「米国は『移民の国』なのか『白人の国』なのかを問う、引けない闘い」 ― 2025年06月13日 16:41
【概要】
ロサンゼルスでは、6月7日に移民税関捜査局(ICE)による大規模な取り締まりが開始されてから4日目となる6月10日も、抗議デモが続いている。ダウンタウンでは警察の閃光弾やヘリの轟音、車のクラクションが鳴り響き、「ICEはロサンゼルスから出て行け」というデモ隊の叫び声と警察の実力行使が一晩中続いた。
9日午後10時を過ぎてもデモ隊は解散せず、ロサンゼルス市警前では、警察がゴム弾発射を警告したにもかかわらず、デモ隊は立ち向かった。デモ隊は午後の間中、連邦機関が入居する庁舎に結集していた。トランプ大統領が動員した州兵が警戒にあたっており、教師のジョンは「地域社会を守ろうとしているデモ参加者を州兵が攻撃するのは衝撃的」と述べ、トランプは書類不備の移民を侵略者と描き出そうとしているが、本当の侵略者は州兵だと語った。警察は午後6時ごろ、非殺傷弾を発射しながら連邦庁舎広場に入り、デモ隊を追いつめ、対峙が一晩中続いた。
ICEによる大規模な取り締まりに反対するデモが長期化しているのは、ロサンゼルス市民にとって引けない闘いである。ロサンゼルスは移民が約35%を占め、全国平均の約14%の2.5倍に達し、書類不備の移民も25~30%ほどいると推定される。そのため、市民権を持つ人も移民と直接的または間接的につながっていることが多い。デモ参加者は、10年間洗車場で働いていた家長が逮捕されたことや、書類不備の家族がいるために外出や通勤、子どもの登校ができない状況を訴えた。
地域経済にも大きな打撃が出ており、働く人が足りないため、平日にもかかわらず多くの店が営業していなかった。社会福祉士のエルナンデスは、リトルトーキョーの日本食店が、厨房で働く書類不備移民が出勤できないために休業していると述べた。
トランプ政権はICEの目標を「一日3000人逮捕」に上方修正し、取り締まり範囲を産業団地、飲食店、商店などの職場にまで拡大している。ICEはこの日、カリフォルニア南部全域で大規模な取り締まりを行い、裁判所、図書館、商店など、様々な場所で市民を逮捕した。
デモ参加者でロヨラ・メリーマウント大学講師のアマルは、「米国は『移民の国』なのか『白人の国』なのかを問う、引けない闘い」と述べた。口では「不法移民」だから取り締まると言っているが、実状は合法在留者も無差別に捕らえられ、市民権を得るために裁判所に行った移民も捕まっているとし、「肌の色による取り締まりであり、露骨な人種差別」だと指摘した。
テキサス州ダラスでも数百人がICEに抗して街頭にくり出した。ダラス西部のマーガレット・ハント・ヒル・ブリッジを行進し、「大規模追放をやめろ」、「移民は米国を再び偉大にする」などのプラカードを掲げ、メキシコ、パレスチナ、米国の国旗を同時に振って連帯の意を示した。この日のデモは、ロサンゼルスで続くデモへの連帯の意が込められていた。
トランプ大統領は、ロサンゼルス地域にさらに2000人のカリフォルニア州兵を投入することを国防部に指示するなど、対応を最大限に強めている。これまでにトランプ大統領がロサンゼルスに投入することを明らかにした兵力は、海兵隊も含め4700人にのぼる。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、「トランプは混乱を誘発するために 米国の地に4000人の兵士を送っている」と批判しつつも、トランプ大統領に大義名分を与えてはならないと述べ、繰り返し平和的にデモを行うよう求めた。知事は、混乱に乗じて利益を得ようとする扇動家たちに警告しつつ、「互いを守り、落ち着いて安全に行動してほしい」と住民に訴えた。これに先立つ同日午前、国防総省は連邦軍である海兵隊約700人をロサンゼルスに移動させると発表した。州兵の動員にとどまらない連邦軍のデモ対応への投入は、重大な段階の上昇と評されている。
カリフォルニア州政府は、トランプ政権による違法な州兵動員の中止を求めて裁判所に提訴している。カリフォルニア州がカリフォルニア北部連邦地裁に提出した訴状は、「トランプ大統領が州知事を通さずに州兵を動員したことは違法であり、大統領の権限外」だと主張し、トランプ大統領の行政命令とヘグセス国防長官の州兵動員命令を無効と宣言すること、国防総省による命令の実行を禁止することを求めている。
2025年6月7日に移民税関捜査局(ICE)による大規模な移民取り締まりが開始されてから4日目、カリフォルニア州ロサンゼルスのダウンタウンでは抗議デモが継続した。警察はデモ隊を解散させるため閃光弾を発砲し、ヘリの轟音と車のクラクションが交錯する中、デモ隊は「ICEはロサンゼルスから出て行け」と叫び続けた。警察は実力行使を行い、9日午後10時を過ぎても解散しないデモ隊に対し、ロサンゼルス市警前ではゴム弾発射を威嚇し、実際に発射してデモ隊を散らした。
デモ隊は午後の間、連邦機関が入居する庁舎に結集した。これはトランプ大統領が動員した州兵が警戒にあたっていたためである。教師のジョンは、地域社会を守ろうとするデモ参加者を州兵が攻撃することに衝撃を受け、トランプ大統領が書類不備の移民を侵略者と描こうとしているが、本当の侵略者は州兵であると述べた。警察は午後6時ごろ、ゴム弾などの非殺傷弾を発射しながら連邦庁舎広場に入り、デモ隊を追いつめ、対峙は一晩中続いた。
ICEによる大規模な取り締まりに反対するデモが長期化しているのは、ロサンゼルス市民にとって引けない闘いである。ロサンゼルスは移民が約35%を占め、全国平均の約14%の2.5倍に達する。書類不備の移民も約25~30%いると推定される。そのため、市民権を持つ人でも移民と直接的または間接的に繋がっていることが多い。デモ参加者の中には、10年間地域で働いていた移民が逮捕されたことや、家族に書類不備移民がいるため外出できないと訴える声があった。
地域経済にも大きな打撃が出ており、多くの店が営業していなかった。社会福祉士のエルナンデスは、リトルトーキョーの日本食店が厨房で働く書類不備移民が出勤できないため休業していると話した。
トランプ政権はICEの目標を「一日3000人逮捕」に上方修正し、取り締まり範囲は産業団地、飲食店、商店などの職場にまで拡大している。ICEはこの日、カリフォルニア南部全域で大規模な取り締まりを行い、裁判所、図書館、商店など様々な場所で市民を逮捕した。
ロヨラ・メリーマウント大学の講師であるアマルは、この闘いは米国が「移民の国」なのか「白人の国」なのかを問う、引けない闘いであると述べた。「不法移民」を取り締まると言われているが、実際はそうではなく、合法在留者も無差別に逮捕され、合法的に市民権を得るために裁判所に行った移民も逮捕されており、「肌の色による取り締まりであり、露骨な人種差別」であるとした。
テキサス州ダラスでも数百人がICEに抗して街頭に繰り出し、「大規模追放をやめろ」、「移民は米国を再び偉大にする」などと書かれたプラカードを手にスローガンを叫んだ。一部はメキシコ、パレスチナ、米国の国旗を同時に振って連帯を示した。このデモはロサンゼルスで続く激しいデモへの連帯の意が込められていた。
トランプ大統領は、ロサンゼルス地域にさらに2000人のカリフォルニア州兵を投入することを国防部に指示するなど、対応を最大限に強化している。これまでにトランプ大統領がロサンゼルスに投入を明らかにした兵力は、海兵隊も含め4700人に上る。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、トランプ大統領が混乱を誘発するために米国の地に4000人の兵士を送っていると批判しつつ、トランプ大統領に大義名分を与えないよう、平和的にデモを行うよう繰り返し求めた。知事は、トランプ大統領があおった混乱に乗じて利益を得ようとする扇動家は責任を取るだろうと警告し、住民には互いを守り、落ち着いて安全に行動するよう訴えた。これに先立ち同日午前、国防総省は連邦軍である海兵隊約700人をロサンゼルスに移動させると発表している。州兵の動員に留まらない連邦軍のデモ対応への投入は、重大な段階の上昇と評された。
カリフォルニア州政府は、トランプ政権による違法な州兵動員の中止を求めて裁判所に提訴している。カリフォルニア州がカリフォルニア北部連邦地裁に提出した訴状は、「トランプ大統領が州知事を通さずに州兵を動員したことは違法であり、大統領の権限外」であると主張し、裁判所に対し、トランプ大統領の行政命令とヘグセス国防長官の州兵動員命令を無効と宣言すること、国防総省による命令の実行を禁止することを求めている。
【詳細】
2025年6月7日、移民税関捜査局(ICE)による大規模な移民取り締まりがカリフォルニア州で開始された。これに対し、ロサンゼルスのダウンタウンでは激しい抗議デモが4日間にわたり継続した。デモは警察との衝突を伴い、警察はデモ隊の解散を促すために閃光弾を発射し、ロサンゼルス市警前ではゴム弾の使用も威嚇し、実際に発射した。警察ヘリの騒音とデモ隊を支援する車のクラクションが響く中、デモ隊は「ICEはロサンゼルスから出て行け」と叫び続けた。
デモ隊は特に、トランプ大統領が動員した州兵が警戒にあたっていた連邦機関の庁舎に集結した。教師のジョンは、地域社会を守ろうとするデモ参加者を州兵が攻撃することに衝撃を受け、真の侵略者は州兵であるとの見解を示した。警察は午後6時頃からゴム弾などの非殺傷弾を使用してデモ隊を庁舎広場から追いつめ、対峙は一晩中続いた。
ロサンゼルスでのデモが長期化しているのは、同市にとって移民問題が極めて重要であるためである。ロサンゼルスの人口の約35%が移民であり、全米平均の約14%を大きく上回る。また、書類不備の移民も約25~30%と推定されている。このため、市民権を持つ人々も移民と密接な関係を持つことが多く、デモ参加者の中には、長年地域に貢献してきた移民が逮捕された事例や、家族に書類不備の移民がいるために外出できない状況が語られた。
経済的な影響も顕著であった。平日にもかかわらず、ロサンゼルスでは多くの店舗が人手不足により営業を停止した。社会福祉士のエルナンデスは、リトルトーキョーの日本食レストランで、厨房で働く書類不備移民が出勤できないために休業している例を挙げた。
トランプ政権はICEの逮捕目標を「一日3000人」に引き上げ、取り締まりの対象を産業団地、飲食店、商店などの職場に拡大した。ICEはカリフォルニア南部全域で大規模な取り締まりを行い、裁判所、図書館、商店など、様々な場所で人々を逮捕した。
ロヨラ・メリーマウント大学の講師であるアマルは、この一連の動きを「米国は『移民の国』なのか『白人の国』なのかを問う、引けない闘い」と表現した。彼は、当局が「不法移民」を取り締まっていると主張する一方で、実際には合法的な在留者や、市民権取得のために裁判所に行った移民までもが無差別に逮捕されており、これは「肌の色による取り締まりであり、露骨な人種差別」であると指摘した。
ロサンゼルスでのデモに呼応し、テキサス州ダラスでも数百人がICEに抗議し、マーガレット・ハント・ヒル・ブリッジを行進した。彼らは「大規模追放をやめろ」、「移民は米国を再び偉大にする」などのプラカードを掲げ、メキシコ、パレスチナ、米国の国旗を振って連帯を示した。
トランプ大統領は、ロサンゼルス地域への対応を強化し、国防部にさらに2000人のカリフォルニア州兵の投入を指示した。これにより、トランプ大統領がロサンゼルスに投入を表明した兵力は、海兵隊を含め合計4700人に達した。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、トランプ大統領が「混乱を誘発するために米国の地に4000人の兵士を送っている」と批判しつつも、トランプ大統領に大義名分を与えないため、平和的なデモを継続するよう呼びかけた。知事は、混乱に乗じて利益を得ようとする扇動家に対し警告を発し、住民に落ち着いて安全に行動するよう訴えた。これに先立ち、国防総省は連邦軍である海兵隊約700人をロサンゼルスに移動させると発表しており、州兵だけでなく連邦軍がデモ対応に投入されることは、事態の重大な段階の上昇と見なされた。
カリフォルニア州政府は、トランプ政権による違法な州兵動員の中止を求め、カリフォルニア北部連邦地裁に提訴した。訴状では、トランプ大統領が州知事を通さずに州兵を動員したことは違法であり、大統領の権限外であると主張し、トランプ大統領の行政命令と国防長官の州兵動員命令の無効化、および国防総省による命令の実行禁止を求めた。
【要点】
取り締まりの開始と抗議デモの継続
・2025年6月7日、移民税関捜査局(ICE)が大規模な移民取り締まりを開始。
・ロサンゼルスのダウンタウンでは4日間にわたり抗議デモが継続。
・警察はデモ隊に対し閃光弾、ゴム弾(威嚇・発射)を使用し、解散を試みた。
デモ隊の集結と州兵の存在
・デモ隊は連邦機関が入居する庁舎に集結。
・トランプ大統領が動員した州兵が警戒にあたり、デモ隊を刺激。
・教師のジョンは、州兵の行動を批判し、真の侵略者は州兵であると主張。
デモの長期化と背景
・ロサンゼルスの人口の約35%が移民、書類不備の移民も約25~30%と推定され、市民生活に深く関わっている。
・デモ参加者からは、長年貢献してきた移民の逮捕や、家族に書類不備移民がいることによる生活への影響が訴えられた。
経済への影響
・人手不足により、多くの店舗が営業を停止。
・例として、リトルトーキョーの日本食店が書類不備移民の出勤不可により休業。
ICEの取り締まり強化
・トランプ政権はICEの逮捕目標を「一日3000人」に上方修正。
・取り締まり範囲は職場(産業団地、飲食店、商店など)に拡大。
・カリフォルニア南部全域で大規模な取り締まりが行われ、裁判所、図書館、商店など様々な場所で逮捕者が出た。
デモ参加者の主張
・ロヨラ・メリーマウント大学の講師であるアマルは、この闘いは「米国が『移民の国』なのか『白人の国』なのかを問う、引けない闘い」と表現。
・合法的な在留者や、市民権取得のために裁判所に行った移民までもが無差別に逮捕されており、「肌の色による取り締まりであり、露骨な人種差別」であると指摘。
他地域での連帯デモ
・テキサス州ダラスでも数百人がICEに抗議し、ロサンゼルスでのデモへの連帯を示した。
トランプ政権の対応強化
・ロサンゼルス地域にさらに2000人のカリフォルニア州兵の投入を指示。
投入を表明した兵力は、海兵隊を含め合計4700人に達する。
・国防総省は連邦軍である海兵隊約700人をロサンゼルスに移動させると発表。連邦軍の投入は事態の重大な段階の上昇と評価された。
カリフォルニア州政府の反応
・ギャビン・ニューサム知事は、トランプ大統領の兵力投入を批判しつつ、平和的なデモの継続を呼びかけた。
・知事は扇動家に対し警告を発し、住民に冷静な行動を促した。
・カリフォルニア州政府は、トランプ政権による違法な州兵動員の中止を求め、連邦地裁に提訴。
・訴状では、知事を通さない州兵動員は違法かつ大統領の権限外であると主張し、関連する行政命令および動員命令の無効化と実行禁止を求めた。
【桃源寸評】🌍
トランプ大統領の強硬な移民政策や州兵・連邦軍の動員が「罷り通る」背景には、アメリカ大統領が持つ広範な権限と、現在の政治状況が複雑に絡み合っている。
1. 大統領の持つ広範な権限
(1)移民政策における権限
・アメリカの移民国籍法第212条(f)項は、大統領が「特定の外国人の入国がアメリカの国益に有害であると認める場合には、必要だと判断する期間において、入国を禁止することができる」と定めている。過去の判例でも、最高裁が大統領に広範な裁量権を認めている。
・公衆衛生法(タイトル42)に基づき、公衆衛生緊急事態を宣言することで、防疫を理由に国境を「封鎖」し、不法入国者や難民申請者を即時送還する権限も行使できる。トランプ政権は実際にこの権限を行使し、多くの移民を強制送還した実績がある。
・これらの権限は、議会の同意を必要とせず、大統領が単独で政策を実行できる根拠となっている。
(2)州兵および連邦軍の動員権限
・州兵は通常、州知事の指揮下にあるが、特定の連邦法(合衆国法典第10編第12406条など)に基づいて、大統領が州知事の要請なしに州兵を連邦政府の指揮下に置くことができる状況が規定されている。これは極めて異例の措置とされるが、大統領にはその法的根拠が存在する。
・大統領は、軍の最高司令官として連邦軍(海兵隊など)を国内に派遣する権限を持つ。国防総省も大統領の命令に従い、軍を動かす。
・国家緊急事態宣言を行うことで、大統領はさらに多くの緊急時の権限を行使することが可能となる。ただし、その内容や適用範囲は法律によって限定されており、国民の私権制限や外出禁止命令などが無制限に行えるわけではない。
2. 政治的背景とトランプ大統領の戦略
(1)「法と秩序」の強調と支持層へのアピール
・トランプ大統領は、強硬な移民政策やデモへの強硬な対応を「法と秩序」の回復として有権者に訴える傾向がある。これは、彼のコアな支持層(特に保守層)からの強い支持を得るための戦略とされている。
・移民問題はアメリカ社会で分極化の大きな争点となっており、強硬な姿勢を取ることで支持を固める狙いがある。
(2)連邦政府と州政府の対立
・ロサンゼルスがあるカリフォルニア州は民主党の知事が率いる「リベラルな州」であり、移民政策においては連邦政府(トランプ政権)と州政府の間で強い対立がある。
・カリフォルニア州知事が州兵の動員に反対し、提訴しているのは、この連邦と州の権限を巡る対立の現れである。トランプ大統領側は、州知事が連邦政府の法執行を十分に支援しないと見なし、直接介入することでその権限を示す意図もあると推測される。
・ロサンゼルス市長も、連邦政府の介入は地方自治体の権限を試す「試験ケース」であると述べている。
(3)混乱の「演出」と政治的利益
・一部の分析では、トランプ大統領が意図的に混乱を煽り、それを「民主党政権下の都市の無秩序」として描き出すことで、自身の強権的な対応を正当化し、支持を拡大しようとしているとの見方もある。
・デモへの強硬な対応を巡って民主党が悪いという印象をつけ、無党派層にもアピールする狙いがあるとも言われている。
3. 「異例」な状況の常態化
・大統領が州知事の要請なしに州兵を動員するケースは「きわめて異例」とされるが、トランプ政権下ではこうした異例の措置がたびたび取られてきた。これは、大統領の権限を最大限に解釈・行使しようとする政権の姿勢を反映している。
・連邦軍が国内の法執行に絡んで派遣されることも「極めて異例」であり、その動員は事態の重大な段階の上昇と評価されている。
これらの要因が複合的に作用し、トランプ大統領の強硬な政策や強権的な対応が実行に移されている状況にあると言える。
トランプ氏が移民を排斥するような政策を強く推進する背景には、複数の理由と彼の政治的戦略がある。主な理由とされているのは以下の点である。
1. 経済的懸念と「アメリカ・ファースト」の主張
・国内雇用の保護: トランプ氏は、不法移民がアメリカ国民の雇用を奪い、賃金を押し下げていると主張している。特に、低賃金の労働市場において、移民が職を得ることで、アメリカ人労働者の機会が減少するという考え方である。
・社会保障制度への負担: 移民、特に不法移民が社会保障制度(医療、教育など)に過度な負担をかけていると主張している。納税をしていない不法移民が、社会サービスを享受することは公平ではないという考え方である。
・不法移民が経済に与える影響への見解: トランプ氏の支持者は、不法移民の存在が経済にマイナスに作用すると考えている。しかし、経済学者の間では、不法移民が特定の産業の労働力を補い、消費を拡大することで経済に貢献しているという見方もあり、この点については議論が分かれている。
2. 治安・国家安全保障への懸念
・犯罪率の上昇と関連付け: トランプ氏は、不法移民が犯罪率を上昇させていると繰り返し主張してきた。特に、メキシコ国境からの麻薬やギャングの流入を強調し、国境の警備強化や大規模な強制送還の必要性を訴えている。ただし、統計的に不法移民が犯罪率を押し上げているという明確な証拠はないという反論も多く存在する。
・テロリズム対策: 国家安全保障上の脅威として、不法入国者の中にテロリストが潜んでいる可能性を指摘し、水際対策の強化と入国審査の厳格化を主張している。
3. 選挙戦略と支持層へのアピール
・「アメリカ・ファースト」の公約: 移民問題は、トランプ氏が大統領選挙キャンペーンで最優先課題として掲げた主要な公約の一つである。1強硬な移民政策を実行することで、公約を着実に果たしていることを支持層にアピールし、強いリーダーシップを印象付ける。
・保守層・白人労働者層の支持: トランプ氏の支持基盤の中には、グローバル化や移民の増加に対して不安や不満を抱く保守的な白人労働者層が多くいる。彼らにとって、移民排斥の言動は共感を呼び、政治的な支持を得る上で非常に効果的である。
・「法と秩序」の強調: 国境の混乱や不法移民の問題を「無法状態」と表現し、「法と秩序」を回復するというメッセージは、秩序を重視する層に強く響く。デモに対する強硬な対応も、このメッセージと一貫している。
・ヒスパニック系内部の分断利用: 合法移民と不法移民の間には立場の違いがあり、トランプ氏は不法移民を厳しく取り締まることで、合法的に滞在しているヒスパニック系の有権者の中にも支持を広げようとしているという分析もある。
4. 国家主権と文化的な懸念
・国家主権の堅持: 国境管理は国家主権の根幹であるという考え方を強く持ち、自国の国境を完全にコントロールする権利を主張している。
・文化的な同化への懸念: 移民の増加が、アメリカの伝統的な文化や社会構造に変化をもたらすことへの懸念を表明することもある。
・これらの理由が複合的に絡み合い、トランプ氏の移民排斥的な政策を推進する原動力となっている。ただし、これらの主張や政策がもたらす実際の経済的・社会的影響については、様々な研究や意見があり、その全てが肯定的に評価されているわけではない。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
「肌の色による露骨な人種差別」…「一日3千人逮捕」移民取り締まりに抗するLA市民 HANKYOREH 2025.06.12
https://japan.hani.co.kr/arti/international/53452.html
ロサンゼルスでは、6月7日に移民税関捜査局(ICE)による大規模な取り締まりが開始されてから4日目となる6月10日も、抗議デモが続いている。ダウンタウンでは警察の閃光弾やヘリの轟音、車のクラクションが鳴り響き、「ICEはロサンゼルスから出て行け」というデモ隊の叫び声と警察の実力行使が一晩中続いた。
9日午後10時を過ぎてもデモ隊は解散せず、ロサンゼルス市警前では、警察がゴム弾発射を警告したにもかかわらず、デモ隊は立ち向かった。デモ隊は午後の間中、連邦機関が入居する庁舎に結集していた。トランプ大統領が動員した州兵が警戒にあたっており、教師のジョンは「地域社会を守ろうとしているデモ参加者を州兵が攻撃するのは衝撃的」と述べ、トランプは書類不備の移民を侵略者と描き出そうとしているが、本当の侵略者は州兵だと語った。警察は午後6時ごろ、非殺傷弾を発射しながら連邦庁舎広場に入り、デモ隊を追いつめ、対峙が一晩中続いた。
ICEによる大規模な取り締まりに反対するデモが長期化しているのは、ロサンゼルス市民にとって引けない闘いである。ロサンゼルスは移民が約35%を占め、全国平均の約14%の2.5倍に達し、書類不備の移民も25~30%ほどいると推定される。そのため、市民権を持つ人も移民と直接的または間接的につながっていることが多い。デモ参加者は、10年間洗車場で働いていた家長が逮捕されたことや、書類不備の家族がいるために外出や通勤、子どもの登校ができない状況を訴えた。
地域経済にも大きな打撃が出ており、働く人が足りないため、平日にもかかわらず多くの店が営業していなかった。社会福祉士のエルナンデスは、リトルトーキョーの日本食店が、厨房で働く書類不備移民が出勤できないために休業していると述べた。
トランプ政権はICEの目標を「一日3000人逮捕」に上方修正し、取り締まり範囲を産業団地、飲食店、商店などの職場にまで拡大している。ICEはこの日、カリフォルニア南部全域で大規模な取り締まりを行い、裁判所、図書館、商店など、様々な場所で市民を逮捕した。
デモ参加者でロヨラ・メリーマウント大学講師のアマルは、「米国は『移民の国』なのか『白人の国』なのかを問う、引けない闘い」と述べた。口では「不法移民」だから取り締まると言っているが、実状は合法在留者も無差別に捕らえられ、市民権を得るために裁判所に行った移民も捕まっているとし、「肌の色による取り締まりであり、露骨な人種差別」だと指摘した。
テキサス州ダラスでも数百人がICEに抗して街頭にくり出した。ダラス西部のマーガレット・ハント・ヒル・ブリッジを行進し、「大規模追放をやめろ」、「移民は米国を再び偉大にする」などのプラカードを掲げ、メキシコ、パレスチナ、米国の国旗を同時に振って連帯の意を示した。この日のデモは、ロサンゼルスで続くデモへの連帯の意が込められていた。
トランプ大統領は、ロサンゼルス地域にさらに2000人のカリフォルニア州兵を投入することを国防部に指示するなど、対応を最大限に強めている。これまでにトランプ大統領がロサンゼルスに投入することを明らかにした兵力は、海兵隊も含め4700人にのぼる。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、「トランプは混乱を誘発するために 米国の地に4000人の兵士を送っている」と批判しつつも、トランプ大統領に大義名分を与えてはならないと述べ、繰り返し平和的にデモを行うよう求めた。知事は、混乱に乗じて利益を得ようとする扇動家たちに警告しつつ、「互いを守り、落ち着いて安全に行動してほしい」と住民に訴えた。これに先立つ同日午前、国防総省は連邦軍である海兵隊約700人をロサンゼルスに移動させると発表した。州兵の動員にとどまらない連邦軍のデモ対応への投入は、重大な段階の上昇と評されている。
カリフォルニア州政府は、トランプ政権による違法な州兵動員の中止を求めて裁判所に提訴している。カリフォルニア州がカリフォルニア北部連邦地裁に提出した訴状は、「トランプ大統領が州知事を通さずに州兵を動員したことは違法であり、大統領の権限外」だと主張し、トランプ大統領の行政命令とヘグセス国防長官の州兵動員命令を無効と宣言すること、国防総省による命令の実行を禁止することを求めている。
2025年6月7日に移民税関捜査局(ICE)による大規模な移民取り締まりが開始されてから4日目、カリフォルニア州ロサンゼルスのダウンタウンでは抗議デモが継続した。警察はデモ隊を解散させるため閃光弾を発砲し、ヘリの轟音と車のクラクションが交錯する中、デモ隊は「ICEはロサンゼルスから出て行け」と叫び続けた。警察は実力行使を行い、9日午後10時を過ぎても解散しないデモ隊に対し、ロサンゼルス市警前ではゴム弾発射を威嚇し、実際に発射してデモ隊を散らした。
デモ隊は午後の間、連邦機関が入居する庁舎に結集した。これはトランプ大統領が動員した州兵が警戒にあたっていたためである。教師のジョンは、地域社会を守ろうとするデモ参加者を州兵が攻撃することに衝撃を受け、トランプ大統領が書類不備の移民を侵略者と描こうとしているが、本当の侵略者は州兵であると述べた。警察は午後6時ごろ、ゴム弾などの非殺傷弾を発射しながら連邦庁舎広場に入り、デモ隊を追いつめ、対峙は一晩中続いた。
ICEによる大規模な取り締まりに反対するデモが長期化しているのは、ロサンゼルス市民にとって引けない闘いである。ロサンゼルスは移民が約35%を占め、全国平均の約14%の2.5倍に達する。書類不備の移民も約25~30%いると推定される。そのため、市民権を持つ人でも移民と直接的または間接的に繋がっていることが多い。デモ参加者の中には、10年間地域で働いていた移民が逮捕されたことや、家族に書類不備移民がいるため外出できないと訴える声があった。
地域経済にも大きな打撃が出ており、多くの店が営業していなかった。社会福祉士のエルナンデスは、リトルトーキョーの日本食店が厨房で働く書類不備移民が出勤できないため休業していると話した。
トランプ政権はICEの目標を「一日3000人逮捕」に上方修正し、取り締まり範囲は産業団地、飲食店、商店などの職場にまで拡大している。ICEはこの日、カリフォルニア南部全域で大規模な取り締まりを行い、裁判所、図書館、商店など様々な場所で市民を逮捕した。
ロヨラ・メリーマウント大学の講師であるアマルは、この闘いは米国が「移民の国」なのか「白人の国」なのかを問う、引けない闘いであると述べた。「不法移民」を取り締まると言われているが、実際はそうではなく、合法在留者も無差別に逮捕され、合法的に市民権を得るために裁判所に行った移民も逮捕されており、「肌の色による取り締まりであり、露骨な人種差別」であるとした。
テキサス州ダラスでも数百人がICEに抗して街頭に繰り出し、「大規模追放をやめろ」、「移民は米国を再び偉大にする」などと書かれたプラカードを手にスローガンを叫んだ。一部はメキシコ、パレスチナ、米国の国旗を同時に振って連帯を示した。このデモはロサンゼルスで続く激しいデモへの連帯の意が込められていた。
トランプ大統領は、ロサンゼルス地域にさらに2000人のカリフォルニア州兵を投入することを国防部に指示するなど、対応を最大限に強化している。これまでにトランプ大統領がロサンゼルスに投入を明らかにした兵力は、海兵隊も含め4700人に上る。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、トランプ大統領が混乱を誘発するために米国の地に4000人の兵士を送っていると批判しつつ、トランプ大統領に大義名分を与えないよう、平和的にデモを行うよう繰り返し求めた。知事は、トランプ大統領があおった混乱に乗じて利益を得ようとする扇動家は責任を取るだろうと警告し、住民には互いを守り、落ち着いて安全に行動するよう訴えた。これに先立ち同日午前、国防総省は連邦軍である海兵隊約700人をロサンゼルスに移動させると発表している。州兵の動員に留まらない連邦軍のデモ対応への投入は、重大な段階の上昇と評された。
カリフォルニア州政府は、トランプ政権による違法な州兵動員の中止を求めて裁判所に提訴している。カリフォルニア州がカリフォルニア北部連邦地裁に提出した訴状は、「トランプ大統領が州知事を通さずに州兵を動員したことは違法であり、大統領の権限外」であると主張し、裁判所に対し、トランプ大統領の行政命令とヘグセス国防長官の州兵動員命令を無効と宣言すること、国防総省による命令の実行を禁止することを求めている。
【詳細】
2025年6月7日、移民税関捜査局(ICE)による大規模な移民取り締まりがカリフォルニア州で開始された。これに対し、ロサンゼルスのダウンタウンでは激しい抗議デモが4日間にわたり継続した。デモは警察との衝突を伴い、警察はデモ隊の解散を促すために閃光弾を発射し、ロサンゼルス市警前ではゴム弾の使用も威嚇し、実際に発射した。警察ヘリの騒音とデモ隊を支援する車のクラクションが響く中、デモ隊は「ICEはロサンゼルスから出て行け」と叫び続けた。
デモ隊は特に、トランプ大統領が動員した州兵が警戒にあたっていた連邦機関の庁舎に集結した。教師のジョンは、地域社会を守ろうとするデモ参加者を州兵が攻撃することに衝撃を受け、真の侵略者は州兵であるとの見解を示した。警察は午後6時頃からゴム弾などの非殺傷弾を使用してデモ隊を庁舎広場から追いつめ、対峙は一晩中続いた。
ロサンゼルスでのデモが長期化しているのは、同市にとって移民問題が極めて重要であるためである。ロサンゼルスの人口の約35%が移民であり、全米平均の約14%を大きく上回る。また、書類不備の移民も約25~30%と推定されている。このため、市民権を持つ人々も移民と密接な関係を持つことが多く、デモ参加者の中には、長年地域に貢献してきた移民が逮捕された事例や、家族に書類不備の移民がいるために外出できない状況が語られた。
経済的な影響も顕著であった。平日にもかかわらず、ロサンゼルスでは多くの店舗が人手不足により営業を停止した。社会福祉士のエルナンデスは、リトルトーキョーの日本食レストランで、厨房で働く書類不備移民が出勤できないために休業している例を挙げた。
トランプ政権はICEの逮捕目標を「一日3000人」に引き上げ、取り締まりの対象を産業団地、飲食店、商店などの職場に拡大した。ICEはカリフォルニア南部全域で大規模な取り締まりを行い、裁判所、図書館、商店など、様々な場所で人々を逮捕した。
ロヨラ・メリーマウント大学の講師であるアマルは、この一連の動きを「米国は『移民の国』なのか『白人の国』なのかを問う、引けない闘い」と表現した。彼は、当局が「不法移民」を取り締まっていると主張する一方で、実際には合法的な在留者や、市民権取得のために裁判所に行った移民までもが無差別に逮捕されており、これは「肌の色による取り締まりであり、露骨な人種差別」であると指摘した。
ロサンゼルスでのデモに呼応し、テキサス州ダラスでも数百人がICEに抗議し、マーガレット・ハント・ヒル・ブリッジを行進した。彼らは「大規模追放をやめろ」、「移民は米国を再び偉大にする」などのプラカードを掲げ、メキシコ、パレスチナ、米国の国旗を振って連帯を示した。
トランプ大統領は、ロサンゼルス地域への対応を強化し、国防部にさらに2000人のカリフォルニア州兵の投入を指示した。これにより、トランプ大統領がロサンゼルスに投入を表明した兵力は、海兵隊を含め合計4700人に達した。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、トランプ大統領が「混乱を誘発するために米国の地に4000人の兵士を送っている」と批判しつつも、トランプ大統領に大義名分を与えないため、平和的なデモを継続するよう呼びかけた。知事は、混乱に乗じて利益を得ようとする扇動家に対し警告を発し、住民に落ち着いて安全に行動するよう訴えた。これに先立ち、国防総省は連邦軍である海兵隊約700人をロサンゼルスに移動させると発表しており、州兵だけでなく連邦軍がデモ対応に投入されることは、事態の重大な段階の上昇と見なされた。
カリフォルニア州政府は、トランプ政権による違法な州兵動員の中止を求め、カリフォルニア北部連邦地裁に提訴した。訴状では、トランプ大統領が州知事を通さずに州兵を動員したことは違法であり、大統領の権限外であると主張し、トランプ大統領の行政命令と国防長官の州兵動員命令の無効化、および国防総省による命令の実行禁止を求めた。
【要点】
取り締まりの開始と抗議デモの継続
・2025年6月7日、移民税関捜査局(ICE)が大規模な移民取り締まりを開始。
・ロサンゼルスのダウンタウンでは4日間にわたり抗議デモが継続。
・警察はデモ隊に対し閃光弾、ゴム弾(威嚇・発射)を使用し、解散を試みた。
デモ隊の集結と州兵の存在
・デモ隊は連邦機関が入居する庁舎に集結。
・トランプ大統領が動員した州兵が警戒にあたり、デモ隊を刺激。
・教師のジョンは、州兵の行動を批判し、真の侵略者は州兵であると主張。
デモの長期化と背景
・ロサンゼルスの人口の約35%が移民、書類不備の移民も約25~30%と推定され、市民生活に深く関わっている。
・デモ参加者からは、長年貢献してきた移民の逮捕や、家族に書類不備移民がいることによる生活への影響が訴えられた。
経済への影響
・人手不足により、多くの店舗が営業を停止。
・例として、リトルトーキョーの日本食店が書類不備移民の出勤不可により休業。
ICEの取り締まり強化
・トランプ政権はICEの逮捕目標を「一日3000人」に上方修正。
・取り締まり範囲は職場(産業団地、飲食店、商店など)に拡大。
・カリフォルニア南部全域で大規模な取り締まりが行われ、裁判所、図書館、商店など様々な場所で逮捕者が出た。
デモ参加者の主張
・ロヨラ・メリーマウント大学の講師であるアマルは、この闘いは「米国が『移民の国』なのか『白人の国』なのかを問う、引けない闘い」と表現。
・合法的な在留者や、市民権取得のために裁判所に行った移民までもが無差別に逮捕されており、「肌の色による取り締まりであり、露骨な人種差別」であると指摘。
他地域での連帯デモ
・テキサス州ダラスでも数百人がICEに抗議し、ロサンゼルスでのデモへの連帯を示した。
トランプ政権の対応強化
・ロサンゼルス地域にさらに2000人のカリフォルニア州兵の投入を指示。
投入を表明した兵力は、海兵隊を含め合計4700人に達する。
・国防総省は連邦軍である海兵隊約700人をロサンゼルスに移動させると発表。連邦軍の投入は事態の重大な段階の上昇と評価された。
カリフォルニア州政府の反応
・ギャビン・ニューサム知事は、トランプ大統領の兵力投入を批判しつつ、平和的なデモの継続を呼びかけた。
・知事は扇動家に対し警告を発し、住民に冷静な行動を促した。
・カリフォルニア州政府は、トランプ政権による違法な州兵動員の中止を求め、連邦地裁に提訴。
・訴状では、知事を通さない州兵動員は違法かつ大統領の権限外であると主張し、関連する行政命令および動員命令の無効化と実行禁止を求めた。
【桃源寸評】🌍
トランプ大統領の強硬な移民政策や州兵・連邦軍の動員が「罷り通る」背景には、アメリカ大統領が持つ広範な権限と、現在の政治状況が複雑に絡み合っている。
1. 大統領の持つ広範な権限
(1)移民政策における権限
・アメリカの移民国籍法第212条(f)項は、大統領が「特定の外国人の入国がアメリカの国益に有害であると認める場合には、必要だと判断する期間において、入国を禁止することができる」と定めている。過去の判例でも、最高裁が大統領に広範な裁量権を認めている。
・公衆衛生法(タイトル42)に基づき、公衆衛生緊急事態を宣言することで、防疫を理由に国境を「封鎖」し、不法入国者や難民申請者を即時送還する権限も行使できる。トランプ政権は実際にこの権限を行使し、多くの移民を強制送還した実績がある。
・これらの権限は、議会の同意を必要とせず、大統領が単独で政策を実行できる根拠となっている。
(2)州兵および連邦軍の動員権限
・州兵は通常、州知事の指揮下にあるが、特定の連邦法(合衆国法典第10編第12406条など)に基づいて、大統領が州知事の要請なしに州兵を連邦政府の指揮下に置くことができる状況が規定されている。これは極めて異例の措置とされるが、大統領にはその法的根拠が存在する。
・大統領は、軍の最高司令官として連邦軍(海兵隊など)を国内に派遣する権限を持つ。国防総省も大統領の命令に従い、軍を動かす。
・国家緊急事態宣言を行うことで、大統領はさらに多くの緊急時の権限を行使することが可能となる。ただし、その内容や適用範囲は法律によって限定されており、国民の私権制限や外出禁止命令などが無制限に行えるわけではない。
2. 政治的背景とトランプ大統領の戦略
(1)「法と秩序」の強調と支持層へのアピール
・トランプ大統領は、強硬な移民政策やデモへの強硬な対応を「法と秩序」の回復として有権者に訴える傾向がある。これは、彼のコアな支持層(特に保守層)からの強い支持を得るための戦略とされている。
・移民問題はアメリカ社会で分極化の大きな争点となっており、強硬な姿勢を取ることで支持を固める狙いがある。
(2)連邦政府と州政府の対立
・ロサンゼルスがあるカリフォルニア州は民主党の知事が率いる「リベラルな州」であり、移民政策においては連邦政府(トランプ政権)と州政府の間で強い対立がある。
・カリフォルニア州知事が州兵の動員に反対し、提訴しているのは、この連邦と州の権限を巡る対立の現れである。トランプ大統領側は、州知事が連邦政府の法執行を十分に支援しないと見なし、直接介入することでその権限を示す意図もあると推測される。
・ロサンゼルス市長も、連邦政府の介入は地方自治体の権限を試す「試験ケース」であると述べている。
(3)混乱の「演出」と政治的利益
・一部の分析では、トランプ大統領が意図的に混乱を煽り、それを「民主党政権下の都市の無秩序」として描き出すことで、自身の強権的な対応を正当化し、支持を拡大しようとしているとの見方もある。
・デモへの強硬な対応を巡って民主党が悪いという印象をつけ、無党派層にもアピールする狙いがあるとも言われている。
3. 「異例」な状況の常態化
・大統領が州知事の要請なしに州兵を動員するケースは「きわめて異例」とされるが、トランプ政権下ではこうした異例の措置がたびたび取られてきた。これは、大統領の権限を最大限に解釈・行使しようとする政権の姿勢を反映している。
・連邦軍が国内の法執行に絡んで派遣されることも「極めて異例」であり、その動員は事態の重大な段階の上昇と評価されている。
これらの要因が複合的に作用し、トランプ大統領の強硬な政策や強権的な対応が実行に移されている状況にあると言える。
トランプ氏が移民を排斥するような政策を強く推進する背景には、複数の理由と彼の政治的戦略がある。主な理由とされているのは以下の点である。
1. 経済的懸念と「アメリカ・ファースト」の主張
・国内雇用の保護: トランプ氏は、不法移民がアメリカ国民の雇用を奪い、賃金を押し下げていると主張している。特に、低賃金の労働市場において、移民が職を得ることで、アメリカ人労働者の機会が減少するという考え方である。
・社会保障制度への負担: 移民、特に不法移民が社会保障制度(医療、教育など)に過度な負担をかけていると主張している。納税をしていない不法移民が、社会サービスを享受することは公平ではないという考え方である。
・不法移民が経済に与える影響への見解: トランプ氏の支持者は、不法移民の存在が経済にマイナスに作用すると考えている。しかし、経済学者の間では、不法移民が特定の産業の労働力を補い、消費を拡大することで経済に貢献しているという見方もあり、この点については議論が分かれている。
2. 治安・国家安全保障への懸念
・犯罪率の上昇と関連付け: トランプ氏は、不法移民が犯罪率を上昇させていると繰り返し主張してきた。特に、メキシコ国境からの麻薬やギャングの流入を強調し、国境の警備強化や大規模な強制送還の必要性を訴えている。ただし、統計的に不法移民が犯罪率を押し上げているという明確な証拠はないという反論も多く存在する。
・テロリズム対策: 国家安全保障上の脅威として、不法入国者の中にテロリストが潜んでいる可能性を指摘し、水際対策の強化と入国審査の厳格化を主張している。
3. 選挙戦略と支持層へのアピール
・「アメリカ・ファースト」の公約: 移民問題は、トランプ氏が大統領選挙キャンペーンで最優先課題として掲げた主要な公約の一つである。1強硬な移民政策を実行することで、公約を着実に果たしていることを支持層にアピールし、強いリーダーシップを印象付ける。
・保守層・白人労働者層の支持: トランプ氏の支持基盤の中には、グローバル化や移民の増加に対して不安や不満を抱く保守的な白人労働者層が多くいる。彼らにとって、移民排斥の言動は共感を呼び、政治的な支持を得る上で非常に効果的である。
・「法と秩序」の強調: 国境の混乱や不法移民の問題を「無法状態」と表現し、「法と秩序」を回復するというメッセージは、秩序を重視する層に強く響く。デモに対する強硬な対応も、このメッセージと一貫している。
・ヒスパニック系内部の分断利用: 合法移民と不法移民の間には立場の違いがあり、トランプ氏は不法移民を厳しく取り締まることで、合法的に滞在しているヒスパニック系の有権者の中にも支持を広げようとしているという分析もある。
4. 国家主権と文化的な懸念
・国家主権の堅持: 国境管理は国家主権の根幹であるという考え方を強く持ち、自国の国境を完全にコントロールする権利を主張している。
・文化的な同化への懸念: 移民の増加が、アメリカの伝統的な文化や社会構造に変化をもたらすことへの懸念を表明することもある。
・これらの理由が複合的に絡み合い、トランプ氏の移民排斥的な政策を推進する原動力となっている。ただし、これらの主張や政策がもたらす実際の経済的・社会的影響については、様々な研究や意見があり、その全てが肯定的に評価されているわけではない。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
「肌の色による露骨な人種差別」…「一日3千人逮捕」移民取り締まりに抗するLA市民 HANKYOREH 2025.06.12
https://japan.hani.co.kr/arti/international/53452.html