シリア:一部の過激派が英米の計画を実行か2025年01月04日 17:39

Ainovaで作成
【概要】
 
 ロシア対外情報庁(SVR)は、ロシアがシリアに設置している基地が、英米が支援するISISによる無人航空機(UAV)攻撃を受ける可能性があると警告した。この攻撃は、地域の混乱を利用してロシアと新たなシリア当局の間に不和を生じさせ、最終的にはロシア軍の撤退を促すという西側の計画の一環であるとされている。こうした事態が発生すれば、ロシアは新当局が攻撃に関与していないかを確信できず、難しい選択を迫られることになる。

 プーチン大統領は年次質疑応答で、ロシアのシリア基地を人道支援の拠点として活用することを提案し、「現在シリアを支配しているグループの大多数がロシアの駐留を望んでいる」と述べた。しかし、一部の過激派が英米の計画を実行し、国際的な注目を集める可能性がある。これにより、間接的な西側の影響を受けつつ事態が展開する恐れがある。

 もし攻撃が発生すれば、新たなシリア当局が過激派を制御できているのかが疑問視されることとなり、内部の分裂が深刻化する可能性がある。ロシアの人道支援がこれらの基地から続けられることは、シリア当局の信頼性を向上させるためにも重要である。他国が人道支援を代替する可能性はあるが、ロシアのような長期的な関与が保証されるとは限らない。

 ロシアはシリアでの軍事プレゼンスを段階的に縮小しているが、それでもなお同地域で最も強力な軍事力を保持している。新当局がロシアに対して対テロ支援を正式に依頼すれば、ISISや他の過激派に対する精密攻撃が可能である。

 最も効果的な解決策は、新たなシリア当局がロシアと長期的な協定を結ぶことである。この協定により、人道支援と軍事支援が提供され、双方の信頼が強化される。また、挑発者による分断工作を防ぐことができる。しかし、新当局は英米、トルコ、カタールといった後ろ盾となる勢力の圧力に直面している。特にトルコの影響力が強い状況下で、ロシアはトルコの黙認を得る必要がある可能性がある。

 このため、ロシアはトルコとの関係を強化するために、エネルギー価格の優遇やアックユ原子力発電所の融資条件の緩和など、外交的な提案を行うことが考えられる。トルコの協力が得られれば、新当局、ロシア、トルコの三者協力が進展し、地域の安定化が期待できる。また、英米がシリアでロシア基地に攻撃を仕掛けた場合、トルコの立場が揺らぐ可能性もある。

 ロシアの外交官は、現在の休暇期間中であっても、こうした選択肢を非公式に検討し続けるべきである。英米が休暇中を狙って挑発行為を行う可能性があるため、迅速な対応が求められる。
 
【詳細】

 ロシア対外情報庁(SVR)の警告によると、ロシアがシリアに設置した軍事基地が、英米が支援するISISによる無人航空機(UAV)攻撃の標的になる可能性がある。この警告の背景には、英米が地域の不安定化を利用し、ロシアと新たなシリア当局との関係を分断させようとする狙いがあるとされている。このような攻撃が成功すれば、国際世論を動かす西側の宣伝勝利となり、ロシア軍の撤退を促す結果を引き起こす可能性がある。

 ロシアのジレンマは、新たなシリア当局がこの攻撃に関与していないことを完全に証明できない点にある。もし攻撃が実行されれば、ロシア側は新当局が過激派を制御できていない、あるいは過激派との共謀があるのではないかという疑念を抱かざるを得なくなる。このような状況下では、ロシアの人道支援や軍事協力が危機にさらされる。

 ロシアの現地での役割

 プーチン大統領は最近の年次質疑応答で、シリアのロシア基地を人道支援の拠点として活用する提案を行った。また、「現在のシリアを支配しているグループの大多数は、ロシアの駐留を支持している」とも述べた。しかし、すべてのグループがこの方針に同意しているわけではない。過激派分子がこの状況を利用し、英米の利益に合致する挑発行為を行う可能性がある。

 これにより、ロシアと新たなシリア当局の間で不信感が生まれ、結果的に英米の「分断して支配する」という戦略が成功する恐れがある。特に、新当局内の一部の勢力が西側の利益に沿った行動を取る場合、内部対立が深刻化する可能性がある。

 新たなシリア当局の課題

 新たなシリア当局は、過激派を制御する能力を証明し、国際的な信頼を獲得する必要がある。ロシアの基地に対する攻撃が発生すれば、新当局の信頼性は損なわれ、シリアの安定化に向けた取り組みが難航する可能性がある。また、ロシア以外の国が人道支援を引き継ぐことも考えられるが、その長期的なコミットメントは不確実であり、ロシアほどの信頼性を持たない可能性が高い。

 軍事バランスの変化

 ロシアはシリアでの軍事プレゼンスを縮小しているものの、依然として同地域で最も強力な軍事力を保持している。特に、イスラエルが昨年12月中旬に実施した攻撃により、シリアアラブ軍(SAA)の能力が大幅に削がれたため、ロシアの役割は一層重要になっている。他の主要国、例えばトルコやイスラエルは空軍を展開していないため、ロシアの航空戦力は唯一の存在となっている。

 ロシアの提案

 ロシアは新たなシリア当局に対し、ISISやその他の過激派に対する「精密攻撃」を提案できる。この支援は、過去にアサド政権がロシアに正式に支援を要請した際の成功事例を踏まえたものである。さらに、新当局がロシアとの長期的な協定を締結すれば、人道支援と軍事支援の両面で安定した協力が期待できる。この協定により、ロシアと新当局の信頼が強化され、英米が仕掛ける挑発行為を抑制する効果もある。

 トルコとの関係の重要性

 しかし、新たなシリア当局はトルコ、カタール、英米といった国々からの圧力にも直面している。この中で特にトルコの影響力が強く、ロシアはトルコの支持を得るために外交的な努力を行う必要がある可能性がある。具体的には、トルコへのエネルギー価格の優遇やアックユ原子力発電所の建設融資条件の緩和が提案される可能性がある。もしトルコの協力が得られれば、新たなシリア当局、ロシア、トルコの三者協力が進展し、地域の安定化に寄与することが期待される。

 緊急性と対応

 SVRの警告によれば、英米が仕掛ける無人機攻撃はロシアの外交官や軍事関係者が休暇中の時期を狙って行われる可能性が高い。このため、ロシアは迅速かつ断固とした対応が求められる。外交官は休暇中であっても非公式な交渉を進め、問題解決の選択肢を模索する必要がある。

 ロシアにとって重要なのは、時間を無駄にせず、新たなシリア当局やトルコとの関係を強化し、英米による挑発を未然に防ぐ体制を整えることである。
  
【要点】 
 
 SVRの警告

 ・ロシアのシリア軍事基地が英米支援のISISによる無人航空機(UAV)攻撃を受ける可能性がある。
 ・0000攻撃の目的は、地域の不安定化やロシアと新シリア当局の分断を狙ったものとされる。

 攻撃が引き起こす影響

 ・ロシアは新シリア当局が攻撃に関与しているか否かを判断できず、不信感が生じる可能性がある。
 ・新当局の信頼性が損なわれ、国際社会での地位が低下する可能性がある。

 ロシアの現在の立場

 ・軍事プレゼンスを縮小しているものの、シリアで唯一の主要な空軍力を保持している。
 ・人道支援と軍事支援を提供し続ける意向を持つが、挑発行為がロシアの立場を揺るがす恐れがある。

 新シリア当局の課題

 ・過激派を制御する能力を示し、ロシアとの協力を維持する必要がある。
 ・英米やトルコ、カタールといった諸国からの圧力にも対応しなければならない。

 ロシアの提案

 ・長期的な協定を結び、人道支援とISIS対策の軍事支援を包括的に提供する。
 ・精密攻撃を実施して過激派の排除を支援するが、これが過激派間の対立を誘発するリスクもある。

 トルコとの関係

 ・トルコの支持を得るため、エネルギー価格の優遇やアックユ原子力発電所の建設条件の緩和が検討される可能性がある。
 ・トルコの協力を得られれば、ロシア・トルコ・新シリア当局間の三者協力が進展し得る。

 緊急対応の必要性

 ・英米が休暇時期を狙って挑発行為を行う可能性があるため、迅速な対応が必要である。
 ・非公式な交渉を含め、新当局やトルコとの協力強化を急ぐべきである。

 結論

 ・ロシアと新シリア当局の長期的な協力は双方に利益をもたらし、英米の挑発を未然に防ぐ手段となる。
 ・トルコを含む関係国との外交努力が地域の安定化において重要な鍵となる。

【引用・参照・底本】

Russia Would Be Caught In A Dilemma If Its Syrian Bases Come Under Attack Like SVR Just Warned Andrew Korybko's Newsletter 2025.01.04
https://korybko.substack.com/p/russia-would-be-caught-in-a-dilemma?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=154126732&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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