米国:核融合エネルギー分野で中国に遅れを取る2024年12月25日 17:52

Microsoft Designerで作成
【概要】

 アメリカが核融合エネルギー分野で中国に遅れを取っている問題について、以下に説明する。

 核融合エネルギーにおける中国の進展

 中国は核融合を商業エネルギー源として実現するため、驚異的なスピードで進展を遂げている。2025年に安徽省合肥市で完成予定の「核融合技術総合研究施設(CRAFT)」は、核融合研究において他に類を見ない科学的・工学的なインフラを提供する予定である。この施設は、核融合エネルギー商業化への重要な中間ステップとして機能する。

 中国はすでに「EAST」という核融合炉でプラズマ保持の記録を樹立しており、さらなる重要な実験も各地で進行中である。2027年には「燃焼プラズマ試験炉」が稼働予定であり、これらは「中国核融合工学試験炉(CFETR)」というプロトタイプ発電所の実現に向けた基盤を構築している。

 アメリカの現状

 一方で、アメリカは長年核融合研究で世界をリードしてきたが、近年では連邦政府の支援不足により、その地位を失いつつある。ワシントンD.C.では中国との技術競争における優位性維持が語られているにもかかわらず、核融合分野への政府の取り組みは限定的である。

 民間セクターでは、多額の投資とともに商業発電の実現を目指す野心的なプロジェクトが進行しているが、政府からの支援が不十分であるため、全体的な進展が阻まれている。Fusion Industry Association(FIA)のCEOであるアンドリュー・ホランド氏によれば、アメリカは長期計画や必要な基盤整備に関する具体的な青写真を持ちながらも、連邦政府による十分な予算確保や迅速な実行が伴っていないとされている。

 政府プログラムの課題

 現在、エネルギー省(DOE)の核融合エネルギー科学プログラムには予算が増加しているものの、大部分は「既存プログラム」に割り当てられている。これらのプログラムは基礎科学やプラズマ物理学の理解には重要だが、商業化に直結する研究にはあまり貢献していない。

 一方で、「INFUSE(核融合エネルギーのイノベーションネットワーク)」や「FIRE(核融合イノベーション研究エンジン)」といった新たな公私パートナーシッププログラムも開始されている。しかし、これらの予算規模はまだ小さく、商業化への移行を本格的に進めるには十分ではない。

 民間セクターの役割

 アメリカの民間セクターでは、複数の企業が独自のプロジェクトを進めている。例えば、コモンウェルス・フュージョン・システムズ社はマサチューセッツ州デベンズでデモンストレーショントカマクを建設中であり、ワシントン州エベレットではヘリオン社が「ポラリス」というデモ機を開発している。また、Zap Energy社も「FuZE-Q」という装置をテストしている。

 さらに、MITをはじめとする研究機関は、民間資金を活用して核融合業界のための材料試験施設を設立するなど、政府の支援が限られる中でも進展を続けている。

 中国との比較

 中国政府は商業化プログラムのためのインフラ構築に積極的であり、CRAFTのような統合施設を迅速に建設している。一方、アメリカでは類似の計画が提案されているものの、実際の建設や実行には至っていない。

 提言

 ホランド氏によれば、アメリカが核融合エネルギー分野でリーダーシップを維持するためには、以下の施策が必要である:

 ・商業化インフラの整備:材料試験スタンドや燃料サイクル試験センターの設置。
 ・公共施設の活用:政府が建設した施設を民間企業が利用する仕組みの導入。
 ・予算の確保:既存プログラムに偏らず、新しい商業化プログラムに重点を置いた予算配分。

 これらの取り組みがなされなければ、中国に対する競争力を維持することは難しいであろう。

 米国が中国に後れを取る核融合競争:重要ポイント

 米国政府の資金不足

 ・核融合産業CEOであるアンドリュー・ホランド氏は、米国の核融合企業に対する政府の資金不足を指摘している。
 ・米国の官民連携プログラムは資金が不足しており、これまでに割り当てられたのはわずか4600万ドルであり、目覚ましい進展を遂げるには極めて不十分である。

 中国の戦略的焦点

 ・中国は核融合を戦略産業として優先しており、「燃焼プラズマ実験超伝導トカマク(BEST)」のようなプロジェクトを通じて主導権を握ることを目指している。
 ・エナジー・シンギュラリティやENNといった中国の民間企業は、国家支援の取り組みと並行して十分な資金を得て、核融合技術を進展させている。

 米国CHIPS法からの教訓

 ・CHIPS法による540億ドルの半導体投資は、政府資金が戦略産業における民間セクターの成長をいかに促進できるかを示している。
 ・米国の競争力を維持するためには、核融合分野でも同様の資金提供が必要である。

 労働力開発の比較

 ・中国は核融合科学と工学における博士号取得者を米国よりはるかに多く輩出している。
 ・米国は市場主導型の解決策に依存して労働力を訓練しているが、優秀な米国訓練生が国内での機会不足により海外に流出する懸念が存在する。

 米国のインフラ需要

 ・米国の国立研究所は、DIII-DトカマクやNSTX-Uのような老朽化した施設に注力しており、画期的な進展を生む能力が限られている。
 ・研究中心の科学から商業化志向のインフラへ移行するための投資が必要である。

 官民連携の可能性

 ・米国は宇宙商業化で成功を収めたNASAのCOTSプログラムを核融合分野で再現できる可能性がある。
 ・マイルストーンベースの資金モデルは民間セクターのイノベーションを促進し得るが、これには大幅な財政支援が必要である。

 中国の二重アプローチ

 ・中国の核融合の取り組みは、政府主導のイニシアチブと成長する民間セクターの関与を融合させている。
 ・資金源として、電気自動車企業のNIOや国家支援プログラムが挙げられる。

 米国の行動の緊急性

 ・中国が急速に進展する中、米国の立法者は今後の競争力資金で核融合を優先するよう求められている。
 ・提案には、核融合インフラと官民連携のための30億ドルから100億ドルの追加資金要請が含まれている。

 戦略的意味合い

 ・核融合は、二酸化炭素を排出しないエネルギーを提供し、エネルギー安全保障や世界的な科学的リーダーシップの課題に応えるものである。
 ・核融合競争で後れを取ることは、米国の戦略的および技術的リーダーシップを損なう可能性がある。

【詳細】

 アメリカが核融合エネルギー開発において中国に遅れを取っている現状を取り上げている。核融合技術は将来のエネルギー供給において画期的な技術とされており、エネルギー安全保障や地球温暖化対策の観点から重要性が高い。この分野での国際競争は激化しており、中国がこの分野で急速にリードを広げていることが強調されている。

 中国の取り組み

 中国は2025年に予定されている「核融合技術総合研究施設(CRAFT)」の完成に向け、核融合エネルギーの商業化に必要な科学技術インフラを構築している。さらに、中国の「中国核融合工学試験炉(CFETR)」のプロトタイプが計画中であり、「燃焼プラズマ試験炉」が2027年に稼働予定である。これに加え、中国のEAST(超導核融合試験炉)はプラズマの閉じ込め時間で記録を保持しており、その他の核融合関連実験も各地で進行している。中国政府はこれらのプロジェクトに多額の投資を行い、必要な研究者や技術者を養成している。

 アメリカの現状

 一方で、アメリカは1950年代から核融合研究のリーダーであったものの、近年は連邦政府による支援の不足が問題視されている。特に、米国エネルギー省(DOE)の核融合エネルギー科学プログラムは予算の増加があったものの、多くの資金が既存の「レガシー」プログラムに割り当てられており、新規プロジェクトへの資金配分が不足しているとされる。これらのレガシープログラムは基礎科学やプラズマ物理学の研究には重要だが、核融合エネルギーの商業化に直結するものではない。

ただし、アメリカには核融合エネルギーに関する長期的な計画が存在している。2021年には米国核融合研究コミュニティがDOEの要請に応じ、核融合エネルギーの実現に向けた長期計画を策定した。また、2022年にはホワイトハウスが「核融合の商業化に向けた大胆な10年ビジョン」を発表した。しかしながら、これらの計画を実行するための予算が依然として十分ではないとされる。

 民間セクターの役割

 アメリカでは、政府の支援が不足している中でも、民間企業が核融合エネルギー開発の中心的役割を担っている。例えば、Commonwealth Fusion Systems(CFS)は、マサチューセッツ州でトカマク型核融合装置のデモンストレーターを建設中である。また、Helion Energy(ヘリオン)はワシントン州で「Polaris」と名付けられた装置の建設を進めており、Zap Energyも同州で新しい核融合技術の試験を行っている。さらに、マサチューセッツ工科大学(MIT)は核融合業界が利用できる材料試験用のサイクロトロンを構築するため、フィランソロピーの資金を調達している。

 課題と提案

 アメリカが核融合技術でリーダーシップを維持するためには、以下の課題に対処する必要があるとされる。

 1.インフラの構築:材料試験施設や燃料サイクル試験センターなど、商業化に向けた基盤を整備する必要がある。
 2.政府と民間の連携:政府が公共施設を整備し、民間企業がそれを利用する仕組みを強化すべきである。航空宇宙産業における風洞施設の例が挙げられる。
 3.予算の増加:DOEの核融合エネルギー科学プログラムの予算を増やし、商業化に直結するプロジェクトへの投資を拡大する必要がある。

 結論

 中国が国家主導で核融合技術の商業化に向けた大規模な取り組みを進める中、アメリカでは民間セクターの活発な活動が技術開発を牽引している。しかし、政府の支援が不足している現状では、中国との競争においてリーダーシップを失う可能性がある。この記事は、アメリカが核融合エネルギーの未来において主導権を握るために、政府が早急に行動を起こす必要性を訴えている。

 核融合エネルギー開発における米国と中国の競争状況、特に両国の政策や投資の違いについて詳述している。以下に要点を整理し、さらに詳しく説明する。

 1.核融合エネルギーの重要性

 核融合は、未来のエネルギー源として極めて重要視されている。以下の特長がある。
 ・ゼロカーボン排出:二酸化炭素を排出せず、気候変動対策として有望。
 ・燃料の豊富さ:地球上に広く存在する燃料(水素同位体)を使用するため、枯渇の心配がない。
 ・エネルギー安全保障:安定した供給が可能。

 これにより、核融合はエネルギーの「聖杯」とも呼ばれ、多くの国が競争的に研究・開発を進めている。

 2. 米国の現状

 米国では核融合研究に関する政策が存在するものの、資金配分や政策のタイミングが不十分とされている。

 主要な課題

 1.資金不足

 ・予算の大半が国家プロジェクト(例えばITER)や既存の設備(DIII-D、NSTX-U)に割り当てられている。
 ・公私連携の予算(マイルストーンベースのプログラム)では、これまでに約4600万ドルしか投入されていないが、効果を出すには10倍以上が必要。
 ・例えば、NASAの民間宇宙開発支援(COTS)プログラムでは5000万ドル規模の投資が行われた結果、スペースXが成功を収めた事例がある。

 2.官僚的な停滞

 ・ワシントンでは、既存の政策が変わりにくく、新しい分野への投資が遅れる傾向がある。
 ・特に政権末期には新規予算が組まれにくい状況。

 3.人材流出の懸念

 ・米国の大学や研究機関は市場志向で、質の高い教育を提供しているが、優秀な人材が海外(英国やドイツなど)に流出している。
 
 政府の対応

 ・米国政府は、インフラ投資法やCHIPS法で半導体産業などへの大規模投資を行ったが、核融合分野はそれほど優先されていない。
 ・現在、2025年に向けて3~10億ドル規模の追加予算が提案されており、核融合分野へのさらなる投資が期待されている。

 3. 中国の取り組み

 中国は核融合エネルギーを国家戦略として位置づけ、政府と民間が連携して大規模な投資を行っている。

 主なプロジェクト

 1.政府プロジェクト

 ・BEST(燃焼プラズマ実験用超伝導トカマク):ITERクラスの装置で、ブレークイーブン(核融合反応のエネルギー収支均衡)を目指す。
 ・CRAFT(核融合技術総合研究施設):核融合研究のための包括的なインフラを提供。

 2.民間企業の参入

 ・ENN、Startorus Fusion、Energy Singularity:これらの企業が最先端の高温超伝導磁石やトカマク技術を活用して、次世代の核融合技術を開発中。
 ・電気自動車メーカーNIO:BESTの資金の一部を提供している可能性があり、民間資金が国家プロジェクトを支えている。

 人材育成

 中国では核融合科学や工学分野のPhD(博士号)取得者が米国の10倍以上いるとされ、国内での人材育成が加速している。

 体制の特徴

 ・中国の体制は完全な指令型経済ではなく、政府と民間の競争的な連携が行われている。
 ・一部の企業には「名目上民間」とされるものの、国家主導の資金が流れている。
 
 4. 米中比較のまとめ

項目     米国             中国
資金規模 不足(年間予算800百万ドル程度) 国家・民間連携で大規模投資(具体的金額不明)
政策     官僚的で進展が遅い     国家戦略として明確に優先
人材育成 質は高いが量で劣る     国内での博士号取得者が豊富
産業構造 公私連携の試みが進行中     民間と国家が緊密に協力

 5. 今後の展望

 米国は競争力を維持するため、以下の取り組みが必要とされる。

 1.公私連携プログラムの予算を10倍規模に増やす。
 2.国家政策として核融合を「最重要戦略産業」と位置づける。
 3.人材流出を防ぎ、国内での科学技術力を維持するためのインセンティブを設ける。
 4.他国(特に中国)の進展を意識し、タイムリーな政策変更を行う。

 中国の進展を前に、米国が遅れを取るリスクは現実的であり、今後数年間が核融合開発における国際競争の分水嶺となる可能性が高い。

【要点】

 中国の取り組み

 ・2025年に「核融合技術総合研究施設(CRAFT)」完成予定。
 ・「中国核融合工学試験炉(CFETR)」や「燃焼プラズマ試験炉」など複数の大規模プロジェクトを推進中。
 ・超導核融合試験炉EASTがプラズマ閉じ込め時間で記録保持。
 ・政府が大規模な投資を行い、研究者や技術者の育成を進めている。

 アメリカの現状

 ・長年核融合研究を主導していたが、政府支援の不足が課題。
 ・DOEの核融合エネルギー科学プログラムは基礎科学に重点を置き、商業化への直接的投資が不足。
 ・2021年に長期計画、2022年に「大胆な10年ビジョン」を策定するも予算が不十分。

 民間セクターの役割

 ・Commonwealth Fusion Systems(CFS)やHelion Energy、Zap Energyなどが独自技術で開発を進行中。
 ・MITが核融合材料試験用サイクロトロンを計画中。
 ・民間企業が政府支援の不足を補い、技術開発を牽引。

 アメリカの課題

 1.インフラ整備:材料試験施設や燃料サイクル試験センターなどの基盤構築が必要。
 2.政府と民間の連携強化:公共施設を政府が提供し、民間が活用する仕組みを強化。
 3.予算の増加:DOEの商業化プロジェクトへの資金配分を拡大。

 結論

 ・中国は国家主導で核融合技術を推進し、商業化に向けてリードしている。
 ・アメリカは民間セクターが主導するものの、政府の支援が不十分。
 ・アメリカが競争力を維持するには、政府の迅速な行動と投資の拡大が必要である。

 1.核融合の重要性

 ・二酸化炭素排出ゼロ、燃料の豊富さ、安定供給可能性でエネルギーの未来を担う。

 2.米国の現状

 ・資金不足:予算はITERや既存設備に集中し、新規プロジェクトへの投資が遅れている。
 ・官僚的停滞:政策が変わりにくく、新しい分野への支援が不足。
 ・人材流出:質は高いが優秀な人材が海外に流れる傾向がある。
 ・政府対応:インフラ投資法やCHIPS法に注力するも、核融合分野の優先度は低い。

 3.中国の取り組み

 ・政府プロジェクト:ITERクラスの装置(BEST)や研究施設(CRAFT)を推進。
 ・民間企業の参入:ENN、Startorus Fusionなどが最先端技術を開発。
 ・人材育成:核融合分野の博士号取得者が米国の10倍以上。
 ・国家戦略:政府と民間が連携し、競争的な開発体制を構築。

 4.米中比較

 ・資金規模:米国は不足、中国は国家・民間で大規模投資。
 ・政策:米国は官僚的停滞、中国は明確な国家戦略。
 ・人材:米国は質で優位、中国は量で圧倒的優位。
 ・産業構造:米国は公私連携途上、中国は緊密な連携体制。

 5.今後の課題と展望(米国)

 ・公私連携プログラムの予算拡大(現状の10倍規模)。
 ・核融合を最重要戦略産業として位置づけ。
 ・人材流出防止のためのインセンティブ導入。
 ・他国の進展に即応する柔軟な政策変更。

 全体の見通し

 ・核融合技術の開発競争は米中対立の重要な一環であり、今後数年間が勝敗を左右する可能性が高い。

【引用・参照・底本】

US falling behind China in race to nuclear fusion ASIATIMES 2024.12.24
https://asiatimes.com/2024/12/us-falling-behind-china-in-race-to-nuclear-fusion/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=85d6e2cb0c-DAILY_24_12_2024&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-85d6e2cb0c-16242795&mc_cid=85d6e2cb0c&mc_eid=69a7d1ef3c

ロシア:宇東部の都市やエネルギーインフラに大規模な攻撃2024年12月25日 18:42

Microsoft Designerで作成
【概要】

 ロシアは2024年12月25日、ウクライナ東部の都市やエネルギーインフラに対して巡航ミサイルや弾道ミサイルを用いた大規模な攻撃を実施した。この攻撃は、戦争が始まってから約3年目となる冬の中で最も厳しい状況にあるウクライナにさらなる打撃を与えるものである。ウクライナ当局によると、この攻撃により少なくとも1人が死亡し、エネルギー施設が損傷したと報告されている。

 クリスマスの日の朝、ウクライナ全土で空襲警報が鳴り響き、ロシアが黒海からKalibr巡航ミサイルを発射したとウクライナ空軍が伝えた。ウクライナ東部ではロシア軍が前線での進攻を強化し、空爆が増加している状況である。

 ヘルソン州の知事は、過去24時間で1人が死亡し、3人が負傷したと報告した。また、ドニプロペトロウシク州では冬の気温が氷点下付近で推移する中、ロシアが地域の電力網を攻撃の標的としていることが確認された。知事のリサク氏は、Telegramで「敵は地域の電力システムを破壊しようとしている。空襲警報が解除されるまで安全な場所に留まり、自分の身を守るように」と住民に呼びかけた。

 クリスマスイブの攻撃後、救助活動が行われ、43歳の男性が死亡、17人が負傷したことが明らかになった。また、ハルキウ市では水曜日の早朝に「大規模なミサイル攻撃」が行われたと、市長のイーホル・テレホフ氏が報告している。同氏によると、「ハルキウは大規模なミサイル攻撃を受けている。市内で一連の爆発が確認されており、依然として弾道ミサイルが市に向かっている」と述べた。州知事によると、少なくとも7回の攻撃が確認され、3人が負傷した。

 ロシアは戦争が始まった2022年2月以来、ウクライナの電力網を繰り返し攻撃し、定期的な停電を引き起こしてきた。これに対し、ウクライナは同盟国に対し、ロシアの攻撃を阻止するための強力な防空システムの提供を訴えている。

 アメリカは先月、ウクライナに対しロシア国内の軍事目標を攻撃するための長距離ミサイル使用を許可したが、これに対してロシアは強い反発と報復を示唆する発言を行った。

 ロシア国防省は水曜日、夜間にウクライナのドローン59機を撃墜したと発表している。一方、ロシアは今年だけで190以上のウクライナの集落を制圧したと主張しており、ウクライナ側は兵力や弾薬の不足に直面しながら防衛を続けている。

【詳細】

 2024年12月25日、ロシアは巡航ミサイルや弾道ミサイルを使用して、ウクライナのエネルギーインフラと東部の都市に対する大規模な攻撃を行った。この攻撃はウクライナが経験する中で最も厳しい冬の真っ只中に行われ、エネルギー網への壊滅的な影響を与えることを目的としている。ウクライナ当局の発表によれば、今回の攻撃で少なくとも1人が死亡し、複数の重要なインフラ施設が損傷した。

 空襲の詳細

 クリスマスの朝、ウクライナ全土で空襲警報が発令され、ロシアが黒海からKalibr巡航ミサイルを発射したとウクライナ空軍が報告した。これにより、ハルキウ、ヘルソン、ドニプロペトロウシクといった複数の地域が攻撃を受けた。ハルキウでは早朝から「大規模なミサイル攻撃」が行われ、少なくとも7回の爆発が確認された。市長のイーホル・テレホフ氏によると、弾道ミサイルが引き続き都市部に向かっているとされる。

 地域別の被害状況

 ・ハルキウ州: 州知事によれば、少なくとも3人が負傷。攻撃は大規模で、都市部のインフラや住宅に深刻な被害をもたらしている。
 ・ヘルソン州: 知事は、この24時間で1人が死亡し、3人が負傷したと報告している。特に民間地域への攻撃が強調されている。
 ・ドニプロペトロウシク州: この地域では、ロシア軍が電力網を集中的に標的としている。州知事のセルギー・リサク氏は、「敵が地域の電力システムを破壊しようとしている」と述べ、安全確保のための避難を呼びかけている。

 さらに、クリスマスイブの攻撃では、43歳の男性が死亡し、17人が負傷したことが確認された。このことから、ロシアの攻撃が一貫して民間人を含む幅広いターゲットに対して行われていることがうかがえる。

 エネルギー網への影響

 ロシアは戦争が始まった2022年2月以来、ウクライナの電力網を集中的に攻撃しており、今回の攻撃もその一環である。これによりウクライナ全土で頻繁な停電が発生し、特に厳冬期において国民生活に深刻な影響を与えている。ウクライナ政府は同盟国に対し、ロシアの攻撃を阻止するための防空システムの強化を求めている。

 戦争の全体像

 ロシア国防省によると、水曜日には夜間にウクライナのドローン59機を撃墜したと発表されている。一方で、ロシア軍は2024年だけで190以上のウクライナの集落を制圧したと主張しており、戦況は依然としてロシア有利に展開されているとされる。これに対し、ウクライナ軍は兵力や弾薬の不足に直面しながらも、戦線を維持するために奮闘している。

 国際的な反応と背景

 アメリカは11月に、ウクライナに対しロシア国内の軍事目標を攻撃するための長距離ミサイルの使用を許可した。これにより、ロシアはアメリカおよびウクライナに対し、さらなる報復を示唆する声明を発表している。また、同月にはロシアが約200発のミサイルや無人機を使用してウクライナのエネルギーインフラを攻撃し、これにはクラスター弾も含まれていたとされる。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「卑劣なエスカレーション」と非難した。

 2025年1月にはドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任予定であり、トランプは戦争の迅速な終結を目指す意向を示しているが、具体的な停戦条件や和平案については明らかにされていない。この国際的な政治状況も、戦争の進行に影響を与える可能性がある。

 ウクライナは引き続き、ロシアの攻撃に対抗するための国際的な支援を求めており、戦争の終結には依然として不透明感が漂っている。

【要点】

 1.攻撃概要

 ・2024年12月25日、ロシアは巡航ミサイルや弾道ミサイルでウクライナのエネルギーインフラと都市を攻撃。
 ・空襲警報が全土で発令され、Kalibr巡航ミサイルが黒海から発射された。

 2.地域別被害状況

 ・ハルキウ州: 7回のミサイル攻撃が確認され、少なくとも3人が負傷。市内では弾道ミサイルの警報が続く。
 ・ヘルソン州: 攻撃により1人死亡、3人負傷。
 ・ドニプロペトロウシク州: 電力網が標的となり、停電が発生。クリスマスイブの攻撃で43歳の男性が死亡、17人が負傷。

 3.エネルギーインフラへの影響

 ・ロシアの攻撃でウクライナの電力網が甚大な被害を受け、特に冬季における国民生活に深刻な影響を与えている。
 ・ウクライナは防空システムの強化を同盟国に要請。

 4.戦争の現状

 ・ロシア国防省は夜間に59機のウクライナのドローンを撃墜したと発表。
 ・ロシア軍は2024年に190以上の集落を制圧したと主張。
 ・ウクライナ軍は兵力と弾薬不足に直面しながら戦線維持を試みている。

 5.国際的背景

 ・アメリカはウクライナにロシア国内の軍事目標への攻撃を許可する長距離ミサイルを提供。
 ロシアは報復を示唆し、クラスター弾を含む攻撃でエネルギー網へのダメージを強化。
 ・2025年1月にドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任予定。戦争の迅速な終結を目指すが、具体案は不明。

 6.結論

 ・ロシアの攻撃が続き、エネルギーインフラや市民生活への影響が深刻化。
 ・ウクライナは防衛と国際的支援の強化を進めるが、戦争終結の見通しは依然不透明。

【引用・参照・底本】

Russia targets Ukraine's energy grid in 'massive' Christmas Day attack FRANCE24 2024.12.25
https://www.france24.com/en/europe/20241225-russia-targets-ukraine-s-energy-infrastructure-in-massive-christmas-day-attack?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020241225&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

米国2025年度の国防権限法案2024年12月25日 19:06

Microsoft Designerで作成
【概要】

 2024年12月25日、アメリカが2025年度の国防権限法案に台湾に関する否定的な内容を含めて署名したことに対し、中国国務院台湾事務弁公室の報道官であるChen Binhua氏は、定例記者会見で台湾は中国の一部であり、台湾問題は中国の内政であり、外部からの干渉は許容しないと述べた。

 Chen氏は、アメリカが台湾に関連する否定的な内容を国防権限法案に組み込んだことについて、台湾をさらに武装させ、台湾海峡での緊張を高めようとする試みであり、中国の内政に対する重大な干渉であり、「一つの中国」原則や中米間の三つの共同声明の規定に対する重大な違反であると強調した。また、台湾独立を支持する分裂勢力に誤ったシグナルを送ることで、台湾海峡の平和と安定を深刻に損なうものだと述べ、強い不満と断固たる反対を表明した。

 さらに、Chen氏はアメリカに対し、台湾問題に関する中国への政治的コミットメントを真摯に遵守し、「台湾独立」への支持を公言ではなく具体的な行動で示すこと、そして台湾への武器供与を即時に停止するように求めた。また、民主進歩党(DPP)の当局に対しては、いかに外部勢力と結託し、アメリカ製の武器を購入しようとも、中国の統一の歴史的な流れを止めることはできないと警告し、危険を冒すならば自らの破滅を招くことになると述べた。

 さらに、全国人民代表大会外事委員会の報道官であるXu Dong氏も、2025年度国防権限法案に関してコメントを発表した。Xu氏は、この法案に含まれる中国に対する否定的な規定が「中国の脅威」を煽り、台湾に対する軍事支援を助長し、中国の技術的・経済的発展を抑制し、中米間の経済・貿易交流や文化交流を制限し、中国の内政に対して重大な干渉を行い、中国の主権、安全、発展利益を損なうものであると強調した。

 Xu氏は、中国とアメリカという二大国にはいくつかの違いと対立があるのは避けられないが、両国はお互いの核心的利益を損なうべきではなく、ましてや対立や衝突を避けるべきだと述べた。台湾問題や民主主義・人権、統治制度、発展権は中国にとって挑戦できない「赤線」であり、アメリカには冷戦思考とイデオロギー的偏見を捨て、中国に関する否定的な規定を実施せず、主権や核心的利益に関する誤りを再び犯さないよう強く促した。

【詳細】

 2024年12月25日、アメリカ合衆国が2025年度の国防権限法案(NDAA)に署名したことに対し、中国の国務院台湾事務弁公室の報道官であるChen Binhua(チェン・ビンファ)氏は、記者会見で詳細に反応した。以下にその内容をさらに詳しく説明する。

 背景

 2025年度の国防権限法案には、台湾に関連する否定的な内容が含まれており、この点が中国の強い反発を招いている。具体的には、アメリカが台湾に対する軍事支援を強化する意図を示唆する内容や、台湾を巡る問題で中国の立場を無視するような内容が盛り込まれているとされる。中国政府は、アメリカが台湾問題に関して中国の政策に反する行動を取ることに強く反発しており、これに対する声明が発表された。

 Chen Binhua報道官の発言

 Chen Binhua氏は、記者会見で以下のように述べた。

 1.台湾は中国の一部
Chen氏は、台湾は中国の一部であり、台湾問題は中国の内政問題であると強調した。台湾に対する外部からの干渉は中国が容認しないという立場を改めて表明した。

 2.アメリカの干渉行為

 アメリカが国防権限法案に台湾に関連する否定的な内容を盛り込んだことに対し、Chen氏は「台湾を武装させ、台湾海峡での緊張を高めようとする試み」であると非難した。この行為は、台湾問題に関して中国の主権を無視し、中国の内政に対する重大な干渉であり、「一つの中国」原則と中米間の三つの共同声明に対する違反であるとした。

 3.台湾独立勢力への支持

 また、アメリカの行動が台湾独立を支持する勢力に誤ったメッセージを送り、台湾海峡の平和と安定を損なうと警告した。台湾独立を支持する動きは中国にとって許容できないものであり、そのような分裂的な活動を助長することは、台湾の未来を危険にさらすことになると強調した。

 4.アメリカへの要求

 Chen氏はアメリカに対し、台湾問題に関して過去に行った政治的コミットメントを真摯に遵守し、「台湾独立」を支持しないという立場を具体的な行動で示すよう求めた。また、アメリカが台湾に武器を供与することを即時に停止するように要求した。

 5.民主進歩党(DPP)への警告

 民主進歩党(DPP)当局についても言及し、外部勢力との協力やアメリカからの武器購入が中国の統一の流れを止めることはできないと断言した。DPPがどれだけ外部の支援を受けても、歴史的に見て中国の統一は不可避であり、仮に台湾当局がその流れに逆らおうとすれば、自らの破滅を招くことになると警告した。

 Xu Dong報道官の発言

 さらに、全国人民代表大会外事委員会の報道官であるXu Dong(シュー・トン)氏も同日、アメリカによる台湾問題への介入について声明を発表した。Xu氏は、アメリカの行動が中国の主権と安全を脅かすものであり、次のように指摘した。

 「中国の脅威」論の煽動

 Xu氏は、アメリカが中国に対する「脅威」を煽ることが、台湾に対する軍事支援を増加させる一因になっていると批判した。また、アメリカが中国の経済発展を抑制し、技術的な発展を制限し、文化交流や経済・貿易の交流を妨げるような政策を採っていることを非難した。

 中国の主権・安全・発展権の侵害

 アメリカの行動が中国の主権、安全、発展利益を損なうものであり、中国に対する内政干渉にあたると強く反対した。

 対立の回避を強調

 中国とアメリカの間には意見の相違があることは避けられないが、両国は互いに核心的な利益を損なうべきではないと強調した。特に、台湾問題や中国の発展権、民主主義・人権の問題は中国にとって「赤線」であり、アメリカがこれらの問題において誤った行動を取らないよう求めた。

 結論

 中国はアメリカの動きを強く非難しており、特に台湾問題に関しては外部からの干渉を断固として許さない立場をとっている。アメリカに対しては、過去の約束を守り、台湾への武器供与を停止し、冷戦的な思考を改めるよう強く求めている。中国は、台湾問題に関しては譲歩することなく、歴史的な統一の進展を強調し、台湾独立を支持する勢力に対して警告を発している。

【要点】

 1.背景

 ・アメリカが2025年度の国防権限法案(NDAA)に台湾に関連する否定的な内容を盛り込み、署名した。
 ・これに対し、中国は強く反発。

 2.Chen Binhua報道官の発言

 ・台湾は中国の一部: 台湾問題は中国の内政であり、外部干渉は許さない。
 ・アメリカの干渉: アメリカが台湾への武器供与や軍事支援を強化することは、中国の内政への重大な干渉であり、「一つの中国」原則に反する。
 ・台湾独立勢力への支持: アメリカの行動は台湾独立を支持する分裂勢力に誤ったシグナルを送り、台湾海峡の平和と安定を脅かす。
 ・アメリカへの要求: アメリカは台湾問題に関する過去の政治的コミットメントを守り、台湾への武器供与を停止すべき。
 ・民主進歩党(DPP)への警告: DPPが外部勢力と結託しても、中国の統一の流れは 止められない。逆らえば自ら破滅を招く。

 3.Xu Dong報道官の発言

 ・「中国の脅威」論の煽動: アメリカが「中国の脅威」を強調し、台湾に対する軍事支援を助長している。
 ・中国の主権と発展権の侵害: アメリカの行動は中国の主権、安全、発展利益を損なうものであり、内政干渉にあたる。
 ・対立の回避: 中国とアメリカの間には意見の相違があるが、双方の核心的利益を損なうべきではない。台湾問題や中国の発展権は中国にとって「赤線」。

 4.結論

 ・中国は台湾問題に関して外部からの干渉を許さず、アメリカに対して過去の約束を守るよう強く求めている。
 ・アメリカは台湾への武器供与を停止し、冷戦的な思考を改めるべきとの立場。

【引用・参照・底本】

China will not tolerate any external interference, State Council Taiwan Affairs Office slams US’ National Defense Authorization Act containing negative content related to Taiwan GT 2024.12.25
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1325726.shtml

中国とその隣国の2つの鉄道プロジェクト2024年12月25日 19:16

Microsoft Designerで作成
【概要】

 中国の隣国とのインフラ接続に関して、最近2つの重要なニュースが報じられた。1つはキルギスのサディール・ジャパロフ大統領が、中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道の建設が12月27日に正式に始まることを発表したことであり、もう1つはベトナムのファム・ミン・チン首相がラオカイ・ハノイ・ハイフォン鉄道プロジェクトの建設現場を視察し、2025年末に着工予定であり、中国との鉄道接続を円滑かつ同期的に実現することを目指しているということである。この2つのプロジェクトは、長年にわたって提案されてきたものであり、特に中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道は20年以上にわたる準備期間を経て、ついに実現に向けて動き出すこととなった。この鉄道の建設は、関係国と地域に深遠な影響を与えることが予想される。

 以前、中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道プロジェクトは「幻想」と呼ばれていた。人々が挙げていた課題には、中国と中央アジア諸国との異なる軌間をどう接続するか、資金調達や技術的な問題をどう克服するか、そして関連国の地政学的な懸念が含まれていた。ベトナムと中国が標準化された軌間で国境を越える鉄道を建設する協力において直面した障害も似たようなものである。しかし現在、中国と関係国はこれらの鉄道建設に関して合意に達しており、工事が開始される前に「心への道」がすでに開かれている。このこと自体が歴史的な意義を持つ。接続の需要と地域諸国の経済発展への意欲が、これらのプロジェクトを推進する主な原動力となっている。これは、中国と隣国との利益の統合が進み、友好と相互信頼が深まったことを示している。

 中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道は、一方で中国が高水準の開放を通じて地域の発展を促進するというビジョンを担い、他方で中央アジア諸国の「東西の戦略的橋渡し」としての役割を果たし、経済的飛躍を目指すという願望を反映している。ラオカイ・ハノイ・ハイフォン鉄道プロジェクトは、ベトナム経済の発展に必要なインフラのアップグレードの機会を提供するとともに、ベトナム北部最大の港であるハイフォンへ向けた中国内陸部からの迅速で高品質な貨物輸送の需要にも応えるものである。この2つの鉄道は何千キロも離れているが、中国と隣国との間での相互の努力を物語っている。

 中国の5カ国との包括的戦略的パートナーシップの強化や、メコン川流域における未来共同体の深化は、これらの鉄道建設に向けた協力の基盤を固めた。さらに、ユーラシア大陸を横断する新しいシルクロードとしての中国・ヨーロッパ鉄道の成功や、中国・ラオス鉄道などの接続プロジェクトが地域貿易や文化交流に活力を注入したことは、中国がキルギス、ウズベキスタン、ベトナムと鉄道協力を進めるための前向きなモデルと原動力を提供している。これらの2つのプロジェクトは、地域経済統合の豊かな土壌に根ざしており、地域経済協力のパズルを完成させる重要な要素となる。

 これらの2つの鉄道プロジェクトが意図から正式な合意に移行することは、地域協力における突破口を開くものといえる。これらの鉄道が完成すれば、周辺地域の急速な発展を促進する「吸引効果」を生むと予想される。

 たとえば、中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道は、キルギスを輸送ハブに変えることになり、年間1500万~2000万トンの貨物が通過し、年間約20億ドルの通行料が発生する可能性がある。

 一方、ウズベキスタンは、この鉄道を活用してユーラシア地域の「交差点」として位置づけ、国際的な輸送ハブとしての地位を確立したいと考えている。地域全体においては、シンガポールからイスタンブール、トルコ、ヨーロッパまでを結ぶ「アジア横断鉄道網」の建設は、長年の夢であり、関係国の不断の努力によって徐々に現実のものとなっている。すべての国は発展の夢を持つ権利があり、接続がその夢を実現する手助けとなっている。

 接続の軌道は、経済グローバル化の特急列車を運び、沿線の各国が近代化を達成したいという願いを背負っている。これが鉄道が広く歓迎され、時代の流れとなっている理由である。

 鉄道は単なる通路ではなく、中国の友好、誠実、相互利益、包容の理念を体現しており、中国の隣国との友好とパートナーシップを築くという外交政策の本質を反映している。これは隣国が中国の経済見通しと発展の道に対して抱く継続的な楽観的な見方を反映しており、平和的共存とウィンウィン協力への共通のコミットメントを示している。中国が目指すアジアでの調和と相互繁栄を築くというビジョンは、1本1本の鉄道の軌道と共に前進している。

【詳細】

 中国とその隣国とのインフラ接続に関する2つの鉄道プロジェクトは、両国間の経済的および戦略的関係にとって極めて重要な意味を持つ。これらのプロジェクトは、地域の発展に大きな影響を与える可能性があり、特に中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道は、20年以上にわたって議論されてきたもので、ようやく実現に向けて動き出した。この鉄道建設が進むことは、中国がどのようにして隣国との関係を強化し、地域経済の発展を支援しようとしているのかを示すものとなる。

 まず、キルギスのサディール・ジャパロフ大統領が発表した中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道の建設計画は、地域の物流や貿易に大きな変化をもたらすと期待されている。この鉄道は、中央アジアにおける物流のハブを作り出し、キルギスが輸送業務の中心地として発展することを目指している。年間15~20百万トンの貨物を通過させ、通行料として毎年20億ドル近くの収益を上げると予測されている。このような収益は、キルギス経済にとって重要な資金源となり、経済的な自立を促進するだろう。

 次に、ウズベキスタンにとっても、この鉄道は大きな意味を持つ。ウズベキスタンは、鉄道建設を通じて、ユーラシア地域の交通の要所としての地位を確立しようとしている。この鉄道が完成すれば、ウズベキスタンは東西を結ぶ重要な交通の交差点となり、国際的な輸送ハブとしての役割を果たすことができる。その結果、ウズベキスタンの経済はより国際的な貿易と物流ネットワークに組み込まれ、経済的な発展が加速することが期待されている。

 また、ラオカイ・ハノイ・ハイフォン鉄道プロジェクトは、ベトナム経済にとって重要なインフラの一部となる。中国との鉄道接続を実現することにより、ベトナム北部のハイフォン港への迅速で効率的な貨物輸送が可能になり、貿易活動が活発化する。これにより、ベトナムは中国との貿易拡大を一層進めることができ、経済成長を支える重要な基盤が整備される。特に、ベトナムの工業化が進む中で、物流インフラの整備は極めて重要な課題であり、この鉄道建設はその解決に寄与する。

 これらの鉄道プロジェクトは、単に経済的な効果をもたらすだけでなく、地域の協力と平和的な共存を促進する要因ともなり得る。中国はこれらの鉄道建設を通じて、隣国との友好と信頼関係を深め、相互利益を追求する姿勢を示している。鉄道は単なる物理的な交通手段にとどまらず、中国の外交政策の理念である「友好、誠実、相互利益、包容」を体現するものとして位置付けられている。

 さらに、これらのプロジェクトは、ユーラシア全体のインフラ接続を進めるための一歩となり、特に「アジア横断鉄道網」の実現に向けた進展を示している。シンガポールからイスタンブールまでを結ぶこの鉄道網は、地域間の貿易を活性化させ、経済的な連携を強化する重要な要素となるだろう。鉄道を中心にしたインフラ整備は、地域の発展を加速させ、グローバルな経済ネットワークの一部として各国が連携するための基盤を築くことになる。

 このように、これらの鉄道プロジェクトは単なるインフラの建設にとどまらず、地域経済の統合、貿易の促進、そして国際的な協力の深化を象徴する重要な意味を持つ。中国とその隣国は、これらの鉄道を通じて相互の経済発展を支え合い、共に未来を切り開いていく姿勢を示している。鉄道は単なる物理的な交通網を超えて、地域の経済的な統合を促進し、平和的な共存と繁栄に向けた一歩となるだろう。

【要点】

 1.中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道

 ・20年以上議論されてきた鉄道プロジェクト。
 ・キルギスは物流ハブとなり、年間15~20百万トンの貨物を通過、通行料として毎年約20億ドルの収益を見込む。
 ・ウズベキスタンはユーラシア地域の交通の交差点となり、国際輸送ハブとしての地位を確立。
 ・鉄道完成により、キルギスとウズベキスタンの経済発展が加速する。

 2.ラオカイ・ハノイ・ハイフォン鉄道

 ・ベトナムと中国を結ぶ鉄道で、ベトナム北部のハイフォン港への効率的な貨物輸送が可能になる。
 ・貿易活動の活発化を促進し、ベトナム経済の成長を支えるインフラとなる。

 3.両プロジェクトの影響

 ・両鉄道は、中国が推進する地域経済統合とインフラ接続の一環として位置付けられる。
 ・鉄道は、中国の外交政策である「友好、誠実、相互利益、包容」を体現する手段となる。
 ・ユーラシア全体を結ぶ「アジア横断鉄道網」の実現に向けて進展を示す。

 4.経済的および戦略的意義:

 ・鉄道建設は、各国の発展に貢献し、地域間の貿易を活性化させる。
 ・各国は経済的な利益を共有し、平和的な共存と繁栄を追求するための基盤を築く。
 ・中国と隣国の協力が深まり、経済的な相互依存が強化される。

【引用・参照・底本】

These two railways to be built around China have far-reaching implications: Global Times editorial GT 2024.12.25
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1325714.shtml

比政府:自傷行為の中国人学生のビザ制限2024年12月25日 21:06

Microsoft Designerで作成
【桃源寸評】

 今や貧乏神の米国と手を取り合ったのでは、将来が思い遣られる。

 傍目八目ではあるが、米国はマイナスの国である。米国と組んでも、決してマイナスの乗算にはならず、マイナスの加算となるだけであ。やがて大きなマイナスが何をしでかすのやら。

 比、正に自傷行為であるな。

【寸評 完】

【概要】

 フィリピンの「迫害妄想」は、同国が孤立を深めていることを示している。最近の報道によると、フィリピンの大学における中国人学生の入学者数が減少しており、その背景には「国家安全保障」を名目にしたビザ政策の強化がある。このことは、フィリピン国内の一部の人々から懸念を呼んでおり、このような措置が教育や観光業に悪影響を及ぼし、さらに中国とフィリピンの間での広範な交流や協力を妨げる可能性があると警告されている。この傾向の根底にある論理は、矛盾に満ちており、短期的な視点に基づいている。「国家安全保障」を口実にした制限は、成長と発展のためのより広範な機会を閉ざしていると言える。

 ビザ政策の強化は、「国家安全保障」の名の下に行われており、これは「迫害妄想」の一例として捉えられている。地元の評論家によると、学生数の減少は単に政府のビザ政策が厳しくなったことだけでなく、中国人全てをスパイと見なすような国の雰囲気にも関係しているとされる。このような言説や偏見は、中国人市民がフィリピンを訪れる意欲をさらに削ぐこととなる。

 フィリピン政府の行動を深く分析すると、アメリカが背後に大きな影響を与えていることが見えてくる。近年、アメリカは「国家安全保障」を名目に、中国に対して技術や学術の制限を課す一方で、中国からの学生を空港で不当に取り調べるなどの行為も行っている。フィリピンはその後追いをしており、報道によると、フィリピンの空港で中国系の姓を持つフィリピン人が出生証明書を求められるなどの事例がある。

 こうした行動は、フィリピンの発展ニーズと真っ向から矛盾している。中国はフィリピンの経済成長において歴史的に重要なパートナーであり、観光客の主要な供給源であり、輸出先としても二番目に位置している。しかし、このような否定的な言説と有害な政策は、中国のフィリピンに対する善意を著しく減少させ、両国間の信頼関係を損なうこととなる。

 「国家安全保障」や「スパイの可能性」といった理由がこうした制限の背後にあるならば、誰が自分自身を歓迎されない国に送り込むだろうか。中国の投資家、学生、企業をターゲットにした介入は、通常の商業的・文化的交流に対して大きな障害を生み出している。さらに、フィリピン政府の誤った行動は、既存の協力の道を絶つ危険を孕んでおり、進展の逆転を招く可能性がある。これは、政治、経済、文化の各分野における中国・フィリピン関係の安定に深刻な課題を突きつける。

 アメリカですら、敵対心の高まりや「小さな庭、高い垣根」といった政策が自国のイノベーションを妨げる可能性があることに懸念を示している。フィリピンのような国が、自国の急速な発展と産業のアップグレードを急務としている中、隣国市場や無数の協力機会を閉ざすことは、自己破壊的であると言わざるを得ない。

 これは、他のASEAN諸国の行動と比較すると一層明白である。中国の税関によると、2024年の最初の4ヶ月における中国とフィリピンの貿易は前年比10.31%減少した。一方で、同期間における中国とASEAN加盟国全体との貿易は4.8%増加した。ベトナムは中国との協力による鉄道ネットワークの発展を進め、タイは「一帯一路」イニシアティブに参加してインフラのアップグレードを図っている中で、フィリピンはビザ政策を厳しくし、アメリカ製の武器を購入し、「国家安全保障」を巡る空想的な感覚にしがみついている。

 フィリピンの学者でさえ、フィリピンがASEANの他国や中国との教育観光、外国直接投資などの交流において後れを取っていることを指摘している。

 開かれた世界と包容力が支配する時代において、フィリピンが「迫害妄想」に陥り、より大きな国々への誤った忠誠心を追求し続けるならば、同国は他のASEAN諸国や多くの開発途上国からますます孤立することになるだろう。

【詳細】

 フィリピンが現在直面している「迫害妄想」という状況は、同国の国際関係における重要な課題を浮き彫りにしている。具体的には、フィリピン政府が中国人学生に対して強化したビザ政策を導入し、その結果、中国からの留学生数が減少している。この措置は、「国家安全保障」の名の下に行われているが、その背後には無根拠なスパイ疑惑が横たわっており、これがフィリピン社会に広がる中国に対する偏見と恐怖を助長している。

 フィリピン政府の措置に対する国内外からの懸念は多方面にわたる。まず、フィリピンは中国と長年にわたって経済的な協力関係を築いており、中国はフィリピンの主要な観光客供給源であり、二番目に重要な輸出先である。このような背景を持つフィリピンが、中国との交流を制限することは、経済成長や発展にとって大きなリスクを伴う。中国からの学生や観光客、ビジネスパートナーの減少は、フィリピンの教育や観光業に深刻な影響を与えるだけでなく、経済全体に対する悪影響をもたらす可能性が高い。

 さらに、フィリピン政府が採用している「国家安全保障」の名の下での制限は、矛盾した論理に基づいているといえる。フィリピンが中国人学生に対してビザを厳格に制限する一方で、他のASEAN諸国は中国との協力関係を強化し、経済やインフラの発展を進めている。たとえば、ベトナムは中国との鉄道ネットワークを通じて経済発展を推進し、タイは「一帯一路」イニシアティブを活用してインフラのアップグレードを行っている。これに対し、フィリピンは中国との協力を減少させ、アメリカ製の武器を購入するなど、実質的には自国の発展に逆行するような行動を取っている。

 このような政策が進行すれば、フィリピンは国際社会でますます孤立することになる。特に、フィリピンは急速な経済成長と産業のアップグレードを必要としており、中国との経済的・文化的交流はその鍵となる要素である。フィリピンが中国市場や中国からの協力機会を放棄することは、自己破壊的な行動であり、同国の経済発展を遅らせることにつながるだろう。

 また、フィリピン国内での中国に対する疑念や偏見の拡大は、フィリピン市民の心に深い不信感を根付かせる。中国に対するスパイ疑惑や安全保障上の脅威を過剰に強調することは、実際にはフィリピンと中国の間の信頼関係を壊し、協力の機会を減少させる。中国からの留学生やビジネスマンがフィリピンを避ける理由の一つは、彼らが「歓迎されていない」と感じるからであり、このような空気が続く限り、両国の関係改善は困難である。

 フィリピン政府の政策には、アメリカが影響を与えているとの指摘もある。アメリカは中国に対して強硬な姿勢を取る一方で、フィリピンに対しても同様の立場を取らせようとする動きが見られる。アメリカは「国家安全保障」を名目に、技術や学術面で中国に対する制限を強化し、フィリピンに対しても同様の圧力をかけている。フィリピンはその影響を受け、アメリカと中国の間で揺れ動く中で、独自の発展戦略を見失っている可能性がある。

 その結果、フィリピンは中国との経済的関係を犠牲にして、アメリカとの関係を優先することになり、ASEAN諸国や他の発展途上国との競争で後れを取ることとなる。フィリピンが抱える課題は、単に国際的な信頼を失うことにとどまらず、国内経済の発展を妨げ、国際的な競争力を低下させるリスクを伴っている。

 総じて、フィリピンが抱える「迫害妄想」的な行動は、短期的な安全保障の確保を追い求めるあまり、長期的な経済的発展を危うくし、国際社会との協力関係を縮小させる可能性がある。このままでは、フィリピンは他のASEAN諸国や多くの開発途上国と比べて孤立し、国際的な地位を低下させることになるだろう。

【要点】

 ・ビザ政策の強化:フィリピン政府は「国家安全保障」の名の下で中国人学生のビザを制限し、その結果、中国からの留学生数が減少している。

 ・中国に対する偏見と疑念:フィリピン国内で中国に対するスパイ疑惑や安全保障上の脅威が過剰に強調され、これがフィリピン社会に広がる恐怖や偏見を助長している。

 ・経済成長へのリスク:中国はフィリピンの主要な観光客供給源および二番目に重要な輸出先であり、中国との交流制限はフィリピンの経済成長に悪影響を与える。

 ・ASEAN諸国との競争:他のASEAN諸国(ベトナム、タイなど)は中国との協力を強化しており、フィリピンはこの流れに遅れを取っている。これにより、教育観光や外国直接投資などで競争力を失っている。

 ・アメリカの影響:アメリカがフィリピンに対しても中国への対抗姿勢を強化させており、フィリピン政府はその影響を受けて中国との関係を縮小している。

 ・自己破壊的な政策:フィリピンが中国市場を排除し、アメリカとの関係を優先することは、短期的な安全保障を追求するあまり、長期的な経済的発展を妨げる結果を招く。

 ・信頼関係の損失:中国との信頼関係が損なわれることにより、両国間の協力の機会が減少し、フィリピンの国際的な立場が弱体化する恐れがある。

 ・孤立化のリスク:フィリピンが「迫害妄想」的な政策を続けると、他のASEAN諸国や開発途上国との関係も悪化し、国際的に孤立する可能性が高まる。

【参考】

 ☞ 「迫害」という言葉は、目的語を伴う動詞として「迫害する」という意味で使われることが一般的である。したがって、「迫害妄想(persecutory delusion)」は、厳密に言えば「迫害する立場での妄想」という意味合いで、迫害された側を指すものではない。

 この点を踏まえると、原文での「迫害妄想」という表現は、フィリピン政府や一部の人々が中国を敵視し、過剰にスパイ疑惑をかけるという、他者を不当に迫害する立場にあることを示すものとして解釈されるべきである。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

The Philippines’ ‘persecutory delusion’ is alienating itself GT 2024.12.24
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1325697.shtml