ウクライナのクルスク侵攻:米国の利益に悪影響2024年08月25日 15:28

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【概要】

 ウクライナによるクルスクへの侵攻がアメリカの利益に悪影響を与える5つの理由について説明している。

 1.ロシアがドンバスで勢力を増す可能性

 ウクライナは、ロシアがドンバスから兵力を引き抜くことを狙ってクルスクに侵攻したが、実際にはウクライナが自軍をドンバスからクルスクに移動させたことで、ロシアがドンバスで勢力を増す可能性がある。これは、アメリカのソフトパワーや民主党の選挙計画にも悪影響を与える恐れがある。

 2.外交的解決が困難に

 クルスクへの侵攻によって、プーチン大統領が和平交渉の再開を拒否したため、紛争の外交的解決の可能性がさらに遠のいた。一部のアメリカの政策立案者は、中国封じ込めのためにアジアに軸足を移したいと考えているが、ウクライナがロシア領を占領し続ける限り、その道は閉ざされている。

 3.ウクライナが紛争を拡大する可能性

 アメリカがクルスク侵攻を阻止しなかったことで、ウクライナはさらにベラルーシやモルドバ、他のロシア領へと紛争を拡大する可能性がある。ウクライナは、アメリカがどんな行動にも同調すると感じているため、このリスクが高まる。

 4.ロシアとアメリカの緊張がエスカレートするリスク

 クルスク侵攻によってロシアがアメリカとの緊張を急激に高める可能性は低いが、紛争が拡大すれば、状況が制御不能になるリスクがある。このリスクは侵攻が続く限り存在し、プーチン大統領が過激な対応を検討する可能性も否定できない。

 5.他のアメリカの同盟国が同様の行動を取る可能性

 ウクライナの行動を見て、他のアメリカの同盟国も隣国に対する攻撃や侵攻を行い、既成事実を作ろうとする可能性がある。アメリカは紛争を管理する能力を失う恐れがあり、特にソマリアのような国が突如紛争を引き起こす場合、その制御が困難になる。

 以上の理由から、クルスク侵攻はアメリカの利益を損なう可能性があるが、それにもかかわらずアメリカがウクライナに撤退を強制することは考えにくいと著者は指摘している。

【詳細】

 ウクライナがクルスクに侵攻したことが、なぜアメリカの利益に反するのかについて、5つの具体的な理由を挙げている。これらの理由は、ウクライナの行動が予期せぬ悪影響をもたらし、アメリカの戦略的目標や国際的な立場にどのように影響を与えるかを示している。

 1. ロシアがドンバスで勢力を増す可能性

 ウクライナがクルスクに侵攻した主な目的の一つは、ロシアがドンバスから兵力を分散させ、新たな戦線に注意を向けさせることであった。しかし、現実には逆の効果が生じている。ウクライナは、クルスク侵攻のためにドンバスから自軍の精鋭部隊を移動させたため、ドンバスでの防御が手薄になっている。この結果、ロシアがドンバスでの攻勢を強め、さらに多くの領土を掌握する可能性が高まる。ロシアの進展は、アメリカの外交的影響力(ソフトパワー)を弱め、特に民主党の選挙戦略に悪影響を与える可能性がある。もしロシアの勝利が目立つようになれば、アメリカ国内での政権の支持率低下や選挙での敗北リスクが増すだろう。

 2. 外交的解決が困難に

 クルスクへの侵攻は、ロシアとの和平交渉の可能性をさらに遠ざけた。侵攻後、プーチン大統領は和平交渉の再開を断固として拒否した。これにより、アメリカが希望する外交的解決の道が閉ざされ、紛争が長期化するリスクが高まる。アメリカの一部の政策立案者は、ロシアとの紛争を早期に終わらせ、中国への対抗策にリソースを集中したいと考えていまるが、ウクライナがロシアの領土を占領し続ける限り、こうした外交的解決は難しくなる。

 3. ウクライナが紛争を拡大する可能性

 クルスク侵攻において、アメリカがウクライナを制止しなかったことは、ウクライナにさらなる行動の自由を与える結果となりかねない。ウクライナは、アメリカがどんな行動にも同調すると感じ、紛争を拡大する可能性が高まっている。例えば、ベラルーシ、モルドバ、その他のロシア領土への侵攻を計画するかもしれない。これにより、ロシアとの緊張がさらに高まり、紛争の地域的拡大や新たな戦線の発生が現実のものとなる危険性が増す。

 4. ロシアとアメリカの緊張がエスカレートするリスク

 プーチン大統領は、現時点でクルスク侵攻に対して過激な対応を取ることは考えていないが、ウクライナがさらに領土を占領するか、紛争を他の地域に拡大する場合、ロシアとアメリカの間の緊張が急速にエスカレートする可能性がある。このような事態になれば、プーチンが「強硬派」の意見に耳を傾け、アメリカに対する予測不可能な反応を示すリスクも高まる。こうしたシナリオでは、アメリカとロシアの対立が深まり、予測不可能な事態に発展する恐れがある。

 5. 他のアメリカの同盟国が同様の行動を取る可能性

 ウクライナのクルスク侵攻を見た他のアメリカの同盟国が、同様に隣国に対する攻撃や侵攻を行い、既成事実を作ろうとする可能性がある。例えば、ソマリアのような国が突然隣国に侵攻し、アメリカに支援を求めるシナリオが考えられる。アメリカとしては、これらの紛争を管理し、制御する能力を維持したいと考えているが、多数の同盟国が独自の行動を取り始めると、その管理は困難になる。結果として、アメリカが世界中で多くの対立を抱え、戦略的目標を達成することが難しくなる可能性がある。

 結論

 以上の5つの理由から、ウクライナのクルスク侵攻はアメリカの利益を損なう可能性があると著者は指摘している。しかしながら、著者は、アメリカがウクライナに撤退を強制する可能性は低いと考えている。仮にアメリカが撤退を要求したとしても、ウクライナはこれを拒否するか、アメリカを公開で非難することで、アメリカを困難な立場に追い込む可能性がある。さらには、ウクライナが紛争を拡大し、第三次世界大戦の勃発を試みるリスクも存在する。これらの要因から、アメリカがこの状況に対して適切な対応を取ることは非常に難しいと考えられる。

【要点】

 ・ロシアがドンバスで勢力を増す可能性: ウクライナがクルスクに侵攻したことで、ドンバスから自軍を移動させたため、ロシアがドンバスでの勢力を拡大する可能性が高まり、アメリカの外交的影響力と民主党の選挙戦略に悪影響を与える。

 ・外交的解決が困難に: クルスク侵攻によって、プーチン大統領が和平交渉を拒否したため、紛争の外交的解決がさらに遠のき、アメリカが中国に対抗するためにアジアにリソースを集中させる戦略が困難になる。

 ・ウクライナが紛争を拡大する可能性: アメリカがクルスク侵攻を阻止しなかったことで、ウクライナがベラルーシやモルドバなど他の地域への侵攻を計画し、紛争がさらに広がるリスクが高まる。

 ・ロシアとアメリカの緊張がエスカレートするリスク: ウクライナがさらに領土を占領したり、紛争を拡大した場合、ロシアとアメリカの間の緊張が急速にエスカレートし、予測不可能な事態に発展する危険性がある。

 ・他のアメリカの同盟国が同様の行動を取る可能性: ウクライナの行動を見た他のアメリカの同盟国が、隣国への侵攻や攻撃を行い、アメリカに支援を求める可能性があり、アメリカが複数の紛争を管理する能力が低下する恐れがある。

【引用・参照・底本】

TFive Ways That Ukraine’s Invasion Of Kursk Actually Harms American Interests Andrew Korybko's Newsletter 2024.08.25
https://korybko.substack.com/p/five-ways-that-ukraines-invasion?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148098699&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

ウクライナ:ポクロフスク市の住民2024年08月25日 19:30

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【概要】

 ウクライナ東部のドンバス地方にあるポクロフスク市の住民が、戦闘が激化する中で避難を決意する様子を報じている。ポクロフスクは道路や鉄道が交差する戦略的な物流拠点であり、周辺の村々で数ヶ月間戦闘が続いている。

 ポクロフスクの駅で、近隣の町ミルノフラドから来た鉱山労働者オレクサンドルが、母親クラウディヤを避難させるために助ける場面が描かれている。クラウディヤは「息子が二人いて、一人は避難を望み、もう一人は望まなかったが、家族は分かれない」と語っている。

 また、町中を自転車で移動する引退した鉱山労働者イーホルも登場し、17歳の子供のために避難を決断したと話している。記事には、これらの人々が避難を決める難しさや、戦争が日常生活に与える影響が描かれている。

【詳細】

 ウクライナ東部のドネツク州にあるポクロフスク市の現状について報じている。ポクロフスクは、ドンバス地方の重要な交通拠点で、道路と鉄道が交差する戦略的な位置にある。このため、戦争が続く中でロジスティクスの要所となっており、周辺の村々で激しい戦闘が繰り広げられている。

 ポクロフスクの住民が避難を決断する様子が描かれている。町の駅では、近隣のミルノフラド町に住む鉱山労働者のオレクサンドルが、母親クラウディヤを避難させるために手助けしている。クラウディヤは、二人の息子のうち一人は避難を勧め、もう一人は反対していたと説明しつつも、「家族が分かれることはない」と強調している。

 さらに、記事では町中を自転車で移動する引退した鉱山労働者イーホルの様子が紹介されている。イーホルは、一見すると日常を楽しんでいるように見えるが、彼の心中には深刻な問題が横たわっています。彼は、自分と17歳の子供のために避難を決断しており、避難することの困難さについて語っている。

 これらのエピソードを通じて、記事はポクロフスク市の住民が戦争によって日常生活が崩壊し、避難という難しい選択を迫られている現実を伝えている。彼らの避難の決断は、家族を守るためのものであり、同時に彼らが住み慣れた場所を離れることの悲しみや葛藤も反映している。

【要点】

 ・ウクライナ東部のポクロフスク市の住民が、戦闘が激化する中で避難を決意する様子を報じている。
 ・ポクロフスクは道路と鉄道が交差するドンバス地方の重要な交通拠点であり、戦略的に重要な位置にある。
 ・戦闘が数ヶ月間周辺の村々で続いており、ロジスティクスの要所として注目されている。
 ・鉱山労働者のオレクサンドルは、近隣のミルノフラド町から母親クラウディヤを避難させるために手助けしている。
 ・クラウディヤは、二人の息子のうち一人は避難を勧め、もう一人は反対していたが、「家族が分かれることはない」と強調。
 ・引退した鉱山労働者イーホルも登場し、自分と17歳の子供のために避難を決断していることを述べている。
 ・住民たちが戦争によって避難を余儀なくされ、住み慣れた場所を離れることの難しさと悲しみを描いている。

【引用・参照・底本】

‘We gotta get out of here’: Pokrovsk residents flee strategic Ukrainian city FRANCE24 2024.08.23
https://www.france24.com/en/europe/20240823-we-gotta-get-out-of-here-pokrovsk-residents-flee-strategic-ukraine-city-donbas-russia-war-donetsk?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020240823&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

ウクライナ:実質的に主権を失った状態2024年08月25日 21:26

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【概要】

 ウクライナの独立後の発展に関する10の視点が述べられている。以下に要約する。

 1.国家としてのウクライナの形成: ウクライナは歴史的に「辺境」を意味するものであり、キエフ・ルーシ時代の中心地だったが、モンゴルの侵略やリトアニア大公国、ポーランドの支配を経て独自のアイデンティティを形成した。

 2.国民のアイデンティティの対立: ウクライナのアイデンティティには、ロシアと対立する急進的なものと、ロシアとの協力を排除しない穏健派が存在し、この二つの間で対立が続いている。

 3.社会経済的な崩壊の回避可能性: 独立時の人口とソビエトの産業遺産を活かせば、ヨーロッパの繁栄した国の一つになれたはずだが、これが実現しなかった。

 4.腐敗が国家を崩壊させた: ウクライナの崩壊は、競合するオリガルヒが国家の利益よりも個人的な経済利益を優先したことに起因する。

 5.色の革命は解決策ではなかった: 2004年と2013年の「色の革命」は、市民の正当な怒りを利用して西側がロシアに対抗するために仕組んだもので、根本的な問題解決にはならなかったとされている。

 6.覇権的な目標が代理戦争を予期させた: 「ユーロマイダン」はウクライナをNATOの最前線に変えるための西側の戦略であり、ロシアの主権を弱体化させることを狙ったものであった。

 7.偽の民主主義から独裁へ: 「ユーロマイダン」後、ウクライナは独裁国家へと変貌し、ロシアと協力する穏健派の復活を防ぐために、急進的なナショナリズムが国の事実上のイデオロギーになった。

 8.中国へのヨーロッパの陸橋の燃焼: ウクライナは、ヨーロッパと中国をつなぐ「ユーラシアランドブリッジ」としての役割を果たす可能性を失い、これはEUとロシア・中国の分断を目指す米国の戦略目標の一環とされている。

 9.西側エリートの新自由主義的遊び場: ウクライナは、独裁的なオリガルヒ体制のもとで、G7諸国やブラックロック、外国の農業投資家などが戦略的な経済セクターを支配するようになり、実質的な主権を失った。

 10.ウクライナ人は限界に近づいているのか?: ウクライナ人は独立以来、大きな失望を経験しており、特に徴兵政策に対する反発が強まっており、反乱の可能性も指摘されているが、政府は厳しく弾圧している。

 このように、ウクライナは独立後、腐敗と西側の影響により、国家としての潜在能力を失い、現在では実質的に主権を失った状態にあると論じられている。

【詳細】

 ウクライナの33周年独立記念日に際し、その歴史的背景や現在の状況を10の観点から振り返っている。著者のアンドリュー・コリブコは、ウクライナの独立後の発展が期待を裏切った原因や、現在の状況に至るまでの過程について批判的に考察している。以下に各視点をさらに詳しく説明する。

 1. 「概念」から生まれた国

 ウクライナという国名は「辺境」を意味するが、かつてはキエフ・ルーシという強大な文明の中心地であった。この文明がモンゴルの侵略によって滅びた後、リトアニア大公国がその中西部を支配し、後にポーランドと合併した。この結果、現在のウクライナはリトアニア・ポーランド連合とロシアの国境地帯となり、これが「ウクライナ」という概念の形成につながった。この長い歴史の過程で、独自の国民アイデンティティが育まれ、最終的には独立国家としてのウクライナが誕生した。

 2. 国民アイデンティティの対立

 ウクライナの国民アイデンティティには二つの主要な流れがある。一つはロシアとの違いを強調し、激しく敵対する急進的なもの。もう一つは、ロシアとの協力を完全には排除せず、社会経済の発展に焦点を当てる穏健派である。現在、急進派が主導権を握っているが、彼らは穏健派が再び力を取り戻すことを恐れており、そのために穏健派に対する迫害を続けている。この対立がウクライナの国家形成や政策決定において重要な役割を果たしてきた。

 3. 回避可能だった社会経済的崩壊

 独立時のウクライナは、5000万人以上の人口と豊富なソビエト時代の産業資産を持っており、さらにロシアからの豊富な資源の支援を受けていた。このような条件が揃っていれば、ウクライナはヨーロッパで最も繁栄した国の一つになる可能性があった。しかし、この機会は腐敗や政治的無能によって浪費され、人口は現在約3600万人に減少し、産業の衰退が続いている。信頼できる予測によれば、この経済的崩壊はさらに進行する見通しである。

 4. 腐敗が国家を崩壊させた

 ウクライナの経済的崩壊は、根深い腐敗が原因である。国内のオリガルヒ(寡頭政治家)たちは、国家全体の利益よりも自分たちの経済的利益を優先した。この結果、異なるオリガルヒの派閥がそれぞれの政治リーダーを掌握し、時が経つにつれて、これらの派閥と政治家は外国の勢力にも影響され、場合によっては完全に支配されるようになった。国民がこの腐敗を広く認識するにつれ、善意から始まった抗議運動が発生したが、これも後に外国勢力によって利用されることになった。

 5. 色の革命は解決策ではなかった

 ウクライナ人の多くは、2004-2005年と2013-2014年の「色の革命」が、自国を腐敗したオリガルヒから解放し、独立後に期待された未来を実現するものと信じていた。しかし、これらの革命は実際には西側諸国が主導したものであり、抗議運動を武器化してロシアに対抗するためのクーデターとして利用されたに過ぎない。市民の正当な不満が利用され、ウクライナはますます西側の影響下に置かれることとなり、根本的な問題は解決されないままであった。

 6. 覇権的な目標が代理戦争を予期させた

 「ユーロマイダン」は、ウクライナをアメリカの影響下に置き、ロシアの勢力圏から切り離すための策謀であった。この戦略の背後には、アメリカの地政学者ジビグニュー・ブレジンスキーの理論が影響を与えており、ウクライナがロシアの支配下にない限り、ロシアは「帝国」としての力を失うとされた。この記事は、アメリカのこの覇権的目標がなければ、第二次世界大戦以来ヨーロッパで最大の紛争(ウクライナ紛争)は勃発しなかっただろうと指摘している。

 7. 偽の民主主義から実際の独裁へ

 「ユーロマイダン」以前のウクライナは形式上の民主主義国家であったが、この革命以降、実質的には独裁国家へと変わった。さらに、アメリカはウクライナにおいて、ロシアに敵対する急進的なナショナリズムを事実上の国家イデオロギーとして押し付け、ロシアと協力を図る穏健派が権力を取り戻すことを防ぐための体制を確立した。その結果、ウクライナは10年前よりもはるかに政治的な自由を失った状態にある。

 8. 中国へのヨーロッパの陸橋の喪失

 「ユーロマイダン」後のウクライナにおける地域的な軍事的・政治的変化は、広範な地経済的な影響も伴った。ウクライナがヨーロッパと中国を結ぶ「ユーラシアランドブリッジ」として機能する可能性は、西側が促進したロシアとウクライナの緊張によって失われた。これにより、アメリカはEUとロシア・中国の「デカップリング」(経済的・政治的な切り離し)という大戦略目標を推進した。

9. 西側エリートの新自由主義的遊び場

「ユーロマイダン」以降、ウクライナの社会経済的崩壊が加速し、その結果、ウクライナは西側エリートの新自由主義的な「遊び場」と化した。G7諸国、ブラックロック、外国の農業投資家などが、ウクライナの戦略的経済セクターを支配しており、ウクライナの主権は名目上のものとなっている。ウクライナがこれらの産業に対する国家の支配を取り戻すことはほぼ不可能とされている。

 10. ウクライナ人は限界に達しているのか?

 独立以来、ウクライナ人は甚大な苦難と失望を経験してきた。最近の強制徴兵政策に対する抵抗の高まりは、国民の一部がついに体制に対抗する決意を固めたことを示している。しかし、これが全面的な反乱に発展するかどうかは不明であり、ウクライナの秘密警察は反対運動を厳しく弾圧している。

 全体を通じて、著者はウクライナが独立後に期待された社会経済的潜在力を発揮できなかった原因を、腐敗と西側の影響に求めている。また、ウクライナの現在の状況は、主権を失い、オリガルヒと西側勢力に支配された独裁国家へと転落した結果であると述べている。

【要点】

 ・概念から生まれた国: ウクライナは、かつてキエフ・ルーシの中心地であったが、モンゴルの侵略後、リトアニアとポーランドの支配下で「辺境」としてのアイデンティティを形成し、独立国家となった。

 ・国民アイデンティティの対立: ウクライナにはロシアとの敵対を強調する急進派と、協力を排除しない穏健派が存在し、この対立が国の政策を左右してきた。

 ・回避可能だった社会経済的崩壊: ウクライナは独立時に繁栄の可能性を持っていたが、腐敗と無能な政治により、その機会を失い、経済的に崩壊した。

 ・腐敗が国家を崩壊させた: オリガルヒたちが自己利益を優先し、外国勢力に影響されることで、ウクライナの経済はさらに悪化した。

 ・色の革命は解決策ではなかった: 2004年と2013年の革命は、西側が主導したウクライナの政権交代であり、国民の不満を利用したもので、根本的な問題解決には至らなかった。

 ・覇権的な目標が代理戦争を予期させた: 「ユーロマイダン」は、ウクライナをアメリカの影響下に置き、ロシアの勢力圏から切り離すための策謀であり、これが大規模な紛争の原因となった。

 ・偽の民主主義から実際の独裁へ: 「ユーロマイダン」後、ウクライナは急進的なナショナリズムを国家イデオロギーとし、独裁国家に転落した。

 ・中国へのヨーロッパの陸橋の喪失: ロシアとの緊張により、ウクライナがヨーロッパと中国を結ぶ経済的な橋渡しとしての役割を失った。

 ・西側エリートの新自由主義的遊び場: ウクライナの産業は西側エリートや外国勢力に支配され、実質的な主権を失っている。

 ・ウクライナ人は限界に達しているのか?: 強制徴兵政策に対する抵抗が広がり、一部の国民が体制に反抗する兆しが見られるが、反乱に発展するかは不明。

【引用・参照・底本】

10 Reflections On Ukraine After Its Latest Independence Day Celebrations Andrew Korybko's Newsletter 2024.08.25
https://korybko.substack.com/p/10-reflections-on-ukraine-after-its?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148102626&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email