中国:デュアルユース(軍民両用)製品の輸出を禁止2025年01月05日 22:10

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【概要】 
 
 中国商務省は、28の米国防関連企業に対して、デュアルユース(軍民両用)製品の輸出を禁止し、そのうち10社を「信頼できないエンティティリスト」に追加する措置を講じた。この動きは、アメリカによる台湾への武器売却に対する報復措置として行われたものである。商務省は1月2日(木曜日)に発表し、国家安全保障の維持や核拡散防止を含む国際義務の履行を目的としていると説明している。

 制裁の対象には、ゼネラル・ダイナミクス、ボーイング・ディフェンス・スペース&セキュリティ、ロッキード・マーティン、レイセオン・ミサイル&ディフェンスなどの主要な防衛・航空宇宙企業が含まれる。これらの企業は、昨年末に中国外務省が台湾への武器売却を理由に発表した制裁リストにも名を連ねていた。

 商務省の声明によると、「国家の安全保障と利益を守るため、また、デュアルユース製品の輸出管理に関する中国の法律と規制に基づき、この措置を取った」としている。また、信頼できないエンティティリストに追加された10社については、台湾への武器売却が直接の理由であると指摘されている。

 中国政府は、このような措置を通じて、米国の防衛産業への圧力を強化し、自国の主権と安全保障を守る意図を明確にしている。
 
【詳細】
 
 中国商務省が発表した今回の措置は、アメリカの防衛関連企業に対して、軍民両用製品(デュアルユース製品)の輸出を禁止するとともに、10社を「信頼できないエンティティリスト(Unreliable Entities List)」に追加するという内容である。この背景には、米国が台湾への武器売却を継続していることに対する中国政府の反発がある。これにより、中国はアメリカの防衛産業に対し経済的な制約を課し、自国の安全保障および台湾問題における立場を強化しようとしている。

 措置の具体的な内容

 1.デュアルユース製品の輸出禁止

 デュアルユース製品とは、軍事および民間の両方で使用可能な技術や製品を指す。これには、航空宇宙技術、電子部品、通信機器、先端素材などが含まれる可能性が高い。中国は、これらの製品が軍事目的で利用されることで、自国の安全保障にリスクを及ぼす可能性があると判断している。今回の輸出禁止措置により、28社が対象となり、これらの企業は中国からの重要な製品や技術の供給を受けることができなくなる。

 2.信頼できないエンティティリストへの追加

 信頼できないエンティティリストとは、中国の国家安全保障や主権、発展利益を損なう活動に関与したとされる外国企業や個人を制裁対象とするリストである。今回新たに10社が追加され、これによりこれらの企業は中国との取引が大幅に制限される。リストに載った企業は、中国市場へのアクセスが制限されるほか、中国企業や団体との取引が事実上困難になる可能性がある。

 制裁対象となった企業の一覧(一部)

 制裁対象には、アメリカの主要な防衛産業が含まれる。具体的な企業は以下の通りである:

 ・ゼネラル・ダイナミクス(General Dynamics)
 ・ボーイング・ディフェンス・スペース&セキュリティ(Boeing Defence, Space & Security)
 ・ロッキード・マーティン(Lockheed Martin Corporation)
 ・レイセオン・ミサイル&ディフェンス(Raytheon Missiles & Defence)

 これらの企業は、米国政府の武器輸出プログラムの中核を担い、中国が「台湾分裂の助長」と見なす活動に深く関与しているとされる。

 措置の背景と中国の主張

 中国商務省は、今回の措置について以下の点を強調している:

 ・国家安全保障の維持

 米国の防衛企業が台湾に提供している武器が、中国の国家安全保障に直接的な脅威をもたらしているとの認識がある。特に、台湾海峡の緊張が高まる中、これらの武器供与は「一つの中国」原則を損なう行為と見なされている。

 ・国際義務の履行

 中国は、核拡散防止や軍事技術の不適切な使用を防ぐための国際的な義務を果たしていると主張している。デュアルユース製品の輸出規制は、この枠組みの一環とされている。

 今後の影響

 1.アメリカ防衛企業への打撃

 対象となった企業は、中国から供給される部品や素材を失う可能性がある。中国は、希土類(レアアース)や先端素材の主要供給国であり、これらの規制は防衛産業の生産や供給網に影響を与える可能性がある。

 2.米中関係のさらなる悪化

 この措置は、米中関係の緊張を一層高める要因となり得る。アメリカは既に中国に対し技術的制裁を行っており、中国もこれに対抗する形で防衛分野への制裁を強化している。

 3.台湾問題をめぐる対立の深刻化

 中国政府が台湾問題を最優先課題と位置づける中で、今回の措置は「一つの中国」原則を強調し、国際社会に対して台湾への武器供与を抑制するメッセージを発信している。

 今回の措置は、中国が経済的手段を活用して戦略的利益を守る試みの一環であり、今後の国際関係や地域情勢に大きな影響を及ぼす可能性がある。
  
【要点】 
 
 1.輸出禁止措置

 ・中国商務省は28の米国防関連企業に対し、デュアルユース(軍民両用)製品の輸出を禁止。
 ・これらの製品には航空宇宙技術、通信機器、先端素材などが含まれる可能性が高い。

 2.信頼できないエンティティリスト

 ・10の企業が中国の「信頼できないエンティティリスト」に追加。
 ・これにより、これらの企業は中国市場へのアクセスが制限され、取引が困難になる。

 3.制裁対象の企業

 ・ゼネラル・ダイナミクス(General Dynamics)
 ・ボーイング・ディフェンス・スペース&セキュリティ(Boeing Defence, Space & Security)
 ・ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)
 ・レイセオン・ミサイル&ディフェンス(Raytheon Missiles & Defence)

 4.中国の主張

 ・国家安全保障の維持が目的。
 ・アメリカの台湾への武器売却が中国の安全保障に脅威を与えるとして、これに対抗。
 ・デュアルユース製品の輸出規制は、軍事技術の不適切な使用を防ぐための国際的義務の履行。

 5.影響

 ・米国防衛企業への打撃:中国からの部品や素材供給の喪失。
 ・米中関係の悪化:中国の報復措置として、さらに対立が深まる可能性。
 ・台湾問題の対立激化:中国の「一つの中国」原則を強調し、国際社会にメッセージを発信。

【引用・参照・底本】

Lockheed Martin, Raytheon hit as China slaps dual-use export ban on 28 US defence firms SCMP 2025.01.05
https://www.scmp.com/news/china/military/article/3293156/china-slaps-dual-use-export-ban-28-us-defence-contractors?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-focus_sea_ru&utm_content=20250103&tpcc=enlz-focus_sea&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&tc=29

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