実現は困難な日本の電源構成2025年01月14日 22:57

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【概要】

 日本政府は2040年までの電源構成について次期エネルギー基本計画の素案を発表し、その中で再生可能エネルギーの割合を40~50%に引き上げる方針を示している。この計画では、原子力発電を20%、火力発電を30~40%とし、火力発電においては水素やアンモニアといった二酸化炭素を排出しない燃料の利用を目指している。

 現行計画では2030年までに再生可能エネルギー36~38%、原子力20~22%、火力発電41%を目標としているが、2023年度末の時点で実際の割合は、再生可能エネルギーが26%、原子力が7.7%、火力発電が66%となっており、目標に対して大きく遅れが生じている。

 ロシア科学アカデミーのコンスタンチン・コルネエフ氏は、この計画の実現可能性に懐疑的な見解を示している。その理由として、脱炭素化や水素エネルギー社会、グリーン経済への移行には膨大な資金、資源、人材、技術が必要であるが、日本経済が低迷していることにより財政や資源面での制約が大きいことを挙げている。また、現在の経済発展のペースが鈍化しており、それを加速させる具体的な仕組みが見当たらないことも指摘している。

 さらに、原子力発電については、運転期間を60年超に延長し、既存原発の近代化や新世代原子炉の開発・運転を進める方針に、日本が原子力を維持したいという意向が強く反映されている。火力発電に関しては、石炭火力発電所が廃止され、ガス火力発電所の割合が増加する見通しであり、2030年から2035年にかけてすべての石炭火力発電所が寿命を迎える可能性がある。

 再生可能エネルギーについては、水力、風力、太陽光発電のいずれも設備利用率に限界があり、エネルギー効率が高いとは言えない理由として、発電所が電力消費地域から遠いことや、水、風、太陽が変動しやすく不安定であることが挙げられている。

 最後に、エネルギー価格についてコルネエフ氏は、地政学的状況が市場原理を超えて大きく影響しているため、価格の予測は不可能であると述べている。価格計算の方法は過去の事例や将来の変化の可能性に基づいているが、現状のような不安定な情勢下では机上の計算を頼ることはできないとしている。

【詳細】

 日本政府が発表した次期エネルギー基本計画素案は、2040年までに再生可能エネルギーの割合を40~50%に引き上げる目標を掲げている。この計画では、原子力発電を20%、火力発電を30~40%とする方針であり、特に火力発電については脱炭素化を目指し、水素やアンモニアといった二酸化炭素を排出しない燃料を活用することが明記されている。

 一方で、2030年までの電源構成を定めた現行のエネルギー計画では、再生可能エネルギー36~38%、原子力20~22%、火力発電41%を目標としているが、2023年度末時点での実績は再生可能エネルギーが26%、原子力が7.7%、火力発電が66%となっており、大きな乖離がある。この状況は、原子力発電所の再稼働が遅れていることや、太陽光パネルの設置場所が不足していることが主な要因となっている。

 ロシア科学アカデミーの日本研究センター上級研究員であるコンスタンチン・コルネエフ氏は、この計画の実現性に対し懐疑的である。その理由として、脱炭素化や水素エネルギー社会への移行には膨大な資金、資源、人材、技術が必要であるが、日本の経済が停滞していることがそれを阻害している点を挙げている。彼によれば、経済発展のペースが鈍化している現在、これを加速させるための仕組みが不足しており、国内外の政治的な不安定性も計画の実現を困難にしている。

 原子力発電の現状と課題

 日本政府は、原子力発電所の運転期間を60年超に延長する方針を示している。これに加え、既存の原発を近代化し、新世代原子炉を開発して運転する計画を進めている。この方針は、日本が引き続き原子力をエネルギー政策の重要な柱としたい意図を明確に示している。ただし、原発の再稼働は地元の合意形成や安全審査の遅延などの課題が多く、運転期間の延長や新型原子炉の導入が実現するかは依然として不透明である。

 火力発電の転換

 火力発電については、特に石炭火力発電所の廃止が進められており、2030年から2035年の間にすべての石炭火力発電所が寿命を迎える可能性がある。一方で、ガス火力発電所の割合が増加する見通しであり、これによりエネルギー供給の安定性を確保する計画である。しかしながら、水素やアンモニアを燃料とする技術の商業化には依然として技術的、経済的な課題が残されている。

 再生可能エネルギーの課題

 再生可能エネルギーについては、水力、風力、太陽光いずれの発電方式においても、設備利用率が低く、エネルギー効率に限界があるとされている。コルネエフ氏は、これらの発電所が電力消費地域から遠いことや、自然エネルギー源である水、風、太陽が変動しやすく安定しない点を課題として挙げている。また、大規模な設備投資が必要であるものの、適切な資金の確保が難しいことも実現を困難にしている。

 地政学的要因によるエネルギー価格の不確実性

 エネルギー価格について、コルネエフ氏は地政学的要因が市場原理を超えて強く影響していると指摘している。現在の世界情勢の不安定さにより、エネルギー価格が市場メカニズムではなく、政治的要因や国際関係によって左右されている。そのため、価格予測を行うことは困難であり、過去のデータや理論的な計算が現実の状況に適用できない場合が多いと述べている。

 以上のように、日本政府が掲げるエネルギー計画は、技術的な可能性を見据えた意欲的な目標を持ちながらも、経済的、社会的、地政学的な制約によって実現が難しい課題を抱えていることが明らかである。

【要点】
 
 日本の次期エネルギー基本計画に関するポイント

 計画の概要

 1.2040年までの目標

 ・再生可能エネルギー:40~50%
 ・原子力発電:20%
 ・火力発電:30~40%(水素・アンモニアを燃料として活用)

 2.2030年までの現行目標

 ・再生可能エネルギー:36~38%
 ・原子力発電:20~22%
 ・火力発電:41%

 3.2023年度末の実績

 ・再生可能エネルギー:26%
 ・原子力発電:7.7%
 ・火力発電:66%

 4.原子力発電

 ・運転期間を60年超に延長。
 ・既存原発の近代化と新世代原子炉の開発を計画。
 ・再稼働の遅れや地元合意形成の課題が残る。

 5.火力発電

 ・石炭火力発電所は2030~2035年に寿命を迎える見通しで廃止予定。
 ・ガス火力発電所の割合が増加。
 ・水素・アンモニア燃料の技術開発には課題が多い。

 6.再生可能エネルギー

 ・水力、風力、太陽光いずれも設備利用率や効率に限界。
 ・電力消費地域から遠い立地や、自然エネルギー源の不安定性が課題。
 ・大規模投資の資金確保が困難。

 地政学的要因とエネルギー価格

 ・エネルギー価格は地政学的状況に強く影響され、予測が困難。
 ・市場原理ではなく、政治的要因が価格を左右している。

 総評

 ・技術的には進展しているが、経済停滞や政治的不安定性により計画実現は部分的に留まる可能性が高い。
 ・資金、人材、リソース不足が最大の課題。

【引用・参照・底本】

【視点】日本の電源構成は再生エネルギー割合が大幅増 でも実現は困難 sputnik 日本 2024.12.18
https://sputniknews.jp/20241218/19426679.html

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