【概要】

　日本外務省は、イスラエル政府がヨルダン川西岸の無認可入植地5カ所を合法化したことに対して「遺憾」を表明した。日本は、この入植活動が国際法に違反し、二国家解決の実現を妨げるものであると指摘し、イスラエル政府に対して承認の撤回および入植活動の完全凍結を強く求めている。また、過激なイスラエル人入植者によるパレスチナ人への暴力が増加していることにも懸念を示し、適切な対処を求めている。

　さらに、日本外務省はガザ地区の人道危機にも言及し、ヨルダン川西岸地区における緊張を高める行為を控えるよう呼びかけている。イスラエル民政局のヨルダン川西岸計画評議会は、ユダヤ人入植地に約6000戸の住宅を建設する計画を承認する予定と報じられており、これに対する懸念も示されている。

　国連安全保障理事会は2016年にイスラエルに対して入植活動の即時停止を求める決議を採択したが、イスラエルはこれに従わない姿勢を続けている。

【詳細】
　
　イスラエル政府は、ヨルダン川西岸にある5カ所の無認可入植地を合法化する決定を行った。この決定に対して、日本外務省は2024年7月3日に遺憾の意を表明した。日本は、イスラエルの入植活動が国際法に違反していると主張しており、特に以下の点を強調している。

　国際法違反: 日本外務省は、イスラエルの入植活動が国際法に違反していると指摘している。具体的には、1949年のジュネーヴ条約第4条に違反しているとされている。この条約は占領地への占領国の市民の移住を禁じている。

　二国家解決の実現を妨げる: 日本は、イスラエルの入植活動がパレスチナとの二国家解決の実現を妨げるものであると強調している。二国家解決は、イスラエルとパレスチナがそれぞれ独立した国家として共存するという解決策であり、国際社会から広く支持されている。

　承認の撤回と入植活動の完全凍結の要求: 日本は、イスラエル政府に対して入植地の合法化の承認を撤回し、入植活動を完全に凍結するよう強く求めている。

　パレスチナ人への暴力の増加: 日本外務省は、過激なイスラエル人入植者によるパレスチナ人への暴力が増加していることに懸念を示し、これを非難している。具体的には、パレスチナ人への襲撃や破壊行為が報告されている。

　ガザ地区の人道危機: 日本は、ガザ地区が深刻な人道危機に直面していることに言及し、ヨルダン川西岸地区においても緊張を高める行為を控えるよう強調している。

　イスラエル民政局のヨルダン川西岸計画評議会は、7月3日と4日に会合を開き、ユダヤ人入植地に約6000戸の住宅を建設する計画を承認する予定である。この計画は、さらに多くのパレスチナ領土を占有し、緊張を高める可能性がある。

　国連安全保障理事会は2016年に、イスラエルに対してパレスチナ占領地における入植活動の即時停止を求める決議を採択したが、イスラエルはこの決議に従うことを拒否している。イスラエル政府は、入植活動がその安全保障や歴史的、宗教的権利に基づくものであると主張しているが、国際社会からの批判は続いている。

　このような背景から、日本は国際法を尊重し、平和的な解決を目指す立場を強調しており、イスラエルの行動に対して厳しい姿勢を取っている。

【要点】
　
　1.イスラエル政府の決定

　・ヨルダン川西岸の5カ所の無認可入植地を合法化。

　2.日本外務省の対応

　・2024年7月3日に遺憾の意を表明。

　3.主な理由

　・国際法違反: 1949年のジュネーヴ条約第4条に違反。
　・二国家解決を妨げる: イスラエルとパレスチナの独立した国家の共存を阻害。
　
　4.具体的な要求:

　・承認の撤回。
　・入植活動の完全凍結。

　5.パレスチナ人への暴力

　・過激なイスラエル人入植者による暴力の増加を懸念し、非難。

　6.ガザ地区の人道危機

　・ガザ地区の人道状況に言及し、ヨルダン川西岸地区での緊張を高める行為を控えるよう強調。

　7.イスラエルの住宅建設計画

　・ヨルダン川西岸計画評議会が約6000戸の住宅建設を承認予定。

　8.国連安全保障理事会の決議:

　・2016年の入植活動即時停止決議をイスラエルは拒否。

　8.日本の立場:

　・国際法の尊重と平和的解決を強調し、イスラエルの行動に厳しい姿勢を取る。

【参考】

1949年のジュネーヴ条約第4条は、正確には「第四ジュネーヴ条約」として知られているもので、その正式名称は「戦時における文民の保護に関するジュネーヴ条約」である。この条約は、戦争や占領下における文民の保護に関する規定を含んでいる。条約の具体的な内容は以下の通り。

1949年ジュネーヴ第四条約の主な内容

・文民の保護

紛争当事国は、占領地の住民を保護し、その基本的な人権を尊重しなければならない。

・強制移住の禁止

占領国は、占領地の住民を自国またはその他の地域に強制的に移住させることを禁止されている。

・入植活動の禁止

占領国は、自国の市民を占領地に移住させることを禁止されている。これは、占領地における人口の変更や占領地の恒久的な併合を防ぐためのものである。

・人道的待遇の確保

占領国は、占領地の住民に対して人道的な待遇を確保し、必要な生活物資や医療を提供する義務がある。

・紛争の影響を受ける文民の保護

紛争によって影響を受ける文民、特に病人、負傷者、子供、妊婦などは特別な保護を受ける権利がある。

・関連する具体的な条文

特に重要な条文は以下の通り。

・第49条: 占領国は、自国の民間人を占領地に移住させてはならない。
「占領国は、被保護者をその領域外に移送し、または追放してはならない。また、占領国は、占領地の一部または全部から被保護者を追放し、または移送してはならない。ただし、被保護者の安全が軍事作戦によって絶対に要求される場合、または絶対的な軍事的理由からこれが必要とされる場合を除く。」

この条約に基づき、イスラエルの入植活動は国際法に違反しているとする見解が広く共有されている。特に、入植地の建設や拡大は、第四ジュネーヴ条約の第49条に明確に違反するものとされている。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

日本、イスラエル政府のヨルダン川西岸入植地5カ所承認に遺憾表明 sputnik日本 2024.07.04
https://sputniknews.jp/20240704/5-18753141.html?rcmd_alg=collaboration2