実質賃金は4カ月連続でマイナス ― 2025年01月09日 18:08
【概要】
厚生労働省が2025年1月9日に発表した2024年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所対象)によると、実質賃金は前年同月比で0.3%減少した。これは名目賃金から物価変動の影響を除いたものであり、物価上昇が賃金の伸びを上回った結果である。実質賃金は4カ月連続でマイナスとなった。
名目賃金を示す現金給与総額は30万5832円で前年同月比3.0%増加した。しかし、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)の伸び率が3.4%と上回ったため、物価上昇が実質賃金に影響を与えた。特に11月はコメや野菜などの食品価格の上昇が顕著であり、さらに政府の電気・ガス代補助が縮小したことが影響した。
実質賃金は2022年4月以降、夏季賞与の効果が見られた2024年6月と7月を除き、減少傾向が続いている。
現金給与総額の内訳として、基本給を中心とする所定内給与は前年同月比2.7%増加し、これは32年ぶりの高い伸び率である。企業の賃上げや最低賃金の引き上げが寄与しているとみられる。また、一部の企業では冬季賞与の支払いが始まったことが影響し、「特別に支払われた給与」は7.9%増加した。
労働時間に関しては、総実労働時間が前年同月比0.2%減の140.4時間となった。働き方別の現金給与総額では、正社員を中心とするフルタイム労働者が3.0%増の39万2121円、パートタイム労働者が4.4%増の11万2109円であった。パートタイム労働者の所定内給与を時給換算した場合、前年同月比4.7%増の1371円となった。
厚生労働省の担当者は、物価の動向については見通しが困難であるとした一方で、賃金の増加は着実であると評価し、賃上げを継続する環境を整備する必要があると述べている。
【詳細】
2024年11月の毎月勤労統計調査(速報)では、名目賃金や物価の変動が実質賃金に与えた影響、労働時間、賃金構成の詳細が示されている。この調査の対象は従業員5人以上の事業所であり、日本国内の労働市場や賃金の実態を反映したものである。
実質賃金の動向
実質賃金は前年同月比で0.3%減少した。これは、物価変動を反映した消費者物価指数の伸び率(3.4%)が、名目賃金の増加率(3.0%)を上回ったことによるものである。実質賃金は2022年4月以降、例外的に夏季賞与の押し上げ効果が見られた2024年6月と7月を除き、連続して減少している。この背景には、食品価格やエネルギーコストの上昇がある。特に2024年11月は、コメや野菜といった必需品の価格が大きく上昇し、さらに政府の電気・ガス代補助が縮小されたことが家計に負担を与えた。
名目賃金の構成
名目賃金を示す現金給与総額は、前年同月比3.0%増の30万5832円であった。このうち基本給を中心とする「所定内給与」は2.7%増加し、1980年代以来となる高い伸び率を記録した。これは企業による賃上げや、最低賃金の全国的な引き上げが反映された結果である。さらに、冬季賞与の支払いが始まった企業が多く、「特別に支払われた給与」は前年同月比で7.9%増加した。
労働時間と賃金の関係
総実労働時間は140.4時間で、前年同月比0.2%短縮した。これは労働時間の短縮や働き方改革の進展が一因とみられる。正社員を中心とするフルタイム労働者の現金給与総額は39万2121円で、前年同月比3.0%増加した。一方、パートタイム労働者の現金給与総額は11万2109円で、同4.4%増加した。パートタイム労働者の所定内給与を時給換算した場合、前年同月比4.7%増の1371円となり、非正規雇用者の賃金改善も一定程度進んでいることが分かる。
物価上昇と家計への影響
2024年11月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比3.4%の伸びを示した。特に食品の価格上昇が家計の購買力に影響を与えた。コメや野菜の価格は天候や輸送コストの影響を受けて高騰し、これが消費者の負担を増大させた。加えて、電気料金やガス料金については、政府の補助金が縮小されたため、家庭のエネルギー支出も増加した。
厚生労働省の見解
厚生労働省は、物価動向が不確定であることを認めつつ、名目賃金の増加が継続していることを評価している。同省の担当者は、企業が賃上げを維持できるような環境整備が重要であると指摘している。具体的には、賃金の底上げを支える政策や、物価の安定に向けた経済施策が求められるとしている。
総合的な評価
現金給与総額や所定内給与は増加しているものの、物価上昇のペースが速いため、実質賃金の減少が続いている。この状況は、物価と賃金のバランスが労働者の実質的な購買力にどのように影響を及ぼすかを示す重要な指標である。特に食品やエネルギーの価格変動が家計に与える影響を軽減するため、政策的な対応が必要とされている。
【要点】
1.実質賃金の減少
・2024年11月の実質賃金は前年同月比0.3%減少。
・消費者物価指数(3.4%)の伸びが名目賃金(3.0%)の伸びを上回ったため、4カ月連続でマイナスとなった。
・コメや野菜の価格上昇や、政府による電気・ガス代補助の縮小が影響。
2.名目賃金の動向
・現金給与総額は30万5832円で前年同月比3.0%増加。
・所定内給与(基本給)は前年同月比2.7%増加し、32年ぶりの高い伸び率。
・冬季賞与の影響で「特別に支払われた給与」は7.9%増加。
3.労働時間と雇用形態別の賃金
・総実労働時間は140.4時間で前年同月比0.2%減少。
・正社員(フルタイム)の現金給与総額は39万2121円で前年同月比3.0%増加。
・パートタイム労働者の現金給与総額は11万2109円で同4.4%増加。
・パートタイム労働者の所定内給与を時給換算すると、1371円で同4.7%増加。
4.物価上昇の影響
・消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比3.4%増加。
・特に食品(コメや野菜)の価格上昇が顕著。
・電気・ガス料金への政府補助縮小が家計負担を増加させた。
5.厚生労働省の見解
・賃金は着実に増加しているが、物価動向の不確定性が課題であると指摘。
・賃上げを継続できる環境整備が必要であるとの認識を示した。
6.総括
・賃金の増加ペースが物価上昇に追いつかず、家計の購買力が低下。
・食品やエネルギー価格の変動が特に影響を与えており、政策対応が求められている。
【引用・参照・底本】
実質賃金、4カ月連続マイナス コメ・野菜の値上がり響く 日本経済新聞 2025.01.09
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA086X80Y5A100C2000000/?n_cid=BMSR2P001_202501090830
厚生労働省が2025年1月9日に発表した2024年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所対象)によると、実質賃金は前年同月比で0.3%減少した。これは名目賃金から物価変動の影響を除いたものであり、物価上昇が賃金の伸びを上回った結果である。実質賃金は4カ月連続でマイナスとなった。
名目賃金を示す現金給与総額は30万5832円で前年同月比3.0%増加した。しかし、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)の伸び率が3.4%と上回ったため、物価上昇が実質賃金に影響を与えた。特に11月はコメや野菜などの食品価格の上昇が顕著であり、さらに政府の電気・ガス代補助が縮小したことが影響した。
実質賃金は2022年4月以降、夏季賞与の効果が見られた2024年6月と7月を除き、減少傾向が続いている。
現金給与総額の内訳として、基本給を中心とする所定内給与は前年同月比2.7%増加し、これは32年ぶりの高い伸び率である。企業の賃上げや最低賃金の引き上げが寄与しているとみられる。また、一部の企業では冬季賞与の支払いが始まったことが影響し、「特別に支払われた給与」は7.9%増加した。
労働時間に関しては、総実労働時間が前年同月比0.2%減の140.4時間となった。働き方別の現金給与総額では、正社員を中心とするフルタイム労働者が3.0%増の39万2121円、パートタイム労働者が4.4%増の11万2109円であった。パートタイム労働者の所定内給与を時給換算した場合、前年同月比4.7%増の1371円となった。
厚生労働省の担当者は、物価の動向については見通しが困難であるとした一方で、賃金の増加は着実であると評価し、賃上げを継続する環境を整備する必要があると述べている。
【詳細】
2024年11月の毎月勤労統計調査(速報)では、名目賃金や物価の変動が実質賃金に与えた影響、労働時間、賃金構成の詳細が示されている。この調査の対象は従業員5人以上の事業所であり、日本国内の労働市場や賃金の実態を反映したものである。
実質賃金の動向
実質賃金は前年同月比で0.3%減少した。これは、物価変動を反映した消費者物価指数の伸び率(3.4%)が、名目賃金の増加率(3.0%)を上回ったことによるものである。実質賃金は2022年4月以降、例外的に夏季賞与の押し上げ効果が見られた2024年6月と7月を除き、連続して減少している。この背景には、食品価格やエネルギーコストの上昇がある。特に2024年11月は、コメや野菜といった必需品の価格が大きく上昇し、さらに政府の電気・ガス代補助が縮小されたことが家計に負担を与えた。
名目賃金の構成
名目賃金を示す現金給与総額は、前年同月比3.0%増の30万5832円であった。このうち基本給を中心とする「所定内給与」は2.7%増加し、1980年代以来となる高い伸び率を記録した。これは企業による賃上げや、最低賃金の全国的な引き上げが反映された結果である。さらに、冬季賞与の支払いが始まった企業が多く、「特別に支払われた給与」は前年同月比で7.9%増加した。
労働時間と賃金の関係
総実労働時間は140.4時間で、前年同月比0.2%短縮した。これは労働時間の短縮や働き方改革の進展が一因とみられる。正社員を中心とするフルタイム労働者の現金給与総額は39万2121円で、前年同月比3.0%増加した。一方、パートタイム労働者の現金給与総額は11万2109円で、同4.4%増加した。パートタイム労働者の所定内給与を時給換算した場合、前年同月比4.7%増の1371円となり、非正規雇用者の賃金改善も一定程度進んでいることが分かる。
物価上昇と家計への影響
2024年11月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比3.4%の伸びを示した。特に食品の価格上昇が家計の購買力に影響を与えた。コメや野菜の価格は天候や輸送コストの影響を受けて高騰し、これが消費者の負担を増大させた。加えて、電気料金やガス料金については、政府の補助金が縮小されたため、家庭のエネルギー支出も増加した。
厚生労働省の見解
厚生労働省は、物価動向が不確定であることを認めつつ、名目賃金の増加が継続していることを評価している。同省の担当者は、企業が賃上げを維持できるような環境整備が重要であると指摘している。具体的には、賃金の底上げを支える政策や、物価の安定に向けた経済施策が求められるとしている。
総合的な評価
現金給与総額や所定内給与は増加しているものの、物価上昇のペースが速いため、実質賃金の減少が続いている。この状況は、物価と賃金のバランスが労働者の実質的な購買力にどのように影響を及ぼすかを示す重要な指標である。特に食品やエネルギーの価格変動が家計に与える影響を軽減するため、政策的な対応が必要とされている。
【要点】
1.実質賃金の減少
・2024年11月の実質賃金は前年同月比0.3%減少。
・消費者物価指数(3.4%)の伸びが名目賃金(3.0%)の伸びを上回ったため、4カ月連続でマイナスとなった。
・コメや野菜の価格上昇や、政府による電気・ガス代補助の縮小が影響。
2.名目賃金の動向
・現金給与総額は30万5832円で前年同月比3.0%増加。
・所定内給与(基本給)は前年同月比2.7%増加し、32年ぶりの高い伸び率。
・冬季賞与の影響で「特別に支払われた給与」は7.9%増加。
3.労働時間と雇用形態別の賃金
・総実労働時間は140.4時間で前年同月比0.2%減少。
・正社員(フルタイム)の現金給与総額は39万2121円で前年同月比3.0%増加。
・パートタイム労働者の現金給与総額は11万2109円で同4.4%増加。
・パートタイム労働者の所定内給与を時給換算すると、1371円で同4.7%増加。
4.物価上昇の影響
・消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比3.4%増加。
・特に食品(コメや野菜)の価格上昇が顕著。
・電気・ガス料金への政府補助縮小が家計負担を増加させた。
5.厚生労働省の見解
・賃金は着実に増加しているが、物価動向の不確定性が課題であると指摘。
・賃上げを継続できる環境整備が必要であるとの認識を示した。
6.総括
・賃金の増加ペースが物価上昇に追いつかず、家計の購買力が低下。
・食品やエネルギー価格の変動が特に影響を与えており、政策対応が求められている。
【引用・参照・底本】
実質賃金、4カ月連続マイナス コメ・野菜の値上がり響く 日本経済新聞 2025.01.09
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA086X80Y5A100C2000000/?n_cid=BMSR2P001_202501090830