ショルツ首相:宇への追加軍事援助30億ユーロ渋る2025年01月10日 17:02

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【概要】
 
 ドイツのオラフ・ショルツ首相がウクライナへの追加軍事援助として30億ユーロ(約31億ドル)の支援を承認することを渋っていると、「デア・シュピーゲル」が報じている。この件は、外務大臣のアナレーナ・ベアボックおよび国防大臣のボリス・ピストリウスからの圧力を受けている状況である。同誌によると、ショルツ首相はこの措置が必要ではないと考えているとされる。

 報道によれば、ドイツ政府内ではこの支援案をめぐり激しい議論が展開されている。この支援パッケージには、高度な対空兵器や砲兵装備が含まれる可能性があり、ベアボック氏とピストリウス氏は、ウクライナがロシア軍の攻勢に対抗するためにこの支援が不可欠であると主張している。

 また、米国の次期大統領に選出されたドナルド・トランプ氏が1月20日に就任することを控え、キエフへの支援が今後も続くかどうかが不透明であることも、両大臣が懸念している理由の一つとされる。トランプ氏はウクライナ支援に批判的な立場を取っている。

 両大臣は、連邦議会の予算委員会に未計画の支出を申請することで支援案の資金を確保しようとしており、これは以前にもウクライナ支援のために用いられた仕組みであると報じられている。

 一方で、ショルツ首相はこの提案に反対しているとされる。その理由として、「将来の連邦政府に既成事実を突きつけたくない」という意向があると同誌は伝えている。また、首相府は、ウクライナはこれまでのドイツからの援助で十分な資金を確保していると考えているとされる。同時に、ショルツ氏の所属する社会民主党(SPD)の内部関係者は、選挙戦中に新たな武器提供を行うことが有権者の支持を失う恐れがあるため、首相がそれを避けている可能性があると述べている。

 この支援案をめぐる議論は、2024年11月にドイツの「交通信号連立」がウクライナ支援を含む複数の問題で意見が対立した結果、崩壊したことを背景としている。これにより、2025年2月23日に総選挙が予定されている。

 ドイツは、紛争開始以来ウクライナの主要な支援国であり、総額約280億ユーロの支援を約束している。しかし、2025年にはウクライナへの軍事援助額を40億ユーロに削減しており、前年の75億ユーロから減少している。また、ショルツ氏は長距離ミサイル「タウルス」の供与についても、敵対行為の拡大やドイツが紛争の直接当事者となる可能性を理由に慎重な姿勢を示している。

 一方、ロシアは西側諸国からのウクライナへの武器供与について繰り返し非難しており、これらが紛争の長期化を招く一方で、最終的な結果を変えるものではないと主張している。

【詳細】
 
 ドイツのオラフ・ショルツ首相がウクライナへの新たな軍事援助パッケージの承認を拒否している背景には、国内外の複数の要因が絡んでいる。この支援パッケージは30億ユーロ規模であり、具体的には高度な対空兵器システムや砲兵装備を含むとされている。しかし、ショルツ首相はこの支援が「必要ではない」と判断しており、外務大臣アナレーナ・ベアボック氏や国防大臣ボリス・ピストリウス氏との間で意見の対立が顕著となっている。

 ドイツ政府内の対立と背景

 この問題をめぐる議論は、ドイツ政府内での深刻な対立を浮き彫りにしている。ベアボック氏とピストリウス氏は、ウクライナがロシア軍の攻勢に直面している現状を踏まえ、この支援が戦況において決定的な役割を果たすと主張している。また、米国の次期大統領であるドナルド・トランプ氏がウクライナ支援に否定的な立場を示していることから、アメリカからの支援継続が不透明である点にも懸念を示している。このため、両大臣はウクライナ支援の責任がより一層ドイツに集中する可能性を懸念し、早急な対応を求めている。

 ベアボック氏とピストリウス氏は、予算委員会を通じた未計画支出の申請を支援資金の確保手段として提案している。この手法は、これまでにもウクライナ支援で採用されたことがある。しかし、ショルツ首相はこの提案に反対しており、その理由として以下の点が挙げられる。

 ショルツ首相の主張

 1.将来政府への影響を懸念

 ショルツ首相は、現政権が将来の連邦政府に対してウクライナ支援を既成事実化させるべきではないと考えている。2025年2月に予定されている連邦議会選挙を控え、新政権の政策判断を尊重する姿勢を示している。

 2.既存資金の十分性

 首相府は、過去のドイツからの援助によってウクライナが十分な資金を確保していると主張している。これまでドイツは約280億ユーロの支援を約束しており、その中には軍事援助や人道支援が含まれている。2025年には軍事支援額を75億ユーロから40億ユーロに減額したが、依然として主要な支援国である。

 3.選挙戦への影響を懸念

 ショルツ首相の所属する社会民主党(SPD)の内部関係者によれば、首相は選挙戦中に新たな武器供与を行うことが有権者の支持を失う要因になると懸念している。特に、ドイツ国内では一部の国民がウクライナ支援に対する疲労感や反発を感じているとの指摘がある。

 4.紛争のエスカレーションを回避

 ショルツ首相は、長距離ミサイル「タウルス」の供与にも慎重である。これについては、供与がロシアとの敵対行為をさらに激化させ、ドイツが紛争の直接的な当事者となるリスクがあると主張している。

 政治的背景と連立崩壊

 この議論は、2024年11月にドイツの「交通信号連立」(社会民主党、緑の党、自由民主党)が崩壊したこととも関連している。この連立崩壊の原因には、ウクライナ支援を含む政策の意見対立が含まれていた。このため、現政権は政治的な安定を欠いており、2月の総選挙を控えた状況で重要な政策決定を行うことに対して慎重な姿勢を取っている。

 国際的影響とロシアの立場

 ロシアは、西側諸国からウクライナへの武器供与を一貫して非難しており、これが紛争の長期化を招くと主張している。ロシア政府は、これらの支援が紛争の結果を根本的に変えるものではなく、むしろさらなる人的・物的被害をもたらすだけであると述べている。

 ドイツ政府内の議論やショルツ首相の判断は、ウクライナ支援における欧州の立場や今後の国際情勢に大きな影響を与える可能性がある。この問題は、国内外の政策判断の重要な試金石となるであろう。

【要点】
 
 ・ドイツのオラフ・ショルツ首相は、ウクライナへの追加軍事援助として30億ユーロの支援を承認することを渋っている。

 ・外務大臣アナレーナ・ベアボックおよび国防大臣ボリス・ピストリウスからの支援を実施するよう圧力を受けている。

 ・ショルツ首相は、支援が「必要ではない」と判断しており、ドイツ政府内での意見対立が浮き彫りになっている。

 ・支援パッケージには、高度な対空兵器や砲兵装備が含まれる予定であり、ロシア軍の攻勢に対抗するために重要とされている。

 ・ベアボック氏とピストリウス氏は、予算委員会を通じて未計画の支出を申請することで支援資金を確保しようとしているが、ショルツ首相はこれに反対している。

 ・ショルツ首相の反対理由として、将来の連邦政府に対して既成事実を突きつけたくないという点が挙げられる。

 ・ドイツ政府はすでに約280億ユーロの支援をウクライナに約束しており、既存の資金で十分と考えている。

 ・ショルツ首相は選挙戦中の影響を懸念しており、新たな武器供与が有権者の支持を失う要因になる可能性があると見ている。

 ・タウルス長距離ミサイルの供与についても慎重な姿勢を見せており、紛争のエスカレーションを避けるために控えている。

 ・2024年11月にドイツの連立政権が崩壊したことを背景に、ショルツ政権は政策判断に慎重になっている。

 ・ドイツはウクライナへの総額280億ユーロの支援を約束しており、2025年には軍事援助を減額している。

 ・ロシアは西側諸国からの武器供与に対して一貫して反対しており、これが紛争を長期化させると主張している。

【引用・参照・底本】

Scholz blocking new Ukraine aid – Spiegel RT 2025.01.10
https://www.rt.com/news/610659-scholz-blocking-ukraine-aid/

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