上海協力機構:西側機関に対する地政学的な対抗勢力へ2024年07月03日 18:29

【概要】

 2001年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンによって設立された地域安全保障圏である上海協力機構(SCO)は、ベラルーシの加盟が見込まれる中、再び拡大する予定だ。この動きは、この地域の安全保障機関から、西側機関に対する地政学的な対抗勢力へと変貌を遂げたことを浮き彫りにしている。ロシアの忠実な同盟国であり、ウクライナに対する戦争の支持者であるベラルーシは、昨年正式加盟国となったイランに続く。

 ベラルーシの参加は、経済協力や安全保障協力に基づくものではなく、地政学的な策略と見られている。この動きは、中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、アメリカの「覇権」に挑戦し、国際システムを作り直そうとする野望と一致している。SCOは、2017年に初めて拡大して以来、インドとパキスタンが参加し、世界人口の40%以上、世界経済の約4分の1を占める10カ国で構成される。

 しかし、この拡張には論争がなかったわけではない。インドのナレンドラ・モディ首相は今年のサミットを欠席し、SCOの方向性に対する一部の加盟国の不安を浮き彫りにしている。特にイランとベラルーシが加わって以降、反欧米志向が高まっているため、中央アジア諸国を含む西側諸国との良好な関係を維持しようとする加盟国の間で懸念が高まっている。

 課題や内部摩擦にもかかわらず、中国とロシアはSCOを無視できない主要ブロックとして推し進めている。プーチン大統領にとって、SCOは、ロシアがウクライナで戦争を続ける中で、重要な外交プラットフォームとして機能している。習近平国家主席にとっては、特に中央アジアにおける中国の地政学的影響力を強化する手段である。SCOは、米国主導の機関に対抗する存在として自らをアピールすることを目指しているが、ブロックとしての結束と有効性は、特に加盟国の多様で、時には相反する利害関係を背景に、依然として精査が必要である。

【詳細】

 上海協力機構(SCO9は、2001年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンによって設立された地域安全保障ブロックである。SCOは、地域のテロ対策や国境の安全保障を目的として始まったが、近年では中国とロシアの指導のもと、米国主導の西側諸国に対抗する地政学的な勢力としての役割が強調されている。

 ベラルーシの加盟

 SCOは今年、ベラルーシの加盟を迎えようとしている。ベラルーシは、ロシアのウクライナ侵攻を公然と支持しており、この加盟は単なる経済や安全保障の協力を超えた地政学的な動きとして捉えられている。ベラルーシの加盟により、SCOのメンバーは10カ国となり、世界人口の40%以上、そして世界経済の約4分の1を代表することになる。

 拡大の背景と影響

 SCOの拡大は、中国とロシアが主導するブロックが国際舞台での影響力を拡大し、米国の「覇権」に対抗するための戦略の一環である。特にロシアは、ウクライナでの戦争が続く中で、SCOを重要な外交の場として活用し、国際的に孤立していないことを示そうとしている。一方、中国は、米国との関係が悪化する中で、SCOが反西洋的な組織として認識されることに対してあまり懸念を示していない。

 内部の摩擦と不安

 SCOの拡大には内部での摩擦や不安も伴っている。特にインドのナレンドラ・モディ首相は、今年のサミットを欠席する予定であり、これはSCOの方向性に対する一部メンバーの不安を示している。また、インドとパキスタンの加盟以降、SCO内部での対立が生じており、最近では中国とインドの間でヒマラヤ国境を巡る紛争が激化している。

 さらに、イランとベラルーシの加盟は、中央アジアの旧ソ連諸国にとっても、西側諸国との良好な関係を維持しながらSCOに参加するというジレンマを生じさせている。これらの国々は、多軌的外交を追求しており、特定の大国、例えばロシアや中国にのみ依存することを避けたいと考えている。

 SCOの未来

 SCOの未来は、内部の多様なメンバーの意見をどのように調整し、一致団結した勢力としての役割を果たすかにかかっている。中国は、SCOが失敗することなく、成功した組織として認識されることを重要視している。しかし、さらなる拡大が続く場合、SCOの地域的な関連性が薄れ、内部の対立が増す可能性もある。

 また、SCOはNATOや欧州連合、G7のような西側主導の組織と比べて、まだまだ弱体であり、結束力に欠ける面がある。特に、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシといった多様な国々が加盟することで、SCOは一貫した同盟や共同体というよりも、戦略的ビジョンを共有する緩やかな組織としての性格が強まるる。

 中国の役割

 今後1年間、中国がSCOの議長国を務めることになる。中国は、SCOのメンバー国間での共通の基盤を見つけるために努力するだろう。中国にとって、SCOが失敗することは避けたい事態であり、そのためにはメンバー国の間での調整や協力が不可欠である。

【要点】

 上海協力機構(SCO)について

 ・設立: 2001年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンによって設立
 ・目的: テロ対策と国境安全保障の促進

 ベラルーシの加盟

 ・背景: ベラルーシはロシアのウクライナ侵攻を支持
 ・影響: 地政学的な動きとしての加盟、経済や安全保障の協力を超えた意図

 SCOの拡大と影響

 ・メンバー: ベラルーシ加入後、10カ国(世界人口の40%以上、世界経済の約4分の1)
 ・戦略: 中国とロシアが主導し、米国の「覇権」に対抗

 内部の摩擦と不安

 ・インドの動向: ナレンドラ・モディ首相がサミットを欠席
 ・対立: インドとパキスタンの対立、中国とインドの国境紛争
 ・中央アジアの立場: 西側諸国との関係を維持しつつ、SCOへの参加

 SCOの未来

 ・調整の必要性: 内部の多様な意見を調整し、一致団結した勢力としての役割を果たす
 ・結束力の課題: NATOや欧州連合、G7と比べて弱体で、結束力に欠ける
 ・組織の性格: 一貫した同盟や共同体というよりも、戦略的ビジョンを共有する緩やかな組織

 中国の役割

 ・議長国: 今後1年間、中国がSCOの議長国を務める
 ・目標: メンバー国間での共通の基盤を見つけ、SCOの成功を確保

 その他の重要なポイント

 ・地政学的対抗: 中国とロシアがSCOを通じて西側諸国に対抗
 ・外交の場: ロシアにとっては外交の場として重要
 ・反西洋的な組織: 中国はSCOが反西洋的と認識されることを懸念していない

 これらのポイントがSCOの拡大とその影響、そして内部の課題や未来の展望についての概要を示している。

【引用・参照・底本】

A growing club led by Xi and Putin to counter the US is adding a staunchly pro-Russia member CNN 2024.07.03
https://edition.cnn.com/2024/07/02/china/china-russia-belarus-full-member-sco-summit-intl-hnk/index.html?utm_term=17199958070803b330613bb39&utm_source=cnn_Meanwhile+in+China+%E2%80%93+07.03.2024+%28second+attempt%29&utm_medium=email&bt_ee=W7OugqAUvzgl54X93wMJuKHAl2o67HsA%2BRghi80mMpnxQBWSFzfXRCCaThlMIzbb&bt_ts=1719995807083

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