ロシアとインドの相違 ― 2024年11月29日 17:01
【概要】
ロシアとインドは緊密な戦略的パートナーであり、2022年以降、国際的なシステムの転換が加速する中で、多極化の進展を共に推進してきた。両国間には重大な対立は存在しないものの、全ての点で意見が一致しているわけではなく、その中の一つがユーラシアにおける集団安全保障に関する考え方の相違である。この問題について、ロシア国際問題評議会の元事務局長アンドレイ・コルトゥノフが詳細に論じている。
彼の論文「ユーラシアにおける集団安全保障:モスクワとニューデリーからの視点」では、以下の6つの主な相違点が挙げられている。
安全保障上の主な脅威に対する認識
ロシアは、ユーラシア大陸における安全保障上の主要な脅威を、かつてのイギリスや現在のアメリカなど、海外の勢力にあると見なしている。一方、インドはこれらの勢力がアジアにおける「一極支配の阻止」に重要であると考えている。そのため、アメリカや中国へのアプローチにも自然な違いが生じ、ロシアはアメリカを、インドは中国をそれぞれ牽制しようとしている。
インド太平洋構想への見解
ロシアは、この構想を中国封じ込めとアメリカによる地域支配の手段と見なしているが、インドはこれを日印が共同で提案したものであり、反ロシア的ではないと主張している。インドはロシアに対し、この構想を通じて地域への参加機会が得られると説いている。
集団安全保障の範囲と形式
ロシアは、集団安全保障がユーラシア全体を包含し、制度化されるべきだと考えている。一方、インドは、地域ごとに焦点を絞り、形式的な義務を伴わない形が望ましいと考えている。
安全保障におけるアプローチの違い
ロシアは一般的な前提から特定の結論を導き出す「演繹的」なパラダイムを好むが、インドは特定の観察結果から一般理論を構築する「帰納的」なパラダイムを好む。この例として、ロシアはクアッドを覇権主義のプラットフォームと見なすが、インドは戦略的自律性を維持していると主張している。
安全保障と経済発展の関係
ロシアは、安全保障と経済発展は相互に関連していると考えているが、インドは緊密な安全保障関係が必ずしも経済協力に直結するわけではないと示している。中国との緊張にもかかわらず、インドと中国の貿易が減少していない事例がこれを裏付けている。
国際関係理論における逆説
インドは上昇する勢力として通常は修正主義を支持することが予想されるが、実際には漸進的な改革を伴う現状維持を支持している。一方、ロシアは既存の勢力であるにもかかわらず、修正主義的な目標を支持している。この点についてはさらに深い研究が必要とされる。
コルトゥノフはこれらの違いがロシアとインドの関係に悪影響を与えていない点を指摘している。地理的な距離が大きいため、意見の相違が両国間で直接的な競合関係を引き起こさないからである。むしろ、両国は互いを重要なユーラシアの関係国と認識し、共通の利益を推進するためにさらに緊密に協力する必要があるとしている。
結果として、ロシアと中国の関係が現代における実利的な関係の良い例とされる一方で、ロシアとインドの関係は、それ以上に強固な関係の例と見なすことができる。ロシアと中国は多くの点で意見が一致しているが、ロシアとインドは意見の相違があるにもかかわらず戦略的パートナーシップを維持しており、これがより印象的であると論じられている。
【詳細】
ロシアとインドは、地政学的に重要なユーラシアにおいて、緊密な戦略的パートナーとして協力している。しかし、その協力関係には6つの重要な相違点がある。それぞれの相違点を背景と具体例を挙げて詳しく説明する。
1. 安全保障上の主な脅威に対する認識
ロシアは、ユーラシア大陸の安全保障における主要な脅威は海外からの勢力、特にアメリカとその同盟国にあると考えている。この見解は歴史的な経験に基づいており、ロシア帝国時代のイギリスとの対立や、冷戦期のアメリカとの競争が影響している。これに対してインドは、アメリカやその同盟国を、アジアにおける「一極支配(ユニポーラリティ)」を防ぐための重要なパートナーと見なしている。インドは、中国の台頭を牽制するため、アメリカとの関係を戦略的に活用している。
この違いは、アメリカや中国に対するアプローチにも表れている。ロシアはアメリカを牽制する一方、インドは中国を主な脅威と見なし、その対抗策としてアメリカと協力している。このため、ロシアとインドの地政学的目標は必ずしも一致しない。
2. インド太平洋構想への見解
ロシアは、インド太平洋構想をアメリカが中国を封じ込めるための手段であり、さらに地域全体をアメリカの支配下に置くための戦略と見なしている。一方で、インドはこの構想が日本とインドによって提案されたものであり、反ロシア的な意図はないと主張している。
インドは、インド太平洋構想をロシアにとって有益なプラットフォームと考え、ロシアがこの枠組みに関与することで地域における影響力を強化できると説いている。この点は、ロシアがアメリカ主導の構想に懐疑的である一方、インドが多国間の協力を通じてバランスを取ろうとしている姿勢を示している。
3. 集団安全保障の範囲と形式
ロシアは、ユーラシア全体を包括する広域的で制度化された集団安全保障の枠組みを支持している。この考えは、ロシアが歴史的に広範な地域を統合しようとしてきた地政学的戦略に由来している。一方、インドは、地域ごとに焦点を絞り、柔軟で非制度的な形式を重視している。例えば、南アジアにおける地域協力(SAARC)などが挙げられる。
ロシアが広域的な枠組みを支持する理由は、ユーラシア全体での安定が必要だと考えているためであり、インドの立場は、自国の主権や柔軟性を保つことに重点を置いている。
4. 安全保障アプローチの違い:演繹的パラダイムと帰納的パラダイム
ロシアは、一般的な前提から具体的な結論を導き出す「演繹的」アプローチを採用している。この考え方は、例えば「アメリカは常に覇権を追求している」という前提から、クアッド(QUAD)が覇権主義的プラットフォームであると結論づける傾向がある。
これに対し、インドは具体的な観察結果から一般理論を構築する「帰納的」アプローチを採用している。例えば、インドはクアッドのメンバーであるが、依然として戦略的自律性を保っていると主張し、ロシアのクアッドに対する否定的評価には賛同しない。また、中国についても、ロシアは「アメリカによって封じ込められているため覇権主義的ではない」と考えるが、インドは中国の国境での行動を覇権主義的だとみなしている。
5. 安全保障と経済発展の関係
ロシアは、安全保障と経済発展は相互に関連していると考え、安全保障関係が経済協力を促進するべきだと主張している。しかし、インドは異なる立場を取っている。例えば、インドと中国の国境での緊張が続いているにもかかわらず、両国間の貿易は縮小せずにむしろ拡大している。このことは、安全保障上の対立が必ずしも経済協力を妨げるわけではないというインドの立場を裏付けている。
6. 国際関係理論における逆説
国際関係理論の観点から、インドとロシアの姿勢は興味深い逆説を示している。通常、台頭する勢力(インド)は現状を変えようとする修正主義的な立場を取ると予想されるが、インドは現状維持と漸進的な改革を支持している。一方、既存の勢力(ロシア)は現状を維持する立場を取ると考えられるが、ロシアはむしろ修正主義的な目標を追求している。この逆説は、国際関係理論の限界を示しており、さらなる研究が必要である。
総括
これら6つの相違点は、ロシアとインドの戦略的パートナーシップに悪影響を及ぼしていない。地理的距離のために直接的な競争関係が生じにくく、むしろ相互の違いを認識しつつ協力を深めている。両国は互いをユーラシアの重要なプレイヤーと認識しており、共通の利益を推進するために協力を拡大している。
ロシアと中国の関係が「実利的な関係」の典型とされる一方で、ロシアとインドの関係は、意見の相違を抱えながらも強固であることから、より洗練された実利的関係の例として挙げられる。
【要点】
・安全保障上の主な脅威への認識の違い
ロシアはユーラシアにおける主な脅威をアメリカと考える一方、インドはアメリカを中国を牽制するための重要なパートナーとみなしている。
・インド太平洋構想への見解の違い
ロシアはインド太平洋構想をアメリカの覇権戦略と疑念を抱くが、インドはそれを日本と提案した非反ロシア的な協力枠組みと主張する。
・集団安全保障のアプローチの違い
ロシアはユーラシア全域を包括する制度化された枠組みを支持するが、インドは地域ごとに柔軟で非制度的な形式を重視している。
・安全保障アプローチの違い(演繹的 vs 帰納的)
ロシアは一般的な前提(例:アメリカは常に覇権を追求)に基づいて結論を導くが、インドは具体的な状況から柔軟に判断する。
・安全保障と経済発展の関係の違い
ロシアは安全保障と経済発展を密接に結びつけるべきと考えるが、インドは安全保障上の緊張が経済協力に影響しないと主張している。
・国際関係理論における逆説
通常、台頭する勢力(インド)は修正主義的、既存勢力(ロシア)は現状維持派とされるが、実際にはインドは現状維持、ロシアは修正主義的である。
・相違点が協力関係に及ぼす影響
これらの相違点にもかかわらず、ロシアとインドの協力関係は地理的距離と直接的な利害対立の欠如により堅持されている。むしろ、相違点を認識した上で協力を強化している。
【引用・参照・底本】
A Top Russian Thinker Described His Country’s Differences With India On Eurasian Security Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.29
https://korybko.substack.com/p/a-top-russian-thinker-described-his?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152309361&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ロシアとインドは緊密な戦略的パートナーであり、2022年以降、国際的なシステムの転換が加速する中で、多極化の進展を共に推進してきた。両国間には重大な対立は存在しないものの、全ての点で意見が一致しているわけではなく、その中の一つがユーラシアにおける集団安全保障に関する考え方の相違である。この問題について、ロシア国際問題評議会の元事務局長アンドレイ・コルトゥノフが詳細に論じている。
彼の論文「ユーラシアにおける集団安全保障:モスクワとニューデリーからの視点」では、以下の6つの主な相違点が挙げられている。
安全保障上の主な脅威に対する認識
ロシアは、ユーラシア大陸における安全保障上の主要な脅威を、かつてのイギリスや現在のアメリカなど、海外の勢力にあると見なしている。一方、インドはこれらの勢力がアジアにおける「一極支配の阻止」に重要であると考えている。そのため、アメリカや中国へのアプローチにも自然な違いが生じ、ロシアはアメリカを、インドは中国をそれぞれ牽制しようとしている。
インド太平洋構想への見解
ロシアは、この構想を中国封じ込めとアメリカによる地域支配の手段と見なしているが、インドはこれを日印が共同で提案したものであり、反ロシア的ではないと主張している。インドはロシアに対し、この構想を通じて地域への参加機会が得られると説いている。
集団安全保障の範囲と形式
ロシアは、集団安全保障がユーラシア全体を包含し、制度化されるべきだと考えている。一方、インドは、地域ごとに焦点を絞り、形式的な義務を伴わない形が望ましいと考えている。
安全保障におけるアプローチの違い
ロシアは一般的な前提から特定の結論を導き出す「演繹的」なパラダイムを好むが、インドは特定の観察結果から一般理論を構築する「帰納的」なパラダイムを好む。この例として、ロシアはクアッドを覇権主義のプラットフォームと見なすが、インドは戦略的自律性を維持していると主張している。
安全保障と経済発展の関係
ロシアは、安全保障と経済発展は相互に関連していると考えているが、インドは緊密な安全保障関係が必ずしも経済協力に直結するわけではないと示している。中国との緊張にもかかわらず、インドと中国の貿易が減少していない事例がこれを裏付けている。
国際関係理論における逆説
インドは上昇する勢力として通常は修正主義を支持することが予想されるが、実際には漸進的な改革を伴う現状維持を支持している。一方、ロシアは既存の勢力であるにもかかわらず、修正主義的な目標を支持している。この点についてはさらに深い研究が必要とされる。
コルトゥノフはこれらの違いがロシアとインドの関係に悪影響を与えていない点を指摘している。地理的な距離が大きいため、意見の相違が両国間で直接的な競合関係を引き起こさないからである。むしろ、両国は互いを重要なユーラシアの関係国と認識し、共通の利益を推進するためにさらに緊密に協力する必要があるとしている。
結果として、ロシアと中国の関係が現代における実利的な関係の良い例とされる一方で、ロシアとインドの関係は、それ以上に強固な関係の例と見なすことができる。ロシアと中国は多くの点で意見が一致しているが、ロシアとインドは意見の相違があるにもかかわらず戦略的パートナーシップを維持しており、これがより印象的であると論じられている。
【詳細】
ロシアとインドは、地政学的に重要なユーラシアにおいて、緊密な戦略的パートナーとして協力している。しかし、その協力関係には6つの重要な相違点がある。それぞれの相違点を背景と具体例を挙げて詳しく説明する。
1. 安全保障上の主な脅威に対する認識
ロシアは、ユーラシア大陸の安全保障における主要な脅威は海外からの勢力、特にアメリカとその同盟国にあると考えている。この見解は歴史的な経験に基づいており、ロシア帝国時代のイギリスとの対立や、冷戦期のアメリカとの競争が影響している。これに対してインドは、アメリカやその同盟国を、アジアにおける「一極支配(ユニポーラリティ)」を防ぐための重要なパートナーと見なしている。インドは、中国の台頭を牽制するため、アメリカとの関係を戦略的に活用している。
この違いは、アメリカや中国に対するアプローチにも表れている。ロシアはアメリカを牽制する一方、インドは中国を主な脅威と見なし、その対抗策としてアメリカと協力している。このため、ロシアとインドの地政学的目標は必ずしも一致しない。
2. インド太平洋構想への見解
ロシアは、インド太平洋構想をアメリカが中国を封じ込めるための手段であり、さらに地域全体をアメリカの支配下に置くための戦略と見なしている。一方で、インドはこの構想が日本とインドによって提案されたものであり、反ロシア的な意図はないと主張している。
インドは、インド太平洋構想をロシアにとって有益なプラットフォームと考え、ロシアがこの枠組みに関与することで地域における影響力を強化できると説いている。この点は、ロシアがアメリカ主導の構想に懐疑的である一方、インドが多国間の協力を通じてバランスを取ろうとしている姿勢を示している。
3. 集団安全保障の範囲と形式
ロシアは、ユーラシア全体を包括する広域的で制度化された集団安全保障の枠組みを支持している。この考えは、ロシアが歴史的に広範な地域を統合しようとしてきた地政学的戦略に由来している。一方、インドは、地域ごとに焦点を絞り、柔軟で非制度的な形式を重視している。例えば、南アジアにおける地域協力(SAARC)などが挙げられる。
ロシアが広域的な枠組みを支持する理由は、ユーラシア全体での安定が必要だと考えているためであり、インドの立場は、自国の主権や柔軟性を保つことに重点を置いている。
4. 安全保障アプローチの違い:演繹的パラダイムと帰納的パラダイム
ロシアは、一般的な前提から具体的な結論を導き出す「演繹的」アプローチを採用している。この考え方は、例えば「アメリカは常に覇権を追求している」という前提から、クアッド(QUAD)が覇権主義的プラットフォームであると結論づける傾向がある。
これに対し、インドは具体的な観察結果から一般理論を構築する「帰納的」アプローチを採用している。例えば、インドはクアッドのメンバーであるが、依然として戦略的自律性を保っていると主張し、ロシアのクアッドに対する否定的評価には賛同しない。また、中国についても、ロシアは「アメリカによって封じ込められているため覇権主義的ではない」と考えるが、インドは中国の国境での行動を覇権主義的だとみなしている。
5. 安全保障と経済発展の関係
ロシアは、安全保障と経済発展は相互に関連していると考え、安全保障関係が経済協力を促進するべきだと主張している。しかし、インドは異なる立場を取っている。例えば、インドと中国の国境での緊張が続いているにもかかわらず、両国間の貿易は縮小せずにむしろ拡大している。このことは、安全保障上の対立が必ずしも経済協力を妨げるわけではないというインドの立場を裏付けている。
6. 国際関係理論における逆説
国際関係理論の観点から、インドとロシアの姿勢は興味深い逆説を示している。通常、台頭する勢力(インド)は現状を変えようとする修正主義的な立場を取ると予想されるが、インドは現状維持と漸進的な改革を支持している。一方、既存の勢力(ロシア)は現状を維持する立場を取ると考えられるが、ロシアはむしろ修正主義的な目標を追求している。この逆説は、国際関係理論の限界を示しており、さらなる研究が必要である。
総括
これら6つの相違点は、ロシアとインドの戦略的パートナーシップに悪影響を及ぼしていない。地理的距離のために直接的な競争関係が生じにくく、むしろ相互の違いを認識しつつ協力を深めている。両国は互いをユーラシアの重要なプレイヤーと認識しており、共通の利益を推進するために協力を拡大している。
ロシアと中国の関係が「実利的な関係」の典型とされる一方で、ロシアとインドの関係は、意見の相違を抱えながらも強固であることから、より洗練された実利的関係の例として挙げられる。
【要点】
・安全保障上の主な脅威への認識の違い
ロシアはユーラシアにおける主な脅威をアメリカと考える一方、インドはアメリカを中国を牽制するための重要なパートナーとみなしている。
・インド太平洋構想への見解の違い
ロシアはインド太平洋構想をアメリカの覇権戦略と疑念を抱くが、インドはそれを日本と提案した非反ロシア的な協力枠組みと主張する。
・集団安全保障のアプローチの違い
ロシアはユーラシア全域を包括する制度化された枠組みを支持するが、インドは地域ごとに柔軟で非制度的な形式を重視している。
・安全保障アプローチの違い(演繹的 vs 帰納的)
ロシアは一般的な前提(例:アメリカは常に覇権を追求)に基づいて結論を導くが、インドは具体的な状況から柔軟に判断する。
・安全保障と経済発展の関係の違い
ロシアは安全保障と経済発展を密接に結びつけるべきと考えるが、インドは安全保障上の緊張が経済協力に影響しないと主張している。
・国際関係理論における逆説
通常、台頭する勢力(インド)は修正主義的、既存勢力(ロシア)は現状維持派とされるが、実際にはインドは現状維持、ロシアは修正主義的である。
・相違点が協力関係に及ぼす影響
これらの相違点にもかかわらず、ロシアとインドの協力関係は地理的距離と直接的な利害対立の欠如により堅持されている。むしろ、相違点を認識した上で協力を強化している。
【引用・参照・底本】
A Top Russian Thinker Described His Country’s Differences With India On Eurasian Security Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.29
https://korybko.substack.com/p/a-top-russian-thinker-described-his?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152309361&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
HTS:アレッポ県とイドリブ県でシリア政府軍に大規模攻撃 ― 2024年11月29日 17:20
【概要】
2024年11月27日、シリア北部のアレッポ県で、シリア政府軍と反政府勢力の間で激しい戦闘が発生し、過去24時間で130人以上が死亡したと報じられている。この戦闘は、2020年に発効した停戦以降、反政府勢力が初めて領土を拡大した事例であるとされる。
戦闘の詳細
戦闘は、アルカイダの元シリア支部が率いるハヤト・タハリール・アル=シャーム(HTS)とその同盟勢力による、アレッポおよびイドリブ県にまたがる地域での攻撃に端を発している。イギリスを拠点とするシリア人権監視団によると、戦闘での死者数は132人に達し、その内訳はHTS戦闘員65人、同盟勢力18人、政府軍兵士49人である。
戦闘は特にイドリブ市の東部やアレッポ市外縁部から南西約10キロの地域で激しく、空爆を伴う衝突が継続している。HTS側はイドリブ県内のダディク、カフル・バティク、シェイク・アリといった村を政府軍から奪取したとされる。これらの村は、アレッポとダマスカスを結ぶ国際幹線道路M5号線に近接しており、戦略的に重要な位置にある。
政府側の対応
シリア政府軍は、攻撃を受けた村や軍事拠点を防衛し、「友好勢力」と協力して攻撃に対処していると発表した。また、ロシアの戦闘機による空爆や重火器による砲撃を伴い、HTSおよびその同盟勢力に大きな損害を与えたと主張している。一方で、政府軍側の死傷者については詳細が明らかにされていない。
背景
シリア内戦は2011年、バッシャール・アル=アサド大統領による反政府デモ弾圧を契機に勃発し、外国軍や過激派勢力が絡む複雑な紛争へと発展した。これまでに50万人以上が死亡し、数百万人が避難を余儀なくされ、国のインフラと産業が壊滅的な被害を受けている。
現在、イドリブ地域は2020年3月にトルコとロシアが仲介した停戦協定の対象となっているが、同協定は度重なる違反が報告されつつも、大部分で維持されている。
【詳細】
2024年11月27日に始まったシリア北部での戦闘は、ハヤト・タハリール・アル=シャーム(HTS)とその同盟勢力がシリア政府軍を奇襲したことで発生した。この戦闘は、イドリブ県とアレッポ県の境界付近で激しく行われており、停戦協定が発効した2020年以降、反政府勢力が初めて重要な領土を奪取したとされるものである。以下に、今回の戦闘の背景、経過、戦略的重要性、そして現在のシリア情勢を詳述する。
1. 背景
シリア内戦は2011年、アサド政権に対する民主化を求める抗議活動を政府が暴力的に弾圧したことで始まった。これが全国的な反政府運動に拡大し、次第に外国勢力やイスラム過激派が関与する多層的な紛争へと発展した。現在、北西部のイドリブ地域は反政府勢力が支配する最後の主要拠点となっている。この地域は、HTSを中心とした複数の武装勢力が実効支配しており、トルコの支援も受けている一方で、ロシアはアサド政権を支援している。
2020年3月、ロシアとトルコの間で停戦協定が結ばれ、イドリブを含む地域で一定の安定が保たれてきた。しかし、停戦違反は散発的に発生しており、今回の戦闘はその中でも最大規模のものである。
2. 今回の戦闘の経過
HTSと同盟勢力の攻撃
11月27日、HTSとその同盟勢力がシリア政府軍に対し、アレッポ県とイドリブ県にまたがる広範囲にわたる攻撃を開始した。シリア人権監視団によると、以下の地域で激しい戦闘が報告されている:
・ダディク(Dadikh)
・カフル・バティク(Kafr Batikh)
・シェイク・アリ(Sheikh Ali)
HTSはこれらの村を制圧し、さらにアレッポとダマスカスを結ぶ幹線道路(M5号線)へのアクセスを狙っている。この幹線道路はシリアの経済活動と軍事輸送において極めて重要であり、政府軍にとって大きな脅威となっている。
政府軍の対応
政府軍は、ロシアの空軍支援を受けて反撃しており、声明では「友好勢力」との協力により攻撃を撃退していると主張している。ロシアの戦闘機は、サルミンやイドリブ県内の他の地域を集中的に空爆している。これに加え、重砲とロケット砲による砲撃も行われており、戦闘は現在も継続している。
3. 戦略的重要性
今回の戦闘地域は、シリア政府と反政府勢力の双方にとって戦略的に重要な意味を持つ。特に以下の点が挙げられる:
1.M5号線の支配
この国際幹線道路は、アレッポから首都ダマスカスを結び、南北を繋ぐ主要輸送路である。そのため、この道路を巡る争奪は、物資の輸送や軍事戦略に直接的な影響を与える。
2.イドリブ地域の将来
イドリブはシリアにおける反政府勢力の最後の拠点であり、アサド政権にとっては反乱を完全に制圧するための鍵となる地域である。一方、HTSにとっては生存圏を守るための重要な拠点である。
3.ロシアとトルコの影響力
ロシアはアサド政権を支援して空爆を強化しており、トルコはHTSを含む反政府勢力との関係を維持している。両国の影響力争いが、戦闘の背後にある要因と考えられる。
4. 被害と人道的影響
今回の戦闘で報告されている死者は、HTS戦闘員65人、同盟勢力18人、政府軍兵士49人で、合計132人に上る。また、民間人への直接的な影響についての詳細は明らかにされていないが、これまでの戦闘と同様、民間人の被害が懸念される。
5. 今後の展望
この戦闘は、シリア内戦の新たな激化を示すものであり、停戦協定の実効性が改めて問われる事態となっている。HTSと政府軍の間の緊張が今後さらに拡大する可能性があり、ロシアとトルコの介入が事態の行方を左右するであろう。また、今回の戦闘はシリアの人道危機をさらに深刻化させる恐れがある。
シリア情勢は、国際社会の関与や停戦維持の努力が問われる重要な局面に差し掛かっている。
【要点】
1.戦闘発生の概要
・2024年11月27日、反政府勢力ハヤト・タハリール・アル=シャーム(HTS)と同盟勢力がアレッポ県とイドリブ県でシリア政府軍に対し大規模攻撃を開始。
・停戦協定が発効した2020年以降、初めて反政府勢力が領土を奪取。
2.死者数と内訳
・合計132人が死亡(HTS戦闘員65人、同盟勢力18人、政府軍兵士49人)。
・シリア人権監視団の報告に基づく。
3.制圧地域と戦略的重要性
・HTSがイドリブ県内のダディク、カフル・バティク、シェイク・アリを奪取。
・これらの村は、アレッポとダマスカスを結ぶ幹線道路M5号線に近接。
・幹線道路の支配は、物資輸送と軍事戦略において重要。
4.政府軍の対応
・ロシアの空軍支援を受け、政府軍が反撃。
・サルミン付近やイドリブ県の複数地域で集中的な空爆と砲撃を実施。
・政府軍は「友好勢力」と協力し、防衛を継続中。
5.停戦協定の状況
・イドリブ地域は2020年3月のロシアとトルコの仲介で停戦協定が成立。
・度重なる違反が報告されているが、大部分で維持されてきた。
・今回の戦闘は最大規模の違反とされる。
6.戦闘の背景
・シリア内戦は2011年にアサド政権への反政府デモ弾圧から勃発。
・現在、イドリブは反政府勢力の最後の主要拠点。
・ロシアはアサド政権を支援し、トルコは反政府勢力との関係を維持。
7.人道的影響と懸念
・現時点で民間人への影響は不明だが、被害拡大の可能性。
・シリアの人道危機がさらに深刻化する恐れ。
8.今後の展望
・停戦協定の実効性が問われ、さらなる戦闘拡大の可能性。
・ロシアとトルコの対応が事態収束の鍵となる。
・国際社会の関与が必要不可欠。
【引用・参照・底本】
More than 130 killed as Syrian rebels seize territory from army in Aleppo province FRANCE24 2024.11.28
https://www.france24.com/en/middle-east/20241128-syrian-rebels-seize-territory-in-large-scale-offensive-against-army-in-aleppo-province?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020241128&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
2024年11月27日、シリア北部のアレッポ県で、シリア政府軍と反政府勢力の間で激しい戦闘が発生し、過去24時間で130人以上が死亡したと報じられている。この戦闘は、2020年に発効した停戦以降、反政府勢力が初めて領土を拡大した事例であるとされる。
戦闘の詳細
戦闘は、アルカイダの元シリア支部が率いるハヤト・タハリール・アル=シャーム(HTS)とその同盟勢力による、アレッポおよびイドリブ県にまたがる地域での攻撃に端を発している。イギリスを拠点とするシリア人権監視団によると、戦闘での死者数は132人に達し、その内訳はHTS戦闘員65人、同盟勢力18人、政府軍兵士49人である。
戦闘は特にイドリブ市の東部やアレッポ市外縁部から南西約10キロの地域で激しく、空爆を伴う衝突が継続している。HTS側はイドリブ県内のダディク、カフル・バティク、シェイク・アリといった村を政府軍から奪取したとされる。これらの村は、アレッポとダマスカスを結ぶ国際幹線道路M5号線に近接しており、戦略的に重要な位置にある。
政府側の対応
シリア政府軍は、攻撃を受けた村や軍事拠点を防衛し、「友好勢力」と協力して攻撃に対処していると発表した。また、ロシアの戦闘機による空爆や重火器による砲撃を伴い、HTSおよびその同盟勢力に大きな損害を与えたと主張している。一方で、政府軍側の死傷者については詳細が明らかにされていない。
背景
シリア内戦は2011年、バッシャール・アル=アサド大統領による反政府デモ弾圧を契機に勃発し、外国軍や過激派勢力が絡む複雑な紛争へと発展した。これまでに50万人以上が死亡し、数百万人が避難を余儀なくされ、国のインフラと産業が壊滅的な被害を受けている。
現在、イドリブ地域は2020年3月にトルコとロシアが仲介した停戦協定の対象となっているが、同協定は度重なる違反が報告されつつも、大部分で維持されている。
【詳細】
2024年11月27日に始まったシリア北部での戦闘は、ハヤト・タハリール・アル=シャーム(HTS)とその同盟勢力がシリア政府軍を奇襲したことで発生した。この戦闘は、イドリブ県とアレッポ県の境界付近で激しく行われており、停戦協定が発効した2020年以降、反政府勢力が初めて重要な領土を奪取したとされるものである。以下に、今回の戦闘の背景、経過、戦略的重要性、そして現在のシリア情勢を詳述する。
1. 背景
シリア内戦は2011年、アサド政権に対する民主化を求める抗議活動を政府が暴力的に弾圧したことで始まった。これが全国的な反政府運動に拡大し、次第に外国勢力やイスラム過激派が関与する多層的な紛争へと発展した。現在、北西部のイドリブ地域は反政府勢力が支配する最後の主要拠点となっている。この地域は、HTSを中心とした複数の武装勢力が実効支配しており、トルコの支援も受けている一方で、ロシアはアサド政権を支援している。
2020年3月、ロシアとトルコの間で停戦協定が結ばれ、イドリブを含む地域で一定の安定が保たれてきた。しかし、停戦違反は散発的に発生しており、今回の戦闘はその中でも最大規模のものである。
2. 今回の戦闘の経過
HTSと同盟勢力の攻撃
11月27日、HTSとその同盟勢力がシリア政府軍に対し、アレッポ県とイドリブ県にまたがる広範囲にわたる攻撃を開始した。シリア人権監視団によると、以下の地域で激しい戦闘が報告されている:
・ダディク(Dadikh)
・カフル・バティク(Kafr Batikh)
・シェイク・アリ(Sheikh Ali)
HTSはこれらの村を制圧し、さらにアレッポとダマスカスを結ぶ幹線道路(M5号線)へのアクセスを狙っている。この幹線道路はシリアの経済活動と軍事輸送において極めて重要であり、政府軍にとって大きな脅威となっている。
政府軍の対応
政府軍は、ロシアの空軍支援を受けて反撃しており、声明では「友好勢力」との協力により攻撃を撃退していると主張している。ロシアの戦闘機は、サルミンやイドリブ県内の他の地域を集中的に空爆している。これに加え、重砲とロケット砲による砲撃も行われており、戦闘は現在も継続している。
3. 戦略的重要性
今回の戦闘地域は、シリア政府と反政府勢力の双方にとって戦略的に重要な意味を持つ。特に以下の点が挙げられる:
1.M5号線の支配
この国際幹線道路は、アレッポから首都ダマスカスを結び、南北を繋ぐ主要輸送路である。そのため、この道路を巡る争奪は、物資の輸送や軍事戦略に直接的な影響を与える。
2.イドリブ地域の将来
イドリブはシリアにおける反政府勢力の最後の拠点であり、アサド政権にとっては反乱を完全に制圧するための鍵となる地域である。一方、HTSにとっては生存圏を守るための重要な拠点である。
3.ロシアとトルコの影響力
ロシアはアサド政権を支援して空爆を強化しており、トルコはHTSを含む反政府勢力との関係を維持している。両国の影響力争いが、戦闘の背後にある要因と考えられる。
4. 被害と人道的影響
今回の戦闘で報告されている死者は、HTS戦闘員65人、同盟勢力18人、政府軍兵士49人で、合計132人に上る。また、民間人への直接的な影響についての詳細は明らかにされていないが、これまでの戦闘と同様、民間人の被害が懸念される。
5. 今後の展望
この戦闘は、シリア内戦の新たな激化を示すものであり、停戦協定の実効性が改めて問われる事態となっている。HTSと政府軍の間の緊張が今後さらに拡大する可能性があり、ロシアとトルコの介入が事態の行方を左右するであろう。また、今回の戦闘はシリアの人道危機をさらに深刻化させる恐れがある。
シリア情勢は、国際社会の関与や停戦維持の努力が問われる重要な局面に差し掛かっている。
【要点】
1.戦闘発生の概要
・2024年11月27日、反政府勢力ハヤト・タハリール・アル=シャーム(HTS)と同盟勢力がアレッポ県とイドリブ県でシリア政府軍に対し大規模攻撃を開始。
・停戦協定が発効した2020年以降、初めて反政府勢力が領土を奪取。
2.死者数と内訳
・合計132人が死亡(HTS戦闘員65人、同盟勢力18人、政府軍兵士49人)。
・シリア人権監視団の報告に基づく。
3.制圧地域と戦略的重要性
・HTSがイドリブ県内のダディク、カフル・バティク、シェイク・アリを奪取。
・これらの村は、アレッポとダマスカスを結ぶ幹線道路M5号線に近接。
・幹線道路の支配は、物資輸送と軍事戦略において重要。
4.政府軍の対応
・ロシアの空軍支援を受け、政府軍が反撃。
・サルミン付近やイドリブ県の複数地域で集中的な空爆と砲撃を実施。
・政府軍は「友好勢力」と協力し、防衛を継続中。
5.停戦協定の状況
・イドリブ地域は2020年3月のロシアとトルコの仲介で停戦協定が成立。
・度重なる違反が報告されているが、大部分で維持されてきた。
・今回の戦闘は最大規模の違反とされる。
6.戦闘の背景
・シリア内戦は2011年にアサド政権への反政府デモ弾圧から勃発。
・現在、イドリブは反政府勢力の最後の主要拠点。
・ロシアはアサド政権を支援し、トルコは反政府勢力との関係を維持。
7.人道的影響と懸念
・現時点で民間人への影響は不明だが、被害拡大の可能性。
・シリアの人道危機がさらに深刻化する恐れ。
8.今後の展望
・停戦協定の実効性が問われ、さらなる戦闘拡大の可能性。
・ロシアとトルコの対応が事態収束の鍵となる。
・国際社会の関与が必要不可欠。
【引用・参照・底本】
More than 130 killed as Syrian rebels seize territory from army in Aleppo province FRANCE24 2024.11.28
https://www.france24.com/en/middle-east/20241128-syrian-rebels-seize-territory-in-large-scale-offensive-against-army-in-aleppo-province?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020241128&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
ウクライナ:軍事的、経済的、エネルギー的な困難に直面 ― 2024年11月29日 17:43
【概要】
2024年11月28日、ウクライナのエネルギーインフラがロシアによる大規模なミサイル攻撃を受け、少なくとも100万人が停電している。ウクライナのエネルギー大臣ヘルマン・ガルシチェンコ氏は、エネルギー施設が全国的に攻撃を受けていると述べた。全国的な停電が発生し、西部ウクライナのリヴィウ地域だけで52万3000人が影響を受けている。リヴネ地域では28万人、ヴォルィン地域では21万5000人が停電しているとされる。
国営電力会社「ウクルエネルゴ」は緊急停電措置を実施しており、首都キーウやオデーサ、ドニプロ、ドネツクの地域でも同様の措置が取られている。気温は摂氏0度近くまで低下しており、冬の厳しさが被害をさらに悪化させている。
国連のローズマリー・ディカルロ氏は、民間人の被害が増加していることに懸念を示し、エネルギーインフラへの攻撃が戦争開始以来最も厳しい冬を招く可能性があると警告している。
同日、ウクライナ全土にミサイル攻撃の警報が発令され、ハルキウ、オデーサなど複数の地域でミサイルが確認された。ハルキウでは3箇所が攻撃され、被害は報告されたものの死傷者はいないとされる。
さらに、アメリカの次期大統領であるドナルド・トランプ氏が、新たなウクライナ特使に退役軍人キース・ケロッグ氏を任命したことが報じられた。ケロッグ氏は和平交渉を推進するために軍事支援を交渉の手段として利用する方針を示している。トランプ氏は選挙中、戦争を迅速に終結させることを約束しており、ウクライナとロシアの間で停戦を仲介する意向を表明している。
一方で、ウクライナ軍の兵力不足が深刻化しているとの指摘もある。アメリカの現政権は、兵力の維持を図るためにウクライナの徴兵年齢を引き下げるよう促しているが、これに対する圧力を援助条件とする考えはないと表明した。
ロシアとの戦争が激化する中、ウクライナは今後のエネルギー供給や防衛戦略で厳しい選択を迫られている。
【詳細】
2024年11月28日のロシアによる大規模なミサイル攻撃により、ウクライナではエネルギーインフラが甚大な被害を受け、少なくとも100万人が停電している。攻撃は早朝に行われ、気温が氷点下に近づく中で、ウクライナの都市は電力供給の停止に直面した。攻撃の対象となったのは、ウクライナの電力ネットワーク全体にわたるエネルギー施設であり、特に西部のリヴィウ、リヴネ、ヴォルィン地域などが深刻な影響を受けた。これらの地域では、大規模な停電が発生しており、特にリヴィウ地域では52万3000人、リヴネ地域では28万人、ヴォルィン地域では21万5000人が電力供給を停止された。
ウクライナのエネルギー大臣、ヘルマン・ガルシチェンコ氏は、Facebookで「再びエネルギー部門は大規模な敵の攻撃を受けている」と述べ、ウクライナ全土でエネルギー施設への攻撃が行われていることを報告した。ウクライナの電力網運営会社「ウクルエネルゴ」は、緊急の停電措置を実施し、全土で電力の供給を調整している。これにより、キーウ(キエフ)やオデーサ、ドニプロ、ドネツクなどの地域でも停電が発生している。停電は、特に冬季の寒さの中で生活に大きな影響を与え、住民たちは暖房や水道の供給停止に直面する事態となっている。
国連のローズマリー・ディカルロ氏は、この攻撃がウクライナ市民に与える影響を深刻に捉えており、ロシアがウクライナのエネルギーインフラを標的にしていることが、この冬を「戦争開始以来最も厳しいものにする可能性がある」と警告した。彼女は、エネルギー供給の不安定化が、ウクライナの人々の生活の質を著しく低下させ、特に寒冷な季節に命に関わる危険を生じさせると指摘している。
この日の攻撃は、ウクライナ全土にミサイル警報が発令される事態を引き起こした。ウクライナ空軍は、ミサイルがハルキウ、オデーサ、その他8つの地域に向かって発射されているのを確認した。ハルキウでは、3箇所が攻撃され、爆発音が複数回響いたが、幸いにも死傷者は報告されていない。
また、ウクライナの北西部に位置するルーツク市でも爆発音が聞かれ、エネルギーインフラ施設への攻撃が続いていることが示唆された。ルーツク市のイゴール・ポリシュチュク市長は、再度爆発音が聞こえたと報告しており、エネルギー施設に対する攻撃が続いている状況を伝えた。
これらの状況の中で、アメリカの次期大統領ドナルド・トランプ氏が、ウクライナ問題に関する新たな特使として退役軍人のキース・ケロッグ氏を任命したことが注目される。ケロッグ氏は、トランプ氏の側近であり、ウクライナとの戦争の終結に向けた外交努力を主導することが期待されている。トランプ氏は選挙活動の中で、ウクライナとロシアの間で速やかな停戦を仲介する意向を示しており、ケロッグ氏はアメリカがウクライナに提供する軍事支援を、ロシアとの和平交渉に向けた圧力の手段として活用することを提案している。
ケロッグ氏は、今年発表した論文で、アメリカがウクライナに対する軍事支援を継続するには、ウクライナがロシアとの和平交渉に参加する必要があると強調している。彼は、ウクライナが交渉を拒否し続けるならば、戦闘によるさらなる犠牲者が出ることを容認するべきだとし、ウクライナの選択肢は「交渉か、さらに多くの犠牲か」と警告した。
また、アメリカ政府はウクライナに対して徴兵年齢を18歳に引き下げるように求めており、ウクライナは兵力不足に直面していると報じられている。ウクライナの軍は、ロシア軍の増強に対抗するために兵力を増強する必要があり、アメリカはそのためにウクライナの兵士をさらに訓練・動員する必要があると強調している。アメリカ政府の高官は、ウクライナの現状について「ウクライナは戦場での損失を補いながら、ロシア軍の成長に追いつくための兵力を十分に確保できていない」と述べており、160,000人程度の新たな兵士が必要であるとした。
このように、ウクライナは現在、厳しい軍事的、経済的、そしてエネルギー的な困難に直面しており、ロシアとの戦争の長期化が深刻な影響を及ぼしている。
【要点】
・ロシアのミサイル攻撃(2024年11月28日): ウクライナのエネルギーインフラが大規模に攻撃され、100万人以上が停電。
・停電の状況
⇨ 西武のリヴィウ地域で52万3000人が停電。
⇨ リヴネ地域で28万人、ヴォルィン地域で21万5000人が電力供給停止。
・気温の影響: 気温が氷点下近くまで下がり、寒さが生活に影響。
・国連の警告: ロシアのエネルギーインフラ攻撃により、2024年冬が「戦争開始以来最も厳しい冬」となる可能性があると国連のローズマリー・ディカルロ氏が警告。
・ウクライナ全土で警報発令: ミサイルがハルキウやオデーサなどの地域に向かって発射され、空襲警報が発令された。
・ケロッグ氏の任命: アメリカ次期大統領トランプ氏がウクライナ特使として退役軍人のキース・ケロッグ氏を任命。ウクライナとの和平交渉を推進する意図。
・ウクライナの兵力不足: アメリカはウクライナに徴兵年齢の引き下げ(18歳)を求め、ウクライナは兵力不足に直面。160,000人の新兵が必要とされている。
・アメリカの支援: アメリカの軍事支援はウクライナがロシアとの和平交渉に参加することを条件に継続される見込み。
【引用・参照・底本】
At least one million people without power in Ukraine after ‘massive’ Russian attack FRANCE24 2024.11.28
https://www.france24.com/en/middle-east/20241128-syrian-rebels-seize-territory-in-large-scale-offensive-against-army-in-aleppo-province?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020241128&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
2024年11月28日、ウクライナのエネルギーインフラがロシアによる大規模なミサイル攻撃を受け、少なくとも100万人が停電している。ウクライナのエネルギー大臣ヘルマン・ガルシチェンコ氏は、エネルギー施設が全国的に攻撃を受けていると述べた。全国的な停電が発生し、西部ウクライナのリヴィウ地域だけで52万3000人が影響を受けている。リヴネ地域では28万人、ヴォルィン地域では21万5000人が停電しているとされる。
国営電力会社「ウクルエネルゴ」は緊急停電措置を実施しており、首都キーウやオデーサ、ドニプロ、ドネツクの地域でも同様の措置が取られている。気温は摂氏0度近くまで低下しており、冬の厳しさが被害をさらに悪化させている。
国連のローズマリー・ディカルロ氏は、民間人の被害が増加していることに懸念を示し、エネルギーインフラへの攻撃が戦争開始以来最も厳しい冬を招く可能性があると警告している。
同日、ウクライナ全土にミサイル攻撃の警報が発令され、ハルキウ、オデーサなど複数の地域でミサイルが確認された。ハルキウでは3箇所が攻撃され、被害は報告されたものの死傷者はいないとされる。
さらに、アメリカの次期大統領であるドナルド・トランプ氏が、新たなウクライナ特使に退役軍人キース・ケロッグ氏を任命したことが報じられた。ケロッグ氏は和平交渉を推進するために軍事支援を交渉の手段として利用する方針を示している。トランプ氏は選挙中、戦争を迅速に終結させることを約束しており、ウクライナとロシアの間で停戦を仲介する意向を表明している。
一方で、ウクライナ軍の兵力不足が深刻化しているとの指摘もある。アメリカの現政権は、兵力の維持を図るためにウクライナの徴兵年齢を引き下げるよう促しているが、これに対する圧力を援助条件とする考えはないと表明した。
ロシアとの戦争が激化する中、ウクライナは今後のエネルギー供給や防衛戦略で厳しい選択を迫られている。
【詳細】
2024年11月28日のロシアによる大規模なミサイル攻撃により、ウクライナではエネルギーインフラが甚大な被害を受け、少なくとも100万人が停電している。攻撃は早朝に行われ、気温が氷点下に近づく中で、ウクライナの都市は電力供給の停止に直面した。攻撃の対象となったのは、ウクライナの電力ネットワーク全体にわたるエネルギー施設であり、特に西部のリヴィウ、リヴネ、ヴォルィン地域などが深刻な影響を受けた。これらの地域では、大規模な停電が発生しており、特にリヴィウ地域では52万3000人、リヴネ地域では28万人、ヴォルィン地域では21万5000人が電力供給を停止された。
ウクライナのエネルギー大臣、ヘルマン・ガルシチェンコ氏は、Facebookで「再びエネルギー部門は大規模な敵の攻撃を受けている」と述べ、ウクライナ全土でエネルギー施設への攻撃が行われていることを報告した。ウクライナの電力網運営会社「ウクルエネルゴ」は、緊急の停電措置を実施し、全土で電力の供給を調整している。これにより、キーウ(キエフ)やオデーサ、ドニプロ、ドネツクなどの地域でも停電が発生している。停電は、特に冬季の寒さの中で生活に大きな影響を与え、住民たちは暖房や水道の供給停止に直面する事態となっている。
国連のローズマリー・ディカルロ氏は、この攻撃がウクライナ市民に与える影響を深刻に捉えており、ロシアがウクライナのエネルギーインフラを標的にしていることが、この冬を「戦争開始以来最も厳しいものにする可能性がある」と警告した。彼女は、エネルギー供給の不安定化が、ウクライナの人々の生活の質を著しく低下させ、特に寒冷な季節に命に関わる危険を生じさせると指摘している。
この日の攻撃は、ウクライナ全土にミサイル警報が発令される事態を引き起こした。ウクライナ空軍は、ミサイルがハルキウ、オデーサ、その他8つの地域に向かって発射されているのを確認した。ハルキウでは、3箇所が攻撃され、爆発音が複数回響いたが、幸いにも死傷者は報告されていない。
また、ウクライナの北西部に位置するルーツク市でも爆発音が聞かれ、エネルギーインフラ施設への攻撃が続いていることが示唆された。ルーツク市のイゴール・ポリシュチュク市長は、再度爆発音が聞こえたと報告しており、エネルギー施設に対する攻撃が続いている状況を伝えた。
これらの状況の中で、アメリカの次期大統領ドナルド・トランプ氏が、ウクライナ問題に関する新たな特使として退役軍人のキース・ケロッグ氏を任命したことが注目される。ケロッグ氏は、トランプ氏の側近であり、ウクライナとの戦争の終結に向けた外交努力を主導することが期待されている。トランプ氏は選挙活動の中で、ウクライナとロシアの間で速やかな停戦を仲介する意向を示しており、ケロッグ氏はアメリカがウクライナに提供する軍事支援を、ロシアとの和平交渉に向けた圧力の手段として活用することを提案している。
ケロッグ氏は、今年発表した論文で、アメリカがウクライナに対する軍事支援を継続するには、ウクライナがロシアとの和平交渉に参加する必要があると強調している。彼は、ウクライナが交渉を拒否し続けるならば、戦闘によるさらなる犠牲者が出ることを容認するべきだとし、ウクライナの選択肢は「交渉か、さらに多くの犠牲か」と警告した。
また、アメリカ政府はウクライナに対して徴兵年齢を18歳に引き下げるように求めており、ウクライナは兵力不足に直面していると報じられている。ウクライナの軍は、ロシア軍の増強に対抗するために兵力を増強する必要があり、アメリカはそのためにウクライナの兵士をさらに訓練・動員する必要があると強調している。アメリカ政府の高官は、ウクライナの現状について「ウクライナは戦場での損失を補いながら、ロシア軍の成長に追いつくための兵力を十分に確保できていない」と述べており、160,000人程度の新たな兵士が必要であるとした。
このように、ウクライナは現在、厳しい軍事的、経済的、そしてエネルギー的な困難に直面しており、ロシアとの戦争の長期化が深刻な影響を及ぼしている。
【要点】
・ロシアのミサイル攻撃(2024年11月28日): ウクライナのエネルギーインフラが大規模に攻撃され、100万人以上が停電。
・停電の状況
⇨ 西武のリヴィウ地域で52万3000人が停電。
⇨ リヴネ地域で28万人、ヴォルィン地域で21万5000人が電力供給停止。
・気温の影響: 気温が氷点下近くまで下がり、寒さが生活に影響。
・国連の警告: ロシアのエネルギーインフラ攻撃により、2024年冬が「戦争開始以来最も厳しい冬」となる可能性があると国連のローズマリー・ディカルロ氏が警告。
・ウクライナ全土で警報発令: ミサイルがハルキウやオデーサなどの地域に向かって発射され、空襲警報が発令された。
・ケロッグ氏の任命: アメリカ次期大統領トランプ氏がウクライナ特使として退役軍人のキース・ケロッグ氏を任命。ウクライナとの和平交渉を推進する意図。
・ウクライナの兵力不足: アメリカはウクライナに徴兵年齢の引き下げ(18歳)を求め、ウクライナは兵力不足に直面。160,000人の新兵が必要とされている。
・アメリカの支援: アメリカの軍事支援はウクライナがロシアとの和平交渉に参加することを条件に継続される見込み。
【引用・参照・底本】
At least one million people without power in Ukraine after ‘massive’ Russian attack FRANCE24 2024.11.28
https://www.france24.com/en/middle-east/20241128-syrian-rebels-seize-territory-in-large-scale-offensive-against-army-in-aleppo-province?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020241128&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
マクロン大統領:西アフリカ兵殺害を虐殺と認めた ― 2024年11月29日 17:59
【概要】
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、1944年にセネガルの漁村ティアロワで発生した西アフリカ兵士に対するフランス軍による殺害を「虐殺」と認めた。マクロン大統領がこの事実を公式に認めたのは初めてであり、この声明は1944年12月1日に発生した事件の80周年を前に、セネガル政府に宛てた書簡で行われた。
1940年のフランス戦役でフランス軍とともに戦った西アフリカ兵士たちが、1944年12月1日にフランス軍によって殺害された。この事件の背景には、給料未払いを巡る争いがあったとされる。フランス軍は、この兵士たちを反乱を起こしたとして扱い、無抵抗の状態で多数を殺害したと考えられている。犠牲者の数は35人から400人の間とされる。
この事件は、西アフリカ出身の兵士たちがフランス軍に所属していた「ティラユール・セネガレ」と呼ばれる部隊のメンバーであり、フランス側は彼らを反乱軍として処罰したと説明している。歴史家たちは、給料の未払いを巡る争いが殺害の直接的な引き金となったと見ている。
マクロン大統領は書簡の中で、この事件を「虐殺」と認め、セネガル政府が設立した事実確認委員会の進展を追跡すると述べた。セネガルのバシル・ディオマイエ・ファイ大統領は、この認識を歓迎し、フランスとセネガルの協力によって「ティアロワの痛ましい事件」に関する真実が明らかになることを期待していると語った。
また、この出来事は、フランスの影響力が西アフリカ地域で低下しつつある中で起こった。フランスは依然としてセネガルに約350人の軍隊を駐留させているが、ファイ大統領はセネガルに外国軍が駐留することについては否定的な考えを示している。彼は「歴史的にフランスはここで奴隷制度と植民地支配を行ってきた」とし、他国がフランスに軍事基地を設置することについては、フランスの立場を考えると理解しがたいものだと述べた。
【詳細】
エマニュエル・マクロン大統領が1944年のティアロワ事件に関するフランス軍の行動を初めて「虐殺」と認めた背景には、長年にわたるセネガルや他の西アフリカ諸国の歴史的な遺恨と、フランスとこれらの国々との関係が影響している。この事件は、第二次世界大戦中にフランス軍の一部として戦った西アフリカ出身の兵士たちが、フランス軍に殺害されたという衝撃的な出来事である。
事件の概要
1944年12月1日、セネガルの首都ダカール近郊にあるティアロワという漁村で、フランス軍は西アフリカからの兵士たち、主にセネガル兵を殺害した。この兵士たちは、第二次世界大戦のフランスの戦線においてフランス軍とともに戦った「ティラユール・セネガレ」(セネガル兵)という部隊の一員であった。彼らはフランス植民地軍として、フランス本国に対する忠誠を示し、フランスの戦争努力に参加していたが、その報酬である給料が未払いの状態であった。
給料未払いと軍の反応
兵士たちの給料が未払いであったことに対する不満は、次第に高まり、兵士たちの間で抗議の動きが強まったとされる。この状況に対し、フランス軍は反乱として捉え、12月1日にティアロワで兵士たちを強制的に集め、彼らのほとんどは無抵抗の状態で殺害された。この虐殺の正確な犠牲者数については諸説あるが、推定で35人から400人が命を落としたとされる。
フランス軍の対応
フランス側は当初、この出来事を「反乱の鎮圧」として説明し、ティラユール・セネガレの兵士たちを反乱者として処理したとされている。しかし、歴史的には、給料未払いが引き金となった単なる争いではなく、植民地軍に対する扱いやその後の対応が大きな原因であったと見なされている。
マクロン大統領の認識
マクロン大統領の今回の発言は、フランス政府がその歴史的過ちを認める重要な一歩となる。彼は、セネガル政府に宛てた書簡の中で、この出来事を「虐殺」と明言したことに加え、真実を明らかにするための取り組みを支持すると表明した。また、セネガル政府が設立した「事実回復委員会」の進展を追跡するとともに、その調査に協力する意思を示している。委員会の指導者であるママドゥ・ディウフ教授は国際的に認められた歴史家であり、その調査結果に対する期待が高まっている。
セネガル側の反応
セネガルのバシル・ディオマイエ・ファイ大統領は、マクロン大統領の認識を歓迎し、この事件に関する「真実の扉を開く」ことを期待していると述べた。ファイ大統領は、フランスがその過去を完全に認識し、誠実に対応することが重要であると強調し、セネガルの人々が長年求めてきたこの事件の解決に向けての新たな希望を示した。
フランスの影響力の低下
この出来事が注目される背景には、現在のフランスと西アフリカ諸国の関係がある。フランスはかつて多くのアフリカ諸国を植民地支配しており、その影響力は長年にわたって続いていた。しかし、近年ではフランスの影響力が低下し、特にセネガルをはじめとする旧フランス植民地国において、経済的・軍事的な自立を求める動きが強まっている。セネガルの最近の選挙結果では、現政権が経済的な独立を求める姿勢を強調しており、フランスの企業や軍事的な影響を排除する意図があることが伺える。
セネガルにおけるフランス軍の存在
現在もフランスはセネガルに約350人の兵士を駐留させているが、ファイ大統領はフランス軍の駐留について否定的な見解を示している。彼は、「フランスは歴史的にセネガルを奴隷制と植民地支配によって支配してきた」とし、他国がフランスに軍事基地を設置することを考えると理解しがたいと述べ、フランス軍の駐留に対するセネガルの立場を強調した。
結論
マクロン大統領がティアロワ事件を「虐殺」と認めたことは、フランスとセネガル、さらには西アフリカ諸国との関係において重要な意味を持つ。セネガル側の期待とともに、この認識がどのように現実の変化を引き起こすかが今後の焦点となる。また、この事件の真実が明らかにされることで、フランスとアフリカ諸国との歴史的な和解に向けた一歩となる可能性がある。
【要点】
1.事件の概要
・1944年12月1日、セネガルのティアロワでフランス軍が西アフリカ兵士(ティラユール・セネガレ)を殺害。
・兵士たちは第二次世界大戦中にフランス軍と共に戦ったが、給料未払いを巡る不満が高まり、最終的に殺害された。
・フランス軍は反乱者として扱い、無抵抗の兵士を殺害した。犠牲者数は35人から400人の間とされる。
2.フランス軍の説明
・フランス側は当初、兵士たちの反乱を理由に事件を「反乱の鎮圧」と説明。
事件の原因は給料未払いの争いとされ、フランス軍の過剰反応が問題視されている。
3.マクロン大統領の認識
・2024年11月、マクロン大統領は事件を「虐殺」と認める。
・セネガル政府の「事実回復委員会」への支援と調査の進捗確認を約束。
4.セネガル側の反応
・セネガルのバシル・ディオマイエ・ファイ大統領はマクロンの認識を歓迎。
・事件に関する「真実の扉を開く」ことを期待し、フランスの誠実な対応を求める。
5.フランスと西アフリカの関係
・フランスの影響力が低下し、セネガルなどの西アフリカ諸国は経済的・軍事的な自立を目指す。
・セネガルの選挙で経済的独立を強調する政権が誕生。
6.フランス軍の駐留問題:
・フランスは現在もセネガルに約350人の兵士を駐留させているが、ファイ大統領は駐留に否定的な見解を示す。
・セネガルの歴史的背景(奴隷制・植民地支配)を考慮し、外国軍駐留に反対の立場を取る。
7.今後の影響
・マクロン大統領の認識が、フランスとセネガル、さらには西アフリカ諸国との歴史的和解の一歩となる可能性がある。
・ティアロワ事件に関する真実が明らかにされることで、両国の関係における新たな理解が生まれることが期待される。
【引用・参照・底本】
Macron acknowledges 1944 ‘massacre’ of West African troops by French army FRANCE24 2024.11.29
https://www.france24.com/en/africa/20241129-macron-acknowledges-1944-massacre-of-west-african-troops-by-french-army?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020241129&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、1944年にセネガルの漁村ティアロワで発生した西アフリカ兵士に対するフランス軍による殺害を「虐殺」と認めた。マクロン大統領がこの事実を公式に認めたのは初めてであり、この声明は1944年12月1日に発生した事件の80周年を前に、セネガル政府に宛てた書簡で行われた。
1940年のフランス戦役でフランス軍とともに戦った西アフリカ兵士たちが、1944年12月1日にフランス軍によって殺害された。この事件の背景には、給料未払いを巡る争いがあったとされる。フランス軍は、この兵士たちを反乱を起こしたとして扱い、無抵抗の状態で多数を殺害したと考えられている。犠牲者の数は35人から400人の間とされる。
この事件は、西アフリカ出身の兵士たちがフランス軍に所属していた「ティラユール・セネガレ」と呼ばれる部隊のメンバーであり、フランス側は彼らを反乱軍として処罰したと説明している。歴史家たちは、給料の未払いを巡る争いが殺害の直接的な引き金となったと見ている。
マクロン大統領は書簡の中で、この事件を「虐殺」と認め、セネガル政府が設立した事実確認委員会の進展を追跡すると述べた。セネガルのバシル・ディオマイエ・ファイ大統領は、この認識を歓迎し、フランスとセネガルの協力によって「ティアロワの痛ましい事件」に関する真実が明らかになることを期待していると語った。
また、この出来事は、フランスの影響力が西アフリカ地域で低下しつつある中で起こった。フランスは依然としてセネガルに約350人の軍隊を駐留させているが、ファイ大統領はセネガルに外国軍が駐留することについては否定的な考えを示している。彼は「歴史的にフランスはここで奴隷制度と植民地支配を行ってきた」とし、他国がフランスに軍事基地を設置することについては、フランスの立場を考えると理解しがたいものだと述べた。
【詳細】
エマニュエル・マクロン大統領が1944年のティアロワ事件に関するフランス軍の行動を初めて「虐殺」と認めた背景には、長年にわたるセネガルや他の西アフリカ諸国の歴史的な遺恨と、フランスとこれらの国々との関係が影響している。この事件は、第二次世界大戦中にフランス軍の一部として戦った西アフリカ出身の兵士たちが、フランス軍に殺害されたという衝撃的な出来事である。
事件の概要
1944年12月1日、セネガルの首都ダカール近郊にあるティアロワという漁村で、フランス軍は西アフリカからの兵士たち、主にセネガル兵を殺害した。この兵士たちは、第二次世界大戦のフランスの戦線においてフランス軍とともに戦った「ティラユール・セネガレ」(セネガル兵)という部隊の一員であった。彼らはフランス植民地軍として、フランス本国に対する忠誠を示し、フランスの戦争努力に参加していたが、その報酬である給料が未払いの状態であった。
給料未払いと軍の反応
兵士たちの給料が未払いであったことに対する不満は、次第に高まり、兵士たちの間で抗議の動きが強まったとされる。この状況に対し、フランス軍は反乱として捉え、12月1日にティアロワで兵士たちを強制的に集め、彼らのほとんどは無抵抗の状態で殺害された。この虐殺の正確な犠牲者数については諸説あるが、推定で35人から400人が命を落としたとされる。
フランス軍の対応
フランス側は当初、この出来事を「反乱の鎮圧」として説明し、ティラユール・セネガレの兵士たちを反乱者として処理したとされている。しかし、歴史的には、給料未払いが引き金となった単なる争いではなく、植民地軍に対する扱いやその後の対応が大きな原因であったと見なされている。
マクロン大統領の認識
マクロン大統領の今回の発言は、フランス政府がその歴史的過ちを認める重要な一歩となる。彼は、セネガル政府に宛てた書簡の中で、この出来事を「虐殺」と明言したことに加え、真実を明らかにするための取り組みを支持すると表明した。また、セネガル政府が設立した「事実回復委員会」の進展を追跡するとともに、その調査に協力する意思を示している。委員会の指導者であるママドゥ・ディウフ教授は国際的に認められた歴史家であり、その調査結果に対する期待が高まっている。
セネガル側の反応
セネガルのバシル・ディオマイエ・ファイ大統領は、マクロン大統領の認識を歓迎し、この事件に関する「真実の扉を開く」ことを期待していると述べた。ファイ大統領は、フランスがその過去を完全に認識し、誠実に対応することが重要であると強調し、セネガルの人々が長年求めてきたこの事件の解決に向けての新たな希望を示した。
フランスの影響力の低下
この出来事が注目される背景には、現在のフランスと西アフリカ諸国の関係がある。フランスはかつて多くのアフリカ諸国を植民地支配しており、その影響力は長年にわたって続いていた。しかし、近年ではフランスの影響力が低下し、特にセネガルをはじめとする旧フランス植民地国において、経済的・軍事的な自立を求める動きが強まっている。セネガルの最近の選挙結果では、現政権が経済的な独立を求める姿勢を強調しており、フランスの企業や軍事的な影響を排除する意図があることが伺える。
セネガルにおけるフランス軍の存在
現在もフランスはセネガルに約350人の兵士を駐留させているが、ファイ大統領はフランス軍の駐留について否定的な見解を示している。彼は、「フランスは歴史的にセネガルを奴隷制と植民地支配によって支配してきた」とし、他国がフランスに軍事基地を設置することを考えると理解しがたいと述べ、フランス軍の駐留に対するセネガルの立場を強調した。
結論
マクロン大統領がティアロワ事件を「虐殺」と認めたことは、フランスとセネガル、さらには西アフリカ諸国との関係において重要な意味を持つ。セネガル側の期待とともに、この認識がどのように現実の変化を引き起こすかが今後の焦点となる。また、この事件の真実が明らかにされることで、フランスとアフリカ諸国との歴史的な和解に向けた一歩となる可能性がある。
【要点】
1.事件の概要
・1944年12月1日、セネガルのティアロワでフランス軍が西アフリカ兵士(ティラユール・セネガレ)を殺害。
・兵士たちは第二次世界大戦中にフランス軍と共に戦ったが、給料未払いを巡る不満が高まり、最終的に殺害された。
・フランス軍は反乱者として扱い、無抵抗の兵士を殺害した。犠牲者数は35人から400人の間とされる。
2.フランス軍の説明
・フランス側は当初、兵士たちの反乱を理由に事件を「反乱の鎮圧」と説明。
事件の原因は給料未払いの争いとされ、フランス軍の過剰反応が問題視されている。
3.マクロン大統領の認識
・2024年11月、マクロン大統領は事件を「虐殺」と認める。
・セネガル政府の「事実回復委員会」への支援と調査の進捗確認を約束。
4.セネガル側の反応
・セネガルのバシル・ディオマイエ・ファイ大統領はマクロンの認識を歓迎。
・事件に関する「真実の扉を開く」ことを期待し、フランスの誠実な対応を求める。
5.フランスと西アフリカの関係
・フランスの影響力が低下し、セネガルなどの西アフリカ諸国は経済的・軍事的な自立を目指す。
・セネガルの選挙で経済的独立を強調する政権が誕生。
6.フランス軍の駐留問題:
・フランスは現在もセネガルに約350人の兵士を駐留させているが、ファイ大統領は駐留に否定的な見解を示す。
・セネガルの歴史的背景(奴隷制・植民地支配)を考慮し、外国軍駐留に反対の立場を取る。
7.今後の影響
・マクロン大統領の認識が、フランスとセネガル、さらには西アフリカ諸国との歴史的和解の一歩となる可能性がある。
・ティアロワ事件に関する真実が明らかにされることで、両国の関係における新たな理解が生まれることが期待される。
【引用・参照・底本】
Macron acknowledges 1944 ‘massacre’ of West African troops by French army FRANCE24 2024.11.29
https://www.france24.com/en/africa/20241129-macron-acknowledges-1944-massacre-of-west-african-troops-by-french-army?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020241129&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
NATO:ウクライナに10万人規模の軍事介入を計画 ― 2024年11月29日 18:40
【概要】
ロシアの外務情報局(SVR)は、NATOがウクライナに10万人規模の軍事介入を計画していると警告している。この介入は、平和維持軍を名目として行われるとされ、その目的はウクライナでの戦争を凍結し、ロシアの攻撃を抑制するための「トリガー」として機能させることで、第三次世界大戦を引き起こさないようにすることにある。また、ウクライナの軍事産業基盤の再建も計画されており、これにはNATOの一部の加盟国が関与する。
SVRによれば、ポーランドはウクライナ西部を支配し、ルーマニアは黒海沿岸を管理する予定だという。イギリスはキエフと北部を担当し、ドイツはウクライナの中心部と東部を管理することになる。また、ドイツのライネメタルはウクライナの軍事産業基盤の再建において重要な役割を果たすとされ、専門家や高性能装備を派遣し、投資を行うと伝えられている。
さらに、NATOはウクライナ内に訓練センターを設置し、少なくとも100万人規模のウクライナ人を動員する計画もあるとされる。また、ウクライナの警察機能はウクライナのナショナリストによって担われ、SVRは彼らを第二次世界大戦時のソンダーコマンドに例えている。この点に関して、なぜ10万人規模のNATO兵力が必要とされるのかは疑問が残る。実際には、その数はトリガーや訓練の目的だけでは過剰であり、SVRの主張に誤りがある可能性もある。
このような動きは驚くべきことではなく、過去の分析でも言及されてきた内容である。バイデン大統領は、トランプ前大統領に先駆けて、アメリカにとって有利な形で「エスカレーションによるデエスカレーション」を進めているが、ロシアの新しい核ドクトリンやオレシュニクミサイルの初使用などは、NATOに対する抑止力として機能している。しかし、NATOのウクライナへの介入計画がどれほど実現可能であるかは不確かであり、トランプが権力を握ることで状況が変わる可能性もある。
最後に、SVRがNATOの訓練センター設置を警告したことで、このシナリオが現実味を帯びてきたことが示唆されている。ロシアがこれらの施設をターゲットにしなければ、NATOがウクライナに介入することは既成事実となる可能性があり、その場合、ロシアはウクライナの東部とロシアの新しい地域を軍事的に非武装化することを条件に、NATOの進出を受け入れることになるかもしれない。
【詳細】
ロシアの外務情報局(SVR)は、NATOがウクライナで10万人規模の軍事介入を計画していると警告している。この介入は、NATOがウクライナに平和維持軍を派遣し、ウクライナ戦争を「凍結」させることを目的としているという。SVRの主張によれば、NATOの介入は、ウクライナ国内での戦闘を一時的に停止させ、ロシアによるさらなる攻撃を抑制するための「トリガー」の役割を果たすとされ、結果として第三次世界大戦の引き金を防ぐことを意図している。この介入の目的には、ウクライナの軍事産業基盤(MIC)の再建も含まれ、NATOの加盟国はウクライナの軍事再建に積極的に関与することが計画されている。
具体的には、ポーランドがウクライナ西部を支配することになり、これはポーランドがかつて行った領土的な支配(戦間期)を再現する形となる。ルーマニアは黒海沿岸を管理し、これは第二次世界大戦中にルーマニアが占領した地域である「トランスニストリア州」を想定している。イギリスはキエフとウクライナ北部を支配し、ドイツはウクライナの中心部および東部を管理する計画だとされる。このように、NATO加盟国は地域ごとに分担し、ウクライナの再建に関わることが予定されている。
さらに、ドイツのライネメタル社がウクライナの軍事産業基盤の再建を担当することになるとされる。ライネメタル社は高性能な軍事装備を提供し、専門家を派遣し、ウクライナの軍事産業を再構築する責任を負うことになる。これにより、ウクライナは自国の防衛力を強化し、戦後の経済復興に向けた基盤を築くことが期待されている。
また、SVRによると、NATOはウクライナ内に訓練センターを設置し、ウクライナの兵士に対して新たな訓練を施すとされる。この訓練プログラムは、ウクライナの動員兵士を対象としており、最終的には100万人以上のウクライナ兵士が動員される可能性があるという。この訓練センターの設置は、ウクライナ国内の治安維持にも関与することになり、そのためにはウクライナのナショナリスト(特に極端なナショナリズムを持つグループ)が警察的役割を果たすとされる。この点で、SVRはウクライナのナショナリストを第二次世界大戦中のソンダーコマンドに例えており、これが新たな問題を引き起こす可能性も指摘している。
ここでの最大の疑問は、なぜ10万人ものNATO兵力がウクライナに派遣される必要があるのかという点である。NATOが計画している介入が平和維持軍であったとしても、その兵力規模が非常に大きいとされ、SVRはその理由を明確にしていない。NATO兵力は「トリガー」や訓練の目的に過ぎないとされるが、10万人という規模がどのようにして必要になるのかは疑問が残る。このため、SVRの発表における数字が過剰である可能性も考えられる。
この介入計画は、ロシアにとって驚きではなく、NATOのウクライナへの関与が拡大していることに関しては、過去に多くの分析で予測されていた。特に、バイデン大統領は、アメリカが有利な形で戦争を「エスカレーションによってデエスカレートさせる」戦略を取っているという点が挙げられる。これはロシアに対する抑止力を強化するものであり、ロシアの新たな核ドクトリンやオレシュニクミサイルの使用が、その目的の一環として位置づけられている。しかし、このようなNATOの介入計画がどれほど現実的かは不透明であり、トランプ前大統領の登場によって状況が変わる可能性もある。
SVRが警告したように、NATOがウクライナに訓練センターを設置し続けるなら、ロシアはこれらの施設を標的にする可能性がある。もしロシアがこれらの施設を攻撃しない場合、NATOの介入は既成事実として受け入れざるを得なくなるだろう。その場合、ロシアはウクライナの東部とロシア領の新たな地域を非武装化することを条件に、NATOの進出を認める可能性がある。このように、現在の状況では、NATOの介入に対するロシアの対応が非常に重要な要素となる。
【要点】
1.NATOの100,000人規模の介入計画:
・ロシアの外務情報局(SVR)は、NATOがウクライナに10万人規模の軍事介入を計画していると警告している。
・介入は「平和維持軍」を名目として行われるとされ、NATO軍はロシアの攻撃を抑止するための「トリガー」として機能し、第三次世界大戦を回避する目的がある。
・介入後、ウクライナの軍事産業基盤(MIC)の再建も行われる。
2.NATO加盟国の役割分担
・ポーランド: ウクライナ西部の支配を担当(歴史的にインターワー時代にウクライナ西部を支配していた)。
・ルーマニア: 黒海沿岸の管理(第二次世界大戦中にルーマニアが占領した地域を再び支配)。
・イギリス: キエフとウクライナ北部の管理。
・ドイツ: ウクライナ中央部と東部の管理。ドイツのライネメタル(Rheinmetall)がウクライナの軍事産業再建を主導し、専門家派遣や高性能装備の提供を行う。
3.訓練センターの設置:
・NATOはウクライナ内に訓練センターを設置する計画を進めており、これによりウクライナの動員兵力が少なくとも100万人規模に達する可能性がある。
・訓練の目的は、ウクライナ軍の能力向上と、NATOによる支援の強化を図ることにある。
4.警察機能の担当
・ウクライナ内での警察機能は、ウクライナのナショナリスト(民族主義者)によって担われる予定。
・SVRは、これらのナショナリストを第二次世界大戦の「ソンダーコマンド」と比較している。
5.NATO介入の規模と目的
・10万人規模のNATO兵力が必要とされる理由について疑問が投げかけられている。訓練や抑止目的にはその規模は過剰であり、計画に誤りがある可能性も指摘されている。
・そのため、NATOの介入が現実的であるかどうかは不確かであり、実際に介入が進行すれば、ロシアはその事実を受け入れざるを得ないかもしれない。
6.NATOの介入とロシアの反応
・もしNATOが介入を実行すれば、ロシアはそれを事実として受け入れるか、ウクライナ東部とロシアの新しい領土を非武装化する条件でNATOの進出を容認する可能性がある。
・ロシアは、NATOの介入を回避するために訓練センターをターゲットにするリスクを避ける可能性が高い。もし訓練センターが攻撃されれば、第三次世界大戦が勃発する恐れがある。
7.SVRの警告と政治的背景:
・SVRがこの介入計画を公表したことで、NATOの介入がもはやあり得ないシナリオではなくなったとされる。
・2024年12月21日までに、ルーマニアでのポピュリスト保守派の台頭がNATOの計画に影響を与える可能性がある。もしその人物が権力を握れば、NATOの介入が遅れる可能性がある。
・もしその人物が敗北すれば、NATOは介入を早めるかもしれない。
8.エスカレーションと交渉の可能性
・アメリカのバイデン政権は、ロシアの新しい核戦略やミサイル技術を背景に、NATOの介入を進める可能性がある。これに対して、ロシアは「エスカレーションによるデエスカレーション」を選び、NATOとの交渉を模索する可能性もある。
・具体的には、ウクライナの東部とロシアの新たな地域を非武装化することを条件に、NATOの進出を許容する選択肢が考えられる。
【引用・参照・底本】
Russia’s Foreign Intelligence Service Warned About A 100k-Strong NATO Intervention In Ukraine Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.29
https://korybko.substack.com/p/russias-foreign-intelligence-service?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152313365&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ロシアの外務情報局(SVR)は、NATOがウクライナに10万人規模の軍事介入を計画していると警告している。この介入は、平和維持軍を名目として行われるとされ、その目的はウクライナでの戦争を凍結し、ロシアの攻撃を抑制するための「トリガー」として機能させることで、第三次世界大戦を引き起こさないようにすることにある。また、ウクライナの軍事産業基盤の再建も計画されており、これにはNATOの一部の加盟国が関与する。
SVRによれば、ポーランドはウクライナ西部を支配し、ルーマニアは黒海沿岸を管理する予定だという。イギリスはキエフと北部を担当し、ドイツはウクライナの中心部と東部を管理することになる。また、ドイツのライネメタルはウクライナの軍事産業基盤の再建において重要な役割を果たすとされ、専門家や高性能装備を派遣し、投資を行うと伝えられている。
さらに、NATOはウクライナ内に訓練センターを設置し、少なくとも100万人規模のウクライナ人を動員する計画もあるとされる。また、ウクライナの警察機能はウクライナのナショナリストによって担われ、SVRは彼らを第二次世界大戦時のソンダーコマンドに例えている。この点に関して、なぜ10万人規模のNATO兵力が必要とされるのかは疑問が残る。実際には、その数はトリガーや訓練の目的だけでは過剰であり、SVRの主張に誤りがある可能性もある。
このような動きは驚くべきことではなく、過去の分析でも言及されてきた内容である。バイデン大統領は、トランプ前大統領に先駆けて、アメリカにとって有利な形で「エスカレーションによるデエスカレーション」を進めているが、ロシアの新しい核ドクトリンやオレシュニクミサイルの初使用などは、NATOに対する抑止力として機能している。しかし、NATOのウクライナへの介入計画がどれほど実現可能であるかは不確かであり、トランプが権力を握ることで状況が変わる可能性もある。
最後に、SVRがNATOの訓練センター設置を警告したことで、このシナリオが現実味を帯びてきたことが示唆されている。ロシアがこれらの施設をターゲットにしなければ、NATOがウクライナに介入することは既成事実となる可能性があり、その場合、ロシアはウクライナの東部とロシアの新しい地域を軍事的に非武装化することを条件に、NATOの進出を受け入れることになるかもしれない。
【詳細】
ロシアの外務情報局(SVR)は、NATOがウクライナで10万人規模の軍事介入を計画していると警告している。この介入は、NATOがウクライナに平和維持軍を派遣し、ウクライナ戦争を「凍結」させることを目的としているという。SVRの主張によれば、NATOの介入は、ウクライナ国内での戦闘を一時的に停止させ、ロシアによるさらなる攻撃を抑制するための「トリガー」の役割を果たすとされ、結果として第三次世界大戦の引き金を防ぐことを意図している。この介入の目的には、ウクライナの軍事産業基盤(MIC)の再建も含まれ、NATOの加盟国はウクライナの軍事再建に積極的に関与することが計画されている。
具体的には、ポーランドがウクライナ西部を支配することになり、これはポーランドがかつて行った領土的な支配(戦間期)を再現する形となる。ルーマニアは黒海沿岸を管理し、これは第二次世界大戦中にルーマニアが占領した地域である「トランスニストリア州」を想定している。イギリスはキエフとウクライナ北部を支配し、ドイツはウクライナの中心部および東部を管理する計画だとされる。このように、NATO加盟国は地域ごとに分担し、ウクライナの再建に関わることが予定されている。
さらに、ドイツのライネメタル社がウクライナの軍事産業基盤の再建を担当することになるとされる。ライネメタル社は高性能な軍事装備を提供し、専門家を派遣し、ウクライナの軍事産業を再構築する責任を負うことになる。これにより、ウクライナは自国の防衛力を強化し、戦後の経済復興に向けた基盤を築くことが期待されている。
また、SVRによると、NATOはウクライナ内に訓練センターを設置し、ウクライナの兵士に対して新たな訓練を施すとされる。この訓練プログラムは、ウクライナの動員兵士を対象としており、最終的には100万人以上のウクライナ兵士が動員される可能性があるという。この訓練センターの設置は、ウクライナ国内の治安維持にも関与することになり、そのためにはウクライナのナショナリスト(特に極端なナショナリズムを持つグループ)が警察的役割を果たすとされる。この点で、SVRはウクライナのナショナリストを第二次世界大戦中のソンダーコマンドに例えており、これが新たな問題を引き起こす可能性も指摘している。
ここでの最大の疑問は、なぜ10万人ものNATO兵力がウクライナに派遣される必要があるのかという点である。NATOが計画している介入が平和維持軍であったとしても、その兵力規模が非常に大きいとされ、SVRはその理由を明確にしていない。NATO兵力は「トリガー」や訓練の目的に過ぎないとされるが、10万人という規模がどのようにして必要になるのかは疑問が残る。このため、SVRの発表における数字が過剰である可能性も考えられる。
この介入計画は、ロシアにとって驚きではなく、NATOのウクライナへの関与が拡大していることに関しては、過去に多くの分析で予測されていた。特に、バイデン大統領は、アメリカが有利な形で戦争を「エスカレーションによってデエスカレートさせる」戦略を取っているという点が挙げられる。これはロシアに対する抑止力を強化するものであり、ロシアの新たな核ドクトリンやオレシュニクミサイルの使用が、その目的の一環として位置づけられている。しかし、このようなNATOの介入計画がどれほど現実的かは不透明であり、トランプ前大統領の登場によって状況が変わる可能性もある。
SVRが警告したように、NATOがウクライナに訓練センターを設置し続けるなら、ロシアはこれらの施設を標的にする可能性がある。もしロシアがこれらの施設を攻撃しない場合、NATOの介入は既成事実として受け入れざるを得なくなるだろう。その場合、ロシアはウクライナの東部とロシア領の新たな地域を非武装化することを条件に、NATOの進出を認める可能性がある。このように、現在の状況では、NATOの介入に対するロシアの対応が非常に重要な要素となる。
【要点】
1.NATOの100,000人規模の介入計画:
・ロシアの外務情報局(SVR)は、NATOがウクライナに10万人規模の軍事介入を計画していると警告している。
・介入は「平和維持軍」を名目として行われるとされ、NATO軍はロシアの攻撃を抑止するための「トリガー」として機能し、第三次世界大戦を回避する目的がある。
・介入後、ウクライナの軍事産業基盤(MIC)の再建も行われる。
2.NATO加盟国の役割分担
・ポーランド: ウクライナ西部の支配を担当(歴史的にインターワー時代にウクライナ西部を支配していた)。
・ルーマニア: 黒海沿岸の管理(第二次世界大戦中にルーマニアが占領した地域を再び支配)。
・イギリス: キエフとウクライナ北部の管理。
・ドイツ: ウクライナ中央部と東部の管理。ドイツのライネメタル(Rheinmetall)がウクライナの軍事産業再建を主導し、専門家派遣や高性能装備の提供を行う。
3.訓練センターの設置:
・NATOはウクライナ内に訓練センターを設置する計画を進めており、これによりウクライナの動員兵力が少なくとも100万人規模に達する可能性がある。
・訓練の目的は、ウクライナ軍の能力向上と、NATOによる支援の強化を図ることにある。
4.警察機能の担当
・ウクライナ内での警察機能は、ウクライナのナショナリスト(民族主義者)によって担われる予定。
・SVRは、これらのナショナリストを第二次世界大戦の「ソンダーコマンド」と比較している。
5.NATO介入の規模と目的
・10万人規模のNATO兵力が必要とされる理由について疑問が投げかけられている。訓練や抑止目的にはその規模は過剰であり、計画に誤りがある可能性も指摘されている。
・そのため、NATOの介入が現実的であるかどうかは不確かであり、実際に介入が進行すれば、ロシアはその事実を受け入れざるを得ないかもしれない。
6.NATOの介入とロシアの反応
・もしNATOが介入を実行すれば、ロシアはそれを事実として受け入れるか、ウクライナ東部とロシアの新しい領土を非武装化する条件でNATOの進出を容認する可能性がある。
・ロシアは、NATOの介入を回避するために訓練センターをターゲットにするリスクを避ける可能性が高い。もし訓練センターが攻撃されれば、第三次世界大戦が勃発する恐れがある。
7.SVRの警告と政治的背景:
・SVRがこの介入計画を公表したことで、NATOの介入がもはやあり得ないシナリオではなくなったとされる。
・2024年12月21日までに、ルーマニアでのポピュリスト保守派の台頭がNATOの計画に影響を与える可能性がある。もしその人物が権力を握れば、NATOの介入が遅れる可能性がある。
・もしその人物が敗北すれば、NATOは介入を早めるかもしれない。
8.エスカレーションと交渉の可能性
・アメリカのバイデン政権は、ロシアの新しい核戦略やミサイル技術を背景に、NATOの介入を進める可能性がある。これに対して、ロシアは「エスカレーションによるデエスカレーション」を選び、NATOとの交渉を模索する可能性もある。
・具体的には、ウクライナの東部とロシアの新たな地域を非武装化することを条件に、NATOの進出を許容する選択肢が考えられる。
【引用・参照・底本】
Russia’s Foreign Intelligence Service Warned About A 100k-Strong NATO Intervention In Ukraine Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.29
https://korybko.substack.com/p/russias-foreign-intelligence-service?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152313365&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email