令和のコメ不足 ― 2024年08月30日 18:57
【桃源閑話】
スーパーの店頭に米が一切ない。いつもの棚に無い。近頃の現象である。最も在っても、値段は二割増し程である。
価格上昇には、特に、円安により農産物やエネルギーの輸入コストが増大し、これが廻りめぐって広範な価格上昇につながっている。また、異常気象や供給不足と相まって、米の価格上昇が加速している点もある。
それと、基礎的な資源の無い国が、資源を有する国に制裁を加えるという、噴飯ものの事態は、自国民に却って制裁を課することになる、という皮肉になる。
しかし、思うに、此の国に〝有事〟は決してあってはならないのである。
さて、1993年を基点とする米不足(騒動)を振り返ってみたい。
➢ 1993年、異常気象による冷夏と長雨による深刻な米不足
1993年、異常気象による冷夏と長雨により、日本で深刻な米不足が発生した。この現象は「平成の大凶作」として知られている。この米不足の背景と影響について詳述する。
1.背景
・気象条件:1993年は冷夏と長雨が続き、日本全国で平均気温が低く、日照時間も短かったため、稲の生育が大幅に遅れた。特に東北地方では冷害が深刻で、収穫量が大幅に減少した。
・政策背景:当時の日本は米の自給率が高く、基本的に米の輸入を制限していた。米の需給は国内生産に大きく依存しており、異常気象の影響を受けやすい状況であった。
2.影響
・米の供給不足:1993年の米の収穫量は例年の70%程度にとどまり、国内の需要を大幅に下回った。これにより、米の価格が急騰し、消費者は高額な米を購入せざるを得ない状況になった。
・政府の対応:政府は国内の米不足を補うために、急遽米の輸入を決定した。特にタイ米などの外国産米が輸入されたが、日本人の食文化や味覚に馴染みにくかったため、消費者からの評判はあまり良くなかった。
・消費行動の変化:消費者は米不足に対応するために、麺類やパンなどの他の主食への需要が増加した。また、家庭菜園や米の代替品を利用する動きも見られた。
3.経済的影響
・農業への影響:米不足により、農家の収入が減少し、経済的に大きな打撃を受けた。特に冷害の影響が大きかった東北地方の農家は深刻な状況に陥った。
・食糧政策の見直し:米不足を契機に、日本の食糧政策の見直しが進んだ。輸入米の活用や、米以外の農産物の生産拡大など、多様な食糧供給体制の構築が図られるようになった。
4.長期的影響
・消費者意識の変化:1993年の米不足は、消費者に対して食糧の安定供給の重要性を再認識させた。また、地元産の農産物に対する関心も高まり、地産地消の動きが強まった。
・農業技術の進展:異常気象に対応するための農業技術の研究・開発が進み、耐寒性や耐病性に優れた品種の開発や、気象データを活用した農業生産の最適化が進展した。
1993年の米不足は、日本の農業政策や消費者意識に大きな影響を与え、以後の食糧安全保障に関する議論の基盤となった。この経験を通じて、日本は食糧供給体制の多様化と安定化を図るための様々な対策を講じるようになった。
➢ タイ米・カリフォルニア米などの輸入
1993年の米不足時、日本政府は急場を凌ぐためにタイ米やカリフォルニア米などの外国産米の輸入を決定した。この輸入米が当時の日本社会にどのような影響を与えたのか、詳細に述べる。
1.輸入米の背景と状況
・緊急輸入:1993年の深刻な米不足を受けて、日本政府は緊急措置として米の輸入を決定した。主にタイ米やカリフォルニア米が輸入されたが、これは日本の米の消費文化において画期的な出来事であった。
・輸入量:日本はこの年、約250万トンの米を輸入した。これは、国内の需要を補うためのものであり、通常の輸入量を大幅に上回るものであった。
・輸入米の特徴
タイ米:長粒種で香りが強く、パサパサした食感が特徴である。日本の短粒種の粘り気のある米とは大きく異なり、当初は日本の消費者には馴染みにくいものであった。
・カリフォルニア米:短粒種であり、日本の米と比較的似ているが、やはり風味や粘り気に若干の違いがあった。
2.消費者の反応
・味と調理法の違い:日本の消費者は短粒種の粘り気のある米を好むため、タイ米やカリフォルニア米の食感や風味に違和感を感じることが多かった。特にタイ米は、日本の伝統的な調理法や料理に適していないと感じられることが多く、不評であった。
・市場の混乱:急速な米の輸入と流通の変化により、市場には混乱が生じた。消費者は米の種類や品質に戸惑いを覚え、一部では不満が高まった。
3.政府とメディアの対応
・情報提供:政府やメディアは、輸入米の調理方法や特性について広く情報を提供した。特に、タイ米の炊き方や適した料理(例えば、タイ風カレーや炒飯など)の紹介が行われた。
・価格調整:米の価格が急騰するのを抑えるために、輸入米を低価格で提供する施策も講じられた。
4.長期的影響
・消費者意識の変化:この経験を通じて、日本の消費者は異なる種類の米に対する理解を深め、食の多様性が広がるきっかけとなった。また、食糧の安定供給の重要性を再認識することにもなった。
・米の品質改善:国内の米の品質向上や、新たな品種の開発に拍車がかかり、農業技術の進展が促された。異常気象に強い品種の開発や、栽培技術の改善が進められた。
1993年の米不足と輸入米の導入は、日本の食文化や農業政策に大きな影響を与えた出来事であった。この経験は、以後の日本の食糧安全保障や消費者の食に対する意識の変化に繋がった。
➢ 1993年の米不足解消
1993年の米不足が解消されたのは、翌年の1994年の新米が収穫される秋頃である。
解消までの経緯
1.1993年の状況
・異常気象による冷夏と長雨で、国内の米収穫量が大幅に減少した。
・緊急措置として、タイ米やカリフォルニア米などの外国産米を大量に輸入した。
2.1994年の改善
・1994年は天候が回復し、米の作況が改善された。
・日本国内での米生産が通常の水準に戻り、新米の収穫が順調に進んだ。
3.秋の収穫
・秋(9月から10月頃)の新米収穫により、国内の米供給が安定した。
・この時期には、輸入米に頼らずとも国内の需要を賄えるようになり、米不足が解消された。
1994年の新米の収穫により、米の供給が安定し、1993年の米不足は解消された。
➢ 日本のコメの消費量の推移
日本の米の消費量は、過去数十年にわたって減少傾向にある。1990年代初頭には1,240万トン程度の消費量があったが、その後は持続的に減少している。2023年には、消費量が680万トンと予想されており、これは過去最低の記録となる。
この減少の背景には、人口の減少や食生活の変化が挙げられる。特に若年層を中心に、米以外の食品を摂取する傾向が強まっている。また、農業政策の一環として、米農家が大豆や小麦、飼料用米の生産にシフトすることが奨励されている。
さらに、コロナウイルスの影響で外食産業が一時的に低迷したが、規制緩和により需要が回復し、2023年の米の在庫は197万トンに減少した。これは、4年間で初めて在庫が180万〜200万トンの範囲に戻ったことを意味する。
これらのデータは、米の需要と消費量が今後も減少傾向にあることを示しており、農業政策や消費者行動の変化が日本の米市場に与える影響を反映している。
➢ 2024年8月現在、日本で再び米不足が発生している。米が店頭から消え、あっても価格が約2割上昇している状況である。この問題の主な原因は、以下の要因が重なった結果である。
・異常気象: 高温により米の品質が低下し、市場に適した米の供給が減少した。
・流通経路の変化: 市場の規制緩和により、大手スーパーが中央卸売市場を経由せず、直接農家や小規模ディストリビューターから購入するようになったことで、安定した供給が難しくなっている。
・消費者行動の変化: 消費者が米を買いだめすることが状況を悪化させている。
この状況は一時的なもので、約3週間後には主要産地から新米が市場に出回り、供給不足は解消される見込みである。政府はこの問題を注視し、長期的な供給危機はないと強調している。
➢ なお、消費者には買いだめを避けるように呼びかけられている。
・現在、日本での米不足は、いくつかの要因によって引き起こされている。特に自然災害に備えるための買いだめや、お盆休みの影響で物流が遅れたことが一因である。また、新米の在庫が少ない時期であったため、供給が滞っていると報告されている。
・農林水産省の坂本哲志大臣は、消費者に対して冷静な購買行動を呼びかけている。彼は、在庫米の放出についても慎重な姿勢を示し、これが供給、需要、価格に影響を及ぼす可能性があるため、慎重に検討する必要があると述べている。
・現地の状況を見ると、特定の高品質な米(例:新潟コシヒカリ)は手に入りにくくなってい.
が、千葉や茨城などの他の地域の米は比較的入手しやすい状況である。
・一方で、観光客の増加による消費増加も一因とは考えにくいとのことである。
このように、現在の米不足は主に買いだめや物流の問題によるものであり、供給の正常化は9月以降に期待されている。
➢ 現在、日本で発生している米不足について、政府の対応に関して多くの批判が寄せられている。
・まず、今年の異常気象により、全国的な米の生産量が大幅に減少見込み。この状況に対し、政府は早期から対策を講じるべきだったとの声が上がっている。具体的には、異常気象による収穫量の減少が予測されていたにもかかわらず、事前の備蓄増強や輸入の手配が遅れたとされている。
・さらに、流通過程での買いだめや売り惜しみが指摘されている。一部の業者が米を大量に買い占め、価格が高騰するのを待っているとの疑惑があり、政府はこのような行為を取り締まるための具体的な対策をまだ明確に示していない。
・加えて、観光業の回復に伴う外国人観光客の増加も影響している。観光客が日本国内で大量の米を購入することで、店頭から米が消えるという事態も起きている。
・政府は現在、パニック買いを防ぐための呼びかけや、緊急輸入の手配を進めているが、これが市場にどれだけ迅速に反映されるかは不透明である。政府の対応の遅れや、供給チェーン全体にわたる問題の解決が急務となっている。
このように、現在の米不足問題は複合的な要因によるものであり、政府の無策が指摘される中、早急な対策が求められている。
➢ 今次(2024年)のコメ不足における備蓄米の放出について
1.備蓄米放出の背景
・深刻なコメ不足: スーパーでの品切れや価格の高騰など、消費者の生活に直接影響が出るほどの深刻なコメ不足が起きている。
・備蓄米の存在: 政府は、災害時や異常気象による収穫減などに備えて、一定量の備蓄米を保有している。
・放出を求める声: 大阪府の吉村知事など、地方自治体から備蓄米の放出を求める声が上がっている。
2.備蓄米放出に対する政府の姿勢
・慎重な姿勢: 政府は、民間流通への影響や、市場価格への影響などを考慮し、現時点では備蓄米の放出に慎重な姿勢を示している。
・新米の出回り: 9月には新米が出回り始めるため、供給不足は解消されるとの見通しを示している。
3.備蓄米放出に関する議論のポイント
・緊急性: 現在のコメ不足が、国民生活に与える影響の大きさをどう評価するのか。
・市場への影響: 備蓄米の放出が、コメの市場価格にどのような影響を与えるのか。
・他の対策: 備蓄米の放出以外の対策として、どのようなことが考えられるのか。
なぜ備蓄米をすぐに出さないのか?
・市場経済の原則: 日本では、基本的に市場経済が機能しており、政府が直接介入することは控える傾向がある。
・長期的な視点: 備蓄米は、より大きな災害や長期的な食料危機に備えるためのものである。
・他の対策: 政府は、生産調整の緩和や輸入の拡大など、他の対策も検討している。
5.今後の見通し
・新米の出回り: 9月以降、新米が出回り始めることで、現在の供給不足は解消される可能性がある。
・政府の判断: 政府は、今後の状況を注視しながら、備蓄米の放出を含めた適切な対応を検討していくと考えられる。
・国民の関心: コメは国民の主食であり、今回の問題に対する国民の関心は非常に高い。
➢ 農林水産省の資料によれば、「日本の生産量は、年間781万6,000トンで世界第10位。消費量は796万6,000トンで生産量を上回っていますが、1人当たりの消費量は年間55.2キログラムと他のアジア諸国に比べて圧倒的に少なく、年々減少傾向にあります」とある。
「10年に1度の不作(作況92)や、通常程度の不作(作況94)が2年連続した事態にも、国産米をもって対処し得る水準」で、備蓄水準は100万トン程度とある。
「・2001年当時の需要量をベースに設定 (2011年の回転備蓄方式から棚上備蓄方式への変更時に、引き続き100万トン程度として設定)」
➢ 主食用米の需要量
・主食用米の需要量については、長期的に減少傾向で推移している。
・2010(H22/23) 820万トン→2020(R2/3) 704万トンで14%の減少である。更に2022年度では691万トンと減っている。
【参考】
➢ 回転備蓄方式(ローテーションストック)とは、一定の周期で備蓄品の交換や補充を行う方法である。主に以下のような利点がある。
1.新鮮さの維持:古い備蓄品から使用し、新しいものを追加することで、常に新しい在庫を保持できる。食品などの消費財では特に重要である。
2.効率的な管理:在庫の劣化や消失を防ぎ、在庫管理がしやすくなる。
3.無駄の削減:適切なタイミングで交換することで、過剰な在庫を抱えずに済む。
この方式は、食品や医薬品、消耗品などの管理に広く利用されている。
【参考はブログ作成者が付記】
【閑話 完】
【引用・参照・底本】
特集1 米(2)[WORLD]生産量と消費量で見る世界の米事情
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1601/spe1_02.html#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%94%A3%E9%87%8F%E3%81%AF,%E5%B9%B4%E3%80%85%E6%B8%9B%E5%B0%91%E5%82%BE%E5%90%91%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
日本における穀物等の備蓄(備蓄水準とその考え方)
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/230301/attach/pdf/230301-16.pdf
米の消費及び生産の近年の動向について
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/240305/attach/pdf/240305-15.pdf
米の備蓄運営等について
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/kome_seisaku/pdf/bitiku_unei.pdf
スーパーの店頭に米が一切ない。いつもの棚に無い。近頃の現象である。最も在っても、値段は二割増し程である。
価格上昇には、特に、円安により農産物やエネルギーの輸入コストが増大し、これが廻りめぐって広範な価格上昇につながっている。また、異常気象や供給不足と相まって、米の価格上昇が加速している点もある。
それと、基礎的な資源の無い国が、資源を有する国に制裁を加えるという、噴飯ものの事態は、自国民に却って制裁を課することになる、という皮肉になる。
しかし、思うに、此の国に〝有事〟は決してあってはならないのである。
さて、1993年を基点とする米不足(騒動)を振り返ってみたい。
➢ 1993年、異常気象による冷夏と長雨による深刻な米不足
1993年、異常気象による冷夏と長雨により、日本で深刻な米不足が発生した。この現象は「平成の大凶作」として知られている。この米不足の背景と影響について詳述する。
1.背景
・気象条件:1993年は冷夏と長雨が続き、日本全国で平均気温が低く、日照時間も短かったため、稲の生育が大幅に遅れた。特に東北地方では冷害が深刻で、収穫量が大幅に減少した。
・政策背景:当時の日本は米の自給率が高く、基本的に米の輸入を制限していた。米の需給は国内生産に大きく依存しており、異常気象の影響を受けやすい状況であった。
2.影響
・米の供給不足:1993年の米の収穫量は例年の70%程度にとどまり、国内の需要を大幅に下回った。これにより、米の価格が急騰し、消費者は高額な米を購入せざるを得ない状況になった。
・政府の対応:政府は国内の米不足を補うために、急遽米の輸入を決定した。特にタイ米などの外国産米が輸入されたが、日本人の食文化や味覚に馴染みにくかったため、消費者からの評判はあまり良くなかった。
・消費行動の変化:消費者は米不足に対応するために、麺類やパンなどの他の主食への需要が増加した。また、家庭菜園や米の代替品を利用する動きも見られた。
3.経済的影響
・農業への影響:米不足により、農家の収入が減少し、経済的に大きな打撃を受けた。特に冷害の影響が大きかった東北地方の農家は深刻な状況に陥った。
・食糧政策の見直し:米不足を契機に、日本の食糧政策の見直しが進んだ。輸入米の活用や、米以外の農産物の生産拡大など、多様な食糧供給体制の構築が図られるようになった。
4.長期的影響
・消費者意識の変化:1993年の米不足は、消費者に対して食糧の安定供給の重要性を再認識させた。また、地元産の農産物に対する関心も高まり、地産地消の動きが強まった。
・農業技術の進展:異常気象に対応するための農業技術の研究・開発が進み、耐寒性や耐病性に優れた品種の開発や、気象データを活用した農業生産の最適化が進展した。
1993年の米不足は、日本の農業政策や消費者意識に大きな影響を与え、以後の食糧安全保障に関する議論の基盤となった。この経験を通じて、日本は食糧供給体制の多様化と安定化を図るための様々な対策を講じるようになった。
➢ タイ米・カリフォルニア米などの輸入
1993年の米不足時、日本政府は急場を凌ぐためにタイ米やカリフォルニア米などの外国産米の輸入を決定した。この輸入米が当時の日本社会にどのような影響を与えたのか、詳細に述べる。
1.輸入米の背景と状況
・緊急輸入:1993年の深刻な米不足を受けて、日本政府は緊急措置として米の輸入を決定した。主にタイ米やカリフォルニア米が輸入されたが、これは日本の米の消費文化において画期的な出来事であった。
・輸入量:日本はこの年、約250万トンの米を輸入した。これは、国内の需要を補うためのものであり、通常の輸入量を大幅に上回るものであった。
・輸入米の特徴
タイ米:長粒種で香りが強く、パサパサした食感が特徴である。日本の短粒種の粘り気のある米とは大きく異なり、当初は日本の消費者には馴染みにくいものであった。
・カリフォルニア米:短粒種であり、日本の米と比較的似ているが、やはり風味や粘り気に若干の違いがあった。
2.消費者の反応
・味と調理法の違い:日本の消費者は短粒種の粘り気のある米を好むため、タイ米やカリフォルニア米の食感や風味に違和感を感じることが多かった。特にタイ米は、日本の伝統的な調理法や料理に適していないと感じられることが多く、不評であった。
・市場の混乱:急速な米の輸入と流通の変化により、市場には混乱が生じた。消費者は米の種類や品質に戸惑いを覚え、一部では不満が高まった。
3.政府とメディアの対応
・情報提供:政府やメディアは、輸入米の調理方法や特性について広く情報を提供した。特に、タイ米の炊き方や適した料理(例えば、タイ風カレーや炒飯など)の紹介が行われた。
・価格調整:米の価格が急騰するのを抑えるために、輸入米を低価格で提供する施策も講じられた。
4.長期的影響
・消費者意識の変化:この経験を通じて、日本の消費者は異なる種類の米に対する理解を深め、食の多様性が広がるきっかけとなった。また、食糧の安定供給の重要性を再認識することにもなった。
・米の品質改善:国内の米の品質向上や、新たな品種の開発に拍車がかかり、農業技術の進展が促された。異常気象に強い品種の開発や、栽培技術の改善が進められた。
1993年の米不足と輸入米の導入は、日本の食文化や農業政策に大きな影響を与えた出来事であった。この経験は、以後の日本の食糧安全保障や消費者の食に対する意識の変化に繋がった。
➢ 1993年の米不足解消
1993年の米不足が解消されたのは、翌年の1994年の新米が収穫される秋頃である。
解消までの経緯
1.1993年の状況
・異常気象による冷夏と長雨で、国内の米収穫量が大幅に減少した。
・緊急措置として、タイ米やカリフォルニア米などの外国産米を大量に輸入した。
2.1994年の改善
・1994年は天候が回復し、米の作況が改善された。
・日本国内での米生産が通常の水準に戻り、新米の収穫が順調に進んだ。
3.秋の収穫
・秋(9月から10月頃)の新米収穫により、国内の米供給が安定した。
・この時期には、輸入米に頼らずとも国内の需要を賄えるようになり、米不足が解消された。
1994年の新米の収穫により、米の供給が安定し、1993年の米不足は解消された。
➢ 日本のコメの消費量の推移
日本の米の消費量は、過去数十年にわたって減少傾向にある。1990年代初頭には1,240万トン程度の消費量があったが、その後は持続的に減少している。2023年には、消費量が680万トンと予想されており、これは過去最低の記録となる。
この減少の背景には、人口の減少や食生活の変化が挙げられる。特に若年層を中心に、米以外の食品を摂取する傾向が強まっている。また、農業政策の一環として、米農家が大豆や小麦、飼料用米の生産にシフトすることが奨励されている。
さらに、コロナウイルスの影響で外食産業が一時的に低迷したが、規制緩和により需要が回復し、2023年の米の在庫は197万トンに減少した。これは、4年間で初めて在庫が180万〜200万トンの範囲に戻ったことを意味する。
これらのデータは、米の需要と消費量が今後も減少傾向にあることを示しており、農業政策や消費者行動の変化が日本の米市場に与える影響を反映している。
➢ 2024年8月現在、日本で再び米不足が発生している。米が店頭から消え、あっても価格が約2割上昇している状況である。この問題の主な原因は、以下の要因が重なった結果である。
・異常気象: 高温により米の品質が低下し、市場に適した米の供給が減少した。
・流通経路の変化: 市場の規制緩和により、大手スーパーが中央卸売市場を経由せず、直接農家や小規模ディストリビューターから購入するようになったことで、安定した供給が難しくなっている。
・消費者行動の変化: 消費者が米を買いだめすることが状況を悪化させている。
この状況は一時的なもので、約3週間後には主要産地から新米が市場に出回り、供給不足は解消される見込みである。政府はこの問題を注視し、長期的な供給危機はないと強調している。
➢ なお、消費者には買いだめを避けるように呼びかけられている。
・現在、日本での米不足は、いくつかの要因によって引き起こされている。特に自然災害に備えるための買いだめや、お盆休みの影響で物流が遅れたことが一因である。また、新米の在庫が少ない時期であったため、供給が滞っていると報告されている。
・農林水産省の坂本哲志大臣は、消費者に対して冷静な購買行動を呼びかけている。彼は、在庫米の放出についても慎重な姿勢を示し、これが供給、需要、価格に影響を及ぼす可能性があるため、慎重に検討する必要があると述べている。
・現地の状況を見ると、特定の高品質な米(例:新潟コシヒカリ)は手に入りにくくなってい.
が、千葉や茨城などの他の地域の米は比較的入手しやすい状況である。
・一方で、観光客の増加による消費増加も一因とは考えにくいとのことである。
このように、現在の米不足は主に買いだめや物流の問題によるものであり、供給の正常化は9月以降に期待されている。
➢ 現在、日本で発生している米不足について、政府の対応に関して多くの批判が寄せられている。
・まず、今年の異常気象により、全国的な米の生産量が大幅に減少見込み。この状況に対し、政府は早期から対策を講じるべきだったとの声が上がっている。具体的には、異常気象による収穫量の減少が予測されていたにもかかわらず、事前の備蓄増強や輸入の手配が遅れたとされている。
・さらに、流通過程での買いだめや売り惜しみが指摘されている。一部の業者が米を大量に買い占め、価格が高騰するのを待っているとの疑惑があり、政府はこのような行為を取り締まるための具体的な対策をまだ明確に示していない。
・加えて、観光業の回復に伴う外国人観光客の増加も影響している。観光客が日本国内で大量の米を購入することで、店頭から米が消えるという事態も起きている。
・政府は現在、パニック買いを防ぐための呼びかけや、緊急輸入の手配を進めているが、これが市場にどれだけ迅速に反映されるかは不透明である。政府の対応の遅れや、供給チェーン全体にわたる問題の解決が急務となっている。
このように、現在の米不足問題は複合的な要因によるものであり、政府の無策が指摘される中、早急な対策が求められている。
➢ 今次(2024年)のコメ不足における備蓄米の放出について
1.備蓄米放出の背景
・深刻なコメ不足: スーパーでの品切れや価格の高騰など、消費者の生活に直接影響が出るほどの深刻なコメ不足が起きている。
・備蓄米の存在: 政府は、災害時や異常気象による収穫減などに備えて、一定量の備蓄米を保有している。
・放出を求める声: 大阪府の吉村知事など、地方自治体から備蓄米の放出を求める声が上がっている。
2.備蓄米放出に対する政府の姿勢
・慎重な姿勢: 政府は、民間流通への影響や、市場価格への影響などを考慮し、現時点では備蓄米の放出に慎重な姿勢を示している。
・新米の出回り: 9月には新米が出回り始めるため、供給不足は解消されるとの見通しを示している。
3.備蓄米放出に関する議論のポイント
・緊急性: 現在のコメ不足が、国民生活に与える影響の大きさをどう評価するのか。
・市場への影響: 備蓄米の放出が、コメの市場価格にどのような影響を与えるのか。
・他の対策: 備蓄米の放出以外の対策として、どのようなことが考えられるのか。
なぜ備蓄米をすぐに出さないのか?
・市場経済の原則: 日本では、基本的に市場経済が機能しており、政府が直接介入することは控える傾向がある。
・長期的な視点: 備蓄米は、より大きな災害や長期的な食料危機に備えるためのものである。
・他の対策: 政府は、生産調整の緩和や輸入の拡大など、他の対策も検討している。
5.今後の見通し
・新米の出回り: 9月以降、新米が出回り始めることで、現在の供給不足は解消される可能性がある。
・政府の判断: 政府は、今後の状況を注視しながら、備蓄米の放出を含めた適切な対応を検討していくと考えられる。
・国民の関心: コメは国民の主食であり、今回の問題に対する国民の関心は非常に高い。
➢ 農林水産省の資料によれば、「日本の生産量は、年間781万6,000トンで世界第10位。消費量は796万6,000トンで生産量を上回っていますが、1人当たりの消費量は年間55.2キログラムと他のアジア諸国に比べて圧倒的に少なく、年々減少傾向にあります」とある。
「10年に1度の不作(作況92)や、通常程度の不作(作況94)が2年連続した事態にも、国産米をもって対処し得る水準」で、備蓄水準は100万トン程度とある。
「・2001年当時の需要量をベースに設定 (2011年の回転備蓄方式から棚上備蓄方式への変更時に、引き続き100万トン程度として設定)」
➢ 主食用米の需要量
・主食用米の需要量については、長期的に減少傾向で推移している。
・2010(H22/23) 820万トン→2020(R2/3) 704万トンで14%の減少である。更に2022年度では691万トンと減っている。
【参考】
➢ 回転備蓄方式(ローテーションストック)とは、一定の周期で備蓄品の交換や補充を行う方法である。主に以下のような利点がある。
1.新鮮さの維持:古い備蓄品から使用し、新しいものを追加することで、常に新しい在庫を保持できる。食品などの消費財では特に重要である。
2.効率的な管理:在庫の劣化や消失を防ぎ、在庫管理がしやすくなる。
3.無駄の削減:適切なタイミングで交換することで、過剰な在庫を抱えずに済む。
この方式は、食品や医薬品、消耗品などの管理に広く利用されている。
【参考はブログ作成者が付記】
【閑話 完】
【引用・参照・底本】
特集1 米(2)[WORLD]生産量と消費量で見る世界の米事情
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1601/spe1_02.html#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%94%A3%E9%87%8F%E3%81%AF,%E5%B9%B4%E3%80%85%E6%B8%9B%E5%B0%91%E5%82%BE%E5%90%91%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
日本における穀物等の備蓄(備蓄水準とその考え方)
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/230301/attach/pdf/230301-16.pdf
米の消費及び生産の近年の動向について
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/240305/attach/pdf/240305-15.pdf
米の備蓄運営等について
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/kome_seisaku/pdf/bitiku_unei.pdf