ポーランド:宇で平和維持活動に直接参加すべきでない2024年12月29日 16:53

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【概要】

 ポーランドがウクライナでの平和維持活動に直接参加すべきでない5つの理由
(アンドリュー・コリブコ、2024年12月29日)

 ポーランドの国益、または主要2政党の国内における政治的利益のいずれも、いかなる状況下でもウクライナへの介入によって進展することはない。

 背景

 ウォール・ストリート・ジャーナルは、ドナルド・トランプ元大統領がロシアとの停戦を仲介した後に、ヨーロッパ諸国がウクライナの接触線沿いに非武装地帯を設け、パトロールを行う計画を報じた。この中でポーランドがこの任務に直接参加する可能性についても議論が生じた。ポーランド政府の関係者は関与に消極的であり、NATOの指令がない限り関与しないとの意見も表明されている。しかし、完全に排除することはできない。以下は、ポーランドがこのような活動に関与すべきでない理由である。

 1. 世論が明確に介入に反対している

 2024年7月初旬に欧州外交評議会が行った調査によれば、ポーランド国民のわずか14%が自国軍のウクライナでの戦闘参加を支持している。また、10月初旬の公的研究機関の調査では、ウクライナからの難民や代理戦争に対するポーランド国民の不満が増加していることが明らかとなった。さらに、ウクライナがボルニア虐殺問題に対して無礼な態度を示していることも反感を強めている。これらを考慮すると、介入を支持する政党は世論に反する行動をとることになる。

 2. 非介入は大統領選挙における有効な政策となる

 上述の世論の動向を背景に、主要2政党の大統領候補者は、来年の選挙に向けてポーランドの介入を回避することを公約に掲げるべきである。介入を支持していると見なされた政党は、選挙での支持を失う可能性がある。与党であるリベラル-グローバリスト政党の首相と、退任予定の保守-ナショナリスト系大統領は、国内選挙を見据えて非介入路線で一致する必要がある。

 3. ウクライナの過激派が介入を利用する可能性

 ポーランドの正規軍がウクライナ領土に進駐する場合、ウクライナの過激派はそれを利用して介入軍へのテロ行為を正当化する可能性がある。また、極端なナショナリズムに基づく歴史的主張が誤った形で正当化されることで、ポーランド国内の難民によるテロ行為も引き起こされるリスクがある。このような介入は、単なる象徴的な旗立て行為では済まず、高コストな非対称戦争に発展し、最終的には悲惨な結果を招く恐れがある。

 4. 他国の負担を肩代わりさせられるリスク

 ポーランドはすでにウクライナへの無償の軍事支援を限界まで行っており、現在は設備をクレジットで生産する提供しか行っていない。また、2024年のGDPの4.91%という巨額をウクライナ支援(主に難民支援)に費やしてきたにもかかわらず、10月中旬のベルリンで行われたウクライナ終結戦略に関するサミットからは除外された。この前例を踏まえると、ポーランドが平和維持活動に直接参加した場合、再び他国の利益のために負担を押し付けられる可能性が高い。

 5. 第三次世界大戦のリスクが常に存在する

 平和維持活動中にウクライナで新たな衝突が発生した場合、ポーランドが隣国ベラルーシやカリーニングラードの標的を攻撃することで対抗する可能性がある。この行動は、通常であれば封じ込め可能な代理戦争を、NATOとロシアが互いの領土を攻撃し合う形でエスカレートさせ、第三次世界大戦に発展させるリスクを伴う。こうしたシナリオはポーランドの指導者の判断に委ねられる可能性があるが、ウクライナ側が状況を操作してこのような事態を誘発することも考えられる。

 これらの理由はポーランドの国益および主要2政党の国内政治的利益と一致しており、いずれもウクライナへの介入によって促進されるものではない。ポーランドはNATOの同盟国として他国の介入を後方支援することはあっても、直接関与は避けるべきである。トランプ元大統領のチームもこれらの要因を十分に認識し、必要に応じて計画を調整すべきである。
 
【詳細】

 ポーランドがウクライナでの平和維持活動に直接参加すべきでない理由の詳細な説明

 背景の補足

 トランプ元大統領の提案する停戦後の非武装地帯の管理は、ヨーロッパ諸国にとって新たな負担となる可能性がある。特にポーランドは地理的・歴史的な要因からウクライナ問題の最前線に位置しているため、このような提案が現実化した場合、関与を強く求められる可能性がある。しかし、以下に詳述する理由から、ポーランドがこのような平和維持活動に直接参加することは重大なリスクを伴うと考えられる。

 1. 世論が明確に介入に反対している

 調査結果の分析

 ・欧州外交評議会の調査(2024年7月)では、ポーランド国民のわずか14%がウクライナでの自国軍の戦闘参加を支持している。これは大多数の国民が軍事的介入に否定的であることを示している。国民の支持を得られない政策を強行すれば、政府への信頼が揺らぐ可能性が高い。
 ・10月の調査では、ウクライナ難民の受け入れに対する疲弊感が広がりつつあることが示された。ポーランドはこれまで約120万人のウクライナ難民を受け入れてきたが、これが社会的および経済的負担として国民の間で不満を増大させている。

 歴史的背景の影響

 ウクライナとのボルニア虐殺を巡る歴史問題は、ポーランド国内で強い感情を引き起こしている。この問題に対するウクライナ政府の対応が無礼と受け取られたこともあり、国民の間でウクライナに対する不信感が根強く残っている。このような状況下での軍事的介入は、さらなる国民の反発を招く可能性がある。

 2. 非介入は大統領選挙における有効な政策となる

 国内政治の影響

 ・与党リベラル・グローバリスト系政党(市民プラットフォーム)と野党保守・ナショナリスト系政党(法と正義)は、共に2025年の大統領選挙を見据えている。世論調査で明らかなように、国民の大多数が介入に反対しているため、どちらの政党も非介入を選挙公約とすることが有利である。
 ・介入を支持すると見なされれば、与党であれ野党であれ、選挙での支持を失うリスクがある。そのため、両陣営はこの点で足並みを揃える可能性が高い。

 大統領選挙と国防政策の関連性

 次期大統領選挙では、国防政策が重要な争点となることが予想される。非介入政策を掲げることで、選挙戦略としての有効性を高めることができる。

 3. ウクライナの過激派が介入を利用する可能性

 テロ行為のリスク

 ポーランド軍がウクライナに進駐すれば、過激派にとって格好の標的となる可能性がある。

 ・ウクライナ国内では、極端なナショナリズムに基づくグループが介入を「侵略」とみなし、ポーランド軍に対するテロ行為を正当化する危険がある。
 ・また、ポーランド国内に滞在しているウクライナ難民の中にも過激派思想を持つ者が紛れ込んでいる可能性があり、国内でのテロリズムを誘発するリスクが増加する。

 歴史的主張の悪用

 ウクライナ国内の一部の極端な勢力が、第二次世界大戦中の領土問題を持ち出してポーランドの介入を批判し、緊張をさらに高める可能性がある。

 4. 他国の負担を肩代わりさせられるリスク

 過去の事例

 ・ポーランドはすでにウクライナ支援の負担を最大限に引き受けている。GDPの約4.91%がウクライナ支援に費やされているが、これには難民支援が大部分を占める。
 ・2024年10月のベルリン・サミットでは、ポーランドは招待されず、ウクライナ戦争の「終結戦略」に関する議論から除外された。このような扱いを受けたことは、ポーランドが国際的な場での正当な利益を得られない可能性を示している。

 平和維持活動の負担分担

 ・他のNATO諸国がポーランドに過剰な役割を求める可能性がある。これにより、ポーランドが不釣り合いなコストを負担し続ける危険性がある。

 5. 第三次世界大戦のリスクが常に存在する

 地域紛争のエスカレーション

 ・ポーランド軍が平和維持活動中に攻撃を受けた場合、ポーランド政府が報復としてベラルーシやカリーニングラードを攻撃するシナリオが考えられる。
 ・このような行動は、ロシアとNATOが互いの領土を攻撃し合う形で紛争をエスカレーションさせる可能性を持つ。

 ウクライナ側の誘発の可能性

 ウクライナ政府または過激派が状況を操作して、意図的に第三次世界大戦の引き金となる事態を作り出すリスクも無視できない。

 結論

 これらの詳細な理由から、ポーランドはウクライナでの平和維持活動に直接関与すべきではない。国益、国内政治、そして国際的な安定を考慮すると、ポーランドはNATOの同盟国としての役割に限定し、他国の後方支援に留まるべきである。トランプ元大統領の計画もこれらの要因を考慮し、必要に応じて調整されるべきである。
  
【要点】 
 
 ポーランドがウクライナでの平和維持活動に参加すべきでない理由(箇条書き)

 1.世論の反対

 ・2024年の調査で、国民のわずか14%しか軍事介入を支持していない。
 ・ウクライナ難民受け入れの疲弊感が広がっている。
 ・歴史的問題(ボルニア虐殺)が国民の不信感を助長。

 2.国内政治への影響

 ・与党・野党ともに非介入を公約にすることが選挙戦略上有利。
 ・国民の支持を得られない政策は大統領選挙でのリスクとなる。

 3.過激派からの攻撃リスク

 ・極端なウクライナ民族主義者がポーランド軍を「侵略者」とみなし、テロ行為を正当化する可能性。
 ・ポーランド国内のウクライナ難民にも過激派思想を持つ者が含まれるリスク。

 4.不釣り合いな負担

 ・ポーランドはすでにGDPの約4.91%をウクライナ支援に費やしている。
 ・平和維持活動で他国が負担をポーランドに押し付ける恐れがある。

 5.国際紛争のエスカレーション

 ・ポーランド軍が攻撃された場合、ロシアやベラルーシへの報復が第三次世界大戦を誘発する可能性。
 ・ウクライナが意図的に状況をエスカレートさせるリスクも存在。

 6.国益を損ねる可能性

 ・過剰な介入により、国内経済や国際的な立場が損なわれる恐れがある。
 ・ベルリン・サミットでの冷遇は、さらなる負担が報われない可能性を示唆。

 結論として、ポーランドはウクライナでの平和維持活動に直接関与すべきではなく、他国の後方支援に限定するべきである。

【引用・参照・底本】

Five Reasons For Poland Not To Directly Participate In Any Ukrainian Peacekeeping Mission Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.29
https://korybko.substack.com/p/five-reasons-for-poland-not-to-directly?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153748299&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

韓国ムアン空港:衝突により機体は複数部分に分解2024年12月29日 17:16

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【概要】

 2024年12月29日、韓国の済州航空2216便が韓国南西部のムアン国際空港に着陸を試みた際、着陸装置の不具合により滑走路を外れ、フェンスに衝突した。この事故により、乗員乗客181人のうち2人を除く全員が死亡したとみられている。韓国の聯合ニュース(Yonhap)は消防当局の情報を引用し、少なくとも120体の遺体が収容されたと報じている。

 事故は現地時間午前9時頃に発生した。この航空機はタイのバンコクから韓国に戻る途中であった。地元メディアによれば、機体は空港上空で旋回した後、着陸装置が完全に展開しない状態で緊急の胴体着陸を試みたが、その際に事故が発生したという。原因としては、航空機が鳥の群れに衝突したことにより着陸装置が故障した可能性が指摘されている。

 事故の映像がソーシャルメディアに投稿されており、滑走路を外れた大型旅客機が炎上する様子が確認できる。機体は衝突後に複数の部分に分解し、現場からは濃い煙が立ち上っている。消防隊は炎の鎮火作業を行いながら、生存者を捜索している。尾部から乗客1名と乗員1名が救出されたとの情報がある。

 機内には乗客175人と乗員6人が搭乗しており、乗客のうち173人が韓国国籍、残り2人はタイ国籍であると報告されている。事故の詳細や原因については引き続き調査が進められている。
 
【詳細】

 2024年12月29日午前9時頃、韓国の済州航空(Jeju Air)2216便が韓国南西部の務安国際空港(Muan International Airport)で着陸を試みた際に大規模な事故が発生した。この航空機はバンコク発のボーイング737-800型機であり、着陸装置の不具合により滑走路を外れ、空港のフェンスに衝突した後炎上した。

 機体と搭乗者の状況

 搭乗者は計181人であり、内訳は乗客175人と乗員6人である。乗客の中には韓国国籍者が173人、タイ国籍者が2人含まれている。この事故で、生存が確認されているのは乗客1名と乗員1名のみであり、残る全員が死亡したと推定されている。消防当局はこれまでに少なくとも120体の遺体を収容しており、その他の行方不明者の捜索が進行中である。

 事故の詳細な経過

 1.飛行中の異常発生

 当局の発表によると、航空機が着陸する際に鳥の群れと衝突したことで着陸装置が損傷を受けた可能性がある。この影響で、初回の着陸は断念され、機体は空港上空で旋回を行いながら再度の着陸を試みた。

 2.胴体着陸と衝突

 機体は着陸装置が完全に展開されていない状態で緊急の胴体着陸を試みた。しかし、接地後に制御を失い滑走路を外れ、空港のフェンスに激突。その直後に炎上し、機体が複数の部分に分解した。

 3.救助活動

 事故現場からは濃い煙が立ち上り、炎上する機体に消防隊が駆けつけた。消防隊は火災の消火と生存者の捜索活動を続けている。尾部から救出された2人は現在医療機関で手当てを受けているが、その状態については明らかにされていない。

 調査と原因分析

 初期の調査では、鳥の群れによるエンジンまたは着陸装置への影響が事故の主因である可能性が指摘されている。鳥との衝突(バードストライク)は航空事故の一因として知られており、特に離着陸時に発生するリスクが高い。
済州航空と韓国政府は事故調査委員会を設置し、航空機の運行履歴、整備状況、乗員の行動記録(ブラックボックス)の解析を進めている。

 被害の影響と対応

 この事故は韓国国内外で大きな衝撃を与え、遺族や関係者への支援が求められている。済州航空は事故の発生を受け、該当便と同型機の運航を一時停止し、安全対策の見直しを進めている。韓国政府は災害対応を迅速化するために非常事態を宣言し、消防、警察、医療チームが総動員されている。

 社会への影響

 この事故は航空業界全体に対して安全性の再確認を迫るものであり、韓国国内の航空利用者に対して不安感を与えている。特に済州航空に対する信頼が揺らぐ可能性があり、同社がどのように対応するかが注目されている。
  
【要点】 
 
 事故の概要

 ・発生日時: 2024年12月29日午前9時頃
 ・発生場所: 韓国南西部の務安国際空港(Muan International Airport)
 ・機体情報: 済州航空(Jeju Air)2216便、ボーイング737-800型機
 ・航路: タイ・バンコク発、韓国・務安行き
 ・搭乗者数: 計181人(乗客175人、乗員6人)

 被害状況

 ・生存者: 2名(乗客1名、乗員1名)
 ・死亡者: 残り179名が死亡と推定
 ・遺体収容: 少なくとも120体が確認済み
 ・乗客国籍: 韓国国籍173名、タイ国籍2名
 
 事故の経過

 1.異常発生

 ・鳥の群れ(バードストライク)との衝突で着陸装置が故障。
 
 2.初回の着陸失敗

 ・空港上空で旋回し、再着陸を試みる。

 3.胴体着陸
 
 ・着陸装置が完全に展開しない状態で胴体着陸を実施。
 ・機体は滑走路を外れ、空港フェンスに激突後、炎上。

 4.機体の損壊:

 ・衝突により機体は複数部分に分解。

 救助活動

 ・消火活動: 消防隊が現場で火災を鎮火中。
 ・生存者捜索: 尾部から2名を救出。現在も捜索活動を継続中。

 事故原因の仮説
 
 ・主要因: 鳥の群れとの衝突による着陸装置の不具合(バードストライク)。
 ・調査内容

  ⇨ 機体の整備履歴やブラックボックスの解析中。
  ⇨ 機長・副操縦士の行動記録も調査。

 社会的影響と対応

 ・済州航空の対応: 同型機の運航停止、安全対策の再確認。
 ・韓国政府の対応: 非常事態を宣言、災害対応を強化。
 ・遺族支援: 被害者家族への救済措置を検討中。

 今後の課題

 ・安全性の確保: 航空業界全体で安全対策の強化が求められる。
 ・信頼回復: 済州航空のブランドイメージへの影響が懸念される。

【引用・参照・底本】

Large passenger plane crashes in South RT 2024.12.29
https://korybko.substack.com/p/five-reasons-for-poland-not-to-directly?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153748299&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

プーチン:武装反乱主導者の刑罰厳格化法律に署名2024年12月29日 17:32

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【概要】
 
 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、武装反乱を主導する者に対する刑罰を厳格化する法律に署名した。この新法により、ロシアの裁判所は政府転覆を企てた組織者に対して終身刑を言い渡す権限を持つこととなる。

 以前の法律では、裁判所は組織者に対して12年から20年の懲役刑を科すと定めていた。この改正では、政府転覆を武力で試みた場合の一般参加者と主導者を区別し、死者やその他の予期しない結果が生じた場合、より厳しい刑罰が適用されると明記されている。その中には終身刑が含まれる。

 さらに、この新法は、計画された反乱について当局に情報を提供するか、ロシアの利益への損害を軽減するための行動をとった共謀者に対しては、法的責任が免除され得ることを明記している。

 また、この法律により、武装反乱やテロ行為で有罪判決を受けた者は早期釈放の対象外となる。さらに、ロシア国家安全保障を損なう敵対活動を支援する外国人および無国籍者を処罰する新しい条項が刑法に追加され、国家反逆罪に関する条項の文言も修正されている。

 これらの改正案は今月初めにロシア議会で採択され、プーチン大統領が年末を前に立法関連の書類整理を進める中で署名され法制化された。報道によれば、大統領は木曜日と土曜日の2日間で合計84件の法改正に署名しており、今年は合計563の新しい法律を制定したとされている。

 本件は、2023年6月にワグネル私兵会社の創設者であるエフゲニー・プリゴジン氏が大規模な反乱を主導し、一部の部隊がモスクワに進軍した事件とも関連している。プリゴジン氏は後にベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が仲介したロシア政府との合意の一環として進軍を停止した。その2か月後、プリゴジン氏とワグネルの幹部数名がモスクワ近郊で発生した航空機事故で死亡している。

 ワグネルグループはウクライナ紛争に積極的に関与し、ロシア国内外で戦闘員を募集していた。特に、2023年5月にドンバスの要衝アルテモフスク(ウクライナではバフムトとして知られる)を制圧したことで知られる。しかし、プリゴジン氏はロシア国防省との間で公然と対立し、装備や弾薬の提供が不十分であると繰り返し非難していた。
 
【詳細】

 ウラジーミル・プーチン大統領が署名した新たな法律は、ロシアにおける武装反乱や国家転覆行為に対する刑罰を一層厳格化するものである。この法改正は、武装反乱を組織する行為を厳しく取り締まり、その主導者に対して終身刑を科す可能性を明記している。以前の規定では、武装反乱の組織者は12年から20年の懲役刑が想定されていたが、新法ではその上限が引き上げられ、特に反乱が死者や重大な被害をもたらした場合には終身刑が適用されることとなった。

 法改正の具体的な内容

 1.組織者と参加者の区別

 新法は、武装反乱を試みる者を「主導者」と「一般参加者」に分けて規定している。主導者には終身刑を科すことが可能であり、一般参加者には従来の範囲内での刑罰が科される。また、計画段階において当局に情報提供を行うか、反乱による損害を最小化する行動をとった場合、共謀者は刑事責任を免れる可能性がある。

 2.早期釈放の除外

 武装反乱やテロ行為で有罪判決を受けた者は、刑期中の早期釈放が認められなくなる。この規定は、反乱やテロに関連する犯罪が国家の安定に対する重大な脅威であると見なされていることを反映している。

 3.新たな条項の追加

 ・外国人および無国籍者の処罰

 ロシア国家安全保障を脅かす敵対活動を支援または関与した外国人や無国籍者に対して新たな刑事罰を導入。これにより、国外からの介入や支援に対する取り締まりが強化される。

 ・国家反逆罪の文言修正

 国家反逆罪に関する既存の条項も改正され、特に敵対勢力への「亡命」や「協力」に関連する規定が具体化された。

 改正の背景と関連事項

 ロシア議会(国家院)はこの法改正案を早い段階で採択しており、プーチン大統領は年末の立法業務の一環として法案に署名した。報道によれば、プーチン大統領は年内に合計563の新たな法律を制定しており、今回の法改正もその一環として迅速に実施された。

 ワグネルグループとその影響

 この法改正は、2023年6月に発生したワグネル私兵会社による武装反乱とも関連がある。ワグネルの創設者であるエフゲニー・プリゴジン氏は、ロシア国防省との対立を背景に、武装勢力を率いてモスクワに進軍を試みた。この進軍は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領による仲介の結果、停止されたものの、この事件はロシア国内外において大きな衝撃を与えた。

 ワグネルの役割

 ワグネルグループは、ウクライナ紛争において重要な役割を果たした民間軍事組織である。同グループはドンバス地方のアルテモフスク(バフムト)を2023年5月に制圧したことでも知られる。一方で、プリゴジン氏はロシア国防省に対し、弾薬や装備が不足していると繰り返し批判し、これが反乱の動機の一つとされている。

 反乱後の展開

 プリゴジン氏とワグネル幹部数名は、反乱後2か月で航空機事故により死亡した。この事故は、モスクワ近郊で発生し、事故の背景や原因については依然として様々な憶測が飛び交っている。

 法改正の意義

 今回の法律改正は、国家安全保障の強化を目的としており、特に武装反乱やテロ行為に対する抑止力を高める狙いがある。これにより、ロシア政府は国内外の脅威に対してより厳格な姿勢を示すことが可能となった。
  
【要点】 
 
 ロシアでの新たな法改正の概要

 1. 武装反乱に対する刑罰の強化

 ・武装反乱の組織者に対し、終身刑を適用可能。
 ・以前の規定(懲役12~20年)から大幅に厳罰化された。
 ・反乱が死者や重大な損害をもたらした場合、厳しい処罰が義務付けられる。

 2. 責任免除の条件

 ・計画段階で当局に情報提供を行う、または損害を軽減する行動をとった者は刑事責任を免除される可能性がある。

 3. 早期釈放の除外

 ・武装反乱やテロ行為で有罪となった者は、早期釈放が不可能。

 4. 新規条項の追加

 ・外国人および無国籍者がロシア国家安全保障を脅かす敵対行為を支援した場合の刑罰を新設。
 ・国家反逆罪の文言を修正し、敵勢力への亡命や協力を具体的に規定。

 5. 法改正の背景

 ・プーチン大統領は2023年に合計563の法律を制定。今回の改正はその一環として実施。

 6. ワグネルグループとの関連

 ・2023年6月、ワグネル創設者エフゲニー・プリゴジン氏が武装反乱を起こすも、ベラルーシの仲介で停止。
 ・反乱後2か月でプリゴジン氏が航空機事故により死亡。
 ・ワグネルはウクライナ紛争で重要な役割を果たしていたが、ロシア国防省との対立が反乱の原因とされる。

 7. 意義と目的

 ・国家安全保障の強化を目的とし、反乱やテロ行為に対する抑止力を高める。
 ・国内外の脅威に対するロシア政府の厳格な姿勢を示すものとされる。

【引用・参照・底本】

Putin toughens punishment for ‘armed rebellion’ RT 2024.12.28
https://www.rt.com/russia/610127-putin-armed-rebellion-punishment/

ドイツ:ロシアの新型極超音速ミサイル「オレシュニク」に無力2024年12月29日 17:45

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【概要】
 
 ドイツの大衆紙「ビルト」は、ロシアの新型極超音速ミサイル「オレシュニク」に対して、ドイツの防空システムが無力であるとのドイツ外務省の分析結果を報じた。このミサイルは、中距離弾道ロケットであり、核弾頭を含む複数の弾頭タイプを搭載可能である。初めて使用されたのは2024年11月21日で、ウクライナのドニプロ市にある軍需工場「ユージュマシュ」を攻撃した。ロシアのプーチン大統領は、このミサイルが音速の10倍で飛行し、現存する防空システムでは迎撃が不可能であると主張している。

 「ビルト」の報道によれば、ドイツ外務省はベルリンとキーウの防空能力に関する内部調査を実施した。この調査には、軍の連絡将校や防空専門家の協力が含まれていた。その結果、ドイツは「オレシュニク攻撃に対して無防備である」との結論に至ったとされる。特に、米国製のパトリオット防空システムについては、「オレシュニクのような長距離弾道ミサイルには対応できない」と警告されている。報告書は、このミサイルの速度と機動性を考慮すると、「迎撃は事実上幸運によるものにすぎない」と指摘している。

 ただし、「ビルト」は、昨年ベルリンが発注したイスラエル製の「アロー防空システム」がこの問題を部分的に解決する可能性があるとも述べている。

 プーチン大統領は今月、オレシュニクの開発は米国が中距離ミサイルを西ヨーロッパに配備したことに対する対応であったと説明している。また、12月下旬の記者会見では、同ミサイルが既に量産体制に入っており、ロシアの同盟国であるベラルーシにも配備される予定であると発表した。ベラルーシのルカシェンコ大統領も、現在10基の配備が予定されており、今後さらに増加する可能性があると述べている。

 さらにプーチン大統領は、西側諸国に対して「ハイテクの決闘」を提案し、オレシュニクミサイルを使用してキーウの特定の標的を攻撃し、西側の防空システムがそれを迎撃できるかどうかを試すという挑発的な意見を述べた。このように、オレシュニクミサイルの能力を誇示しつつ、西側諸国に対する抑止力を高める姿勢を示している。
 
【詳細】

 「ビルト」の報道によると、ドイツの外務省はロシアの新型極超音速ミサイル「オレシュニク」に対する防衛能力に関して内部調査を実施した。この調査では、ドイツの現在の防空システムが、オレシュニクに対して効果的な防御を提供できないとの結論が出された。

 オレシュニクミサイルの特性

 オレシュニクは、中距離弾道ミサイルで、核弾頭を含む複数の種類の弾頭を搭載できる。また、極超音速の特性を持ち、音速の10倍という非常に高い速度で飛行する。このミサイルは、その速さと機動性のため、現存する防空システムでは迎撃が難しいとされている。ロシアのプーチン大統領は、オレシュニクが音速の10倍で飛行し、現代の防空システムではそれを迎撃することができないと強調している。

 ドイツ外務省の調査

 外務省が実施した調査では、ドイツとウクライナの防空能力を比較した結果、オレシュニクに対する有効な防御手段がないことが確認された。特に、ドイツが運用している米国製のパトリオット防空システムが、オレシュニクのような中距離弾道ミサイルに対応できないとの評価がなされた。パトリオットは比較的短距離向けの防空システムであり、オレシュニクのような極超音速ミサイルには効果的に対処できないとされる。

 調査の結果、オレシュニクの迎撃は「幸運による一発の命中」となりかねないと指摘された。つまり、このミサイルはその速度と機動性により、現行の防空システムではほとんど迎撃が不可能だと考えられている。

 イスラエル製アローシステム

 一方で、報道はイスラエル製の「アロー防空システム」についても言及しており、これがオレシュニクに対する防御手段として一定の効果を期待できるとの見解を示している。アローシステムは長距離ミサイルの迎撃に特化しており、ドイツは昨年、このシステムを導入する決定を下している。このシステムがオレシュニクに対する防御を部分的に補完する可能性があるとされているが、完全にミサイルの脅威を排除できるわけではない。

 プーチン大統領の発言

 プーチン大統領は、オレシュニクミサイルが量産に入ったことを発表しており、これがロシアの軍事戦力を強化する重要な要素となることを示唆している。また、オレシュニクはロシアの同盟国であるベラルーシにも配備される予定であることを確認した。ベラルーシのルカシェンコ大統領は、当初は10基が配備され、その後の展開については見守ると述べている。

 プーチン大統領はまた、西側諸国に対して「ハイテクの決闘」を挑戦する発言をしており、具体的にはオレシュニクミサイルをキーウ(ウクライナの首都)の標的に使用し、西側諸国が提供する防空システムがそのミサイルを迎撃できるかを試すという形での対決を想定している。この発言は、西側の防空能力を試すだけでなく、ロシアの技術力を誇示する意図もあると考えられている。

 結論

 この一連の報道は、オレシュニクミサイルが持つ極超音速の特性とその戦略的な重要性を強調している。ドイツの防空システムは、現在のところこのミサイルに対して十分な防御能力を持たないとされ、今後の防空技術の強化が求められる可能性がある。ロシアはオレシュニクの使用を増やし、さらにベラルーシなどの同盟国にも配備する意向を示しており、今後の国際的な安全保障における重要な要素となるだろう。
  
【要点】 
 
 1.オレシュニクミサイルの特性

 ・中距離弾道ミサイルで、核弾頭を含む複数の弾頭タイプを搭載可能
 ・音速の10倍で飛行する極超音速ミサイル
 ・現行の防空システムでは迎撃が難しい

 2.ドイツ外務省の調査結果

 ・ドイツの防空システム(特にパトリオット)はオレシュニクに対して無力
 ・オレシュニクの迎撃は「幸運による一発の命中」に頼ることになる
 ・現行の防空システムでは効果的な防御が不可能とされる

 3.アロー防空システムの可能性

 ・イスラエル製のアロー防空システムが一定の防御効果を発揮する可能性
 ・ドイツは昨年、このシステムを導入決定

 4.プーチン大統領の発言

 ・オレシュニクは量産され、ロシアの同盟国であるベラルーシにも配備予定
 ・ベラルーシに10基が配備され、その後の展開については不確定
 ・プーチン大統領は西側諸国に「ハイテクの決闘」を挑戦し、オレシュニクをキーウの標的に使用する可能性を示唆

 5.結論

 ・現行の防空システムではオレシュニクミサイルに対して無防備
 ・ロシアはオレシュニクの使用を増加させ、同盟国に配備予定
 ・ドイツは防空能力の強化が必要とされる可能性がある

【引用・参照・底本】

Germany defenseless against Oreshnik missile – Bild RT 2024.12.28
https://www.rt.com/news/610110-bild-germany-defenseless-russian-oreshnik-missile/

ロシアの外国情報局(SVR):米英のテロ攻撃計画2024年12月29日 18:00

Ainovaで作成
【概要】
 
 ロシアの外国情報局(SVR)は、アメリカとイギリスがシリアにおけるロシアの軍事基地を標的にしたテロ攻撃を計画していると警告した。この攻撃の目的は、シリアでの状況が安定するのを防ぐことであり、両国は中東での支配を永続的に確立することを目指しているとSVRは述べている。

 具体的には、アメリカとイギリスは、シリアのバシャール・アサド政権の崩壊後、混乱状態を維持することを目標としており、ロシアの地中海沿岸にある軍事基地がその計画にとって障害となっているという。イギリスの情報機関は、ロシアの軍事施設に対する一連のテロ攻撃を組織する計画を立てており、その実行には過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員が利用される予定だとされている。

 SVRによると、アメリカのCIAとイギリスのMI6は、シリアに駐留するISの指導者に対して、ロシアの軍事基地への攻撃を命じ、攻撃用無人航空機(UAV)がテロリストに渡されたという。また、アメリカとイギリスは、ISの位置に対する空爆を継続的に行い、その空爆がテロ攻撃を隠す手段となるよう指示していると伝えられている。

 ロシアの基地への攻撃が成功すれば、ロシアはシリアから軍を撤退させることを期待し、新たなシリア当局は過激派の制御ができないとして非難されるだろうという。このような計画は、シリア内戦の新たな複雑さを増すことになる。
 
【詳細】

 ロシアの外国情報局(SVR)は、アメリカとイギリスがシリアにおけるロシアの軍事基地に対してテロ攻撃を仕掛ける計画を立てていると警告している。この計画の背景には、シリアでの状況を安定させないようにすることで、中東地域における支配権を確立しようとするアメリカとイギリスの意図があるとされる。具体的には、両国はシリアでの混乱を維持し、ロシアの影響力を削ぐことを狙っている。

 SVRの発表によると、アメリカとイギリスはシリアのバシャール・アサド政権の崩壊後、シリア内での「混乱」を維持し続けることを目標としており、ロシアのシリアにおける軍事プレゼンスがその計画にとって障害となっていると述べている。ロシアは2015年からシリア政府を支援し、地中海沿岸にあるタルトゥース海軍基地とホムス近郊のフメイミム空軍基地を戦略的に利用している。これらの基地は、ロシアの軍事作戦の拠点であるだけでなく、シリア内戦における人道支援の提供にも重要な役割を果たしている。

 SVRによると、イギリスの情報機関は、これらのロシア軍事施設に対して一連のテロ攻撃を行う計画を立てており、その攻撃の実行には過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員が利用されるという。ISの指導者たちはシリアに拠点を持っており、これらの戦闘員は過去に捕えられていたが、政権交代後に釈放されたとされる。この計画では、ISの指揮官たちがアメリカとイギリスの情報機関の指示を受けて、ロシアの基地に対する攻撃を実行することになる。

 攻撃に使用されるとされるのは、無人航空機(UAV)であり、これらのドローンを利用してロシアの施設に対して精密攻撃を行うとされている。これにより、テロ攻撃が実行される一方で、アメリカとイギリスの関与を隠すことが可能になると考えられている。また、アメリカとイギリスの空軍は、ISの位置に対する空爆を続けることによって、その存在を隠蔽し、攻撃の実行を支援するという。具体的には、ISの拠点に対する空爆の予告をテロリスト側に伝え、攻撃を準備させることで、アメリカとイギリスが関与している証拠を隠す意図があるとされる。

 SVRは、これらの攻撃が成功した場合、ロシアがシリアから軍を撤退させることを期待し、これによってシリア内の新たな政治体制が過激派を制御できないという印象を与えようとしていると警告している。このようなプロパガンダは、シリア政府の支配能力を疑問視させ、アメリカとイギリスの目的にかなった形でシリアの新しい権力構造に影響を与えることを狙っている。ロシアがシリアから撤退することにより、アメリカとイギリスがシリアにおける影響力を強化し、中東全体での支配を確立しようとしているとSVRは指摘している。

 一方で、ロシアの軍事基地はシリア内戦の終結後も重要な役割を果たしており、ロシアはこれらの基地を利用してシリアの安定化を支援し、地域における人道的支援を行っている。ロシアのプーチン大統領は、年末の記者会見で、シリアを支配する新しい勢力がロシアの基地を維持したいという意向を示していることを明言した。ロシアのシリア軍事駐留は今後も慎重に考慮されるべきであり、シリアの政治勢力との関係がどう進展するかが重要な課題となっている。
  
【要点】 
 
 1.アメリカとイギリスの計画

 ・アメリカとイギリスは、シリアにおけるロシアの軍事基地に対してテロ攻撃を仕掛ける計画を立てている。
 ・目的は、シリアでの状況を安定させず、混乱を維持して中東での支配権を確立すること。

 2.ロシアの軍事プレゼンスへの影響

 ・ロシアの地中海沿岸のタルトゥース海軍基地とフメイミム空軍基地がアメリカとイギリスの計画にとって障害となっている。
 ・ロシアはこれらの基地を使用してシリア政府を支援し、地域の安定化と人道支援を行っている。

 3.テロ攻撃の実行者

 ・攻撃は過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員によって実行される予定。
 ・ISの指導者たちはシリアで釈放され、アメリカとイギリスの指示で攻撃を実行する。

 4.使用される攻撃手段

 ・攻撃には無人航空機(UAV)が使用される。
 ・UAVを使った攻撃により、テロ攻撃が行われる一方でアメリカとイギリスの関与を隠蔽する。

 5.アメリカとイギリスの空爆支援

 ・アメリカとイギリスの空軍は、ISの拠点に対する空爆を続け、その位置をテロリストに伝える。
 ・これにより、攻撃を行う準備が整えられ、アメリカとイギリスの関与が隠される。

 6.目的と期待される結果

 ・ロシアの基地が攻撃を受けることで、ロシアはシリアから軍を撤退させることを期待している。
 ・その結果、シリア政府の支配能力が疑問視され、新たな政治体制に対する影響が生じる。

 7.ロシアの対応

 ・ロシアはシリアの新たな支配勢力との関係を慎重に考慮し、基地の維持に関する議論を行っている。
 ・プーチン大統領はシリア内でのロシアの軍事基地維持を重視していると述べている。

【引用・参照・底本】

US and UK planning terrorist attacks on Russian bases in Syria – intel RT 2024.12.28
https://www.rt.com/russia/610108-us-uk-terrorist-attack-russian-bases-syria/missile/