域での影響力を確保しようとしている。プーチンの言動は、ロシアの国益を守り、時には柔軟に対応することが重要だという認識を示している。
6. 結論
プーチン大統領の発言は、シリア問題に関してロシアが直面する現実的な課題を反映しており、ロシアの外交政策の柔軟性と現実主義を強調している。シリアでのロシアの介入が失敗に終わったことを認めつつも、トルコとの関係を維持し、イスラエルには批判的な立場を取ることで、ロシアは自国の利益を最優先している。プーチンは、ロシアの国益を守るためには、時には厳しい現実を受け入れ、戦略的に柔軟な対応を取ることが不可欠であると認識している。
【要点】
1.シリアでのロシアの介入と成功
・ロシアはシリア政権崩壊を防ぐために軍事介入した。
・介入が成功し、シリアでのテロリスト支配を防止。
・西側がテロリスト勢力と接触を持つようになった背景を示唆。
2.シリアからのロシア軍撤退とその後
・ロシアは現在、シリアに地上部隊を持たず。
・シリア軍がアレッポを守れなかったことを説明。
・数千人のイラン戦闘員を避難させ、他の勢力は逃亡。
3.イスラエルへの批判
・イスラエルのシリア占領を非難。
・イスラエルの行動を「シリアの非武装化」として批判。
4.トルコへの寛容な立場
・トルコのシリア政策に対して理解を示す。
・トルコが南部国境の安全を守るための行動を支持。
・トルコのクルド問題に関する行動を理解し、評価。
5.ロシアの外交戦略
・現実主義的な外交戦略を強調。
・ロシアの国益を最優先し、時には柔軟な対応を取る。
6.結論
・ロシアのシリア介入は失敗を認めつつも、国益を守るために柔軟に対応。
・トルコとの関係を維持し、イスラエルには批判的な立場を取る。
【引用・参照・底本】
Interpreting Putin’s Remarks On Syria, Israel, And Turkiye Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.20
https://korybko.substack.com/p/interpreting-putins-remarks-on-syria?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153402163&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
プーチン大統領は2024年12月20日の年次記者会見で、シリア、イスラエル、トルコに関する発言を行った。彼の発言はロシアの国益を守るための現実的かつ柔軟なアプローチを反映しており、地域の新たな現実においてロシアの利益を前進させる可能性もある。
プーチンは、シリアでの政権交代について言及し、ロシアの軍事介入がアフガンのようなテロリストの飛び地を作らないことを目的として成功したと述べた。シリアで権力を掌握したグループ、特にテロリストとされるグループが時間とともに態度を変えてきたため、西側がこれらのグループとの関係を構築したいと考えていると述べた。このため、政権交代がロシアの敗北とは見なせないとした。
また、プーチンはロシア軍のシリアでの行動を擁護し、現在、ロシアはシリアに地上部隊を持っていないと強調した。アレッポを守っていた約3万人のシリアおよび「親イラン勢力」が、350人の武装集団に都市を明け渡し、その後、ほとんどの地域を武力で失ったと述べた。さらに、ロシアは4,000人のイランの戦闘員をテヘランに避難させ、他の同盟軍はレバノンやイラクに逃亡したと説明した。
シリアにおけるロシアの影響力の将来について、プーチンは「現在の状況をコントロールしているグループの大多数が、我々の軍事基地が残ることに関心がある」と語った。これにより、人道支援の提供が可能になると提案した。彼は、今回の事態の最大の利益を得ているのはイスラエルであり、シリアを事実上非武装化し、占領区域を拡大していると指摘し、この動きに対して批判した。
プーチンはまた、パレスチナにおけるイスラエルの違法な入植地や、ガザでの軍事作戦を非難したが、トルコについては特に批判しなかった。代わりに、プーチンは「トルコはシリアの状況の進展に伴い、南部国境の安全を確保するためにすべてを行っている」と説明した。彼は、トルコがシリアのクルド勢力を抑え、難民の帰還を推進していると述べ、その意図を理解しているとした。
さらに、プーチンは「クルド問題を解決する必要がある」と述べ、シリアのアサド政権下で解決されるべきだった問題が、現在ではシリア領土を支配している当局とともに解決されるべきだと強調した。このように、トルコのシリアでの行動に対するロシアの立場は、事実上トルコに対する「お目こぼし」となっている。
プーチンがトルコとイスラエルに対して異なる対応を取る理由は、ロシアとトルコの関係が多面的であることに起因している。両国は、原子力エネルギー協力、空対空ミサイルシステム(S-400)、天然ガス、貿易などで密接に結びついており、トルコはモスクワとキエフの間での仲介役も果たしている。一方、イスラエルとは貿易が少なく、軍事技術協力もない。
また、シリアでのイスラエルとトルコの軍事的関与に対するロシアの反応には、地域の政治的な視点も影響している。シリアでは、トルコに対する支持が一定の範囲で存在しており、イスラエルはシリアを占領していることに対して普遍的に反感を抱かれている。
ロシアは、シリアでの現状に関して責任を取らず、イスラエルの占領については非難し、トルコの行動に対しては沈黙を守るという現実的かつ冷徹なアプローチを取った。これは、ロシアの国益を最大化するための戦略であり、国内外での政治的な圧力を避けるためのものでもある。
プーチンの発言は、彼がトルコとの協力を重視していることを示しており、トルコがNATOの一員でありながら、ロシアと協力関係を築いている現実を反映している。また、プーチンがトルコのエルドアン大統領を信頼していることも明らかになっている。
【詳細】
プーチン大統領が2024年12月20日の年次記者会見で行った発言は、シリア、イスラエル、トルコに関するロシアの外交戦略をより深く理解する手がかりとなる。彼の発言には、ロシアの国益を守るための柔軟で現実的なアプローチが反映されており、地域情勢の変化に応じた戦略的な判断が示されている。以下、これらの発言についてさらに詳しく説明する。
1. シリアにおけるロシアの介入とその結果
プーチンは、ロシアのシリアにおける軍事介入が成功を収めたと強調した。ロシアは、シリアの政権が崩壊し、アフガニスタンのようなテロリストの飛び地が形成されるのを防ぐために介入した。この目的は達成されたとされ、シリアで権力を掌握した新たなグループが、かつてはテロリストとして認定されていたものの、時間が経過するうちにその見解が変わったことを指摘している。西側がこれらのグループとの関係を築こうとするのは、この変化が背景にあるからだとプーチンは述べた。この発言は、シリアの政権交代がロシアにとって必ずしも敗北ではないことを強調しており、ロシアの介入が一定の成果を上げたことを示唆している。
2. シリアでのロシア軍の撤退とその後の情勢
プーチンは、ロシア軍が現在シリアに地上部隊を持っていないことを述べ、シリアでの地上戦の結果として、親イラン勢力を含む約30,000人のシリア軍および関連部隊がアレッポを守りきれず、数百人の武装勢力に都市を明け渡したことを説明した。この過程で、ロシアは4,000人のイランの戦闘員をテヘランに避難させ、他の同盟勢力はレバノンやイラクに逃亡した。この言及は、シリアでの戦闘が非常に混乱しており、ロシアの支援が十分に機能しなかったことを暗に示唆している。また、シリア国内での戦闘の現実を直視し、ロシアは戦争に介入しきれなかったという事実を認めている。
3. イスラエルへの批判とシリアの占領
プーチンは、シリアの現在の状況を利用して、イスラエルの行動を厳しく批判した。彼は、イスラエルがシリアの一部を占領し、その占領区域を拡大していることを非難し、これを「シリアの非武装化」と呼んだ。この発言は、イスラエルの占領政策に対するロシアの立場を明確に示している。特に、ガザでの軍事作戦やパレスチナにおける違法な入植地に対する非難は、ロシアが一貫して持っている外交的立場であり、国際法に基づくイスラエルの行動を批判している。
4. トルコに対する寛容な立場
一方で、トルコに対しては予想に反して批判を控え、むしろ支持的な立場を取った。プーチンは、トルコがシリアにおける自国の安全保障を確保しようとする行動を理解していると語った。特に、トルコが南部国境の安全を守るためにシリアのクルド勢力を押し戻し、難民の帰還を促進しようとしている点を評価した。プーチンは「我々はこれを理解している」と述べ、トルコの行動がシリアの現地当局と協力して解決すべきクルド問題に関連していると説明した。
トルコの行動に対するロシアの寛容な姿勢は、トルコとの緊密な関係を反映している。ロシアとトルコは、エネルギー協力、空対空ミサイルシステム(S-400)などを通じて、経済的および戦略的な相互依存関係を築いており、プーチンはエルドアン大統領との強固なパートナーシップを重視している。これにより、トルコのシリア政策に対して批判を避け、協力関係を維持しようとする姿勢が見られる。
5. ロシアの外交戦略とその現実主義
プーチンの発言は、ロシアの外交戦略の現実主義を反映しており、理想主義的な立場よりも国益を最優先する姿勢を強調している。ロシアはシリアの政権交代を阻止し、イスラエルの行動に対しては国際法を支持する立場を取る一方、トルコとの関係を維持することで、地域での影響力を確保しようとしている。プーチンの言動は、ロシアの国益を守り、時には柔軟に対応することが重要だという認識を示している。
6. 結論
プーチン大統領の発言は、シリア問題に関してロシアが直面する現実的な課題を反映しており、ロシアの外交政策の柔軟性と現実主義を強調している。シリアでのロシアの介入が失敗に終わったことを認めつつも、トルコとの関係を維持し、イスラエルには批判的な立場を取ることで、ロシアは自国の利益を最優先している。プーチンは、ロシアの国益を守るためには、時には厳しい現実を受け入れ、戦略的に柔軟な対応を取ることが不可欠であると認識している。
【要点】
1.シリアでのロシアの介入と成功
・ロシアはシリア政権崩壊を防ぐために軍事介入した。
・介入が成功し、シリアでのテロリスト支配を防止。
・西側がテロリスト勢力と接触を持つようになった背景を示唆。
2.シリアからのロシア軍撤退とその後
・ロシアは現在、シリアに地上部隊を持たず。
・シリア軍がアレッポを守れなかったことを説明。
・数千人のイラン戦闘員を避難させ、他の勢力は逃亡。
3.イスラエルへの批判
・イスラエルのシリア占領を非難。
・イスラエルの行動を「シリアの非武装化」として批判。
4.トルコへの寛容な立場
・トルコのシリア政策に対して理解を示す。
・トルコが南部国境の安全を守るための行動を支持。
・トルコのクルド問題に関する行動を理解し、評価。
5.ロシアの外交戦略
・現実主義的な外交戦略を強調。
・ロシアの国益を最優先し、時には柔軟な対応を取る。
6.結論
・ロシアのシリア介入は失敗を認めつつも、国益を守るために柔軟に対応。
・トルコとの関係を維持し、イスラエルには批判的な立場を取る。
【引用・参照・底本】
Interpreting Putin’s Remarks On Syria, Israel, And Turkiye Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.20
https://korybko.substack.com/p/interpreting-putins-remarks-on-syria?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153402163&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email