イスラエル軍とマイクロソフト社が深い関係2025年01月28日 08:47

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【閑話 完】

 マイクロソフトの技術者がイスラエル軍と密接に連携していることは、明らかになった重要な問題である。この連携は、イスラエル軍がMicrosoftのクラウドサービスやAI技術に依存しているという形で進展しており、その内容は以下のように詳細に説明される。

 1. クラウドサービスとAI技術の提供

 ・マイクロソフトは、イスラエル軍に対して自社のクラウドコンピューティングプラットフォーム「Azure」を提供している。これにより、軍はデータの保存や分析、作戦活動に必要な膨大な情報を処理することができる。
 ・特に、OpenAIのGPT-4などの高度なAI技術が軍に提供され、これにより、データ解析や翻訳、文書分析などの機能が強化されている。

 2. マイクロソフト技術者の軍内への埋め込み

 ・マイクロソフトは、イスラエル軍のさまざまな部隊に技術者を派遣して、システムやツールの開発を支援している。この「延長されたエンジニアリングサービス」によって、マイクロソフトの専門家は軍のチームと密接に連携し、技術的な支援を行っている。
 ・例として、軍のインテリジェンス部隊であるユニット8200では、マイクロソフトのエンジニアがシステム開発や監視ツールの構築に関与しており、その関係は非常に深い。

 3. 運用上の依存度の増加

 ・イスラエル軍は、2023年10月の戦闘開始以降、マイクロソフトのクラウドサービスの依存度を急速に高めており、AI技術の使用量が飛躍的に増加している。
 ・AIツールやクラウドサービスは、兵士たちが膨大な情報をより効率的に処理し、作戦の精度を向上させるために使用されていると報告されている。

 4. 機密性とデータ管理

 ・イスラエル軍は、軍事機密を管理するために専用の「隔離された」ネットワークを使用していると主張しているが、調査によれば、実際には一部の情報が民間のクラウドサービスに保存されている事例がある。これには、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureが関与しており、情報管理の面での懸念が提起されている。

 5. 戦争活動と技術の連携

 ・マイクロソフトが提供する技術が、戦争活動にどのように関与しているのかについての議論が続いており、特にAIツールの使用が戦争犯罪に関連しているのではないかという懸念も生じている。
 ・マイクロソフトが提供する技術が、戦争の遂行を効率化し、監視活動を強化するために使われているという事実は、国際的な倫理的問題を引き起こしている。

 6. マイクロソフトとOpenAIの関係

 ・マイクロソフトは、OpenAIに対して数十億ドルを投資しており、その結果、軍や国家安全保障機関へのAI技術の提供が進んでいる。OpenAIは、以前は「軍事活動での使用」を禁止していたが、2024年1月にはその制限を撤回し、軍事機関との協力を拡大した。
 ・これにより、AI技術が戦争や情報戦において重要な役割を果たす可能性が高まっている。

 7. 技術者の役割と倫理的問題

 ・マイクロソフトの技術者がイスラエル軍内で働くことで、彼らの役割が単なる技術支援にとどまらず、実際に軍事作戦や監視活動の実施に関与している可能性がある。この点について、技術者や企業がどのように倫理的な責任を果たすべきかが問われている。

 まとめ

 マイクロソフトとその技術者がイスラエル軍と密接に連携している事実は、クラウドサービスやAI技術が現代の戦争においてどのような役割を果たしているか、また企業と政府の関係がどのように倫理的な問題を引き起こすかを浮き彫りにしている。これにより、技術提供者やその技術がどのように使われるべきかについて、より厳格な監視と議論が必要とされている。

【桃源寸評】

【概要】

 漏洩した文書によると、イスラエル軍とマイクロソフト社が深い関係を持ち、2023年10月7日以降、同軍はマイクロソフトおよびその提携企業であるOpenAIのクラウドやAIサービスに大きく依存していることが明らかになった。この情報は、イスラエル国防省の商業記録およびマイクロソフトのイスラエル支部からの文書に基づくものである。

 文書によれば、イスラエル軍の多くの部隊がマイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」のサービスを購入しており、その対象には空軍、地上部隊、海軍、さらには情報機関のエリート部隊「8200部隊」も含まれている。また、イスラエル軍はOpenAIのGPT-4モデルにも広範なアクセス権を持ち、翻訳、音声からテキストへの変換、自動文書解析などのAIツールを利用しているとされている。

 さらに、Azureのクラウドサービスは「人口登録およびパレスチナ人の移動を管理するシステム(通称:Rolling Stone)」の維持にも使用されており、これにはマイクロソフトの従業員が直接関与していることが示されている。特に、軍事インテリジェンス局の特殊作戦部門である「81部隊」は、監視機器の製造や運用のためにAzureのクラウドサービスを活用している。

 2023年10月の戦争開始後、軍によるAIサービスの月間消費量は急増し、AIツールの利用は戦闘および情報収集活動に直接関連している可能性が高い。軍関係者によると、マイクロソフトのエンジニアはイスラエル軍部隊と密接に協力し、技術的なサポートを提供している。2023年10月から2024年6月の間、国防省はマイクロソフトに約1,000万ドルを支払い、19,000時間に及ぶエンジニアリング支援を受けた。

 また、2024年1月にはOpenAIがサービス利用規約から「軍事および戦争活動への利用禁止」という条項を削除し、軍や情報機関との連携を強化する姿勢を明確にした。この動きにより、イスラエル軍のAIツール利用が一層進んだと見られている。

 イスラエル軍のデータ処理担当部門の責任者は、クラウドサービスを活用することで「大容量のデータ処理」や「AIによるオペレーション能力の向上」が可能になったと述べており、クラウドプロバイダーの技術が戦時中の作戦遂行において重要な役割を果たしていることを認めている。

【詳細】
 
 イスラエル軍とマイクロソフト、そしてOpenAIとの提携に関する詳細な内容について、さらに掘り下げて説明する。

 マイクロソフトとの連携

 イスラエル軍は、主にマイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」を利用しており、この利用範囲は単なるデータストレージにとどまらず、軍事作戦や情報処理における基盤技術として活用されている。以下の具体的なポイントが注目される:

 1.Azureクラウドの用途

 ・イスラエル軍はAzureを通じて、部隊間の通信を統合・効率化している。また、空軍、地上部隊、海軍、情報機関(8200部隊)が、それぞれ独自の運用目的に応じてクラウドを使用している。
 ・「人口登録およびパレスチナ人の移動を管理するシステム(通称:Rolling Stone)」にAzureが直接関与している。このシステムは、パレスチナ自治区における人々の動向を監視し、移動制限を行うものであり、クラウドの強力なデータ処理能力がその運用を支えている。

 2.特別部隊の利用

 ・情報機関「8200部隊」はサイバー戦および信号情報収集(SIGINT)の専門部隊であり、監視データの収集と解析をAzureクラウドで行っている。
・「81部隊」は高度な監視機器や武器システムの開発を行う部隊であり、Azureを活用してリアルタイムのデータ共有や機械学習アルゴリズムを運用している。

 3.エンジニアリング支援

 ・マイクロソフトの技術者がイスラエル軍と密接に連携している。これには、イスラエル国内に駐在するエンジニアによるオンサイト支援が含まれる。2023年10月から2024年6月の間、マイクロソフトは19,000時間以上の技術支援を提供し、クラウドインフラやAIサービスの導入・運用を支援した。

 OpenAIの技術活用

 イスラエル軍はOpenAIのAI技術、特にGPT-4モデルを活用している。以下のような多岐にわたる用途が確認されている。

 1.言語処理と翻訳

 ・パレスチナ地域や他国から収集される多言語の通信内容をリアルタイムで翻訳し、軍の作戦や諜報活動を支援している。これには、アラビア語からヘブライ語への翻訳が含まれる。
音声データの解析

 2.音声からテキストへの変換技術を利用して、電話や無線通信の会話を自動で文字化し、重要な情報を即座に分析する。

 3.自動解析と要約

 ・大量の文書やレポートをGPT-4を用いて解析し、重要な情報を抽出・要約することで意思決定の迅速化を図っている。

 戦争による利用の急増

 2023年10月7日の戦争勃発後、イスラエル軍によるクラウドサービスやAIツールの利用は急激に増加した。特に以下の点が指摘されている:

 1.データ処理能力の増強

 ・戦争に伴う膨大なデータの収集・処理に対応するため、Azureのリソースを増強した。これにより、戦闘地域の監視や敵の動向をリアルタイムで把握する能力が向上した。

 2.AIツールの運用強化

 ・OpenAIのGPTモデルを活用した情報収集と分析の頻度が大幅に増加。これには、戦闘地域における状況報告の作成や、敵勢力の意図を推測するための分析が含まれている。

 3.クラウド依存の深化

 ・マイクロソフトのクラウドインフラは、データのセキュリティと可用性を確保する役割を果たしており、戦時中の作戦計画や指揮命令に不可欠な基盤となっている。

 OpenAIのポリシー変更

 2024年1月、OpenAIはその利用規約から「軍事および戦争活動への利用禁止」という条項を削除した。これにより、軍事機関や情報機関がAI技術を直接利用する道が開かれた。この決定は、以下の影響をもたらした:

 1.イスラエル軍のAI活用促進

 ・法的制約が緩和されたことで、イスラエル軍はGPTモデルの活用範囲をさらに拡大することが可能となった。

 2.倫理的議論の活発化

 ・OpenAIの方針転換に対し、AIの軍事利用に関する倫理的な懸念が国際的に高まっている。特に、AIが戦闘行為や監視活動にどのように影響を与えるかについて注目されている。

 イスラエル軍の評価

 イスラエル軍のデータ処理担当者は、これらの技術の導入により、大容量データの処理能力が飛躍的に向上し、意思決定の迅速化と精度向上が実現したと評価している。クラウドサービスとAIツールの統合が、戦争遂行能力の向上に不可欠であることを強調している。

 結論

 イスラエル軍がマイクロソフトとOpenAIの技術を積極的に活用している現状は、クラウドやAI技術が現代の戦争において重要な役割を果たしていることを示している。一方で、これらの技術利用に伴う倫理的課題や、民間企業が戦争に直接関与する影響について、国際社会での議論が求められる状況である。 

【要点】
 
 マイクロソフトとの連携

 1.クラウド基盤(Azure)利用

 ・部隊間の通信統合や効率化に活用。
 ・パレスチナ人の移動を管理するシステム「Rolling Stone」に使用。

 2.特別部隊での利用

 ・「8200部隊」がサイバー戦や信号情報収集(SIGINT)でAzureを活用。
 ・「81部隊」が監視機器や武器システム開発でリアルタイムデータ共有を利用。

 3.エンジニアリング支援

 ・マイクロソフトの技術者が直接支援し、19,000時間以上の技術協力を提供。
 OpenAIの技術活用

 1.言語処理と翻訳

 ・多言語の通信内容をリアルタイムで翻訳(アラビア語からヘブライ語など)。

 2.音声データ解析

 ・音声をテキスト化し、重要な会話を自動分析。

 3.自動解析と要約

 ・文書やレポートから重要情報を抽出・要約し、迅速な意思決定を支援。

 戦争による利用の急増(2023年10月7日以降)

 1.データ処理能力の増強

 ・戦闘地域の監視や敵の動向把握にAzureを活用。

 2.AIツールの運用強化

 ・戦闘地域の状況報告作成や敵勢力分析にGPTモデルを使用。

 3.クラウド依存の深化

 ・作戦計画や指揮命令に不可欠な基盤としてクラウドを利用。

 OpenAIのポリシー変更(2024年1月)

 1.利用規約変更

 ・「軍事および戦争活動への利用禁止」の条項を削除。

 2.影響

 ・イスラエル軍がAI技術をさらに活用可能に。
 ・AIの軍事利用に関する国際的な倫理議論が活発化。

 技術導入の評価

 1.処理能力の向上

 ・大容量データの解析が迅速かつ高精度化。

 2.意思決定の効率化

 ・リアルタイム情報を基にした戦略構築が強化。

 結論

 1.技術の重要性

 ・クラウドとAIは現代戦争において不可欠。

 2.倫理的課題

 ・民間技術の軍事利用に伴う国際的な議論が必要。

【参考】

 ☞ Azureとは

 Azure(アジュール)は、マイクロソフトが提供するクラウドコンピューティングプラットフォームである。企業や政府機関が必要とする計算リソースやストレージ、ネットワーク機能、AIサービスなどをインターネット経由で提供するサービス群である。

 Azureの主な特徴

 1.スケーラビリティ

 ・必要に応じてコンピューティングリソースを増減できる柔軟性を持つ。
 ・小規模プロジェクトから大規模データセンターまで対応可能。

 2.グローバル展開

 ・世界中にデータセンターが存在し、地理的な制限なくサービスを利用可能。
 ・90を超えるリージョンで提供。

 3.多機能性

 ・仮想マシン、データベース、AIツール、IoT(モノのインターネット)、データ解析など幅広い機能を持つ。

 4.セキュリティと信頼性

 ・強力なセキュリティ基準を遵守。
 ・暗号化やアクセス管理機能が標準装備。
 ・99.99%以上の稼働率を保証。

 5.ハイブリッド環境対応

 ・既存のオンプレミスシステム(社内サーバー)とクラウドを統合して利用可能。

 6.AI・機械学習の強み

 ・OpenAIモデルやCognitive Servicesを活用し、自然言語処理や画像認識を提供。

 Azureの具体的な利用例

 1.ビジネス向け

 ・データのバックアップ・リカバリー。
 ・Webアプリケーションのホスティング。
 ・データ解析やビッグデータ処理。

 2.政府機関向け

 ・市民サービスのオンライン化。
 ・国防や治安維持のためのリアルタイムデータ処理。

 3.軍事分野(例:イスラエル軍)

 ・戦場でのリアルタイム通信・データ共有。
 ・敵の動向を監視するためのドローンデータ管理。
 ・AIを活用した分析で迅速な意思決定を支援。

 4.研究分野

 ・医療データの解析(ゲノム研究など)。
 ・気象モデルや災害シミュレーション。

 Azureの競合

 1.Amazon Web Services(AWS)
 
 ・クラウド市場のトップシェアを誇る。

 2.Google Cloud Platform(GCP)

 ・AI分野に強みを持つ。

 3.IBM Cloud、Oracle Cloud

 ・特定業界向けソリューションを提供。

 Azureの課題と懸念

 1.コスト

 ・サービスの利用状況によって費用が急増する可能性。

 2.セキュリティリスク

 ・クラウドに依存することでサイバー攻撃やデータ漏洩のリスクが発生。

 3.倫理問題

 ・軍事利用や監視技術の活用が人権侵害を引き起こす懸念。

 Azureはクラウドコンピューティングのリーダーの1つとして、さまざまな分野で利用されており、特に軍事やAI分野での応用が拡大している。しかし、倫理的側面や利用コストに関する課題が引き続き注目されている。

 ☞ OpenAIは、人工知能(AI)の研究と開発を行う企業で、主に自然言語処理技術を中心にさまざまなAIモデルを開発していることで知られている。以下にOpenAIについての重要な点を詳述する。

1. 設立と目的

 ・OpenAIは、2015年にイーロン・マスク、サム・アルトマン、グレッグ・ブロックマン、イリヤ・サツケヴァー、ジョン・シュルマンなどの著名な技術者や企業家によって設立された。
 ・その目的は、「安全で有益な人工知能を人類全体に提供する」ことにあり、特にAI技術の悪用を防ぐために、開発をオープンで透明性のある形で行うことを重視している。

2. 主な技術と製品

 ・GPTシリーズ(Generative Pre-trained Transformer)は、OpenAIの代表的な技術であり、自然言語処理において革命的な進展を遂げた。特にGPT-3とその後継モデルであるGPT-4は、非常に高い精度で文章を生成する能力を持っており、テキスト生成や翻訳、要約、質問応答などの幅広い用途に活用されている。
 ・DALL·E:画像生成AIで、テキストによる指示に基づいて画像を生成することができる。この技術はクリエイティブな分野で特に注目されている。
 ・Codex:プログラミングコードの自動生成を行うAIで、開発者が求めるコードを理解し、生成することができる。これにより、プログラミングの効率化が進んでいる。

 3. 商業化とパートナーシップ

 ・OpenAIは、初期には非営利団体としてスタートしたが、その後商業化を進め、OpenAI LPという形態に移行した。この変更は、AI開発のために多額の資金を集める必要があったためである。
 ・マイクロソフトとの強力なパートナーシップを結び、Microsoft AzureでOpenAIの技術を提供するほか、マイクロソフト製品にも統合されている。たとえば、WordやExcelに組み込まれたAI機能がその一例である。

 4. 倫理と安全性

 ・OpenAIは、AIが人類に与える影響に対して責任を持ち、倫理的な利用を促進することを強く主張している。AIが悪用されることを避けるため、特に深層偽造(ディープフェイク)や自動化された誤情報の拡散を防ぐために技術の安全性を重視している。
 ・また、AIによる仕事の自動化が進む中で、失業や社会的不平等の問題にどう対処するかも重要な課題となっている。

 5. AIの将来と社会的影響

 ・OpenAIは、AGI(汎用人工知能)を目指しており、その実現に向けた研究を行っている。AGIは、特定のタスクに特化したAIではなく、人間と同様にさまざまなタスクをこなせるAIを指す。
 ・この目標が実現すれば、AIは医療、教育、エネルギー、製造業などさまざまな分野で大きな革新をもたらす可能性がある。しかし、その実現には倫理的、技術的、社会的な課題が伴い、OpenAIはその研究に対する慎重なアプローチを取っている。

 6. 社会との対話

 ・OpenAIは、自社の技術が社会に与える影響について広く議論し、理解を得るために積極的に取り組んでいる。特に、AIの進化に関する公開討論や研究発表を行うことで、透明性を高め、一般の人々や専門家との対話を促進している。
 ・さらに、AIに対する規制の枠組みが必要であるという主張をし、政府機関や学術機関と協力してAIに関する政策提言を行っている。

 7. AIに対する懸念と批判

 ・AI技術の進化は急速であるが、その可能性とともに懸念も高まっている。AIが人間の職業を奪うことへの不安や、AIを悪用した監視社会の懸念、さらにはAIによる偏見や不正確な判断が社会に与える影響についての議論が続いている。
 ・OpenAIは、これらの問題に取り組むために技術開発の過程で倫理的なガイドラインを設けているものの、AIの無制限な拡張がもたらすリスクについては未解決のままである。

 結論

 OpenAIは、人工知能技術の最前線に立つ企業であり、その技術はさまざまな分野で革新をもたらしている。一方で、AIが引き起こす社会的影響や倫理的問題についても十分な議論と対策が求められている。技術の発展に伴い、OpenAIがどのようにこれらの課題に対処していくかが今後の鍵となる。

 ☞ OpenAIが「軍事活動での使用」を禁止していた方針を撤回し、軍事機関との協力を拡大した経緯は、複雑な政治的、技術的、経済的背景と絡み合っている。以下、その経緯を詳しく説明する。

 1. OpenAIの設立と初期方針

 ・OpenAIは、設立当初からAI技術の倫理的使用に関する強い姿勢を示しており、その一環として「軍事活動での使用」や「兵器の開発」にAI技術を使用することを禁止する方針を掲げていた。この方針は、AIが悪用されるリスクを避けるために重要とされており、AI技術の開発においてもその安全性を重視していた。
 ・特にAIの可能性が高まりつつある時期に、軍事用途でのAI開発が進むことは深刻な倫理的問題を引き起こす可能性があるため、OpenAIは「武力行使を助けるためのAI開発」を回避するという明確なスタンスを採っていた。

 2. 軍事利用の禁止

 ・OpenAIの設立者たちは、AIが「軍事活動で使用されること」が、人間の生命を危険にさらすだけでなく、AI技術の発展における倫理的問題を引き起こすと懸念していた。例えば、AIが自律的に兵器の運用や判断を行うような事態を避けるため、軍事機関との関わりを避けるべきだという立場を取っていた。
 ・また、軍事利用の制限には、AI技術が軍事的競争の一環として悪用されることへの懸念も含まれていた。特に、AIを兵器の運用に使用することが国際的な紛争を激化させたり、新たな形態の戦争を引き起こしたりするリスクが高いと考えられていた。

 3. 2024年1月の方針転換

 ・2024年1月、OpenAIはこれまでの方針を撤回し、「軍事活動での使用」を禁じていた制限を解除した。この決定は、複数の要因によって引き起こされたと考えられている。

 3.1 国際的および国内的な圧力

 AI技術が急速に発展する中で、国際的な競争が激化していた。特に、中国やロシアなどが軍事目的でAI技術を積極的に開発している状況において、アメリカのAI企業も軍事部門との協力を強化する必要があるとの圧力が高まっていた。特に、AIが軍事的な優位性を確保するための重要な技術となりつつあり、OpenAIとしても「世界的な競争」に遅れを取らないようにするための対応が求められた。
 ・さらに、アメリカ政府や防衛機関からの協力要請も強まり、特に国防総省(DoD)や他の政府機関がAI技術を軍事戦略や武器開発に取り入れることを望んでいた。OpenAIがそのリクエストに応じる形で、軍事機関との協力を拡大することになった。
 
 3.2 商業的および戦略的要因

 ・商業的な観点からも、AI技術の軍事利用が収益性を高める可能性があり、企業としての利益を確保するために軍事分野との連携を強化する必要があった。特に、AI技術を軍事産業に導入することによって、OpenAIはより多くの投資や契約を獲得できる可能性がある。
 ・また、マイクロソフトとの提携が深まる中で、Microsoftがすでに軍事関連の事業を展開しており、AI技術を軍事用途に利用する方針を支持していることが影響を与えたと考えられている。マイクロソフトは、OpenAIとの協力を通じて、同様に軍事分野への技術提供を強化したいという意向があった。

 3.3 技術の進化と誤解を避けるための明確化

 ・AI技術が進化するにつれて、その利用範囲はますます多岐にわたるようになった。特に自律的な兵器システムや戦略的な判断支援を行うAIの開発が進み、OpenAIはその進化に対応する形で、技術的なリスクを最小限に抑えるためのルールを設けることになった。
 ・方針転換に際して、OpenAIは「軍事活動における利用」に関しても、倫理的な枠組みを設け、技術の使用を制限することで、悪用や過剰な軍事化を防ぐための指針を示すことを強調した。

 4. 今後の展開

 ・OpenAIは、軍事利用に関して新たに設けたガイドラインに基づき、AI技術の利用を管理し、悪用されないようにすることを目指している。今後も、AI技術が軍事分野で使用される可能性は増えていくが、その運用が倫理的に行われるための監視が重要であるとされている。
 ・ただし、AIの軍事利用に対する懸念は依然として残っており、AIが戦争においてどのように使われるか、またその結果として生じる社会的な影響については、引き続き議論が続くと考えられている。

 結論

 OpenAIは、元々「軍事活動での使用」を禁止していたが、国際的な競争、商業的圧力、そして技術的な進展により、その方針を転換した。今後は、軍事機関との協力を拡大しつつも、倫理的枠組みを守りながらAI技術を適切に運用することが求められる。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Leaked documents expose deep ties between Israeli army and Microsoft +972 2025.01.23
https://www.972mag.com/microsoft-azure-openai-israeli-army-cloud/

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