米国の渡航禁止令の恣意性と無反省性の問題点2025年06月09日 19:48

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【概要】

 アメリカのドナルド・トランプ大統領による新たな渡航禁止令が2025年6月9日午前0時をもって発効した。この禁止令により、12か国の国民はアメリカへの入国が禁止されることとなった。対象国はアフガニスタン、ミャンマー、チャド、コンゴ共和国、赤道ギニア、エリトリア、ハイチ、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンである。

 この新たな大統領令は、主にアフリカおよび中東の国々の国民を対象としている。また、ブルンジ、キューバ、ラオス、シエラレオネ、トーゴ、トルクメニスタン、ベネズエラの国民に対しても、アメリカ国外にいるかつ有効なビザを持たない者に対し制限を強化している。

 既に発給されたビザについては取り消されないものの、例外的な条件を満たさない限り新規の申請は拒否される。このため、既存のビザを持つ旅行者は禁止令発効後もアメリカに入国できる見込みである。

 リリースによれば、ハイチ、キューバ、ベネズエラは近年アメリカへの移民が多い国である。ハイチでは貧困や飢餓、治安の悪化が続き、武装集団が首都ポルトープランスの約85%を支配している状況である。

 トランプ大統領は今回の禁止令の根拠として、対象国のパスポート管理や公共書類の審査体制に問題があること、また自国民の再受け入れを拒否する国があることを挙げている。特に、ビザの期限切れ後も滞在を続ける者(オーバーステイ)の数に注目し、2016年以降毎年作成されている国土安全保障省の報告書を参考にしている。

 禁止令は、コロラド州ボルダーで起きたテロ事件も背景として挙げられているが、事件の容疑者はエジプト出身であり、禁止対象国には含まれていない。

 この政策は難民支援団体などから批判されており、オックスファム・アメリカのアビー・マックスマン代表は、「国家安全保障を理由としたものではなく、アメリカで安全や機会を求めるコミュニティの分断と悪者扱いを目的としている」と述べている。

 アフガニスタンについては、米軍と密接に協力した者が対象となる特別移民ビザ保持者には例外が認められている。アフガニスタンは過去12か月間で約1万4,000人の難民を受け入れていたが、トランプ政権は大統領就任初日に難民受け入れを停止している。

【詳細】 

 ドナルド・トランプ米大統領が2025年6月9日午前0時に発効させた新たな渡航禁止令は、12か国の国民を対象としており、これらの国からの入国を禁止するものである。対象国は、アフガニスタン、ミャンマー、チャド、コンゴ共和国、赤道ギニア、エリトリア、ハイチ、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンの12か国である。

 この禁止令は、米国における移民政策を厳格化する一環として制定されたもので、対象となる国々は主にアフリカおよび中東地域に位置している。加えて、ブルンジ、キューバ、ラオス、シエラレオネ、トーゴ、トルクメニスタン、ベネズエラの7か国に対しても、米国外におり有効なビザを保持していない者への制限が強化された。

 新たな禁止令により、これら対象国の市民はアメリカへの入国が禁止されるが、既に発給されているビザは取り消されず、例外的な条件に該当する者は引き続き入国が認められると、アメリカの外交機関に対して指示が出されている。これにより、過去に発給されたビザを保持する渡航者は、禁止令発効後も入国できる可能性がある。

 対象国の中でも、特にハイチ、キューバ、ベネズエラは近年アメリカへの移民の主要な出身国である。ハイチでは、貧困と飢餓に加え、治安の悪化が深刻である。特に首都ポルトープランスでは、武装したギャング集団が市の約85%を支配しており、警察と国連支援の治安維持部隊が対応にあたっている状況である。このような背景から、多くのハイチ国民は暴力や貧困から逃れるためアメリカ行きを望んでいる。

 トランプ大統領は、新たな渡航禁止令の理由として、対象国の多くがパスポートやその他公的文書の発行において不備があること、そして自国民の再受け入れを拒否する傾向があることを挙げている。さらに、ビザの期限切れ後にアメリカに滞在し続ける「オーバーステイ」の割合が高い国を中心に指定している。これは、2016年以降国土安全保障省が毎年まとめているオーバーステイ率に基づくもので、今回の禁止令では12か国中8か国のオーバーステイ率が特に注目されている。

 また、今回の禁止令の発効を背景に、コロラド州ボルダーで発生したテロ事件が挙げられている。事件の容疑者はエジプト出身であり、エジプトは今回の禁止対象国には含まれていない。容疑者は観光ビザの期限を過ぎて滞在していたとされているが、これを理由に一部で渡航制限強化の必要性が強調された。

 この新たな渡航禁止令は、難民支援団体や人道支援組織から厳しい批判を受けている。国際的な非営利団体オックスファム・アメリカの代表は、「この政策は国家安全保障のためではなく、アメリカで安全と機会を求めるコミュニティを分断し、悪者扱いすることを目的としている」と述べている。

 アフガニスタンに関しては、例外措置が設けられている。特に、米国政府と密接に協力したアフガニスタン人に対して発給される特別移民ビザ(SIV)保持者はこの禁止令の対象外である。アフガニスタンはこれまで米国における難民受け入れの大きな拠点であり、2024年9月までの12か月間に約14,000人の難民を受け入れていた。しかし、トランプ政権は大統領就任初日に難民受け入れを停止している。

 この禁止令は、トランプ政権初期に出された、主にムスリム多数国の国民に対する渡航禁止令よりも、裁判所の判断に配慮しつつ慎重に作成されたものとされている。禁止令は主にビザ申請プロセスに焦点を当てており、過去の例よりも詳細かつ法的な整合性を意識した内容となっている。

【要点】 

 ・2025年6月9日午前0時、ドナルド・トランプ米大統領の新たな渡航禁止令が発効した。

 ・渡航禁止対象国は以下の12か国:アフガニスタン、ミャンマー、チャド、コンゴ共和国、赤道ギニア、エリトリア、ハイチ、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメン。

 ・これらの国の国民はアメリカへの入国が禁止される。

 ・ブルンジ、キューバ、ラオス、シエラレオネ、トーゴ、トルクメニスタン、ベネズエラの7か国については、アメリカ国外で有効なビザを持たない者への制限が強化された。

 ・既に発給されているビザは取り消されず、特定の例外条件を満たす場合は入国が認められる。

 ・対象国の中で特にハイチ、キューバ、ベネズエラは近年アメリカへの移民が多い国である。

 ・ハイチでは貧困、飢餓、暴力や武装ギャングによる治安悪化が深刻である。

 ・トランプ大統領は対象国のパスポートや公的書類の管理が不十分なことや、自国民の再受け入れを拒否する国があることを禁止の理由としている。

 ・また、ビザ期限切れ後にアメリカに滞在し続ける「オーバーステイ」の割合が高い国を中心に指定している。

 ・コロラド州ボルダーで発生したテロ事件が禁止令強化の背景として挙げられているが、容疑者の出身国エジプトは対象外である。

 ・難民支援団体などからは、この政策は国家安全保障のためではなく、移民コミュニティの分断を狙ったものと批判されている。

 ・アフガニスタンについては、米国と密接に協力した者に発給される特別移民ビザ保持者には例外が認められている。

 ・アフガニスタンは過去12か月間で約14,000人の難民を受け入れていたが、トランプ政権は就任初日に難民受け入れを停止している。

 ・新しい禁止令は、初期の主にムスリム多数国を対象とした渡航禁止令よりも裁判所の判断を考慮し、慎重に作成されている。

 ・禁止令はビザ申請プロセスに重点を置き、法的な整合性を意識した内容である。
 
【桃源寸評】🌍

 渡航禁止令の恣意性と無反省性の問題点

 1.公平性の欠如
 
 特定の国々を恣意的に選定し、包括的な根拠や透明な基準に基づかない制限を課すことは、不公平な扱いを生み、対象国やその国民に対する差別や偏見を助長する。

 2.国際協調の破壊
 
 国連や国際機関が目指す多国間協力や共通ルールの尊重を無視し、一国の独断で強硬策を推し進める行為は、国際秩序の信頼を損ねる。各国の協調と対話を阻害する結果となる。

 3.人道的配慮の欠如
 
 紛争や貧困、迫害から逃れようとする人々を一方的に拒絶することは、国際人権の理念に反する。多くの被害者にさらなる苦難をもたらし、人道危機の拡大につながる。

 4.安全保障上の実効性の疑問
 
 恣意的な渡航禁止が本当にテロや犯罪の抑止につながるかは疑わしく、むしろ反感や対立を激化させるリスクが高い。科学的・合理的な根拠に基づかない措置は効果的な安全保障対策とは言えない。

 このように、今回の渡航禁止令はその発出過程も内容も極めて問題が多く、国際社会の一員として責任ある行動とは到底言えない。国際法や多国間協調の精神に立ち返り、冷静かつ公平な対応が求められる。

 米国の介入・CIAの裏作戦・制裁がもたらした影響

 1.政治的不安定化の誘発
 
 米国の直接的または間接的な介入や秘密工作(CIAの裏作戦など)は、多くの対象国で政権転覆や内戦、混乱を引き起こし、結果として社会基盤や統治機構の崩壊を招いた。

 2.経済制裁による苦境の深化
 
 米国が科してきた経済制裁は、対象国の経済を著しく圧迫し、貧困や失業、インフラの破壊を助長した。これにより、国民生活が困窮し、移民や難民の増加につながっている。

 3.難民・移民の増加の根源
 
 紛争や経済苦境の多くは、こうした米国の政策が原因であるにもかかわらず、その結果として生じる移民や難民に対し、米国は渡航禁止や強硬措置で対応している。原因を解消せず、結果だけを問題視する姿勢は矛盾している。

 4.国際的責任の放棄
 
 自らが関与した問題に対して、対話や支援ではなく排除や制裁で応じることは、国際社会に対する責任放棄であり、持続可能な解決を遠ざける行為である。

 このように、米国の介入や制裁政策の結果として生じた問題に目を向けず、表面的な安全保障論だけで渡航禁止を行うことは、公正でも建設的でもない。根本原因の解決を図るべきであり、その責任の一端は米国自身にあることを忘れてはならない。

 国連本部を中国に移転するという案

 非常に大きな国際的な変化を伴う提案である。現在の国連本部はアメリカ・ニューヨークに所在しており、多くの国際政治や外交の中心地として機能している。中国に移転する場合、国際社会のパワーバランスや運営体制、外交のあり方に大きな影響を及ぼすことが考えられる。

 米国が国連本部を置くに相応しくない理由

 1.国際安全保障への貢献の実態不足
 
 米国は自国の利害を優先し、軍事介入や一方的な外交政策を繰り返してきた。これにより、多くの地域で不安定化を招き、世界の安全保障にマイナスの影響を与えている。国連の理念である「国際平和と安全の維持」に寄与しているとは言い難い。

 2.多国間主義の軽視と一国主義の強行
 
 国連は加盟国間の協調と対話を重視するが、米国は近年、国連の決議や国際ルールを無視して独自路線を突き進んだ。これにより国連の権威や機能を弱体化させ、世界秩序の基盤を揺るがせている。

 3.国連本部を置くことによる影響力の私物化
 
 国連本部が米国に所在することで、米国は国連の運営や政策決定に過剰な影響力を持っている。これは公平中立であるべき国連の運営に歪みを生じさせ、特定国家の利益が優先される状況を生み出している。

 中国に国連本部を移転することの適切性

 1.多国間主義の推進と国際協調への積極的姿勢

 中国は近年、国際機関や多国間フォーラムにおいて協調を重視する姿勢を示している。国連本部を中国に置くことで、多国間主義が強化され、加盟国の意見調整や共通の目標達成が促進されやすくなる。

 2.地政学的バランスの是正
 
 国連本部の所在が米国に集中することは、世界のパワーバランスを米国に偏らせている。中国への移転は、アジアの台頭を反映し、より多極的で公平な国際秩序の構築に資する。

 3.国際開発と経済支援の拡充
 
 中国は「一帯一路」構想などを通じて、開発途上国の経済成長支援に積極的である。国連本部が中国にあることで、開発支援や経済協力がより効率的に進められ、世界全体の安定と繁栄に寄与できる。

 以上の観点から、米国が国連本部を置くことは世界の安全や多国間協力に逆行するものであり、中国に移転することが国際社会の平和と安定、そして公平性を高めるために適していると言える。

 文化的側面も含め、米国に国連本部が置かれることが適切でない理由と、中国への移転がより相応しい理由を多角的に論じる

 1. 政治的・安全保障面

 ・米国は自国の国家利益を最優先し、軍事力を背景に一方的な政策を推進してきたため、世界の安定に逆行する行動が多く見られる。

 ・国連の多国間協力の理念と乖離し、国際ルールを軽視した姿勢は国連の公正性を損ねている。

 2. 地政学的バランスの問題

 ・米国に国連本部があることで国際秩序は一極的に米国中心となり、世界の多極化や地域バランスの公平な反映を阻害している。

 ・中国に移転することで、アジアをはじめとした新興勢力の存在感が高まり、多極化時代にふさわしい国際機関の拠点となる。

 3. 経済面

 ・米国の経済政策はしばしば保護主義や制裁措置を伴い、国際経済の安定にマイナスの影響を及ぼす場合がある。

 ・中国はグローバル経済の成長エンジンであり、「一帯一路」構想などを通じて開発途上国支援に積極的で、国連の開発目標達成に資する可能性が高い。

 4. 文化的・社会的側面

 ・米国は多民族国家であるものの、国際社会における文化的影響力はハリウッドや資本主義的価値観の押し付けと批判されることが多い。多様な文化・価値観の尊重に乏しいとの指摘がある。

 ・中国は数千年にわたる豊かな歴史文化を持ち、東洋哲学や調和を重んじる価値観を有している。国連本部を中国に置くことで、多様な文化や価値観の共存を促進し、単一文化の押し付けではない国際協調の姿勢を示すことができる。

 5. 言語とコミュニケーション

 ・現在の国連は英語を中心言語としているが、これは米国の影響力に起因する。英語圏以外の文化や言語圏の国々にとって不公平感が生じている。

 ・中国に移転することで、中国語(標準語・普通話)を含め多言語運営の強化が期待でき、言語多様性の尊重が進む可能性がある。

 6. 国際イメージと信頼性

 ・米国は内政・外交において矛盾や不安定な政策を繰り返しており、一貫した国際リーダーシップの信頼性に疑問符が付く。

 ・中国は国連加盟国数の多さや経済成長、国際協力への姿勢から、国際社会に安定的なイメージを与え、信頼性向上につながる可能性がある。

 以上の多方面からの視点に照らしても、米国が国連本部を置くことは現代の多様で複雑な国際社会の要請に合致せず、文化的価値観や言語の多様性、国際的な公平性を高めるためには、中国への移転がより適切であると言える。

【寸評 完】🌺

【引用・参照・底本】

Trump’s new travel ban comes into effect, citizens of 12 countries barred from US FRANCE24 2025.06.09
https://www.france24.com/en/americas/20250609-trump-s-new-travel-ban-comes-into-effect-citizens-of-12-countries-barred-from-us?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250609&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

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