イランに対する一方論2025年06月19日 19:56

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【概要】

 現在、イランは停戦とアメリカとの交渉再開を切望している兆候が複数報じられている。ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、イランはイスラエルに対し攻撃の緩和を求めるシグナルを送っているとされる。

 トランプ大統領は、自らを優れた交渉者と見なしており、これを好機と捉えている可能性がある。しかし、彼が当初提示した解決案は曖昧すぎ、イランの核開発問題および地域におけるイスラエルとアラブ諸国への脅威を根本的に解決するものではないと筆者は指摘する。

 一方、外交交渉の動きが報じられる中で、イランの体制幹部が秘密裏に国外へ脱出しているとの未確認情報もある。行き先はモスクワとの見方もあるが、確証はない。

 イスラエルは現時点で攻撃の手を緩める様子はなく、政府機関や体制指導者(最高指導者ハメネイ師は除外されているとされる)を標的に攻撃を継続しているとされる。

 アメリカは中東への軍備増強を進めており、南シナ海に展開していた空母「ニミッツ」打撃群を中東に向けて移動させている。同地域にはすでに空母「カール・ビンソン」打撃群が展開中である。

 さらに、アメリカは多数の空中給油機を大西洋経由で配備しているが、最終的な目的地は公表されていない。アメリカ海軍はイスラエルによるイランのミサイルやドローンの迎撃を支援しているほか、イギリスも中東に空軍戦闘機を派遣すると発表している。

 現時点では、イランとの交渉が実際に再開されるかは不明である。しかし仮に交渉が始まったとしても、当初のアメリカの枠組みでは、戦争を終結させるために必要な根本的問題の解決には至らないと筆者は述べる。

 最優先課題はイランの核開発計画を完全に終わらせることである。ただし、単なる核施設の査察では、イスラエルは核兵器開発再開を防ぐ手段としては不十分と見なしている。トランプ政権は「ウラン濃縮の全面停止」という一線を示したが、それをどう実現するかは具体化されていない。

 国際原子力機関(IAEA)による査察への依存は、過去の事例から信頼性に欠けるとされる。北朝鮮・イラン・シリアによる秘密核燃料炉建設をIAEAは見抜けず、これをイスラエルが空爆で破壊した例がある。イラクのフセイン政権下の核兵器計画もIAEAは把握できなかったとされる。

 IAEAのイラン査察は、爆弾級ウランの濃縮準備が行われていたとされるフォルドウ(Fordow)複合施設や、最近発見されたトリチウム「レインボー」施設など、重要施設を網羅していないと指摘されている。このため、信頼できる唯一の方法は、国内すべての核関連施設を物理的に破壊し、残存する原子炉は査察ではなく厳格な国際管理下に置くことだとされる。

 加えて、イランの弾道ミサイル計画にも制限が必要であると述べている。戦争勃発直前に、イランは未発表の中距離弾道ミサイルを試射したとされ、これは2トンの弾頭を搭載可能であり、核弾頭の搭載を目的としている可能性がある。この試験を目の当たりにしたイスラエルが、イランへの攻撃を決断した可能性が指摘されている。

 したがって、包括的な合意には大型ミサイルの廃棄と、今後一切の製造禁止が含まれなければならないとされる。

 さらに、イスラエルはハマスがガザ地区で拘束している全ての人質の即時解放と、ハマスやイスラム聖戦などへの武器供給の永久停止を求めると考えられる。イスラエルは、イランが崩壊すれば、武器供給が絶たれることでハマスは存続できなくなると見ている。

 最後に、イエメンのフーシ派への武器供給も全面禁止とすることが不可欠である。イスラエルはフーシ派によるミサイル攻撃をイランからの直接攻撃同様に容認しない姿勢を示している。

 総じて、もしトランプ政権が再び交渉に臨むならば、核問題、人質問題、フーシ派問題を含めて包括的に扱わなければ、意味のある合意にはならないと筆者は結論付けている。

【詳細】 

 背景

 2025年6月17日付の記事で、筆者スティーブン・ブライエンは、イランとアメリカの間で新たな交渉が模索されつつある現状を報告している。背景には、イランが現状の軍事的圧力に耐えられず、イスラエルへの攻撃緩和を求める動きがあるとされる報道が複数存在することがある。

 また、イラン国内の状況として、一部の体制幹部が秘密裏に国外へ脱出している可能性が指摘されているが、その詳細は不明であり、モスクワ行きとの情報があるものの確証はない。

 イスラエルとアメリカの軍事動向

 イスラエルはイランへの軍事攻撃を継続しており、政府機関や体制幹部を標的とする一方、最高指導者アリー・ハメネイ師については攻撃対象から外されていると報じられている。

 アメリカは中東地域における軍事力を増強しており、南シナ海に配備されていた空母「ニミッツ」打撃群を中東へ向かわせたとされる。同地域にはすでに「カール・ビンソン」打撃群が展開している。また、大西洋を渡る形で多くの空中給油機が移動しているが、その目的地は明らかにされていない。

 アメリカ海軍の艦船は、イスラエルによるイランのミサイル及びドローンの迎撃を支援しており、イギリスもこれに呼応し、空軍戦闘機を中東へ派遣することを決定したとされる。

 当初のトランプ案の問題点

 筆者は、トランプ大統領(当時)が提示した当初のイランとの取引案は内容が曖昧であり、イランの核開発問題及びイスラエルとアラブ近隣諸国に対する脅威を根本的に排除するものではないと指摘している。

 交渉の第一の目標は、イランの核開発計画を完全に終わらせることである。しかし、「終わらせる」という言葉の具体的な手段が示されていないことが問題視されている。

 トランプ政権が示した「ウラン濃縮の完全停止」という条件は、実現手段が示されておらず、現実には国際原子力機関(IAEA)の査察に頼る形になるが、この査察体制が過去において不十分だった事例があるとされる。

 IAEA査察の限界

 筆者は、IAEA査察には重大な限界があると述べている。その根拠として、以下の事例を挙げている。

 ・北朝鮮・イラン・シリアの秘密核燃料炉計画はIAEAの査察では発見されなかった。

 ・イラクのサダム・フセイン政権下での核兵器計画も同様に見抜けなかった。

 ・イランでは、フォルドウ(Fordow)複合施設や最近発見されたトリチウム関連施設など、IAEA査察の対象外の重要施設が存在する。

これらの事例から、IAEAに依存する形ではイランの核兵器開発を完全に抑止することは不可能と論じている。

 核問題の「唯一の確実な方法」

 筆者によれば、イランの核開発問題を完全に解決する唯一の現実的手段は、国内の全核関連施設を物理的に破壊することであるとされる。残存する核反応炉についても、査察に頼るのではなく、厳格な国際管理下に置くべきだと主張している。

 弾道ミサイル問題

 核問題に加えて、イランの弾道ミサイル計画の制限も必須事項であるとされる。イランは戦争勃発直前に、2トンの弾頭を搭載できる未発表の中距離弾道ミサイルを試射したとされている。この新型ミサイルは核弾頭搭載を目的としていると推測されており、これを見たイスラエルが先制攻撃に踏み切る一因となった可能性が示唆されている。

 したがって、交渉においては大型弾道ミサイルの廃棄と、将来的な製造禁止を取り決める必要があると述べている。

 ハマスとフーシ派への武器供給問題

 イスラエルの立場として、ガザ地区でハマスに拘束されている人質全員の即時解放が必要条件となる。また、ハマス、イスラム聖戦などの武装組織への武器供給は完全に禁止されなければならないとする。

 さらに、イエメンのフーシ派に対しても武器供給を一切禁止する必要があると指摘している。イスラエルは、フーシ派によるミサイル攻撃をイランの代理攻撃と見なし、これを許容しない立場を取っているためである。

 結論

 筆者は、もしトランプ政権が交渉を進めるのであれば、

 1.イランの核開発計画の完全廃止と国際管理

 2.弾道ミサイル計画の廃止

 3.ハマスによる人質問題の解決

 4.ハマス・イスラム聖戦・フーシ派への武器供給の永久停止

 これらを包括的に扱わなければ、どのような合意も意味を成さないと結論付けている。 

【要点】 

 イランの現状と交渉再開の兆候

 ・イランは戦況が悪化し、停戦とアメリカとの交渉再開を求めていると報じられている。

 ・ウォール・ストリート・ジャーナルなどが、イランがイスラエルに攻撃緩和を求めるシグナルを送ったと伝えている。

 ・一部のイラン政府高官が秘密裏に国外へ脱出しているとの情報があるが、行き先は不明(モスクワ説あり)。

  イスラエルと米英の軍事動向

 ・イスラエルは攻撃を緩めておらず、政府機関や体制幹部を攻撃している(最高指導者ハメネイ師は対象外とされる)。

 ・アメリカは南シナ海に展開していた空母「ニミッツ」打撃群を中東へ移動させ、「カール・ビンソン」打撃群と合流させる予定。

 ・多数の空中給油機が大西洋を越えて移動しているが、目的地は不明。

 ・米軍艦船はイスラエルの迎撃を支援している。

 ・英国は空軍戦闘機を中東へ派遣すると発表。

 当初のトランプ案の問題点

 ・トランプ大統領が示した取引案は内容が曖昧であり、イランの核開発と地域的脅威を十分に抑止できない。

 ・「ウラン濃縮の全面停止」という条件があるが、具体的な達成方法が示されていない。

 IAEA査察の限界

 ・IAEA査察は信頼性に問題があると指摘されている。

 ・北朝鮮・イラン・シリアの秘密核燃料炉計画を把握できなかった。

 ・イラクのサダム・フセイン政権下の核兵器計画も見抜けなかった。

 ・イランのフォルドウ複合施設や最近発見されたトリチウム施設など、査察対象外の重要施設が存在する。

 核開発計画を確実に終わらせる唯一の手段

 ・全核関連施設を物理的に破壊することが唯一の確実な方法。

 ・残存する核反応炉は査察ではなく厳格な国際管理下に置くべきである。

 弾道ミサイル計画の問題

 ・イランは戦争直前に2トンの弾頭を搭載できる未発表の中距離弾道ミサイルを試射したとされる。

 ・これは核弾頭搭載用と見られ、イスラエルが先制攻撃を決断した一因となった可能性がある。

 ・合意には大型弾道ミサイルの廃棄と将来の製造禁止が含まれる必要がある。

 ハマス・フーシ派への武器供給問題

 ・イスラエルはハマスが拘束する全人質の即時解放を要求すると考えられる。

 ・ハマス、イスラム聖戦などへの武器供給を完全に禁止することが不可欠。

 ・フーシ派への武器供給も全面禁止とする必要がある。

 ・イスラエルはフーシ派からのミサイル攻撃を容認しない。

 筆者の結論

 ・交渉が行われる場合、以下の要素を含まなければ意味がないとする。

 1.イランの核開発計画の完全廃止と国際管理

 2.弾道ミサイル計画の廃止と製造禁止

 3.ハマスによる人質の即時解放

 4.ハマス、イスラム聖戦、フーシ派への武器供給の完全停止

【桃源寸評】🌍

 Stephen Bryen の記事の論調に内在する偏見的要素を具体的に列挙し、
それぞれに反論(論駁)を示す。

文の表現と矛盾しない範囲で、記事に潜む一方的視点を洗い出す。

 筆者の論調に含まれる偏見点と論駁

 ① イランを一方的に「地域の脅威」と断定

 ・筆者の主張

 イランは核兵器と弾道ミサイルを用いて地域の安全を脅かす存在であり、その脅威を除去しない限り戦争は終わらないと述べる。

 ・論駁

 そもそもイランの核開発は、隣国パキスタンやインド、そして核武装したイスラエルという現実の核保有国に囲まれているという安全保障上の恐怖心に基づいている。

 加えて、米軍がイラクやアフガニスタンで示した先制攻撃の前例を見れば、非核国がどれだけ脆弱かは明らかである。

 したがって、イランのみを「脅威」と言い切るのは、現実の地政学的バランスを無視した二重基準である。

 ② IAEAを全面否定し、破壊のみを唯一の解決策と主張

 ・筆者の主張

 IAEA査察は信頼できないから、施設を物理的に破壊するしかないと断じる。

 ・論駁

 IAEAは不完全であっても、国際的に核管理を実現するための唯一の枠組みであり、これを無視すれば無法状態を助長するだけである。

 「破壊しかない」という発想は、外交の放棄であり、より多くの民間人を巻き込む結果しか生まない。

 イスラエル自身がIAEA査察を拒み続けながら、他国にのみ破壊を強いるのは完全な自己矛盾である。

 ③ イスラエルの「自衛権」は無条件に正当化

 ・筆者の主張

 イスラエルの攻撃は当然であり、核・ミサイル開発はイスラエルを脅かすから容認できないとする。

 ・論駁

 イスラエルは歴史的に圧倒的軍事力を背景に、パレスチナやレバノンに対して過剰防衛を繰り返してきた事実がある。

 しかも、国連決議を無視した入植地拡大が地域紛争の根源であり、武力だけで自己正当化できない。

 よって、イスラエルの攻撃を「当然」と言い切るのは、加害と被害の構造を逆転させる論法である。

 ④ 「人質問題」と「武器供給」をイランの責任に一元化

 ・筆者の主張

 ハマスの人質問題やフーシ派の武装も、すべてイランが武器を供給するせいだとする。

 ・論駁

 ハマスやフーシ派の武装勢力が生まれた背景には、パレスチナ問題の放置、サウジアラビアなど他の湾岸諸国の内政干渉が複雑に絡んでいる。

 イランが完全に武器供給を止めても、根本問題が解決しない限り別の形で対立は続く。

 「すべてイランが悪」という単純化は、現実の複雑さを意図的に隠蔽している。

 ⑤ 外交の可能性を否定し、暴力を唯一の選択肢に

 ・筆者の主張

 IAEAも無意味、交渉も不十分、結局は軍事力行使が正解とする。

 ・論駁

 歴史的に見ても、イラン核合意(JCPOA)は一度は機能していた。

 これを破棄したのはトランプ政権であり、その結果としてイランが核活動を再開したのは事実である。

 よって、外交が「役に立たない」と結論づけるのは、合意破棄という米国の失策を棚上げしている。

 軍事力依存こそ、問題を長期化させてきた元凶である。

 ⑥ 地域の他の武装勢力・国家の責任は無視

 ・筆者の主張

 イランだけが周辺国に武器を送ると強調する。

 ・論駁

 サウジアラビア、UAE、イスラエル自身が中東で武装勢力に支援をしてきた事例は多数ある。

 イエメン内戦では、サウジアラビアが主導する連合軍が市民を大量虐殺し、国際的に非難されてきた。

 これを無視してイランだけを非難するのは、事実の選択的引用でしかない。

 総括

 Stephen Bryen の論説は、

 ✅ イランを絶対悪とし、
 ✅ イスラエルと米国の行動を「防衛」と美化し、
 ✅ 軍事力以外の選択肢を排除し、
 ✅ 地域全体の歴史的責任を隠蔽する

という、極めて偏った論理構造で成り立っている。

 現実の地域情勢を正しく理解するには、

・「イランの行動だけを糾弾するだけでは根本問題は解決しない」という視点が不可欠である。

「交渉」とは名ばかりの降伏勧告

 今回の記事内容を正面から読めば、米国とイスラエルが求めているのは、「核開発の即時破棄」「弾道ミサイルの製造禁止」「敵対勢力への武器供給の全面停止」「拘束人質の全員解放」であり、これをイランが一方的にのみ履行する形となっている。

 これは交渉ではなく、無条件降伏要求に等しい。なぜなら、相互の安全保障や地域の緊張緩和のために米国やイスラエル側が負担を負う条件が一切含まれていないからである。

 事実として、「IAEA査察を信用できない」からと言って施設を物理的に破壊するとするなど、国家主権を正面から踏みにじる論理である。

 米国とイスラエルの「核」に対する二重基準

 1.イスラエル自身の核兵器保持

 ・イスラエルは公式には核保有を認めていないが、実際には長年にわたり核兵器を保有し、周辺国を威圧してきたことは公然の秘密である。

 ・国際査察を受けず、核拡散防止条約(NPT)にも未加盟。

 ・イランにはNPTに加盟し査察を受けろと言いながら、自国は国際管理を拒否してきた。

 2.米国の核の行使歴史

 ・世界で唯一、核兵器を実戦使用した国家は米国である。

 ・自国の核戦力の近代化には巨額を投じ、他国には「核開発するな」と命じている。

 ・北朝鮮・パキスタンなどの事例では、政治的都合で黙認した一方、イランには制裁と爆撃をちらつかせている。

 この「核保有は正義、敵の核は悪」という論理は、軍事力を握る者の一方的価値観の押し付けでしかない。

 米国とイスラエルの武力行使と破壊の歴史

 1.中東における米国の武力介入

 ・イラク戦争では「大量破壊兵器がある」と虚偽の理由で侵略し、結果的に数十万人の市民を犠牲にし、国家を崩壊させた。大量破壊兵器は発見されなかった。

 ・アフガニスタンでは20年以上軍事占領を続け、タリバンは結局再掌握し、民衆には荒廃しか残らなかった。

 ・シリアに対しても、直接介入や代理戦争を行い、ISの台頭を許した元凶とも言える。

 2.イスラエルの周辺国への攻撃

 ・レバノンやガザ地区への度重なる大規模爆撃により、民間人死傷者が多数発生している。

 ・イスラエルは自衛を主張するが、その規模と手段は圧倒的軍事優位による一方的破壊であり、しばしば国際人道法違反が疑われている。

 ・パレスチナ人の土地没収や入植拡大は国際社会で非難されているが、米国が後ろ盾となり処罰されない。

 3.実際の「脅威」の生み手

 ・米国とイスラエルは、自らが武力で中東の秩序を改造しようとし、現地の対米・対イスラエル感情を根底から悪化させた張本人である。

 ・イランが地域で影響力を拡大してきた背景には、アメリカがフセイン政権やタリバン政権を倒し、真空地帯を生んだ現実がある。

 ・つまり、「イランの脅威」とされるものの多くは、西側の介入政策の失敗が土壌である。

 交渉ではなく暴力の論理

 ・この記事の論旨にある「核施設を破壊すべき」という主張は、実際には交渉どころか先制攻撃の正当化である。

 ・しかも、イランが核放棄しても、弾道ミサイルや代理勢力など他の理由を持ち出して圧力を続ける構図であり、降伏しても制裁と武力の恐怖からは解放されない。

 ・これは力による秩序であり、正義とは無縁の恫喝である。


 結論:「力=正義」ではない

 ・核も弾道ミサイルも、もし廃絶すべきなら、まず核保有国自身が模範を示すべきである。

 ・「交渉」と称して相手に一方的な非武装と従属を強要するのは、正義ではなく支配の論理である。

 ・中東の混乱と破壊の根源には、米国とイスラエルの一貫した武力依存と、国際法無視の先制攻撃がある。

 よって、イランだけを悪者とする論調は歴史を歪めており、根本的に不公正である。

 真の平和は「相互の主権尊重」と「核廃絶の二重基準撤廃」なくして実現しない。

【寸評 完】🌺

【引用・参照・底本】

Will there be a deal with Iran? ASIA TIMES 2025.06.17
https://asiatimes.com/2025/06/will-there-be-a-deal-with-iran/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=f9cf1fa7c3-DAILY_17_06_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-f9cf1fa7c3-16242795&mc_cid=f9cf1fa7c3&mc_eid=69a7d1ef3c#

トランプ:G7サミットを早期に離脱した理由2025年06月19日 21:35

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【概要】

 2025年6月17日、米国大統領ドナルド・トランプは、カナダで開催されたG7サミットを早期に離脱した理由について、イスラエルとイラン間の停戦協議のためであったとするフランス大統領エマニュエル・マクロンの発言を否定した。

トランプは自身のSNSプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」にて、「マクロン大統領は、私がG7サミットを離れワシントンに戻るのは『停戦』のためだと誤って述べた。間違いだ!彼には私がワシントンに向かう理由など分かっていない。停戦とは全く関係ない。もっと大きな理由だ。彼は意図的かどうかは別として、いつも間違う。続報を待て!」と投稿した。

マクロンはG7サミットの場で記者団に対し、アメリカがイランへの外交的働きかけを行い、停戦実現に動いているとの認識を示した上で、「会談と意見交換の提案があった。もしアメリカが停戦を得られるならば、それはとても良いことだ」と述べていた。

一方、トランプは帰途の投稿で「イランに対して『和平交渉』を持ちかけた事実は一切ない」と強調した。その上で「もしイランが話し合いを望むなら、連絡方法は分かっているはずだ。以前提示した案を受け入れていれば、多くの命が救われただろう!」と述べた。

トランプは、G7サミットを早期に離脱した理由については中東情勢によるものであると述べたが、停戦協議との関連は否定した。

2023年10月に始まったイスラエルによるガザ地区への軍事攻撃以降、地域情勢は緊張状態が続いていたが、6月13日(金)にイスラエルが空爆を行ったことを発端に、イランとイスラエル間で空爆の応酬が続いているとされる。イラン当局によると、これまでに220人以上が死亡しており、その大半は民間人であるとされる。イスラエル側も24人の民間人の死亡を報告している。

米国および他の西側諸国は長年、イランに対して核兵器開発の抑制を求めてきたが、イランは核兵器開発の意図を否定し、平和目的の核技術開発は核拡散防止条約(NPT)の締約国としての権利であると主張している。

一方、イスラエルはNPTに加盟していないが、中東地域で唯一、核兵器を保有していると広く信じられている。

米国政府は、トランプ大統領が依然としてイランとの核合意を目指していることを表明している。

【詳細】 

 2025年6月17日、報道によれば、米国大統領ドナルド・トランプは、カナダで開催された主要7か国(G7)首脳会議(サミット)を予定より早く離脱し、米国首都ワシントンD.C.へ戻った。この行動について、フランス大統領エマニュエル・マクロンは、現地時間の月曜日、記者団に対して「アメリカがイランとの間で停戦協議を行おうとしている」と発言した上で、「会談および意見交換の提案があった。アメリカが停戦を成立させることができれば、非常に良いことだ」と述べた。

しかし、これに対してトランプ大統領は強く反論した。トランプは自身のSNSプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」において、マクロンを「売名行為をする大統領」と形容し、「マクロンは、私がG7サミットを途中で抜け出してワシントンに戻るのは、イスラエルとイランの『停戦』のためだと間違って言った。間違いである。彼は私が今なぜワシントンに向かっているのか全く知らない。停戦などではない。もっと大きな問題である。マクロンは意図的か否かにかかわらず、いつも間違う。続報を待て」と投稿した。

また、トランプはサミット離脱後にも、「私はイランに『和平交渉』を呼びかけたことは一切ない」と改めて否定し、「もしイランが話し合いたいのであれば、連絡方法は知っているはずだ。彼らは以前提示された取引を受け入れるべきだった。それにより多くの命が救われたであろう」と述べた。

トランプがG7サミットを早期離脱した直接の理由としては、中東地域、特にイスラエルとイラン間の緊張の高まりが背景にあるとされるが、停戦協議を進めるためではないと本人は明言した。

報道によると、6月13日(金)、イスラエルが空爆を実施したことにより、イランとイスラエルは空爆の応酬状態に入り、事態は深刻化している。イラン当局は、この空爆以降、220人以上の死者が発生しており、その多くは民間人であると発表している。一方、イスラエル側も24人の民間人の死亡を報告している。

このような状況の中、アメリカおよび他の西側諸国は、長年にわたりイランに対し核兵器開発の抑制を求め続けてきたが、イランはこれを否定しており、核拡散防止条約(NPT)の締約国として、平和利用目的の核技術開発は正当な権利であると主張している。

一方、イスラエルはNPTに加盟していないが、中東地域で唯一、核兵器を保有していると広く認識されている。

アメリカ政府は、トランプ政権としては依然としてイランとの間で核合意の達成を目指していると説明しているが、今回のG7サミット早期離脱と停戦協議の関連性については、大統領本人が全面的に否定する形となった。



【要点】 

 2025年6月17日、米国大統領ドナルド・トランプは、カナダで開催されたG7サミットを予定より早く離脱し、ワシントンD.C.へ向かった。

フランス大統領エマニュエル・マクロンは、トランプがイスラエルとイラン間の停戦協議のためにサミットを早期離脱したと発言した。

トランプは自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」でマクロンの発言を否定し、「マクロンは私が停戦のために帰国したと言ったが間違いである」と述べた。

トランプは「停戦とは全く関係ない。もっと大きな理由である。マクロンはいつも間違える。続報を待て」と投稿した。

マクロンは「アメリカがイランに対して会談と意見交換の提案をした」と報道陣に語り、「アメリカが停戦を得られるなら良いことだ」と述べた。

トランプは後の投稿で「イランに和平交渉を呼びかけた事実はない」と再度否定した。

さらに「イランが話し合いたければ連絡方法を知っている。以前の提案を受け入れていれば多くの命が救われた」と述べた。

トランプは、G7サミットの早期離脱理由として中東情勢を挙げたが、停戦協議との関連は明確に否定した。

6月13日(金)、イスラエルが空爆を行い、それを発端にイランとイスラエルの間で空爆の応酬が続いている。

イラン当局はこれまでに220人以上が死亡し、その多くが民間人であると報告している。

イスラエル側は24人の民間人の死亡を報告している。

アメリカと西側諸国は長年、イランに核兵器開発の抑制を求めてきたが、イランは核兵器開発の意図を否定し、NPT締約国として平和利用の権利を主張している。

イスラエルはNPTに加盟していないが、中東で唯一の核兵器保有国と広く信じられている。

アメリカ政府は、トランプ政権がなおもイランとの核合意を目指していることを表明している。

【桃源寸評】🌍

 魑魅魍魎の世界の話で、何れが事実なのかには興味は無いが、其のそれぞれの背景には興味がある。

 1. トランプの「停戦否定」発言の背景

 ・トランプが「停戦とは無関係」と強調するのは、外交カードを容易に相手国(イラン)や他国(フランス)に握られたくないという政治的本能であると推論できる。

 ・また、イスラエルとイラン間の停戦を仲介することは米国の大統領にとって極めて大きな成果となり得るが、その調整役をフランスのマクロンが「演出」した形になるのを嫌った可能性が高い。

 ・言い換えれば、「停戦に動く米国大統領」というイメージをフランス側が先にメディアに流布したことが、トランプの「公に否定」する姿勢を招いたと考えられる。

 ・彼の「Much bigger than that(もっと大きな理由)」という表現には、他に国内政治(支持基盤向けのパフォーマンス)や別の中東政策が絡んでいる可能性も排除できない。

 2. マクロンの「停戦言及」の背景

 ・フランスは伝統的に中東において独自の外交影響力を保ちたいとする傾向が強い。特に米国が中東で軍事・外交の主導権を握る構図を和らげ、EUの役割を誇示したい思惑が読み取れる。

 ・マクロンの発言には「停戦実現にフランスが間接的に寄与している」と欧州とフランス国民に示す意味合いが含まれていると考えられる。

 ・さらに、G7という多国間の舞台で米国大統領の行動理由を代弁することで、フランス外交の存在感を高めようとする意図が推察される。

 3. イスラエルとイランの衝突の背景

 ・記事に示されるように、イスラエルとイランの間には核開発を巡る長年の緊張がある。

 ・イランはNPT加盟国としての権利を主張するが、国際社会(特に米国・イスラエル)はこれを疑念の目で見るため、軍事的抑止と政治的圧力が繰り返されてきた歴史がある。

 ・イスラエルは核兵器保有を公式には認めていないが、「地域唯一の核兵器保有国」という暗黙の均衡が、対イラン政策の根底にあるとされる。

 ・ガザ情勢を含む多層的な火種が相互に影響し合い、今回の空爆の応酬を引き起こした可能性が高い。

 4. 「大統領の移動」と国内政治の背景

 ・トランプは自身の支持基盤に対して「強硬かつ独立した指導者」というイメージを維持することを最優先にしていると推論される。

 ・G7サミットという多国間協調の舞台より、国内での指導力誇示や迅速な危機対応を選ぶことで、支持者に「国際社会に迎合しないリーダー像」を印象付けたい狙いがあると考えられる。

 ・「停戦を仲介した大統領」ではなく、「大国の利益を最優先し、他国の言うことを許さない大統領」という像を選んだとも読める。

 5. 総合推論(魑魅魍魎の構造)

 (1)一連のやり取りには、単なる停戦交渉という表層を超え、

 ・大国間の影響力争い

 ・各国首脳の国内政治向けポーズ

 ・中東の既存の地政学的対立構造が絡み合っていると推論できる。

 (2)発言の真偽や意図の純粋性を問うより、各国の思惑が相互に牽制し合い、メディアを通じて国際世論を操作する「演出の連鎖」と捉えると、この「魑魅魍魎の世界」の構造が鮮明になる。

【寸評 完】🌺

【引用・参照・底本】

'Wrong!' Trump denies early G7 exit was to work on Israel-Iran ceasefire, contradicting Macron FRANCE24 2025.06.17
https://www.france24.com/en/americas/20250617-trump-says-early-g7-exit-nothing-to-do-with-macron-s-remarks-on-israel-iran-ceasefire-offer?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250617&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

中東情勢:一層緊迫化2025年06月19日 23:39

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【概要】

 中東情勢は一層緊迫化している。アルジャジーラの見出し「米国は戦争の準備をしているのか?」が示す通り、米国によるイラン・イスラエル紛争への軍事介入の可能性は、地域内外に深刻な懸念を生んでいる。イランの最高指導者ハメネイ師はテレビ演説で「イランは降伏しない」とし、米国の軍事介入は「取り返しのつかない損害」をもたらすと警告した。世界は今、米国が交渉前の強硬姿勢の試みをしているのか、あるいは戦争に向けて世論を動員しているのかを注視している。いずれであれ、米国が関与を検討しているという事実自体が極めて危険な兆候である。

 イランの核問題に関しては、外交的手段が尽きたわけではなく、平和的解決の可能性は依然として存在する。国際社会の共通認識として、軍事力では地域に平和をもたらせず、共通の安全保障の理念を堅持することで各国の正当な懸念を根本的に解消できるとされている。今回のイラン・イスラエル間の衝突以前に、米国とイランは核問題をめぐり五回の協議を行っていた。大きな隔たりはあったものの、交渉は継続しており、イスラエルの突発的な軍事攻撃がなければ、六回目の協議はオマーンのマスカットで予定通り開催されていたはずである。今回の衝突の引き金は外交の崩壊ではなく、軍事的冒険であったことは明らかである。

 イランの核問題は20年以上にわたり続いてきた。この問題から得られた最も重要な教訓は、政治的・外交的努力こそが唯一の正しい解決方法であるという点である。歴史が示す最も深い教訓は、対立と圧力の継続、国際合意の破壊は問題を複雑化させるだけだということである。この問題については、米国に責任がある。もし米国が一方的に包括的共同作業計画(JCPOA)から離脱せず、合意が円滑かつ有効に履行されていれば、問題がここまで悪化することはなかった可能性が高い。

 国際社会の一員として、イランの国家主権、安全保障、領土の一体性は侵害されるべきではなく、イラン国民とその財産は保護されるべきである。特に、国際社会が依然として政治的解決を模索している状況下で、イランへの無謀な武力行使は容認できず、国際法の明白な違反に当たる。

 アフガニスタンやイラクの例が示す通り、米国の軍事介入は平和をもたらしたことがない。それどころか破壊をもたらし、憎悪の種を蒔き、米国社会自身にも深刻な影響を与えてきた。ブラウン大学の「戦争のコスト」プロジェクトによれば、2001年以降、米国のいわゆる「対テロ戦争」で80万人以上が命を失い、3800万人以上が避難を余儀なくされ、総費用は8兆ドルを超えている。この苦い教訓は未だに人々の記憶に新しい。CNNは「米国は再び中東戦争に向かっているかもしれない」と警鐘を鳴らし、イランはリビア、イラク、アフガニスタンとは異なり「歴史は繰り返される必要はない」と報じている。エコノミスト誌の最近の世論調査では、米国人の60%が軍事介入に反対し、賛成はわずか16%にとどまっている。これは、イラン・イスラエル間の紛争への米国の深い関与が国民の本意ではないことを示している。

 米国の中東における軍事プレゼンスは既に相当規模であり、地域の緊張は十分に高い状態である。仮に米国が単にイランを「威嚇」するために動いているだけであっても、このような「最大限の圧力」戦略は地域の平和構築の努力を損ない、国際的な公正と正義にも反する。現在の最も緊急な課題は、さらなる部隊配備や空母・戦闘機の追加派遣ではなく、平和の促進と戦争の阻止である。衝突の拡大を防ぎ、地域の混乱を深めないための有効な措置が取られるべきである。対話と交渉による政治的解決への回帰は国際社会の共通の期待である。中東情勢の激化は、いかなる当事者の利益にもならない。

 イスラエルに対して特別な影響力を持つ国として、米国は特に客観的かつ公正な立場を取り、相応の責任を果たし、緊張緩和と紛争拡大防止において積極的かつ建設的な役割を果たすべきである。ガザでは今も血が流れ、シリア難民は彷徨い続けており、中東はこれ以上の「押し付けられた戦争」に耐えられない。米国が本当に「平和的解決」を望むのであれば、中東問題に関してより明確かつ積極的な平和推進の姿勢を示し、戦争を煽るのではなく、平和促進と戦争阻止の責務を負うべきである。問題をさらに複雑化させたり、自らが問題の一部となるべきではない。

【詳細】 

 1.現在の中東情勢と国際社会の懸念

 中東における状況は、日に日に緊張を増している。特に、アルジャジーラが「米国は戦争の準備をしているのか?」と報じたことに示されるように、米国がイラン・イスラエル間の衝突に軍事的に介入する可能性に対する懸念が地域内外で高まっている。このような軍事介入は、状況を制御不能に陥らせる恐れがあると広く認識されている。

 これに対し、イランの最高指導者であるハメネイ師は、テレビ演説でイランは降伏するつもりはないと明言し、米国が軍事行動を起こした場合は「取り返しのつかない損害」をもたらすと警告した。現在、国際社会は米国が交渉前の強硬姿勢を示しているのか、あるいは戦争への世論形成を進めているのかについて、固唾を呑んで見守っている。いずれの場合も、米国が軍事関与を視野に入れているという事実そのものが、情勢の不安定化を加速させる極めて危険なサインであると指摘されている。

 2.イラン核問題の外交的経緯と軍事衝突の発端

 イラン核問題については、外交的解決の道は依然として閉ざされていない。国際社会では、軍事力行使では平和は到来せず、各国の正当な安全保障上の懸念を包括的に解決するためには、共通の安全保障という理念が不可欠であると理解されている。

 現に、今回の紛争発生前に、米国とイランの間では核問題をめぐり五度の交渉が実施されており、重要な意見の隔たりは残っていたものの、協議自体は進行していた。第六回の協議はオマーンの首都マスカットで開催される予定であったが、イスラエルによる突発的な軍事攻撃によって中止を余儀なくされた。したがって、今回の衝突の直接の原因は外交の破綻ではなく、軍事的な冒険主義であることが明確である。

 3.長期化する核問題と米国の責任

 イラン核問題は、約20年以上にわたって国際社会の課題となってきた。この長期に及ぶ経験が示す最大の教訓は、政治的および外交的手段こそが正しい解決方法であるという点である。また、歴史からの深い教訓として、対立の激化、圧力の強化、国際合意の一方的な破棄は、状況をより複雑かつ深刻にするだけであるという認識が共有されている。

 特に、米国が包括的共同作業計画(JCPOA)から一方的に離脱しなかったならば、合意が円滑かつ効果的に履行されていた可能性が高く、現在のような緊迫した状況に陥ることは避けられたと考えられている。この点において、米国には大きな責任がある。

 4.イランの主権と国際法

 イランは国際社会の一員として、その国家主権、安全保障、領土の一体性は保障されるべきであり、イラン国民とその財産の安全も確保されなければならない。国際社会がなおも政治的解決を模索している最中に、イランに対する一方的かつ無謀な武力行使は、国際法に明確に反する行為とされ、容認されるべきではない。

 5.米国の軍事介入の歴史的失敗と社会的コスト

 過去のアフガニスタン戦争、イラク戦争が証明しているように、米国の軍事介入は一度も地域に平和をもたらしたことがなく、代わりに甚大な破壊をもたらし、憎悪と混乱の種を撒いてきた。さらに、これらの戦争は米国国内にも深い爪痕を残した。

 ブラウン大学の「戦争のコスト」プロジェクトによれば、2001年以降、米国の「対テロ戦争」により80万人以上が命を落とし、3800万人以上が難民化し、総費用は8兆ドルに達しているという。このような痛ましい代償は、未だに多くの人々の記憶に新しい。

 CNNもまた、「米国は再び中東戦争に踏み込む可能性がある」と警鐘を鳴らし、イランはリビア、イラク、アフガニスタンとは異なると強調している。「歴史は繰り返される必要はない」という警告も報じられている。エコノミスト誌による世論調査では、米国人の60%がイラン・イスラエル紛争への軍事介入に反対し、賛成はわずか16%にとどまっている。この結果は、軍事介入が米国民の総意ではないことを示している。

 6.現在の米国の軍事的姿勢と求められる行動

 現在、米国の中東における軍事的駐留はすでに相当な規模であり、地域情勢も緊張が極限まで高まっている。仮に米国が単なる威嚇として軍事力を誇示しているだけであっても、そのような「最大限の圧力」戦術は、地域の平和努力を損ない、国際的な公正と正義にも反している。

 今最も急がれるのは、更なる部隊配置や軍事資源の増強ではなく、和平促進と戦争阻止のための具体的な行動である。衝突のさらなる拡大を防ぎ、地域の不安定化を避けるための効果的措置を講じる必要がある。対話と交渉という政治的解決の道に戻ることは、国際社会全体の一致した願いである。中東情勢の一層の悪化は、どの国の利益にもならない。

 7.イスラエルへの影響力と平和的責務

 イスラエルに対して特別な影響力を有する国として、米国は一層の客観性と公正さを持って行動し、相応の責任を果たし、緊張の緩和と紛争の拡大防止において積極的かつ建設的な役割を担うべきである。

 現在もガザでは血が流れ、シリア難民は帰る場所を失ったままであり、中東はこれ以上の「押し付けられた戦争」に耐えられない状況にある。もし米国が「平和的な解決」を真に望むのであれば、より明確かつ積極的に平和構築の意志を示し、戦争を煽るのではなく、和平の推進と戦争阻止の責任を負わなければならない。問題を複雑化させたり、自らが問題の一部と化するような行為は、断じて許されない。

【要点】 

 ・中東情勢はますます緊迫している。

 ・アルジャジーラは「米国は戦争を準備しているのか?」と報じ、地域と国際社会に米軍介入の懸念が広がっている。

 ・イランの最高指導者ハメネイ師は、テレビ演説でイランは降伏せず、米国の軍事行動は「取り返しのつかない損害」をもたらすと警告した。

 ・国際社会は米国が交渉前の強硬姿勢か、戦争の世論作りかを注視しており、いずれにせよ軍事関与の検討自体が危険な兆候である。

 ・イラン核問題においては外交手段が尽きたわけではなく、平和的解決が可能であるとされている。

 ・国際社会は軍事力では平和は得られず、共通の安全保障が必要との認識を共有している。

 ・米国とイランは核問題でこれまでに5回の交渉を行い、隔たりはあったが協議は続いていた。

 ・第6回交渉はオマーンのマスカットで予定されていたが、イスラエルの軍事攻撃により中止された。

 ・今回の衝突は外交の失敗ではなく、軍事的冒険が原因である。

 ・イラン核問題は20年以上続いており、政治と外交だけが正しい解決策であることが最大の教訓である。

 ・米国が包括的共同作業計画(JCPOA)から一方的に離脱しなければ、現在の事態は回避できた可能性が高いとされる。

 ・そのため、米国には現状に対する責任があるとされている。

 ・イランの主権、安全、領土一体性は尊重されるべきであり、国民と財産の保護も必要である。

 ・政治解決が模索される中での無謀な武力行使は、国際法違反であり許されない。

 ・アフガニスタン、イラクでの米軍介入は平和をもたらさず、破壊と憎悪を残したと歴史が証明している。

 ・ブラウン大学の「戦争のコスト」調査では、2001年以降で80万人以上が死亡し、3800万人以上が難民となり、総費用は8兆ドルを超えるとされている。

 ・CNNは米国が再び中東戦争に突入する可能性を報じ、「イランはリビア、イラク、アフガニスタンとは異なる」と指摘している。

 ・エコノミスト誌の調査では、米国民の60%が軍事介入に反対し、賛成は16%のみである。

 ・これは軍事介入が国民の意思と一致していないことを示している。

 ・米国の中東駐留はすでに大規模であり、地域の緊張も限界に達している。

 ・仮に威嚇目的であっても、「最大限の圧力」政策は地域平和を損ない、公正と正義に反する。

 ・当面の最優先事項は軍事力の増強ではなく、和平促進と戦争阻止である。

 ・衝突拡大を防ぎ、さらなる混乱を避けるために効果的な措置が求められている。

 ・対話と交渉による政治解決が国際社会の共通の期待である。

 ・中東の更なる不安定化は、どの国の利益にもならない。

 ・米国はイスラエルに影響力を持つ国として、公正かつ客観的に行動し、緊張緩和と紛争拡大防止に責任を果たすべきである。

 ・ガザでは依然として血が流れ、シリア難民も苦境にあるため、中東はこれ以上の戦争に耐えられない。

 ・米国が平和的解決を望むなら、より明確で積極的な和平の意思を示すべきである。

 ・米国は戦争機械を動かすのをやめ、問題を複雑化させず、和平促進と戦争阻止の責任を負わねばならない。

【桃源寸評】🌍

 ・米国とイスラエルは、言葉を選ばずに言えば、現代においても自国の利益と覇権の維持を最優先し、そのために数え切れない他国の民の血を躊躇なく流してきた殺人鬼である。

 ・イランへの攻撃も、ガザでの虐殺も、正義や人権を語りながら裏では軍事産業と政権維持のための血の供物として処理されているに過ぎない。

 ・政治の場で「国際秩序」や「安全保障」の美名が使われるが、実態は他国の犠牲を前提とした暴力装置の正当化であり、倫理も宗教的良心もすでに失われている。

 ・米国の歴代政権は、民主主義の守護者を自称しながら、数百万の市民を中東・アジア・中南米で殺戮してきた歴史を一度も真正面から清算していない。

 ・イスラエルもまた、ホロコーストの被害史を国是として世界に語る一方で、パレスチナ人を土地ごと押しつぶし、子供までも標的にする占領国家として、神も仏もない所業を繰り返している。

 ・現代の国際政治において、この両国は「法の支配」を掲げながら、実際には自らには法を適用せず、他国には無限の武力制裁を行う選民思想の体現者である。

 ・大統領や首相の会見では「平和への努力」「テロとの戦い」という耳障りの良い言葉が踊るが、その裏で民間人の住宅が爆撃され、子供が泣きながら死んでいく。これこそが現実である。

 ・政治指導層は、死者の数字を「誤爆」や「不可避の損失」として処理し、戦争をビジネスに変え、メディアと議会と軍産複合体がそれを支えている。

 ・もし神や仏が存在するのならば、これほどの血の報いをいずれ受けないはずがない。しかし現状の世界は無神論者の地獄であり、正義の振りをした悪意が国家として機能しているのが現実である。

 ・世界の平和を口にする資格もない国々が、最も多くの兵器を売り、最も多くの爆弾を落とし、最も多くの戦争を作り続けている。

 ・その結果、恨みと報復の連鎖は止まらず、結局は自国民の命さえ戦場の犠牲にして恥じない。

 ・こうした米国とイスラエルの行動は、もはや国家の暴力機構ではなく、暴力が目的化した巨大な殺人産業に他ならない。

 ・政治の場において、そこに神仏や道徳を求めるのは既に愚行であり、この現実を覆すには、世界の一般市民が声をあげ、手を取り合って暴力機構を支える政治構造を崩すしかない。

【寸評 完】🌺

【引用・参照・底本】

The US should immediately stop fueling the war machine in the Middle East: Global Times editorial GT 2025.06.19
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1336473.shtml