米国の行動が東南アジアに混乱をもたらしている2024年05月22日 22:50

国立国会図書館デジタルコレクション「青楼美人合 第1冊」を加工して作成
 東南アジアにおけるアメリカの安全保障活動がインドネシア国民からの信頼を得ていないという世論調査の結果は、地域における複雑な地政学的状況を反映している。

 軍事活動の活発化

 アメリカは東南アジアでの軍事演習に積極的に参加している。2021年から2023年の間に東南アジアで行われた525回の軍事演習のうち、アメリカは33%に関与しており、これは地域の安定に対する脅威とみなされることがある。

 大国間競争の激化

 アメリカはQUAD(日本、アメリカ、オーストラリア、インド)やAUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリア)などの枠組みを通じて東南アジアにおける影響力を強化しようとしている。しかし、これが中国との対立を煽り、地域の安定を損なう要因となっていると懸念されている。

 信頼の欠如

 インドネシアでの世論調査によると、60.7%の回答者がアメリカの安全保障活動を「信頼していない」または「少ししか信頼していない」と答えており、これはアメリカの行動が地域の懸念を和らげるものではないとの見方が広がっていることを示している。

 経済協力の停滞

 バイデン政権が提唱するIPEF(インド太平洋経済枠組み)は、中国を牽制するための取り組みであるが、加盟国間での交渉が停滞しているため、期待された成果を上げられていない。これにより、地域の経済協力が停滞し、不信感が高まっている。

 ASEANの役割

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は地域の安定と共同発展を重視しており、大国間のバランス外交を追求している。ASEANは外部からの干渉を拒絶し、加盟国間の結束を強めることを目指している。これにより、大国が地域内での影響力を行使することに対して抵抗が生じている。

 アメリカの行動が東南アジアに混乱をもたらしているとの懸念は、インドネシアを含む地域の国々が自国の主権と安定を守るための取り組みを強化する必要性を示している。地域の安定を維持するためには、ASEANの枠組みを通じた協力と、外部からの干渉を最小限に抑える努力が重要である。

【視点】

インドネシア国民が抱く、アメリカの東南アジア地域における安全保障活動に対する不信感には、いくつかの重要な背景と具体的な要因が関係している。

1. 軍事活動の活発化

アメリカは東南アジアでの軍事演習に頻繁に参加している。2021年から2023年にかけて、東南アジアで行われた525回の軍事演習のうち、アメリカは約33%に参加していた。これは、地域の安全保障環境において大国間の競争を激化させ、緊張を高める要因と見なされることがある。

2. 大国間競争の激化

アメリカはQUAD(日本、アメリカ、オーストラリア、インド)やAUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリア)といった安全保障の枠組みを通じて、東南アジアでの影響力を強化しようとしている。しかし、これが中国との対立を煽り、地域の安定を損なう可能性がある。特に、南シナ海における中国との領有権争いが激化する中で、アメリカの軍事的関与はインドネシアなどの東南アジア諸国にとってリスクとみなされることがある。

3. 信頼の欠如

最近のインドネシアでの世論調査では、60.7%の回答者がアメリカの東南アジアにおける安全保障活動を「信頼していない」または「少ししか信頼していない」と答えている。この背景には、アメリカの行動が地域の懸念を和らげるどころか、逆に増大させていると感じていることがある。

4. 経済協力の停滞

バイデン政権は中国を牽制するためにインド太平洋経済枠組み(IPEF)を提唱したが、この枠組みに関する交渉は停滞している。多くの東南アジア諸国は経済発展を優先しており、IPEFの停滞はアメリカの経済的影響力が弱まっていると感じさせている。これにより、アメリカの戦略が必ずしも地域の経済的利益と一致していないとの見方が広がっている。

5. ASEANの役割

東南アジア諸国連合(ASEAN)は、地域の安定と発展を目的とした枠組みであり、大国間のバランスを保つことを重視している。ASEANは「地域内問題は地域内で解決する」という原則を掲げており、外部からの干渉を最小限に抑えることを目指している。このため、アメリカや中国といった大国が地域内で過剰に影響力を行使することには反発が生じやすい。ASEANは加盟国間の結束を強化し、大国が地域の安定を脅かすことを防ぐ努力を続けている。

6. 地域の安定と発展への影響

アメリカの行動は、東南アジアの安定に対する脅威と見なされることがある。特に、軍事的な関与や大国間の対立が地域の安定を損ない、経済発展や社会的安定に悪影響を及ぼす可能性がある。インドネシアを含む多くの東南アジア諸国は、経済発展と安定した社会を優先しており、これに対する脅威となる行動には敏感に反応する。

7.まとめ

アメリカの東南アジアにおける安全保障活動に対するインドネシア国民の不信感は、軍事的な関与の増加、大国間競争の激化、経済協力の停滞、ASEANの自主性尊重の欠如といった複数の要因に基づいている。地域の安定と発展を重視する東南アジア諸国は、外部からの干渉を警戒し、自らの主権と利益を守るための努力を続けている。

【要点】

・軍事活動の活発化

アメリカは東南アジアでの軍事演習に積極的に参加しており、地域の安全保障環境に影響を与えている。

2021年から2023年の間に行われた525回の軍事演習のうち、アメリカが参加したのは約33%に相当する。

軍事的な関与の増加は、地域の緊張を高める一因となっている。

・大国間競争の激化

アメリカはQUADやAUKUSなどの安全保障枠組みを通じて、東南アジアでの影響力を強化しようとしている。

しかし、これが中国との対立を激化させ、地域の安定を損なう可能性がある。

特に、南シナ海における中国の領有権主張との関連で、アメリカの介入が地域の緊張を高めている。

・信頼の欠如

インドネシアでの世論調査によれば、60.7%の回答者がアメリカの安全保障活動を「信頼していない」または「少ししか信頼していない」と回答している。

アメリカの行動が地域の懸念を和らげるどころか、逆に増大させているとの見方が広がっている。

・経済協力の停滞

バイデン政権が提唱するIPEF(インド太平洋経済枠組み)に関する交渉は停滞しており、地域の経済協力が進まない状況である。

多くの東南アジア諸国は経済発展を優先しており、停滞した協力関係はアメリカの経済的影響力が弱まっているとの感覚を強めている。

・ASEANの役割

東南アジア諸国連合(ASEAN)は地域の安定と発展を目的とした枠組みであり、大国間のバランスを保つことを重視している。

ASEANは外部からの干渉を最小限に抑え、地域内の問題は地域内で解決するという原則を掲げている。

アメリカや中国といった大国が地域内での影響力を強めようとすることに対し、ASEANは警戒心を持っている。

引用・参照・底本

アメリカは東南アジアに混乱をもたらし得るか? インドネシア国民の懸念 ParsToday 2024.05.21

https://parstoday.ir/ja/news/asia-i124330

ロシアとイランの対米戦線2024年05月22日 23:23

国立国会図書館デジタルコレクション「青楼美人合 第2冊」を加工して作成
 ロシアとイランが新たな対米戦線を形成していると指摘している。その背景には、アメリカの活動に対する両国の反発や、ウクライナ戦争におけるイランの無人機の活躍が挙げられている。さらに、ロシアとイランは共通の敵であるアメリカに対抗するために、技術や経験の交換を行い、相互協力を深めているようである。

 この報告書の結論では、西アジアから東ヨーロッパにかけての広範囲な地域での対米抵抗の枢軸が形成されていると述べられている。特に、米軍基地に対する攻撃やウクライナ戦争との関連性が強調されている。

 ロシアとイランは、国際的に重要な役割を果たす2つの大国であり、一極主義に対抗するために協力している。特に、防衛分野などでの相互関係の強化が進んでいる。

【視点】

ロシアとイランの対米戦線は、地政学的な要因や歴史的経緯、そして両国の共通の利益に基づいて形成されている。

まず、ロシアとイランは、両国ともにアメリカの影響力が及ぶ地域に位置している。ロシアはバルト海や東ヨーロッパ、中東地域においてアメリカとの戦略的な関係を持ち、イランもペルシャ湾地域でのアメリカの存在に直接的に関与している。このような地政学的な配置から、両国はアメリカの影響力拡大に対抗する動機を持っている。

次に、歴史的な経緯も対米戦線の形成に影響を与えている。ロシアとイランは過去に何度もアメリカと対立し、その過程で相互に連携や支援を行ってきた。例えば、ウクライナ戦争では、ロシアはイランの無人機技術を利用して戦闘に参加し、両国は技術や情報の交換を行いながらアメリカに対抗してきた。

そして、両国の共通の利益が対米戦線の形成を後押ししている。特に、一極主義やアメリカの覇権主義に反対する立場を取るロシアとイランは、多くの政治や経済問題で利害が一致している。そのため、防衛分野を含めた様々な分野での相互協力を強化することで、両国はアメリカの影響力を牽制しようとしている。

総括すると、ロシアとイランの対米戦線は地政学的、歴史的、そして利益の観点から形成されており、両国が協力してアメリカの影響力に対抗しようとしていることを示している。

【要点】

・地政学的要因

ロシアとイランは、地理的にアメリカの影響力が及ぶ地域に位置している。
ロシアはバルト海や東ヨーロッパ、中東地域において、アメリカとの戦略的な関係を持つ。

イランはペルシャ湾地域でアメリカの存在に直接的に関与しており、アメリカとの対立が常態化している。

・歴史的経緯

ロシアとイランは過去に何度もアメリカと対立してきた。

ウクライナ戦争などで、ロシアはイランの無人機技術を利用し、アメリカとの戦闘に参加してきた。

両国は技術や情報の交換を通じて相互に支援し合い、アメリカに対抗してきた。

・共通の利益

ロシアとイランは一極主義やアメリカの覇権主義に反対する立場を共有している。

両国は多くの政治や経済問題で利害が一致しており、共同で行動することで影響力を行使しようとしている。

対米戦線を形成することで、アメリカの地域的な拡大を牽制しようとしている。

・相互協力の強化

ロシアとイランは防衛分野を含め、様々な分野での相互協力を強化している。

特に、技術や情報の交換を通じた軍事的な協力が目立つ。

両国はアメリカの影響力を牽制するために、共同で行動することで力を合わせている。

・これらの要点から、ロシアとイランの対米戦線が地政学的、歴史的、そして利益の観点から形成されており、両国がアメリカの影響力に対抗しようとしていることが分かる。

【参考】
・米カーネギー財団は、国際政治や地政学、安全保障などの分野において調査研究を行い、その成果を公表することで、世界の情勢や政策に対する理解を深めることを目的としている。

政策提言と影響力: カーネギー財団は、調査研究の成果を元に政策提言を行い、政策決定者や国際社会に影響を与える役割を果たしている。そのため、財団が発表する報告書や研究成果は、国際政治の議論や方針形成に大きな影響を与えることがある。

学術的研究の推進: カーネギー財団は、国際関係や安全保障、地域研究などの分野で学術的な研究を推進し、その成果を広く公表している。これにより、学術界における知見の拡充や学術的な議論の深化に貢献している。

公共意識の形成: カーネギー財団は、世界の情勢や国際政治の動向に関する情報を一般の人々に提供することで、公共意識の形成に寄与している。そのため、報告書や研究成果はメディアや一般向けの出版物を通じて広く伝えられ、世論形成に影響を与えることがある。

国際協力と対話の促進: カーネギー財団は、国際協力や対話の促進にも力を注いでいる。国際会議やシンポジウムの開催、研究者や専門家の交流、異なる立場や意見の対話の場を提供することで、国際社会の相互理解や協力関係の構築に寄与している。

このように、米カーネギー財団は国際政治や地政学において重要な役割を果たしており、その活動は国際社会全体の安定と発展に貢献している。

・カーネギー財団は、アメリカの実業家アンドリュー・カーネギーによって設立された複数の慈善団体・研究機関の総称である。

代表的なカーネギー財団

カーネギー教育振興財団 (Carnegie Foundation for the Advancement of Teaching):1905年に設立。初等教育から高等教育までの教育改革に取り組む。

ニューヨーク・カーネギー財団 (Carnegie Corporation of New York):1911年に設立。「知識・理解の発達と普及」を目的とし、教育、民主主義、世界平和、アフリカにおける高等教育などを支援。
カーネギー国際平和基金 (Carnegie Endowment for International Peace):1910年に設立。国際政治に関するシンクタンク。

アンドリュー・カーネギー

カーネギー財団の設立者であるアンドリュー・カーネギーは、19世紀後半から20世紀初頭に活躍したアメリカの実業家。製鉄業で巨万の富を築き、「鉄鋼王」と呼ばれました。引退後は、教育、学術、社会事業に巨額の寄付を行い、カーネギー図書館、全米研究評議会、ハーバード大学ロシア研究センターなど、多くの組織・機関の設立に貢献した。

カーネギー財団の活動

カーネギー財団は、設立以来、教育、平和、国際理解などの分野で幅広い活動を行ってきた。具体的には、以下の様な活動が挙げられる。

教員研修プログラムの実施
教育に関する研究活動
図書館の建設・運営
平和に関する研究活動
国際交流事業
カーネギー財団の影響

カーネギー財団の活動は、アメリカ社会のみならず、世界各国に大きな影響を与えてきた。特に、教育分野における貢献は顕著であり、教員養成制度の改革や教育研究の発展に大きく寄与した。また、平和活動を通じて、国際紛争の解決や国際協調の促進にも貢献してきた。

(【参考】はブログ作成者が付記した。)

引用・参照・底本

バルト海からペルシャ湾まで:ロシアとイランの対米戦線 ParsToday 2024.05.22

https://parstoday.ir/ja/news/asia-i124378