アルジェリア・マリ・トゥアレグ族 ― 2024年08月30日 20:48
【概要】
アルジェリアの国連常駐代表であるアマー・ベンジャマー氏は、先週の安全保障理事会で「私たちは、一部の国が雇った民間軍によって行われている違反行為を止める必要があります」と述べ、7月末に発生したティンザワテンの国境町に対する致命的なドローン攻撃の後、民間軍事会社ワグナーを非難した。この発言は、ロシアとアルジェリアの間で緊張が高まる中、民間人の死にワグナーが関与していることを示唆している。
アルジェリアは、1月初めにマリが2015年のアルジェ合意を破棄する決定に反対した。この合意は、数十年にわたる紛争を経て、トゥアレグ族に部分的な自治を与えるものであったが、その破棄により夏には再び敵対行為が再開された。7月末の襲撃は、ウクライナとポーランドの支援を受けたとされている。
アルジェリアのベンジャマー氏の発言は、西側諸国の利益と一致する方向に向かっていることを示しているが、それには限界がある。アルジェリアはモロッコとの西サハラ紛争で西側諸国、特にアメリカと対立しているためである。そのため、トゥアレグ族への支援があったとしても、西側と連携することはなく、政治的な支援や反ワグナーの宣伝活動に限定されるだろう。
アルジェリアの立場からすれば、アルジェ合意によるトゥアレグ族への部分的な自治の付与が、この長引く紛争を持続的に解決する唯一の方法だと考えている。マリがこの合意を破棄し、ワグナーが分離主義者を撃退しようとすることに反対している。この紛争の再開は、宗教過激派との再度の連携と人道危機を引き起こし、南部国境に波及している。
ベンジャマー氏の発言は、アルジェリアがロシアに対し、マリへの軍事援助を停止し、アルジェ合意を復活させるよう求めていることを示している。しかし、ロシアから見れば、マリは新たに形成されたサヘル同盟の中心であり、地域の多極化プロセスを推進する重要な軍事戦略的パートナーである。したがって、ロシアがマリの分離主義者に対する軍事援助を拒否することはない。
アルジェリアがトゥアレグ族への政治的支援や反ワグナーの宣伝活動を行うことは一つのことであるが、彼らへの物質的な支援は、マリおよびロシアとの関係において一線を越えることになる。また、西サハラ問題で西側諸国の支持を得ることも期待できない。最善のシナリオは、アルジェリアがこの紛争における自国の利益をロシアに率直に説明し、トゥアレグ族への物質的な支援を行わないことを約束し、戦略的パートナーシップを維持することである。これにより、地域の安全保障のジレンマが悪化し、両国が対立することを防ぐことができる。
【詳細】
アルジェリアの国連常駐代表アマー・ベンジャマー氏が先週の安全保障理事会で行った発言は、ティンザワテンでの致命的なドローン攻撃に関連しており、ワグナーグループの責任を示唆するものであった。ティンザワテンはマリとアルジェリアの国境に位置し、この攻撃では多くの民間人が犠牲となった。この発言は、ロシアとアルジェリアの間で緊張が高まる中で行われ、民間軍事会社(PMC)ワグナーが非難の対象となっている。
背景
マリとトゥアレグ族の関係は長い間複雑なものであり、2015年のアルジェ合意は、この対立を解決するための重要なステップであった。アルジェ合意は、トゥアレグ族に部分的な自治を与えることで、紛争を終わらせることを目的としていた。しかし、2024年初頭、マリ政府はこの合意を破棄した。この決定により、再び敵対行為が始まった。
アルジェリアの立場
アルジェリアはマリの決定に強く反対しており、トゥアレグ族への部分的な自治の付与が紛争を持続的に解決する唯一の方法であると考えている。アルジェリアは、この地域の安定が自国の安全保障に直結するため、この問題に関心を寄せている。
ワグナーの役割
ワグナーグループはロシアの民間軍事会社であり、マリ政府の要請を受けて分離主義者やテロリストと戦っている。ロシアは、マリをサヘル同盟の中心と位置付け、地域の多極化プロセスを推進するための重要なパートナーと見なしている。このため、ロシアはマリ政府の要請に応じてワグナーを派遣し、軍事支援を行っている。
アルジェリアと西側諸国の関係
アルジェリアは、西側諸国、とりわけアメリカと対立している。その主要な原因はモロッコとの西サハラ問題である。西サハラは未解決の領土問題であり、モロッコは西側諸国の支持を受けている。アルジェリアがトゥアレグ族への物質的な支援を行ったとしても、西側諸国がアルジェリアの立場を支持することは期待できない。
結論
アルジェリアがトゥアレグ族への政治的支援や反ワグナーの宣伝活動を行うことは、地域の安定を損なう可能性がある。しかし、物質的な支援を行うことは、マリおよびロシアとの関係に深刻な影響を与える可能性がある。アルジェリアにとって最善のシナリオは、ロシアに対して自国の安全保障上の利益を率直に説明し、トゥアレグ族への物質的な支援を行わないことを約束することである。これにより、戦略的パートナーシップを維持し、地域の安全保障のジレンマを悪化させることを防ぐことができる。
詳細な考察
1. アルジェリアの戦略的立場
・国内安全保障: トゥアレグ族の問題がアルジェリアの南部国境に波及することで、国内の安定に直接影響を与える可能性がある。
・地域の安定: マリとの良好な関係を維持することは、地域の安定に寄与する。アルジェリアは、この点でロシアの支援を受けることが重要である。
2. ロシアのアフリカ戦略
・地域多極化の推進: ロシアは、アフリカでの影響力を拡大するために、マリを重要なパートナーとしている。サヘル同盟の中心として、マリの安定はロシアの戦略にとって不可欠である。
・軍事支援の重要性: ワグナーの派遣は、ロシアがマリを支援するための主要な手段であり、地域のテロリズムに対抗するための重要な要素である。
3. 国際的な影響
・西サハラ問題: アルジェリアとモロッコの対立は、西サハラ問題に起因している。この問題が解決されない限り、アルジェリアは西側諸国からの支持を得ることは難しいだろう。
・新冷戦の影響: ウクライナやポーランドがトゥアレグ族を支援しているという報告は、新冷戦の一環として解釈される。この文脈で、アルジェリアがどのように行動するかは、地域の動向に大きな影響を与える。
以上の詳細な考察から、アルジェリアがトゥアレグ族への物質的な支援を行わず、ロシアとの戦略的パートナーシップを維持することが、地域の安定と自国の安全保障にとって最善の選択肢であることが分かる。
【要点】
1.背景と状況
・アマー・ベンジャマーの発言: アルジェリアの国連常駐代表がティンザワテンでの攻撃に関連してワグナーを非難。
・アルジェ合意の破棄: 2024年初頭にマリが2015年のアルジェ合意を破棄し、トゥアレグ族との敵対行為が再開。
2.アルジェリアの立場
・部分的自治の重要性: アルジェリアはトゥアレグ族への部分的自治を持続的な解決策と見なしている。
・地域の安定と安全保障: トゥアレグ族問題が南部国境に波及し、アルジェリアの安全保障に影響。
3.ワグナーの役割
・ロシアの民間軍事会社: マリ政府の要請で分離主義者と戦う。
・ロシアのアフリカ戦略: マリをサヘル同盟の中心として位置づけ、地域の多極化を推進。
4.アルジェリアと西側諸国の関係
・西サハラ問題: モロッコとの対立で西側諸国、特にアメリカと対立。
・トゥアレグ族への支援: 西側の支持を得ることは難しく、政治的支援や反ワグナーの宣伝活動に留まる。
5.結論と提案
・最善のシナリオ: アルジェリアが自国の安全保障上の利益をロシアに説明し、トゥアレグ族への物質的支援を行わないこと。
・戦略的パートナーシップの維持: マリおよびロシアとの関係を維持し、地域の安定を図る。
6.詳細な考察
1.アルジェリアの戦略的立場
・国内安全保障: トゥアレグ族問題の南部国境への波及を防ぐ。
・地域の安定: マリとの良好な関係を維持。
2.ロシアのアフリカ戦略
・地域多極化の推進: マリを重要なパートナーとし、アフリカでの影響力を拡大。
・軍事支援の重要性: ワグナーの派遣によるテロリズム対抗。
7.国際的な影響
・西サハラ問題: 解決が困難なため、西側の支持を得るのは難しい。
・新冷戦の影響: ウクライナやポーランドの支援が地域動向に影響。
最終結論
・アルジェリアはトゥアレグ族への物質的支援を行わず、ロシアとの戦略的パートナーシップを維持することが最善。
【参考】
➢ アルジェ合意について
概要
・締結日: 2015年
・関係国: マリ政府とトゥアレグ族反政府勢力
・調停国: アルジェリア
目的
・部分的自治の付与: トゥアレグ族に部分的な自治を与えることで、長年にわたる紛争を解決することを目指す。
・平和と安定: マリ北部における持続的な平和と安定を確立する。
主な内容
・政治的権利の拡大: トゥアレグ族に対する政治的権利の拡大と地方自治の強化。
・治安対策の強化: 地域の治安を維持するための共同治安部隊の設置。
・経済的発展: トゥアレグ地域の経済的発展を促進するための投資とインフラ整備。
・難民の帰還: 紛争によって国内外に避難した難民の帰還を支援。
アルジェリアの役割
・調停者: 紛争解決のための仲介役を果たし、合意の成立を支援。
・保障者: 合意の履行を監視し、平和の維持に貢献。
マリ政府の立場
・合意の破棄: 2024年初頭にマリ政府がアルジェ合意を破棄。
・再紛争の原因: 合意破棄によりトゥアレグ族との敵対行為が再開し、地域の不安定化を招く。
アルジェリアの懸念
・地域の安定: マリ北部の不安定化がアルジェリア南部に波及することを懸念。
・安全保障: トゥアレグ族への部分的自治が、地域の持続的な平和に繋がると信じている。
ワグナーの関与
・ロシアのPMC: ワグナーがマリ政府の要請で分離主義者と戦闘。
・アルジェリアの反発: ワグナーの活動がアルジェリアとの緊張を生む。
現状と展望
・ロシアの支援継続: ロシアはマリへの軍事支援を続け、アルジェリアとの関係悪化のリスクを抱える。
・戦略的対話の必要性: アルジェリアがロシアに対し、自国の安全保障上の懸念を説明し、協力関係を維持することが求められる。
結論
アルジェ合意はマリとトゥアレグ族の間の持続的な平和を目指す重要な取り決めであり、アルジェリアの地域安定に対する関心と直結している。この合意の履行を巡る問題は、マリとアルジェリア、そしてロシアとの関係においても重要な意味を持つ。
➢ サヘル同盟(Sahelian Alliance)について
概要
・設立: サヘル同盟は、サヘル地域の複数の国々が安全保障と経済協力を強化するために結成した地域的な同盟。
・目的: 地域の安定と安全を確保し、テロリズムや組織犯罪に対抗すること。
参加国
・主要メンバー: マリ、ニジェール、ブルキナファソ、モーリタニア、チャドなどのサヘル地域の国々。
・サポート国: ロシア、中国、フランスなど、サヘル同盟に対して支援を行う国々。
目的と役割
1.安全保障の強化
・テロリズム、過激派、組織犯罪に対抗するための共同軍事作戦。
・国境管理の強化と情報共有。
2.経済協力
・インフラ開発、貿易の促進、経済成長の支援。
・サヘル地域全体の経済的なつながりを強化。
3.人道的支援
・難民や国内避難民への支援。
・人道危機に対する迅速な対応。
背景
・地理的特徴: サヘル地域は、サハラ砂漠の南縁に位置し、広大な乾燥地帯。
・紛争と不安定: この地域は、テロリストグループや過激派の活動が活発で、政治的不安定や経済的困難が続いている。
・国際的な関与: フランスをはじめとする欧州諸国やアメリカ、そして最近ではロシアと中国が関与し、地域の安定化に向けた取り組みを行っている。
ロシアの関与
・軍事支援: ロシアはマリなどのサヘル同盟国に対して軍事支援を行っている。特に民間軍事会社ワグナーを通じての支援が目立つ。
・多極化推進: ロシアはサヘル同盟を通じて、アフリカにおける多極化を推進し、西側諸国の影響力に対抗する戦略を取っている。
意義
・地域安定化の鍵: サヘル同盟は、テロリズムや組織犯罪に対抗するための地域的な枠組みとして重要な役割を果たしている。
・国際協力の促進: サヘル同盟を通じて、地域の国々が国際社会と協力し、経済的および安全保障上の課題に対処するためのプラットフォームを提供している。
結論
サヘル同盟は、サヘル地域の安定と安全を確保するための重要な地域的枠組みである。参加国は共同でテロリズムや組織犯罪に対抗し、経済協力を推進することで、地域の発展と安定を目指している。ロシアを含む国際的な支援がこの同盟の成功に寄与しており、地域の安全保障と多極化の推進において重要な役割を果たしている。
➢ 西サハラ問題
概要
・位置: 西サハラは北西アフリカに位置し、モロッコ、モーリタニア、アルジェリアに隣接。
・歴史的背景: スペインの植民地支配から1975年に撤退後、領有権を巡る争いが続いている。
主な当事者
1.モロッコ: 西サハラの領有権を主張し、1975年以降実効支配を続けている。
2.ポリサリオ戦線(Polisario Front): 西サハラの独立を求める武装組織。アルジェリアから支援を受けている。
3.サハラ・アラブ民主共和国(SADR): 1976年にポリサリオ戦線が宣言した政府。国際的には一部の国のみが承認。
国際的関与
・国連: 1991年の停戦合意後、国連西サハラ住民投票ミッション(MINURSO)を設置。住民投票による解決を目指すが、進展は見られない。
・アルジェリア: ポリサリオ戦線を支援し、モロッコとの関係が悪化。
・アフリカ連合(AU): 西サハラの独立支持。
問題の要点
・領有権の対立: モロッコは西サハラを「南部州」として実効支配を続ける一方、ポリサリオ戦線は独立を求めている。
・住民投票の実施: 国連の計画に基づき、住民投票によって西サハラの将来を決定することが提案されているが、実施されていない。
・難民問題: 多くのサハラウィ難民がアルジェリアの難民キャンプで生活している。
最近の動向
・外交的変化: 一部の国がモロッコの主張を支持する動きが見られる。アメリカは2020年にモロッコの主権を認めた。
・軍事的緊張: 2020年には停戦が破られ、再び衝突が発生。ポリサリオ戦線とモロッコ軍の間で散発的な戦闘が続く。
地域的影響
1.モロッコとアルジェリアの関係: 西サハラ問題が両国の緊張を悪化させている。
2.サヘル地域の安定: 西サハラの不安定化はサヘル地域全体の安全保障に影響を与える可能性がある。
結論
西サハラ問題は、長期にわたる領有権争いと民族自決の問題を含んでおり、地域および国際社会にとって重大な課題である。国連を中心とした国際的な努力が続いているものの、解決には至っていない。モロッコとアルジェリアの対立、サハラウィ難民の状況、そしてサヘル地域全体の安定に大きな影響を与える問題であり、持続可能な解決策を見つけるための継続的な対話と協力が必要である。
➢ ワグナーグループがマリで撃退しようとしている「分離主義者」は、主にトゥアレグ族の反政府勢力を指す。以下に詳しく説明する。
分離主義者について
トゥアレグ族の反政府勢力
・民族: トゥアレグ族は、サハラ砂漠の広範囲にわたって分布するベルベル系遊牧民族。
・背景: 長年にわたり、マリ北部で自治や独立を求めて反乱を繰り返してきた。
・主要組織
* MNLA(アザワド解放民族運動): トゥアレグ族の主な反政府勢力で、2012年にアザワド地域の独立を宣言。
主な反政府勢力
・アザワド解放民族運動(MNLA)
* 目的: マリ北部のアザワド地域の独立。
* 活動: 2012年にアザワド地域の独立を宣言。その後、イスラム過激派グループと一時的に協力し、マリ北部を支配。
・その他の武装組織
* 宗教過激派: 一部のトゥアレグ族の反政府勢力は、アルカイダ系のイスラム過激派グループと協力することがある。
現在の状況
マリ政府とワグナーグループ
・政府の要請: マリ政府はトゥアレグ族の反政府勢力との戦闘支援をロシアのワグナーグループに依頼。
・ワグナーの役割: マリ政府の要請を受けて、ワグナーグループは反政府勢力と戦い、政府軍を支援。
反政府勢力の動向
・活動再開: 2024年初頭にマリ政府がアルジェ合意を破棄したことにより、トゥアレグ族の反政府勢力が再び活動を活発化。
・国際的支援: 一部報道によると、ウクライナやポーランドから支援を受けているとの見方もある。
結論
ワグナーグループがマリで戦っている「分離主義者」は、主にトゥアレグ族の反政府勢力であり、特にアザワド解放民族運動(MNLA)が中心となっている。これらの勢力は長年にわたって自治や独立を求めて戦いを続けており、最近の紛争再発はアルジェ合意の破棄によるものである。ワグナーグループの介入は、マリ政府の要請に基づいており、地域の安定と反政府勢力の制圧を目的としている。
➢ トゥアレグ族は特定の一国に属するわけではなく、サハラ砂漠を中心に広範囲にわたって分布する遊牧民族である。主に以下の国々に分布している。
トゥアレグ族が主に分布する国々
1.マリ
・マリ北部に大きなトゥアレグ族のコミュニティがあります。
・反政府運動や独立運動の中心地の一つであり、アザワド地域での活動が盛ん。
2.ニジェール
・ニジェール北部の広範囲にわたり、トゥアレグ族が生活している。
・過去にいくつかの反政府運動が発生している。
3アルジェリア
・アルジェリア南部にもトゥアレグ族が住んでいる。
・彼らは遊牧生活を営んでおり、国境を越えて活動することが多い。
4.リビア
・リビア南部にはトゥアレグ族の大きなコミュニティが存在する。
・リビア内戦の際には、トゥアレグ族も関与している。
5.ブルキナファソ
・トゥアレグ族はブルキナファソの北部にも住んでいる。
・地域の安定と安全保障に影響を与える要因の一つです。
トゥアレグ族の特徴と文化
・言語: トゥアレグ語(タマシェク語)を話す。
・社会構造: 伝統的に部族社会を形成し、独自の文化と習慣を持っている。
・生活様式: 主に遊牧生活を営んでおり、ラクダやヤギなどの家畜を飼育している。
結論
トゥアレグ族は、サハラ砂漠を中心とした広範囲にわたる地域に分布しており、マリ、ニジェール、アルジェリア、リビア、ブルキナファソなどの国々に住んでいる。これらの国々の国境を越えて移動しながら遊牧生活を続けているため、特定の一国に限定されない広範な存在である。
➢ アルジェリアとトゥアレグ族反政府勢力との関係は複雑で、多面的な側面を持っている。以下にその関係を詳しく説明する。
アルジェリアとトゥアレグ族反政府勢力の関係
歴史的背景
・地理的近接: アルジェリア南部はトゥアレグ族の居住地に近く、民族的・文化的に関係が深い。
・歴史的つながり: トゥアレグ族は遊牧民族であり、国境を越えて移動するため、アルジェリアとの歴史的なつながりがある。
アルジェリアの役割
1.調停者としての役割
・2015年のアルジェ合意: アルジェリアは、マリ政府とトゥアレグ族の反政府勢力との間で2015年に結ばれたアルジェ合意の仲介者として重要な役割を果たした。この合意はトゥアレグ族に一定の自治権を与えることを目的としていた。
・地域の安定化: アルジェリアは、サヘル地域の安定化を図るため、トゥアレグ族との対話を重視している。
2.支援者としての役割:
・政治的・人道的支援: アルジェリアはトゥアレグ族に対して政治的な支持を表明することがあり、人道的支援を提供している。
・難民の受け入れ: トゥアレグ族の難民を受け入れ、彼らに対して保護を提供している。
現在の状況
・アルジェ合意の破棄: 2024年初頭にマリ政府がアルジェ合意を破棄したことにより、アルジェリアは再び調停役を果たすことが求められているが、関係は緊張している。
・ロシアのワグナーグループの介入: マリ政府がワグナーグループの支援を受けてトゥアレグ族の反政府勢力と戦っていることに対し、アルジェリアは懸念を示している。
アルジェリアの懸念
1.地域の不安定化: トゥアレグ族の反政府活動がアルジェリア南部に波及し、地域の不安定化を引き起こす可能性がある。
2.人道的危機: トゥアレグ族の紛争による難民の流入や人道的危機がアルジェリア国内に影響を与える。
結論
アルジェリアとトゥアレグ族反政府勢力の関係は、歴史的なつながりと地理的な近接性に基づく複雑なものであり、アルジェリアはトゥアレグ族に対して調停者および支援者としての役割を果たしてきた。しかし、最近のマリ政府とワグナーグループの動向により、関係は一層緊張している。アルジェリアは地域の安定を図るため、引き続き重要な役割を果たすことが求められている。
➢ マリ政府がアルジェ合意を破棄した理由は、複数の要因が絡んでいる。以下にその主要な理由を詳しく説明する。
マリ政府がアルジェ合意を破棄した理由
1. 安全保障の懸念
・テロリズムと過激派の脅威: アルジェ合意後も、地域にはアルカイダ系やISIS系の過激派が存在し、治安が悪化していると感じたマリ政府は、より強力な軍事的対応が必要と判断した。
・分離主義勢力との衝突: トゥアレグ族の反政府勢力との衝突が続き、合意が十分に平和をもたらしていないと判断した。
2. 政治的要因
・政府の内部政治: マリ政府内の権力構造や政治的圧力が、アルジェ合意の継続を困難にした。特に、軍事政権が実権を握っている場合、軍事的解決を優先する傾向がある。
・統治の一体性の確保: 部分的な自治権の付与が、国家の一体性を損なうと考えた政府は、中央集権的な統治を強化する必要があると判断した。
3. 外交的要因
・国際的な影響: マリ政府は、ロシアの支援を受けているワグナーグループとの協力を強化し、外部からの軍事的援助を受けることで、分離主義勢力に対する強硬な姿勢を取ることが可能になった。
・地域の同盟関係: マリは、サヘル地域における他の国家との同盟関係を強化するために、反政府勢力に対する強硬な姿勢を取る必要があると判断した。
4. アルジェ合意の不履行
・合意の実行上の問題: アルジェ合意の条項が完全に実行されず、信頼関係が構築されなかったことが原因である。例えば、トゥアレグ族の反政府勢力が合意に基づく武装解除を完全に行わなかったり、自治権の実施が不十分であったりした。
結論
マリ政府がアルジェ合意を破棄した理由は、安全保障の懸念、政治的要因、外交的要因、そして合意の不履行といった複数の要因が絡み合っている。政府は、国家の一体性を維持し、分離主義勢力と過激派の脅威に対処するために、より強硬な姿勢を取る必要があると判断した。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Close Russian Partner Algeria Wants Wagner To Withdraw From Mali Andrew Korybko's Newsletter 2024.08.30
https://korybko.substack.com/p/close-russian-partner-algeria-wants?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148296633&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
アルジェリアの国連常駐代表であるアマー・ベンジャマー氏は、先週の安全保障理事会で「私たちは、一部の国が雇った民間軍によって行われている違反行為を止める必要があります」と述べ、7月末に発生したティンザワテンの国境町に対する致命的なドローン攻撃の後、民間軍事会社ワグナーを非難した。この発言は、ロシアとアルジェリアの間で緊張が高まる中、民間人の死にワグナーが関与していることを示唆している。
アルジェリアは、1月初めにマリが2015年のアルジェ合意を破棄する決定に反対した。この合意は、数十年にわたる紛争を経て、トゥアレグ族に部分的な自治を与えるものであったが、その破棄により夏には再び敵対行為が再開された。7月末の襲撃は、ウクライナとポーランドの支援を受けたとされている。
アルジェリアのベンジャマー氏の発言は、西側諸国の利益と一致する方向に向かっていることを示しているが、それには限界がある。アルジェリアはモロッコとの西サハラ紛争で西側諸国、特にアメリカと対立しているためである。そのため、トゥアレグ族への支援があったとしても、西側と連携することはなく、政治的な支援や反ワグナーの宣伝活動に限定されるだろう。
アルジェリアの立場からすれば、アルジェ合意によるトゥアレグ族への部分的な自治の付与が、この長引く紛争を持続的に解決する唯一の方法だと考えている。マリがこの合意を破棄し、ワグナーが分離主義者を撃退しようとすることに反対している。この紛争の再開は、宗教過激派との再度の連携と人道危機を引き起こし、南部国境に波及している。
ベンジャマー氏の発言は、アルジェリアがロシアに対し、マリへの軍事援助を停止し、アルジェ合意を復活させるよう求めていることを示している。しかし、ロシアから見れば、マリは新たに形成されたサヘル同盟の中心であり、地域の多極化プロセスを推進する重要な軍事戦略的パートナーである。したがって、ロシアがマリの分離主義者に対する軍事援助を拒否することはない。
アルジェリアがトゥアレグ族への政治的支援や反ワグナーの宣伝活動を行うことは一つのことであるが、彼らへの物質的な支援は、マリおよびロシアとの関係において一線を越えることになる。また、西サハラ問題で西側諸国の支持を得ることも期待できない。最善のシナリオは、アルジェリアがこの紛争における自国の利益をロシアに率直に説明し、トゥアレグ族への物質的な支援を行わないことを約束し、戦略的パートナーシップを維持することである。これにより、地域の安全保障のジレンマが悪化し、両国が対立することを防ぐことができる。
【詳細】
アルジェリアの国連常駐代表アマー・ベンジャマー氏が先週の安全保障理事会で行った発言は、ティンザワテンでの致命的なドローン攻撃に関連しており、ワグナーグループの責任を示唆するものであった。ティンザワテンはマリとアルジェリアの国境に位置し、この攻撃では多くの民間人が犠牲となった。この発言は、ロシアとアルジェリアの間で緊張が高まる中で行われ、民間軍事会社(PMC)ワグナーが非難の対象となっている。
背景
マリとトゥアレグ族の関係は長い間複雑なものであり、2015年のアルジェ合意は、この対立を解決するための重要なステップであった。アルジェ合意は、トゥアレグ族に部分的な自治を与えることで、紛争を終わらせることを目的としていた。しかし、2024年初頭、マリ政府はこの合意を破棄した。この決定により、再び敵対行為が始まった。
アルジェリアの立場
アルジェリアはマリの決定に強く反対しており、トゥアレグ族への部分的な自治の付与が紛争を持続的に解決する唯一の方法であると考えている。アルジェリアは、この地域の安定が自国の安全保障に直結するため、この問題に関心を寄せている。
ワグナーの役割
ワグナーグループはロシアの民間軍事会社であり、マリ政府の要請を受けて分離主義者やテロリストと戦っている。ロシアは、マリをサヘル同盟の中心と位置付け、地域の多極化プロセスを推進するための重要なパートナーと見なしている。このため、ロシアはマリ政府の要請に応じてワグナーを派遣し、軍事支援を行っている。
アルジェリアと西側諸国の関係
アルジェリアは、西側諸国、とりわけアメリカと対立している。その主要な原因はモロッコとの西サハラ問題である。西サハラは未解決の領土問題であり、モロッコは西側諸国の支持を受けている。アルジェリアがトゥアレグ族への物質的な支援を行ったとしても、西側諸国がアルジェリアの立場を支持することは期待できない。
結論
アルジェリアがトゥアレグ族への政治的支援や反ワグナーの宣伝活動を行うことは、地域の安定を損なう可能性がある。しかし、物質的な支援を行うことは、マリおよびロシアとの関係に深刻な影響を与える可能性がある。アルジェリアにとって最善のシナリオは、ロシアに対して自国の安全保障上の利益を率直に説明し、トゥアレグ族への物質的な支援を行わないことを約束することである。これにより、戦略的パートナーシップを維持し、地域の安全保障のジレンマを悪化させることを防ぐことができる。
詳細な考察
1. アルジェリアの戦略的立場
・国内安全保障: トゥアレグ族の問題がアルジェリアの南部国境に波及することで、国内の安定に直接影響を与える可能性がある。
・地域の安定: マリとの良好な関係を維持することは、地域の安定に寄与する。アルジェリアは、この点でロシアの支援を受けることが重要である。
2. ロシアのアフリカ戦略
・地域多極化の推進: ロシアは、アフリカでの影響力を拡大するために、マリを重要なパートナーとしている。サヘル同盟の中心として、マリの安定はロシアの戦略にとって不可欠である。
・軍事支援の重要性: ワグナーの派遣は、ロシアがマリを支援するための主要な手段であり、地域のテロリズムに対抗するための重要な要素である。
3. 国際的な影響
・西サハラ問題: アルジェリアとモロッコの対立は、西サハラ問題に起因している。この問題が解決されない限り、アルジェリアは西側諸国からの支持を得ることは難しいだろう。
・新冷戦の影響: ウクライナやポーランドがトゥアレグ族を支援しているという報告は、新冷戦の一環として解釈される。この文脈で、アルジェリアがどのように行動するかは、地域の動向に大きな影響を与える。
以上の詳細な考察から、アルジェリアがトゥアレグ族への物質的な支援を行わず、ロシアとの戦略的パートナーシップを維持することが、地域の安定と自国の安全保障にとって最善の選択肢であることが分かる。
【要点】
1.背景と状況
・アマー・ベンジャマーの発言: アルジェリアの国連常駐代表がティンザワテンでの攻撃に関連してワグナーを非難。
・アルジェ合意の破棄: 2024年初頭にマリが2015年のアルジェ合意を破棄し、トゥアレグ族との敵対行為が再開。
2.アルジェリアの立場
・部分的自治の重要性: アルジェリアはトゥアレグ族への部分的自治を持続的な解決策と見なしている。
・地域の安定と安全保障: トゥアレグ族問題が南部国境に波及し、アルジェリアの安全保障に影響。
3.ワグナーの役割
・ロシアの民間軍事会社: マリ政府の要請で分離主義者と戦う。
・ロシアのアフリカ戦略: マリをサヘル同盟の中心として位置づけ、地域の多極化を推進。
4.アルジェリアと西側諸国の関係
・西サハラ問題: モロッコとの対立で西側諸国、特にアメリカと対立。
・トゥアレグ族への支援: 西側の支持を得ることは難しく、政治的支援や反ワグナーの宣伝活動に留まる。
5.結論と提案
・最善のシナリオ: アルジェリアが自国の安全保障上の利益をロシアに説明し、トゥアレグ族への物質的支援を行わないこと。
・戦略的パートナーシップの維持: マリおよびロシアとの関係を維持し、地域の安定を図る。
6.詳細な考察
1.アルジェリアの戦略的立場
・国内安全保障: トゥアレグ族問題の南部国境への波及を防ぐ。
・地域の安定: マリとの良好な関係を維持。
2.ロシアのアフリカ戦略
・地域多極化の推進: マリを重要なパートナーとし、アフリカでの影響力を拡大。
・軍事支援の重要性: ワグナーの派遣によるテロリズム対抗。
7.国際的な影響
・西サハラ問題: 解決が困難なため、西側の支持を得るのは難しい。
・新冷戦の影響: ウクライナやポーランドの支援が地域動向に影響。
最終結論
・アルジェリアはトゥアレグ族への物質的支援を行わず、ロシアとの戦略的パートナーシップを維持することが最善。
【参考】
➢ アルジェ合意について
概要
・締結日: 2015年
・関係国: マリ政府とトゥアレグ族反政府勢力
・調停国: アルジェリア
目的
・部分的自治の付与: トゥアレグ族に部分的な自治を与えることで、長年にわたる紛争を解決することを目指す。
・平和と安定: マリ北部における持続的な平和と安定を確立する。
主な内容
・政治的権利の拡大: トゥアレグ族に対する政治的権利の拡大と地方自治の強化。
・治安対策の強化: 地域の治安を維持するための共同治安部隊の設置。
・経済的発展: トゥアレグ地域の経済的発展を促進するための投資とインフラ整備。
・難民の帰還: 紛争によって国内外に避難した難民の帰還を支援。
アルジェリアの役割
・調停者: 紛争解決のための仲介役を果たし、合意の成立を支援。
・保障者: 合意の履行を監視し、平和の維持に貢献。
マリ政府の立場
・合意の破棄: 2024年初頭にマリ政府がアルジェ合意を破棄。
・再紛争の原因: 合意破棄によりトゥアレグ族との敵対行為が再開し、地域の不安定化を招く。
アルジェリアの懸念
・地域の安定: マリ北部の不安定化がアルジェリア南部に波及することを懸念。
・安全保障: トゥアレグ族への部分的自治が、地域の持続的な平和に繋がると信じている。
ワグナーの関与
・ロシアのPMC: ワグナーがマリ政府の要請で分離主義者と戦闘。
・アルジェリアの反発: ワグナーの活動がアルジェリアとの緊張を生む。
現状と展望
・ロシアの支援継続: ロシアはマリへの軍事支援を続け、アルジェリアとの関係悪化のリスクを抱える。
・戦略的対話の必要性: アルジェリアがロシアに対し、自国の安全保障上の懸念を説明し、協力関係を維持することが求められる。
結論
アルジェ合意はマリとトゥアレグ族の間の持続的な平和を目指す重要な取り決めであり、アルジェリアの地域安定に対する関心と直結している。この合意の履行を巡る問題は、マリとアルジェリア、そしてロシアとの関係においても重要な意味を持つ。
➢ サヘル同盟(Sahelian Alliance)について
概要
・設立: サヘル同盟は、サヘル地域の複数の国々が安全保障と経済協力を強化するために結成した地域的な同盟。
・目的: 地域の安定と安全を確保し、テロリズムや組織犯罪に対抗すること。
参加国
・主要メンバー: マリ、ニジェール、ブルキナファソ、モーリタニア、チャドなどのサヘル地域の国々。
・サポート国: ロシア、中国、フランスなど、サヘル同盟に対して支援を行う国々。
目的と役割
1.安全保障の強化
・テロリズム、過激派、組織犯罪に対抗するための共同軍事作戦。
・国境管理の強化と情報共有。
2.経済協力
・インフラ開発、貿易の促進、経済成長の支援。
・サヘル地域全体の経済的なつながりを強化。
3.人道的支援
・難民や国内避難民への支援。
・人道危機に対する迅速な対応。
背景
・地理的特徴: サヘル地域は、サハラ砂漠の南縁に位置し、広大な乾燥地帯。
・紛争と不安定: この地域は、テロリストグループや過激派の活動が活発で、政治的不安定や経済的困難が続いている。
・国際的な関与: フランスをはじめとする欧州諸国やアメリカ、そして最近ではロシアと中国が関与し、地域の安定化に向けた取り組みを行っている。
ロシアの関与
・軍事支援: ロシアはマリなどのサヘル同盟国に対して軍事支援を行っている。特に民間軍事会社ワグナーを通じての支援が目立つ。
・多極化推進: ロシアはサヘル同盟を通じて、アフリカにおける多極化を推進し、西側諸国の影響力に対抗する戦略を取っている。
意義
・地域安定化の鍵: サヘル同盟は、テロリズムや組織犯罪に対抗するための地域的な枠組みとして重要な役割を果たしている。
・国際協力の促進: サヘル同盟を通じて、地域の国々が国際社会と協力し、経済的および安全保障上の課題に対処するためのプラットフォームを提供している。
結論
サヘル同盟は、サヘル地域の安定と安全を確保するための重要な地域的枠組みである。参加国は共同でテロリズムや組織犯罪に対抗し、経済協力を推進することで、地域の発展と安定を目指している。ロシアを含む国際的な支援がこの同盟の成功に寄与しており、地域の安全保障と多極化の推進において重要な役割を果たしている。
➢ 西サハラ問題
概要
・位置: 西サハラは北西アフリカに位置し、モロッコ、モーリタニア、アルジェリアに隣接。
・歴史的背景: スペインの植民地支配から1975年に撤退後、領有権を巡る争いが続いている。
主な当事者
1.モロッコ: 西サハラの領有権を主張し、1975年以降実効支配を続けている。
2.ポリサリオ戦線(Polisario Front): 西サハラの独立を求める武装組織。アルジェリアから支援を受けている。
3.サハラ・アラブ民主共和国(SADR): 1976年にポリサリオ戦線が宣言した政府。国際的には一部の国のみが承認。
国際的関与
・国連: 1991年の停戦合意後、国連西サハラ住民投票ミッション(MINURSO)を設置。住民投票による解決を目指すが、進展は見られない。
・アルジェリア: ポリサリオ戦線を支援し、モロッコとの関係が悪化。
・アフリカ連合(AU): 西サハラの独立支持。
問題の要点
・領有権の対立: モロッコは西サハラを「南部州」として実効支配を続ける一方、ポリサリオ戦線は独立を求めている。
・住民投票の実施: 国連の計画に基づき、住民投票によって西サハラの将来を決定することが提案されているが、実施されていない。
・難民問題: 多くのサハラウィ難民がアルジェリアの難民キャンプで生活している。
最近の動向
・外交的変化: 一部の国がモロッコの主張を支持する動きが見られる。アメリカは2020年にモロッコの主権を認めた。
・軍事的緊張: 2020年には停戦が破られ、再び衝突が発生。ポリサリオ戦線とモロッコ軍の間で散発的な戦闘が続く。
地域的影響
1.モロッコとアルジェリアの関係: 西サハラ問題が両国の緊張を悪化させている。
2.サヘル地域の安定: 西サハラの不安定化はサヘル地域全体の安全保障に影響を与える可能性がある。
結論
西サハラ問題は、長期にわたる領有権争いと民族自決の問題を含んでおり、地域および国際社会にとって重大な課題である。国連を中心とした国際的な努力が続いているものの、解決には至っていない。モロッコとアルジェリアの対立、サハラウィ難民の状況、そしてサヘル地域全体の安定に大きな影響を与える問題であり、持続可能な解決策を見つけるための継続的な対話と協力が必要である。
➢ ワグナーグループがマリで撃退しようとしている「分離主義者」は、主にトゥアレグ族の反政府勢力を指す。以下に詳しく説明する。
分離主義者について
トゥアレグ族の反政府勢力
・民族: トゥアレグ族は、サハラ砂漠の広範囲にわたって分布するベルベル系遊牧民族。
・背景: 長年にわたり、マリ北部で自治や独立を求めて反乱を繰り返してきた。
・主要組織
* MNLA(アザワド解放民族運動): トゥアレグ族の主な反政府勢力で、2012年にアザワド地域の独立を宣言。
主な反政府勢力
・アザワド解放民族運動(MNLA)
* 目的: マリ北部のアザワド地域の独立。
* 活動: 2012年にアザワド地域の独立を宣言。その後、イスラム過激派グループと一時的に協力し、マリ北部を支配。
・その他の武装組織
* 宗教過激派: 一部のトゥアレグ族の反政府勢力は、アルカイダ系のイスラム過激派グループと協力することがある。
現在の状況
マリ政府とワグナーグループ
・政府の要請: マリ政府はトゥアレグ族の反政府勢力との戦闘支援をロシアのワグナーグループに依頼。
・ワグナーの役割: マリ政府の要請を受けて、ワグナーグループは反政府勢力と戦い、政府軍を支援。
反政府勢力の動向
・活動再開: 2024年初頭にマリ政府がアルジェ合意を破棄したことにより、トゥアレグ族の反政府勢力が再び活動を活発化。
・国際的支援: 一部報道によると、ウクライナやポーランドから支援を受けているとの見方もある。
結論
ワグナーグループがマリで戦っている「分離主義者」は、主にトゥアレグ族の反政府勢力であり、特にアザワド解放民族運動(MNLA)が中心となっている。これらの勢力は長年にわたって自治や独立を求めて戦いを続けており、最近の紛争再発はアルジェ合意の破棄によるものである。ワグナーグループの介入は、マリ政府の要請に基づいており、地域の安定と反政府勢力の制圧を目的としている。
➢ トゥアレグ族は特定の一国に属するわけではなく、サハラ砂漠を中心に広範囲にわたって分布する遊牧民族である。主に以下の国々に分布している。
トゥアレグ族が主に分布する国々
1.マリ
・マリ北部に大きなトゥアレグ族のコミュニティがあります。
・反政府運動や独立運動の中心地の一つであり、アザワド地域での活動が盛ん。
2.ニジェール
・ニジェール北部の広範囲にわたり、トゥアレグ族が生活している。
・過去にいくつかの反政府運動が発生している。
3アルジェリア
・アルジェリア南部にもトゥアレグ族が住んでいる。
・彼らは遊牧生活を営んでおり、国境を越えて活動することが多い。
4.リビア
・リビア南部にはトゥアレグ族の大きなコミュニティが存在する。
・リビア内戦の際には、トゥアレグ族も関与している。
5.ブルキナファソ
・トゥアレグ族はブルキナファソの北部にも住んでいる。
・地域の安定と安全保障に影響を与える要因の一つです。
トゥアレグ族の特徴と文化
・言語: トゥアレグ語(タマシェク語)を話す。
・社会構造: 伝統的に部族社会を形成し、独自の文化と習慣を持っている。
・生活様式: 主に遊牧生活を営んでおり、ラクダやヤギなどの家畜を飼育している。
結論
トゥアレグ族は、サハラ砂漠を中心とした広範囲にわたる地域に分布しており、マリ、ニジェール、アルジェリア、リビア、ブルキナファソなどの国々に住んでいる。これらの国々の国境を越えて移動しながら遊牧生活を続けているため、特定の一国に限定されない広範な存在である。
➢ アルジェリアとトゥアレグ族反政府勢力との関係は複雑で、多面的な側面を持っている。以下にその関係を詳しく説明する。
アルジェリアとトゥアレグ族反政府勢力の関係
歴史的背景
・地理的近接: アルジェリア南部はトゥアレグ族の居住地に近く、民族的・文化的に関係が深い。
・歴史的つながり: トゥアレグ族は遊牧民族であり、国境を越えて移動するため、アルジェリアとの歴史的なつながりがある。
アルジェリアの役割
1.調停者としての役割
・2015年のアルジェ合意: アルジェリアは、マリ政府とトゥアレグ族の反政府勢力との間で2015年に結ばれたアルジェ合意の仲介者として重要な役割を果たした。この合意はトゥアレグ族に一定の自治権を与えることを目的としていた。
・地域の安定化: アルジェリアは、サヘル地域の安定化を図るため、トゥアレグ族との対話を重視している。
2.支援者としての役割:
・政治的・人道的支援: アルジェリアはトゥアレグ族に対して政治的な支持を表明することがあり、人道的支援を提供している。
・難民の受け入れ: トゥアレグ族の難民を受け入れ、彼らに対して保護を提供している。
現在の状況
・アルジェ合意の破棄: 2024年初頭にマリ政府がアルジェ合意を破棄したことにより、アルジェリアは再び調停役を果たすことが求められているが、関係は緊張している。
・ロシアのワグナーグループの介入: マリ政府がワグナーグループの支援を受けてトゥアレグ族の反政府勢力と戦っていることに対し、アルジェリアは懸念を示している。
アルジェリアの懸念
1.地域の不安定化: トゥアレグ族の反政府活動がアルジェリア南部に波及し、地域の不安定化を引き起こす可能性がある。
2.人道的危機: トゥアレグ族の紛争による難民の流入や人道的危機がアルジェリア国内に影響を与える。
結論
アルジェリアとトゥアレグ族反政府勢力の関係は、歴史的なつながりと地理的な近接性に基づく複雑なものであり、アルジェリアはトゥアレグ族に対して調停者および支援者としての役割を果たしてきた。しかし、最近のマリ政府とワグナーグループの動向により、関係は一層緊張している。アルジェリアは地域の安定を図るため、引き続き重要な役割を果たすことが求められている。
➢ マリ政府がアルジェ合意を破棄した理由は、複数の要因が絡んでいる。以下にその主要な理由を詳しく説明する。
マリ政府がアルジェ合意を破棄した理由
1. 安全保障の懸念
・テロリズムと過激派の脅威: アルジェ合意後も、地域にはアルカイダ系やISIS系の過激派が存在し、治安が悪化していると感じたマリ政府は、より強力な軍事的対応が必要と判断した。
・分離主義勢力との衝突: トゥアレグ族の反政府勢力との衝突が続き、合意が十分に平和をもたらしていないと判断した。
2. 政治的要因
・政府の内部政治: マリ政府内の権力構造や政治的圧力が、アルジェ合意の継続を困難にした。特に、軍事政権が実権を握っている場合、軍事的解決を優先する傾向がある。
・統治の一体性の確保: 部分的な自治権の付与が、国家の一体性を損なうと考えた政府は、中央集権的な統治を強化する必要があると判断した。
3. 外交的要因
・国際的な影響: マリ政府は、ロシアの支援を受けているワグナーグループとの協力を強化し、外部からの軍事的援助を受けることで、分離主義勢力に対する強硬な姿勢を取ることが可能になった。
・地域の同盟関係: マリは、サヘル地域における他の国家との同盟関係を強化するために、反政府勢力に対する強硬な姿勢を取る必要があると判断した。
4. アルジェ合意の不履行
・合意の実行上の問題: アルジェ合意の条項が完全に実行されず、信頼関係が構築されなかったことが原因である。例えば、トゥアレグ族の反政府勢力が合意に基づく武装解除を完全に行わなかったり、自治権の実施が不十分であったりした。
結論
マリ政府がアルジェ合意を破棄した理由は、安全保障の懸念、政治的要因、外交的要因、そして合意の不履行といった複数の要因が絡み合っている。政府は、国家の一体性を維持し、分離主義勢力と過激派の脅威に対処するために、より強硬な姿勢を取る必要があると判断した。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Close Russian Partner Algeria Wants Wagner To Withdraw From Mali Andrew Korybko's Newsletter 2024.08.30
https://korybko.substack.com/p/close-russian-partner-algeria-wants?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148296633&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email