米中対立と日本2024年04月08日 18:33

国立国会図書館デジタルコレクション「月百姿 貞観殿月 源経基 (つきの百姿)」を加工して作成
 2018年に始まった米中の対立は、その後さまざまな分野に広がり、世界経済や国際情勢に影響を与えた。2019年には、両国が「第一段階」合意に達し、一部の関税が引き下げられたが、根本的な問題は解決されず、両国の緊張は続いている。この合意では、農産品の輸入拡大といった具体的な取引が行われたが、技術覇権や政策の問題は先送りされた。

 対立は通商・貿易やハイテク技術だけでなく、人権、自治、地域問題、さらには軍事的な緊張にも及んでいる。中国の政治体制に対する不信感も緊張を高め、新型コロナウイルス感染症の対応などがさらなる緊張を引き起こした。この状況下で、米中関係は政治体制を中心に緊張が続いており、解決策が見いだされていない。

 国際社会では、対中圧力が増加し、米中の対立が恒常化しているとの認識が広がっている。また、中国との対立は米ソ冷戦とは異なる危険をはらんでおり、バランスの取れた対応が求められている。2020年には新型コロナウイルス感染症が世界的な問題となり、これによりグローバル経済の課題が露呈した。また、国際秩序の不安定化も進行している。

 米国大統領選挙に向けては、トランプ大統領とバイデン候補の間で中国政策についての姿勢の違いが明確になっている。日本にとっては、このような情勢を踏まえて、技術基盤の整備や安全保障と経済政策の連携など、自らの利益を確保するための対応が求められる。同時に、日本は自らの価値観や国際秩序を示し、インド太平洋地域や欧州との協力を通じて国際的なルール形成を進めていく必要がある。

【視点】

米中対立:現状分析と日本の課題

2018年に本格化した米中対立は、通商・貿易やハイテク技術にとどまらず、政治体制や人権問題、安全保障など、幅広い分野に波及し、国際情勢に大きな影響を与えている。

2020年9月現在、米中対立の現状と日本の課題は以下の通り。

1. 政治体制を原因とする根深い対立

米中対立の根底にあるのは、政治体制の違いである。米国は民主主義国家である一方、中国は共産主義国家であり、政治体制に対する不信感や違和感が両国間の対立を深めている。

2. 恒常化する対立

輸出管理や投資規制などの対中圧力手段が増加し、米中対立が長期化する可能性が高い。米ソ冷戦とは異なり、経済的に密接に関係している点が、米中対立の危険性を高めている。

3. 国際秩序の揺らぎ

米中対立に加え、欧州統合の動揺やWTOの機能低下など、国際秩序は不安定化している。新型コロナウイルス感染症の拡大は、この状況をさらに悪化させている。

4. 日本の課題

日本は、米中対立という複雑な状況下で、以下の課題に取り組む必要がある。

技術基盤・規範の整備
安全保障と一体となった経済政策
米中両国に対する価値観の表明
国際的なルール形成・協力への貢献

5. バイデン政権による対中政策

2021年1月に就任したバイデン大統領は、トランプ政権よりも対中政策において協調的な姿勢を示しているが、人権問題や台湾問題などでは強硬な姿勢を維持している。

6. 今後の展望

米中対立は長期化する可能性が高いが、両国間の対話と相互理解が重要である。日本は、米中両国との関係をバランスしながら、国際社会の平和と繁栄に貢献していく必要がある。

・2018年に米国が対中追加関税を発動したことをきっかけに本格化した米中対立は、その後、貿易・経済、ハイテク技術、人権、政治体制など様々な分野に波及し、国際情勢に大きな影響を与えている。

・2019年12月に両国は貿易協議の「第一段階」合意に達し、2020年1月に署名したが、これは中国による米国農産品の輸入拡大の見返りに、米国が一部の追加関税を引き下げるという内容に留まり、根本的な問題解決には至らなかった。

・2020年に入り、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界を襲い、米中対立はさらに複雑化した。トランプ政権は中国を感染拡大の責任者と批判し、対中圧力を強化。一方、中国は自国の政治体制や人権問題に対する批判を強硬に否定している。

・2020年9月現在、米中対立は出口の見えない状況にあり、以下のような課題が指摘されている。

政治体制の対立: 米国は中国の共産党体制を脅威と捉え、中国は西側民主主義を批判。
経済摩擦: 通商・貿易、ハイテク技術などを巡る対立が継続。
安全保障上の緊張: 台湾問題、南シナ海問題などを巡る軍事的な緊張の高まり。
国際秩序の揺らぎ: 米ソ冷戦とは異なる新たな国際秩序の形成が模索される。
これらの課題を解決するためには、以下の取り組みが必要となる。
相互理解と信頼の構築: 対話と交流を通じて相互理解を深め、信頼関係を構築する。
共通利益に基づく協力: 感染症対策、気候変動対策など、共通利益に基づいて協力する。
国際的なルール形成: 国際社会全体で共通のルールを形成し、秩序を維持する。

・日本は、米中対立の狭間で難しい立場に置かれているが、以下の役割を果たしていくことが重要である。

米中双方との関係を維持・強化: バランス外交を展開し、両国との関係を維持・強化する。
国際社会における責任ある役割: 国際的なルール形成や協力を推進する。
技術基盤・規範の整備: 安全保障と一体となった経済政策により、自国の優位性を維持・向上させる。

・米中対立は長期化する可能性が高いが、国際社会全体で協力し、平和的かつ安定的な解決を目指していくことが重要である。

・2018年に本格化した米中対立は、現在も様々な分野に影響を与え続けている。 貿易・経済、ハイテク技術、人権問題、台湾問題、南シナ海問題など、その対立軸は多岐にわたる。

・2020年9月現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、世界経済は大きな打撃を受けている。この状況は、中国への経済依存度の高さを露呈し、グローバル経済の課題を浮き彫りにした。

・米中対立は、国際秩序の揺らぎを加速させている。 欧州統合の動揺、WTOの機能不全など、従来の国際システムは不安定化している。

・2020年11月の米国大統領選挙では、米中対立が重要な争点となった。トランプ大統領は中国への強硬姿勢を継続し、バイデン候補は中国政府の不公正な貿易慣行を批判しました。

・日本にとって、米中対立は大きな課題である。 技術基盤・規範の整備、安全保障と一体となった経済政策、そして国際的なルール形成や協力への積極的な参加が求められている。

・以下、米中対立の現状と課題について、更に詳しく述べる。

1. 米中対立の背景

中国の経済・軍事力の急速な台頭
中国による技術覇権の獲得に向けた動き
米国における中国への政治体制に対する不信感
新型コロナウイルス感染症の拡大

2. 米中対立の現状(米中対立は、以下の分野で顕著に表れていいる。)

貿易・経済
米国による対中追加関税の発動
中国による米国企業への報復措置
サプライチェーンの分断
ハイテク技術
中国企業への技術輸出規制
華為技術への制裁
5G通信規格をめぐる競争
人権問題
中国政府によるウイグル族への人権侵害
香港における民主化運動の弾圧
台湾問題
中国による台湾統一への圧力
米国の台湾への武器売却
南シナ海問題
中国による南シナ海の軍事拠点化
米国の航行の自由作戦

3. 米中対立の影響(米中対立は、以下のような影響を与えている。)

世界経済の減速
国際情勢の緊張
国際秩序の揺らぎ
サプライチェーンの混乱
ハイテク技術開発競争の激化

4. 日本の課題(米中対立は、日本にとって大きな課題である。)

技術基盤・規範の整備
自由で公正な国際経済秩序の維持
国際社会における日本のプレゼンス向上
安全保障と一体となった経済政策
経済安全保障の強化
国民生活の安定確保
国際的なルール形成や協力への積極的な参加
国際社会における責任ある一員としての役割を果たす

5. 今後の展望(米中対立の長期化は避けられない状況である。)

米国と中国の政治体制の違い
中国の経済・軍事力の台頭
台湾問題

・これらの問題は、容易に解決できるものではない。

・日本は、米中対立に巻き込まれることなく、自国の利益を守り、国際社会の平和と繁栄に貢献していく必要がある。

・そのためには、上記の課題に積極的に取り組んでいくことが重要である。

引用・参照・底本

米中対立と日本 FOREIGN AFFAIRS 外交防衛委員会 専門員 神田 茂 2020.10

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2020pdf/20201001002.pdf

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