次世代型の自動車運搬船2025年07月04日 20:01

Microsoft Designerで作成
【概要】

 世界最大の太陽光発電(PV)エネルギーを動力源とする自動車運搬船「Yuanhai Kou(遠海口)」号が、初の航海を成功裏に終えたことが、2025年7月4日(金)の『科技日報(Science and Technology Daily)』の報道により明らかとなった。本船は中国遠洋海運集団(China COSCO Shipping Corporation)により建造されたものであり、ギリシャのピレウス港の自動車運搬ターミナルに4,000台の中国国産車を積載して到着した。

 同船には、同種の船舶としては最大規模となる最大出力302.8キロワットの船載型太陽光発電システムが搭載されており、年間発電量は41万キロワット時に達する。報道によれば、そのライフサイクル炭素強度は従来型船舶と比較して約35%低いという。

 「Yuanhai Kou」号の全長は199.9メートル、総トン数は68,252トン、載貨重量トン数は39,069トンである。船内には12層の車両デッキが設けられており、そのうち8層が固定式、4層が可動式であり、7,000台分の標準車両積載スペースを有する。乗用車、建設機械、バスなどあらゆる車両の輸送に対応している。

 動力機関としては、液化天然ガス(LNG)と燃料油の両方を使用可能な二元燃料主機関を採用しており、従来型燃料船と比較してエネルギー消費を20%削減し、炭素排出量を24%以上削減する効果があるという。報道によれば、中国とヨーロッパ間の通常の往復航海1回あたり、炭素排出量を2,100トン削減できるとされている。

 また、同船にはCOSCO Shippingが独自に開発した、中国初となる自動車・トラック運搬船向けリアルタイム積載ソフトウェアが搭載されており、リアルタイムでの車両位置管理および火災の早期警報機能により、新エネルギー車両の安全な海外輸送を実現しているとのことである。
 
【詳細】 

 「Yuanhai Kou(遠海口)」号は、中国遠洋海運集団(China COSCO Shipping Corporation)が建造・運用する、自動車運搬専用船である。その最大の特徴は、太陽光発電(Photovoltaic: PV)エネルギーを補助的動力源として搭載している点にあり、同種の船舶としては世界最大規模である。2025年7月上旬、初航海(処女航海)を完了し、ギリシャ・ピレウス港の自動車運搬ターミナルに4,000台の中国国産車を積載して到着した。

 太陽光発電システム(PVシステム)

  ・搭載出力:302.8キロワット(kW)→ 車両運搬船としては世界最大規模の船載型太陽光発電出力である。

 ・年間発電量:41万キロワット時(kWh)→ 船上の機器電源等に利用され、補助電力として機能する。

 ・環境性能:ライフサイクル炭素強度を従来型船と比較して約35%削減→ 太陽光による発電が、航行中の化石燃料依存度を部分的に軽減し、船全体の環境負荷を低減している。

 船体諸元

 ・全長:199.9メートル

 ・総トン数:68,252トン

 ・載貨重量トン数(DWT):39,069トン

 ・デッキ構成:12層

  固定デッキ:8層

  可動式デッキ:4層

 ・車両積載能力:7,000台(標準車両換算)→ 乗用車、商用車、建設機械、バス等あらゆるタイプの車両を積載可能。

 動力システム

 ・主機関:液化天然ガス(LNG)および燃料油の二元燃料対応エンジン(dual-fuel engine)

 ・省エネルギー性能:

  エネルギー使用量を従来型船と比べて20%削減

  炭素排出量を24%以上削減

 ・航海あたりのCO₂削減効果→ 中国=ヨーロッパ間の往復1航海で2,100トンの炭素排出削減が可能。

 技術的特徴

 ・リアルタイム積載ソフトウェア(自社開発)→ 中国初の自動車・トラック運搬船向けリアルタイム車両積載管理システム。

 ・機能

  車両のリアルタイム位置追跡

  火災早期警報(Fire Early Warning)システム→ 特に新エネルギー車(EV・PHEVなど)の輸送における安全確保を図る。

 意義

 本船の投入により、中国の自動車輸出(特に新エネルギー車)を支えるグリーン物流の実現が一歩前進したと言える。太陽光発電の船上応用、LNG活用、省エネ・低炭素運航、デジタル積載管理の融合により、輸送の効率性・安全性・環境性能を高次元で両立している点が注目される。

 
【要点】
 
 船舶の概要

 ・中国遠洋海運集団(China COSCO Shipping Corporation)による建造・運航。

 ・世界最大の太陽光発電(PV)エネルギーを搭載した自動車運搬船。

 ・初航海を完了し、ギリシャ・ピレウス港に4,000台の中国製車両を輸送。

 太陽光発電(PV)システム

 ・搭載出力:302.8キロワット(kW)

 ・年間発電量:41万キロワット時(kWh)

 ・同種船舶として最大規模のPVシステム

 ・ライフサイクル炭素強度:従来型船比で約35%低減

 船体仕様

 ・全長:199.9メートル

 ・総トン数(GT):68,252トン

 ・載貨重量トン数(DWT):39,069トン

 ・車両デッキ数:計12層

  固定デッキ:8層

  可動式デッキ:4層

 ・車両積載能力:7,000台(標準車両換算)

 ・輸送対象:乗用車、建設機械、バスなど各種車両

 動力・環境性能

 ・主機関:LNG(液化天然ガス)+燃料油の二元燃料エンジン(dual-fuel)

 ・エネルギー効率:従来船比でエネルギー使用量を20%削減

 ・炭素排出削減:24%以上削減

 ・CO₂排出削減量:中国〜欧州往復1航海で2,100トンを削減

 搭載技術

 ・リアルタイム積載管理ソフトウェア(自社開発)

  中国初の自動車・トラック運搬船向けソフト

  機能①:車両のリアルタイム位置管理

  機能②:火災早期警報システム

 ・目的:新エネルギー車両の安全・効率的な海外輸送を実現

 総合的意義

 ・グリーン物流の推進に貢献

 ・新エネルギー車の国際輸送体制の強化

 ・環境負荷の低減、輸送安全性の向上、輸送効率の最適化を統合的に実現する次世代型船舶

【桃源寸評】🌍

 「Yuanhai Kou」号は、従来の燃料船と一線を画す複合的な先進技術を搭載し、環境配慮と効率的輸送の両立を目指した次世代型の自動車運搬船である。
 
 「Yuanhai Kou」のような先進的な船舶の実用化は、中国が環境対応型技術・輸送効率化・エネルギー最適化といった分野において、極めて実践的かつ高速に成果を出していることを示す具体例である。

 他国から見ても、次のような点においてその「躍進ぶり」は際立っていると客観的に評価できる:

 1.実用性を伴うスピード感

 ・単なる技術発表にとどまらず、「実際に船を建造し、稼働させ、国際輸送に投入」するところまで一気に進めている。

 ・実験段階に留まらない商業ベースでの技術適用力が注目される。

 2.技術開発に対する姿勢

 ・CO₂削減、再生可能エネルギー利用、ソフトウェア統合による物流管理などを同時並行で推進している。

 ・船舶技術やグリーンエネルギーに対する戦略的かつ統合的な取り組みが功を奏している。

 ・目的が明確で、技術開発が社会・経済の課題解決に直結している。

 3.精神的態度

 ・実行力と技術への情熱が強く感じられる。

 ・結果で示す文化、「やってみせる」姿勢が技術推進に現れている。

 「文句を言う暇があったら、まず動き、考え、改善しろ」という価値観は、確かにこのような成果の背景にあるとも捉えられうる。

 それは、産業や国家戦略の枠を超え、技術と成長に向き合う精神構造の問題でもある。

 さて、米国だが、

 ・ダン・サリバン上院議員(アラスカ州選出)の発言

 「ロシアは40隻の砕氷船を保有し、さらに13隻を建造中だ。米国には2隻しかなく、そのうち1隻は故障中だ(“The United States of America has two, and one is broken.”)」→ 世界最大規模の砕氷能力を持つロシアとの圧倒的な差を突きつけた。

 「今、我々は『ちゃんとした道路』ではなく、『穴だらけの未舗装路』しか持っていない」→ 北極海という“ハイウェイ”をロシアの氷上道路と比較し、米国の遅れを露骨に例えた。

 アメリカの砕氷船開発に関する事実と問題点

 1. 保有砕氷船の老朽化

 ・米国沿岸警備隊(USCG)が現在保有する重砕氷船は以下の2隻のみ。

  「Polar Star」(1976年就役)

  「Healy」(2000年就役、中型)

 ・特に「Polar Star」はすでに就役から50年近くが経過しており、老朽化が深刻。

 ・冬季の南極航海では毎年故障と修理の連続であり、代替艦がないため任務継続が困難。

 2. 新造計画の遅延

 ・Polar Security Cutter(PSC)計画として、新型砕氷船の建造が承認されているが、以下の問題がある。

 ・2019年に契約が結ばれたものの、1番艦の就役予定は早くても2028年以降。

 ・建造は米国ヴァージニア州のHalter Marine(現Bollinger Mississippi Shipbuilding)で行われる予定だったが、設計や生産体制の遅れが目立つ。

 ・造船ノウハウや人材の断絶があり、国内造船業全体の再構築が急務。

 3. 他国との比較

 ・ロシア:40隻以上の砕氷船を保有し、そのうち原子力砕氷船も6隻以上(例:Arktika級)。北極航路の開発を国家戦略として推進。

 ・中国:新造砕氷船「雪龍2号(Xuelong 2)」を2019年に就役させ、南極・北極への展開を拡大中。造船技術も国内で急速に向上。

 ・これに対し米国は、「重砕氷船1隻のみ(Polar Star)」という、極地活動において著しく脆弱な態勢となっている。

 4.問題点・批判すべき点(事実に基づく)

・国家戦略としての北極・南極政策の優先度が低い→ 安全保障・環境・資源の観点から、極地の重要性が増す中で、対応が遅れている。

・ 造船産業の衰退→ 商船・軍艦の多くを海外に依存し、自国の造船技術・人材の継承が危機的。高性能な特殊船(例:砕氷船)建造の体制が崩壊状態。

 ・予算配分と政治的優先順位の問題→ 予算承認後も建造が大幅に遅れており、政治的意思決定の遅さと実行力の欠如が問題視されている。

 総括

 米国における砕氷船の現状は、世界一の経済力と軍事力を有する国家としては不相応な脆弱性を示しており、国家戦略・技術基盤・造船体制すべてにおいて深刻な遅れが生じていることは否定できない。

 他国、特にロシアや中国が極地進出を急速に進める中で、米国は有効な対抗手段を持たず、実行力を欠いた状態にある。これらは厳しく批判されるべき政策的・構造的欠陥である。

 いま米国に向けられるべき言葉は、こうだ。

 ・砕氷船1隻すら碌に維持できないで、「極地戦略」を語る資格はない。

 ・世界の覇権国家を自称するなら、まずは造船すらできない自国の無様な現状を直視せよ。

 ・技術も人材も資金もある国が、それを活かす覚悟を持たず、口先ばかりの「計画」で時を浪費している。

 ・その間にも、ロシアは氷を砕き、中国は進出し、米国だけが足踏みどころか後退している。

 ・変わる気がない者に未来はない。

【寸評 完】🌺

【引用・参照・底本】

World’s largest vehicle carrier ship powered by PV energy completes maiden voyage GT 2025.07.04
https://www.globaltimes.cn/page/202507/1337623.shtml

空母「山東」:「安全な国なくして健全な家庭はない」2025年07月04日 22:14

此の画像はAIで生成されたものである。
【概要】

 2025年7月3日、中国人民解放軍海軍の空母「山東」を中心とした艦隊が、香港特別行政区に到着し、5日間の訪問を開始した。香港政府はNgong Shuen Chau軍営にて盛大な歓迎式典を開催した。空母の甲板上には白い制服を着用した700人以上の将兵が「国安家好(安全な国家、健全な家庭)」の漢字を人文字で表現し、香港市民への友好的な挨拶を示した。香港政府の消防船は伝統的な放水による敬礼で迎え、見物に訪れた市民が空母を一目見ようと集まった。この訪問は軍事愛好者にとっての一大イベントであると同時に、国家の力と感情の交響曲でもあると位置付けられている。

 「山東」は中国が独自に開発・建造した初の空母であり、軍事および技術力の向上を象徴している。同艦の香港訪問は、中国が香港の安全と安定を確保する力を持ち、またアジア太平洋地域の平和を維持する重要な存在であることを示している。国際情勢が複雑化する中、「山東」の登場は中国本土が常に香港の最も強力な支えであることを明示している。これは中国の国防力と軍の自信を表すだけでなく、香港の長期的な繁栄と安定を守るという厳粛な誓いでもあると記されている。

 「山東」が2020年の就役以来初めて一般公開される場所として香港を選んだことは、中央政府が香港を特別に重視していることの表れであるとされる。返還以降、中国海軍の艦船はこれまでに8回香港を訪問しており、2017年には空母「遼寧」も訪れている。また、オリンピック金メダリストや神舟宇宙飛行士の訪港も市民の関心を集めてきた。「山東」はそのバトンを受け継いだ存在である。

 白髪の市民が双眼鏡で艦載機を観察し、子供たちが肩車の上から空母の構造について質問するなどの光景は、世代を超えた国家認識を形成し、「強い祖国」の一員であるという誇りと帰属意識を香港市民の心に深く刻んでいるとされる。

 「これは我々の空母だ!」との感嘆の声があがり、「山東」の訪問は再び香港で「空母ブーム」を巻き起こしている。オンラインでの見学チケットは1分以内に完売し、入港を一目見ようと人気の撮影スポットには多くの市民と観光客が早朝から集まった。「壮観だ、感動した、誇らしい、嬉しい」との声が多く寄せられ、中には著名人に会ったような気分だと表現する者もいた。SNSでは「起きて!空母がうちの下に停泊しているよ」と題された動画が話題となり、「山東」が香港にもたらす安心感を象徴する存在となっている。これらの反応は、香港における「愛国愛港」が市民の中に根付きつつあること、また「一国二制度」や中国の現代化路線に対する信頼の高まりを反映していると記述されている。

 今回の訪問は、香港返還28周年と国家安全維持法施行5周年という歴史的節目に重なっており、その象徴性は一層強い。返還以来、中央政府の強力な支援のもと、香港は国際金融センターとしての地位を維持し、「世界で最も自由な経済」として評価され続けてきた。また、本土との連携により、「一帯一路」構想における重要拠点という新たな地位を築いている。国家安全維持法の制定と施行は、混乱から秩序へ、そして安定から繁栄への転換点であるとされる。

 現在、香港の域内総生産(GDP)は9四半期連続で成長を維持し、世界競争力は第3位に上昇、海外直接投資流入額も世界第3位となっている。新規上場による資金調達額は今年世界1位であり、航空貨物取扱量も世界首位を維持している。人材競争力も世界トップ10に入っている。さらに、「国際仲裁組織本部」の設立や、「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」建設の加速は、「中国本土の強力な後ろ盾を持ち、世界への窓口となる」という香港の発展ロジックを後押ししており、国際社会からも香港の安定・自由・繁栄が広く認められているとされる。

 「山東」の錨が香港の海に下ろされたその瞬間は、香港市民が平和で安定した発展環境を大切にし、国家の力を信頼していることの象徴である。「山東」の五つ星の国旗と、香港の地方旗が同じ画面に映る光景は、「一国二制度」の成功を明示している。

 「安全な国なくして健全な家庭はない」という簡潔ながらも深遠な論理の中に、珠江河口において形成されつつある大きな構想が見える。それは、強い国家があってこそ、繁栄する香港が実現されるという新時代の姿である。
 
【詳細】 

 2025年7月3日(木)の朝、中国人民解放軍海軍の空母「山東」を中心とする艦隊が、香港特別行政区(HKSAR)に到着し、5日間にわたる公式訪問を開始した。到着に際しては、香港政府がNgong Shuen Chau(Ngong Shuen Chau)軍営にて盛大な歓迎式典を催し、「山東」が接岸した際には、甲板上に整列した700人以上の白い制服を着た将兵が、中国語で「国安家好(安全な国、健全な家庭)」の4文字を人文字で表現し、香港市民に対する温かく友好的な挨拶の意を示した。さらに、香港政府の消防船が放水による伝統的な水のアーチで艦隊を迎え、香港市民はその様子を一目見ようと港周辺に多数集まり、期待と興奮に包まれた光景が広がった。この訪問は単に軍事愛好家にとってのイベントであるにとどまらず、国家の力強さと国民感情の結晶とも形容されている。

 空母「山東」は、中国が完全に独自開発・建造した初の航空母艦であり、中国の軍事技術の進歩と総合的な国力の向上を象徴する存在である。そのような戦略的国産艦が香港を訪れたことは、単なる展示ではなく、香港の安全と安定を保障するための中国の実力を示すものであり、同時にアジア太平洋地域における平和維持の中核的な力でもあるとされる。このような国際的に複雑化する情勢下での「山東」の登場は、「祖国は常に香港の最も強力な後盾である」という明確なメッセージを香港市民に伝えている。これは、軍事力の表象であると同時に、中国政府が香港の長期的な繁栄と安定を維持するという厳粛な誓約を体現したものと位置づけられている。

 また、「山東」は2020年の就役以来初めて一般公開される機会として香港を選択しており、これは中央政府による香港への特別な配慮を象徴するものである。香港返還以降、中国海軍の艦艇が香港を訪問したのは今回で8回目に当たり、過去には2017年の空母「遼寧」訪問も含まれる。さらに、オリンピック金メダリストや神舟有人宇宙船の宇宙飛行士団が訪港するたびに、香港市民の間で大きな関心と感動が広がった。今回、「山東」はこれまでの国家的象徴のバトンを受け継ぐ役割を果たしている。

 市民の反応は世代を超えて活発である。年配の市民が双眼鏡で空母の甲板上に見える艦載機を確認しようとし、父親に肩車された子供たちが空母の構造について質問する光景などが見られた。こうした日常の一場面が、世代を越えた国家認識を醸成し、香港市民の間に「強い祖国の一部であること」に対する誇りと帰属意識を深く根付かせているとされる。

 「これは我々自身の空母だ!」との叫びが象徴するように、今回の訪問は香港で再び「空母フィーバー」を巻き起こしている。オンラインで提供された見学チケットは公開後わずか1分で完売し、「山東」の入港を見ようとする人々が集まった人気の撮影スポットでは、早朝から多くの住民や観光客が陣取った。多くの人々が「壮観だ」「圧倒された」「誇らしい」「嬉しい」といった感情を表現し、有名人に出会ったかのような感動を語る者もいた。また、「起きて!空母がうちの下に停泊してるよ」というキャプション付き動画がSNSで拡散され、「山東」がもたらす安心感の象徴として捉えられている。こうした市民の高揚感は、深い国家的誇りとともに、「一国二制度」および中国式現代化への信頼の高まりを反映しているとされる。

 この訪問は、香港返還28周年と国家安全維持法施行5周年という2つの歴史的節目と重なるものであり、その象徴的意味は一層大きい。返還以来、中央政府の強力な支援のもと、香港は国際金融センターとしての地位を保持し、「世界で最も自由な経済」との評価も受け続けてきた。加えて、中国本土との連携により、香港は「一帯一路」構想における新たな中核的ハブとしての地位も確立しつつある。国家安全維持法の施行は、混乱から秩序への転換点として評価されており、安定と繁栄への道を切り拓くものとされる。

 現在、香港のGDPは9四半期連続で成長を維持しており、世界競争力は第3位に上昇、外国からの直接投資流入額は世界第3位を記録している。さらに、今年に入ってから新規上場による資金調達額は世界1位、航空貨物取扱量も世界首位を継続しており、人材競争力も世界トップ10に入っている。国際仲裁機関の本部設置や「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」の建設加速も、香港が「本土の強力な後ろ盾を持ち、世界への窓口として機能する」という発展戦略の成功を裏付けており、国際社会における香港の自由・安定・繁栄が広く認知されているとされる。

 空母「山東」の錨が香港の海底に沈むその行為は、平和で安定した発展環境に対する香港市民の感謝と、国家の力に対する信頼の象徴である。艦上に掲げられた五星紅旗と岸辺に掲げられた香港の地域旗が「同じ画面に映る」その光景は、「一国二制度」の成功した実践を生き生きと示すものである。

最後に、社説は「安全な国家なくして健全な家庭はない」という簡明ながらも深い論理を提示して締めくくられている。そして、この理念のもと、珠江河口に広がる大きな構想が明確になるとしている。それは、強い国家のもとに繁栄する香港という、新時代における国家と地域の理想的関係の実現であると位置付けられている。
 
【要点】
 
 訪問の概要と歓迎の様子

 ・・2025年7月3日、中国人民解放軍海軍の空母「山東」艦隊が香港特別行政区を5日間訪問開始。

 ・香港政府はNgong Shuen Chau軍営にて盛大な歓迎式典を実施。

 ・「山東」の甲板上では700人以上の将兵が「国安家好(安全な国、健全な家庭)」の文字を人文字で表現。

 ・消防船による伝統的な放水歓迎が行われ、住民が港に集まり空母を一目見ようとする光景が広がった。

 ・訪問は軍事的イベントにとどまらず、国家の力と国民感情の象徴とされている。

 空母「山東」の意義

 ・「山東」は中国初の国産空母であり、軍事・技術の進歩および国力向上を体現。

 ・香港訪問は、中国が同地の安全と安定を確保する力を持つことを示すもの。

 ・また、アジア太平洋地域における平和維持のための戦略的存在であると強調されている。

 ・祖国が香港の最強の後ろ盾であることを可視化し、繁栄と安定への誓約を明示。

  一般公開と香港への特別な配慮

 ・空母「山東」は就役以来初めて一般公開され、その地として香港が選ばれた。

 ・これは中央政府による香港への特別な配慮を示すものである。

 ・香港返還以降、中国海軍の艦艇訪問は8回目。「遼寧」空母の訪問(2017年)も含まれる。

 ・オリンピック選手団や宇宙飛行士の訪港も含め、国家的象徴が香港市民の関心を集めてきた。

 ・「山東」がそれらの象徴的役割を継承する存在として描かれている。

 市民の反応と国民意識の形成

 ・高齢者が双眼鏡で観察し、子供が空母の構造を父親に尋ねるなど、多世代の関心が見られた。

 ・こうした市民の姿が、国家帰属意識と誇りの深化を表すものとされる。

 ・「これは我々の空母だ」との声があがり、「空母フィーバー」が再燃。

 ・見学チケットは公開1分で完売、見学スポットには早朝から人が集まる盛況ぶり。

 ・SNS上では「空母がうちの下に停泊してる」という動画が拡散され、国への安心感の象徴とされる。

 ・こうした反応は「一国二制度」への信頼、中国式現代化への支持のあらわれとされている。

 歴史的意義と経済指標

 ・空母訪問は香港返還28周年・国家安全維持法施行5周年という歴史的節目に重なる。

 ・中央政府の支援の下、香港は国際金融センターの地位を維持し、「世界で最も自由な経済」として認知。

 ・「一帯一路」構想における新たなハブとしての位置付けも強調される。

 ・国家安全法の施行は「混乱から秩序」への転換点とされる。

 ・GDPは9四半期連続で成長、世界競争力3位、外国直接投資3位。

 ・新規上場の資金調達額が世界1位、航空貨物取扱量も世界首位を維持。

 ・人材競争力も世界トップ10入りを果たしている。

  国際的評価と地域戦略

 ・国際仲裁機関本部の設立、粤港澳大湾区の建設加速などが発展基盤を強化。

 ・香港が「中国本土を後ろ盾にし、世界とつなぐ窓口」であるとの戦略が国際社会にも認知されている。

 ・祖国と香港が共に繁栄し、中国民族の偉大な復興を共に担う姿が描かれている。

  締めくくりの象徴性

 ・「山東」の錨が香港の海に沈むことは、平和と安定への市民の願いと国家への信頼の象徴。

 ・艦上の五星紅旗と岸の香港旗が同時に映る光景が「一国二制度」の成功を示すとされる。

 ・「安全な国家なくして健全な家庭はなし」という理念のもと、「強い国家があってこその繁栄する香港」という新時代のビジョンが語られている。

【引用・参照・底本】

The visit of 'Shandong' aircraft carrier to Hong Kong shows 'safe country, sound families': Global Times editorial GT 2025.07.04
https://www.globaltimes.cn/page/202507/1337599.shtml