CIAとモブツ:政治的・経済的混乱を長引かせる2024年07月01日 20:10

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【概要】
 
 背景

 1960年6月30日に独立を果たしたコンゴは、ベルギーの植民地から解放されたばかりの新しい国家であった。当時の首相パトリス・ルムンバは、ソビエト連邦やアメリカ合衆国から注目されていた。独立直後、コンゴ軍は白人の将校に反乱を起こし、欧州人を襲撃し始めた。ベルギーはこれに対応して軍を再派遣し、コンゴの豊かなカタンガ州の分離を支援した。

 ルムンバと国連

 ルムンバは国連と対立し、ソビエト連邦に援助を求めた。これに対し、アメリカのアイゼンハワー政権はCIAを派遣し、ルムンバの排除を計画した。CIAは反ルムンバの政治家を支援し、デモやプロパガンダを通じて彼を追い詰めた。

 モブツの台頭

 ルムンバの対抗馬として、ジョゼフ・カサブブが登場したが、軍の若い指導者ジョゼフ・モブツが実権を握ることになった。CIAはモブツを財政的に支援し、彼のクーデターを後押しした。結果として、ルムンバは逮捕され、最終的にはカタンガ州で殺害された。

 CIAの影響

 CIAの介入は、コンゴの政治的安定を妨げ、その後の混乱を助長した。ルムンバの支持者たちは武装反乱を起こし、CIAはモブツを支援するためにさらなる軍事的・財政的援助を提供した。これにより、コンゴは腐敗と政治的混乱に陥り、1997年には国家の崩壊を迎えることになった。

 結論

 CIAの活動はコンゴの独立初期の政治を大きく歪め、モブツの長期政権を支える結果となった。この期間中、コンゴは経済的・政治的に低迷し、その影響は現在まで続いている。

【詳細】
 
 コンゴの背景と独立

 1959年から1960年にかけて、コンゴ(現在のコンゴ民主共和国)はベルギーの植民地から独立を果たした。独立後、急激な政治的変動と混乱が続いた。この時期のリーダーシップを巡る争いが、冷戦の地政学的な動きと結びついている。

 パトリス・ルムンバとそのリーダーシップ

 パトリス・ルムンバは、コンゴの独立運動の中心的な人物で、初代首相に就任した。彼のリーダーシップの下で、コンゴは経済的自立と政治的安定を目指したが、冷戦時代の地政学的な影響で複雑な状況に直面した。

 コンゴの混乱と国際的な介入

 1.カタンガ州の分離

 コンゴ独立直後、カタンガ州(豊富な鉱鉱資源を持つ地域)は分離を試みた。ベルギーはこれを支援し、元植民地の経済的利益を守ろうとした。これに対抗する形で、コンゴ政府は国際的な支援を求めた。

 2.国連とソビエト連邦の関与

 ルムンバは国連に介入を求め、同時にソビエト連邦からも援助を受けることを望んだ。これに対して、アメリカ合衆国は冷戦の文脈でソ連の影響力拡大を防ごうとし、CIAを用いてルムンバ政権をdestabilize(不安定化)させる戦略を採った。

 CIAの介入とルムンバの排除

 1.CIAの活動

 CIAはルムンバに対する反対勢力を支援した。アメリカは、ルムンバがソ連と協力していると見なし、彼を排除するための工作活動を展開した。CIAの工作の一環として、ルムンバの政治的な敵対者を育成し、政治的な混乱を助長した。

 2.ルムンバの逮捕と殺害

 1961年1月、ルムンバはコンゴ政府の指導者によって逮捕され、反政府勢力に引き渡された。最終的にはカタンガ州で処刑されることになった。このプロセスにはCIAの影響が大きく関与していたとされている。

 モブツ・セセ・セコの台頭

 ジョゼフ・モブツ(後のモブツ・セセ・セコ)は、若い軍人であり、政治的な権力を握りつつあった。CIAは彼に対して支援を提供し、ルムンバの後継者として彼を権力の座に押し上げるために協力した。モブツは1965年にクーデターを成功させ、長期にわたる独裁政権を確立した。

 モブツ政権とその影響

 1.モブツの統治

 モブツ政権下でコンゴは強権的な支配が行われ、経済的な利益は一部のエリート層に集中した。政府の腐敗と権力の集中が進み、経済的な困難が続いた。この時期、コンゴの経済は大きく悪化し、国民の生活水準は低下した。

 2.冷戦の影響

 冷戦の影響で、アメリカはモブツ政権を支持し続け、彼の政権を維持するための支援を行った。この支援により、コンゴは外部からの圧力や介入が続く中で政治的な安定を欠いたままであった。

 結論

 CIAの介入とモブツの台頭は、コンゴの政治的・経済的な不安定さを長引かせる要因となった。コンゴは独立後も外部勢力の影響下にあり、内外の政治的な圧力が続く中で、経済的および社会的な問題が深刻化していった。この時期の混乱は、現在のコンゴの政治経済状況にも影響を及ぼしている。

【要点】

 コンゴの歴史的な出来事を箇条書きで説明する。

 1.独立前の背景

 ・1959年から1960年にかけて、コンゴ(現在のコンゴ民主共和国)はベルギーの植民地から独立。

 2.パトリス・ルムンバの登場

 ・パトリス・ルムンバがコンゴの初代首相に就任。
 ・彼は経済的自立と政治的安定を目指す。

 3.カタンガ州の分離

 ・コンゴ独立直後、カタンガ州が分離を試み、ベルギーが支援。

 4.国際的な関与

 ・ルムンバは国連とソ連からの支援を求める。
 ・アメリカは冷戦の文脈で、ソ連の影響拡大を警戒し、CIAを使ってルムンバ政権の不安定化を試みる。

 5.CIAの介入

 ・CIAがルムンバに対する反対勢力を支援し、政治的混乱を助長。

 6.ルムンバの逮捕と殺害

 ・1961年1月、ルムンバが逮捕され、カタンガ州で処刑される。
 ・CIAの影響が関与していたとされる。

 7.モブツ・セセ・セコの台頭

 ・ジョゼフ・モブツ(後のモブツ・セセ・セコ)が権力を握り、1965年にクーデターで政権を掌握。

 8.モブツ政権の特徴

 ・強権的な統治と経済エリート層への利益集中。
 ・政府の腐敗と権力の集中が進む。
 ・経済状況が悪化し、国民生活が困難に。

 9.冷戦時代の影響

 ・アメリカがモブツ政権を支持し、政治的安定を維持するための支援を行う。
 ・外部勢力の影響でコンゴの政治経済が長期的に不安定。

 結論

 ・CIAの介入とモブツの統治がコンゴの政治的・経済的混乱を長引かせ、現在のコンゴの問題にも影響を及ぼしている。

【引用・参照・底本】

What Really Happened in Congo FOREIGN AFFAIRS 2024.06.16
https://www.foreignaffairs.com/democratic-republic-congo/what-happened-congo-lumumba-mobutu?utm_medium=newsletters&utm_source=summer_reads&utm_campaign=summer_reads_2024&utm_content=20240630&utm_term=EUZZZ003ZX

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