孤立主義の衰勢(一) ― 2023年02月20日 22:48
『米國外交上の諸主義』 法學博士 立作太郎 著
第四節 孤立主義の衰勢(一)
然るに米國に於て西部の領土の經營が進捗し、又千八百八十年頃より始つた海軍擴張計晝が漸く進み、米國は漸次帝國主義的政策を執るに至り、カリブ海方面に進展を計り、又海外に於ける發展を計晝し、布畦を併合し、スペインとの戰爭の結果としてフィリッピン、グアムを收め、東亞に於て支那に於ける門戸開放主義の國際的首唱者となり、海軍カの發達も較著なるに至り、ワシントン會議及ロンドン軍縮會議等を經て、海上に於て英國と對等の地位を認めらるるに至つた爲め、離隔的又は孤立的の主義は最早米國人を滿足せしめざるに至つた。是の如き主義は元來歐羅巴諸國に對して認められたものであって、亞細亞の諸國に對しては、米國人は初より是の如き主義の適用を認めなかつた。米國は、ペリー又はハリスを送つて、却つて我國をして孤立の國策を抛たしめんと試みたのであつた。次章に於て説くべきが如く、モンロー主義の非干涉の原則及非植民の原則を東亞の強國に對しても適用するを主張し ,東亞の強國の政治的勢力を亞米利加大陸より除外せんとするのであるが、米國が東亞に於て政治的の進出を爲すことは毫も之を憚らざらんとするのである。是れ自己の縄張は東亞の強國をして尊重せしむるも、自己は東亞強國の縄張を認めぬとの不衝平なる思想に堕するに至るのである。
引用・参照・底本
『米國外交上の諸主義』立作太郎 著 昭和十七年七月五日第一冊發行 日本評論社
(国立国会図書館デジタルコレクション)
第四節 孤立主義の衰勢(一)
然るに米國に於て西部の領土の經營が進捗し、又千八百八十年頃より始つた海軍擴張計晝が漸く進み、米國は漸次帝國主義的政策を執るに至り、カリブ海方面に進展を計り、又海外に於ける發展を計晝し、布畦を併合し、スペインとの戰爭の結果としてフィリッピン、グアムを收め、東亞に於て支那に於ける門戸開放主義の國際的首唱者となり、海軍カの發達も較著なるに至り、ワシントン會議及ロンドン軍縮會議等を經て、海上に於て英國と對等の地位を認めらるるに至つた爲め、離隔的又は孤立的の主義は最早米國人を滿足せしめざるに至つた。是の如き主義は元來歐羅巴諸國に對して認められたものであって、亞細亞の諸國に對しては、米國人は初より是の如き主義の適用を認めなかつた。米國は、ペリー又はハリスを送つて、却つて我國をして孤立の國策を抛たしめんと試みたのであつた。次章に於て説くべきが如く、モンロー主義の非干涉の原則及非植民の原則を東亞の強國に對しても適用するを主張し ,東亞の強國の政治的勢力を亞米利加大陸より除外せんとするのであるが、米國が東亞に於て政治的の進出を爲すことは毫も之を憚らざらんとするのである。是れ自己の縄張は東亞の強國をして尊重せしむるも、自己は東亞強國の縄張を認めぬとの不衝平なる思想に堕するに至るのである。
引用・参照・底本
『米國外交上の諸主義』立作太郎 著 昭和十七年七月五日第一冊發行 日本評論社
(国立国会図書館デジタルコレクション)
