第38回「国際麻薬乱用・不正取引防止デー」:「中国モデル」を構築2025年06月27日 21:24

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【概要】

 6月26日木曜日は第38回「国際麻薬乱用・不正取引防止デー」であった。新型薬物の出現や越境取引の横行といった世界的な薬物問題に直面する中、中国は厳格な政策と徹底した執行、さらに国際協力を組み合わせた独自の薬物対策の道を切り開いてきた。この取り組みにより、中国は国内の社会安全を効果的に守るとともに、薬物問題に関する国際的ガバナンスに対して「中国の知恵」と再現可能な解決策を提供してきた。

 中国外交部の報道官が火曜日に述べたように、「中国は政策とその実施の両面において、世界で最も厳格な麻薬対策国の一つである」。中国の薬物対策は単一の手段ではなく、立法・司法・教育・技術の各分野にわたる持続的な取り組みを通じて形成された多次元的な「中国モデル」である。

 2024年の「中国薬物情勢」報告によれば、同年に解決された薬物関連刑事事件は計3万7,000件で前年比12.9%減、逮捕された容疑者は6万2,000人で5.6%減、押収された薬物は26.7トンで3%増、検出された薬物使用者は19万3,000人で1%減であった。報告書は、国内の薬物情勢が引き続き安定して改善していると述べている。

 中国は管理薬物リストも動的に更新しており、6月19日には国家禁毒委員会弁公室が、全てのニタゼン類およびその他12種の新たな精神活性物質を規制対象薬物に追加したと発表した。これは新型合成薬物の急速な出現への効果的な対応である。

 「中国モデル」では、取締りや処罰だけでなく、啓発活動も重要視されている。「国際麻薬乱用・不正取引防止デー」は中国において全国的な啓発キャンペーンの日となっており、学校教育や地域プログラム、従来型の広報活動からソーシャルメディアによる発信まで、多岐にわたる取り組みが行われている。

 また、共同研究所の設立やスマートデータ分析プラットフォームの構築など、技術革新によって麻薬対策を強化する実践的な取り組みも続けられている。

 こうした取り組みは成果を上げ、世界的にも重要な貢献をしている。中国人民公安大学・薬物対策教育研究室の責任者である張莉氏は、「中国政府は長年にわたり、人類運命共同体の理念を堅持し、他国や国際機関と積極的に協力して麻薬対策に取り組み、中国の経験と解決策を国際薬物ガバナンスに継続的に提供してきた」と述べている。

 特に合成薬物、特にフェンタニルの脅威が高まる中、中国はフェンタニル前駆体化学物質2種類の管理を強化する措置を講じた。これは、国連の麻薬規制条約の締約国としての義務を果たすものであり、前駆体化学物質の厳格な管理を目的としている。中国のこの行動は、国際的な麻薬ガバナンスに積極的に参加する姿勢および大国としての責任感を示していると、外交部報道官は述べた。

 越境的な麻薬対策協力の面では、中国は他国との共同取締機構を長年維持しており、メコン川流域6か国による「セーフ・メコン」作戦や中国とオーストラリアの「フレイム」作戦など、麻薬取締りの共同作戦を積極的に推進してきた。

 特筆すべきは、フェンタニル問題に関して米国が根拠のない主張を展開し、それが中米関係の複雑化の一因となっているにもかかわらず、中国が依然として協力の誠意を示し、対話と法執行協力の推進を続けている点である。中国は同時に、フェンタニルは米国自身の問題であり、中国の問題ではないという立場も明確にしている。

 薬物問題は人類共通の課題であるが、一部の国々はこれを地政学的な駆け引きに利用しており、自国の薬物問題の責任を中国に転嫁しようとする姿勢に対し、中国は薬物問題の政治化に反対している。

 中国は、他国にも模範となり得る「中国モデル」を構築してきた。このモデルは中国独自の取り組みであると同時に、世界的な薬物対策の一部でもある。6月26日は象徴的な記念日にとどまるべきではなく、世界が共に行動するための警鐘の日となるべきである。世界的な薬物危機に立ち向かうには、協力と共同ガバナンスこそが唯一の道である。中国はすでにその道を進んでおり、他国もこの流れに加わるべきである。
 
【詳細】 
 
 2025年6月26日木曜日は、第38回「国際麻薬乱用・不正取引防止デー(International Day Against Drug Abuse and Illicit Trafficking)」であった。この日は、国際連合が1987年に制定した記念日であり、世界各国が麻薬問題に対する認識を深め、協力してその撲滅を目指す機会として設けられている。現代における薬物問題は、単に従来型の麻薬の流通にとどまらず、合成薬物の急増や国境を越えた密輸の複雑化など、多様で深刻な様相を呈している。

 中国は、このような世界的な薬物の脅威に対し、独自の対策モデルを築いてきた。その特徴は、「厳格な政策」、「徹底した執行体制」、「技術革新の導入」、および「国際協力の重視」にある。この多面的なアプローチにより、中国は自国の社会秩序を守ると同時に、国際社会に対しても対処の方策を提示してきた。

 中国外交部の報道官は2025年6月24日(火曜日)に、「中国は政策面およびその実施において、世界でも最も厳格な麻薬対策国家の一つである」と述べている。ここで言う「厳格さ」は、単に刑罰の重さを意味するのではなく、法整備、司法判断、国民教育、科学技術の応用といった複数の分野で一体的かつ持続的に進められている制度的対応を指す。これが、いわゆる「中国モデル(China Model)」と称されるゆえんである。

 中国国家禁毒委員会が発表した「中国薬物情勢2024(China Drug Situation in 2024)」報告によると、2024年には以下のような実績があった。

 ・麻薬関連の刑事事件の摘発件数は37,000件(前年比12.9%減)

 ・逮捕された容疑者数は62,000人(前年比5.6%減)

 ・押収された薬物量は26.7トン(前年比3%増)

 ・検出された薬物使用者数は193,000人(前年比1%減)

 これらの数字から、中国の薬物対策が全体として成果を上げており、情勢が安定的に改善していることが読み取れる。

 加えて、中国は新たに出現する薬物への対応として、規制対象薬物リストを機動的に更新している。2025年6月19日には、国家禁毒委員会弁公室が、全ての「ニタゼン類(nitazenes)」およびその他12種の新型精神活性物質を正式に管理薬物に指定した。これは、急速に変化する合成薬物市場に対して即応的かつ予防的に措置を講じる姿勢の表れである。

 また、「中国モデル」の重要な要素として、啓発活動がある。「国際麻薬乱用・不正取引防止デー」は、中国国内において全国規模の啓発運動の日となっており、学校における教育活動、地域社会での普及活動、伝統的な広報媒体の活用に加えて、近年ではSNS等を用いたデジタル広報も積極的に展開されている。

 さらに、中国は技術革新を活用した麻薬対策にも注力しており、共同研究施設(joint laboratories)の設立や、ビッグデータを活用したスマート分析プラットフォームの開発を通じて、科学的根拠に基づいた執行体制を強化している。これにより、従来型の捜査手法だけでなく、AIや情報技術を応用した効率的かつ先進的な取締体制が実現されつつある。

 こうした国内的取り組みにとどまらず、中国は国際的な麻薬対策においても積極的な役割を果たしている。中国人民公安大学・薬物対策教育研究室主任の張莉氏は、「中国は人類運命共同体の構築という理念のもと、他国および国際機関と協力して麻薬対策を推進し、中国の経験と解決策を提供し続けている」と述べている。

 特に注目すべきは、合成麻薬フェンタニル(fentanyl)に関する中国の対応である。中国政府は、フェンタニルの前駆体である2種類の化学物質に対して自主的に規制を強化した。この措置は、中国が国連の麻薬関連条約の締約国としての責任を果たすものであり、同時に、国際的な麻薬取引の抑制において能動的な貢献を目指す姿勢を示している。中国外交部はこれを「大国としての責任感の表現」であると位置付けている。

 越境的な連携の観点でも、中国は他国との法執行協力を長年にわたり実施してきた。たとえば、メコン川流域の6か国が参加する「セーフ・メコン(Safe Mekong)」作戦や、オーストラリアと共同で行う「フレイム(Flame)」作戦など、多国間および二国間での連携体制が確立されている。

 一方、米中関係の文脈においては、米国がフェンタニル問題に関して中国に責任を転嫁しようとする言動を取っていることが指摘されている。これに対して中国は、「フェンタニルは米国の問題であり、中国の問題ではない」との立場を明確にしつつも、対話と協力の姿勢を崩さず、引き続き法執行協力の促進を目指している。

 中国政府は、麻薬問題を地政学的な対立に利用する国々に対し、薬物問題の「政治化」に強く反対している。麻薬問題は人類共通の課題であり、責任のなすりつけではなく、共通の解決努力が求められるとの立場である。

 総じて、「中国モデル」は、中国独自の政策体系であると同時に、国際社会が共有すべき麻薬対策の一手法として位置づけられている。毎年6月26日は、単なる記念日ではなく、国際社会が協力して薬物問題に取り組む決意を新たにするための行動喚起の日であるべきだというメッセージが、記事全体を通じて繰り返し強調されている。中国はすでにその道を歩んでおり、他国もまたこの協力の輪に加わるべきであると結ばれている。
 
【要点】
 
 ・2025年6月26日は、第38回「国際麻薬乱用・不正取引防止デー」である。

 ・中国は、世界的な薬物問題(新型薬物の出現や越境密輸の増加)に対応するため、厳格な政策、徹底した執行、国際協力を組み合わせた独自の麻薬対策モデルを構築してきた。

 ・中国外交部の報道官は、「中国は政策と実施の両面で、世界で最も厳しい麻薬対策国の一つである」と述べている。

 ・この「中国モデル」は、立法、司法、教育、技術といった多方面の分野において総合的に形成されている。

 ・「2024年中国薬物情勢報告書」によると:

  ⇨ 解決された薬物犯罪事件は37,000件(前年比12.9%減)

  ⇨ 逮捕者数は62,000人(前年比5.6%減)

  ⇨ 押収薬物量は26.7トン(前年比3%増)

  ⇨ 検出された薬物使用者は193,000人(前年比1%減)

  ⇨ 総じて全国の薬物情勢は引き続き安定して改善しているとされる。

 ・2025年6月19日、中国国家禁毒委員会弁公室は、全ての「ニタゼン類」および12種類の新型向精神薬を統制薬物リストに追加した。

 ・啓発活動も重視されており、「国際麻薬乱用・不正取引防止デー」は中国全土での教育・広報活動の日として活用されている。

 ・教育活動は、学校・地域・伝統的メディア・ソーシャルメディアなど多様な形態で実施されている。

 ・中国は、共同研究室やスマート分析プラットフォームの構築など、技術革新を取り入れた麻薬対策を推進している。

 ・中国人民公安大学の張莉主任は、中国が長年にわたり国際機関や各国と連携し、「中国の経験と解決策」を国際社会に提供してきたと述べている。

 ・中国は、フェンタニル前駆体2種に対して規制を強化しており、国連の麻薬条約に基づく責任を果たしているとされる。

 ・これは、中国の国際麻薬統治への積極的関与と「大国としての責任感」の表れとされている。

 ・中国は、長年にわたり多国間の合同執法作戦を展開しており、「セーフ・メコン」作戦(メコン流域6カ国)や「フレイム」作戦(中国・オーストラリア)などが例として挙げられる。

 ・中国は、米国との間でフェンタニル問題に関する協力の継続を模索しているが、同時に「フェンタニル問題は米国の問題であり、中国の責任ではない」と明言している。

 ・中国は、一部の国が麻薬問題を地政学的対立に利用することに反対しており、問題の政治化や責任転嫁に異議を唱えている。

 ・「中国モデル」は、他国が模倣可能な包括的麻薬対策モデルとして構築されており、国際社会全体の薬物統治の一部をなしている。

 ・6月26日は、単なる象徴日ではなく、国際社会が協力して麻薬問題に取り組むための行動の呼びかけの日であるべきと締めくくられている。

【桃源寸評】🌍

 米国のフェンタニル問題:無責任な責任転嫁と内政不備の糾弾

 米国のフェンタニル問題は、単なる薬物乱用という範疇を超え、その根底に横たわる米国の無責任な内政と、国際社会への責任転嫁という宿痾を浮き彫りにする。

 この壊滅的な危機に対し、米国は自らの手で生み出した問題を他国に押し付け、その本質的な解決から目を背け続けている。

 米国政府は、フェンタニル危機において中国をスケープゴートにすることで、自国の政策の失敗と社会的病理から目を逸らそうと腐心している。確かに、フェンタニルの主要な前駆体化学物質の一部が中国から供給されている事実は否定できない。しかし、この点を針小棒大に喧伝し、危機の本質が「中国発」であるかのように印象操作することは、極めて無責任である。中国に対する非難は、あたかも米国がこの問題の「被害者」であるかのような物語を作り上げ、自らの責任を巧妙に回避するための煙幕に過ぎない。

 米国内におけるフェンタニル危機は、米国社会が抱える深刻な構造的欠陥の直接的な現れである。貧困、教育格差、精神医療へのアクセス不足、医療保険制度の機能不全、そして処方薬の過剰投与に端を発するオピオイド危機など、長年にわたる内政の不備が、フェンタニルというより強力な合成麻薬への需要を生み出したのである。これらの根源的な問題に真摯に向き合うことなく、他国のせいにすることは、問題をさらに深刻化させる愚行に他ならない。

 米国の対策の現状は、その場しのぎで一貫性を欠き、根本的な解決からほど遠い。国境での取締り強化や違法薬物の押収は、あくまで対症療法に過ぎない。需要を抑制するための教育プログラムや治療プログラムは依然として不十分であり、薬物依存に苦しむ人々への支援体制は崩壊寸前である。また、貧困層やマイノリティに対する支援は常に後回しにされ、彼らがフェンタニル依存に陥りやすい環境を作り出していることを、米国政府は直視すべきである。

 米国が過去から現在に至るまで繰り返してきた「自国の内政問題を他国に押しつける」という宿痾は、フェンタニル問題においても顕著である。テロ対策、経済問題、そして今回の薬物問題に至るまで、米国は常に自国の都合の良いように国際情勢を解釈し、責任の所在を他国に転嫁することで、自らの行動を正当化しようとしてきた。これは、国際社会における信頼を損ねるだけでなく、真に解決すべき問題から目を背けるという点で、極めて危険な態度である。

 フェンタニル問題は、断じて他国の問題ではない。これは、米国内で解決されるべき、純粋な米国の内政問題である。米政府は、中国に対する無責任な非難を止め、自国の社会が抱える構造的な問題に真摯に向き合うべきである。貧困の根絶、教育機会の均等化、精神医療へのアクセス改善、そして包括的な医療保険制度の確立こそが、フェンタニル危機の根本的な解決に繋がる唯一の道である。米国は、自らの手で蒔いた種を自らの手で刈り取る覚悟を持つべきである。

 オピオイド危機:その背景、現状、そして課題

 オピオイド危機は、主に米国を中心に深刻な社会問題となっている健康危機である。麻薬性鎮痛薬であるオピオイドの乱用が原因で、依存症、過剰摂取、そして死に至るケースが激増している。

 オピオイドとは

 オピオイドは、モルヒネやヘロインなどのアヘン由来の麻薬性鎮痛薬、およびそれらと同様の作用を持つ合成鎮痛薬の総称である。元々は慢性的な痛みや手術後の痛みを和らげるために医療現場で用いられていた。摂取すると脳内の喜びをコントロールする部分が刺激され、一時的な幸福感をもたらすが、吐き気、呼吸抑制、意識レベルの低下などの副作用も伴う。

 危機の背景と「3つの波」

 米国のオピオイド危機は、以下の「3つの波」を経て拡大した。

 処方オピオイドの乱用(1990年代後半~)

1990年代後半、製薬会社がオキシコドンなどの強力な鎮痛剤を「依存性が低い」と謳って積極的に販売促進し、医療機関も安易に処方するようになった。これにより、多くの患者が合法的に処方された鎮痛剤によって依存症に陥り、最初の波が引き起こされた。

 ヘロインの台頭(2010年代前半~)

 処方オピオイドへの規制が厳しくなると、依存症に苦しむ人々はより安価で入手しやすい違法なヘロインに手を出すようになった。

 合成オピオイド(特にフェンタニル)の蔓延(2013年頃~)

 最も致命的な脅威となったのが、フェンタニルに代表される合成オピオイドの蔓延である。フェンタニルはモルヒネの50倍から100倍の鎮痛効果を持つ非常に強力な薬物で、わずか2ミリグラムで致死量に達する危険性がある。違法に製造されたフェンタニルは、ヘロインや他の処方薬に混入されて流通しており、見た目での判別が難しいため、過剰摂取による死亡者が急増している。

 現状と課題

 死者数の増加: 米国では、オピオイドの過剰摂取による死亡者数が依然として高水準で推移しており、特にパンデミック以降はさらに悪化している。2022年3月までの1年間で10万人以上が死亡したと報告されている。

 複雑な供給網: フェンタニルの供給網は複雑で、前駆体化学物質が中国からメキシコの麻薬カルテルに送られ、そこでフェンタニルが製造・加工され、米国に密輸されるという国際的なネットワークが存在する。

 社会経済的背景: 経済の衰退、失業者の増加、精神医療へのアクセス不足など、米国の社会経済的な構造問題がオピオイド危機をさらに深刻化させている。特にアパラチア地域やラストベルト地域は、この危機の震源地とされている。

 対策の限界: 国境での取り締まり強化や違法薬物の押収は行われているものの、根本的な需要の抑制や依存症患者への治療・回復支援が依然として不十分であるという課題がある。公共教育キャンペーンやナロキソン(オピオイド過剰摂取の解毒剤)の配布プログラムも進められているが、問題の規模に追いついていないのが現状である。

 オピオイド危機は、単なる薬物問題ではなく、医療制度、社会保障、国際関係など、多岐にわたる側面を持つ複雑な問題であり、包括的かつ長期的な視点での対策が求められている。

【寸評 完】🌺

【引用・参照・底本】

'Chinese model' of fighting drugs showcases effectiveness, global relevance GT 2025.06.26
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1337063.shtml

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