日本:2026年7月31日に「国家情報局」設置→731部隊に関連2026-07-30 09:42

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【概要】

 2026年7月31日に日本が「国家情報局」を設置することについて論じたものである。設置日が旧日本軍の細菌戦部隊「731部隊」に通じることから、第二次世界大戦前の「特高警察」の復活と、戦後の国際秩序および平和主義憲法が定める専守防衛の原則への挑戦とみなし、アジア諸国をはじめ国際社会が警戒を怠らないよう呼びかけている。
  
【詳細】 

 日本政府は今回、分散的だった情報機能を統合し、「外国からのスパイ活動への対抗」を目的として、内閣総理大臣を長とする「国家情報会議」とその執行機関となる「国家情報局」を新設する。これにより内閣府を頂点とする集中的な指揮系統が構築されるが、議会や司法による監視が十分でなく、市民の日常活動や反戦活動の監視が可能になる点から、戦前に思想弾圧などを行った特高警察の仕組みを再現しているとの見方がある。

 また、今回の体制整備は国内にとどまらず、対スパイ法の制定や盗聴の拡大、米国CIAを参考とする外国情報機関の設置の検討、自衛隊の「敵基地攻撃能力」に資する情報活動の強化を伴うものであり、安全保障のあり方を積極的な偵察や先制的な攻撃を支えるものへと転換させる。さらに、「ファイブ・アイズ」への参加を模索し、米国などとの情報共有を深めることで、アジア太平洋地域の対立を高め、地域の平和と安定を損なう可能性があると指摘する。

 日本の右翼勢力は過去にも、731部隊に関連する番号を付した航空機に搭乗する、靖国神社との関係を維持するなど、歴史的な節目を意識した象徴的な行動を示してきた。今回の設置日の選択も、憲法改正や軍事費の増加、長距離打撃能力の保有などの動きと合わせ、戦後の枠組みを解き、軍国主義的な伝統を回復しようとする意思表示であり、制度の名称変更や法改正によって過去の歴史の記憶を曇らせつつ、段階的にその道を進もうとしていると論じている。

【要点】

 ・日本は2026年7月31日に「国家情報局」を設置する。この日付は旧日本軍の731部隊に関連し、象徴的な意味を持つ。

 ・新体制は情報機能を集中化し、内閣総理大臣の直轄下に置かれることから、戦前の特高警察の復活との警戒がある。

 ・情報活動は自衛隊の敵基地攻撃能力を支えるものへと転換し、軍事的な姿勢を積極的なものへと変える方向にある。

 ・米国主導の情報同盟との連携を強化し、地域の対立を深める可能性がある。
過去の象徴的な行動と今回の措置は、戦後の国際秩序と平和主義憲法への挑戦であり、国際社会は警戒を怠ってはならない。

 ・アジア諸国を含む世界の人々の平和を守る決意と歴史の記憶は、こうした動きによって覆すことはできない。

【引用・参照・底本】

Japan to establish a new 'Special Higher Police' on July 31 - its intentions are despicable: Global Times editorial GT 206.07.29
https://www.globaltimes.cn/page/202607/1367126.shtml

台湾:AITと民進党が互いに依存し合う不安の現れ2026-07-30 11:30

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【概要】

 米国在台湾協会(AIT)は2026年7月、米沿岸警備隊と台湾の沿岸警備隊の船舶が並んで航行する写真を出典不明のままソーシャルメディアに投稿し、「共通の海事目標に向け調整を進めている」と説明した。従来は非公開で行われていた同様の協力をあえて公にした背景には、台湾の民進党当局が「有毒油スキャンダル」で窮地に立たされ、米国への不信感も高まる中、「台湾独立」勢力を勢いづけ、AIT自らの存在感を示すねらいがあるとされる。一方、米国政府内ではAITの影響力が低下しており、今回の行動は戦略的なリスク抑制を図る政府の方針に反し、中米関係に不要な摩擦を生む可能性があるとの指摘がある。結局、この投稿はAITと民進党が互いに寄り添って安心感を得ようとする不安の表れにほかならない、と本稿は論じている。
  
【詳細】 

 AITの投稿の内容と背景

 AITが投稿した写真には撮影日時・場所の記載がなく、米沿岸警備隊と台湾の沿岸警備隊の船舶が並んで航行する様子が写されていた。米台間のこうした協力関係は従来は非公開で進められてきたが、今回はあえて表に出された。当時、台湾では「有毒油」問題をめぐる大規模な抗議活動が発生し、20万人以上が参加するなど民進党当局への不満が高まっていたほか、米国に対する不信感も広がっていた。こうした状況下での公表は、「台湾独立」勢力を支援し、AIT自らの存在意義を示すことを目的としているとされる。

 米国側の状況とAITの立場

 民進党側はAITを重要な存在と見なしているが、米国の中枢の政策決定の場ではAITの位置づけは次第に周辺化しつつある。2026年5月にはトランプ米大統領が「台湾が独立することは望まない」「米軍が9500マイルも移動して戦争をする必要はない」と公言したほか、中国沿岸警備隊が台湾周辺海域での通常の法執行パトロールを実施し、「台湾独立」勢力への抑止力を示したことも、AITに圧力を与えている。

 行動の性格と専門家の見解

 AITは捜索救助、熱帯性暴風雨への備え、災害支援など生活に関連する課題に関連付けて協力をアピールし、「軍事的なものではなく、純粋な法執行であり、人々の生活に根差したもの」であるかのように装っている。中国社会科学院国際戦略研究所の孫希輝准研究員は、これは挑発的な意味合いを和らげつつ、関与の形をより隠密なものにするための包装に過ぎないと指摘する。

 影響と評価

 この写真の投稿が与えた影響は、一部の民進党支持層の自己満足に寄与したにとどまり、むしろ「台湾独立」路線の行き詰まりと孤立を明らかにしたとされる。実際、AITは台湾積体電路製造(TSMC)の米国への移転を働きかけ、武器購入を求める動きを主導してきた経緯があり、今回の投稿はこうした実際の行動と比べれば中身のないポーズにすぎない。また、戦略的なリスク管理を進める米国政府の方針に反し、AITが摩擦を生む要因となりつつあるとの見方があり、政策決定者はAITの活動に一定の制限を加える必要があるとされる。さらに、米国がAITのような機関による事実上の公式交流に関する動きを黙認し続ければ、一部の勢力が米国の支援を過大評価し、より急進的な行動に出る誤解を招く恐れがあると警告している。

【要点】

 ・AITは出典不明の米台沿岸警備隊の並行航行写真を公にし、従来は非公開だった協力関係を示した。

 ・公表の背景には、民進党当局の支持率低下と米国への不信の高まり、「台湾独立」勢力への支援とAIT自身の存在意義の確保というねらいがある。

 ・米国政府内ではAITの影響力は低下しており、トランプ大統領の発言や中国側の活動がAITに圧力を与えている。

 ・AITは生活関連の課題を理由に協力を正当化しているが、専門家はそれが本質を隠すための包装に過ぎないと指摘する。

 ・今回の投稿は「台湾独立」の行き詰まりを示すにすぎず、実際の米国の政策とは矛盾するものである。

 ・AITの行動は中米関係に不要な摩擦を生む可能性があり、米国政府はその活動を制限する必要がある。

 ・結局、今回の一連の動きはAITと民進党が互いに依存し合う不安の現れである。

【引用・参照・底本】

Clinging to each other for assurance via photo only highlights AIT, DPP's deep anxiety GT 2026.07.29
https://www.globaltimes.cn/page/202607/1367107.shtml

日中両国の安全保障認識の非対称性がある2026-07-30 11:39

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【概要】

 高市早苗首相による「存立危機事態」に関する国会答弁を契機として悪化した日中関係について、その背景には台湾海峡をめぐる日中両国の安全保障認識の非対称性が存在すると分析するものである。日本は台湾海峡情勢を物理的安全保障の問題として捉える一方、中国は国家統一や「民族復興」と結び付く歴史的・政治的自己理解の問題として位置付けているため、双方の政策意図は同一の枠組みでは理解されないと論じる。そのため、認識の一致を追求するのではなく、誤認や誤算による偶発的な衝突を防ぐ危機管理を政策目標として重視すべきであると提言し、その根拠として1972年の日中共同声明および2014年の日中関係改善に向けた話合いを挙げている。
  
【詳細】 

 高市早苗首相が2025年11月の衆院予算委員会で台湾有事を念頭に「存立危機事態」へ言及して以降、日中関係は外交上の応酬にとどまらず、防衛、経済安全保障、人的交流など幅広い分野で悪化した。中国政府および党・政府系メディアは、日本を「新型軍国主義」と位置付けて対日批判を継続し、この表現は2026年5月には習近平国家主席による米中首脳会談で用いられたと報じられ、中ロ首脳会談の共同声明にも盛り込まれた。また、中国はデュアルユース品の対日輸出規制を強化し、防衛関連企業や防衛大学校、宇宙航空研究開発機構、防衛研究所などを輸出管理対象へ段階的に追加するとともに、人的交流の停滞も続いている。

 筆者は、これらの対立は一度の国会答弁のみで説明できるものではなく、その底流には台湾海峡をめぐる日中両国の認識枠組みの非対称性が存在すると論じる。日本政府は台湾海峡情勢を、自国の物理的安全保障への影響という観点から捉え、シーレーン、在日米軍基地、自衛隊と米軍の相互運用性などへの影響を踏まえて、外交による緊張管理や抑止力の整備を検討している。一方、中国共産党・政府は台湾問題を主権や領土保全に加え、「民族復興」や国家統一という歴史的使命と結び付けて位置付けており、筆者はこのような自己理解の連続性に関わる安全保障を国際政治学における「存在論的安全保障」と説明する。日本にも国家としての自己理解が存在し、中国にも物理的安全保障上の計算は存在するものの、台湾海峡をめぐる政策言説では双方が重視する側面が異なる点が重要であると指摘する。

 この認識枠組みの違いにより、日本側が政策意図を説明しても、中国側では異なる意味付けが行われる構造が生じると論じる。「存立危機事態」は日本では国内法上の事態区分であり、その認定自体が武力行使を意味するものではないが、中国側では台湾問題への介入意思を示すものとして受け止められた。筆者は、発信された言葉は受け手の認識枠組みの中で再解釈されるため、送り手がその解釈を統制することは困難であると述べている。

 さらに、中国語圏研究者による2026年の連続評論企画を参照し、「新型軍国主義」という用語や分析枠組みは研究者の間で一様ではないことを紹介している。一部の論考は、日本の防衛政策の変化を「新型軍国主義」と結び付けて論じる一方、同語を用いず、日本を急進的な戦略転換を進める国家、あるいは米中関係の構造変化へ適応する国家として分析する論考も存在する。しかし複数の論考では、日本国内の個別の政策や発言を、日本の国家戦略全体の転換を示す材料として結び付ける傾向が見られると指摘している。筆者は、これらを単純な誤読とは位置付けず、情報不足による誤認と、政治目的に沿って意味を組み替える戦略的フレーミングを区別して分析する必要があると述べている。

 また、防御的意図に基づく措置が相手には攻撃的意図の証拠として認識され、その対抗措置がさらに脅威認識を強化するという循環は、国際政治学で指摘されてきた問題であり、そこへ国家の歴史認識や自己理解が加わることで、説明のみでは認識の差を解消することが一層困難になると論じる。そのため、日本が保持すべき危機管理の主導性とは、中国側の解釈を変えることではなく、誤認や意図的な再解釈が法執行機関や軍の現場で誤算や衝突へ連鎖する経路を制御することにあるとしている。

 この考え方を踏まえ、筆者は冷戦期の米ソによる1963年ホットライン協定や1972年海上事故防止協定を参照し、政治的対立と事故防止の制度を切り分ける考え方を紹介する。また、1972年の日中共同声明および2014年の日中関係の改善に向けた話合いも、認識の相違を残したまま危機管理を進めるという発想を共有していると評価する。特に2014年の文書は、東シナ海をめぐる異なる見解を認めながら危機管理メカニズムの構築と不測の事態回避で一致した点に今日的意義があると位置付けている。

 筆者は、今後の対中政策では認識の一致ではなく危機管理を政策目標とし、抑止と危機管理を補完的に運用すべきであると述べる。そのためには、2014年に合意した危機管理メカニズムを政治関係の悪化とは切り離して維持し、「存立危機事態」のような国内法上の概念について、その意味と限界を平時から一貫して説明し続けることが必要であるとしている。その目的は、中国側の解釈を統制することではなく、日本政府の公式見解を第三国を含めて検証可能な形で残し、誤認の余地を減らすことにあると論じている。

 最後に筆者は、日中関係の安定とは、地域秩序や安全保障観の一致ではなく、相違が存在したままであっても緊急時の連絡を維持し、事故や誤算によるエスカレーションを防止できる能力を保持することであると結論付ける。そして、1972年の日中共同声明と2014年の日中関係改善に向けた話合いが示した「相違を残したまま関係を築き、維持する」という考え方は、現在の台湾海峡情勢においても引き継ぐことが可能であり、自国の原則を維持しつつ認識の差が衝突へ発展する経路を狭めることが地域の安定に資するとの見解を示している。

【要点】

 ・高市首相の「存立危機事態」に関する答弁以降、日中関係は外交、防衛、経済安全保障、人的交流など幅広い分野で悪化した。

 ・筆者は、その背景に台湾海峡をめぐる日中両国の安全保障認識の非対称性があると分析している。

 ・日本は台湾海峡情勢を物理的安全保障の問題として、中国は国家統一や「民族復興」と結び付く存在論的安全保障の問題として位置付けている。

 ・「新型軍国主義」という言説は、日本の安全保障政策全体を一定の認識枠組みで解釈する役割を果たしていると論じている。

 ・日本側による政策意図の説明は、受け手の認識枠組みによって異なる意味へ再解釈されるため、説明のみでは認識の差を解消できないとしている。

 ・中国語圏研究者の分析には多様性がある一方、日本の政策や発言を国家戦略全体の転換として結び付ける論考も存在すると紹介している。

 ・誤認や戦略的フレーミングによる再解釈が、誤算や衝突へ連鎖する可能性があると指摘している。

 ・政策目標は認識の一致ではなく、危機管理による誤認・誤算の抑制へ転換すべきであると提言している。
 
 ・冷戦期の米ソの危機管理制度、1972年の日中共同声明、2014年の日中関係改善に向けた話合いを、その考え方の先例として挙げている。

 ・日中関係の安定とは、認識の一致ではなく、相違を残したまま事故や誤算によるエスカレーションを防止する能力を維持することであると結論付けている。

【引用・参照・底本】

相違を前提とした安定:日中危機管理の再設計を nippon.com 2026..07.30
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d01251/?UserID=8c489902fe&utm_source=nippon.com+%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%BC%EF%BC%88%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%EF%BC%89&utm_campaign=8f289a0ca8-RSS_EMAIL_CAMPAIGN&utm_medium=email&utm_term=0_70ed3bb07f-8f289a0ca8-242447153#

米ドルの優位性:既存の金融制度とネットワーク効果によって維持2026-07-30 12:20

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【概要】

 米ドルが単なる国際通貨ではなく、国際金融システムを通じて機能する権力装置であるとの立場から、その歴史的役割と現在の変化を論じている。米ドル体制は依然として国際金融の中心である一方、その基盤は徐々に弱まりつつあるとされる。しかし、人民元などが直ちに米ドルに代替するとの見方は否定され、脱ドル化は単なる通貨の置き換えではなく、新たな制度的枠組みの構築が必要であると主張している。また、新しい国際通貨秩序は、金融の安定だけではなく、生産力の向上や開発、各国の主権的発展を支える仕組みであるべきと論じている。
  
【詳細】 

 歴史上、英ポンドが世界経済において自然な商業言語とみなされていた時代との比較を行い、20世紀半ば以降は米ドルが世界の主要な準備通貨および国際貿易の基軸通貨となったと述べる。その一方で、その「全能のドル」という認識は徐々に揺らぎ始めていると位置付ける。

 続いて、Tricontinentalのドシエを引用し、米ドルは決済手段にとどまらず、国際貿易や信用供与、政府への圧力、戦争資金の供給、グローバル・ノースとグローバル・サウスの階層構造を維持する制度であると説明する。そのため議論の焦点は、米ドルと人民元やユーロとの比較ではなく、支配ではなく発展に資する国際通貨秩序を構築できるかどうかにあるとしている。

 さらに近年の脱ドル化については、人民元建て決済、BRICS+による現地通貨貿易、中央銀行の金保有拡大などをもって脱ドル化の到来と断定することは適切ではないと述べる。一方で、金融制裁や外貨準備の凍結、決済システムからの排除などにより、米ドルが交換手段ではなく政治的な強制手段として用いられているとの認識が広がっていると説明する。

 また、米ドルが支配的地位を維持している理由について、米国の生産力や貿易量ではなく、長年にわたり構築された国際金融市場とネットワーク効果に求めている。米国経済の相対的比重が低下しても、準備通貨、商品価格、外国為替取引、貿易金融などで米ドルが中心的役割を果たしている点を指摘する。さらに、生産活動の中心がアジアへ移行しても、金融は依然としてウォール街を中心としており、この乖離は自動的には解消されないとしている。

 代替となる国際通貨制度については、人民元が米ドルを置き換える可能性は高くなく、また望ましくもないというPaulo Nogueira Batista Jr.の見解を紹介する。中国は資本移動の自由化による経済的不安定化を避ける必要があるためである。また、中国の研究者による人民元国際化の提案も、中国による通貨覇権を目指すものではないと説明する。

 さらに、ロシアのSPFS、中国のCIPS、東南アジア諸国の現地通貨決済制度、中央銀行間協定など、新たな決済インフラが拡大していることを紹介する。ただし、これらは現時点では米ドル体制を置き換えるものではなく、新たな金融秩序を形成する基盤と位置付けている。また、グローバル・サウス諸国が共同で保有する新たな準備資産の構想にも言及し、その役割は各国通貨を廃止することではなく、米ドル依存を低減することにあると述べる。

 最後に、問題は通貨制度そのものではなく開発の在り方にあると論じる。第二次世界大戦後の金融制度は資産保全を優先し、生産の転換や工業化を制約してきたため、新たな通貨秩序は構造転換、技術向上、食料主権、環境移行、雇用創出を支える能力によって評価されるべきであるとする。そのため、資本規制、開発銀行、決済制度、準備資産は、生産能力の拡大と共同繁栄、主権的発展および世界的不平等の縮小に資する制度として構築されるべきであると結論付ける。また、脱ドル化の現状については、その進展を過大評価するのではなく、米ドル体制がなお機能していること、同時に弱体化も進んでいることを示すことが本稿の目的であるとしている。

【要点】

 ・米ドルは国際通貨であるだけでなく、国際金融システムを通じた権力の制度として位置付けられている。

 ・近年の脱ドル化の動きは存在するが、それをもって米ドル体制の終焉とすることはできないと述べている。

 ・米ドルの優位性は米国の生産力ではなく、既存の金融制度とネットワーク効果によって維持されているとしている。

 ・人民元が米ドルを単純に代替するとの見方は否定され、新たな制度設計が必要であると論じている。

 ・新しい国際通貨秩序は、金融面だけでなく、生産力向上、技術発展、食料主権、環境移行、雇用、主権的発展を支える制度であるべきと主張している。

 ・脱ドル化を過大評価せず、米ドル体制の継続性とその弱体化の双方を示すことを目的としている。

【引用・参照・底本】

Vijay Prashad: The Long Goodbye to the US Dollar Consortium News 2026.07.25
https://consortiumnews.com/2026/07/25/vijay-prashad-the-long-goodbye-to-us-dollar/?eType=EmailBlastContent&eId=1bc6a58b-38e1-4a57-91ea-0a445e5fad53

トランプの台頭を長期的な制度変化の結果2026-07-30 13:27

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【概要】

 政治学者マリー・ゴッチョーク(Marie Gottschalk)の著書『Crime and No Punishment: Wealth, Power, and Violence in America』およびクリス・ヘッジズとの対談を紹介する内容である。記事は、ドナルド・トランプの台頭を単独の政治現象としてではなく、長年にわたる経済政策、企業犯罪への対応、刑事司法制度、金融危機後の政策、軍事化、警察活動、メディア構造など、多様な制度的・政治的要因が積み重なった結果として位置付けている。

 記事によれば、米国では一般市民に対する刑事処罰が拡大する一方で、企業や富裕層に対する刑事責任の追及は縮小しており、このような二重の司法構造が民主主義への信頼を損ない、現在の政治状況を形成したと論じられている。

 また、2008年の金融危機では、多数の国民が住宅や資産を失ったにもかかわらず、金融機関幹部の刑事責任はほとんど問われず、公的資金による救済が実施されたことが、政治的不信を拡大させた要因として示される。

 さらに、企業犯罪への規制緩和、軍事支出の拡大、警察活動の軍事化、地方を含む警察暴力、メディアの企業集中などが相互に関連しながら、国家暴力と民主主義の正統性に影響を与えているとの見解が紹介されている。

 対談では、これらの問題について、クリントン政権、ブッシュ政権、オバマ政権を含む超党派の政策選択、金融危機後の対応、地方社会への影響、警察制度、企業犯罪に対する不起訴合意制度、メディア構造、大学や言論空間の状況など、多方面から議論が展開される。
  
【詳細】 

 政治的分極化、犯罪問題、ドナルド・トランプの台頭を、それぞれ独立した現象ではなく、一つの制度的・経済的構造から生じた現象として説明する立場を紹介する。マリー・ゴッチョークは、米国では一般市民への刑事罰が強化される一方、企業犯罪や富裕層への責任追及は弱まり、その結果として「二つの司法制度」が形成されたと論じている。街頭犯罪、薬物犯罪、移民関連犯罪は積極的に処罰される一方、企業犯罪については、罰金などにより処理され、刑事責任が限定的であると説明される。

 この構造は、規制緩和、金融化、企業集中、軍事支出、超党派の政治判断などが数十年にわたり積み重なって形成されたものとされる。記事では、クリス・ヘッジズの「トランプは症状であり、病気そのものではない」との発言も紹介され、トランプ以前から制度的基盤が存在していたとの見方が示される。

 2008年の金融危機では、多数の国民が住宅、年金、貯蓄、医療保障などを失った一方、金融機関幹部の刑事訴追はほとんど行われなかったと説明される。政府は金融機関への救済を実施したが、その対応は政治的・道徳的失敗として位置付けられ、この経験が民主党・共和党双方への信頼低下につながったと述べられている。

 また、国民は本来注目すべき犯罪を誤って認識させられているとされる。街頭犯罪や暴力事件は繰り返し報道される一方、企業詐欺、環境破壊、金融犯罪、労働災害、公衆衛生への被害などは継続的な報道が少なく、社会的影響との均衡を欠いていると説明される。

 さらに、国外での軍事活動と国内警察活動との関連について議論される。軍事作戦で用いられた装備や訓練、退役軍人の警察への採用などを通じて、軍事的手法が国内警察へ還流していると説明され、この現象を「帝国のブローバック」と呼んでいる。

 警察暴力については、大都市だけではなく地方でも高い発生率があるとされる。地方の白人住民や先住民についても高い被害リスクが紹介される一方、多くが地方で発生するため報道されにくいと説明される。国家暴力は都市部に限定される問題ではないとの認識が示される。

 記事は、オバマ政権についても批判的見解を紹介する。金融危機後には金融機関改革や刑事責任追及を行う政治的機会が存在したが、不起訴合意や訴追猶予制度が拡大し、金融機関の大型化が進んだ結果、民主主義への信頼回復の機会を逸したと説明される。

 メディアについては、暴力事件や著名人報道に重点が置かれる一方、企業犯罪や規制の問題、企業による政治的影響力についての調査報道が相対的に少ないとされ、その報道構造が国民の問題認識へ影響すると論じられる。

 対談では、「社会的殺人(Social Murder)」の概念が紹介される。ゴッチョークは、経済的・政治的権力の集中が社会資源を減少させ、多くの人々を暴力や貧困、薬物問題などの危険へ追い込んでいると説明する。米国では殺人、自殺、薬物過剰摂取、銃暴力、投獄率などが他の西側諸国と比較して高いことが引用される。

 さらに、軍事予算が社会福祉への資源配分を制約していること、帝国的軍事活動が国内警察へ影響を及ぼすこと、地方社会では退役軍人のPTSDや依存症などの負担が大きいことも説明される。

 企業犯罪については、クリントン政権以降、企業犯罪に対する規制機関の弱体化や金融業界出身者の政府機関登用が進み、企業犯罪の捜査・起訴が弱まった一方、街頭犯罪への処罰は強化されたと論じられる。

 企業犯罪への対応として利用される「Deferred Prosecution Agreement(訴追猶予合意)」について、その運用経緯と問題点が説明される。本来は少年事件向け制度であったが、企業犯罪へ適用が拡大し、違反後も再度同制度が適用される例が紹介される。また、企業幹部個人ではなく法人への責任追及へ重点が移った点も指摘される。

 その後も対談では、大不況後の地方経済、企業・資本への信頼低下、地方部の大量収監、地方警察暴力、警察制度、警察組合、警察の秘密主義、非致死的警察暴力、産業空洞化と大量収監、オバマ政権下の金融政策、メディア集中、トランプ支持の背景、大学における言論状況などについて、質疑応答形式で議論が続けられる。

【要点】

 ・本稿は、マリー・ゴッチョークの著書とクリス・ヘッジズとの対談を紹介し、トランプの台頭を長期的な制度変化の結果として論じている。

 ・米国では一般市民への刑事処罰が強化される一方、企業犯罪への刑事責任追及は縮小しており、「二つの司法制度」が存在すると主張されている。

 ・2008年金融危機後の金融機関救済と幹部への刑事責任追及の欠如が、政治的不信の拡大につながったと説明される。

 ・軍事活動、警察活動、企業犯罪、規制緩和、メディア集中などは相互に関連する制度的要因として論じられる。

 ・対談では、金融危機後の政策、企業犯罪への不起訴合意制度、地方部の大量収監、警察暴力、警察制度、メディア、大学における言論状況など、多様なテーマが議論されている。

【引用・参照・底本】

Trump Was the Symptom, Corporate Impunity the Disease Consortium News 2026.07.27
https://consortiumnews.com/2026/07/27/trump-was-the-symptom-corporate-impunity-the-disease/

北朝鮮:憲法改正で核兵器国の地位確定→非核化可能性を事実上閉ざす2026-07-30 15:13

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【概要】

 2026年7月23日に発表されたハン・ヨンソプによる論文である。北朝鮮が憲法を改正し、「責任ある核兵器国」としての地位を国家の最高法規に明記したことを受け、その戦略的意味合いと米韓同盟が採るべき対抗措置を分析している。

 北朝鮮の核開発はもはや体制維持のための防御的手段ではなく、地域への強制力や戦闘力を持つ攻撃的な能力へと変質しており、従来の非核化を前提とした外交枠組みが事実上機能しなくなったと指摘する。この状況に対し、米韓同盟は核共有制度の導入、技術革新による防衛力強化、多角的な外交展開を柱とする戦略の抜本的な再構築が必要であると主張している。
  
【詳細】 

 北朝鮮の核戦略とその変化

 北朝鮮は憲法に核力の維持・発展を義務として定めることで、核兵器国としての地位を法的に確定させ、今後も核戦力を拡充・近代化する姿勢を明確にした。2026年7月現在、保有する核兵器は60~100基と推計され、年間7~18基程度の追加生産が可能とされ、生産傾向が続けば2035年までに保有数は大幅に増加する見通しである。また、短距離弾道ミサイルや巡航ミサイル、極超音速兵器など、運搬手段の多様化・高度化を急速に進め、韓国の主要軍事施設を標的とした戦術的核攻撃を想定した演習も常態化させている。
こうした動向から、北朝鮮は「4本柱の核戦略」を推進していると分析される。すなわち、大陸間弾道ミサイルで米国本土を威嚇し、米国が朝鮮半島の有事に介入することを困難にする一方、戦術核兵器を地域レベルの紛争や危機における強制力として活用する構図である。さらにロシアとの戦略的パートナーシップ条約や中国の地政学的判断も背景に、核使用の敷居が従来になく低下した「第三の核時代」が到来しつつあると警告する。

 戦略的影響

 北朝鮮の核関連法規と憲法改正は、以下の4つの点で地域の安全保障構造を根本的に変える。

 ・第一に、核開発を国家の正当性と一体のものとしたことで、自発的な核放棄や従来型の非核化は事実上不可能となった。

 ・第二に、先制的かつ自動的な核使用を認める規定を設け、韓国を敵対国家と位置づけたことで、核使用に対する心理的・政治的制約が取り払われ、核使用の敷居が大幅に下がった。

 ・第三に、核兵器の威嚇を盾に、局地的な境界侵犯やサイバー攻撃などの限定的な挑発行為を行い、米韓の通常戦力による対応を制限する「核の傘による後押し効果」が生じる。

 ・第四に、南北関係を二つの国家関係と再定義し、境界線を改めることで、西海諸島周辺などでの偶発的な衝突や挑発のリスクが高まった。

 韓国および米韓同盟の対抗措置

 韓国は核兵器を保有せず、米国の拡大抑止に依存しているが、朝鮮半島内の核戦力の不均衡は深刻な安全保障上の脅威となっている。これに対し、以下の5つの多角的な対抗措置を提言する。

 核の不均衡の是正と統合抑止体制の再設計

 米国が本土防衛を優先するあまり、朝鮮半島の戦術核への対応が手薄になる構造的な問題を解消するため、米国の弾道ミサイル原潜の常時派遣や戦術核兵器の再配備を含む運用面の選択肢を検討する。また、韓国の国防費をGDP比3.5%に引き上げるとともに、自主核武装を求める国内世論を外交的なカードとして活用し、米国により目に見える核の関与を引き出す。

 NATO型の核共有制度の設立と作戦統制権移管の連動

 米韓合同核共有委員会を設置し、NATOの制度を参考に、韓国の通常兵器運用能力と米国の核兵器を「二重管理」の下で連携させる。また、作戦統制権の移管は、核兵器の配備や共同運用規則の整備が完了した後に段階的に実施し、空白期間を生じさせない。

 AIと無人機技術による「4軸システム」の構築

 従来の「韓国型3軸システム」をAIと自律型無人機を核とする「撃滅ネットワーク」へと高度化する。人工衛星や各種情報収集資産を連携させ、移動式核兵器発射機などの標的をリアルタイムで探知し、攻撃までの時間を限りなくゼロに近づけると同時に、米国の戦略ネットワークとの完全なデータ共有と相互運用性を確保する。

 拙速な軍備管理交渉の拒否と核拡散防止条約規範の堅持

 非核化を放棄した北朝鮮との間で、核凍結と米軍撤退を交換するような一方的な合意は核拡散防止体制の根幹を揺るがすため、行うべきではない。国連制裁を維持・強化し、ロシアと北朝鮮の関係強化に対しては中国に対しても非核化への支持を維持するよう働きかける。

 「責任ある核兵器国」としての規範を求める外交の展開

 北朝鮮はインドのように核保有を事実上認められる道を模索しているとみられるが、国際社会は北朝鮮が国際的な基準を満たさない限り核兵器国としての地位を認めるべきではない。インドやインドネシア、ベトナムなどの国々と連携し、北朝鮮に対して「先制不使用宣言」「核分裂性物質生産停止条約への支持」「核関連技術の拡散禁止」などの国際的な義務を履行するよう要求する。

【要点】

 ・北朝鮮は憲法改正により核兵器国としての地位を法的に確定し、非核化の可能性を事実上閉ざした。

 ・核戦力は体制維持から攻撃的な強制力へと変質し、保有数と運搬手段の拡充、戦術的運用の常態化が進んでいる。

 ・核使用の敷居が低下し、通常戦力による挑発を核の威嚇で隠蔽する「核の後押し効果」や、境界紛争のリスクが高まっている。

 ・米韓同盟は、核共有制度の導入や米国の核戦力の明確な関与により、核の不均衡を是正する必要がある。

 ・AIや無人機技術による防衛システムの高度化、制裁の堅持、国際規範を根拠とした外交圧力を組み合わせ、総合的な抑止体制を構築すべきである。

【引用・参照・底本】

North Korea’s Nuclear Doctrine: Implications and Strategic Countermeasures for the US-ROK Alliance 38NORTH 2026.07.23
https://www.38north.org/2026/07/north-koreas-nuclear-doctrine-implications-and-strategic-countermeasures-for-the-us-rok-alliance/?utm_source=Stimson+Center&utm_campaign=894ff56e22-38NorthDigest_2026+0704&utm_medium=email&utm_term=0_-894ff56e22-46298933

北朝鮮と中国:友好協力相互援助条約の締結65周年を迎え2026-07-30 15:43

Dolaで作成
【概要】

 2026年7月、北朝鮮と中国は友好協力相互援助条約の締結65周年を迎え、6月の金正恩・習近平合意に基づき、朴泰成内閣総理の訪中、Wang Huning中国人民政治協商会議全国委員会主席の訪朝といった、近年では異例のハイレベルな相互往復を実施した。しかし、この活発な外交とは裏腹に、北朝鮮の対中国向けの公的なメッセージは抑制されたものにとどまった。また、記念日前後には、北朝鮮が核兵器の恒久性を改めて強調する発表を相次いで行った。これらの対比から、活発な外交や友好的な言葉だけで両国の関係の親密度や政策の一致度を判断することはできず、特に核問題においては、依然として隔たりが存在する可能性が示唆される。
  
【詳細】 

 条約記念における外交展開

 2025年9月の金正恩・習近平の北京会談以降、両国間では接触が活発化していた。2026年6月の両首脳会談で、条約65周年を際立たせることで合意したことを受け、7月10日から12日まで朴泰成が党・政府代表団を率いて訪中し、その帰国3日後の7月15日から17日にはWang Huningが同様の代表団を率いて訪朝した。

 核に関する事前のメッセージ

 記念期間に先立ち、北朝鮮は対中国向けとみられる核関連のメッセージを相次いで発した。

 ・7月9日、朴泰成の訪中発表と同日、敵対国研究所の課長が日韓の軍事協力を批判する談話を発表し、「核勢力の継続的な発展と核兵器国としての立場の堅持が、朝鮮半島と地域の平和を守る唯一の道」と主張した。この談話は、中国の安全保障上の懸念に呼応する内容でありながら、自国の核抑止力を地域平和の「保証」と位置づけ、朴泰成訪中の直前に発出された点が特徴である。

 ・翌7月10日には、金正恩が1年以上ぶりに党中央軍事委員会拡大会議を主宰し、核勢力の量的・質的拡大を進める方針を再確認した。この決定自体は6月の党総会で既に示されていたが、条約記念と訪中を前に行われた点は、2025年9月の金正恩訪中前に次世代大陸間弾道ミサイル関連施設を視察した際、2026年6月の習近平訪朝前に核関連の公的活動を行った際と同様のパターンである。

 こうした行動の背景には、中国が2023年7月以降、対北朝鮮政策の公式な表現から「非核化」の文言を外しているものの、その立場が根本的に変わったわけではないとの北朝鮮の認識がある。2026年5月のトランプ・習近平会談でも、中国側の発表には非核化の文言がなかったにもかかわらず、米国側が「非核化が共通の目標であると確認した」と発表したことに中国が異議を唱えなかったことが、北朝鮮の懸念を強め、核の恒久性を繰り返し強調する要因となっている。

 抑制された対中メッセージ

 一見して北朝鮮は、金正恩と習近平、両国外相間の親書の交換や、双方の訪問を国営メディアで報じるなど、記念行事に応じていた。しかし、以下のような抑制や言葉の選択の違いが見られた。

 ・7月11日の条約締結日、機関紙『労働新聞』は、軍部の腐敗問題に関する党・政府・軍合同会議の記事を1面に掲載し、記念関連の報道は2面、3面に回した。中国側の報道と比較して、記念行事への重点の置き方が低かった。

 ・金正恩の習近平宛親書や、各会談の報道では、「戦略的関係」「新たな章」といった従来の友好的な表現が用いられた一方、2021年には使用された「血で刻まれた友好」という表現が使われなかった。中国側が習近平の親書や朴泰成との会談で「血で結ばれた闘争的友好」と繰り返し述べたのと対照的である。

 ・会談内容の報道では、中国側の発表にあった経済・科学技術・人的交流の拡大や、中国の核心的利益への支持(台湾問題を含む)に関する記述が、北朝鮮側の報道では省略され、「両国の友好と団結を着実に強化するため積極的に努力する」といった一般的な表現にとどまった。また、Wang Huningとの会談でも、中国の内外政策への全面的支持を表明した2026年4月の王毅との会談と比べ、表現が簡略化された。

 こうした傾向は、7月1日の中国共産党創立105周年に際した金正恩の親書でも見られ、2021年の同様の親書と比べ、「闘争的友好」「生死を共にした戦友」といった踏み込んだ表現が用いられなかった。

 結論

 個々の事象を見れば編集上の選択や些細な相違とも考えられるが、全体としては、近年のハイレベル外交の頻度と、北朝鮮の公的なメッセージの抑制との間に明確な対比が存在する。このことは、両国関係の進展がない、あるいは悪化していることを直接意味するわけではないが、活発な外交や形式的な友好表明だけでは、両国の真の親密度や政策の一致度を過大評価してしまう可能性があることを示している。特に核問題については、中国が公的に非核化に言及しなくなった後も、北朝鮮が核の恒久性を繰り返し強調していることから、依然として緊張の要因が残されていると考えられる。今後の関係の推移を見極めるにあたっては、往来の頻度や定型的な友好言説だけでなく、北朝鮮が表現の省略、重点の置き方、優先順位の付け方を通じて発する、より微妙なメッセージにも注目する必要がある。

【要点】

 ・2026年7月、中朝友好協力相互援助条約締結65周年に際し、両国は近年では異例のハイレベル相互訪問を実施した。

 ・記念日前後、北朝鮮は核勢力の拡大と核の地位の恒久性を改めて表明するメッセージを相次いで発し、対中国向けの意思表示とみられる内容を含んでいた。

 ・北朝鮮の対中メッセージは、「血で刻まれた友好」といった伝統的な表現の使用を避け、中国の核心的利益への支持や具体的な協力分野に関する言及を控えるなど、抑制的だった。

 ・こうした対比は、活発な外交が両国の親密度や政策の一致度を過大に示している可能性を示唆し、特に核問題においては依然として隔たりが存在することをうかがわせる。

 ・両国関係を評価する際は、往来の頻度や定型的な友好言説だけでなく、微妙な表現の変化や優先順位の違いにも注目する必要がある。

【引用・参照・底本】

North Korea’s Subdued Signaling Toward China During Treaty Anniversary 38NORTH 2026.07.20
https://www.38north.org/2026/07/north-koreas-subdued-signaling-toward-china-during-treaty-anniversary/?utm_source=Stimson+Center&utm_campaign=894ff56e22-38NorthDigest_2026+0704&utm_medium=email&utm_term=0_-894ff56e22-46298933

競争は存在しても、共通の目標は「発展」であり、「置き換え」ではない2026-07-30 15:58

Dolaで作成
【概要】

 西側のメディアやシンクタンクが主張する「中国による圧力(China squeeze)」という見解を検証したものである。この見解は、中国の輸出が発展途上国の工業化の余地を奪っていると主張するが、本文では実際の貿易・投資の実態に基づき、中国の製造業の発展がむしろ各国の工業化を支える基盤となっていることを示し、「ゼロサムゲーム」として世界の製造業を捉える従来の認識の誤りを指摘している。
  
【詳細】 

 「中国による圧力」論は、世界の製造業を「一方が得れば他方が失う」ゼロサムの関係とみなすが、本文では、サプライチェーンは積み重ねられる「建築ブロック」のようなものであり、中国の製造業の成長はその一部の層をなしていると主張する。

 具体的な事実として、2012年から2024年にかけて、中国は繊維機械を300億ドル以上発展途上国へ輸出し、東南アジアや南アジアの複数の国々が繊維産業を強化し、生産・輸出拠点となることを支えてきた点が挙げられる。また、労働集約的な産業であっても、競争力を維持するには生産設備に組み込まれた技術が重要になっており、中国は技術進歩を機械や部品、工業製品として具現化することで、多くの発展途上国がより高度な製造能力を獲得し、競争力を高めることを可能にしてきた。一方、「圧力」論は、こうした産業を依然として「低コスト労働が基盤」とする古い認識で捉えており、技術の高度化や先進的な設備、生産効率の重要性を見落としている。

 さらに、中国と発展途上国の相互依存関係は三つの側面から示される。第一に、2025年の第1~3四半期において、中国の輸出の47.4%が中間財であり、各国の生産ネットワークに部品を供給していること。第二に、5月1日以降、外交関係のある全アフリカ諸国に対して無税輸入枠を拡大しており、世界第二位の消費市場として発展途上国の製品の重要な輸出先となっていること。第三に、対外直接投資残高が9年連続で世界の上位三位に位置し、製造業が主要な受入先の一つとなっており、資本や生産能力、産業技術を現地に伝えていることである。

 結論として、中国の製造業の拡大は他地域の工業化を犠牲にしたものではなく、各国が製造能力を構築する広範なプロセスの一部となっている。「圧力」論の背景には、「中国ショック2.0」の主張が説得力を失う中、発展途上国を自らの主張に引き込もうとする意図がある可能性が指摘され、発展途上国は自国の利益に基づいて判断する能力を持っているとされる。一部の分野で競争が存在するものの、それをゼロサムの競争として扱うことは誰の利益にもならず、「置き換え」ではなく「発展」が共通の利益であると結んでいる。

【要点】

 ・「中国による圧力」論は、世界の製造業をゼロサムゲームとして捉える古い認識に基づいている。

 ・中国は繊維機械などの輸出を通じ、発展途上国の産業基盤強化を支えている。

 ・労働集約的産業においても技術・設備の重要性が高まっており、中国は先進的な生産手段を提供する役割を果たしている。
 
 ・中間財の輸出、市場開放、対外投資の三つの側面で、中国は各国の生産活動を支える相互依存関係を構築している。

 ・現実には中国の製造業の発展は他地域の工業化と両立しており、「圧力」論は実態に即していない。

 ・一部の主張は発展途上国の利益を考慮したものではなく、各国は自国に適した道を選択できる。

 ・競争は存在しても、共通の目標は「発展」であり、「置き換え」ではない。

【引用・参照・底本】

GT Voice: Can Vietnam withstand pressure after US inspections of factories? GT 2026.07.29
https://www.globaltimes.cn/page/202607/1367125.shtml

台風を対象にドローン・スウォームによる立体的な観測を初めて実施2026-07-30 16:22

Dolaで作成
【概要】

 中国気象科学研究院の郭建平教授が率いる研究チームは、2026年7月、台風「ノウル」を対象に、中国で初めてドローンの編隊(スウォーム)を用いて、上陸から消滅に至るまでの全過程にわたる高頻度かつ多角的な観測実験を実施した。従来の衛星やレーダーなどでは把握が困難だった台風内部の低層大気境界層の詳細データを直接取得することで、台風の立体的な「CTスキャン」を実現したものである。本実験は「ClimateGambit」シリーズの一環として、GlobalTimesが同チームに独占インタビューして明らかにしたものである。
  
【詳細】 

 実験の背景と目的

 従来の台風観測は、気象衛星、地上レーダー、有人観測機、海洋ブイなどに依存してきたが、これらはいずれも台風を外部から捉えるものに限られ、特に台風の雲の下にある低層大気境界層については、連続的かつ微細な直接観測が長らく欠けていた。今回の実験は、ドローン・スウォームによる移動性の高い観測網を構築し、この空白領域のデータを取得することを目的として実施された。

 実験の経過

 2026年7月25日夕刻、広東省に接近中の台風「ノウル」に対し、深圳市大鵬半島にある中国気象局の実験拠点から観測を開始した。上陸直前の18時50分には現地の風速が毎秒17メートルに達する中、チームは各ドローンの飛行状況、編隊の維持、データ伝送をリアルタイムで監視し、約30分間の高リスクな観測を完遂した。

 技術の特徴と課題

 観測能力

 ドローンには高精度な気象センサーを搭載し、温度、湿度、風速、乱れなどのほか、飛行姿勢や消費電力なども同時に計測する。あらかじめ設定した高度・位置での多点同時観測が可能で、台風の下層大気の動的かつ総合的な状態を把握できる。

 過酷環境への対応

 機体の耐風・耐水・耐振動性を強化し、動力システムも改良して最大毎秒20メートルの風に耐えられるようにした。また、リアルタイムの風場センサーに基づいて飛行速度や高度を自動調整し、編隊内で情報を共有して衝突や編隊の崩壊を回避する自律的な制御を採用した。

 従来の取り組みとの違い

 中国では2018年から「海燕計画」として大型無人機による気象観測を進め、2020~2022年には海洋上の台風やチベット高原の環境観測を実施し、台風影響地域の予測精度を3%向上させてきた。今回は複数種類のドローンによる異種編隊を用い、定点かつ多層での同期観測を上陸前後の全期間で実施した点で、初の試みとなる。

 今後の展望

 実用化には高いハードウェア精度、編隊制御アルゴリズム、インフラ整備などが必要で、当面は広範な運用には至らない見通しである。一方、沿岸地域の台風観測にとどまらず、都市域の高解像度気象予報、海洋災害の早期警報、洋上風力発電所の資源評価、海洋漁場への気象支援など、多様な分野への応用が期待されている。技術の進歩とコストの低下に伴い、将来的には商業利用も可能になり、広範な産業向けの総合的な低層気象支援システムの構築に寄与すると見込まれている。

【要点】

 ・中国の研究チームが、台風を対象にドローン・スウォームによる立体的な観測を初めて実施した。

 ・従来の手段では困難だった台風内部の低層大気境界層の直接観測を実現した。

 ・機体の強化と自律的な編隊制御により、上陸直前の強風下でも安定した観測を遂行した。

 ・今後は台風観測以外にも多様な分野への応用が期待されるが、広範な実用化には時間を要する。

【引用・参照・底本】

Climate Gambit: Chinese research team reveals exclusively to GT how a swarm of drones can give a typhoon three-dimensional CT scan GT 2026.07.29
https://www.globaltimes.cn/page/202607/1367104.shtml

都市部失業率の低下、可処分所得の増加、工業生産・消費の拡大を確認2026-07-30 16:33

Dolaで作成
【概要】

 この報道は、2026年上半期の中国経済の実績をもとに、第15次五カ年計画(2026~2030年)のスタート状況を伝えたものである。中国国家統計局などの発表によると、上半期のGDPは前年比4.7%増の69.6兆元(約10.25兆米ドル)に達し、年間成長目標である4.5~5%の範囲内での推移を確保した。外部環境の不確実性が高まる中でも経済の耐性を示すと同時に、高付加価値製造業、デジタル経済、AI関連産業などを中心とした新たな成長牽引力の役割が顕著になりつつあるとしている。
  
【詳細】 

 経済全体の実績と安定性

 2026年上半期のGDP成長率4.7%は、主要経済圏の中でも高水準の部類に属する。この成長により生み出された追加の生産額は3.6兆元に上り、欧州の中規模国の年間GDPに相当する規模である。雇用面では、6月の都市部調査失業率が5%と、前月の5.1%から低下した。所得面では、上半期の一人当たり可処分所得が前年比5.2%増加した。また、工業生産額は同5.4%増、財貨・サービスの小売総額は同2.7%増となった。

 こうした安定した推移の背景には、二つの基盤がある。一つは産業サプライチェーンの耐性であり、外部からの様々な衝撃にもかかわらず、中国の「世界の工場」かつ「世界の市場」としての地位が強化された点である。もう一つはエネルギー安全保障であり、世界的なエネルギー供給の混乱が生じる中でも、供給確保と価格安定のための措置を徹底し、企業活動と国民生活を守った。これらの成果により、中国は世界経済の成長における安定器かつ主要な牽引役としての役割を果たしているとされる。

 新たな成長牽引力の台頭

 伝統的な成長モデルから新たな牽引力への転換が、現在の中国経済の最も顕著な特徴の一つとなっている。この変化は一部の産業に限られず、経済全体の広範な高度化を反映したものである。高付加価値製造業、デジタル経済、現代的サービス業を中心とした新たな成長牽引力が、上半期の経済成長に占める寄与度は4割を超えた。

 戦略的新興産業の分野では、上半期の集積回路の生産量が2798億個に達し、1日あたり平均15億個以上のペースで製造されている。またAI分野では、中国は技術革新において世界のトップ水準に位置しており、AI関連産業の年間成長率は30%を超えるとの見通しが示されている。こうした新興産業の発展は、短期的な要因によるものではなく、長年にわたる基幹技術のブレークスルー、技術と産業の融合、革新的企業の育成といった持続的な取り組みの成果である。

 2026年3月に発表された第15次五カ年計画の概要では、産業システムの近代化と新たな質の生産力の発展を重点分野として掲げている。新たな成長牽引力が勢いを増す中、複雑な外部環境にあっても経済の安定した推移を支える柱としての役割をますます強めていくとの見方が示されている。

【要点】

 ・2026年上半期の中国GDP成長率は4.7%で、年間目標の範囲内を維持し、主要経済国の中で高水準にある

 ・都市部失業率の低下、可処分所得の増加、工業生産・消費の拡大が確認された

 ・産業サプライチェーンの耐性とエネルギー供給の安定が経済の安定を支えている

 ・新たな成長牽引力が成長の4割以上を占め、AI関連産業などの戦略的分野が急速に発展している

 ・これらの成果が第15次五カ年計画の良好なスタートを切る基盤となっている

【引用・参照・底本】

China's economy starts new five-year plan with resilience, new growth drivers GT 2026.07.30
https://www.globaltimes.cn/page/202607/1367142.shtml