イスラエル:冷静かつ計画的なMAD戦略2024年08月13日 09:20

Microsoft Designerで作成
【桃源寸評】
 
 「相互確証破壊」の略である、此の「MAD戦略」理論は既に破綻している。つまり、「MAD戦略」は機能せず、際限なき〝狂瀾の戦場〟を招来させているからである。

 狂気(人)が狂気(人)を呼び、不狂人と云う狂人が狂人を操るという、物事の正常性が成立しない時代が現出している。

 イスラエルは国家なのか。
 
【寸評 完】

【概要】

 イスラエルの行動は、しばしば不合理で無謀と認識されているが、実際には「MAD戦略」として知られる計算された戦略の一部であり、「相互確証破壊」の略であると主張している。この戦略は抑止理論に根ざしており、敵が壊滅的な報復を恐れて攻撃するのを防ぐために、攻撃的で予測不可能なイメージを作り出すことが含まれる。

 イスラエルが国家として樹立される前から一貫してこの戦略を採用しており、その目的を達成し、敵と味方の両方がその行動に挑戦するのを抑止するために極端な手段を使用してきたことを示唆している。イスラエル建国前のシオニスト民兵による攻撃や、その後の戦争や軍事作戦などの歴史的な例を引用し、イスラエルがこのアプローチをどのように利用して影響力を拡大し、安全保障を維持してきたかを示している。

 さらに、標的暗殺や攻撃的な軍事攻撃を含むイスラエルの最近の行動は不合理ではなく、むしろこの長年のMAD戦略の継続であると主張している。その狙いは、地域の敵対者と国際社会の両方に衝撃を与え、威嚇してイスラエルの行動を容認させ、それによってイスラエルの支配と安全を維持することである。

 これに対して、イスラエルに対抗する国家主体と非国家主体の連合体である「抵抗の枢軸」が、イスラエルの挑発に立ち向かい、効果的に報復することで、この戦略にますます挑戦し、それによってイスラエルの抑止力を弱め、その脆弱性を露呈させていることを論じている。

 全体として、イスラエルの行動を、恐怖と予測不可能性を通じてその権力と安全を維持するための意図的で合理的な戦略の一部として描写すると同時に、この地域でこのアプローチに対する抵抗が高まっていることを強調している。

【詳細】

 イスラエルの行動が一見すると「狂気」や「無謀」に見えることが多いが、実際には非常に計画的で理性的な戦略に基づいていると主張している。この戦略は「MAD戦略」と呼ばれ、これは「Mutually Assured Destruction(相互確証破壊)」の略で、敵が攻撃を思いとどまるようにするために、自らを予測不能で攻撃的な存在として位置付けるというものである。

 MAD戦略の概要

 MAD戦略は、主に抑止理論から派生したものであり、相手に対して自分が攻撃されれば相手をも道連れにするという威嚇的な姿勢を見せることで、敵が自分を攻撃するのを防ぐことを目的としている。イスラエルは、国土の狭さや人口の少なさ、経済的・政治的な制約を認識し、それを補うためにこの戦略を採用している。

 歴史的背景

 イスラエルのMAD戦略は、1948年の建国以前から存在していた。シオニスト民兵が英国の外交官を暗殺し、キング・デイヴィッド・ホテルを爆破し、ディール・ヤシン虐殺を行ったなど、英国統治下のパレスチナで多くのテロ行為を実行した。これらの行動は、パレスチナの先住民を追放し、国際社会の支援を得てイスラエルという国家を設立するためのものであった。この時点で既に、イスラエルは攻撃的で脅威的な存在感を示していた。

 現代のMAD戦略

 イスラエルは、2023年10月7日のパレスチナ抵抗勢力による軍事作戦に対する対応として、さらに「狂気」を増幅させた。ガザのアル・シファ病院を攻撃し、数百人の市民を殺害するなど、イスラエルの行動は意図的に残虐なものであり、国際社会に対して自らの過激な行動を認めさせることを目的としていた。また、ロシアのプーチン大統領に対しても、シリア紛争中に同様の手法を用いて圧力をかけてきた。

 対抗戦略としての抵抗軸

 「抵抗軸」として知られるイラン、シリア、ヒズボラ、ハマス、イラクの民兵組織などが、このMAD戦略に対抗する唯一の勢力であると説明されている。これらの組織や国は、イスラエルの攻撃に対して「同等の報復」を行うことで、イスラエルの威嚇力を削ぎ、その戦略を弱体化させることに成功している。例えば、ヒズボラは1993年と1996年の衝突でイスラエルの市民を標的にし、イスラエルをして市民を攻撃しないという暗黙の合意を結ばせた。また、2006年のレバノン戦争では、イスラエルは目標を達成できず、国連決議によって軍事・市民攻撃が禁止される結果となった。

 結論

 最終的に、イスラエルが取ってきた行動が単なる狂気ではなく、冷静かつ計画的なMAD戦略であると結論付けている。この戦略に対抗するには、イスラエルの脅威に屈せず、毅然とした対応を取ることが重要であると述べている。抵抗軸の成功は、イスラエルがこれまで以上に「狂気」に見えるようにし、その戦略の限界を露呈させたと主張している。

【要点】

 ・MAD戦略の概要: イスラエルは「Mutually Assured Destruction(相互確証破壊)」に基づき、敵を攻撃的かつ予測不能な存在として位置付け、攻撃を防ぐ戦略を採用している。

 ・歴史的背景: イスラエルは1948年の建国以前から、シオニスト民兵によるテロ行為を通じてMAD戦略を実行していた。

 ・現代の実施例: 2023年10月7日のパレスチナ抵抗勢力による作戦に対して、イスラエルは意図的に残虐な行動を取り、国際社会にその行動を認めさせることを狙った。

 ・過去の使用例: イスラエルはロシアや他の国々に対しても、シリア紛争中などで同様の威圧的な戦術を用いて圧力をかけてきた。

 ・抵抗軸の対抗戦略: イラン、シリア、ヒズボラ、ハマスなどの「抵抗軸」は、イスラエルの攻撃に対して同等の報復を行い、イスラエルの威嚇力を弱体化させた。

 ・対抗の成功例: ヒズボラの1993年と1996年の衝突、2006年のレバノン戦争などで、イスラエルは市民攻撃を控える合意を結ばされ、戦略の限界が露呈した。

 ・結論: イスラエルの行動は狂気ではなく、冷静かつ計画的なMAD戦略であり、これに対抗するには毅然とした対応が必要である。

【参考】

 ➢ Mutually Assured Destruction(相互確証破壊)は、冷戦時代に生まれた抑止理論で、核兵器を保有する複数の国家が、互いに相手を破壊する能力を持つことで、実際の核戦争が起こることを防ぐという考え方である。この理論では、いずれかの国が先制攻撃を行えば、報復によって相手国も同様に破壊されるため、全体として戦争が避けられるとされている。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Israel isn’t crazy, it’s just MAD 2024.07.31
https://thecradle.co/articles/israel-isnt-crazy-its-just-mad

コメント

トラックバック