中国の急速な核兵器増強2024年08月14日 09:37

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【概要】

 アジア・タイムズに掲載されたガブリエル・ホンラダによるもので、2024年8月13日に発表された。内容は、中国が急速に核兵器を増強していることを背景に、米国が中国との核戦争に対して十分に備えていないという指摘がなされている。

 特に、台湾紛争を想定した場合、中国が「先制不使用」政策から離れる可能性があり、これが地域の力の均衡に大きな影響を与えると述べている。報告書は、中国の核戦力の近代化が進むことで、戦略核兵器を使用するハードルが下がり、従来の冷戦期の抑止モデルから逸脱した形で戦術核兵器の応酬が起こりうる可能性があると指摘している。

 また、米国がこの新たな核の現実に対応できていないことを強調し、特に日本やオーストラリアなどの地域同盟国の脆弱性に焦点を当て、中国がこれらの同盟関係を攻撃することで米国の抑止力を弱める可能性があると述べている。

 報告書は、米国が中国との対話を強化し、従来の核戦略を見直し、地域の同盟国と協力して、中国の核威嚇に対抗するための新しい戦略と能力を開発する必要があると提言している。

 さらに、米国の核兵器は依然として世界第2位の規模を誇るものの、現在の核近代化プログラムはコスト超過や進行の遅れに悩まされていることが指摘されている。

 また、中国の核兵器拡大が、米国やその同盟国からの脅威に対応するためであり、2035年までに世界的な軍事大国としての地位を確立することを目指しているとしている。特に、中国が台湾紛争において核兵器を使用する可能性についても議論されており、これが米国およびその同盟国に対する重大な戦略的脅威として認識されていることが強調されている。

 最後に、核兵器の増強が必ずしも安全保障や戦略的優位性に直結しないという意見も紹介され、核兵器の存在そのものが相互抑止の力学を生み出し、結果として核の優位性が実際の紛争解決には結びつかないことが論じられている。

【詳細】

 中国の急速な核兵器増強と、それが米国およびインド太平洋地域の安全保障に与える影響について深く分析している。以下、記事の主要なポイントについて詳しく説明する。

 1. 中国の核兵器増強

 中国は急速に核兵器を増強しており、これが地域の力の均衡に重大な影響を与えると指摘されている。具体的には、中国は核弾頭の数を増やし、新しいミサイルサイロ、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、空中発射弾道ミサイル(ALBM)などの新しい運搬システムを開発している。この増強は、米国およびその同盟国からの脅威に対抗するためのものであり、中国が2035年までに世界的な軍事大国としての地位を確立することを目指していることの一環とされている。

 2. 米国の核戦略の課題

 中国の核増強に対し、米国の核戦力と戦略は時代遅れとなりつつあると警告されている。米国は現在、核戦力の近代化プログラムを進めており、ミニットマンIII ICBMを新型のLGM-35センチネルミサイルに置き換える予定である。しかし、このプロジェクトはコスト超過や進行の遅れに直面している。また、米国は冷戦時代に策定された核戦略に依存しており、新しい核の現実に対応するためには、ドクトリン、能力、作戦概念の見直しが必要であるとされている。

 3. 台湾紛争における核使用の可能性

 特に台湾を巡る紛争において、中国が核兵器を使用する可能性があるとされている。中国が「先制不使用」政策から離れ、核兵器の使用ハードルを下げる可能性があると指摘されている。これは、米国およびその同盟国の介入を抑止するため、中国が戦術核兵器を使用するシナリオを含んでいる。逆に、米国も中国の台湾侵攻を抑止するため、あるいは中国本土への攻撃を防ぐために核兵器を使用する可能性が議論されている。

 4. 地域同盟国への影響

 米国の同盟国、特に日本やオーストラリアなどのインド太平洋地域の国々は、中国の核増強に対して脆弱であるとされている。報告書では、中国がこれらの同盟国を攻撃することで、米国の抑止力を弱め、地域の安全保障を不安定化させる可能性が指摘されている。米国はこれに対抗するため、地域同盟国との協力を強化し、中国の核脅威に対処するための新しい戦略と能力を開発する必要があるとされている。

 5. 核のパリティと抑止の概念

 核兵器の数が多いことが必ずしも安全保障や戦略的優位性に直結しないという視点も紹介されている。少量の核兵器でも、相互抑止の効果があり、攻撃を抑制する力を持つとされている。これにより、核兵器の拡張競争の合理性について疑問が投げかけられている。また、核兵器の存在が両国間の対立を回避するための手段として機能する一方で、核の優位性が実際の紛争解決には結びつかない可能性があるとされている。

 6. 新たな核条約の必要性

 最後に、米国は新たな地政学的現実に対応するため、核戦略を再評価する必要があると述べられている。特に、ロシアや中国の脅威に対抗するためには、既存の条約(例えば2026年に期限が切れる新START条約)では不十分であり、より包括的な条約が必要とされている。米国は、敵対する独裁国家の価値をターゲットにできるような核戦力を維持し、効果的に抑止力を発揮するための柔軟性を持つべきだと提案されている。

 このように、中国の核兵器増強がインド太平洋地域および世界全体に与える影響を深く掘り下げ、米国がこの新たな現実に対処するための戦略的対応を迫られていることを強調している。

【要点】

 1.中国の核兵器増強

 ・中国は核兵器の数を急速に増やし、新しいミサイルサイロや潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などを開発。
 ・2035年までに世界的な軍事大国を目指している。

 2.米国の核戦略の課題

 ・米国の核戦力は時代遅れとなりつつあり、核近代化プログラムはコスト超過や進行の遅れに直面。
 ・米国は冷戦時代の核戦略に依存しており、新しい核の現実に対応するための見直しが必要。

 3.台湾紛争における核使用の可能性

 ・中国が「先制不使用」政策から離れ、戦術核兵器を使用する可能性がある。
 ・米国も中国の台湾侵攻を抑止するために核兵器を使用する可能性が議論されている。

 4.地域同盟国への影響

 ・日本やオーストラリアなどの米国同盟国は、中国の核脅威に対して脆弱。
 ・米国は地域同盟国との協力を強化し、新しい戦略と能力を開発する必要がある。

 5.核のパリティと抑止の概念

 ・核兵器の数が多いことが必ずしも戦略的優位性に繋がらず、少量でも相互抑止の効果がある。
 ・核拡張競争の合理性に疑問が投げかけられている。

 6.新たな核条約の必要性

 ・ロシアや中国の脅威に対応するため、既存の条約では不十分で、包括的な新条約が必要。
 ・米国は効果的な抑止力を発揮するための柔軟な核戦力を維持すべきと提案。

【引用・参照・底本】

US ill-prepared for a nuclear showdown with China ASIATIMES 2024.08.13
https://asiatimes.com/2024/08/us-ill-prepared-for-a-nuclear-showdown-with-china/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=e5ed4c880d-DAILY_13_8_2024&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-e5ed4c880d-16242795&mc_cid=e5ed4c880d&mc_eid=69a7d1ef3c

先端技術の骨頂は応用技術にあり2024年08月14日 11:49

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【桃源寸評】

 中国は実利的であり、応用技術に特に優れている。無闇矢鱈に先端技術を追うだけでは、無意味である。実用化させてこその先端技術である。

 真の先端技術=応用×知識なり、である。

 中国の技術を見る目を良しとする。

 先端技術は先端技術故に廃れる。が、その技術を見極めるものこそ、技術の真の匠である。

【寸評 完】

【概要】

 ファーウェイ(Huawei)やバイドゥ(Baidu)などの中国のテクノロジー大手は、米国の輸出制限の可能性を見越して、サムスンの高帯域幅メモリ(HBM)チップ、特にHBM2Eモデルを急速に備蓄している。これらのチップは、人工知能(AI)アプリケーションを加速するために重要であり、中国の需要により、サムスン電子のHBMチップの収益は大幅に押し上げられ、2024年上半期には中国がこれらの収益の約30%を占めている。

 米国は中国への先端技術の輸出管理をさらに強化することを検討していると報じられており、中国企業は新たな規制が実施される前に供給を確保するよう促されている。中国企業は、最新のHBM3より1世代遅れ、HBM3Eより2世代遅れのHBM2Eチップに注目しているが、中国では古いHBM2チップを国内で生産する取り組みも進行中である。この戦略は、地政学的な緊張が高まる中、外国技術への依存を減らすという中国の広範な目標を反映している。

【詳細】

 中国の技術企業がSamsung製の高帯域幅メモリ(HBM)チップを急速に備蓄している背景には、アメリカがこの種の先進技術の中国への輸出をさらに制限する可能性があるという懸念がある。これらのHBMチップは、特に人工知能(AI)の処理を加速するために使用され、AIアプリケーションにおいて極めて重要な役割を果たしている。

 背景

 2024年の前半、中国はSamsungのHBMチップ売上の約30%を占めるまでになった。これは、中国の主要な技術企業であるHuaweiやBaidu、さらには新興企業による需要の急増が理由である。これらの企業は、特にHBM2Eという型番のチップに注力していることが報じられている。

 HBMチップの重要性

 HBMチップは、高速なデータ転送と大容量のデータ処理が可能であるため、AIアプリケーションの処理において非常に重要である。AIモデルのトレーニングや推論を行う際、膨大なデータ量が必要であり、これを効率的に処理するためにHBMチップが活用される。特にHBM2Eチップは、現行のHBM3や最新のHBM3Eに次ぐ高性能モデルであり、中国企業はこのチップの備蓄を進めている。

 中国の対応と計画

 一方で、中国政府は国内での技術自給率を高めるために、最も成熟しているが技術的には最も低いモデルであるHBM2チップの国内生産を計画している。これは、海外からの輸入依存を減らし、技術的制約を乗り越えるための戦略の一環である。

 米中の技術競争

 アメリカは、中国の技術進歩を抑制するために、先端技術の輸出制限を強化する方針を示しており、特にAI技術や半導体関連の部品がターゲットとなっている。これにより、中国は先進技術の確保に奔走しており、サプライチェーンの確保や国内生産の拡大を急いでいる。この動きは、米中間の技術競争がさらに激化していることを示している。

 要するに、中国の技術企業は、アメリカの制裁を見越して、AI技術に不可欠なHBMチップを確保するために動いており、国内生産の強化も含めた包括的な対策を講じている。

【要点】

 ・背景: 中国の技術企業が、アメリカの輸出制限強化を見越してSamsung製HBMチップを急速に備蓄中。
 ・主要企業: HuaweiやBaiduなどの大手、中国の新興企業が主に関与。
ターゲット: 主にHBM2Eチップを中心に備蓄。HBM2EはAI処理に重要であり、HBM3やHBM3Eよりも一世代古い。
 ・中国の戦略: HBM2チップの国内生産を計画し、技術自給率を高める方針。
 ・米中技術競争: アメリカはAI関連技術の輸出制限を強化しており、中国はその影響を回避するための対策を急いでいる。

【引用・参照・底本】

China racing to stockpile AI-powering HBM chips ASIATIMES 2024.08.09
https://asiatimes.com/2024/08/china-racing-to-stockpile-ai-powering-hbm-chips/

米国は中国との戦争を軽率に始めるべきではない2024年08月14日 12:14

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【概要】

 ライル・ゴールドスタインの記事「セカンド・トーマス・ショールは中国と戦争する価値はない」は、アメリカは、フィリピンが領有権を主張する南シナ海のセカンド・トーマス・ショールのような係争中の領土をめぐって、中国との軍事紛争に巻き込まれることを避けるべきだと主張している。2024年6月に中国海警局の職員が浅瀬付近でフィリピンの小型船舶を拿捕した事件など、フィリピンと中国の間の最近の緊張関係について論じている。このような緊張関係にもかかわらず、特にウクライナでの紛争が進行中であり、台湾海峡での紛争の可能性など、すでに不安定な国際環境を考えると、状況を本格的な紛争にエスカレートさせることに対して警告を発している。

 ゴールドスタインは、米国はフィリピンに対して歴史的および条約上の強い義務を負っているが、これらのコミットメントが、特に中国のような核保有国に対して不必要なリスクにつながるべきではないと強調している。彼は、南シナ海における中国のアプローチをカリブ海における米国の歴史的な行動と比較し、米国が歴史的にカリブ海での利益を守ってきたように、中国も現在、南シナ海で同じことをしていることを示唆している。中国の行動にもかかわらず、著者は、北京が致死的な武力行使を避け、人工島を完全に軍事化しないことで自制を示していると指摘している。

 ゴールドスタインは、アメリカは絶対に必要ならフィリピンを支持すべきだが、特に核のエスカレーションを伴う利害関係がある場合には、小さな紛争で戦争を危険にさらすべきではないと結論付けている。この状況は、地政学的な複雑さと米中関係の広範な影響を認識した上で、バランスの取れたアプローチを必要としている。

【詳細】

 Lyle Goldsteinの「Second Thomas Shoal isn’t worth war with China(第二トーマス礁は中国との戦争の価値がない)」という記事は、アメリカが南シナ海におけるフィリピンが主張する領有権を巡る紛争で、中国と軍事衝突するリスクを避けるべきだと主張している。この記事は、特に2024年におけるフィリピンと中国間の緊張が高まる状況を背景に書かれている。

 まず、記事は2023年8月22日にフィリピン沿岸警備隊の船BRPカブラが第二トーマス礁に向かう際、中国沿岸警備隊の船に進路を阻まれた出来事を取り上げている。この礁は、フィリピンが故意に座礁させた第二次世界大戦時の老朽化した軍艦が置かれた場所で、フィリピンが領有権を主張している。この事件を通じて、フィリピンと中国の間で一時的に緊張が緩和されたものの、両国はその後もこの合意の詳細を巡って意見が対立しており、新たな危機が生じる可能性があると指摘している。

 さらに、2024年6月には中国沿岸警備隊が第二トーマス礁に向かう小型のフィリピン船を攻撃し、その船を掌握するという事件が発生した。この事件を受けて、一部の論者は米比相互防衛条約の発動を求めたが、このような行動がどのような影響をもたらすかを懸念している。

 また、2024年に米国がフィリピンとの軍事協力を強化している状況にも言及している。米国務長官と国防長官がマニラを訪問し、5億ドルの援助パッケージや情報共有の強化を提案したことがその一例である。また、米海兵隊がルソン島からF-35B戦闘機を飛行させ、米陸軍がフィリピンに新型中距離ミサイルを一時的に配備するなど、米軍の活動が活発化している点も強調されている。

 しかし、Goldsteinはこれらの動きが、南シナ海での中国との武力衝突に発展するリスクを増大させる可能性があると警告している。多くの米国の政策立案者が中国の「拡張主義」や「侵略」に懸念を抱いているが、そのような懸念が実際の事実に基づいていないと主張している。

 中国が南シナ海に新たな軍事拠点を建設しているにもかかわらず、これまでのところその拠点に戦闘準備の整った空軍を配備していないことを指摘し、これを中国の抑制的な態度の証拠としている。また、中国沿岸警備隊が水砲を使用することを選んでいる点にも注目し、これが北京の目的を非致命的な手段で達成しようとする意図的な選択であると説明している。

 さらに、中国が南シナ海での国際貿易を妨げたり、大規模な武力を行使したりしていないと強調している。中国が過去40年以上にわたって大規模な武力行使を避けていることは、上昇する大国としては注目に値する記録であると評価している。

 中国の南シナ海における行動の背後には、フィリピンの位置が台湾海峡に非常に近いことがあると著者は説明する。米国がフィリピンに新たな軍事拠点を設置することで、台湾を巡る中国と米国の対立において、ワシントンに有利な立場を提供する可能性があると指摘している。フィリピン憲法が外国の基地設置を禁じているにもかかわらず、米国はこの新たな拠点を確保するために、多くの時間と努力を費やしていると述べている。

 結論として、Goldsteinは、アメリカがフィリピンを防衛することが必要な場合には行動すべきだと認めつつも、核保有国である中国と軽率に戦争を始めるべきではないと強調している。南シナ海での紛争が核エスカレーションに発展するリスクがあるため、米国は冷静に対応し、戦争を回避すべきだと訴えている。また、著者は、南シナ海が「中国のカリブ海」となりつつあると述べ、米国が歴史的にカリブ海で自国の安全保障を守るために行ってきた行動と比較し、中国の行動を理解することの重要性を指摘している。

【要点】

 Lyle Goldsteinの「Second Thomas Shoal isn’t worth war with China」記事の主張を以下の箇条書きでまとめる。

 ・フィリピンと中国の対立:2023年8月、フィリピン沿岸警備隊の船が第二トーマス礁に向かう際、中国沿岸警備隊に進路を阻まれる事件が発生。2024年6月には、中国がフィリピンの小型船を掌握する事件も起きた。

 ・米国の反応と関与:2024年、米国はフィリピンとの軍事協力を強化。米国務長官と国防長官がマニラを訪問し、5億ドルの援助と情報共有の強化を提案。米軍はフィリピンでF-35B戦闘機の飛行や新型中距離ミサイルの一時的配備を行った。

 ・中国の抑制的な行動:中国は南シナ海での軍事拠点建設にもかかわらず、戦闘準備の整った空軍を配備しておらず、沿岸警備隊も非致命的な水砲を使用している。国際貿易を妨げず、40年以上にわたり大規模な武力行使を避けている。

 ・米国とフィリピンの基地問題:フィリピンの位置が台湾海峡に近いことから、米国はフィリピンに新たな軍事拠点を設置しようとしているが、フィリピン憲法は外国基地の設置を禁止している。米国はこの新たな拠点を確保するために努力を続けている。

 ・南シナ海の戦略的重要性:南シナ海は中国にとって「カリブ海」に相当し、米国がカリブ海で自国の安全保障を守るために行ってきた行動に似たものだと著者は主張。

 ・米国の慎重な対応の必要性:アメリカはフィリピンを防衛する義務があるが、中国との戦争は軽率に始めるべきではない。核エスカレーションのリスクがあるため、冷静な対応が求められる。

【引用・参照・底本】

Second Thomas Shoal isn’t worth war with China ASIATIMES 2024.08.13
https://asiatimes.com/2024/08/second-thomas-shoal-isnt-worth-war-with-china/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=e5ed4c880d-DAILY_13_8_2024&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-e5ed4c880d-16242795&mc_cid=e5ed4c880d&mc_eid=69a7d1ef3c

エスカレートするミサイル競争2024年08月14日 16:39

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【概要】

 特に北朝鮮、イラン、日本、米国が関与する世界的な緊張の中でエスカレートするミサイル競争について論じている。北朝鮮のミサイル能力の増強とイランとの同盟により、ウクライナ戦争で枯渇したロシアのミサイル供給は回復しつつある。同時に、日本はウクライナの防衛を強化するために、PAC-3迎撃機を米国と共同生産している。このミサイルの増強は、各国が新たな脅威や紛争に対処するために軍事戦略と資源を連携させる中で、世界の地政学的状況における分断が深まっていることを浮き彫りにしている。

【詳細】

 冷戦時代のようなミサイル競争が再び激化している状況を描いています。特に、北朝鮮、イラン、日本、米国といった国々が関与している。

 北朝鮮のミサイル強化

 北朝鮮は、250基の新型戦術弾道ミサイル発射機を韓国との国境付近に配備したと報じられている。これは、米韓の合同軍事演習「乙支フリーダムシールド」に対抗するためのもので、北朝鮮の金正恩総書記は、この動きが米国による「核に基づく軍事ブロック」に対抗するためだと述べている。これにより、韓国のみならず、米国やその同盟国に対する軍事的プレッシャーが一層強まっている。

 イランと北朝鮮の協力関係

 北朝鮮はイランと密接な軍事技術協力を続けており、特にミサイル技術の分野での協力が顕著である。これは1980年代のイラン・イラク戦争にまで遡るが、2020年以降、再び両国間の協力が強化され、長距離ミサイルの共同開発が進められていると報じられている。イランは北朝鮮からミサイルや推進システムを購入し、自国のシャハブ-3ミサイルや宇宙発射機にも影響を受けている。

 ロシアのミサイル供給の枯渇と補充

 ロシアはウクライナでの戦争で大量のミサイルを消費しており、その補充のために北朝鮮やイランからの支援を求めている。特に、イランはロシアに数百発の短距離弾道ミサイル「Fath-360」を供給する可能性があり、これによりロシアはウクライナの深部まで攻撃を行うことが可能となる。

 米日共同のPAC-3迎撃ミサイル生産

 一方、米国と日本は、PAC-3迎撃ミサイルの共同生産を開始しており、このミサイルはウクライナに供給される予定である。PAC-3はパトリオットミサイルシステムの一部であり、航空機や弾道ミサイルを迎撃する能力を持っている。これにより、ウクライナの防空能力が強化されることが期待されているが、米国のミサイル在庫はすでに減少しており、日本からの供給がその補填に役立つことになる。

 日本の防衛産業の課題

 しかし、日本の防衛産業には課題がある。低い収益性、老朽化した技術、貧弱なミサイルの在庫管理、そして政府からの支援不足が問題視されている。また、生産能力の向上には時間がかかるとされ、特に米国のボーイング社が製造する重要な部品の不足が生産拡大のボトルネックとなっている。

 結論

 朝鮮とイランのミサイル技術がロシアに供給される一方で、米国と日本が共同で迎撃ミサイルを生産している現状を通じて、ミサイル競争が新たな段階に入っていることを示している。これにより、ウクライナ戦争や東アジアの緊張がさらに高まる可能性があり、各国の軍事戦略が今後どのように展開されるかが注目される。

【要点】

 1.北朝鮮のミサイル強化

 ・北朝鮮が250基の新型戦術弾道ミサイル発射機を韓国国境付近に配備。
 ・米韓の軍事演習「乙支フリーダムシールド」に対抗。
 ・金正恩総書記が米国の「核に基づく軍事ブロック」に対抗すると表明。

 2.イランと北朝鮮の軍事協力

 ・北朝鮮とイランが長距離ミサイルの共同開発を進行中。
 ・イランが北朝鮮からミサイルや推進システムを購入。
 ・イランのミサイル技術に北朝鮮の影響。

 3.ロシアのミサイル供給問題

 ・ロシアがウクライナでの戦争でミサイル供給が枯渇。
 ・イランから短距離弾道ミサイル「Fath-360」を供給予定。
 ・これにより、ロシアはウクライナ深部への攻撃が可能に。

 4.米日共同のPAC-3ミサイル生産

 ・米国と日本が共同でPAC-3迎撃ミサイルを生産。
 ・ミサイルはウクライナに供給予定。
 ・日本からの供給が米国のミサイル在庫の補充に寄与。

 5.日本の防衛産業の課題

 ・日本の防衛産業が低収益性や老朽化技術などの問題を抱える。
 ・生産能力の向上には時間がかかる。
 ・米国のボーイング社製部品の不足が生産拡大のボトルネックに。

 6.結論

 ・北朝鮮とイランのミサイル技術がロシアに供給される一方で、米国と日本が迎撃ミサイルを共同生産している状況。
 ・ミサイル競争の激化がウクライナ戦争や東アジアの緊張をさらに高める可能性がある。

【引用・参照・底本】

New Cold War missile race kicks into higher gear ASIATIMES 2024.08.13
https://asiatimes.com/2024/08/new-cold-war-missile-race-kicks-into-higher-gear/

ウクライナのクルスク攻撃:「テロ行為」と位置づけ2024年08月14日 16:55

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【概要】

 プーチン大統領がウクライナによるロシアのクルスク地域への攻撃を「テロ行為」とみなし、これを軍事侵攻とは認めないと公式に評価したことについて分析している。この記事の要点は以下の通り。

 1.プーチンの評価: プーチン大統領は、クルスク地域への攻撃を軍事侵攻ではなくテロ行為として扱うことで、ドンバス前線から部隊を引き離さない方針を示した。これにより、ウクライナが目指す「主要な軍事目標」を達成することを防ぐ狙いがある。

 2.会議での発言: プーチンは、ロシアの領土から敵を撤退させ、国境を確実に守ることが国防省の主な目標であると述べた。また、国家警備隊や連邦保安庁がテロ対策として効果的に活動する必要があることを強調した。

 3.西側の影響: プーチンは、ウクライナが西側諸国の代理としてロシアと戦争をしているとし、その目的は「将来の交渉における立場を強化すること」であると述べた。また、ウクライナが民間人を攻撃し続け、原子力発電所を脅かす限り、交渉は行わないと明言した。

 4.クルスク攻撃の目的: プーチンは、クルスクへの攻撃の目的がドンバスでのロシア軍の進展を阻止することだと述べた。さらに、この攻撃はロシア社会に不和をもたらそうとしたが、実際には逆に団結を強める結果となったと指摘した。

 5.今後の展望: プーチンは、クルスク地域からの敵の撤退が達成された後の計画については言及しなかったが、これはまだその時期ではないと見ている可能性がある。ロシアがさらなる攻撃を行うかどうかについては、慎重に検討されているようだ。

 6.分析のまとめ: プーチンがクルスクでの攻撃をテロ行為とすることで、軍事的なリソースをドンバス前線に集中させる意図を持っていると結論付けている。また、ロシアが引き続きウクライナに対して最大限の軍事的、政治的、戦略的要求を押し通す意図があることも指摘している。

 この分析は、ロシアの戦略的な動きやウクライナとの関係におけるプーチンの立場を理解するための重要な視点を提供している。

【詳細】

 プーチン大統領がウクライナによるロシアのクルスク地域への攻撃をどのように評価し、それがロシアの戦略全体にどのように影響を与えるかを分析している。具体的なポイントをより詳しく説明する。

 1. 攻撃の評価と戦略的意図

 プーチン大統領は、ウクライナがクルスク地域に対して行った攻撃を「テロ行為」と位置づけた。これは、ロシア政府がこの攻撃を正規の軍事侵攻として認識するのを避ける意図があることを示している。もしこの攻撃を侵攻と認めてしまうと、ロシアは戦争状態を宣言する必要が出てくる可能性があり、その結果、人口動員や強制徴兵を含むさらなる厳しい措置を取らざるを得なくなるからである。プーチンはこれを避けるために、意図的に攻撃をテロ行為として扱い、国民への影響を最小限に抑えつつも、軍事的にはドンバス前線に集中する姿勢を保っている。

 2. 国境の防衛とテロ対策

 プーチンは、防衛省の主要な目標として、ロシア領土からの敵の撤退と国境の確実な防衛を挙げている。これに関連して、連邦保安庁(FSB)と国家警備隊が、テロ対策として敵の破壊工作や偵察活動に効果的に対処する必要があると述べている。これは、クルスク、ブリャンスク、ベルゴロド地域での新たなテロ対策作戦の一環として、これらの機関が重要な役割を果たすことを示唆している。

 3. 西側諸国とウクライナの関係

 プーチンは、ウクライナが西側諸国、特にアメリカの代理としてロシアと戦争をしているという認識を改めて表明した。彼は、これが西側諸国の交渉における立場を強化するための戦略であると指摘している。この発言から、プーチンはウクライナとの直接的な交渉には応じない姿勢を示しており、特にウクライナが民間人を攻撃し、原子力発電所を脅かす限り、交渉の余地はないと明言している。これにより、ロシアが提示した休戦提案をウクライナが受け入れるか、またはその背後にいる西側諸国がそれを強制しない限り、交渉は行われないことが強調されている。

 4. クルスク攻撃の目的

 プーチンは、クルスク攻撃の目的がドンバス地域でのロシア軍の進行を止めることであると評価している。ドンバスでは、ロシア軍が前線全体での進展を50%増加させたとされており、この攻撃はその進展を阻止するためのものと見られている。さらに、この攻撃がロシア社会に不和や分裂をもたらすことを目的としていたが、実際にはその逆で、ロシア社会の結束を強める結果となったとプーチンは述べている。

 5. 今後の見通しと戦略の変化

 プーチンは、クルスク地域から敵を撤退させるという「主要な目標」が達成された後の計画については具体的に言及しませんでした。これにより、ロシアが現在の戦略を維持する一方で、さらに進行を進めるための具体的な行動はまだ検討中である可能性が示唆されている。過去には、ロシアがベルゴロド地域を保護するためにウクライナのハルキウ地域に進攻したことがあるが、今回の状況では、同様のモデルをスームィ地域で繰り返す計画がまだ具体化していないか、または何らかの理由で保留されている可能性がある。

 6. 分析者の見解

 プーチンが攻撃をテロ行為とみなすことで、ロシアが現在の軍事戦略を維持しつつ、ドンバス前線への集中を続ける意図があると結論付けている。これにより、ウクライナが目指すクルスク地域での攻撃が、ロシアの戦略全体を揺るがすことなく、その影響を最小限に抑えることができるとされている。また、ロシアが引き続きウクライナに対して最大限の軍事的、政治的、戦略的要求を押し通す意図があり、ウクライナの前線が崩壊することを期待していることが示されている。

 このように、プーチンの戦略的な評価や意図を詳述し、それがロシアの軍事行動やウクライナとの関係にどのように影響するかを分析している。

【要点】

 ・攻撃の評価: プーチンはウクライナのクルスク地域への攻撃を「テロ行為」と位置づけ、軍事侵攻とは認めず、戦争状態の宣言を避けることで国内の強制徴兵などの措置を回避。

 ・国境防衛とテロ対策: 国防省と連邦保安庁(FSB)、国家警備隊に、国境防衛と敵の破壊工作・偵察活動への対処を強調。これにより、新たなテロ対策作戦が展開される。

 ・西側との関係: プーチンは、ウクライナが西側諸国の代理としてロシアと戦争をしているとし、西側が交渉における立場を強化するための戦略と評価。ウクライナが民間人や原発を攻撃する限り、交渉はしない姿勢を示す。

 ・クルスク攻撃の目的: 攻撃の目的は、ドンバスでのロシア軍の進展を止めることとされるが、実際にはロシア社会の結束が強まったとプーチンは述べる。

 ・今後の戦略: クルスク地域での「主要な目標」が達成された後の計画については言及されておらず、現在の戦略を維持しつつ、さらなる行動が検討中である可能性。

 ・分析者の結論: プーチンは攻撃をテロ行為とみなすことで、ドンバス前線に集中し続け、ウクライナの攻撃によるロシア戦略への影響を最小限に抑える意図があるとされる。

【引用・参照・底本】

Analyzing Putin’s Assessment Of Ukraine’s Incursion Into Kursk Andrew Korybko's Newsletter 2024.08.14
https://korybko.substack.com/p/analyzing-putins-assessment-of-ukraines?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=147693780&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email