米国がイラン国内の核施設3カ所に対して空爆2025年06月23日 19:23

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【概要】

 2025年6月21日(現地時間)、米国がイラン国内の核施設3カ所に対して空爆を行ったことが発表された。これは現在進行中のイランとイスラエルの衝突に対して、米国が初めて公式に軍事介入したことを意味する。この行動に対して、国連のグテーレス事務総長は、すでに緊張が高まっている地域において「危険なエスカレーション」であり、「国際平和と安全への直接的な脅威」であると表明した。中国外交部も米国の攻撃を強く非難した。米国の行動は国連憲章および国際法の目的と原則に深刻に違反するものであり、中東の緊張をさらに高め、より大規模な危機を引き起こす可能性があるとされている。

 核施設への攻撃は極めて危険であり、その特殊な性質上、損傷が深刻な核漏れにつながる恐れがある。チェルノブイリや福島の原発事故の悲劇的な教訓が示す通り、核漏れの影響は単一の国に留まらず、近隣諸国や国際的な安全環境に深刻な影響を与える。

 米国は「バンカーバスター爆弾」を使用し、イスラエルが達成できなかったことを実現させたとされる。これにより、使用される兵器のレベルを意図的に引き上げ、イラン・イスラエル間の衝突を制御不能な状態に押しやったとされる。

 米国の空爆は国際安全保障秩序の基盤を揺るがすものである。国際原子力機関(IAEA)の保障措置下にある核施設を攻撃することで、米国は危険な先例を作ったと指摘されている。この行為は、国連安全保障理事会やIAEAの枠組みを迂回し、武力を用いて一方的にイラン核問題を「解決」しようとするものである。これは国連憲章と国際法の目的と原則に深刻に違反しており、長年にわたり多国間交渉を通じてイラン核問題に対処してきた中国や欧州連合など国際社会の原則的立場をも拒否する行為である。米国がイスラエルと「チームとして緊密に協力する」と誇示していることは、国際的な道義や多国間主義に反する性質を示しているとされる。

 イランにとって、この空爆は明白な挑発行為である。イランは「主権、利益及び国民を守るための全ての選択肢を留保する」と応じ、翌日には強力な「Kheibar Shekan(カイバー・シェカン)」ミサイルを初めてイスラエルに向けて発射したとされる。報道によると、イラン国会の国家安全保障委員会の議員イスマイル・コウサリは、国会がホルムズ海峡の閉鎖を承認したと述べた。最終的な決定はイラン最高国家安全保障会議が行う予定である。ホルムズ海峡は世界の石油とガス消費量の約5分の1が通過する重要な海上輸送の要衝であり、この航路が戦争により封鎖されれば、国際原油価格は急激に変動し、世界の海上輸送の安全および経済の安定性に深刻な影響を及ぼすことになる。

 米国軍の「直接的関与」は中東情勢を一層複雑化させ、不安定化させており、さらに多くの国々や無実の民間人をこの衝突に巻き込み、損失を被らせる結果となっている。AP通信はイランの核施設への空爆を「危険な決定」と報じ、ニューヨーク・タイムズも米国の対イラン軍事行動は「至る所にリスクをもたらす」と警告した。また、米国のイラン攻撃を受けて、イエメンのフーシ派が紅海での米国船舶への攻撃を再開すると発表した。中東地域はすでに宗派対立、代理戦争、外部干渉が絡む複雑な状況にあり、事実として米国の関与がイラン・イスラエル間の衝突を拡大させている。わずか1日で国際投資家はリスク資産を売却し、「第六次中東戦争」という言葉がメディアで急増し、地域の不安定化に対する国際社会の不安が高まった。

 中国は一貫して武力による威嚇と乱用に反対しており、政治的かつ外交的手段による危機解決を主張している。習近平国家主席は最近、ロシアのプーチン大統領との電話会談において、中東情勢に関する「四点提案」を示した。その内容は、①停戦と敵対行為の終了を最優先とすること、②民間人の安全確保を最重要とすること、③対話と交渉の開始が根本的な解決策であること、④国際社会の和平促進の努力が不可欠であること、である。この提案は中国の長期的かつ先見的な安全保障観を反映している。中東の歴史は繰り返し、外部の軍事介入が平和をもたらさないことを証明しており、地域の憎悪と苦痛を深めるのみであるとされる。武力による米国の強制の論理は平和に逆行するものであり、関係国、特にイスラエルには即時の停戦、民間人の安全確保、対話と交渉の開始を通じて、地域の平和と安定を回復することが望まれている。
 
【詳細】 

 1. 米国のイラン核施設空爆の発表と意義

 2025年6月21日(現地時間)、米国がイラン国内の核施設3カ所に対して空爆を実施したと正式に発表した。この行動は、イスラエルとイラン間で続いている一連の衝突の中で、米国が公式に軍事介入を行った初の事例であり、国際社会に大きな衝撃を与えたものである。

 この空爆により、これまでイスラエル単独では達成できなかったとされる作戦目標が、米国の使用した「バンカーバスター爆弾」によって実現されたと報じられている。バンカーバスターとは、地下深くの堅固な施設を破壊する能力を有する特殊兵器であり、その使用は戦争のエスカレーションを示す指標でもある。

 2. 国際社会の反応

 国連のグテーレス事務総長は、SNSを通じてこの米国の行動を「すでに緊張が極限状態にある地域での危険なエスカレーション」と表現し、「国際平和と安全への直接的な脅威」と警告した。

 中国外交部も迅速に声明を発表し、今回の攻撃を強く非難した。声明では、米国の行動が国連憲章および国際法の目的と原則に深刻に違反していると指摘し、これが中東情勢をさらに不安定化させると強調した。

 欧州連合を含む他の多くの国際的な当事者も、これまで多国間協議を通じて進められてきたイラン核問題の解決プロセスが一方的な武力行使によって踏みにじられたとの懸念を示した。

 3. 核施設攻撃の危険性

 核施設はその性質上、攻撃によって深刻な核漏れを引き起こす可能性がある。チェルノブイリや福島の原発事故の歴史的事例が示すように、放射性物質の漏洩は単一国家にとどまらず、近隣諸国や国際環境全体に深刻な影響を及ぼす。これにより広範な人道的被害や環境災害が発生するリスクが存在する。

 4. 国際安全保障秩序への影響

 今回の空爆は、国際原子力機関(IAEA)の保障措置下にある核施設を直接攻撃した点において、極めて重大な前例となった。この行為は、国際社会が核拡散防止と安全確保のために築き上げてきたIAEAの枠組みや国連安全保障理事会の権威を形骸化させる危険性がある。

 米国はこの行動をイスラエルとの「チーム」としての協調の一環と位置づけており、これにより多国間主義や国際道義に対する軽視が浮き彫りとなったと論じられている。

 5. イランの対応と地域の緊張激化

 イランはこの空爆を明白な挑発行為とみなし、「主権、国益、国民を守るための全ての選択肢を留保する」と公式に表明した。そして空爆の翌日、イランは「Kheibar Shekan(カイバー・シェカン)」と呼ばれる高威力ミサイルをイスラエルに向けて発射したと報じられている。

 さらに、イラン国会の国家安全保障委員会のメンバーであるイスマイル・コウサリ議員は、国会がホルムズ海峡の閉鎖を承認したと発言した。最終的な決定はイラン最高国家安全保障会議によって下される予定である。ホルムズ海峡は世界の原油と天然ガス輸送の約5分の1が通過する国際海上輸送の要衝であり、その封鎖は国際エネルギー市場に極めて深刻な影響を及ぼすとされる。

 6. 地域紛争の拡大と国際市場への影響

 米国の直接軍事介入は、既に複雑化している中東情勢をさらに不安定化させ、多くの無実の民間人を巻き込む結果となっている。AP通信はこれを「危険な決断」と評し、ニューヨーク・タイムズは「米国の対イラン軍事行動はあらゆる局面でリスクをもたらす」と警告した。

 また、イエメンのフーシ派は米国によるイラン攻撃を受け、紅海での米国船舶への攻撃を再開すると発表した。地域はすでに宗派対立や代理戦争、外部干渉が絡む複雑な状況にあり、今回の米国の行動はイラン・イスラエル間の衝突を地域全体に拡大させる引き金となっている。

 結果として、国際投資家はリスク資産を急速に売却し、メディアでは「第六次中東戦争」という表現が急増し、国際社会の不安感が一層高まった。

 7. 中国の立場と提案

 中国は一貫して武力の威嚇と行使の乱用に反対する立場を取っており、政治的・外交的手段による危機の解決を推進している。習近平国家主席はロシアのプーチン大統領との最近の電話会談で、中東情勢に関する「四点提案」を提示した。その内容は以下の通りである:

 ・まず停戦し、敵対行為を終了させることが最優先である。

 ・民間人の安全確保を最重要とすること。

 ・対話と交渉を通じて根本的解決を図ることが不可欠である。

 ・国際社会による和平推進の努力が必要不可欠である。

 この四点提案は、中国の長期的で先見的な安全保障観を示すものであり、中東地域の歴史が示す通り、外部の軍事介入が平和をもたらすことはなく、むしろ地域の憎悪とトラウマを深めるだけであると主張している。米国の武力行使による強制の論理は、平和に逆行するものであり、関係各国、特にイスラエルには即時の停戦と民間人の保護、対話と交渉を通じた平和と安定の回復が求められている。

【要点】 

 米国のイラン核施設空爆についての要点(箇条書き)

 ・米国は現地時間の土曜日にイラン国内の核施設3カ所を空爆したと発表した。

 ・これは現在のイラン・イスラエル間の紛争において、米国が初めて正式に軍事介入したことを意味する。

 ・国連のグテーレス事務総長はSNSで、この空爆を「地域の危険なエスカレーション」かつ「国際平和と安全への直接的脅威」と警告した。

 ・中国外交部も強く非難し、米国の行動が国連憲章と国際法の目的および原則に反するとした。

 ・核施設攻撃は極めて危険であり、損傷による放射能漏れが人道的災害と地域の安全への深刻な脅威となる可能性があると指摘した。

 ・チェルノブイリや福島の事故の例からも、核漏れの被害は一国にとどまらず、周辺国や世界全体に影響を及ぼすと警告している。

 ・米国は「バンカーバスター爆弾」を使用して、イスラエル単独では達成できなかった攻撃を実行したとされる。

 ・米国のこの行動は、IAEAの保障措置下にある核施設を攻撃した前例となり、国際安全保障秩序の基盤を揺るがしたとされる。

 ・国連安全保障理事会やIAEAの枠組みを無視し、武力でイラン核問題を一方的に「解決」しようとしたと批判している。

 ・米国がイスラエルと「チーム」として緊密に連携したことは、国際道義と多国間主義を軽視した証左とされる。

 ・イランは空爆を明白な挑発とみなし、主権と国益、防衛のため「全ての選択肢を留保する」と応じた。

 ・空爆の翌日、イランは「カイバー・シェカン」ミサイルをイスラエルへ発射したと報道された。

 ・イラン国会はホルムズ海峡の閉鎖を承認し、最終決定は最高国家安全保障会議に委ねられる見込みである。

 ・ホルムズ海峡は世界の原油・ガス消費量の約5分の1が通過する要衝であり、閉鎖されれば国際原油価格の大幅変動と世界経済への深刻な影響が予想される。

 ・米国の軍事介入で中東情勢はさらに複雑化・不安定化し、民間人を含む多くの無辜の人々が被害を受ける危険性が増した。

 ・AP通信は米国の空爆を「危険な決定」と呼び、ニューヨーク・タイムズは「リスクだらけ」と報じた。

 ・イエメンのフーシ派は米国の攻撃を受け、紅海での米国船舶への攻撃を再開すると発表した。

 ・地域は宗派対立、代理戦争、外部干渉が錯綜する状況であり、米国の行動は紛争の域外拡大を招いているとされる。

 ・空爆発表後、国際投資家はリスク資産を急速に売却し、メディアで「第六次中東戦争」という言葉が急増した。

 ・中国は一貫して武力の威嚇と乱用に反対し、政治・外交的手段での解決を提唱している。

 ・習近平国家主席はプーチン大統領との電話会談で中東問題に関する「四点提案」を示した。

 1.停戦と敵対行為の即時停止を最優先とすること

 2.民間人の安全確保を最重要とすること

 3.対話と交渉を根本的解決の手段とすること

 4.国際社会の和平推進努力が不可欠であること

 ・中国は歴史的教訓として、外部の軍事介入は平和をもたらさず、憎悪と傷を深めるだけであると強調した。

 ・米国の武力行使の論理は平和に逆行するものであり、関係国は即時停戦と民間人保護、対話による安定回復を実行すべきと主張している。
 
【桃源寸評】🌍

 米国・イスラエルの行動を厳しく断罪する

 1.核施設への武力行使は人類全体への背信行為である

 核施設は国際原子力機関(IAEA)の保障措置下にあり、その安全は国際社会共通の利益である。この施設を意図的に空爆することは、放射能漏れによる人道的・環境的災害を世界中にもたらす可能性を孕む暴挙である。チェルノブイリや福島の悲劇を想起すれば、その蛮行の危険性は自明である。

 2.国際法と国連憲章の根本原則を蹂躙した重大犯罪である

 武力行使は国連安保理の権限の下に厳格に制限されるべきである。今回の米国の単独空爆は、国際法を意図的に無視し、IAEAの検証メカニズムを無力化した暴挙である。これは法秩序の崩壊を招き、今後の国際安全保障を根底から破壊する前例である。

 3.イスラエルとの共犯構造が多国間協調を嘲笑した証左である

 米国が「イスラエルとチームとして」実行したと豪語することは、同盟関係を盾に一国の主権を踏みにじり、地域を戦火に巻き込む国際モラルの放棄である。イスラエル単独では困難だった攻撃を、米国の軍事力で代行する構図は、責任転嫁と恫喝外交の極致である。

 4.地域の民間人と世界経済を人質に取る非人道的戦略である

 攻撃により、イランは対抗措置としてホルムズ海峡封鎖の可能性に言及した。ここは世界の原油供給の約20%が通過する海上交通路である。これを危険に晒す行為は、世界経済を直接破壊する人質戦術であり、許されざる経済テロ行為である。

 5.空爆が新たな紛争の連鎖と無辜の犠牲者を生む構図を理解しない蛮勇である

 イエメンのフーシ派が即座に報復攻撃を宣言し、地域の火種が拡散している現実を見れば、米国・イスラエルの行動が地域安定を破壊し、報復の連鎖を加速していることは明白である。民間人の犠牲と経済的打撃の責任を全て背負うべきである。

 6.政治解決の可能性を自ら放棄し、力による一方的支配を選んだ愚行である

 イラン核問題は長年、欧州・中国・ロシアを含む多国間協議で解決を模索してきた。このプロセスを無視し、空爆による「解決」を強行したことは、協議と合意という国際的信頼を破壊し、国際秩序の根本理念を足蹴にする行為である。

 7.自国民も世界も危険に晒す無責任な国家犯罪である

 空爆発表後、世界の投資家がリスク資産を売り急ぎ、エネルギー市場は混乱した。米国・イスラエルは自国民の安全どころか、世界経済と安定を道連れにする巨大な不安定要因そのものである。

 総括

 米国とイスラエルが行った核施設空爆は、

 ・国際法と国連憲章を無視した破壊行為であり、

 ・核安全保障を損ない、

 ・地域を戦乱と報復の連鎖に引きずり込み、

 ・世界経済とエネルギー供給に破滅的影響を与える、
絶対に許されざる国家犯罪である。

 この行為は世界の法秩序を守る全ての国と市民が徹底して糾弾し、再発を許さぬために国際社会が一致して責任を追及すべきである。

【寸評 完】🌺

【引用・参照・底本】

US bombs have impacted foundation of global security order: Global Times editorial GT 2025.06.23
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1336731.shtml

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