モルドバ:トランスニストリアを攻撃する可能性2024年12月27日 22:21

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【概要】 
 
 ロシアの対外情報庁(SVR)は、モルドバが近くトランスニストリアに攻撃を仕掛ける可能性があると警告している。この報告書によれば、再選されたモルドバのマイア・サンドゥ大統領は最近の政府会議で、ウクライナが年初に欧州へのロシアのガス供給を遮断する計画」に対して憤りを感じ、モルドバの分離主義地域であるトランスニストリアにその怒りをぶつける意向を示したという。この行動が大規模な紛争を引き起こす可能性があるとされている。

 SVRの報告は、モルドバのサンドゥ大統領が一方的に行動する可能性があることを強調しており、もし実際に攻撃を行う場合、ロシアは反応せざるを得ないだろうと述べている。また、この事態は、モルドバと隣接するNATO加盟国ルーマニアが関与する可能性があり、紛争が拡大するリスクを伴うと警告している。

 SVRの報告は、サンドゥ大統領がロシアとのガス供給問題をウクライナに責任を押し付け、その結果としてトランスニストリアに対する攻撃を示唆したと述べている。しかし、この報告の正確性は不明であり、これが真実であるかどうかは定かではない。その目的は、サンドゥ大統領が非理性的で無責任な行動を取る可能性を強調し、彼女の行動を抑制するよう西側諸国に促すことにある。

 報告書では、モルドバ政府がそのような攻撃に踏み切る場合、EUは新たな危機点の出現には賛成しないものの、サンドゥがその決定を行う可能性があることに言及している。この背景には、モルドバがEUの隣国であり、その紛争が広がればEUにも大きな影響を及ぼす可能性があるという危険性がある。

 モルドバの攻撃計画が実現するかどうかは不確かであるが、SVRはサンドゥ大統領がウクライナのロシアガス供給計画に関連して独自の行動を取る可能性を警告しており、その結果としての紛争の激化を避けるために、彼女を抑制する必要があると指摘している。
 
【詳細】
 
 ロシアの対外情報庁(SVR)が警告した内容について、さらに詳しく説明する。

 SVRは2024年12月24日、モルドバが近いうちにトランスニストリアを攻撃する可能性があると警告した。この警告は、モルドバの再選されたマイア・サンドゥ大統領が、ウクライナが2024年の初めにロシアからの欧州へのガス供給を遮断する計画に反応し、モルドバの分離主義地域であるトランスニストリアに対して「怒りをぶつける」意図を示したという情報に基づいている。トランスニストリアは、モルドバの東部に位置し、ソビエト連邦崩壊後に独立を宣言したが、国際的には独立を認められていない地域である。この地域には数千人のロシア兵が駐留しており、もしモルドバが攻撃を実行すれば、ロシアとの直接的な衝突を引き起こすリスクが高まるとされている。

 SVRは、サンドゥ大統領がモルドバ政府の会議で、もしロシアがガス供給を停止するのであれば、その報復としてトランスニストリアを攻撃する可能性があると語ったと伝えている。この攻撃が実行されれば、ロシアが直接的な軍事的対応を取ることが予想され、モルドバとの間で軍事衝突が発生する恐れがある。その場合、トランスニストリアに駐留するロシア軍が関与し、最終的にはNATO加盟国であるルーマニアが関与することになる可能性もある。これにより、地域的な紛争が拡大し、ウクライナ戦争と関連した新たな戦線が開かれることを懸念している。

 SVRは、この報告の目的が、サンドゥ大統領の計画を西側に知らせ、モルドバによる一方的な軍事行動が引き起こす可能性のある危機を警告することだと考えられている。また、サンドゥがこのような行動に出る場合、西側はそれを止めるべきだというメッセージを含んでいる。この報告によると、サンドゥ大統領が実際にそのような計画を立てているかどうかは不明だが、彼女が独自に行動する可能性があり、その結果として地域的な不安定化を招く可能性があると指摘している。

 SVRは、サンドゥ大統領が「ウクライナにロシアのガス供給を阻止された場合、その責任をロシアに転嫁し、トランスニストリアでその復讐を果たす」と述べたことに言及している。しかし、この発言が本当にあったのか、あるいはその真意がどこにあるのかは確認されていない。報告書の目的は、サンドゥ大統領の行動を無責任で危険なものとして描き、彼女の行動が地域的な紛争を引き起こす可能性を警告することにある。

 報告書はまた、モルドバがもし攻撃を開始した場合、EUは新たな危機の発生を望んではいないが、モルドバの隣国であるEU加盟国ルーマニアが関与する可能性があることを指摘している。このため、EUはモルドバの一方的な行動に対して反応する準備ができていないが、同時にサンドゥ大統領がその計画を実行に移す可能性を完全に排除できないと述べている。

 さらに、報告書はモルドバ国内でのサンドゥ大統領の支持基盤が、海外に住むモルドバのディアスポラ(国外在住モルドバ人)に強く支えられていることを考慮して、彼女が選挙で再選された経緯にも触れている。これはサンドゥ大統領の政策が国内外で注目される一因となっており、彼女が行動を起こす場合、その影響がモルドバ国内外に広がることが懸念されている。

 最後に、SVRの報告は、サンドゥ大統領がもし攻撃に出た場合、西側諸国がその行動を止めることができるかどうかに疑問を投げかけている。報告書は、サンドゥが一方的に軍事行動を起こす可能性があることを強調し、それが引き起こす可能性のある危機的な状況について警告している。

【要点】 

 ・SVRの警告: ロシアの対外情報庁(SVR)は、モルドバが近くトランスニストリアを攻撃する可能性があると警告している。

 ・サンドゥ大統領の発言: 再選されたマイア・サンドゥ大統領は、ウクライナがロシアからのガス供給を欧州に遮断する計画に反応し、その報復としてトランスニストリアを攻撃する意向を示したとされる。

 ・トランスニストリアの状況: トランスニストリアはモルドバ東部の分離主義地域で、ロシア軍が駐留しており、攻撃が行われるとロシアとの衝突が起こる可能性が高い。

 ・西側の反応: SVRは、サンドゥが一方的に行動する可能性があり、もし攻撃が実行される場合、ロシアが直接対応し、NATO加盟国のルーマニアが関与するリスクがあると警告。

 ・EUの立場: EUは新たな危機の発生を望んでいないが、サンドゥ大統領が攻撃を実行する可能性を排除できないとして、モルドバの行動に対する警戒を示している。

 ・ガス供給問題: サンドゥ大統領は、ウクライナによるロシアからのガス供給遮断に対して責任をロシアに転嫁し、その報復としてトランスニストリアに攻撃を行う意図を示した。

 ・サンドゥ大統領の再選: サンドゥ大統領はディアスポラ(国外在住モルドバ人)の支持で再選されたことが、彼女の政策に対する国内外の注目を集める要因となっている。

 ・リスクの拡大: SVRの報告は、サンドゥ大統領が一方的に攻撃を行った場合、地域的な紛争が拡大するリスクがあることを警告しており、その結果として西側が抑止できるかどうかが不明であることを示唆している。

【参考】

 ☞ トランスニストリア(Transnistria)は、モルドバ東部の地域であり、以下のポイントが特徴的である。

 ・地理的特徴: トランスニストリアは、モルドバとウクライナの間、ドニエストル川の右岸に位置する狭い地域で、約400キロメートルの長さがある。

 ・歴史的背景: ソビエト連邦崩壊後、1990年にモルドバから分離を宣言し、独立を宣言したが、国際的には独立が認められていない。モルドバ政府はこの地域を依然として自国領土の一部と見なしている。

 ・政治状況: トランスニストリアにはロシア語を話す住民が多く、ロシアとの結びつきが強い。この地域には、ロシア軍が駐留しており、ロシアからの支援を受けている。

 ・経済: トランスニストリアは経済的には困難な状況にあり、公式にはモルドバの一部とされるものの、実際には独自の政府、通貨(ルーブル)、軍隊を持っている。

 ・国際的立場: トランスニストリアは国際的には独立を認められておらず、モルドバの一部として扱われているが、実質的には独立した地域として機能している。

 ・ロシアとの関係: ロシアはトランスニストリアを重要な戦略的地域と見なしており、軍事的および経済的支援を提供している。また、ロシアの外交政策の一環として、トランスニストリアはモルドバとの対立を利用するための重要なカードとなっている。

 ・国際紛争の潜在的リスク: トランスニストリアを巡る緊張は、モルドバとロシアとの関係や、EUおよびNATOの東方拡大政策とも関わっており、この地域が更なる紛争の引き金になる可能性がある。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Will Moldova Soon Attack Transnistria Like Russia’s Foreign Intelligence Service Warned? Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.24
https://korybko.substack.com/p/will-moldova-soon-attack-transnistria?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153565363&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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