習近平氏の演説:「気候および公正な移行に関する首脳会合」2025年04月24日 19:12

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【概要】

 2025年4月23日、中国の習近平国家主席は、「気候および公正な移行に関する首脳会合」にビデオリンクを通じて演説を行った。

 本年は「パリ協定」締結から10周年、また国際連合創設から80周年という節目にあたり、習主席は、未曾有の地球規模の変化が加速する中、人類は新たな岐路に立たされていると述べた。

 一部の大国が一貫して単独主義および保護主義を追求していることが、国際的なルールおよび秩序に深刻な影響を与えているものの、歴史は常に紆余曲折を経ながらも前進するものであるとし、信念、団結、協力を強化すれば、世界の気候ガバナンスおよび進歩的な事業は前に進められると強調した。

 この文脈において、習主席は四つの要点を提示した。

 第一に、「多国間主義の堅持」が必要である とし、国連を中心とする国際体制および国際法を基礎とする国際秩序を断固として守るべきであると述べた。また、各国は法の支配を重んじ、国際的な約束を遵守し、グリーンかつ低炭素の発展を優先して、気候変動に対して多国間の枠組みを通じて共同で対応すべきであると主張した。

 第二に、「国際協力の深化」が不可欠である として、相互の対立や隔絶を乗り越え、開放性と包摂性をもって協力を進めること、また技術革新や産業転換を通じて、質の高いグリーン技術や製品の自由な流通を促し、それらをすべての国、とりわけ発展途上国が利用可能で、手頃で、利益を得られるようにすべきとした。中国は引き続き「南南協力」を積極的に推進し、他の発展途上国への支援を最大限に行うと明言した。

 第三に、「公正な移行の加速」が必要である とし、グリーンな転換は人間中心であるべきであり、人々の福祉と気候ガバナンスの推進を両立させる形で進めるべきであると述べた。また、環境保護、経済成長、雇用創出、貧困削減といった複数の目標のバランスを取る必要があるとした。さらに、先進国には発展途上国への支援を行う義務があり、世界的なグリーンおよび低炭素化の推進に貢献すべきであると訴えた。

 第四に、「実効性のある行動の強化」が求められる とし、すべての関係国が自国の「国別貢献(NDCs)」に関する行動計画を策定・実施する努力を最大限に行うべきであるとした。経済発展とエネルギー転換の調和を図るべきとも述べた。加えて、中国は2025年にブラジルのベレンで開催予定の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)までに、経済全体および温室効果ガス全体を対象とした2035年の国別貢献を発表する予定であると明らかにした。

 習主席は、中国の現代化において「人と自然の調和」が重要な特色であるとし、中国は世界のグリーン発展を推進する堅実な行動者であり、主要な貢献者であると表明した。5年前に発表された中国のカーボンピークおよびカーボンニュートラル目標以来、中国は世界最大かつ成長速度の最も早い再生可能エネルギーシステムを構築し、新エネルギー産業チェーンの面でも世界最大かつ最も完備されたものを有するに至っている。また、緑化の速度と規模においても世界をリードしており、新たに追加された森林面積の4分の1が中国によるものであるとした。

 最後に、習主席は「世界がどのように変化しようとも、中国は気候変動対策を緩めることなく、国際協力への支援も減らさず、人類運命共同体の構築に向けた努力を止めない」と強調した。中国は、共通だが差異ある責任の原則を誠実に遵守し、各国がそれぞれ最大限の努力を尽くすことにより、清潔で美しく持続可能な世界の共同構築を目指すとしている。

【詳細】

 1.歴史的背景と国際情勢の認識

 習主席は、2025年がパリ協定締結10周年および国際連合創設80周年という重要な節目の年であることを強調し、現在世界が直面している状況を「前例のない地球規模の変化が加速している」と形容した。この変化の中で人類は「新たな十字路」に立たされていると述べた。

 一方で、一部の主要国による単独主義(unilateralism)や保護主義(protectionism)の継続的な追求が、国際的なルールや秩序を深く揺るがしていると指摘したが、それでもなお歴史の歩みは必ず前進するという確信を表明した。

 2.四つの重点的提言

 (1)多国間主義の堅持

 最初の提言として、習主席は「多国間主義を堅持すべきである」と述べた。具体的には以下の点が挙げられる。

 ・国際連合を中心とした国際システムの維持

 ・国際法に基づく国際秩序の遵守

 ・国際的な公正と正義の堅持

 ・各国が法の支配を重視し、約束を守る姿勢を貫くこと

 ・グリーン(環境調和型)・低炭素発展を優先すること

 ・気候危機に対して、多国間枠組みを通じた集団的な対応を行うこと

 これにより、各国の権利と義務のバランスを保ちつつ、協力の枠組みを強化することが求められている。

 (2)国際協力の深化

 第二の提言として、習主席は「国際協力の深化」を呼びかけた。ここでは以下の要素が強調された。

 ・開放性と包摂性をもって対立や隔絶を乗り越えること

 ・技術革新および産業のグリーン転換を国際的な協力により推進すること

 ・高品質なグリーン技術や製品の自由な流通を可能にすること

 ・それらを発展途上国にもアクセス可能、手頃な価格、実利的なものとして提供すること

 さらに、中国としては「南南協力」をさらに強化し、発展途上国への支援を可能な限り行うと述べた。ここでの南南協力とは、先進国による援助ではなく、途上国同士が経験や技術、資源を共有する枠組みを意味する。

 (3)公正な移行の加速

 ・第三の提言では「公正な移行(just transition)」が重要視された。これは単なる産業やエネルギー構造の変革ではなく、人々の生活と気候変動対策を同時に前進させるべきという観点に立っている。

習主席は、以下の点を具体的に述べている。

 ・グリーンへの移行は人間中心でなければならない

 ・気候対策と国民の生活向上(well-being)を両立させる必要がある

 ・環境保護、経済成長、雇用創出、貧困削減という複数の目標のバランスを取ることが重要

 ・先進国には発展途上国に対する支援義務があるとし、技術・資金などの面で協力すべきである

 この部分では、「グリーン経済」への転換が単なる政策ではなく、全人類の福祉にかかわる課題であることを訴えた。

 (4)実効的な行動の強化

 最後の提言として、「結果志向の行動を強化すべき」と述べた。

 ・各国はNDCs(国別貢献)に基づいた具体的な行動計画を策定・実行すべき

 ・経済発展とエネルギー転換の調和を図ることが重要

 さらに、習主席は中国として、2035年を目標とするNDCsを、経済全体および温室効果ガス全体を対象として設定し、ブラジル・ベレンで開催予定の国連気候変動会議(COP)までに発表すると述べた。

 3.中国の取り組みと今後の姿勢

 習主席は、中国の現代化の理念として「人と自然の調和」を掲げ、以下の具体的成果を挙げた。

 ・世界最大かつ成長速度が最も速い再生可能エネルギーシステムを構築

 ・世界最大・最も完全な新エネルギー産業チェーンを形成

 ・世界の緑化(植林)面積のうち、新たに追加された森林の約25%が中国によるものである

 また、「中国は決して気候行動を緩めることなく、国際協力を減らさず、人類運命共同体の構築に向けた努力を止めない」と明言し、国際的な信頼維持と責任ある行動者としての立場を再確認した。

 最後に、「共通だが差異ある責任(common but differentiated responsibilities)」の原則に基づき、各国ができる限りの努力を行い、清潔で美しく持続可能な世界を共に築いていくことを誓った。

 この演説は、気候変動対策における制度的枠組みの尊重、国際協力の推進、公正な移行の必要性、実効的な行動の強化を軸に、中国の貢献とリーダーシップを強調する内容となっている。
 
【要点】 

 問題意識

 ・2025年はパリ協定締結10周年、国連創設80周年という節目の年である。

 ・世界は前例のない地球規模の変化の中で、「新たな十字路」に立たされている。

 ・一部主要国による単独主義・保護主義の拡大が、国際秩序を揺るがしているが、歴史の進展は止まらないと明言した。

 習主席が提起した4つの提言

 ① 多国間主義の堅持

 ・国際連合を中心とする国際秩序を維持すべきである。

 ・国際法に基づいた秩序の遵守を重視すべきである。

 ・国際的な公平・正義を堅持する必要がある。

 ・各国は約束を守り、グリーン・低炭素な発展を追求すべきである。

 ・気候変動問題は多国間の枠組みで連携して対応すべきである。

 ② 国際協力の深化

 ・対立や分断を避け、開放性と包摂性をもって協力すべきである。

 ・グリーン技術と産業の発展を、国際協力によって推進すべきである。

 ・高品質なグリーン製品の流通を確保すべきであり、発展途上国でもアクセス可能・実用的・手頃な価格であることが必要である。

 ・中国は南南協力を拡大し、途上国への支援を強化する。

 ③ 公正な移行(Just Transition)の加速

 ・グリーンへの移行は人間中心であるべきである。

 ・気候対策と民衆の生活向上は同時に進めなければならない。

 ・経済成長・雇用創出・貧困削減・環境保護を統合的に推進すべきである。

 ・先進国は技術・資金面で発展途上国を支援する責任がある。

 ④ 実効的な行動の強化

 ・各国は国別貢献(NDCs)に基づいた実行力ある計画を立て、行動に移すべきである。

 ・経済発展とエネルギー転換の調和を図る必要がある。

 ・中国は2035年を目標とした新たな国別貢献目標(NDCs)を設定し、次回COP(ベレン)までに発表すると表明した。

 中国の実績と今後の方針

 ・中国は「人と自然の調和」を現代化の重要理念と位置づけている。

 ・世界最大規模かつ最も成長速度が速い再生可能エネルギーシステムを構築している。

 ・世界最大かつ最も完全な新エネルギー産業チェーンを保有している。

 ・世界全体の新規植林面積の25%を中国が占めている。

 ・中国は引き続き気候行動を強化し、国際協力を推進し続けると明言した。

 ・「共通だが差異ある責任(CBDR)」の原則に基づき、各国が協力して清潔で持続可能な未来を築くよう呼びかけた。

【引用・参照・底本】

Xi addresses Leaders Meeting on Climate and the Just Transition, urging jointly advancing global climate governance GT 2025.04.24
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1332751.shtml

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