東南アジアにおけるエネルギー技術と脱炭素化の現状 ― 2024年10月02日 09:27
【桃源寸評】
おそらく、これらの国々脱炭素化の目標を達成することは不可能に近いだろう。大体において、協力する国々を観ても、脱炭素化の国内の状況は他国の範とならないだろう。
つまり、<頭の上の蠅も追えない>パートナーなのだ。
それに何故か地政学的臭いが芬芬である。
搔き回されて忘れられるのが落ちであろう。
目的は南アジアの脱炭素化でなく、<敵は本能寺に在り>である。
【寸評 完】
【概要】
このレポートでは、東南アジアにおけるエネルギー技術と脱炭素化の現状について説明されている。特に、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムの4カ国に焦点を当て、それらがどのように新興エネルギー技術を採用し、エネルギー転換計画を進めているかに注目している。レポートはまた、アメリカの役割や協力が、これらの国々のエネルギー転換をどのように支援できるかについても議論している。
インドネシアのエネルギー技術と政策
インドネシアでは、2023年時点でのエネルギーミックスの大部分が石炭(43%)に依存しており、石油が31%、天然ガスが16%、再生可能エネルギーが8%、水力発電が2%を占めている。この国は、エネルギー転換を進めるために、2022年に「公正なエネルギー転換パートナーシップ(JETP)」を設立し、アメリカと日本を含む10カ国の国際パートナーグループ(IPG)と協力している。JETPの目標は、2030年までに電力部門のCO2排出量を2億9千万トン以下に抑え、2050年までにネットゼロ排出を達成することである。また、2030年までに電力の34%を再生可能エネルギーから供給することも目指している。
この目標を達成するためには、相当な投資が必要であり、特に変動型および送電可能な再生可能エネルギーの拡充が求められている。例えば、2030年までに40.4ギガワットの変動型再生可能エネルギーを追加するには、約257億ドルが必要とされている。
新興エネルギー技術の活用
インドネシアは、再生可能エネルギーの導入だけでなく、次世代のエネルギー技術の探索にも取り組んでいる。2023年には、小型モジュール原子炉(SMR)の開発を支援するために、アメリカと協力を開始した。また、CCUS(炭素回収・利用・貯留)技術についても法整備を進め、2024年に発表された大統領令14/2024によって、外国からの二酸化炭素の輸入を一部許可する体制を整えた。
インドネシアは、このような新興技術を活用して脱炭素化を進めているが、2030年までに既存の石炭依存を完全に脱することは難しいとされており、これらの技術だけではエネルギー需要を完全に満たすことは難しいと考えられている。
【詳細】
このレポートでは、インドネシアがエネルギー転換と脱炭素化に取り組む中で直面している課題や、新興技術の導入に向けた具体的な取り組みが詳しく説明されている。以下に、その詳細を掘り下げる。
エネルギーミックスと再生可能エネルギー導入の現状
2023年の時点で、インドネシアのエネルギー供給の大部分は依然として石炭に依存している。石炭は総エネルギー消費の43%を占めており、石油(31%)、天然ガス(16%)がそれに続く。一方で、再生可能エネルギー(風力や太陽光)はわずか8%であり、水力発電は2%にとどまっている。このエネルギーミックスは、気候目標達成には不十分であり、持続可能なエネルギー源のさらなる導入が必要とされている。
インドネシアは、国際パートナーグループ(IPG)と連携して、「公正なエネルギー転換パートナーシップ(JETP)」を通じてエネルギー転換を推進している。このパートナーシップの一環として、2022年にインドネシアとIPGは、2030年までに電力部門のCO2排出量を最大で2億9千万トンに抑えるという共同目標を設定した。その後、2050年までにネットゼロ排出を達成することを目指している。また、2030年までに電力の34%を再生可能エネルギーから供給するという目標も設定された。しかし、現実的には、この目標を達成するためには、莫大な投資が必要である。
JETPの目標と課題
JETPの具体的な投資目標には、主に2つの分野での再生可能エネルギーの拡大が含まれている。1つ目は、「送電可能な再生可能エネルギーの加速化」であり、2030年までに16.1ギガワットの容量を新たに追加することが目指されている。これには492億ドルのコストがかかると見積もられている。2つ目は、「変動型再生可能エネルギーの加速化」で、2030年までに40.4ギガワットの容量を追加するために257億ドルが必要である。これらの投資目標を達成するためには、IPGの初期投資額である200億ドルを大幅に超える追加の資金が必要とされており、インドネシアやIPGのメンバー国、さらに民間セクターからの支援が不可欠である。
加えて、インドネシアのエネルギー転換計画では、工業用消費者向けに発電される「自家発電プラント」からの排出量が排除されている。これらのプラントは2030年までに推定1億5300万トンから1億8700万トンのCO2を排出するとされており、これは2030年までに達成されるべき電力セクター全体の排出量目標の61%から74%に相当する。この問題は、インドネシア政府とIPGの間で今後の取り組みが約束されているが、具体的な行動計画が法的拘束力を持つわけではなく、石炭を使用するプラントの拡大が進む現状では、目標達成が難しいとされている。
小型モジュール原子炉(SMR)の導入
再生可能エネルギー導入の一環として、インドネシアは新興技術である小型モジュール原子炉(SMR)の導入を模索しています。2023年3月、アメリカの貿易開発庁(USTDA)はインドネシアの国営電力会社PLN Indonesia Powerに対し、技術支援を提供するための助成金を発表した。これにより、オレゴン州に拠点を置くNuScale Powerが技術支援を行い、アメリカのFluor社の子会社や日本のJGCコーポレーションと協力してプロジェクトを進めることになっている。
さらに、2023年5月には、デンマークの4つの企業と協力して、ボルネオ島にSMR施設を建設し、年間100万トンの超低排出アンモニアを生産する計画を進めている。2024年8月には、次期大統領に選出されたプラボウォ・スビアント氏がロシアのプーチン大統領と会談し、原子力エネルギー分野での協力を要請した。
インドネシアとアメリカは、1981年に締結された「123協定」に基づく長年の原子力協力関係を持っており、この協定は2031年まで有効である。しかし、インドネシアは地震などの自然災害が多い国であり、SMR施設の設置場所は地震リスクの低いボルネオ島などの地域に限定される可能性が高いため、Java島などの人口が多い地域には適用しにくいとされている。そのため、SMR技術がインドネシアのエネルギー供給を劇的に改善する「万能薬」となることは期待できず、JETPのシナリオでは、2050年までにSMR技術が全エネルギー供給の5%を占めるにすぎないと見込まれている。
CCUS(炭素回収・利用・貯留)技術の展開
インドネシアは、CCUS技術の開発においても進展を見せている。2023年にエネルギー省は、炭素回収・貯留に関するMEMR 2/2023を発行し、上流石油・ガス探索および生産活動におけるCCUSの適用を促進した。さらに、2024年1月には大統領令14/2024が制定され、CCUS活動の組織化が進められた。この規制により、インドネシア国内での炭素貯留能力の30%を外国の二酸化炭素の受け入れに使用することが可能となった。ただし、外国からの排出物は、インドネシアに投資しているか、関連する企業が投資していることが条件となる。
BPは、2023年11月にCCUSプロジェクトを発表し、ExxonMobilやChevronなどの企業もCCUSプロジェクトへの投資を検討しており、インドネシアはこの分野で地域をリードする国となっている。
インドネシアは、エネルギー転換に向けた目標を掲げつつ、再生可能エネルギーの導入に取り組んでいるが、依然として石炭への依存が高い現実がある。SMRやCCUSといった新興技術は、将来的なエネルギー供給の一部を担う可能性があるが、課題も多く、特に大規模な投資と国際的な協力が不可欠である。アメリカとの協力や、他の国際パートナーとの連携が、インドネシアの脱炭素化とエネルギー転換の成功に向けて鍵となるだろう。
次にフィリピン、タイ、ベトナムのエネルギー状況、各国の政策、そして提言について、詳細に説明する。
フィリピン
1.エネルギーミックス(2023年)
・石油: 約42%、石炭: 40%、天然ガス: 5%、再生可能エネルギー: 8%(風力と太陽光を含む)、水力発電: 5%
2.政策の枠組み
マルコス大統領の政権は、フィリピンのネットゼロ経済への道筋を描くために、2023年から2050年までの「フィリピンエネルギープラン(PEP)」を発表した。このプランは以下の3つの主要な取り組みを掲げている。
・手頃なエネルギーへのアクセスの確保
・信頼性が高く弾力的なエネルギー供給の達成
・クリーンで持続可能な気候中心のエネルギー資源の開発
特に、再生可能エネルギーのシェアを2030年までに30%、2040年までに50%、2050年までに50%以上に引き上げることを目指している。加えて、電気自動車、水素、エネルギー貯蔵システム、原子力などの新興技術にも力を入れている。
3.新興技術の役割
PEPはフィリピンのエネルギーセクターの将来において新興技術の重要性を強調している。「参照シナリオ」と「クリーンエネルギーシナリオ」の2つのエネルギーパスウェイシナリオが提案されている。クリーンエネルギーシナリオでは、2040年までに6.9%、2050年までに8.9%の電力を新興技術で生成する可能性がある。これは、風力の拡大と合わせて、石炭、天然ガス、太陽光、水力からの減少を相殺することが期待されている。
4.原子力の取り組み
フィリピンは原子力エネルギー計画を戦略的に進めており、2023年11月には米国との間で原子力協力に関する123協定に署名した。この協定は、フィリピンでの核エネルギー開発を支援するもので、米国企業の投資を促進するものとされている。
タイ
1.エネルギーミックス(2023年)
・石油と天然ガス: 合計80%、石炭: 12%、再生可能エネルギー: 7%、水力発電: 1%
タイのエネルギー使用の増加は、エルニーニョによる干ばつの影響を受けている。タイはラオスからの水力発電に依存しているが、干ばつの影響で発電量が減少し、石油と天然ガスの使用が増加している。
2.自然エネルギー計画(NEP)
タイのNEPはカーボンニュートラルを2065年から2070年までの間に達成することを目指している。具体的な取り組みとして、2024年から2037年までの間に50%の再生可能エネルギーを目指す計画が含まれている。また、氷水素や小型モジュール型原子炉(SMR)の導入も考慮されている。
3.電気自動車(EV)産業の成長
タイは2023年に78,314台のEVを販売しており、2022年の9,729台から大きく増加した。政府はEVの普及を促進するため、商業車両をEVに移行するインセンティブを承認している。
ベトナム
1.エネルギーミックス(2023年)
・石炭: 47%、石油と天然ガス: 29%、水力発電: 16%、再生可能エネルギー: 7%
ベトナムは2050年までに石炭依存を削減することを目指しているが、干ばつの影響で水力発電が減少しており、石炭の使用が増加している。
2.エネルギー移行計画(PDP8)
2023年に承認されたPDP8は、カーボンニュートラルを2050年までに達成することを目指している。この計画は、石炭火力発電からの移行を含む持続可能なエネルギーの選択肢を提供する。
3.新興技術の開発
・ベトナムは、バッテリー貯蔵、バイオマス、廃棄物発電、グリーン水素およびアンモニアなど、新しい技術の導入を計画している。これらの技術は、再生可能エネルギーへの移行において重要な役割を果たすとされている。
提言
1.成熟した再生可能エネルギーと新興技術のバランスを取る
アメリカはASEAN諸国と協力し、成熟した再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、水力)と新興技術(水素、SMRなど)とのバランスを取る必要がある。
2.政策の一貫性とシナジーを維持する
新しい政権が誕生する中で、アメリカはエネルギー技術への支援において政策の一貫性を保ち、ASEAN諸国との信頼関係を築くことが重要である。
3.新興エネルギー技術に関する基準を調整するメカニズムを設立する
アメリカとASEANのパートナーは、エネルギー技術の開発と配備に関する基準を調整する共同メカニズムを確立し、技術の透明性と安全性を高める必要がある。
4.技能共有の取り組みを進める
アメリカは、ASEAN諸国が新興エネルギー技術を独立して追求できるように、教育、技能共有、知識移転の機会を提供するべきである。
【要点】
インドネシアのエネルギー政策と関連する要素についての説明を箇条書きでまとめた。
・エネルギーミックスの現状: 2023年時点で、インドネシアのエネルギー消費は石炭43%、石油31%、天然ガス16%、再生可能エネルギー8%、水力発電2%。
・JETPの目標: 2030年までに電力部門のCO2排出量を2億9千万トンに抑え、2050年までにネットゼロ排出を達成。2030年までに電力の34%を再生可能エネルギーで供給することを目標とする。
・JETPの課題: 再生可能エネルギーの拡大には莫大な投資が必要。IPGの200億ドルの資金では不十分であり、さらなる資金調達が必要。
・自家発電プラントの問題: 工業用消費者向けの自家発電プラントがJETPの排出量目標に含まれておらず、2030年までにCO2排出量の61%〜74%を占める可能性がある。
・小型モジュール原子炉(SMR)の導入: アメリカのNuScale Powerやデンマーク企業、ロシアとの協力で、インドネシアはSMR技術を導入。ただし、地震リスクが高い地域には適用しにくく、2050年までに全エネルギーの5%を占めると予想。
・CCUS技術の展開: インドネシアは2023年にCCUSに関する新たな規制を発行し、炭素貯留活動を推進。BPやExxonMobil、ChevronがCCUSプロジェクトに投資を検討中。
・結論: インドネシアは再生可能エネルギーの導入と脱炭素化に向けて努力しているが、石炭依存が依然として高く、国際的な協力と大規模な投資が成功の鍵となる。
次にフィリピン、タイ、ベトナムのエネルギー政策と関連する要素についての説明を箇条書きでまとめた。
フィリピン
1.エネルギーミックス(2023年)
・石油:42%、石炭:40%、天然ガス:5%、再生可能エネルギー(風力・太陽光):8%、水力:5%
2.フィリピンエネルギー計画(PEP)
・期間:2023年から2050年
・主要目標
⇨ 手頃な価格のエネルギーへのアクセス確保
⇨ 信頼性と耐性のあるエネルギー供給の実現
⇨ クリーンで持続可能なエネルギー資源の開発
・再生可能エネルギーの割合を2030年までに30%、2040年までに50%、2050年までに50%以上に増加させる計画。
3.新技術と代替燃料
・電気自動車、水素、エネルギー貯蔵システム、原子力に焦点を当てている。
・エネルギー技術に関する研究開発(R&D)を推進。
4.原子力プログラム
・2016年に原子力プログラム実施機関が設立。
・2020年に原子力プログラム連絡会議が設立。
・2022年に大統領令164が制定され、原子力エネルギーに関する規制枠組みが構築された。
・2023年11月に米国との原子力協力に関する123協定が署名された。
タイ
1.エネルギーミックス(2023年)
・石油と天然ガス:80%、石炭:12%、再生可能エネルギー:7%、水力:1%、
2.エネルギー政策(自然エネルギー計画NEP)
・目標:2065年から2070年までのカーボンニュートラリティの達成。
・5つの主要イニシアチブを実施中。
3.新技術の導入
・水素と小型モジュール炉(SMR)の研究。
・三菱重工業とタイの電力生成公社が水素共同燃焼技術の研究契約を締結。
・SMRに関して具体的なタイムラインは未定。
4.電気自動車(EV)の発展
・2023年には78,314台のEVが販売され、前年から大幅に増加。
・企業が商業車両をEVに移行するためのインセンティブが承認された。
ベトナム
1.エネルギーミックス(2023年)
・石炭:47%、石油と天然ガス:29%、水力:16%、再生可能エネルギー:7%
2.エネルギー政策(電力開発計画8、PDP8)
・2024年までにカーボンニュートラリティを達成する目標。
・海上風力発電の開発が進まない状況。
・エネルギー転換プランに従って、再生可能エネルギーとバイオマスの利用を拡大予定。
3.国際的な協力と資金調達
・JETP(Just Energy Transition Partnership)を通じて155億ドルの資金を調達する計画。
・新技術(バッテリー貯蔵、グリーン水素など)の導入を目指す。
4.LNG(液化天然ガス)
・LNGを過渡的な燃料として位置づけ、13の新しいLNG発電所を2024年までに建設する予定。
5.原子力の再検討
・2016年に中止された原子力計画を2024年に再開する方針。
提言
1.米国との協力
・ASEAN諸国との成熟した再生可能エネルギーと新興技術のバランスを取る必要がある。
・米国主導のイニシアチブとの政策の一貫性を保つことが重要。
・新興エネルギー技術の開発に関する基準を共同で設定し、スキル共有イニシアチブを進める必要がある。
【引用・参照・底本】
Energy Technologies and Decarbonization in Southeast Asia CSIS 2024.09.30
https://www.csis.org/analysis/energy-technologies-and-decarbonization-southeast-asia
おそらく、これらの国々脱炭素化の目標を達成することは不可能に近いだろう。大体において、協力する国々を観ても、脱炭素化の国内の状況は他国の範とならないだろう。
つまり、<頭の上の蠅も追えない>パートナーなのだ。
それに何故か地政学的臭いが芬芬である。
搔き回されて忘れられるのが落ちであろう。
目的は南アジアの脱炭素化でなく、<敵は本能寺に在り>である。
【寸評 完】
【概要】
このレポートでは、東南アジアにおけるエネルギー技術と脱炭素化の現状について説明されている。特に、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムの4カ国に焦点を当て、それらがどのように新興エネルギー技術を採用し、エネルギー転換計画を進めているかに注目している。レポートはまた、アメリカの役割や協力が、これらの国々のエネルギー転換をどのように支援できるかについても議論している。
インドネシアのエネルギー技術と政策
インドネシアでは、2023年時点でのエネルギーミックスの大部分が石炭(43%)に依存しており、石油が31%、天然ガスが16%、再生可能エネルギーが8%、水力発電が2%を占めている。この国は、エネルギー転換を進めるために、2022年に「公正なエネルギー転換パートナーシップ(JETP)」を設立し、アメリカと日本を含む10カ国の国際パートナーグループ(IPG)と協力している。JETPの目標は、2030年までに電力部門のCO2排出量を2億9千万トン以下に抑え、2050年までにネットゼロ排出を達成することである。また、2030年までに電力の34%を再生可能エネルギーから供給することも目指している。
この目標を達成するためには、相当な投資が必要であり、特に変動型および送電可能な再生可能エネルギーの拡充が求められている。例えば、2030年までに40.4ギガワットの変動型再生可能エネルギーを追加するには、約257億ドルが必要とされている。
新興エネルギー技術の活用
インドネシアは、再生可能エネルギーの導入だけでなく、次世代のエネルギー技術の探索にも取り組んでいる。2023年には、小型モジュール原子炉(SMR)の開発を支援するために、アメリカと協力を開始した。また、CCUS(炭素回収・利用・貯留)技術についても法整備を進め、2024年に発表された大統領令14/2024によって、外国からの二酸化炭素の輸入を一部許可する体制を整えた。
インドネシアは、このような新興技術を活用して脱炭素化を進めているが、2030年までに既存の石炭依存を完全に脱することは難しいとされており、これらの技術だけではエネルギー需要を完全に満たすことは難しいと考えられている。
【詳細】
このレポートでは、インドネシアがエネルギー転換と脱炭素化に取り組む中で直面している課題や、新興技術の導入に向けた具体的な取り組みが詳しく説明されている。以下に、その詳細を掘り下げる。
エネルギーミックスと再生可能エネルギー導入の現状
2023年の時点で、インドネシアのエネルギー供給の大部分は依然として石炭に依存している。石炭は総エネルギー消費の43%を占めており、石油(31%)、天然ガス(16%)がそれに続く。一方で、再生可能エネルギー(風力や太陽光)はわずか8%であり、水力発電は2%にとどまっている。このエネルギーミックスは、気候目標達成には不十分であり、持続可能なエネルギー源のさらなる導入が必要とされている。
インドネシアは、国際パートナーグループ(IPG)と連携して、「公正なエネルギー転換パートナーシップ(JETP)」を通じてエネルギー転換を推進している。このパートナーシップの一環として、2022年にインドネシアとIPGは、2030年までに電力部門のCO2排出量を最大で2億9千万トンに抑えるという共同目標を設定した。その後、2050年までにネットゼロ排出を達成することを目指している。また、2030年までに電力の34%を再生可能エネルギーから供給するという目標も設定された。しかし、現実的には、この目標を達成するためには、莫大な投資が必要である。
JETPの目標と課題
JETPの具体的な投資目標には、主に2つの分野での再生可能エネルギーの拡大が含まれている。1つ目は、「送電可能な再生可能エネルギーの加速化」であり、2030年までに16.1ギガワットの容量を新たに追加することが目指されている。これには492億ドルのコストがかかると見積もられている。2つ目は、「変動型再生可能エネルギーの加速化」で、2030年までに40.4ギガワットの容量を追加するために257億ドルが必要である。これらの投資目標を達成するためには、IPGの初期投資額である200億ドルを大幅に超える追加の資金が必要とされており、インドネシアやIPGのメンバー国、さらに民間セクターからの支援が不可欠である。
加えて、インドネシアのエネルギー転換計画では、工業用消費者向けに発電される「自家発電プラント」からの排出量が排除されている。これらのプラントは2030年までに推定1億5300万トンから1億8700万トンのCO2を排出するとされており、これは2030年までに達成されるべき電力セクター全体の排出量目標の61%から74%に相当する。この問題は、インドネシア政府とIPGの間で今後の取り組みが約束されているが、具体的な行動計画が法的拘束力を持つわけではなく、石炭を使用するプラントの拡大が進む現状では、目標達成が難しいとされている。
小型モジュール原子炉(SMR)の導入
再生可能エネルギー導入の一環として、インドネシアは新興技術である小型モジュール原子炉(SMR)の導入を模索しています。2023年3月、アメリカの貿易開発庁(USTDA)はインドネシアの国営電力会社PLN Indonesia Powerに対し、技術支援を提供するための助成金を発表した。これにより、オレゴン州に拠点を置くNuScale Powerが技術支援を行い、アメリカのFluor社の子会社や日本のJGCコーポレーションと協力してプロジェクトを進めることになっている。
さらに、2023年5月には、デンマークの4つの企業と協力して、ボルネオ島にSMR施設を建設し、年間100万トンの超低排出アンモニアを生産する計画を進めている。2024年8月には、次期大統領に選出されたプラボウォ・スビアント氏がロシアのプーチン大統領と会談し、原子力エネルギー分野での協力を要請した。
インドネシアとアメリカは、1981年に締結された「123協定」に基づく長年の原子力協力関係を持っており、この協定は2031年まで有効である。しかし、インドネシアは地震などの自然災害が多い国であり、SMR施設の設置場所は地震リスクの低いボルネオ島などの地域に限定される可能性が高いため、Java島などの人口が多い地域には適用しにくいとされている。そのため、SMR技術がインドネシアのエネルギー供給を劇的に改善する「万能薬」となることは期待できず、JETPのシナリオでは、2050年までにSMR技術が全エネルギー供給の5%を占めるにすぎないと見込まれている。
CCUS(炭素回収・利用・貯留)技術の展開
インドネシアは、CCUS技術の開発においても進展を見せている。2023年にエネルギー省は、炭素回収・貯留に関するMEMR 2/2023を発行し、上流石油・ガス探索および生産活動におけるCCUSの適用を促進した。さらに、2024年1月には大統領令14/2024が制定され、CCUS活動の組織化が進められた。この規制により、インドネシア国内での炭素貯留能力の30%を外国の二酸化炭素の受け入れに使用することが可能となった。ただし、外国からの排出物は、インドネシアに投資しているか、関連する企業が投資していることが条件となる。
BPは、2023年11月にCCUSプロジェクトを発表し、ExxonMobilやChevronなどの企業もCCUSプロジェクトへの投資を検討しており、インドネシアはこの分野で地域をリードする国となっている。
インドネシアは、エネルギー転換に向けた目標を掲げつつ、再生可能エネルギーの導入に取り組んでいるが、依然として石炭への依存が高い現実がある。SMRやCCUSといった新興技術は、将来的なエネルギー供給の一部を担う可能性があるが、課題も多く、特に大規模な投資と国際的な協力が不可欠である。アメリカとの協力や、他の国際パートナーとの連携が、インドネシアの脱炭素化とエネルギー転換の成功に向けて鍵となるだろう。
次にフィリピン、タイ、ベトナムのエネルギー状況、各国の政策、そして提言について、詳細に説明する。
フィリピン
1.エネルギーミックス(2023年)
・石油: 約42%、石炭: 40%、天然ガス: 5%、再生可能エネルギー: 8%(風力と太陽光を含む)、水力発電: 5%
2.政策の枠組み
マルコス大統領の政権は、フィリピンのネットゼロ経済への道筋を描くために、2023年から2050年までの「フィリピンエネルギープラン(PEP)」を発表した。このプランは以下の3つの主要な取り組みを掲げている。
・手頃なエネルギーへのアクセスの確保
・信頼性が高く弾力的なエネルギー供給の達成
・クリーンで持続可能な気候中心のエネルギー資源の開発
特に、再生可能エネルギーのシェアを2030年までに30%、2040年までに50%、2050年までに50%以上に引き上げることを目指している。加えて、電気自動車、水素、エネルギー貯蔵システム、原子力などの新興技術にも力を入れている。
3.新興技術の役割
PEPはフィリピンのエネルギーセクターの将来において新興技術の重要性を強調している。「参照シナリオ」と「クリーンエネルギーシナリオ」の2つのエネルギーパスウェイシナリオが提案されている。クリーンエネルギーシナリオでは、2040年までに6.9%、2050年までに8.9%の電力を新興技術で生成する可能性がある。これは、風力の拡大と合わせて、石炭、天然ガス、太陽光、水力からの減少を相殺することが期待されている。
4.原子力の取り組み
フィリピンは原子力エネルギー計画を戦略的に進めており、2023年11月には米国との間で原子力協力に関する123協定に署名した。この協定は、フィリピンでの核エネルギー開発を支援するもので、米国企業の投資を促進するものとされている。
タイ
1.エネルギーミックス(2023年)
・石油と天然ガス: 合計80%、石炭: 12%、再生可能エネルギー: 7%、水力発電: 1%
タイのエネルギー使用の増加は、エルニーニョによる干ばつの影響を受けている。タイはラオスからの水力発電に依存しているが、干ばつの影響で発電量が減少し、石油と天然ガスの使用が増加している。
2.自然エネルギー計画(NEP)
タイのNEPはカーボンニュートラルを2065年から2070年までの間に達成することを目指している。具体的な取り組みとして、2024年から2037年までの間に50%の再生可能エネルギーを目指す計画が含まれている。また、氷水素や小型モジュール型原子炉(SMR)の導入も考慮されている。
3.電気自動車(EV)産業の成長
タイは2023年に78,314台のEVを販売しており、2022年の9,729台から大きく増加した。政府はEVの普及を促進するため、商業車両をEVに移行するインセンティブを承認している。
ベトナム
1.エネルギーミックス(2023年)
・石炭: 47%、石油と天然ガス: 29%、水力発電: 16%、再生可能エネルギー: 7%
ベトナムは2050年までに石炭依存を削減することを目指しているが、干ばつの影響で水力発電が減少しており、石炭の使用が増加している。
2.エネルギー移行計画(PDP8)
2023年に承認されたPDP8は、カーボンニュートラルを2050年までに達成することを目指している。この計画は、石炭火力発電からの移行を含む持続可能なエネルギーの選択肢を提供する。
3.新興技術の開発
・ベトナムは、バッテリー貯蔵、バイオマス、廃棄物発電、グリーン水素およびアンモニアなど、新しい技術の導入を計画している。これらの技術は、再生可能エネルギーへの移行において重要な役割を果たすとされている。
提言
1.成熟した再生可能エネルギーと新興技術のバランスを取る
アメリカはASEAN諸国と協力し、成熟した再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、水力)と新興技術(水素、SMRなど)とのバランスを取る必要がある。
2.政策の一貫性とシナジーを維持する
新しい政権が誕生する中で、アメリカはエネルギー技術への支援において政策の一貫性を保ち、ASEAN諸国との信頼関係を築くことが重要である。
3.新興エネルギー技術に関する基準を調整するメカニズムを設立する
アメリカとASEANのパートナーは、エネルギー技術の開発と配備に関する基準を調整する共同メカニズムを確立し、技術の透明性と安全性を高める必要がある。
4.技能共有の取り組みを進める
アメリカは、ASEAN諸国が新興エネルギー技術を独立して追求できるように、教育、技能共有、知識移転の機会を提供するべきである。
【要点】
インドネシアのエネルギー政策と関連する要素についての説明を箇条書きでまとめた。
・エネルギーミックスの現状: 2023年時点で、インドネシアのエネルギー消費は石炭43%、石油31%、天然ガス16%、再生可能エネルギー8%、水力発電2%。
・JETPの目標: 2030年までに電力部門のCO2排出量を2億9千万トンに抑え、2050年までにネットゼロ排出を達成。2030年までに電力の34%を再生可能エネルギーで供給することを目標とする。
・JETPの課題: 再生可能エネルギーの拡大には莫大な投資が必要。IPGの200億ドルの資金では不十分であり、さらなる資金調達が必要。
・自家発電プラントの問題: 工業用消費者向けの自家発電プラントがJETPの排出量目標に含まれておらず、2030年までにCO2排出量の61%〜74%を占める可能性がある。
・小型モジュール原子炉(SMR)の導入: アメリカのNuScale Powerやデンマーク企業、ロシアとの協力で、インドネシアはSMR技術を導入。ただし、地震リスクが高い地域には適用しにくく、2050年までに全エネルギーの5%を占めると予想。
・CCUS技術の展開: インドネシアは2023年にCCUSに関する新たな規制を発行し、炭素貯留活動を推進。BPやExxonMobil、ChevronがCCUSプロジェクトに投資を検討中。
・結論: インドネシアは再生可能エネルギーの導入と脱炭素化に向けて努力しているが、石炭依存が依然として高く、国際的な協力と大規模な投資が成功の鍵となる。
次にフィリピン、タイ、ベトナムのエネルギー政策と関連する要素についての説明を箇条書きでまとめた。
フィリピン
1.エネルギーミックス(2023年)
・石油:42%、石炭:40%、天然ガス:5%、再生可能エネルギー(風力・太陽光):8%、水力:5%
2.フィリピンエネルギー計画(PEP)
・期間:2023年から2050年
・主要目標
⇨ 手頃な価格のエネルギーへのアクセス確保
⇨ 信頼性と耐性のあるエネルギー供給の実現
⇨ クリーンで持続可能なエネルギー資源の開発
・再生可能エネルギーの割合を2030年までに30%、2040年までに50%、2050年までに50%以上に増加させる計画。
3.新技術と代替燃料
・電気自動車、水素、エネルギー貯蔵システム、原子力に焦点を当てている。
・エネルギー技術に関する研究開発(R&D)を推進。
4.原子力プログラム
・2016年に原子力プログラム実施機関が設立。
・2020年に原子力プログラム連絡会議が設立。
・2022年に大統領令164が制定され、原子力エネルギーに関する規制枠組みが構築された。
・2023年11月に米国との原子力協力に関する123協定が署名された。
タイ
1.エネルギーミックス(2023年)
・石油と天然ガス:80%、石炭:12%、再生可能エネルギー:7%、水力:1%、
2.エネルギー政策(自然エネルギー計画NEP)
・目標:2065年から2070年までのカーボンニュートラリティの達成。
・5つの主要イニシアチブを実施中。
3.新技術の導入
・水素と小型モジュール炉(SMR)の研究。
・三菱重工業とタイの電力生成公社が水素共同燃焼技術の研究契約を締結。
・SMRに関して具体的なタイムラインは未定。
4.電気自動車(EV)の発展
・2023年には78,314台のEVが販売され、前年から大幅に増加。
・企業が商業車両をEVに移行するためのインセンティブが承認された。
ベトナム
1.エネルギーミックス(2023年)
・石炭:47%、石油と天然ガス:29%、水力:16%、再生可能エネルギー:7%
2.エネルギー政策(電力開発計画8、PDP8)
・2024年までにカーボンニュートラリティを達成する目標。
・海上風力発電の開発が進まない状況。
・エネルギー転換プランに従って、再生可能エネルギーとバイオマスの利用を拡大予定。
3.国際的な協力と資金調達
・JETP(Just Energy Transition Partnership)を通じて155億ドルの資金を調達する計画。
・新技術(バッテリー貯蔵、グリーン水素など)の導入を目指す。
4.LNG(液化天然ガス)
・LNGを過渡的な燃料として位置づけ、13の新しいLNG発電所を2024年までに建設する予定。
5.原子力の再検討
・2016年に中止された原子力計画を2024年に再開する方針。
提言
1.米国との協力
・ASEAN諸国との成熟した再生可能エネルギーと新興技術のバランスを取る必要がある。
・米国主導のイニシアチブとの政策の一貫性を保つことが重要。
・新興エネルギー技術の開発に関する基準を共同で設定し、スキル共有イニシアチブを進める必要がある。
【引用・参照・底本】
Energy Technologies and Decarbonization in Southeast Asia CSIS 2024.09.30
https://www.csis.org/analysis/energy-technologies-and-decarbonization-southeast-asia
ロシア軍:ブフレダーの中心部に到達 ― 2024年10月02日 12:52
【概要】
ロシア軍がウクライナ東部のドンバス地域にある戦略的高地に位置する町ブフレダーの中心部に到達したと、ウクライナの地方当局者が報告した。ブフレダーはロシアの攻撃を2年半にわたって耐え抜いてきた拠点である。
9月の衛星画像では、ロシアの攻撃が続く中、ブフレダーの様子が捉えられている。ソーシャルメディアに投稿された映像には、ロシア兵が爆撃を受けた多階建ての建物の上で旗を振っている様子や、金属の尖塔に別の旗を掲げる姿が映し出されており、これらの映像はブフレダーの街のパターンと一致していることが確認された。
他の画像では、かつて小さな鉱山町であったブフレダーの廃墟から煙が立ち上る様子が見られる。ウクライナの部隊はこれまでロシアの装甲部隊の攻撃を防いできたが、現在の状況は非常に厳しいとドネツク州知事のヴァディム・フィラシュキンが述べている。彼は「敵はすでに市の中心部にほぼ到達している」と伝えた。
ウクライナのゼレンスキー大統領や軍のコメントは2日、ブフレダーの状況についてはなく、ロシア軍が町全体を掌握しているかどうかは不明である。
【詳細】
ロシア軍がウクライナ東部のドンバス地域に位置する町ブフレダーの中心部に到達したとの報告は、戦闘の激化を示す重要な出来事である。この町は、戦略的な高地に位置しているため、軍事的にも非常に重要である。以下は、今回の状況に関する詳細な説明である。
ブフレダーの戦略的重要性
1.地理的な位置
ブフレダーはドンバス地域の中心にあり、ロシアの攻撃に対する防衛ラインの一部を形成している。地形的には高地に位置しており、周囲の地域を見渡すことができるため、軍事的な優位性を持っている。この高地を占拠することで、ロシア軍は周囲の他の地域への攻撃や防衛に有利な立場を築くことができる。
2.過去の抵抗
ブフレダーは、ロシアのフルスケール侵攻が始まって以来、ウクライナ軍にとっての重要な防衛拠点であった。この町は、ロシアの装甲部隊や空爆に対して2年半もの間、抵抗を続けてきた。ウクライナ軍は、ここでの防衛戦を通じて、ロシアの進行を食い止めるための重要な戦力を保持してきた。
現在の状況
1.ロシア軍の進行
地元のウクライナ当局者であるヴァディム・フィラシュキン知事は、ロシア軍が「敵はすでに市の中心部にほぼ到達している」と述べ、状況が非常に厳しいことを強調した。これは、ロシア軍が戦術的に優位に立ち、ウクライナ軍の防衛線を突破しつつあることを示している。
2.映像と証拠
ソーシャルメディアに投稿された映像には、ロシア兵が爆撃を受けた多階建ての建物の屋上で旗を振っている様子や、金属製の尖塔に別の旗を掲げる場面が映っており、これらの映像はブフレダーの街のパターンと一致していると確認されている。これにより、ロシア軍が実際にその地域に到達していることが裏付けられている。
3.町の現状
ブフレダーはかつて小さな鉱山町であったが、現在は戦闘によって廃墟となっており、ウクライナの防衛戦の焦点となっている。煙が立ち上る様子が画像で確認されており、戦闘による被害が深刻であることが示されている。
今後の展望
ウクライナのゼレンスキー大統領や軍からは、ブフレダーの状況に関する公式なコメントは発表されていない。このため、ロシア軍が町全体を完全に掌握しているかどうかは不明であるが、ロシアの進行が続く中、ウクライナ軍がどのような対策を講じるかが注目される。ブフレダーが制圧されることで、ドンバス地域の戦局に大きな影響を与える可能性がある。
【要点】
1.地理的位置
・ブフレダーはドンバス地域の中心に位置し、戦略的高地を占めている。
・周囲の地域を見渡すことができ、軍事的優位性を持つ。
2.過去の抵抗
・ロシアのフルスケール侵攻以来、ウクライナ軍の重要な防衛拠点であった。
・2年半にわたってロシアの攻撃に対し抵抗を続けてきた。
3.ロシア軍の進行
・ウクライナの地方当局者ヴァディム・フィラシュキンが、ロシア軍が「市の中心部にほぼ到達している」と報告。
・現在の状況は非常に厳しい。
4.映像と証拠
・ソーシャルメディアに投稿された映像で、ロシア兵が爆撃を受けた建物の屋上で旗を振っている様子が確認されている。
・映像はブフレダーの街のパターンと一致。
5.町の現状
・かつての小さな鉱山町が戦闘により廃墟化している。
・煙が立ち上る様子が確認され、戦闘による被害が深刻。
6.今後の展望:
・ゼレンスキー大統領やウクライナ軍からの公式コメントはなく、ロシア軍が町全体を掌握しているかは不明。
・ブフレダーの制圧がドンバス地域の戦局に大きな影響を与える可能性がある。
【引用・参照・底本】
Energy Technologies and Decarbonization in Southeast Asia SCMP 2024.10.02
https://www.scmp.com/news/world/russia-central-asia/article/3280734/russian-troops-reach-centre-ukraine-bastion-vuhledar?module=top_story&pgtype=homepage
ロシア軍がウクライナ東部のドンバス地域にある戦略的高地に位置する町ブフレダーの中心部に到達したと、ウクライナの地方当局者が報告した。ブフレダーはロシアの攻撃を2年半にわたって耐え抜いてきた拠点である。
9月の衛星画像では、ロシアの攻撃が続く中、ブフレダーの様子が捉えられている。ソーシャルメディアに投稿された映像には、ロシア兵が爆撃を受けた多階建ての建物の上で旗を振っている様子や、金属の尖塔に別の旗を掲げる姿が映し出されており、これらの映像はブフレダーの街のパターンと一致していることが確認された。
他の画像では、かつて小さな鉱山町であったブフレダーの廃墟から煙が立ち上る様子が見られる。ウクライナの部隊はこれまでロシアの装甲部隊の攻撃を防いできたが、現在の状況は非常に厳しいとドネツク州知事のヴァディム・フィラシュキンが述べている。彼は「敵はすでに市の中心部にほぼ到達している」と伝えた。
ウクライナのゼレンスキー大統領や軍のコメントは2日、ブフレダーの状況についてはなく、ロシア軍が町全体を掌握しているかどうかは不明である。
【詳細】
ロシア軍がウクライナ東部のドンバス地域に位置する町ブフレダーの中心部に到達したとの報告は、戦闘の激化を示す重要な出来事である。この町は、戦略的な高地に位置しているため、軍事的にも非常に重要である。以下は、今回の状況に関する詳細な説明である。
ブフレダーの戦略的重要性
1.地理的な位置
ブフレダーはドンバス地域の中心にあり、ロシアの攻撃に対する防衛ラインの一部を形成している。地形的には高地に位置しており、周囲の地域を見渡すことができるため、軍事的な優位性を持っている。この高地を占拠することで、ロシア軍は周囲の他の地域への攻撃や防衛に有利な立場を築くことができる。
2.過去の抵抗
ブフレダーは、ロシアのフルスケール侵攻が始まって以来、ウクライナ軍にとっての重要な防衛拠点であった。この町は、ロシアの装甲部隊や空爆に対して2年半もの間、抵抗を続けてきた。ウクライナ軍は、ここでの防衛戦を通じて、ロシアの進行を食い止めるための重要な戦力を保持してきた。
現在の状況
1.ロシア軍の進行
地元のウクライナ当局者であるヴァディム・フィラシュキン知事は、ロシア軍が「敵はすでに市の中心部にほぼ到達している」と述べ、状況が非常に厳しいことを強調した。これは、ロシア軍が戦術的に優位に立ち、ウクライナ軍の防衛線を突破しつつあることを示している。
2.映像と証拠
ソーシャルメディアに投稿された映像には、ロシア兵が爆撃を受けた多階建ての建物の屋上で旗を振っている様子や、金属製の尖塔に別の旗を掲げる場面が映っており、これらの映像はブフレダーの街のパターンと一致していると確認されている。これにより、ロシア軍が実際にその地域に到達していることが裏付けられている。
3.町の現状
ブフレダーはかつて小さな鉱山町であったが、現在は戦闘によって廃墟となっており、ウクライナの防衛戦の焦点となっている。煙が立ち上る様子が画像で確認されており、戦闘による被害が深刻であることが示されている。
今後の展望
ウクライナのゼレンスキー大統領や軍からは、ブフレダーの状況に関する公式なコメントは発表されていない。このため、ロシア軍が町全体を完全に掌握しているかどうかは不明であるが、ロシアの進行が続く中、ウクライナ軍がどのような対策を講じるかが注目される。ブフレダーが制圧されることで、ドンバス地域の戦局に大きな影響を与える可能性がある。
【要点】
1.地理的位置
・ブフレダーはドンバス地域の中心に位置し、戦略的高地を占めている。
・周囲の地域を見渡すことができ、軍事的優位性を持つ。
2.過去の抵抗
・ロシアのフルスケール侵攻以来、ウクライナ軍の重要な防衛拠点であった。
・2年半にわたってロシアの攻撃に対し抵抗を続けてきた。
3.ロシア軍の進行
・ウクライナの地方当局者ヴァディム・フィラシュキンが、ロシア軍が「市の中心部にほぼ到達している」と報告。
・現在の状況は非常に厳しい。
4.映像と証拠
・ソーシャルメディアに投稿された映像で、ロシア兵が爆撃を受けた建物の屋上で旗を振っている様子が確認されている。
・映像はブフレダーの街のパターンと一致。
5.町の現状
・かつての小さな鉱山町が戦闘により廃墟化している。
・煙が立ち上る様子が確認され、戦闘による被害が深刻。
6.今後の展望:
・ゼレンスキー大統領やウクライナ軍からの公式コメントはなく、ロシア軍が町全体を掌握しているかは不明。
・ブフレダーの制圧がドンバス地域の戦局に大きな影響を与える可能性がある。
【引用・参照・底本】
Energy Technologies and Decarbonization in Southeast Asia SCMP 2024.10.02
https://www.scmp.com/news/world/russia-central-asia/article/3280734/russian-troops-reach-centre-ukraine-bastion-vuhledar?module=top_story&pgtype=homepage
イラン:イスラエルに向けてミサイルを発射 ― 2024年10月02日 15:50
【概要】
イランがイスラエルに向けてミサイルを発射したと、イスラエル国防軍(IDF)が発表した。IDFのスポークスマンであるダニエル・ハガリ氏は、ビデオメッセージで「しばらく前にイランからイスラエル国に向けてミサイルが発射された」と述べ、警報サイレンが鳴った場合はシェルターに入るよう国民に指示した。また、IDFは「市民を保護するために必要なすべてのことを行う」とも表明している。
この情報は、IDFのTelegramチャンネル、X、そしてイスラエルのメディアを通じても伝えられた。
一方、アメリカの匿名の情報筋によると、米国はテヘランからの発射が差し迫っていると警告し、イスラエルに通知したとのことである。米国は、4月に行われた300発のミサイルとドローンを使用した攻撃と同様のものを予期していると報じられている。また、米国大使館は西エルサレムにいる全スタッフとその家族に、ロケットやドローン攻撃の可能性からシェルターに留まるよう指示したが、イランに具体的に言及することはなかった。
報道によれば、この攻撃は、イスラエルの地上部隊が同日早朝に南レバノンに侵攻した後に発生したもので、ネタニヤフ首相はこの作戦がイラン支援のシーア派民兵組織であるヒズボラを標的としていると説明している。
【詳細】
2024年10月1日、イランがイスラエルに向けてミサイルを発射したという情報が、イスラエル国防軍(IDF)から発表された。IDFのスポークスマンであるダニエル・ハガリ氏は、映像メッセージで次のように述べている。「しばらく前にイランからイスラエル国に向けてミサイルが発射された。警報サイレンが鳴った場合は、シェルターに入って、さらなる指示があるまでそこに留まってください。」
IDFはこの情報を、TelegramチャンネルやX(旧Twitter)、さらにイスラエルの主要メディアを通じて広めた。また、IDFは市民を保護するために「必要なすべてのことを行う」と表明しています。この発表は、イスラエル国内の不安を高める内容であり、国民に対して警戒を促している。
米国の警告
このミサイル攻撃の報告の前に、匿名の米国の情報筋から、ワシントンが西エルサレムに対してイランからの攻撃が差し迫っているとの警告がなされたと報じられている。米国は、イランによる攻撃が4月に行われた攻撃と類似しており、その際には約300発のミサイルとドローンが使用されたことを考慮して、イスラエルに警告を行ったとされている。
アメリカ大使館は、西エルサレムに駐在する全職員とその家族に、ロケットやドローンの攻撃の可能性を理由にシェルターに留まるよう指示したが、特にイランについて言及することはなかった。
背景と地政学的文脈
このミサイル発射は、イスラエルの地上部隊が同日に南レバノンに侵攻した直後に発生した。この作戦は、イラン支援のシーア派民兵組織であるヒズボラを標的にしており、ネタニヤフ首相はこれを「ヒズボラの攻撃を抑止するための重要な一歩」と位置づけている。
イスラエルとイランの関係は、近年非常に緊張している。イランは、イスラエルに対して敵対的な姿勢を取り続け、シリアやレバノンでのヒズボラへの支援を強化していることが知られている。これに対して、イスラエルはイランの影響力を抑え込むために軍事行動を強化しており、地域の安定を脅かす要因としてイランを見ている。
このような状況の中、ミサイル攻撃が発生したことで、さらなる衝突のリスクが 高まる可能性があり、国際的な関心が集まっている。各国は、この事態が地域の安全保障に及ぼす影響を注視している状況である。
【要点】
イランのミサイル攻撃とその背景について箇条書きで説明する。
1.ミサイル発射の発表
・イランがイスラエルに向けてミサイルを発射したと、イスラエル国防軍(IDF)が発表。
・IDFのスポークスマン、ダニエル・ハガリ氏が映像メッセージで警告。
2.シェルターへの避難指示:
・警報サイレンが鳴った場合、国民にシェルターに入るよう指示。
・IDFは市民を保護するために必要な措置を講じると表明。
3.米国の警告
・米国の匿名情報筋がイスラエルに対し、イランからの攻撃が差し迫っていると警告。
・4月の攻撃では約300発のミサイルとドローンが使用された。
4.大使館の指示
・アメリカ大使館が西エルサレムの全職員と家族にシェルターに留まるよう指示。
・イランについては具体的な言及なし。
5.背景となる地政学的緊張
・このミサイル発射は、イスラエルの地上部隊が南レバノンに侵攻した直後に発生。
・ネタニヤフ首相がヒズボラを標的にした作戦を「攻撃抑止の重要な一歩」と表現。
6.イスラエルとイランの関係
・イランはイスラエルに対して敵対的な姿勢を持ち、ヒズボラへの支援を強化。
・イスラエルはイランの影響力を抑え込むための軍事行動を強化。
7.地域の安全保障への影響:
・ミサイル攻撃によってさらなる衝突のリスクが高まり、国際的な関心が集まる。
・各国がこの事態の地域安全保障への影響を注視。
【引用・参照・底本】
Iran has launched missiles at Israel – IDF RT 2024.10.01
https://www.rt.com/india/604802-india-brazil-south-africa-security-council/
イランがイスラエルに向けてミサイルを発射したと、イスラエル国防軍(IDF)が発表した。IDFのスポークスマンであるダニエル・ハガリ氏は、ビデオメッセージで「しばらく前にイランからイスラエル国に向けてミサイルが発射された」と述べ、警報サイレンが鳴った場合はシェルターに入るよう国民に指示した。また、IDFは「市民を保護するために必要なすべてのことを行う」とも表明している。
この情報は、IDFのTelegramチャンネル、X、そしてイスラエルのメディアを通じても伝えられた。
一方、アメリカの匿名の情報筋によると、米国はテヘランからの発射が差し迫っていると警告し、イスラエルに通知したとのことである。米国は、4月に行われた300発のミサイルとドローンを使用した攻撃と同様のものを予期していると報じられている。また、米国大使館は西エルサレムにいる全スタッフとその家族に、ロケットやドローン攻撃の可能性からシェルターに留まるよう指示したが、イランに具体的に言及することはなかった。
報道によれば、この攻撃は、イスラエルの地上部隊が同日早朝に南レバノンに侵攻した後に発生したもので、ネタニヤフ首相はこの作戦がイラン支援のシーア派民兵組織であるヒズボラを標的としていると説明している。
【詳細】
2024年10月1日、イランがイスラエルに向けてミサイルを発射したという情報が、イスラエル国防軍(IDF)から発表された。IDFのスポークスマンであるダニエル・ハガリ氏は、映像メッセージで次のように述べている。「しばらく前にイランからイスラエル国に向けてミサイルが発射された。警報サイレンが鳴った場合は、シェルターに入って、さらなる指示があるまでそこに留まってください。」
IDFはこの情報を、TelegramチャンネルやX(旧Twitter)、さらにイスラエルの主要メディアを通じて広めた。また、IDFは市民を保護するために「必要なすべてのことを行う」と表明しています。この発表は、イスラエル国内の不安を高める内容であり、国民に対して警戒を促している。
米国の警告
このミサイル攻撃の報告の前に、匿名の米国の情報筋から、ワシントンが西エルサレムに対してイランからの攻撃が差し迫っているとの警告がなされたと報じられている。米国は、イランによる攻撃が4月に行われた攻撃と類似しており、その際には約300発のミサイルとドローンが使用されたことを考慮して、イスラエルに警告を行ったとされている。
アメリカ大使館は、西エルサレムに駐在する全職員とその家族に、ロケットやドローンの攻撃の可能性を理由にシェルターに留まるよう指示したが、特にイランについて言及することはなかった。
背景と地政学的文脈
このミサイル発射は、イスラエルの地上部隊が同日に南レバノンに侵攻した直後に発生した。この作戦は、イラン支援のシーア派民兵組織であるヒズボラを標的にしており、ネタニヤフ首相はこれを「ヒズボラの攻撃を抑止するための重要な一歩」と位置づけている。
イスラエルとイランの関係は、近年非常に緊張している。イランは、イスラエルに対して敵対的な姿勢を取り続け、シリアやレバノンでのヒズボラへの支援を強化していることが知られている。これに対して、イスラエルはイランの影響力を抑え込むために軍事行動を強化しており、地域の安定を脅かす要因としてイランを見ている。
このような状況の中、ミサイル攻撃が発生したことで、さらなる衝突のリスクが 高まる可能性があり、国際的な関心が集まっている。各国は、この事態が地域の安全保障に及ぼす影響を注視している状況である。
【要点】
イランのミサイル攻撃とその背景について箇条書きで説明する。
1.ミサイル発射の発表
・イランがイスラエルに向けてミサイルを発射したと、イスラエル国防軍(IDF)が発表。
・IDFのスポークスマン、ダニエル・ハガリ氏が映像メッセージで警告。
2.シェルターへの避難指示:
・警報サイレンが鳴った場合、国民にシェルターに入るよう指示。
・IDFは市民を保護するために必要な措置を講じると表明。
3.米国の警告
・米国の匿名情報筋がイスラエルに対し、イランからの攻撃が差し迫っていると警告。
・4月の攻撃では約300発のミサイルとドローンが使用された。
4.大使館の指示
・アメリカ大使館が西エルサレムの全職員と家族にシェルターに留まるよう指示。
・イランについては具体的な言及なし。
5.背景となる地政学的緊張
・このミサイル発射は、イスラエルの地上部隊が南レバノンに侵攻した直後に発生。
・ネタニヤフ首相がヒズボラを標的にした作戦を「攻撃抑止の重要な一歩」と表現。
6.イスラエルとイランの関係
・イランはイスラエルに対して敵対的な姿勢を持ち、ヒズボラへの支援を強化。
・イスラエルはイランの影響力を抑え込むための軍事行動を強化。
7.地域の安全保障への影響:
・ミサイル攻撃によってさらなる衝突のリスクが高まり、国際的な関心が集まる。
・各国がこの事態の地域安全保障への影響を注視。
【引用・参照・底本】
Iran has launched missiles at Israel – IDF RT 2024.10.01
https://www.rt.com/india/604802-india-brazil-south-africa-security-council/
ロシア:米国との長期的な対立に備えている ― 2024年10月02日 15:59
【概要】
ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、米国との長期的な対立に備えていると述べ、2024年の米大統領選挙に向けて両国関係が改善する可能性はないという認識を示した。彼の発言は、米国が世界の支配を維持し、ロシアに戦略的敗北を与えようとしているというウラジーミル・プーチン大統領の先月の発言を反映している。
リャブコフ次官は、米国内で反ロシアの「二大政党の合意」が形成されているとし、「我々はこの国との長期的な対立に備えなければならない。我々はあらゆる意味でそれに備えている」と報道陣に語った。また、「我々の決意を相手が軽視しないよう、警告の信号を送っている」とも述べた。
米露関係は冷戦終結後、浮き沈みを経験してきたが、2014年にキエフでの西側支援によるクーデターと、それに続くクリミアのロシア編入を問う住民投票、さらにはウクライナ東部ドンバスでの紛争により、大きく悪化した。この事態に対し、米国とその同盟国はロシアに対して制裁を強化した。
制裁は2022年2月にウクライナ紛争が激化した後、大幅に増加した。米国はキエフに経済的・軍事的支援を行っており、ロシア政府はワシントンが紛争に直接関与していると非難している。
また、米国はドナルド・トランプ政権下で、中距離核戦力(INF)全廃条約およびオープンスカイ条約から撤退したが、ジョー・バイデン大統領の政権下では、新戦略兵器削減条約(New START)が2026年まで延長された。しかし、ロシアは昨年、ウクライナ紛争における米国の役割を理由に同条約への参加を停止した。
さらに、プーチン大統領は先週、西側からの新たな脅威に対応するためにロシアの核政策に変更を命じ、核兵器使用に関する新たな規則を提案した。
【詳細】
ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、米国との長期的な対立に備えていることを公に表明した。この発言は、2024年11月に予定されている米国大統領選挙に向けて米露関係の改善を期待する見方を否定するものである。彼の発言は、ウラジーミル・プーチン大統領が最近述べた、米国が世界における影響力を維持するためにあらゆる手段を講じ、ロシアに戦略的な敗北を強いることを目指しているという見解と一致している。
リャブコフ次官は、米国では「反ロシアの二大政党合意」が成立しており、この現状を背景にロシアが長期的な対立を余儀なくされていると強調した。「我々はあらゆる意味でこの対立に備えている」と述べ、ロシア政府は米国との関係が短期的に好転する見込みがないという認識を示した。また、米国側に対してロシアの決意を軽視しないよう、警告を発していることを明言した。この警告は、ロシアが今後も強硬な姿勢を崩さない意志を示すためのものであり、外交的にも軍事的にも対応する準備があることを示唆している。
米露関係の悪化の背景
米露関係は冷戦終結後、さまざまな変遷を経てきたが、特に2014年のウクライナ危機を契機に劇的に悪化した。2014年にウクライナの首都キエフで起こったクーデター(ロシアはこれを西側諸国によって支援されたものと見なしている)は、ロシアがクリミア半島を編入する住民投票を実施する引き金となり、その後、ウクライナ東部ドンバス地方での紛争が勃発した。この一連の出来事に対して米国と欧州諸国はロシアに対して厳しい経済制裁を導入し、二国間関係は大幅に悪化した。
制裁の拡大とロシアの対応
ウクライナ紛争が2022年2月に本格的に拡大すると、米国とその同盟国はさらに厳しい制裁をロシアに対して課した。これにはロシアの主要産業や金融機関に対する制限が含まれ、国際的な市場からロシアを事実上排除する措置が取られた。また、米国はウクライナ政府に対して大規模な経済支援と軍事援助を提供し、これに対してロシアは米国が紛争に直接関与していると非難した。ロシア政府は、米国がウクライナの戦争遂行を支援することで、自国への圧力を強化していると見なしている。
軍縮条約の崩壊
軍縮に関する米露の合意も次第に崩壊している。トランプ政権時代には、中距離核戦力(INF)全廃条約およびオープンスカイ条約から米国が脱退し、これにより軍事的緊張がさらに高まった。ただし、ジョー・バイデン政権は、戦略兵器削減条約(New START)を2026年まで延長した。しかし、ロシアは2023年、米国がウクライナ紛争で果たす役割を理由に、この条約からの事実上の離脱を決定し、戦略的兵器に関する両国間の管理はさらに不透明な状況に陥っている。
核政策の変更
加えて、プーチン大統領は最近、ロシアの核政策に大幅な変更を加えるよう命じた。これは、ロシアが西側諸国からの新たな脅威に対応するためのものであり、核兵器の使用に関する新しいルールを提案する形で行われた。この動きは、米国やその同盟国との対立がさらにエスカレートする可能性を示唆しており、特に核戦略に関する新たな指針は、ロシアの安全保障政策が今後も強硬姿勢を維持することを示している。
【要点】
・ロシアの長期的対立準備:リャブコフ外務次官は、米国との長期的な対立に備えており、2024年の米大統領選挙前後に関係改善の見込みはないと発言。
・プーチン大統領の見解と一致:プーチン大統領も米国が世界支配を維持し、ロシアに戦略的敗北を与えようとしていると述べており、リャブコフ次官の発言と一致。
・反ロシアの「二大政党合意」:米国では共和党・民主党の両方で反ロシアのコンセンサスが形成されているため、ロシアは長期対立に備える必要があるとリャブコフ次官は強調。
・ロシアの警告信号:ロシアは、米国に対してロシアの決意を軽視しないよう警告を発している。
・2014年以降の米露関係悪化:ウクライナ危機(クリミア編入やドンバス紛争)をきっかけに、米露関係は大きく悪化。米国はロシアに制裁を強化。
・2022年以降の制裁強化:ウクライナ紛争が2022年に激化した後、米国とその同盟国はロシアにさらに厳しい制裁を実施。ロシアは米国が紛争に直接関与していると非難。
・軍縮条約の崩壊:米国はトランプ政権下でINF全廃条約やオープンスカイ条約から撤退。バイデン政権はNew START条約を延長したが、ロシアは2023年に参加を停止。
・核政策の変更:プーチン大統領は西側の新たな脅威に対応するため、ロシアの核政策に変更を命じ、核兵器使用に関する新しいルールを提案。
【引用・参照・底本】
Russia ready for long standoff with US – diplomat RT 2024.10.01
https://www.rt.com/russia/605039-moscow-ready-for-confrontation-washington/
ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、米国との長期的な対立に備えていると述べ、2024年の米大統領選挙に向けて両国関係が改善する可能性はないという認識を示した。彼の発言は、米国が世界の支配を維持し、ロシアに戦略的敗北を与えようとしているというウラジーミル・プーチン大統領の先月の発言を反映している。
リャブコフ次官は、米国内で反ロシアの「二大政党の合意」が形成されているとし、「我々はこの国との長期的な対立に備えなければならない。我々はあらゆる意味でそれに備えている」と報道陣に語った。また、「我々の決意を相手が軽視しないよう、警告の信号を送っている」とも述べた。
米露関係は冷戦終結後、浮き沈みを経験してきたが、2014年にキエフでの西側支援によるクーデターと、それに続くクリミアのロシア編入を問う住民投票、さらにはウクライナ東部ドンバスでの紛争により、大きく悪化した。この事態に対し、米国とその同盟国はロシアに対して制裁を強化した。
制裁は2022年2月にウクライナ紛争が激化した後、大幅に増加した。米国はキエフに経済的・軍事的支援を行っており、ロシア政府はワシントンが紛争に直接関与していると非難している。
また、米国はドナルド・トランプ政権下で、中距離核戦力(INF)全廃条約およびオープンスカイ条約から撤退したが、ジョー・バイデン大統領の政権下では、新戦略兵器削減条約(New START)が2026年まで延長された。しかし、ロシアは昨年、ウクライナ紛争における米国の役割を理由に同条約への参加を停止した。
さらに、プーチン大統領は先週、西側からの新たな脅威に対応するためにロシアの核政策に変更を命じ、核兵器使用に関する新たな規則を提案した。
【詳細】
ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、米国との長期的な対立に備えていることを公に表明した。この発言は、2024年11月に予定されている米国大統領選挙に向けて米露関係の改善を期待する見方を否定するものである。彼の発言は、ウラジーミル・プーチン大統領が最近述べた、米国が世界における影響力を維持するためにあらゆる手段を講じ、ロシアに戦略的な敗北を強いることを目指しているという見解と一致している。
リャブコフ次官は、米国では「反ロシアの二大政党合意」が成立しており、この現状を背景にロシアが長期的な対立を余儀なくされていると強調した。「我々はあらゆる意味でこの対立に備えている」と述べ、ロシア政府は米国との関係が短期的に好転する見込みがないという認識を示した。また、米国側に対してロシアの決意を軽視しないよう、警告を発していることを明言した。この警告は、ロシアが今後も強硬な姿勢を崩さない意志を示すためのものであり、外交的にも軍事的にも対応する準備があることを示唆している。
米露関係の悪化の背景
米露関係は冷戦終結後、さまざまな変遷を経てきたが、特に2014年のウクライナ危機を契機に劇的に悪化した。2014年にウクライナの首都キエフで起こったクーデター(ロシアはこれを西側諸国によって支援されたものと見なしている)は、ロシアがクリミア半島を編入する住民投票を実施する引き金となり、その後、ウクライナ東部ドンバス地方での紛争が勃発した。この一連の出来事に対して米国と欧州諸国はロシアに対して厳しい経済制裁を導入し、二国間関係は大幅に悪化した。
制裁の拡大とロシアの対応
ウクライナ紛争が2022年2月に本格的に拡大すると、米国とその同盟国はさらに厳しい制裁をロシアに対して課した。これにはロシアの主要産業や金融機関に対する制限が含まれ、国際的な市場からロシアを事実上排除する措置が取られた。また、米国はウクライナ政府に対して大規模な経済支援と軍事援助を提供し、これに対してロシアは米国が紛争に直接関与していると非難した。ロシア政府は、米国がウクライナの戦争遂行を支援することで、自国への圧力を強化していると見なしている。
軍縮条約の崩壊
軍縮に関する米露の合意も次第に崩壊している。トランプ政権時代には、中距離核戦力(INF)全廃条約およびオープンスカイ条約から米国が脱退し、これにより軍事的緊張がさらに高まった。ただし、ジョー・バイデン政権は、戦略兵器削減条約(New START)を2026年まで延長した。しかし、ロシアは2023年、米国がウクライナ紛争で果たす役割を理由に、この条約からの事実上の離脱を決定し、戦略的兵器に関する両国間の管理はさらに不透明な状況に陥っている。
核政策の変更
加えて、プーチン大統領は最近、ロシアの核政策に大幅な変更を加えるよう命じた。これは、ロシアが西側諸国からの新たな脅威に対応するためのものであり、核兵器の使用に関する新しいルールを提案する形で行われた。この動きは、米国やその同盟国との対立がさらにエスカレートする可能性を示唆しており、特に核戦略に関する新たな指針は、ロシアの安全保障政策が今後も強硬姿勢を維持することを示している。
【要点】
・ロシアの長期的対立準備:リャブコフ外務次官は、米国との長期的な対立に備えており、2024年の米大統領選挙前後に関係改善の見込みはないと発言。
・プーチン大統領の見解と一致:プーチン大統領も米国が世界支配を維持し、ロシアに戦略的敗北を与えようとしていると述べており、リャブコフ次官の発言と一致。
・反ロシアの「二大政党合意」:米国では共和党・民主党の両方で反ロシアのコンセンサスが形成されているため、ロシアは長期対立に備える必要があるとリャブコフ次官は強調。
・ロシアの警告信号:ロシアは、米国に対してロシアの決意を軽視しないよう警告を発している。
・2014年以降の米露関係悪化:ウクライナ危機(クリミア編入やドンバス紛争)をきっかけに、米露関係は大きく悪化。米国はロシアに制裁を強化。
・2022年以降の制裁強化:ウクライナ紛争が2022年に激化した後、米国とその同盟国はロシアにさらに厳しい制裁を実施。ロシアは米国が紛争に直接関与していると非難。
・軍縮条約の崩壊:米国はトランプ政権下でINF全廃条約やオープンスカイ条約から撤退。バイデン政権はNew START条約を延長したが、ロシアは2023年に参加を停止。
・核政策の変更:プーチン大統領は西側の新たな脅威に対応するため、ロシアの核政策に変更を命じ、核兵器使用に関する新しいルールを提案。
【引用・参照・底本】
Russia ready for long standoff with US – diplomat RT 2024.10.01
https://www.rt.com/russia/605039-moscow-ready-for-confrontation-washington/
NATOの新しい事務総長であるマーク・ルッテ ― 2024年10月02日 17:07
【桃源寸評】
また愚かな一つの泡が生まれたか。
【寸評 完】
【概要】
NATOの新しい事務総長であるマーク・ルッテは、西側から供与された武器を使用してウクライナがロシア領内深くに攻撃を行うことを支持していると述べた。彼の発言は、前任者であるイェンス・ストルテンベルグからの引き継ぎ式典後の記者会見で行われ、ウクライナがその領土防衛のために何をすべきかを決める権利があると主張した。
ルッテは、国際法に基づき、ウクライナの自衛権が国境で終わるものではなく、攻撃国の正当な標的を攻撃する権利があると説明した。しかし、最終的にウクライナに対する支援や兵器システムの使用規則は、NATO全体ではなく、個々の加盟国が決定するものであるとし、責任は各国に委ねられていると述べた。
この発言は、西側諸国で進行中の議論、すなわちウクライナが供与された兵器を使用して国際的に認められたロシア領内を攻撃することが許されるかどうかに関連しているが、現時点ではこの問題についての合意は達成されていない。
一方、ロシアからはこの発言に対して否定的な反応があった。ロシアの右派民族主義政党である自由民主党(LDPR)の党首レオニード・スルツキーは、この発言がNATOの指導者が交代しても、その攻撃的な姿勢に変化がないことを示していると批判した。彼はまた、ルッテが「現実主義者で妥協を図る能力がある」とされているものの、彼の個人的な資質にはほとんど依存しないと述べ、NATOの「ゴールデン・ビリオン」諸国による支配を強調する方針が続くことに疑いはないと指摘した。
また、ロシア政府は現在、核ドクトリンの改定を進めており、これにより、非核国家による大規模な通常攻撃が核保有国の支援を受けた場合に、核抑止力を行使できるようにする規則が導入される予定である。
【詳細】
NATOの新事務総長であるマーク・ルッテが、ウクライナが西側から供与された兵器を用いてロシア領内深くに攻撃を行うことを支持する発言をした背景には、ウクライナ紛争におけるNATOの姿勢や国際法に基づいた議論が関わっている。
ルッテの主張の内容 ルッテは、ウクライナがロシアとの戦争において自衛権を行使する際、その権利は国境を越えても有効であると述べた。彼の発言は、国際法に基づく自衛権の解釈を根拠にしており、侵略者(この場合はロシア)の領土内にある「正当な標的」に対する攻撃が許されるとしている。この考え方は、国際法における自衛権の延長に関する解釈に依拠しており、戦争中に相手国の領土を攻撃することが合法である場合があるとされている。
NATO内での責任分担の問題 ただし、ルッテはNATO全体がこの方針を支持するかどうかについては慎重な姿勢を示した。彼は、最終的には各加盟国がウクライナにどのような支援を提供するか、その兵器をどのように使用するかについて決定する権限を持つと述べている。つまり、NATOの決定というよりも、個々の加盟国(アメリカ、イギリス、ドイツなど)がウクライナに提供する兵器の使用に関する規則を設定し、それに基づいてウクライナが行動するということである。
西側諸国での議論 ルッテの発言は、西側諸国で進行中のウクライナに対する軍事支援の是非に関する議論の一部である。具体的には、ウクライナが西側から供与された兵器を用いてロシア領内を攻撃することが正当かどうかについての議論が続いている。これまでのところ、西側諸国はウクライナがロシア領内を攻撃することに対して慎重な姿勢を示してきたが、今回の発言はそのスタンスに変化がある可能性を示唆している。
ロシアの反応 ロシアからは、この発言に対して即座に否定的な反応があった。ロシアの自由民主党(LDPR)の党首であるレオニード・スルツキーは、NATOの指導者が交代しても、NATOの「攻撃的な姿勢」に変化は見られないと批判した。彼は、ルッテの発言がNATOが引き続き「ゴールデン・ビリオン」(主に西側の富裕国)による世界支配を目指していることを示すものだとし、NATOの政策がますます対立を深めるものだと指摘した。
ロシアの核ドクトリンの改定 さらに、ロシア政府は現在、核ドクトリンの改定を進めており、これによりロシアが核兵器を使用する条件が緩和される可能性がある。新しい規則では、ロシアが非核国家から大規模な通常攻撃を受け、その攻撃が核保有国の支援を受けた場合、ロシアは核抑止力を使用できるという条項が追加される見込みである。これは、ロシアがNATOや他の西側諸国からの支援を受けたウクライナによる攻撃に対して、より強硬な対応を取る可能性があることを示唆している。
このように、ルッテの発言は、NATOのウクライナ支援方針やロシアの反応、そして国際法に基づく自衛権の解釈に関わる重要な議論を反映しており、今後の国際情勢に影響を与える可能性が高いと言える。
【要点】
1.ルッテの主張
・ウクライナが西側から供与された武器を使用してロシア領内を攻撃する権利を支持。
・自衛権は国境で終わらず、攻撃国(ロシア)の「正当な標的」への攻撃が国際法で認められると説明。
2.NATO内での責任分担
・NATO全体ではなく、各加盟国がウクライナへの支援や供与兵器の使用規則を決定。
・具体的な武器使用に関する規定は、個々の加盟国の判断に委ねられる。
3.西側諸国での議論
・ウクライナが供与された兵器を使ってロシア領内を攻撃することの是非について議論が続いている。
・まだこの問題についての西側諸国間での合意はない。
4.ロシアの反応
・ロシアのLDPR党首レオニード・スルツキーは、NATOの新事務総長の発言を「攻撃的」と批判。
・NATOの「ゴールデン・ビリオン」諸国が引き続き世界支配を目指していると非難。
5.ロシアの核ドクトリン改定
・ロシアは、非核国家による大規模な通常攻撃が核保有国の支援を受けた場合、核抑止力を使用できる規定を導入予定。
・これはウクライナや西側諸国による攻撃に対するロシアの対応が強硬化する可能性を示唆。
【参考】
☞ 国際法に基づく自衛権の範囲は、主に以下の原則によって規定されている。
1.固有の自衛権
・国連憲章第51条によって認められ、国家が武力攻撃を受けた場合、その国家は自国を防衛するために自衛権を行使できる。
・自衛権の行使は、国際連合安全保障理事会が必要な措置を取るまでの暫定的な権利とされる。
2.先制的自衛権
・明確な差し迫った武力攻撃の脅威がある場合、攻撃を受ける前に自衛のために武力を行使することができる。
・ただし、先制攻撃は厳格な条件下でしか認められず、国際的に広く受け入れられているわけではない。
3.自衛権の範囲の拡張
・自衛権は自国の領土内に限らず、他国の領土であっても「正当な標的」に対する攻撃が認められる場合がある。
・攻撃国の領土に対しても、防衛目的であれば合法とされることがある(例:武力攻撃の発信源を破壊するための行動)。
4.必要性と均衡性の原則
・自衛権の行使は、必要性(国家の防衛に必要不可欠であること)と均衡性(自衛のために取られる措置が脅威と釣り合っていること)の原則に従う必要がある。
・過度な力の使用や不適切な攻撃は国際法違反となる。
5.集団的自衛権
・ある国が攻撃を受けた場合、同盟国や他の国家がその国を支援して共同で防衛する権利を持つ。
・NATOなどの防衛同盟では、加盟国に対する攻撃は全体への攻撃とみなし、集団的自衛権を行使できる。
☞ 「ゴールデン・ビリオン(Golden Billion)」は、近年特にロシアや一部の批評家が使用する言葉で、一般的な学術用語や国際関係の専門用語ではない。これは、西側の先進国、特に欧米諸国が世界の富や資源の大部分を占有し、その利益を享受している約10億人(主に欧米や日本、韓国などの発展した国々の人口)を指す。この概念は、西側諸国が国際的な影響力や経済的な優位性を保とうとする一方で、他の国々がその影響下に置かれているという批判的な視点を反映している。
「ゴールデン・ビリオン」は、主に以下のような文脈で使われる。
・西側諸国の経済的・政治的支配
発展途上国や非西側諸国に対する、富裕な先進国の経済的および政治的な優位性を批判するために用いられる。
・世界の不平等の象徴
世界の人口の約10億人が豊かさを享受し、それ以外の人々がその影響を受け、限られた資源を巡って不平等な状況にあるという考えを表現する。
特にロシアのメディアや一部の評論家が、西側諸国の政策や影響力を批判する際に、この用語を使用してきたが、国際社会全体で広く認知されているわけではなく、批判的または陰謀論的なニュアンスを帯びることがある。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
New NATO chief backs using Western weapons to strike deep into Russia RT 2024.10.01
https://www.rt.com/russia/605049-nato-rutte-ukraine-weapons/
また愚かな一つの泡が生まれたか。
【寸評 完】
【概要】
NATOの新しい事務総長であるマーク・ルッテは、西側から供与された武器を使用してウクライナがロシア領内深くに攻撃を行うことを支持していると述べた。彼の発言は、前任者であるイェンス・ストルテンベルグからの引き継ぎ式典後の記者会見で行われ、ウクライナがその領土防衛のために何をすべきかを決める権利があると主張した。
ルッテは、国際法に基づき、ウクライナの自衛権が国境で終わるものではなく、攻撃国の正当な標的を攻撃する権利があると説明した。しかし、最終的にウクライナに対する支援や兵器システムの使用規則は、NATO全体ではなく、個々の加盟国が決定するものであるとし、責任は各国に委ねられていると述べた。
この発言は、西側諸国で進行中の議論、すなわちウクライナが供与された兵器を使用して国際的に認められたロシア領内を攻撃することが許されるかどうかに関連しているが、現時点ではこの問題についての合意は達成されていない。
一方、ロシアからはこの発言に対して否定的な反応があった。ロシアの右派民族主義政党である自由民主党(LDPR)の党首レオニード・スルツキーは、この発言がNATOの指導者が交代しても、その攻撃的な姿勢に変化がないことを示していると批判した。彼はまた、ルッテが「現実主義者で妥協を図る能力がある」とされているものの、彼の個人的な資質にはほとんど依存しないと述べ、NATOの「ゴールデン・ビリオン」諸国による支配を強調する方針が続くことに疑いはないと指摘した。
また、ロシア政府は現在、核ドクトリンの改定を進めており、これにより、非核国家による大規模な通常攻撃が核保有国の支援を受けた場合に、核抑止力を行使できるようにする規則が導入される予定である。
【詳細】
NATOの新事務総長であるマーク・ルッテが、ウクライナが西側から供与された兵器を用いてロシア領内深くに攻撃を行うことを支持する発言をした背景には、ウクライナ紛争におけるNATOの姿勢や国際法に基づいた議論が関わっている。
ルッテの主張の内容 ルッテは、ウクライナがロシアとの戦争において自衛権を行使する際、その権利は国境を越えても有効であると述べた。彼の発言は、国際法に基づく自衛権の解釈を根拠にしており、侵略者(この場合はロシア)の領土内にある「正当な標的」に対する攻撃が許されるとしている。この考え方は、国際法における自衛権の延長に関する解釈に依拠しており、戦争中に相手国の領土を攻撃することが合法である場合があるとされている。
NATO内での責任分担の問題 ただし、ルッテはNATO全体がこの方針を支持するかどうかについては慎重な姿勢を示した。彼は、最終的には各加盟国がウクライナにどのような支援を提供するか、その兵器をどのように使用するかについて決定する権限を持つと述べている。つまり、NATOの決定というよりも、個々の加盟国(アメリカ、イギリス、ドイツなど)がウクライナに提供する兵器の使用に関する規則を設定し、それに基づいてウクライナが行動するということである。
西側諸国での議論 ルッテの発言は、西側諸国で進行中のウクライナに対する軍事支援の是非に関する議論の一部である。具体的には、ウクライナが西側から供与された兵器を用いてロシア領内を攻撃することが正当かどうかについての議論が続いている。これまでのところ、西側諸国はウクライナがロシア領内を攻撃することに対して慎重な姿勢を示してきたが、今回の発言はそのスタンスに変化がある可能性を示唆している。
ロシアの反応 ロシアからは、この発言に対して即座に否定的な反応があった。ロシアの自由民主党(LDPR)の党首であるレオニード・スルツキーは、NATOの指導者が交代しても、NATOの「攻撃的な姿勢」に変化は見られないと批判した。彼は、ルッテの発言がNATOが引き続き「ゴールデン・ビリオン」(主に西側の富裕国)による世界支配を目指していることを示すものだとし、NATOの政策がますます対立を深めるものだと指摘した。
ロシアの核ドクトリンの改定 さらに、ロシア政府は現在、核ドクトリンの改定を進めており、これによりロシアが核兵器を使用する条件が緩和される可能性がある。新しい規則では、ロシアが非核国家から大規模な通常攻撃を受け、その攻撃が核保有国の支援を受けた場合、ロシアは核抑止力を使用できるという条項が追加される見込みである。これは、ロシアがNATOや他の西側諸国からの支援を受けたウクライナによる攻撃に対して、より強硬な対応を取る可能性があることを示唆している。
このように、ルッテの発言は、NATOのウクライナ支援方針やロシアの反応、そして国際法に基づく自衛権の解釈に関わる重要な議論を反映しており、今後の国際情勢に影響を与える可能性が高いと言える。
【要点】
1.ルッテの主張
・ウクライナが西側から供与された武器を使用してロシア領内を攻撃する権利を支持。
・自衛権は国境で終わらず、攻撃国(ロシア)の「正当な標的」への攻撃が国際法で認められると説明。
2.NATO内での責任分担
・NATO全体ではなく、各加盟国がウクライナへの支援や供与兵器の使用規則を決定。
・具体的な武器使用に関する規定は、個々の加盟国の判断に委ねられる。
3.西側諸国での議論
・ウクライナが供与された兵器を使ってロシア領内を攻撃することの是非について議論が続いている。
・まだこの問題についての西側諸国間での合意はない。
4.ロシアの反応
・ロシアのLDPR党首レオニード・スルツキーは、NATOの新事務総長の発言を「攻撃的」と批判。
・NATOの「ゴールデン・ビリオン」諸国が引き続き世界支配を目指していると非難。
5.ロシアの核ドクトリン改定
・ロシアは、非核国家による大規模な通常攻撃が核保有国の支援を受けた場合、核抑止力を使用できる規定を導入予定。
・これはウクライナや西側諸国による攻撃に対するロシアの対応が強硬化する可能性を示唆。
【参考】
☞ 国際法に基づく自衛権の範囲は、主に以下の原則によって規定されている。
1.固有の自衛権
・国連憲章第51条によって認められ、国家が武力攻撃を受けた場合、その国家は自国を防衛するために自衛権を行使できる。
・自衛権の行使は、国際連合安全保障理事会が必要な措置を取るまでの暫定的な権利とされる。
2.先制的自衛権
・明確な差し迫った武力攻撃の脅威がある場合、攻撃を受ける前に自衛のために武力を行使することができる。
・ただし、先制攻撃は厳格な条件下でしか認められず、国際的に広く受け入れられているわけではない。
3.自衛権の範囲の拡張
・自衛権は自国の領土内に限らず、他国の領土であっても「正当な標的」に対する攻撃が認められる場合がある。
・攻撃国の領土に対しても、防衛目的であれば合法とされることがある(例:武力攻撃の発信源を破壊するための行動)。
4.必要性と均衡性の原則
・自衛権の行使は、必要性(国家の防衛に必要不可欠であること)と均衡性(自衛のために取られる措置が脅威と釣り合っていること)の原則に従う必要がある。
・過度な力の使用や不適切な攻撃は国際法違反となる。
5.集団的自衛権
・ある国が攻撃を受けた場合、同盟国や他の国家がその国を支援して共同で防衛する権利を持つ。
・NATOなどの防衛同盟では、加盟国に対する攻撃は全体への攻撃とみなし、集団的自衛権を行使できる。
☞ 「ゴールデン・ビリオン(Golden Billion)」は、近年特にロシアや一部の批評家が使用する言葉で、一般的な学術用語や国際関係の専門用語ではない。これは、西側の先進国、特に欧米諸国が世界の富や資源の大部分を占有し、その利益を享受している約10億人(主に欧米や日本、韓国などの発展した国々の人口)を指す。この概念は、西側諸国が国際的な影響力や経済的な優位性を保とうとする一方で、他の国々がその影響下に置かれているという批判的な視点を反映している。
「ゴールデン・ビリオン」は、主に以下のような文脈で使われる。
・西側諸国の経済的・政治的支配
発展途上国や非西側諸国に対する、富裕な先進国の経済的および政治的な優位性を批判するために用いられる。
・世界の不平等の象徴
世界の人口の約10億人が豊かさを享受し、それ以外の人々がその影響を受け、限られた資源を巡って不平等な状況にあるという考えを表現する。
特にロシアのメディアや一部の評論家が、西側諸国の政策や影響力を批判する際に、この用語を使用してきたが、国際社会全体で広く認知されているわけではなく、批判的または陰謀論的なニュアンスを帯びることがある。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
New NATO chief backs using Western weapons to strike deep into Russia RT 2024.10.01
https://www.rt.com/russia/605049-nato-rutte-ukraine-weapons/