トランプの台頭を長期的な制度変化の結果2026-07-30 13:27

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【概要】

 政治学者マリー・ゴッチョーク(Marie Gottschalk)の著書『Crime and No Punishment: Wealth, Power, and Violence in America』およびクリス・ヘッジズとの対談を紹介する内容である。記事は、ドナルド・トランプの台頭を単独の政治現象としてではなく、長年にわたる経済政策、企業犯罪への対応、刑事司法制度、金融危機後の政策、軍事化、警察活動、メディア構造など、多様な制度的・政治的要因が積み重なった結果として位置付けている。

 記事によれば、米国では一般市民に対する刑事処罰が拡大する一方で、企業や富裕層に対する刑事責任の追及は縮小しており、このような二重の司法構造が民主主義への信頼を損ない、現在の政治状況を形成したと論じられている。

 また、2008年の金融危機では、多数の国民が住宅や資産を失ったにもかかわらず、金融機関幹部の刑事責任はほとんど問われず、公的資金による救済が実施されたことが、政治的不信を拡大させた要因として示される。

 さらに、企業犯罪への規制緩和、軍事支出の拡大、警察活動の軍事化、地方を含む警察暴力、メディアの企業集中などが相互に関連しながら、国家暴力と民主主義の正統性に影響を与えているとの見解が紹介されている。

 対談では、これらの問題について、クリントン政権、ブッシュ政権、オバマ政権を含む超党派の政策選択、金融危機後の対応、地方社会への影響、警察制度、企業犯罪に対する不起訴合意制度、メディア構造、大学や言論空間の状況など、多方面から議論が展開される。
  
【詳細】 

 政治的分極化、犯罪問題、ドナルド・トランプの台頭を、それぞれ独立した現象ではなく、一つの制度的・経済的構造から生じた現象として説明する立場を紹介する。マリー・ゴッチョークは、米国では一般市民への刑事罰が強化される一方、企業犯罪や富裕層への責任追及は弱まり、その結果として「二つの司法制度」が形成されたと論じている。街頭犯罪、薬物犯罪、移民関連犯罪は積極的に処罰される一方、企業犯罪については、罰金などにより処理され、刑事責任が限定的であると説明される。

 この構造は、規制緩和、金融化、企業集中、軍事支出、超党派の政治判断などが数十年にわたり積み重なって形成されたものとされる。記事では、クリス・ヘッジズの「トランプは症状であり、病気そのものではない」との発言も紹介され、トランプ以前から制度的基盤が存在していたとの見方が示される。

 2008年の金融危機では、多数の国民が住宅、年金、貯蓄、医療保障などを失った一方、金融機関幹部の刑事訴追はほとんど行われなかったと説明される。政府は金融機関への救済を実施したが、その対応は政治的・道徳的失敗として位置付けられ、この経験が民主党・共和党双方への信頼低下につながったと述べられている。

 また、国民は本来注目すべき犯罪を誤って認識させられているとされる。街頭犯罪や暴力事件は繰り返し報道される一方、企業詐欺、環境破壊、金融犯罪、労働災害、公衆衛生への被害などは継続的な報道が少なく、社会的影響との均衡を欠いていると説明される。

 さらに、国外での軍事活動と国内警察活動との関連について議論される。軍事作戦で用いられた装備や訓練、退役軍人の警察への採用などを通じて、軍事的手法が国内警察へ還流していると説明され、この現象を「帝国のブローバック」と呼んでいる。

 警察暴力については、大都市だけではなく地方でも高い発生率があるとされる。地方の白人住民や先住民についても高い被害リスクが紹介される一方、多くが地方で発生するため報道されにくいと説明される。国家暴力は都市部に限定される問題ではないとの認識が示される。

 記事は、オバマ政権についても批判的見解を紹介する。金融危機後には金融機関改革や刑事責任追及を行う政治的機会が存在したが、不起訴合意や訴追猶予制度が拡大し、金融機関の大型化が進んだ結果、民主主義への信頼回復の機会を逸したと説明される。

 メディアについては、暴力事件や著名人報道に重点が置かれる一方、企業犯罪や規制の問題、企業による政治的影響力についての調査報道が相対的に少ないとされ、その報道構造が国民の問題認識へ影響すると論じられる。

 対談では、「社会的殺人(Social Murder)」の概念が紹介される。ゴッチョークは、経済的・政治的権力の集中が社会資源を減少させ、多くの人々を暴力や貧困、薬物問題などの危険へ追い込んでいると説明する。米国では殺人、自殺、薬物過剰摂取、銃暴力、投獄率などが他の西側諸国と比較して高いことが引用される。

 さらに、軍事予算が社会福祉への資源配分を制約していること、帝国的軍事活動が国内警察へ影響を及ぼすこと、地方社会では退役軍人のPTSDや依存症などの負担が大きいことも説明される。

 企業犯罪については、クリントン政権以降、企業犯罪に対する規制機関の弱体化や金融業界出身者の政府機関登用が進み、企業犯罪の捜査・起訴が弱まった一方、街頭犯罪への処罰は強化されたと論じられる。

 企業犯罪への対応として利用される「Deferred Prosecution Agreement(訴追猶予合意)」について、その運用経緯と問題点が説明される。本来は少年事件向け制度であったが、企業犯罪へ適用が拡大し、違反後も再度同制度が適用される例が紹介される。また、企業幹部個人ではなく法人への責任追及へ重点が移った点も指摘される。

 その後も対談では、大不況後の地方経済、企業・資本への信頼低下、地方部の大量収監、地方警察暴力、警察制度、警察組合、警察の秘密主義、非致死的警察暴力、産業空洞化と大量収監、オバマ政権下の金融政策、メディア集中、トランプ支持の背景、大学における言論状況などについて、質疑応答形式で議論が続けられる。

【要点】

 ・本稿は、マリー・ゴッチョークの著書とクリス・ヘッジズとの対談を紹介し、トランプの台頭を長期的な制度変化の結果として論じている。

 ・米国では一般市民への刑事処罰が強化される一方、企業犯罪への刑事責任追及は縮小しており、「二つの司法制度」が存在すると主張されている。

 ・2008年金融危機後の金融機関救済と幹部への刑事責任追及の欠如が、政治的不信の拡大につながったと説明される。

 ・軍事活動、警察活動、企業犯罪、規制緩和、メディア集中などは相互に関連する制度的要因として論じられる。

 ・対談では、金融危機後の政策、企業犯罪への不起訴合意制度、地方部の大量収監、警察暴力、警察制度、メディア、大学における言論状況など、多様なテーマが議論されている。

【引用・参照・底本】

Trump Was the Symptom, Corporate Impunity the Disease Consortium News 2026.07.27
https://consortiumnews.com/2026/07/27/trump-was-the-symptom-corporate-impunity-the-disease/

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