フィリピン:南シナ海で中国を挑発2024年11月12日 21:22

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【概要】
 
 フィリピンが南シナ海において中国との緊張を高める行動を続けていると批判している。主に、フィリピンが導入した国内法「フィリピン海洋区域(PMZ)法」と「フィリピン群島航路(PASL)法」に焦点が当てられている。これらの法律は、2016年の南シナ海仲裁判決をフィリピンの国内法に組み込み、同判決を基にフィリピンが南シナ海における権利を主張しやすくすることを目的としている。さらに、フィリピンは「島を奪取する」訓練を含む軍事演習を実施し、アメリカから中距離ミサイルの購入も検討しているとされる。

 中国側は、このような動きについて、フィリピンが「国内法」を用いて南シナ海における違法行為を正当化しようとしていると見ている。また、フィリピンが米国と協力することで南シナ海の問題を深刻化させ、地域の安定を脅かす行動を取っていると非難している。このようなフィリピンの動きに対し、中国は11月10日に黄岩島の領海基線を発表し、フィリピンの行動が中国の主権を侵害していると国際社会に訴えた。

 さらに、フィリピンの動きを「海賊行為」に例え、フィリピンが南シナ海において他国の船舶や航空機の合法的な航行を制限しようとしていると批判している。また、このような行為が国際連合海洋法条約および国際海事機関の決議にも反すると指摘し、地域の軍事的介入の下地を作る可能性があると警告している。

 中国は1992年の「中華人民共和国領海および接続水域法」に基づき、黄岩島の領海基線を発表する権利を長く有してきたが、周辺諸国との友好的な関係を重視してこれまで発表を控えてきたと説明している。しかし、この中国の配慮は、フィリピンが南シナ海での挑発行為を続けることを容認するものではないと主張している。

 最後に、中国側は、フィリピンがこのまま挑発行為を続ければ、自国の損害にしかつながらないと警告している。米国との連携によって南シナ海が不安定化し、地域諸国の期待に反する行動を取るフィリピンは、地域の平和と安定を乱す存在として位置づけられていると批判している。また、ASEAN諸国の多くは南シナ海問題の最善の解決策として当事者間の交渉や共同開発の追求を望んでおり、フィリピンもその意向を重視して挑発行為を控え、対話と交渉に戻るべきであると述べている。

【詳細】

 フィリピンが南シナ海において中国を挑発していると見なし、その具体的な行動や背景、そしてその影響について詳述している。

 1. フィリピンの新たな国内法とその意図

 まず、フィリピンが11月初めに導入した「フィリピン海洋区域(PMZ)法」と「フィリピン群島航路(PASL)法」は、南シナ海における2016年の仲裁裁判所の判決をフィリピン国内で合法化する試みとされている。この仲裁裁判所の判決は、フィリピンの主張を一部認め、中国の主権に対する一部の主張を否定する内容であった。しかし中国は、この判決を認めず、これを「無効である」としてきた。今回の法律制定によって、フィリピンはこの国際的な判決を国内法に組み込み、自国の立場を強化する意図があるとされる。

 フィリピン側は、この法律を通じて、南シナ海での自国の権利や領土をより強固に主張するための基盤を築こうとしている。また、フィリピンはこの国内法によって南シナ海での「航行の自由」の概念を再解釈し、他国の船舶や航空機に対して南シナ海での移動を制限する可能性を持たせていると見なされている。これにより、地域の海上交通におけるフィリピンの影響力を強化し、周辺国に圧力をかける意図があるとの指摘がある。

 2. 米国との協力と軍備増強

 フィリピンが米国と緊密に連携しながら、挑発的な軍事行動を取っていると非難している。具体的には、フィリピンが「島を奪取する」という軍事訓練を行っている点が挙げられている。さらに、フィリピンの国防長官が「米国から中距離ミサイルの購入を検討している」と述べたことから、フィリピンは軍備を拡充し、さらなる攻撃能力を備えようとしているとされる。このような米国との協力関係が、フィリピンをして自国の力を過信させており、フィリピンが挑発行為をさらにエスカレートさせる要因となっていると見ている。

 このような背景から、フィリピンの挑発的な行動は米国の支持によって支えられているとの指摘がある。特に、米国務省がフィリピンの国内法に即座に支持を表明したことから、フィリピンは米国に背後を支えられているとの「錯覚」に陥っていると批判されている。

 3. 「海賊行為」としてのフィリピンの行動

 中国側は、フィリピンの行動を「海賊行為」として強く非難している。フィリピンが新たに導入した国内法により、南シナ海における通航権を独自に管理し、他国の船舶や航空機に対して制限を設けようとしているとみなしている。このような行動は、国連海洋法条約および国際海事機関の決議に違反するものであり、他国の正当な航行権を脅かすものとされる。また、この動きが南シナ海の地域緊張を高め、将来的に米国など外部勢力の軍事介入を招く可能性もあると警告している。

 4. 中国の対応と領海基線の発表

 中国はフィリピンの挑発行為に対抗し、11月10日に黄岩島(スカボロー礁)の領海基線を発表した。これにより、国際社会に対して南シナ海における自国の領有権を主張し、フィリピンが「中国の主権を侵害している」と訴えた。この対応は、中国が海洋管理の一環として具体的な規則を明確にし、今後もフィリピンの行動に対して反発を示す準備があることを表している。なお、中国は1992年に制定した「中華人民共和国領海および接続水域法」に基づいて黄岩島の領海基線を発表する権利を持っており、これまでは友好関係を重視し、公表を控えてきたが、フィリピンの挑発に対して黙っていられない状況になったとされる。

 5. ASEAN諸国の意向と地域平和の維持

 中国側は、ASEAN諸国の多くが南シナ海問題の解決策として当事者間での交渉や共同開発を支持しており、フィリピンの行動がこれに反するものだと主張している。地域の平和と安定を重視するASEAN諸国は、外部勢力の干渉や対立の激化を望んでおらず、平和的な話し合いや協力関係の構築を重視しているとの見解が述べられている。フィリピンは、米国の支援によって自国の主張を貫こうとするのではなく、周辺国との協調を重視し、対話に戻るべきであると中国側は訴えている。

 6. フィリピンへの警告と中国の主張

 フィリピンがこのまま挑発行為を続けることが「自国に損害をもたらすだけ」であると警告している。フィリピンが「米国との結託」によって南シナ海を不安定化させる存在になりつつあるとし、この行動が地域の平和と安定を脅かしていると批判している。フィリピンが「挑発を通じて利益を得られる」という幻想に陥ることなく、冷静に振る舞うべきであると忠告し、中国との対話を通じた解決を目指すことが国益に適うと強調している。

【要点】

 1.フィリピンの新法導入

 ・フィリピンは「フィリピン海洋区域(PMZ)法」と「フィリピン群島航路(PASL)法」を制定。
 ・これにより、2016年の南シナ海仲裁裁判所判決を国内法に組み込み、自国の主張を強化しようとしている。

 2.米国との協力と軍備増強

 ・フィリピンは南シナ海での軍事訓練を行い、米国からの中距離ミサイル購入も検討。
 ・米国の支持を受け、挑発的な行動を強化している。

 3.「海賊行為」としての非難

 ・フィリピンの行動は、他国の航行の自由を制限し、国際法や海洋法に違反するとして非難されている。
 ・地域の緊張を高め、将来的な外部勢力の軍事介入を招く可能性がある。

 4.中国の対応

 ・中国は11月10日に黄岩島の領海基線を発表し、自国の領有権を強調。
 。これにより、今後もフィリピンの挑発に反応していく姿勢を示している。

 5.ASEAN諸国の意向

 ・ASEAN諸国は対話や共同開発を望んでおり、フィリピンの行動は地域の平和維持の方針に反すると見られている。

 6.フィリピンへの警告

 ・フィリピンが挑発行為を続けると、自己損害に繋がると警告。
 ・冷静に対話に戻ることで国益を守るべきと強調。

【引用・参照・底本】

Manila has no 'guarantee slip' for provoking China: Global Times editorial GT 2024.11.12
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1322888.shtml

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