ヨーロッパ半導体産業協会(ESIA)2024年09月05日 10:10

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【概要】

 2024年9月3日に発表されたGlobal Timesの記事では、ヨーロッパ半導体産業協会(ESIA)が、次期欧州委員会に対し、チップ輸出制限を緩和するよう求めたことを報じている。ESIAは、欧州企業が優位性を持つ分野に焦点を当て、より積極的な経済安全保障へのアプローチを取るべきだとしている。

 ESIAの報告によれば、半導体産業はグローバルなサプライチェーンに依存しており、競争力を維持するためには中国を含む他市場へのアクセスが重要であると述べている。また、中国はヨーロッパの半導体およびチップ製造装置の主要な輸入国であり、EUが利益を維持するためには対中貿易制限を緩和すべきだと指摘されている。

 中国の専門家は、欧州企業が成長を求める中で、中国市場は非常に重要であり、EUは自らの利益を優先して対中貿易関係を見直すべきだと述べている。また、米国が中国の技術進展を抑制するための圧力をEUに対して強化していることも指摘されている。

【詳細】
 
 2024年9月3日のGlobal Timesの記事によると、ヨーロッパ半導体産業協会(ESIA)は、次期欧州委員会に対して、半導体の輸出規制を緩和することを求めた。特に、中国市場との関係を強化することが、欧州の半導体産業にとって重要であると強調している。中国は世界最大級の電子機器消費国であり、欧州の半導体メーカーにとって非常に価値のある市場であるため、ESIAは欧州が自国の利益を考慮して対中貿易関係を再評価するべきだと主張している。

 ESIAは、輸出規制の必要性や技術保護の重要性を理解しつつも、より積極的な経済安全保障のアプローチを提案している。これは、制限的な措置や保護主義的な政策に頼るのではなく、サポートやインセンティブに基づいたアプローチを取るべきだというものである。

 ESIAのレポートでは、半導体産業がグローバルなサプライチェーンに大きく依存していることを指摘し、競争力を維持するためには、世界市場をターゲットにする必要があると述べている。特に、500万ユニット規模の高品質な部品を生産するためには、ヨーロッパ市場だけでは不十分であり、グローバルな市場が必要であると強調している。

 アメリカが中国の技術的進展を抑制するために、EUに対して圧力を強めていることにも触れている。特に、オランダ政府が、中国への半導体製造装置の輸出を制限するため、ASML社からの輸出ライセンスの更新を行わない計画を立てていることが報じられている。この制限は、深紫外線リソグラフィ装置など、最先端技術に関連する装置に主に影響を与えている。

 中国の専門家によると、欧州が中国市場から得る利益を失いたくないのであれば、EUは対中貿易に対する制限を緩和すべきだと述べている。例えば、緑色技術、人工知能、バイオテクノロジー、環境保護などの分野で、中国とEUが協力を深める余地があると指摘している。

 また、制限がある一方で、中国は技術的なブレークスルーを目指しており、特に西側諸国からの制約が強まるほど、中国の企業は自力で技術革新を進める決意と自信を高めていると、業界専門家は述べている。このように、西側諸国の制限措置は、むしろ中国の技術的な独立性を強化する結果になる可能性があるという見解も示されている。

 要するに、欧州企業は中国市場に依存しており、特に半導体産業においてはグローバルな規模で競争力を維持するために、欧州が中国との貿易関係を見直すことが求められている。同時に、米国からの圧力に対する対応も含め、欧州は独自の利益を考慮し、慎重に政策を進める必要があるとされている。

【要点】

 1.ヨーロッパ半導体産業協会(ESIA)の提案

 ・次期欧州委員会に対し、半導体の輸出規制を緩和するよう要請。
 ・特に中国市場との貿易関係強化を重視。

 2.中国市場の重要性

 ・中国は世界最大級の電子機器消費国であり、欧州の半導体企業にとって重要な市場。
 ・欧州市場だけでは半導体産業に必要な規模を提供できず、グローバル市場が不可欠。

 3.輸出規制に対するESIAの見解

 ・技術保護や安全保障の重要性を認識しつつ、制限的ではなく、支援やインセンティブに基づくアプローチが必要。
 ・半導体産業はグローバルなサプライチェーンに依存しており、世界市場へのアクセスが競争力維持の鍵。

 4.アメリカの圧力とオランダの動向

 ・アメリカは中国の技術進展を抑制するため、EUに圧力を強化。
 ・オランダ政府はASML社からの輸出ライセンスを更新せず、中国へのチップ製造装置の輸出制限を強化する予定。

 5.中国の専門家の意見

 ・中国は欧州の半導体やチップ製造装置の主要な輸入国であり、EUが利益を維持するためには貿易制限を緩和すべき。
 ・中国とEUは、人工知能や緑色技術など多くの分野で協力を深める余地がある。

 6.技術的独立への中国の決意

 ・西側諸国の制限措置は、むしろ中国企業の技術革新を促進する可能性がある。
 ・中国は自国の技術力を強化するための決意と自信を高めている。

【引用・参照・底本】

Chinese experts urge EU to view trade ties with China in light of its own interests, as ESIA calls for Brussels to ease chip export curbs GT 2024.09.03
https://www.globaltimes.cn/page/202409/1319168.shtml

中国が南シナ海で支配を強める?2024年09月05日 11:42

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【桃源寸評】

 さて、記事の真偽のほどは如何に。画像も不鮮明である。

 この記事の内容は、米国の投影であり、投射なのであろう。

 まぁ、防衛機制の中なのであろう。

【寸評 完】

【概要】

 中国が南シナ海で支配を強めることが、民主主義諸国にとって大きな脅威であると指摘している。特に、中国共産党(CCP)の軍事的および宇宙戦略の拡大が地球規模の覇権を目指していることが問題視されている。中国がHainan島を核ミサイル潜水艦や将来の原子力空母の基地として確保しようとしていること、さらに宇宙への進出を進めていることを強調している。

 具体的な事件として、2024年8月31日に発生したサビナ礁での中国とフィリピンの対立が挙げられている。フィリピン沿岸警備隊の船が中国海軍の艦船に繰り返し衝突され、中国側はフィリピン側が故意に衝突したと虚偽の報道を行ったとされている。フィリピン沿岸警備隊が公開した映像では、中国側が衝突したことが明確であると述べられている。

 過去にアメリカやフィリピンが中国の南シナ海での行動に対して有効な対抗措置を取らなかったことが、中国のさらなる侵略を助長していると指摘している。

【詳細】
 
 中国が南シナ海で支配を確立しようとする動きが、単に地域的な問題にとどまらず、世界的な安全保障に深刻な影響を与えると主張している。特に、中国共産党(CCP)が軍事的・戦略的な優位を確保し、地球規模の覇権を目指している点に焦点が当てられている。

 中国の戦略的野心

 中国は南シナ海での支配を強化し、その結果として軍事力と宇宙開発能力を結びつけ、地球規模の支配を目指している。具体的には、Hainan島を核兵器搭載の弾道ミサイル潜水艦の拠点にすることで、アメリカ本土を射程に収めた戦略的抑止力を持つことを目指している。さらに、未来の原子力空母を配備することにより、中国は世界中に軍事力を反映できるようになる。

 また、Hainan島のWencheng衛星発射基地からは月へのミッションを計画しており、地球-月システムを掌握し、将来的に宇宙空間での覇権を確立する狙いがある。これにより、中国は宇宙領域でのリーダーシップを握り、他国に対する軍事的および技術的な優位性を確保しようとしている。

 フィリピンとの対立

 中国は長年にわたって南シナ海における領土拡大を進め、特にフィリピンに対して強硬な態度を取っている。1995年にフィリピン近海のミスチーフ礁を占領して以来、中国はこの地域で軍事拠点を築いてきた。これに対してフィリピンやアメリカは抗議を続けてきたものの、実質的な対応を取ることができず、中国の侵略を止めることができなかった。

 その結果、2015年までに中国はミスチーフ礁、スビ礁、ファイアリークロス礁を軍事基地化し、航空機、海軍艦艇、ミサイル部隊を配備するなどして、南シナ海の海上交通路を支配している。この地域の軍事力強化は、中国がフィリピンのパラワン島への侵攻や報復行動を行うための準備にも繋がっている。

 サビナ礁での事件

 2024年8月31日、中国とフィリピンの間でサビナ礁(中国名:Xianbian Jiao)付近で衝突事件が発生した。フィリピン沿岸警備隊の船BRPテレサ・マグバナが中国海警船に繰り返し衝突され、さらにその周囲には約10隻の中国人民解放軍海軍(PLAN)の艦船が展開していた。中国は自国の国営メディアで、フィリピン側が故意に衝突したと主張したが、フィリピン沿岸警備隊が公開した映像では、中国側がフィリピン船に衝突したことが明確に示されている。

 さらに記事では、中国が計画的にフィリピンの船を大きく損傷させ、その後深海に曳航して沈める可能性を示唆している。このような挑発的な行為は、中国がフィリピンに対する圧力をさらに強め、南シナ海での支配を確立しようとしている一環として捉えられている。

 アメリカと他の民主主義国家の対応

 アメリカやフィリピンを含む民主主義諸国が過去に中国の侵略行為に対して弱腰であったことが、中国の侵略を助長したと批判されている。1991年、中国はフィリピンの議員を賄賂で操り、アメリカとの軍事基地条約を否決させた。また、1995年のミスチーフ礁占拠に対してもフィリピンは抗議するにとどまり、アメリカは何の行動も取らなかった。その結果、中国は軍事基地を築き、現在の南シナ海での強硬な支配体制を確立するに至った。

 このように、中国は長年にわたり段階的に南シナ海での支配を強めてきたが、その背後にはアメリカやフィリピンの対応の弱さがあったと指摘されている。

【要点】

 1.中国の戦略的野心

 ・中国は南シナ海の支配を強め、軍事力および宇宙開発能力を強化し、地球規模の覇権を目指している。
 ・Hainan島を核ミサイル潜水艦や将来の原子力空母の拠点にすることで、アメリカ本土を射程に収めた戦略的抑止力を確立しようとしている。
 ・Wencheng衛星発射基地を使い、月へのミッションを計画し、地球-月システムの制圧を狙っている。

 2.フィリピンとの対立の経緯

 ・1995年に中国がミスチーフ礁を占拠し、フィリピンとアメリカは抗議したが実質的な行動を取らず。
 ・2015年までに中国はMischief礁、Subi 礁、Fiery Cross礁を軍事基地化し、南シナ海の支配を強化。
 ・これにより、中国はフィリピンのパラワン島への侵攻や報復行動のための準備を整えている。

 3.2024年8月31日のサビナ礁事件

 ・フィリピン沿岸警備隊の船が中国海警船に繰り返し衝突され、10隻の中国海軍艦艇が周囲を囲んだ。
 ・中国は自国の国営メディアでフィリピン船が故意に衝突したと報道したが、フィリピン側の映像では中国側が衝突したことが確認された。
 ・中国はさらにフィリピン船に深刻な損害を与え、曳航して沈める可能性を示唆していた。

 4.アメリカと民主主義諸国の対応の弱さ

 ・1991年、中国はフィリピンの議員を賄賂で操り、アメリカとの軍事基地条約を拒否させた。
 ・1995年、ミスチーフ礁占拠時、フィリピンとアメリカは実質的な行動を取らなかった。
これらの弱い対応が、中国の南シナ海での侵略を助長し、現在の強硬な支配体制を許す結果となった。

【参考】

 ☞ WorldTribune は、特に保守的な視点に立つニュースサイトとして知られており、批判的な意見もある。信頼性については以下の点が挙げられる。

 ・主張が極端な場合がある: WorldTribune は時折、センセーショナルな見出しや、強い政治的意見を持つ記事を掲載することがあり、一部の読者からは誇張や偏りがあると感じられることがある。

 ・ファクトチェックに対する批判: 一部の記事は他のメディアやファクトチェック機関から、情報の正確さについて疑問を呈されることがある。誇張された内容や、十分に裏付けの取れていない情報が掲載される場合もあるため、記事を読む際には注意が必要である。

 ・情報源の確認が重要: WorldTribune だけでなく、いずれのメディアも特定の政治的な立場に基づいた報道を行う場合がある。したがって、重要な問題については複数の信頼できる情報源を確認し、バランスの取れた視点を持つことが大切である。

 結論として、WorldTribune は一部の人に支持されているが、誇張や事実の不正確さに対する批判もあるため、情報の正確性を見極める際には慎重になるべきである。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Weak U.S. response enabling disastrous CCP control of South China Sea WorldTribune 2024.09.04
https://www.worldtribune.com/weak-u-s-response-enabling-disastrous-ccp-control-of-south-china-sea/

中国の警告2024年09月05日 16:15

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【概要】

 アメリカの要請に応じて、オランダと日本が中国への半導体技術や製品の輸出規制を強化しようとしていることに対し、中国が報復を警告している状況を説明している。

 具体的には、オランダの企業ASMLが中国向けに提供している高度な深紫外線(DUV)リソグラフィ装置のメンテナンスサービスが問題視されており、オランダ政府がアメリカからの圧力を受けて、これらの装置へのサービスや部品提供のライセンスを更新しない可能性があると報じられている。この動きに対して中国側は、オランダや日本が規制を強化すれば、貿易制限や代替供給先の模索といった対抗措置を取ると述べている。

 アメリカが自国の技術を使用している製品の中国への輸出を制限する「外国直接製品規則」(FDPR)を拡大する可能性も指摘されており、これは中国の半導体産業に大きな打撃を与えるとされている。

【詳細】
 
 中国、オランダ、日本の間で高まっている半導体を巡る緊張について、より詳しい背景と展開を描いている。ここでは、主にオランダのASMLが提供する高度な半導体製造装置である深紫外線(DUV)リソグラフィ装置のメンテナンスと部品提供が焦点となっている。アメリカは、これらの技術が中国で先端半導体を製造するために重要な役割を果たしているとして、中国への技術提供を抑制するために圧力をかけている。

 背景

 ASMLは、半導体製造における最も重要な企業の一つであり、特にDUVリソグラフィ技術では世界をリードしている。この技術は、スマートフォンやコンピューターなどのデバイスに使われる7ナノメートル(nm)チップの製造に不可欠である。アメリカがオランダに対して、このリソグラフィ装置のメンテナンスや部品提供を制限するように圧力をかけていると報じている。これが実現すれば、中国の半導体産業、特に上海に拠点を置く半導体製造国際公司(SMIC)のような大手企業が大きな影響を受ける可能性がある。

 米国の圧力とFDPRの拡大

 アメリカは、外国直接製品規則(FDPR)を利用して、アメリカの技術を使用して製造された製品の輸出を規制している。この規則により、アメリカ国内だけでなく、他国で生産された製品であってもアメリカの技術が含まれている場合、それを中国に輸出することを制限できる。この記事によると、アメリカはFDPRを拡大し、オランダや日本が製造する半導体製造装置や、韓国が生産する高帯域幅メモリ(HBM)チップの中国への輸出も阻止しようとしているとされている。

 中国の反応と対抗措置

 中国はこの動きを強く非難しており、オランダや日本がアメリカの要請に従って輸出規制を強化した場合、貿易制限や代替供給源の確保、さらにはオランダとのグローバルな協力関係の見直しといった報復措置を取ると警告している。中国国営メディアである環球時報は、このような規制強化が中国の半導体産業に甚大な影響を与えると主張しているが、同時に中国が将来的にこれらの技術を自前で開発できると期待している。

 オランダとASMLの立場

 オランダ政府やASMLは、アメリカの要請に対して慎重に対応している。オランダのディック・スホーフ首相は、ASMLのような革新的な企業の利益を守る必要があると述べている。ASMLは、オランダ経済にとって極めて重要な企業であり、アメリカの圧力に従うことでその国際的な競争力を損なう可能性があるため、政府はその利益とリスクを慎重に天秤にかけている。

 日中関係と日本の懸念

 また、日本も同様の圧力に直面しており、中国は日本に対しても強い警告を発している。特に、自動車産業において中国の希少鉱物への依存が大きいため、トヨタをはじめとする日本の企業は、中国が輸出規制を強化した場合に自国の産業が受ける影響を懸念している。

 長期的な影響

 これらの技術規制が単なる貿易戦争にとどまらず、地政学的な緊張を一層高める可能性があると警告している。アメリカ、中国、オランダ、日本の間で繰り広げられるこの「チップ戦争」は、グローバルな半導体供給チェーンに重大な影響を与え、技術と安全保障を巡る新たな冷戦の一環と見なされている。

 結論として、アメリカ主導の半導体技術規制は、中国の半導体産業を抑制しようとする戦略の一環であり、これに対する中国の反発は、今後の世界経済と国際関係に大きな影響を与える可能性がある。

【要点】

 ・ASMLとDUVリソグラフィ技術: オランダのASMLは、半導体製造に必要な深紫外線(DUV)リソグラフィ装置を提供しており、特に7ナノメートル(nm)チップ製造に重要。

 ・アメリカの圧力: アメリカは、オランダや日本に対し、中国への半導体関連製品の輸出規制を強化するよう圧力をかけており、ASMLのメンテナンスや部品提供も対象に。

 ・外国直接製品規則(FDPR): アメリカのFDPRに基づき、アメリカの技術を使った製品の中国輸出が制限される可能性があり、韓国の高帯域幅メモリ(HBM)チップや日本の半導体製造装置も規制対象。

 ・オランダの対応: オランダのディック・スホーフ首相は、ASMLの利益を守りつつ、アメリカの要請とのバランスを取るために慎重に対応している。

 ・中国の反応と報復措置: 中国はオランダや日本がアメリカの要請に従えば、貿易制限や代替供給源の模索、オランダとの協力見直しといった報復措置を取ると警告。

 ・日中関係と日本の懸念: 日本も中国との関係で圧力を受けており、特に自動車産業で必要な希少鉱物の供給停止を懸念する声がある。

 ・地政学的緊張の高まり: 半導体技術規制は、中国、アメリカ、オランダ、日本間の緊張をさらに高め、グローバルな半導体供給チェーンに影響を与える可能性がある。

【引用・参照・底本】

China threatens chip war retaliation against Dutch, Japanese ASIA TIMES 2024.09.04
https://asiatimes.com/2024/09/china-threatens-retaliation-against-dutch-japanese/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=4812d049fa-DAILY_4_9_2024&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-4812d049fa-16242795&mc_cid=4812d049fa&mc_eid=69a7d1ef3c

ICCのプーチン大統領に対する逮捕状:米国の捏ち上げ2024年09月05日 16:59

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【概要】

 2023年3月31日にThe Grayzoneに掲載されたJeremy LoffredoとMax Blumenthalによるこの記事は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状の根拠に異議を唱えるものである。この逮捕状は、プーチン大統領がウクライナの子供たちをロシアのキャンプに違法に強制送還したと非難している。しかし、著者らは、ICCの主張を支えているイェール大学の人道研究所(HRL)の報告書には欠陥があり、矛盾していると主張している。

 著者は、モスクワ近郊のドンバス・エクスプレスという収容所を訪れたロフレードの直接の体験談を紹介している。記事によると、このキャンプは、戦争で荒廃したドンバス地域の子供たちに音楽のレッスンと安全な環境を提供した。伝えられるところによると、子供たちは両親の同意を得て参加し、その経験は強制的な再教育イニシアチブではなく、レクリエーションプログラムとして描かれていた。

 米国国務省が資金提供するイェールHRL報告書は、現地調査を欠き、衛星データ、ロシアのメディア、翻訳されたテレグラムの投稿に大きく依存していると批判されている。著者らは、HRL報告書の結論と、事務局長のナサニエル・レイモンド(Nathaniel Raymond)氏の声明との間に矛盾があることを強調している。レイモンドは当初、これらの収容所を大規模な「人質事件」の場所と表現していたが、後にその多くを文化教育を提供する「テディベア」収容所と呼んだ。

 記事は、イェールHRLの報告書が、ほとんどの子供たちが予定通りに帰宅し、文書化された虐待がなかったことを認めていると指摘している。ロフレードのキャンプ訪問は、子供たちが安全で、音楽教育に従事し、機会に感謝していることを強調した。

【詳細】
 
 2023年3月31日にJeremy LoffredoとMax Blumenthalによって書かれ、The Grayzoneで公開されたものである。主なテーマは、国際刑事裁判所(ICC)がロシアのプーチン大統領に対して発行した逮捕状が、アメリカ国務省から資金提供を受けた報告書に基づいており、その報告書自体が矛盾しているという主張である。

 ICCはプーチン大統領を、「ウクライナの子供たちをロシア国内のキャンプに不法に移送した」として非難し、逮捕状を発行した。この逮捕状の背後には、イェール大学人道研究所(Yale HRL)が作成した報告書があったが、この報告書はアメリカ国務省の資金提供を受け、また調査の際には現地調査を行っておらず、主に衛星データやロシアのメディアからの情報を基にしていたことが指摘されている。

 ジェレミー・ロフレドは、報告書で言及されたロシアのキャンプの一つ「ドンバス・エクスプレス」を訪問し、戦争で被害を受けた地域からの子供たちが音楽教育を受け、平和な環境で過ごしている様子を記録した。彼は、これらのキャンプが報告書やICCの逮捕状で述べられたような「強制収容所」や「人質状況」ではなく、むしろ文化的で教育的なプログラムであり、多くの子供たちが親の同意のもとで参加していることを確認した。

 主なポイント

 1.ICCの逮捕状と国務省報告書の矛盾

 ICCはプーチン大統領がウクライナの子供たちを不法に移送し、「再教育キャンプ」に入れたと非難したが、報告書は一部のキャンプが「文化教育プログラム」に過ぎないことを認めている。また、報告書自体が「子供の虐待の証拠はない」と述べている。

 2.ヤールHRLの矛盾した発言

 Yale HRLのディレクターであるナサニエル・レイモンドは、CNNで「ウクライナの子供たちは人質にされている」と主張したが、ロフレドとのインタビューでは、「多くのキャンプは主に文化的なもので、まるで『テディベア』のようなプログラムだ」と述べ、メディアでの主張を一部撤回した。

 3.現地訪問と報告の食い違い

 ロフレドが訪れた「ドンバス・エクスプレス」では、子供たちは無料で音楽のレッスンを受け、戦争の危険から逃れるために安全な環境で過ごしていると証言している。これに対して、Yale HRLの報告書はキャンプに関する詳細な現地調査を行っておらず、衛星データやソーシャルメディアの情報に基づいていたことが指摘されている。

 4.政治的影響と米国の関与

 Yale HRLはアメリカ国務省の資金提供を受けており、同報告書はロシアの行為を戦争犯罪として扱うための政治的な道具として利用されている可能性が高いとされている。ロフレドは、キャンプでの経験が西側諸国のメディアでどのように誤って報じられたかを強調している。

 結論

 ICCのプーチン大統領に対する逮捕状が、現地の実情に基づいていないアメリカ国務省資金提供の報告書に依拠していると批判している。ロフレドは、彼自身が訪れたキャンプが安全で教育的な環境であると証言し、ICCやメディアによる報告が実態とは異なることを強調している。 

【要点】

 ・国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状: プーチン大統領がウクライナの子供たちをロシアに不法移送したとして非難され、逮捕状が発行された。

 ・報告書の矛盾: ICCの逮捕状はアメリカ国務省資金提供のイェール大学人道研究所(Yale HRL)の報告書に基づいているが、報告書は現地調査を行わず、衛星データやロシアのメディアを利用して作成されている。

 ・キャンプの実態: 記者ジェレミー・ロフレドがロシアの「ドンバス・エクスプレス」キャンプを訪れ、そこが文化的・教育的プログラムを提供する平和な場所であることを確認。

 ・報告書の不正確さ: Yale HRLの報告書は一部のキャンプが「文化的プログラム」であると認める一方で、子供たちの虐待の証拠はないと述べている。

 ・矛盾する声明: Yale HRLのディレクターがメディアで「人質状態」と述べたが、実際には文化的プログラムであると後に認めた。

 ・アメリカの政治的関与: アメリカ国務省の資金提供が、ロシアに対する政治的圧力として報告書を利用している可能性がある。

 ・現地報道との食い違い: キャンプの子供たちは安全で教育的な環境にあり、報告書やICCの主張とは異なる実態が確認された。本件の緊張をさらに高め、グローバルな半導体供給チェーンに影響を与える可能性がある。

【引用・参照・底本】

ICC’s Putin arrest warrant based on State Dept-funded report that debunked itself the GRAYZONE 2023.03.31
https://thegrayzone.com/2023/03/31/iccs-putin-arrest-state-dept-report/
https://x.com/LindseyGrahamSC/status/1638901097149464576
https://transcripts.cnn.com/show/fzgps/date/2023-03-26/segment/01
https://thegrayzone.com/2023/03/31/iccs-putin-arrest-state-dept-report/
https://x.com/aaronjmate/status/1496308793810034688?s=20
https://www.pbs.org/newshour/world/ukraine-bans-religious-organizations-linked-to-russia
https://www.theguardian.com/world/2012/mar/24/george-clooney-spies-secrets-sudan#:~:text=Nathaniel%20Raymond%20is%20the,Sudanese%20region%20of%20South%20Kordofan.
https://x.com/I_Katchanovski/status/1619044350297780224?s=20
https://hub.conflictobservatory.org/portal/sharing/rest/content/items/97f919ccfe524d31a241b53ca44076b8/data
https://www.youtube.com/watch?v=qq9Gh81FJ4E
https://www.youtube.com/watch?v=1HePye0GA6g&feature=youtu.be
https://ria.ru/20220811/deti-1808799844.html?in=t
https://www.donbass-insider.com/2022/02/19/donbass-dpr-and-lpr-launch-evacuation-of-children-women-and-elderly-amid-ukrainian-shelling/
https://news.un.org/en/story/2006/09/192142
https://www.jpost.com/jewish-world/jewish-news/us-jews-leading-darfur-rally-planning
https://www.dni.gov/index.php/who-we-are/organizations/mission-integration/nic/nic-who-we-are
https://www.pacom.mil/About-USINDOPACOM/USPACOM-Area-of-Responsibility/
YaleHRL_Systematic.Reeducation.Transfer.2023.02.14.1237

リスクの「パーフェクトストーム」2024年09月05日 18:33

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【概要】

 ウィリアム・ペセック氏の記事では、ウォール街の最近の苦境、中国経済の減速、日本の利上げの可能性という3つの主要な脅威を強調しながら、グローバル市場が抱えるリスクの高まりについて論じている。

 ウォール街の下落:韓国のKOSPI指数は、エヌビディアが過去最高の2,790億ドルの損失を出したことで高まった米国の景気後退懸念を反映して急落し、世界市場の不安定さを示唆している。

 中国の減速:中国の継続的な経済収縮は、石油や銅などの世界的なコモディティ価格に影響を与え、世界経済の見通しを悪化させている。習近平国家主席が成長を刺激する努力をしているにもかかわらず、中国の製造業指数は数カ月間、縮小局面にとどまっている。

 日本の利上げ:植田和夫日銀総裁の利上げへのコミットメントは、特に様々なグローバル投資を下支えしてきた円キャリートレードに影響を与えることにより、グローバル市場をさらに不安定化させる可能性がある。

 これらの要因が組み合わさって、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定や、来たる米国大統領選挙などの政治動向が、世界の金融不安を悪化させる可能性があるという不確実性とともに、リスクの「パーフェクトストーム」を生み出している。

【詳細】
 
 世界の市場に迫る「完璧な嵐」と呼ばれる経済リスクを詳細に解説している。この嵐を引き起こす要因として、主に3つの大きなリスクが挙げられている。

 1. ウォール街の急落とその影響

 9月4日に韓国のKOSPI指数が3%下落したのは、米国の経済不安、特に景気後退への懸念が直接的な原因です。加えて、米国のテック企業であるNvidia社が9月2日に記録的な2790億ドルの損失を出したことも、市場を揺るがす一因となっている。このNvidiaの株価急落は、投資家の心理を悪化させ、世界各地の市場に波及した。

 2. 中国の経済減速

 中国経済の減速が、特に原材料の需要減少とその結果としてのコモディティ価格の下落を招いている。8月の中国製造業購買担当者指数(PMI)は4ヶ月連続で50を下回り、これは景気縮小を示す。2023年4月以降、わずか3ヶ月しか50を上回っていないことから、経済の弱さが顕著である。中国の景気減速は世界中に波及し、特に銅や原油などの主要コモディティ市場に悪影響を与えている。

 中国の不動産危機やデフレ圧力が加わり、経済回復の足取りが鈍っており、内需を刺激するための政策支援が急務とされている。

 3. 日本の金利引き上げ

 日本銀行の上田和夫総裁が、経済条件が整えば追加の利上げを行う方針を堅持していることも、市場にさらなる不確実性をもたらしている。7月31日に日本が2008年以来の最も高い金利水準に引き上げたことは、市場にとって「金融地震」とも呼ばれる大きな出来事であった。特に、日本の低金利を利用して資金調達を行い、世界中で高利回りの資産に投資する「円キャリートレード」が揺らぎ、世界中の市場が影響を受けている。円が急激に上昇することで、投資家がリスク回避に動き、株価や資産価格が下落する可能性が高まる。

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)の政策会合と政治的リスク

 さらに、9月17~18日に予定されているFRBの政策会合が市場のカタリストとなる可能性が指摘されている。特に、米国経済の成長が減速している中で、FRBが金融緩和を行うかどうかに注目が集まっている。緩和が行われた場合、投資家が期待外れを感じる可能性があり、資産市場にネガティブな影響を与えることが懸念されている。

 また、11月に予定されている米国大統領選挙の結果も、市場に大きな影響を与えると考えられる。カマラ・ハリス候補が勝利した場合には比較的穏やかな貿易政策が予想されるが、ドナルド・トランプ候補が勝利した場合、彼が提唱する中国への60%の関税など、過激な貿易政策が市場を揺るがす要因となるだろう。

 さらに、米国の国家債務は35兆ドルを超えており、これは財政健全性に対する大きなリスクとなっている。特に、1月6日の議会乱入事件以降、米国の政治的分断が財政不安に拍車をかけており、これは米国の信用格付けにも影響を及ぼしている。

 コモディティ市場と世界経済の相互依存

 中国と米国の経済減速が相互に影響し合っており、これが世界のコモディティ市場に悪影響を与えています。特に原油と銅の価格は、両国の景気動向に大きく依存しており、価格が下落する可能性が指摘されている。例えば、ブレント原油は現在1バレル74ドル付近で取引されており、75ドルというサポートラインを下回れば、さらなる売り圧力がかかると予想されている。

 総括

 この記事が描く「完璧な嵐」は、米国の景気後退懸念、中国経済の減速、そして日本の金利引き上げが同時に市場に悪影響を与え、世界中の投資家に不安を与える構図である。 

【要点】

内容を箇条書きで説明したものである。

 1.ウォール街の急落:

 ・韓国のKOSPI指数が3%下落(9月4日)。
 ・米国のテック企業Nvidiaの株価が2790億ドルの損失を記録(9月2日)。
 ・これにより、世界の市場に不安が広がっている。

 2.中国の経済減速

 ・中国の製造業購買担当者指数(PMI)が8月に4ヶ月連続で50を下回る。
 ・中国の景気減速が原油や銅などのコモディティ価格に悪影響を及ぼしている。
 ・不動産危機やデフレ圧力が経済回復を妨げている。

 3.日本の金利引き上げ

 ・日本銀行が金利を2008年以来の高水準に引き上げ(7月31日)。
 ・円キャリートレードが影響を受け、世界の市場が不安定に。
 ・金利引き上げが日本国債の利回りを押し上げ、予測不能な市場の変動を引き起こす可能性がある。

 4.米国連邦準備制度理事会(FRB)の政策会合:

 ・9月17~18日のFRBの政策会合が市場に影響を与える可能性。
 ・金融緩和の有無が市場の期待と実際の政策にギャップを生む可能性がある。
 
 5.米国の大統領選挙と政治的リスク

 ・11月の大統領選挙結果が市場に大きな影響を与える可能性。
 ・トランプ氏の勝利なら過激な貿易政策が予想され、ハリス氏の勝利なら比較的穏やかな貿易政策が予想される。
 ・政治的分断や国家債務が米国の信用格付けに影響を与え、世界の市場に不安をもたらす。

 6.コモディティ市場の影響:

 ・中国と米国の経済減速がコモディティ価格に影響を与える。
 ・原油価格は現在74ドルで、75ドルのサポートラインを下回るとさらなる売り圧力がかかる可能性がある。

【引用・参照・底本】

Perfect storm looming large over global markets ASIA TIMES 2024.09.05
https://asiatimes.com/2024/09/perfect-storm-looming-large-over-global-markets/