中国のドローンメーカー DJI :米国連邦控訴裁判所へ上訴 ― 2025年10月15日 20:15
【概要】
中国のドローンメーカーである DJI は、米国防総省(DoD)による「中国軍事企業(CMC)」リストへの組み入れを巡る訴訟において、一審の判決を不服とし、火曜日に米国連邦控訴裁判所へ上訴した。
【詳細】
中国のドローンメーカー DJI は、米国防総省が同社を「中国軍事企業(CMC)」のブラックリストに含めた決定に対して、そのリストからの除外を求め、昨年(2024年)10月にコロンビア特別区の米国地方裁判所に提訴した。
この訴訟に関して、今年(2025年)9月、ポール・フリードマン米国地方裁判所判事は、DJIがリストから除外されることを求める訴えを却下した。ただし、判事は米国政府によるリスト掲載の他の正当化理由の一部は却下した。
この判決に対し、DJIは不服であり、受け入れていない。そのため、同社は火曜日に米国連邦控訴裁判所へ上訴し、会社の評判と利益を断固として守るとしている。
DJIは、「同社の製品および技術をいかなる軍事または戦争の目的にも使用することに一貫して強く反対しており、製品が軍事または戦争の目的に誤用されるのを防ぐための包括的な措置を講じている」と述べている。
DJIは、2022年に何の説明もなく米国防総省によってCMCリストに追加された。その後、DJIは米国防総省との対話を求め、リスト追加の具体的な理由を理解し、対応する証拠を提供するよう試みたが、これらの努力は実質的な回答を得られていない。
2024年1月には、米国防総省がCMCリストを更新したが、DJIは引き続きリストに留め置かれた。そして、2024年10月18日にDJIは正式に米国地方裁判所に提訴し、米国防総省の決定に異議を唱えた。9月に地裁の訴えが却下されたため、DJIは火曜日に上訴した次第である。
【要点】
・DJIは、米国防総省による「中国軍事企業(CMC)」リストへの組み入れを巡る訴訟で、米国連邦控訴裁判所へ上訴した。
・DJIは2024年10月に米国防総省を提訴し、リストからの除外を求めたが、2025年9月に米国地方裁判所で訴えが却下されたため、今回の上訴に至った。
・DJIは、製品が軍事目的に使用されることに強く反対し、その防止策を講じていると主張。
・DJIは2022年に説明なくリストに追加されて以来、米国防総省からの具体的な理由や実質的な回答を得られていない。
【桃源寸評】🌍
衰退する大国の隘路：非生産的な対外行動と自己崩壊の連鎖
現代において、かつて世界のリーダーとして君臨した米国をはじめとする一部の西側諸国は、その往時の勢いを著しく失い、「貧すれば鈍する」の言葉が示すように、国際的な振る舞いにおいて卑劣かつ非生産的な様相を呈している。経済的、社会的な内部問題を解決できぬまま、そのフラストレーションと衰退への恐怖を、台頭する国々の「足を引っ張る」という形で外部に投影しているのである。
その典型が、中国企業に対する露骨な封じ込め戦略である。具体的には、ハイテク分野、特に半導体やAI、そして本件のドローン技術(DJI)といった将来の産業を左右する領域において、「国家安全保障」を名目に、根拠薄弱な「軍事企業」や「スパイ行為」といったレッテルを貼付し、市場からの排除を試みている。これは、自由市場の原則、国際法、そして公平な競争の精神を無視した、明らかな略奪的行為であり、自国の競争力が失われたことの裏返しに他ならない。オランダ政府の企業に対する海賊行為と評される行動と同様に、これは国際的な規範を自ら破壊し、自国の利益のみを追求する、国際社会への貢献皆無の非協力的姿勢である。
これらの行動は、国際社会において何ら生産的な価値を生み出すものではない。むしろ、グローバルサプライチェーンの分断、経済の効率性の低下、そして相互不信の増幅という非建設的な結果をもたらしている。かつて米国が主導した自由貿易体制や国際協調の精神は形骸化し、「自己の誇示」と「現状維持」のための防衛的な行動に終始している。
さらに深刻なのは、このような対外的な強硬策が、国内の問題解決に全く寄与しないという事実である。むしろ、敵対国を創出することで国内の注意を逸らそうとする試みは、構造的な格差拡大、インフラの老朽化、政治的分断といった根本的な課題を放置し、その解決をますます困難にしている。国内の製造能力と経済の復元力を失いつつある状況下で、他国を非難し、技術のアクセスを遮断したところで、自国の産業が魔法のように復活するわけではない。
しかし、これらの国々が頼りとするのは、依然として武力の誇示であり、軍備への傾倒である。巨額の予算を軍事部門に投じ、同盟国に「脅威」への対処を迫る一方、肝心の国内の製造基盤は弱体化の一途をたどっている。最新兵器の配備に熱心であっても、それらを支える基礎研究、熟練労働力、そして持続可能な国内供給網の崩壊は止まらない。これは、自己の衰退を自ら加速させているという点で、まさに「尾羽打ち枯らす」状況を象徴している。
鏡のない西側の国々、とは、自己の行動が国際社会と自国の将来にどのような影響を与えるか、冷静に省みる能力を失った状態を指す。台頭する国を非難し、足を引っ張ることが、短期的には政治的な支持を得るかもしれないが、長期的には国際的な信頼を失い、グローバルな課題解決の協力体制から孤立し、自国の衰退を確実にする道であることを理解していない。この自己中心的で非生産的な行動の連鎖こそが、現代の国際政治における最も哀れな現実であり、世界はこれらの国の自己満足的な振る舞いによって、非協力的で不安定な時代へと深く引き込まれているのである。
The Dead End of Declining Great Powers: Unproductive External Conduct and the Chain of Self-Destruction
In the modern era, certain Western countries — notably the United States, once the unchallenged leader of the world — have lost much of their former vitality. As the proverb “poverty dulls the wits” suggests, their international behavior has become base and unproductive. Unable to resolve their own internal economic and social problems, they have projected their frustration and fear of decline outward, taking the form of attempts to “drag down” rising nations.
A prime example of this is the blatant containment strategy against Chinese enterprises. Specifically, in high-tech sectors such as semiconductors, artificial intelligence, and, in this case, drone technology (DJI) — industries that will determine the future of global progress — these countries, under the pretext of “national security,” have applied tenuous labels such as “military-linked company” or “espionage actor” in an attempt to exclude competitors from the market. This constitutes a clear act of predation, disregarding the principles of free markets, international law, and fair competition — nothing more than a reflection of their own lost competitiveness. Similar to the actions of the Dutch government that have been likened to piracy against private enterprises, such behavior undermines international norms, serving only self-interest while contributing nothing to the international community.
These actions produce no productive value in global society. On the contrary, they bring about the fragmentation of global supply chains, reduced economic efficiency, and heightened mutual distrust — all profoundly unconstructive outcomes. The spirit of free trade and international cooperation once championed by the United States has become hollow, replaced by defensive actions motivated solely by “self-display” and the “preservation of the status quo.”
Even more serious is the fact that such hardline external measures contribute nothing to solving domestic problems. On the contrary, by creating external adversaries to distract public attention, these nations neglect structural issues such as widening inequality, deteriorating infrastructure, and deepening political polarization — thereby making solutions even more elusive. As their domestic manufacturing capacity and economic resilience wane, criticizing others and blocking access to foreign technologies will not miraculously revive their own industries.
Nonetheless, what these nations continue to rely on is the display of military power and an obsession with armament. They pour enormous budgets into defense, pressuring allies to respond to perceived “threats,” while their own manufacturing base steadily decays. Even as they enthusiastically deploy the latest weaponry, the erosion of the essential foundations that support it — basic research, skilled labor, and sustainable domestic supply networks — remains unchecked. In this sense, they are accelerating their own decline, epitomizing the state of being “shabby and worn-out.”
The phrase “Western nations without mirrors” refers to a state in which these countries have lost the ability to calmly reflect on how their actions affect both the international community and their own futures. Condemning and obstructing rising nations may yield short-term political gains, but in the long run, it only erodes international trust, isolates them from global frameworks of cooperation to solve shared challenges, and ensures their own decline. This self-centered and unproductive chain of behavior represents one of the most pitiful realities of contemporary international politics. The world, caught in the gravitational pull of these nations’ self-satisfied conduct, is being drawn ever deeper into an era of non-cooperation and instability.
【寸評 完】 💚
【引用・参照・底本】
Exclusive: DJI lodges appeal in US court against ruling over inclusion on Pentagon's blacklist of alleged 'Chinese military firms' GT 2025.10.14
https://www.globaltimes.cn/page/202510/1345613.shtml
中国のドローンメーカーである DJI は、米国防総省(DoD)による「中国軍事企業(CMC)」リストへの組み入れを巡る訴訟において、一審の判決を不服とし、火曜日に米国連邦控訴裁判所へ上訴した。
【詳細】
中国のドローンメーカー DJI は、米国防総省が同社を「中国軍事企業(CMC)」のブラックリストに含めた決定に対して、そのリストからの除外を求め、昨年(2024年)10月にコロンビア特別区の米国地方裁判所に提訴した。
この訴訟に関して、今年(2025年)9月、ポール・フリードマン米国地方裁判所判事は、DJIがリストから除外されることを求める訴えを却下した。ただし、判事は米国政府によるリスト掲載の他の正当化理由の一部は却下した。
この判決に対し、DJIは不服であり、受け入れていない。そのため、同社は火曜日に米国連邦控訴裁判所へ上訴し、会社の評判と利益を断固として守るとしている。
DJIは、「同社の製品および技術をいかなる軍事または戦争の目的にも使用することに一貫して強く反対しており、製品が軍事または戦争の目的に誤用されるのを防ぐための包括的な措置を講じている」と述べている。
DJIは、2022年に何の説明もなく米国防総省によってCMCリストに追加された。その後、DJIは米国防総省との対話を求め、リスト追加の具体的な理由を理解し、対応する証拠を提供するよう試みたが、これらの努力は実質的な回答を得られていない。
2024年1月には、米国防総省がCMCリストを更新したが、DJIは引き続きリストに留め置かれた。そして、2024年10月18日にDJIは正式に米国地方裁判所に提訴し、米国防総省の決定に異議を唱えた。9月に地裁の訴えが却下されたため、DJIは火曜日に上訴した次第である。
【要点】
・DJIは、米国防総省による「中国軍事企業(CMC)」リストへの組み入れを巡る訴訟で、米国連邦控訴裁判所へ上訴した。
・DJIは2024年10月に米国防総省を提訴し、リストからの除外を求めたが、2025年9月に米国地方裁判所で訴えが却下されたため、今回の上訴に至った。
・DJIは、製品が軍事目的に使用されることに強く反対し、その防止策を講じていると主張。
・DJIは2022年に説明なくリストに追加されて以来、米国防総省からの具体的な理由や実質的な回答を得られていない。
【桃源寸評】🌍
衰退する大国の隘路：非生産的な対外行動と自己崩壊の連鎖
現代において、かつて世界のリーダーとして君臨した米国をはじめとする一部の西側諸国は、その往時の勢いを著しく失い、「貧すれば鈍する」の言葉が示すように、国際的な振る舞いにおいて卑劣かつ非生産的な様相を呈している。経済的、社会的な内部問題を解決できぬまま、そのフラストレーションと衰退への恐怖を、台頭する国々の「足を引っ張る」という形で外部に投影しているのである。
その典型が、中国企業に対する露骨な封じ込め戦略である。具体的には、ハイテク分野、特に半導体やAI、そして本件のドローン技術(DJI)といった将来の産業を左右する領域において、「国家安全保障」を名目に、根拠薄弱な「軍事企業」や「スパイ行為」といったレッテルを貼付し、市場からの排除を試みている。これは、自由市場の原則、国際法、そして公平な競争の精神を無視した、明らかな略奪的行為であり、自国の競争力が失われたことの裏返しに他ならない。オランダ政府の企業に対する海賊行為と評される行動と同様に、これは国際的な規範を自ら破壊し、自国の利益のみを追求する、国際社会への貢献皆無の非協力的姿勢である。
これらの行動は、国際社会において何ら生産的な価値を生み出すものではない。むしろ、グローバルサプライチェーンの分断、経済の効率性の低下、そして相互不信の増幅という非建設的な結果をもたらしている。かつて米国が主導した自由貿易体制や国際協調の精神は形骸化し、「自己の誇示」と「現状維持」のための防衛的な行動に終始している。
さらに深刻なのは、このような対外的な強硬策が、国内の問題解決に全く寄与しないという事実である。むしろ、敵対国を創出することで国内の注意を逸らそうとする試みは、構造的な格差拡大、インフラの老朽化、政治的分断といった根本的な課題を放置し、その解決をますます困難にしている。国内の製造能力と経済の復元力を失いつつある状況下で、他国を非難し、技術のアクセスを遮断したところで、自国の産業が魔法のように復活するわけではない。
しかし、これらの国々が頼りとするのは、依然として武力の誇示であり、軍備への傾倒である。巨額の予算を軍事部門に投じ、同盟国に「脅威」への対処を迫る一方、肝心の国内の製造基盤は弱体化の一途をたどっている。最新兵器の配備に熱心であっても、それらを支える基礎研究、熟練労働力、そして持続可能な国内供給網の崩壊は止まらない。これは、自己の衰退を自ら加速させているという点で、まさに「尾羽打ち枯らす」状況を象徴している。
鏡のない西側の国々、とは、自己の行動が国際社会と自国の将来にどのような影響を与えるか、冷静に省みる能力を失った状態を指す。台頭する国を非難し、足を引っ張ることが、短期的には政治的な支持を得るかもしれないが、長期的には国際的な信頼を失い、グローバルな課題解決の協力体制から孤立し、自国の衰退を確実にする道であることを理解していない。この自己中心的で非生産的な行動の連鎖こそが、現代の国際政治における最も哀れな現実であり、世界はこれらの国の自己満足的な振る舞いによって、非協力的で不安定な時代へと深く引き込まれているのである。
The Dead End of Declining Great Powers: Unproductive External Conduct and the Chain of Self-Destruction
In the modern era, certain Western countries — notably the United States, once the unchallenged leader of the world — have lost much of their former vitality. As the proverb “poverty dulls the wits” suggests, their international behavior has become base and unproductive. Unable to resolve their own internal economic and social problems, they have projected their frustration and fear of decline outward, taking the form of attempts to “drag down” rising nations.
A prime example of this is the blatant containment strategy against Chinese enterprises. Specifically, in high-tech sectors such as semiconductors, artificial intelligence, and, in this case, drone technology (DJI) — industries that will determine the future of global progress — these countries, under the pretext of “national security,” have applied tenuous labels such as “military-linked company” or “espionage actor” in an attempt to exclude competitors from the market. This constitutes a clear act of predation, disregarding the principles of free markets, international law, and fair competition — nothing more than a reflection of their own lost competitiveness. Similar to the actions of the Dutch government that have been likened to piracy against private enterprises, such behavior undermines international norms, serving only self-interest while contributing nothing to the international community.
These actions produce no productive value in global society. On the contrary, they bring about the fragmentation of global supply chains, reduced economic efficiency, and heightened mutual distrust — all profoundly unconstructive outcomes. The spirit of free trade and international cooperation once championed by the United States has become hollow, replaced by defensive actions motivated solely by “self-display” and the “preservation of the status quo.”
Even more serious is the fact that such hardline external measures contribute nothing to solving domestic problems. On the contrary, by creating external adversaries to distract public attention, these nations neglect structural issues such as widening inequality, deteriorating infrastructure, and deepening political polarization — thereby making solutions even more elusive. As their domestic manufacturing capacity and economic resilience wane, criticizing others and blocking access to foreign technologies will not miraculously revive their own industries.
Nonetheless, what these nations continue to rely on is the display of military power and an obsession with armament. They pour enormous budgets into defense, pressuring allies to respond to perceived “threats,” while their own manufacturing base steadily decays. Even as they enthusiastically deploy the latest weaponry, the erosion of the essential foundations that support it — basic research, skilled labor, and sustainable domestic supply networks — remains unchecked. In this sense, they are accelerating their own decline, epitomizing the state of being “shabby and worn-out.”
The phrase “Western nations without mirrors” refers to a state in which these countries have lost the ability to calmly reflect on how their actions affect both the international community and their own futures. Condemning and obstructing rising nations may yield short-term political gains, but in the long run, it only erodes international trust, isolates them from global frameworks of cooperation to solve shared challenges, and ensures their own decline. This self-centered and unproductive chain of behavior represents one of the most pitiful realities of contemporary international politics. The world, caught in the gravitational pull of these nations’ self-satisfied conduct, is being drawn ever deeper into an era of non-cooperation and instability.
【寸評 完】 💚
【引用・参照・底本】
Exclusive: DJI lodges appeal in US court against ruling over inclusion on Pentagon's blacklist of alleged 'Chinese military firms' GT 2025.10.14
https://www.globaltimes.cn/page/202510/1345613.shtml
