【桃源閑話】 「極東は戦場である」2024年07月16日 15:02

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【桃源閑話】

 日本は内閣支持率15.5%と云う過去最低の、即刻解散をし民意を問うべきに相当する岸田内閣に、〝諍乱〟の種を仕込まれている。
 
 この事は、引用した「それは、実に、吉田内閣と、それを支持した党人とが、好んで製造した事態なのである」に酷似している。

 岸田内閣は専ら外交を米国に密着し依存し、米国の「インド太平洋戦略」の下で、中国に圧力をかける、或は封じ込めるために、NATOとアジア太平洋の同盟の結束を支持し連み、NATOへの積極的な関与で、米国の覇権戦略の〝駒〟に成り下がっているである。

 〝米国の召使〟岸田内閣は、偏に中国との戦争を引き起こし、北東アジアに戦禍を被らせ、あわよくばの白昼夢をもみる、危険な行為なのだ。

 <口と腹とは違>い、平和への道を歩んでいる訳ではない。

 執拗に何度でも言う、岸田政権は最も危険〟である。

 以下の文は、『擾乱の日本 蜷川新評論集』蜷川 新著 まえがき(3)からの抜粋引用である。

 世界の論客は、「極東は戦場である」と、称している。これは、けつして不当の言ではない。日本の本土を、軍事基地となし、そこから、陸、空、海の外国の兵力は、つねに北鮮の戦場に出入しているのである。日本に在るこの外国軍の基地は、北鮮軍から見たならば、当然に、攻撃を加えることのできる地域であるのだ。このような事態がある。日本には、平和は存在しない。現実に戦争区域内に、われわれ八千万人は置かれているのである。危険きわまることである。

 日本の右のような現実は、ポツダム宣言によつて生じたものではない。旧軍人が作つたものでもない。降伏という事実のために、できてしまつたものでもない。それは、実に、吉田内閣と、それを支持した党人とが、好んで製造した事態なのである。

 私の志すところは。日本の独立と、平和と八千万人の幸福と、名誉とに在るのである。私は、公明正大をもつて、みずから信じている。他念はない。
 
 この著書は、右の論文を収録したものが、主体となつている。それに若干の、新稿による論文を加えたものである。平和日本を建設し、時局救済に志す同志の一読を希う。

 一九五二年十月十五日
               大磯にて
                       蜷 川 新
【閑話 完】

引用・参照・底本

『擾乱の日本 蜷川新評論集』蜷川 新著 昭和廿七年十一月一日初版発行 千代田書院
註:読み易さを考慮し原文にない段落(文章間隔)を附した。

内閣支持 15.5 %過去最低更新 時事世論調査 中日新聞 2024.07.12

債務残高の国際比較(対GDP比)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/007.pdf

【桃源閑話】 無駄なことに精力・国力を注ぎ込む2024年07月16日 15:46

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【桃源閑話】 

 無駄なことに精力・国力を注ぎ込んでいる。日本は四周を海に囲まれている。日本、〝有事〟ならば、即刻パニックに陥り、1億2千万余の国民が餓死の恐怖へと突き進む。

 日本は〝ガラスの城〟であり、国民は四畳半の部屋にぎゅうぎゅう詰めになっている様なものだ。其処に爆弾が炸裂する、或は密集する老朽化した原発に照準を合わせられる。

 つまり、国民にとって、避難の仕様がない。逃げ場がないのだ。

 「私はこうして『日本を守る! 』」?大言壮語というより、白昼夢の世界である。例えば、スタンド・オフ・ミサイル(発射母体が敵の防空圏内に入ることなく、目標に到達できるように設計されている)での敵基地攻撃の前に、ごまんとある長中距離超音速ステルスミサイル等で打撃されるだろう。それに日本だけが防衛の先端技術を駆使している訳でもあるまい。<刀折れ矢尽きる>のは<火を見るよりも明らか>であろう。

 一体全体、如何なる戦争を想定しているのだ。戦争というのは、常に全面戦争である。片手間の戦争などありえない。

 米国が、EUが支援?現在のウクライナ・イスラエル紛争を観れば判る。大量の武器弾薬を海を渡って来るのに何日かかるのか、僥倖に恵まれたとしても、日本に到着する場合、ミサイルのピンポイント攻撃で轟沈である。

 声明の糧、食料なども同様である。

 財政も軍需産業も衰えた、つまり、物づくりも出来ない、金も無い(米国制裁の自滅策で)、頭ばかりが<痩せ馬の先走り>の如くで、日本に、韓国に頼る始末なのだ。

 そう、日本もGDPの勢いは今や遠い昔話、債務残高の対GDP比250%以上と、G7諸国のみならず、他の諸外国と比べても突出しているのだ。<無い袖は振れぬ>筈なのに、大判振る舞い続けようとしている。<うまい汁を吸う>手段を見つけて、国民に負担を押し付けている状況である。

 米国の戦争は第二次世界大戦後、非正規軍、しかも弱い相手と戦って惨敗を喫しているのが実情である。正規軍対正規軍の戦争は経験していない。経験せず勝つための手段が、〝駒〟を使って代理戦争させ、相手の弱体化を策謀する遣り方である(ウクライナを観よ)。そう、その駒に日本はなろうと、勤しんでいるようにみえる。

 「台湾周辺における中国の活動活発化」など、日米欧の<ちょっかいを出す>ことの裏返しではないのか。中国に理あり、日米欧に屁理屈あり、とみた。
 つまり、日米欧(西側)は〝無理筋〟であり、相手が正しく応じたら成功しない手を打っているのだ。

 その結果が、国際社会のBRICSの拡大・強化に繋がっている。西側の考え方が非常に悪い。悪い計画を良い行動で正すことは不可能に近い。これは国家の運営、経綸の問題でもある。

 さて、本来なら、逐次項目を追って詳しく論及したいところだが、一国民の心配など、<屁とも思わぬ>だろうから、止めておくことにする。

 書けばそれで事は一丁上がり、というのが官僚の常か。兎に角、抜け穴の、突っ突きどころの多いのが、これまた常である。

 誰も読まないだろうと、想定して書いてみた。徒労であるが、自己の慰み種にはなるか。

 <言いたい事は明日言え>ではなく、拙速を避けずに〝今日〟言う。精神衛生上誠に宜しい。

 如何に防衛装備を近代化しようが、所詮、<鼬ごっこ>の愚かしい行為に映る。(国民)防衛などは言葉の遊び同様である。国民の死を賭けての防衛など論理矛盾である。
 
 勝手に敵と見做している、相手とじっくり話し合うことだ。

 戦争は絶対にするな!である。これが〝防衛の基本〟である。

 令和6年版 防衛白書アンケートに書こうとした内容である。が、500文字の制限のため、取りやめた内容である。

【閑話 完】

【引用・参照・底本】

令和6年版 日本の防衛 防衛白書
https://www.mod.go.jp/j/press/wp/wp2024/pdf/R06zenpen.pdf

NATOサミット:不用意な声明2024年07月16日 16:29

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【概要】

 ケリー・A・グリエコの記事は、NATOの最近の戦略的転換、特に中国への注目の高まりについて批判的な見方を示している。ワシントン首脳会談で全32加盟国が合意したNATOの最新のコミュニケは、ロシアのウクライナに対する戦争の重要なイネーブラーとして中国を強調している。この変化には、中国が核兵器を増強し、悪意あるサイバー活動に関与し、同盟を分断するための威圧的な戦術を採用しているという非難が含まれる。NATOはまた、インド太平洋地域の重要性を強調し、オーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国(総称してインド太平洋4(IP4))との協力を深めることを約束した。

 中国の反応は即座に厳しく、NATOの声明は挑発的で冷戦のメンタリティに満ちていると非難した。首脳会談中に北京がNATO加盟国ポーランドの国境付近でベラルーシと戦略的軍事演習を行ったことは、中国の不快感を強調し、報復措置の可能性を警告する役割を果たした。

 グリエコは、NATOと中国が安全保障のジレンマに陥っており、一方の当事者による防衛行動が他方の当事者によって脅威として認識され、緊張が高まることを示唆している。中国のロシア支援と地域的野心に対する懸念から、NATOとIP4の関係が深まっていることは、中国政府から現状変更と挑発と見なされ、中国からのより攻撃的な対応を促している。

 北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、中国とベラルーシの軍事演習を、権威主義体制間の連携が強まっている証拠と解釈し、欧州の安全保障上の懸念をさらに煽っていると述べた。NATOの現在のアプローチは、現実の脅威に対処することを意図しているとはいえ、不注意にも緊張をエスカレートさせ、NATOが防ごうとしている紛争そのものを引き起こす可能性があると主張している。サイバーセキュリティなどの分野でのIP4との協力がもたらす実際的な利点は、北京における疑り深さの高まりと攻撃性によって凌駕されるかもしれない。

【詳細】

 ケリー・A・グリコの記事は、NATOが中国に対して焦点を当てることによる戦略的なリスクを詳述している。以下に、この記事の重要なポイントをさらに詳しく説明する。

 NATOのコミュニケ

 NATOはワシントンで開催されたサミットで、中国を「ロシアのウクライナに対する戦争の決定的な支援者」として非難した。また、中国の核兵器拡張、サイバーおよびハイブリッド活動、強制的な戦術などについて懸念を示した。NATOは、インド太平洋地域(インド太平洋4国、IP4)との協力を深めることも明言した。

 中国の反応

 中国は即座に反発し、NATOの声明を「冷戦時代の精神と好戦的なレトリックに満ちている」と非難した。さらに、中国はベラルーシとの共同軍事演習をNATOサミットの直前に行い、NATO加盟国であるポーランドの国境近くで行動を示した。これはNATOへの明確な警告として解釈された。

 安全保障のジレンマ

 NATOと中国が「安全保障のジレンマ」に陥っていると指摘している。NATOの防御的な行動は中国にとって脅威とみなされ、それが中国の反発を引き起こす。NATOがIP4との協力を強化することで、中国はそれを現状変更として認識し、さらに攻撃的な行動を取るようになる。

 NATOの戦略的誤解

 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、中国とベラルーシの軍事演習を「権威主義的な政権がますます連携している証拠」として解釈した。しかし、これは中国からのメッセージを誤解しており、逆にヨーロッパの不安感を強める結果となった。

 結論

 グリコは、NATOのアジアへの傾斜が紛争を引き起こすリスクがあると警告している。NATOとIP4の協力は、実際には中国に対する抑止力を強化するには不十分であり、逆に中国の不安と攻撃性を増幅させるだけだと述べている。NATOの現在のアプローチは、実際の脅威に対処することを意図しているものの、緊張をエスカレートさせ、望まない紛争を引き起こす可能性が高いと指摘している。

 このように、NATOの対中戦略は複雑な状況をさらに悪化させるリスクがあり、より慎重な対応が求められているというのがグリコの記事の主旨である。

【要点】

 主要なポイントを箇条書きで説明する。

 1.NATOのコミュニケ

 ・NATOは中国を「ロシアのウクライナに対する戦争の決定的な支援者」と非難。
 ・中国の核兵器拡張、サイバー活動、強制的な戦術に懸念を示す。
 ・インド太平洋地域(インド太平洋4国、IP4)との協力を深めることを明言。

 2.中国の反応

 ・中国はNATOの声明を「冷戦時代の精神と好戦的なレトリック」として非難。
 ・中国はベラルーシとの共同軍事演習をNATOサミットの直前に実施、NATO加盟国ポーランドの国境近くで行動。

 3.安全保障のジレンマ

 ・NATOの防御的な行動が中国にとって脅威とみなされ、反発を引き起こす。
 ・NATOがIP4との協力を強化することで、中国はそれを現状変更として認識し、攻撃的な行動を取る。

 4.NATOの戦略的誤解

 ・NATOの事務総長は中国とベラルーシの軍事演習を「権威主義的な政権の連携」と解釈。
 ・この解釈は中国からのメッセージを誤解し、ヨーロッパの不安感を強める結果に。

 結論

 ・NATOのアジアへの傾斜が紛争を引き起こすリスクがあると警告。
 ・NATOとIP4の協力は中国に対する抑止力を強化するには不十分。
 ・現在のアプローチは緊張をエスカレートさせ、望まない紛争を引き起こす可能性が高い。

 このように、NATOの対中戦略は状況を悪化させるリスクがあり、慎重な対応が求められるというのが記事の主張である。

【参考】

・IP4(インド太平洋4カ国)について

構成国

オーストラリア
日本
ニュージーランド
韓国

背景と目的

地域安全保障の強化: IP4は、インド太平洋地域における安全保障の強化を目指して結成された。これには、中国の影響力拡大や北朝鮮の軍事行動に対する抑止力の強化が含まれる。

協力の深化: これらの国々は、サイバーセキュリティ、情報戦、海上安全保障、軍事演習などの分野で協力を深めている。

NATOとの関係

パートナーシップの強化: IP4はNATOとのパートナーシップを強化しており、共同での軍事演習や情報共有、戦略的協議を行っている。

共通の脅威への対処: IP4とNATOは、中国の軍事的・経済的な影響力の拡大やサイバー攻撃、情報操作に対する共通の懸念を持っており、これに対処するための連携を強化している。

最近の動向

ワシントンサミット: 最近のNATOサミットでは、IP4との協力関係がさらに強化されることが確認された。これは、インド太平洋地域がNATOにとっても重要であることを示している。

中国の反応

反発: 中国は、NATOとIP4の連携強化を「冷戦時代の精神」として批判し、これに対抗するための軍事的な行動や外交的な反発を強めている。

まとめ

IP4は、インド太平洋地域の安全保障を強化するために結成された4カ国のグループであり、NATOとの協力を通じて共通の脅威に対処することを目指している。これにより、地域の安定と安全を保つための取り組みが進められているが、中国との緊張も高まっている。

・「イネーブラー(enabler)」は、特定の行動や状況を促進または支援する役割を果たす者や要因を指す。この記事の文脈では、NATOが中国を「ロシアのウクライナに対する戦争の決定的なイネーブラー」と呼ぶことによって、中国がロシアの軍事行動や経済活動を支援し、それを可能にする重要な役割を果たしていると非難していることを意味する。

イネーブラーの具体的な例

経済的支援: 中国がロシアに対して経済的な支援を提供することで、ロシアの戦争努力を継続させることが可能になる。これには、エネルギー取引や貿易、金融支援が含まれる。

軍事技術の供給: 中国がロシアに対して軍事技術や装備を提供することで、ロシアの軍事能力を強化する可能性がある。

外交的支援: 国際舞台において中国がロシアを支持し、制裁を弱めたり、国際的な非難を和らげたりする行動も含まれる。

NATOの懸念

軍事的脅威の増加: 中国の支援によりロシアの軍事的脅威が増大すること。
国際秩序の不安定化: 中国とロシアの協力が、国際的なルールや規範を弱体化させ、世界の安全保障に対するリスクを高めること。
地域的な緊張の悪化: 中国の行動がアジア太平洋地域の緊張を悪化させ、特にインド太平洋地域での安全保障環境を不安定にすること。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Is NATO Making a Strategic Blunder? STIMSON 2024.07.12
https://www.stimson.org/2024/is-nato-making-a-strategic-blunder/

NATO:.「March of Dimes」の問題2024年07月16日 19:25

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【概要】

 エマ・アシュフォードの記事「1990年代はNATOにとってノスタルジックな10年であってはならない」は、NATOが1990年代に経験した戦略的変化を批判し、これらの変化により、冷戦後期よりも同盟の防御力が低下し、一貫性がなくなり、米国の能力への依存度が高まったと論じている。

 焦点の転換:クリントン政権とブッシュ政権の米国の政策立案者は、NATOを集団防衛から、バルカン半島での平和維持活動、人道的任務における国連の執行、東欧における西側規範の促進など、新たな任務へと方向転換した。

 NATOの拡大:北大西洋条約機構(NATO)の東欧への拡大がしばしば強調されるが、それは加盟国の軍隊を「地域外」の任務のために再編成し、テロリズムのような非伝統的な安全保障上の懸念に焦点を当てるなど、より広範な変革の一環であった。

 「マーチ・オブ・ダイムズ」問題:ソビエト連邦の崩壊後、NATOは、小児ポリオを撲滅した後、マーチ・オブ・ダイムズが方向転換したように、実存的な問題に直面した。NATOは縮小するどころか、新たな課題に対処するために変革し、当初の集団防衛の焦点を薄めてしまった。

 米露関係への影響バルト三国のような防御力の低い地域への拡大は、米露関係を悪化させ、米国の安全保障を延長し、NATOの防衛態勢を複雑にした。

 弱体化した欧州の防衛:地域外での任務への移行により、ヨーロッパ軍は自国の防衛を維持する能力が低下した。米国の強いコミットメントにより、ヨーロッパは自国の軍事力を削減することができ、ドイツがドイツ連邦軍の兵力を50万人以上から3分の1強に削減したことに代表される。

 現在の課題:1990年代の変革により、NATOは、特に2014年以降、集団防衛という本来の使命に戻ることが困難になり、米国の能力に大きく依存する、防御力と一貫性の低い同盟関係につながっている。

 解析

 アシュフォードは、1990年代に下された戦略的決定、特に集団防衛からより広範で野心的な任務への移行が、NATOの中核的な防衛能力を弱体化させたと主張している。こうした変化により、NATOは加盟国の防衛能力が低下し、米国への依存度が高まり、同盟の全体的な有効性が損なわれていると彼女は考えている。

 この視点は、戦略転換の長期的な影響と、同盟の中核的な使命に明確な焦点を当て続けることの重要性を強調している。アシュフォードの批判は、冷戦後の時代と今日の安全保障上の課題に対処するには、より穏健でヨーロッパに焦点を当てたNATOの方が適していたかもしれないことを示唆している。

【詳細】

 エマ・アシュフォードの「The 1990s Should Not Be A Nostalgic Decade for NATO(1990年代はNATOにとって懐かしい時代ではない)」は、1990年代にNATOが経験した戦略的な変革についての批判を述べている。彼女の主張は、これらの変革がNATOを防衛力が低下し、一貫性が欠如し、冷戦終結期よりもさらに米国の能力に依存するものにしてしまったというものである。

 焦点のシフト: クリントン政権とブッシュ政権の政策決定者は、NATOを集団防衛から、新しいミッション(バルカン半島での平和維持活動、国連安全保障理事会の人道的ミッションの執行機関としての役割、東欧でのリベラルおよび西洋の規範の推進)へと再編成した。

NATOの拡大: 東欧へのNATOの拡大はしばしば注目されるが、これはより広範な変革の一部であり、加盟国の軍隊を「地域外」ミッションのために再編成し、テロリズムのような非伝統的な安全保障問題に焦点を当てることを含んでいた。

 「March of Dimes」の問題: ソ連の崩壊後、NATOはその存在意義を問われることになり、まるでMarch of Dimesが小児麻痺を根絶した後に他の原因にシフトしたように、NATOも新しい課題に対応するために変革した。しかし、これにより本来の集団防衛の焦点が希薄になった。

 米露関係への影響: バルト三国のような防衛しにくい地域への拡大は、米露関係を悪化させ、米国の安全保障の保証を拡大し、NATOの防衛姿勢を複雑にした。

 ヨーロッパの防衛力の弱体化: 地域外ミッションへのシフトは、ヨーロッパの軍隊が自国の防衛を維持する能力を低下させた。強力な米国のコミットメントにより、ヨーロッパは自国の軍事能力を削減することができた。例えば、ドイツの国防軍(Bundeswehr)は冷戦終結時には50万人以上の兵力を持っていたが、現在はその3分の1以上減少している。

 現在の課題: 1990年代の変革により、特に2014年以降、NATOが本来の集団防衛の使命に立ち返ることが難しくなっている。このため、現在のNATOは防衛力が低下し、一貫性が欠如し、米国の能力に大きく依存していると指摘している。

 詳細な分析

 アシュフォードは、1990年代に行われた戦略的決定、特に集団防衛からより広範で野心的なミッションへのシフトが、NATOの核心的な防衛能力を弱体化させたと主張している。彼女は、これらの変革がNATOを防衛力が低下し、一貫性が欠如し、米国の能力に依存するものにしてしまったと考えている。

 また、彼女は、より控えめでヨーロッパに焦点を当てたNATOの方が、冷戦後および現在の安全保障課題に対処するために適していた可能性があると示唆している。この視点は、戦略的な変革の長期的な結果と、同盟の核心的な使命を維持することの重要性を強調している。

 歴史的文脈

 1990年代初頭: 冷戦の終結とソ連の崩壊により、NATOはその存在意義を再評価する必要に迫られた。

 NATOの拡大: チェコ、ハンガリー、ポーランドなどの旧東側諸国がNATOに加盟し、ロシアとの緊張が高まった。

 バルカン半島の紛争: NATOはユーゴスラビア崩壊後のバルカン半島での紛争に介入し、平和維持および人道的ミッションを遂行した。

 テロとの戦い: 9/11以降、NATOはテロリズム対策を重視するようになり、アフガニスタンなどでの作戦を展開した。

 現在の状況

 アシュフォードの指摘する問題点は、現在のNATOが直面する課題を理解する上で重要である。NATOは再び集団防衛に焦点を当てる必要があり、特にウクライナ紛争やロシアの脅威に対処するために、ヨーロッパの防衛力を強化する必要がある。

 結論

 エマ・アシュフォードの批判は、NATOの1990年代の変革が今日の同盟の脆弱性を生み出したと主張している。彼女の視点は、NATOが本来の集団防衛の使命に立ち返るために、過去の戦略的決定を再評価し、ヨーロッパの防衛力を強化する必要性を強調している。

【要点】

 エマ・アシュフォードの主張の主要ポイント

 1.焦点のシフト

 クリントン政権とブッシュ政権は、NATOを集団防衛から新しいミッション(バルカン半島での平和維持活動、人道的ミッション、東欧でのリベラルおよび西洋の規範の推進)へと再編成。

 2.NATOの拡大

 東欧への拡大は一部であり、加盟国の軍隊を「地域外」ミッションのために再編成し、テロリズムのような非伝統的な安全保障問題に焦点を当てることを含む。

 3.「March of Dimes」の問題

 ・ソ連の崩壊後、NATOはその存在意義を問われ、新しい課題に対応するために変革したが、これにより本来の集団防衛の焦点が希薄に。

 4.米露関係への影響

 ・バルト三国のような防衛しにくい地域への拡大が米露関係を悪化させ、米国の安全保障の保証を拡大し、NATOの防衛姿勢を複雑に。

 5.ヨーロッパの防衛力の弱体化

 ・地域外ミッションへのシフトにより、ヨーロッパの軍隊が自国の防衛を維持する能力が低下。強力な米国のコミットメントにより、ヨーロッパは自国の軍事能力を削減。

 6.現在の課題

 ・1990年代の変革により、特に2014年以降、NATOが本来の集団防衛の使命に立ち返ることが難しくなり、防衛力が低下し、一貫性が欠如し、米国の能力に大きく依存。

 詳細な分析

 ・戦略的決定: 1990年代の戦略的決定がNATOの核心的な防衛能力を弱体化。
 ・控えめなアプローチ: より控えめでヨーロッパに焦点を当てたNATOの方が冷戦後および現在の安全保障課題に適していた可能性。
 ・長期的な結果: 戦略的変革の長期的な結果と、同盟の核心的な使命を維持することの重要性を強調。

 歴史的文脈

 ・1990年代初頭: 冷戦の終結とソ連の崩壊により、NATOはその存在意義を再評価。
 ・NATOの拡大: 東欧の旧東側諸国がNATOに加盟、ロシアとの緊張が高まる。
 ・バルカン半島の紛争: NATOはユーゴスラビア崩壊後の紛争に介入、平和維持および人道的ミッションを遂行。
 ・テロとの戦い: 9/11以降、NATOはテロリズム対策を重視し、アフガニスタンでの作戦を展開。

 現在の状況

 ・現在の課題: NATOは再び集団防衛に焦点を当てる必要があり、特にウクライナ紛争やロシアの脅威に対処するために、ヨーロッパの防衛力を強化する必要。

 結論

 ・再評価の必要性: 1990年代の戦略的決定を再評価し、NATOが本来の集団防衛の使命に立ち返るため、ヨーロッパの防衛力を強化する必要があると強調。

【参考】

「March of Dimes」の問題(March of Dimes problem)とは、NATOが冷戦終結後に直面した課題を説明するための比喩である。具体的には、March of Dimes(米国の小児麻痺対策団体)が小児麻痺を根絶した後に他の課題にシフトしたことを引き合いに出して、NATOの変革過程を説明している。

「March of Dimes」の問題の概要

背景

March of Dimesは、かつて小児麻痺(ポリオ)の根絶を目指して活動していた団体である。小児麻痺の根絶に成功した後、団体はその使命を他の健康課題(例:出生前障害の予防)にシフトした。

比喩の意味

NATOの状況: 冷戦が終結し、ソ連が崩壊した結果、NATOの元々の使命であるソ連からの集団防衛という目的が達成された。NATOはその後、他の安全保障上の課題(バルカン半島での平和維持活動やテロリズム対策など)にシフトした。

問題点

使命の変化: NATOが冷戦終結後に新しい課題に対応するために変革を行う一方で、本来の集団防衛の使命が希薄化した。これにより、NATOは本来の防衛機能を維持することが難しくなり、他の非伝統的なミッションに焦点を合わせすぎて、基本的な防衛力が低下した。

教訓

使命の維持: 組織がその核心的な使命を達成した後も、その使命に固執し、変革する際には基本的な機能を失わないようにすることの重要性を示している。NATOの場合、冷戦終結後に新しいミッションにシフトする際に、本来の防衛機能の維持が不十分だったという問題がある。

NATOにおける影響

集団防衛の希薄化: NATOは冷戦終結後、集団防衛から新しいミッションにシフトした結果、防衛機能が弱体化し、地域外のミッションに重点を置き過ぎた。

新たな課題への対応: NATOはウクライナ紛争やロシアの脅威に直面しており、本来の防衛機能に再び焦点を当てる必要がある。

この比喩は、NATOの変革がどのようにその基本的な防衛機能に影響を与えたかを理解するための有用な視点を提供する。

・「March of Dimes」の名称の由来

「March of Dimes」: この名称は、設立者のフランクリン・D・ルーズベルト大統領の「March of Dimes」募金キャンペーンに由来している。このキャンペーンでは、大統領が広く募金を呼びかけ、特に1セント(ダイム)を寄付するように促した。この「March」(行進)は、募金活動が広がっていく様子を象徴している。

意味と象徴

「March」: 「March」は、進行や広がりを意味し、団体が全国規模で募金活動を行っていたことを象徴している。団体が人々の関心を引き寄せ、募金を集めていた様子を反映している。

「March of Dimes」の問題との関連

比喩の使用: 「March of Dimes」の比喩は、団体がその使命を達成し、次に進むために方向転換したことを示している。同様に、NATOが冷戦終結後に集団防衛から新しいミッションにシフトした結果、本来の使命が希薄化したことを説明する際に用いられる。比喩として、成功した後の組織の方向転換がどのようにその本来の機能に影響を及ぼすかを示唆している。

このように、「March of Dimes」の名称は募金キャンペーンから来ており、その象徴的な意味が比喩としてNATOの変革の問題を説明するために使われている。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

The 1990s Should Not Be A Nostalgic Decade for NATO STIMSON 2024.07.02
https://www.stimson.org/2024/the-1990s-should-not-be-a-nostalgic-decade-for-nato/

NATO:「3Ds」→3Cs」2024年07月16日 21:13

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【概要】

 ケリー・A・グリエコの記事は、同盟の欧州の柱を強化するために、NATOの焦点を「3D」(依存、重複、差別)から「3C」(協力、能力、強化)にシフトすることを提唱している。主なポイントをまとめると、次のようになる。

 NATOの現状

 NATOと欧州の同盟国が国防費の増額を約束することへのコミットメントを再確認するというお馴染みのアプローチは、欧州が米国に依存し続けることを解消していない。

 マドレーヌ・オルブライトの「3D」は、バランスの取れたまとまりのある同盟関係を確保するためのものだったが、NATO内の非効率性と不均衡を招いた。

 「3D」の批評

 依存:「デカップリングなし」ルールは、欧州が防衛資金と資金調達におけるEUの優位性を活用することを妨げ、非効率性を招いている。

 重複:「重複禁止」ルールは、欧州の国防費が細分化され、多額の支出にもかかわらず非効率性が生じているという問題に対処できていない。

 差別:「無差別」の原則は、米国が互恵的な利益をもたない開かれた欧州市場から利益を得ているため、欧州の防衛産業の統合を妨げてきた。

 提案された「3C」

 協力:NATOの基準と調達目標をEUの投資と調達の調整に合わせることにより、EUとNATOの協力を強化する。

 能力:防衛努力に資金を提供し、強化するために、COVID復興計画に類似したEUの共同借入イニシアチブを通じて、欧州の軍事力を向上させる。

 統合:欧州の防衛産業を合理化・統合し、米国の防衛装備品への依存を減らし、より自立した欧州の防衛部門を構築する。

 グリエコは、「3C」を採用することで、NATOはよりバランスの取れた対等な同盟へと進化し、現在の非効率性に対処し、欧州の防衛能力を強化できると主張している。

【詳細】

 ケリー・A・グリーコ氏の記事は、NATO(北大西洋条約機構)の戦略的アプローチの変更を提唱している。具体的には、アメリカの元国務長官マデレイン・オルブライトが提唱した「3Ds」(依存、重複、差別)から、「3Cs」(協力、能力、統合)へとシフトすることを主張している。以下に、記事の内容をさらに詳しく説明する。

 現在のNATOの状況

 1.NATOの現在のアプローチ

 ・NATOのサミットでは、アメリカが「鉄の意志で」第5条(集団防衛)を再確認し、ヨーロッパ諸国が防衛予算を増額するという従来のパターンが繰り返されている。
 ・しかし、このアプローチではヨーロッパのアメリカへの依存が解消されておらず、依然として問題が残っている。

 2.オルブライトの「3Ds」の批判

 ・依存(Dependency): 「非切断」(no decoupling)の原則は、ヨーロッパがEUの防衛資金やファイナンシングのメリットを活用するのを妨げている。たとえば、EUの「防衛産業戦略」や予算の増加に対し、NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグが警告を発するなど、アメリカとの連携が優先される傾向がある。
 ・重複(Duplication): 「重複排除」(no duplication)の原則は、EUがNATOの役割を重複させることを防ぐ一方で、ヨーロッパの防衛支出が非効率である問題に対処していない。ヨーロッパ諸国はロシアよりも多くの防衛費を使っているが、装備の種類が多すぎて効率的な運用ができていない。
 ・差別(Discrimination): 「差別排除」(non-discrimination)の原則は、アメリカの防衛企業の利益を優先し、ヨーロッパの防衛産業の統合を阻害している。アメリカの企業がヨーロッパの防衛市場にアクセスできる一方で、ヨーロッパ側にはあまりメリットがない。

 提案する「3Cs」

 1.協力(Cooperation)

 ・EU-NATOの協力強化: NATOとEUの協力を深め、NATOが標準や調達目標を設定し、EUが投資や調達を調整する形で連携する。これにより、両組織の役割分担が明確になり、効率的な防衛政策が可能になる。

 2.能力(Capabilities)

 ・共同EU借入: EUが「COVID-19回復計画」のように共同で借入を行い、防衛能力の向上に資金を投入することが提案されている。これにより、ヨーロッパの防衛能力を強化し、アメリカに依存しない防衛力の構築を目指す。

 3.統合(Consolidation)

 ・防衛産業の統合: ヨーロッパの防衛産業を統合し、アメリカの防衛装備から自立することを目指す。これにより、ヨーロッパが独自に防衛装備を開発・調達し、より効率的な防衛体制を整えることができる。

 まとめ

 グリーコ氏は、NATOが「3Ds」から「3Cs」にシフトすることで、より均等なアライアンスとして進化し、ヨーロッパの防衛力を強化するべきだと提案している。このアプローチにより、ヨーロッパがアメリカの防衛に依存せず、独自に防衛力を構築する道が開かれると考えられている。

【要点】

 現在のNATOの状況

 ・アメリカの「鉄の意志」: アメリカは第5条(集団防衛)へのコミットメントを再確認。
 ・ヨーロッパの防衛予算増額: ヨーロッパ諸国は防衛予算の増額を約束。
 ・依存の問題: ヨーロッパがアメリカに依存している状態が続いている。

 オルブライトの「3Ds」の批判

 1.依存(Dependency)

 ・「非切断」(no decoupling)の原則が、ヨーロッパがEUの防衛資金やファイナンシングのメリットを活用するのを妨げている。
 ・EUの防衛予算増加に対し、NATO事務総長が警告を発するなど、アメリカとの連携が優先されている。

 2.重複(Duplication)

 ・「重複排除」(no duplication)の原則が、EUの防衛役割の重複を防ぐ一方で、防衛支出の非効率を解決していない。
 ・ヨーロッパ諸国は多種類の装備を持ち、非効率な運用が続いている。
 
 3.差別(Discrimination)

 ・「差別排除」(non-discrimination)の原則が、アメリカ防衛企業の利益を優先し、ヨーロッパの防衛産業統合を妨げている。
 ・アメリカ企業がヨーロッパ市場にアクセスできる一方で、ヨーロッパにはあまりメリットがない。

 提案する「3Cs」

 1.協力(Cooperation)

 ・EU-NATOの協力強化: NATOが標準や調達目標を設定し、EUが投資や調達を調整する形で連携を強化する。

 2.能力(Capabilities)

 ・共同EU借入: EUが共同で借入を行い、防衛能力の向上に資金を投入する。

 3.統合(Consolidation)

 ・防衛産業の統合: ヨーロッパの防衛産業を統合し、アメリカ製装備から自立する。

 まとめ

 ・グリーコ氏は、NATOが「3Ds」から「3Cs」にシフトすることで、より均等なアライアンスを形成し、ヨーロッパの防衛力を強化すべきだと提案している。

【引用・参照・底本】

Albright’s 3Ds: Dependency, Dependency, Dependency STIMSON 2024.07.02
https://www.stimson.org/2024/albrights-3ds-dependency-dependency-dependency/